アンリミテッドは無理ゲーすぎる!   作:空也真朋

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第六十二話 いってらっしゃい 衛士たち

 

 こんにちは 沙霧真由です。

 AL弾のこと忘れてました。オルタ原作何度もやったといっても前世のゲームのことだし、こんな小さいイベントのこと、今思いだしただけでも凄いんですけどね。

 でも現実になると小さいことではありません。

 AL弾とは対レーザー弾頭弾のことであり、ハイヴ攻略の軌道爆撃においてあらゆる攻撃に先んじて落とされるものです。このAL弾がハイヴのレーザー種の迎撃を受けると重金属雲を形成。この雲がレーザーの力を弱めます。ハイヴ攻略には必須ですね。

 ところがオルタ原作の桜花作戦において、BETAはこれをほとんど迎撃しなかったのです。ハイヴ攻撃のたびにやっているこの攻撃に対応しちゃったんですね。

 あわてて夕呼さんにこのことを言ってAL弾に時限爆破をつけるよう進言しましたが、ただでさえ時間は無く、大量の爆薬も使うこの作戦。準備はとても難しいとのことです。結局、A-01が降下する間だけの分を準備するのが精一杯でした。

 

 

 

 そして出撃まであと数時間。純夏さんとのことがあって白銀君を避けていたんですが、どうしても最後に会いたくなって来ちゃいました。ここはシャトル発射場。機体はすでにシャトルに積み終わり、A-01の衛士達は最後の休憩をここで取っています。

 おっと、あそこで人だかりができています。ほほう。みんな大笑いしている所を見ると、速瀬さんのアレですね。鉄人28号なパイロットスーツ! やっぱり見る価値はありますもんね。しかしあそこには白銀君はいないようです。

 なのでちょっと進んで探してみると…………いた! 白銀君は元207訓練小隊B分隊のみなさんと純夏さん、霞ちゃんの中心にいました。

 凄乃皇は純夏さんの負担を少しでも減らすため、複座型にして白銀君をドライバー、霞ちゃんをナビゲーターにして運用します。オルタ原作と同じですね。

 それにしてもみなさん、大時代なロボットの様な、一見の価値のある速瀬さんの姿を見に行かないで何をしているのでしょう? どうやら妙に元気のない白銀君を心配して集まっているようです。

 

 「こんにちは、みなさん。白銀君、出撃前だっていうのに随分元気がないですね」

 

 白銀君、やっぱり元気なく私を見て、応えました。

 

 「ああ、真由か。生身で会うのは随分久しぶりだな。

 いやまいったよ。いきなり『凄乃皇に乗れ』なんて言われたあげく、隊長補佐だぜ?しかも人類史上最大の作戦! 速瀬中尉にまで命令する、とか色々とんでもなさすぎる」

 

 ヴァルキリーズのこの作戦においての隊長は宗像さん。速瀬さんが突撃前衛の小隊長に戻されたためにそうなったのですが、彼女、全体の命令を出すにはまだ貫禄というか重みが足りないんですよね。

 で、最強衛士の白銀君を補佐につけて、宗像さんの命令を大きな声で発する役にしたんですが………白銀君、へこたれちゃっています。このアイディア出したの私なんですが、間違ったでしょうか?

 

 「もう~タケルちゃんてば、だらしないなあ~」と純夏さん

 

 「白銀さん、ちょっと弱虫です」なんて霞ちゃんにも言われています。

 

 「しっかりしなさい白銀。これは人類の行く末を決める最大の戦い。その任務に大役を任されたんだから堂々とするものよ」

 

 千鶴さん、それ逆効果。白銀君、プレッシャーでますますへこたれちゃってます。

 

 「塩ふってみる? 白銀、溶けちゃうかも」

 

 慧さん、白銀君はナメクジじゃないですよ。

 

 「タケル、榊の言う通りだ。出征に立つ者、強がりであろうと雄々しくあるべきだ。ましてやタケルはこの日の本の男児であろう」

 

 いえ、冥夜さん。白銀君は別の日本の男児です。

 

 「タケル~、しっかりしなよ。ほら、父さんからおみやげにもらったアステカの石仮面あげるから」

 

 それ、つけるとヤバイ奴になるモノじゃ………?

 

 「タケルさん、元気だして!ホラ、壬姫が石仮面つけるから!」

 

 うわあ~ヤバイ!どうしてそれで白銀君が元気になると思うのかわかりませんが、とりあえず止めておきましょう!

 ふと、女の子達にあきれられた目で見られている白銀君を見て、昔を思い出しました。

 まだ強くなる前のみそっかすな頃の白銀君を。

 なので私はこう言葉をかけます。

 

 「大丈夫ですよ。こんなの、南の島の総戦技評価演習の地獄に比べたら屁でもありませんよ」

 

 「は?総戦技評価演習?」

 

 みんな目をパチクリ。

 私は胸の貝殻ペンダントをちょっと掲げて、ニッコリ笑って言いました。

 

 「覚えていませんか? 昔、白銀君が博士の特別任務の実験に行く前に言った言葉ですよ。

 あれ、もう一度言ってください。頭に『オリジナルハイヴなんて』ってつけて」

 

 一瞬あっけにとられる白銀君。

 でもすぐにニヤリと不適な笑顔。スクッと力強く立ち上がり

 

 「おう! オリジナルハイヴなんざ南の島の総戦技評価演習の地獄に比べりゃ屁でもねぇぜ!」

 

 シャトル発射場中に響くような大きな声。

 発射場にいるみんなは、白銀君の突然の大声に困惑顔。

 でも一人、二人とクスクスと笑いだし、あとはみんな大笑い。

 

 「本当だぜ。あの頃のみそっかすなオレでも根性出してあれをやり遂げたんだ!

 この程度の任務、アレに比べりゃ何てことはねぇ!

 もう一度言う! オリジナルハイヴなんざ南の島の総戦技評価演習に比べりゃ屁でもねぇ!」

 

 パチパチパチパチパチパチパチパチパチ!!!

 

 

 みんな白銀君の演説に笑いながら一斉に拍手をします

 

 

 でも私はしません

 

 

 だって白銀君に見とれるこの瞬間がもったいないですから

 

 

 本当にノリが良くて、笑顔がカッコイイ男の人って素敵ですね―――

 

 

 

 

 

 ブ―――――――――!! 

 

 出撃準備の警報が鳴り響き、アナウンスが流れます。

 『出撃二時間前になりました。各搭乗員は機体に乗り込みそれぞれの機体の調整をしてください』

 

 みんな機体を乗せているシャトルに向かいます。

 

 「行ってくる。真由、お前の住む世界を守ってやるぜ!」

 

 白銀君、親指立てて笑って言いました。

 本当はこんな素敵な笑顔、もらう資格なんて私にはありません。

 でもやっぱりもらっちゃいます。

 

 私はウソ吐きですから。

 

 「ちびっ娘。帰ったらまた遊んであげる」

 「が………がんばります!」

 「じゃあね。あ、トリモチ弾ありがとう。すごく役に立ったよ」

 「………………本当はお兄さんのこと、まだ許せないけどあなたのお陰で世界を救えそうよ。だからあなたは胸を張っていいわ」

 「沙霧。そなたに感謝を。そなたの託した世界を救う鍵、見事使い、必ずや世界に光りを!」

 「真由さん、いってきます」

 

 ピタリ 

 純夏さんは私の前で立ち止まりました。

 

 …………気まずいです。純夏さんの中に”毒薬”を入れたのは私ですから。

 何か言われるのかとビクビクしてたら、純夏さん

 

 ニコッと笑ってVサイン。

 

 そうして元気にシャトルに向かって行きました。

 

 

 ―――――ありがとう、純夏さん。いってらっしゃい、みなさん

 

 

 みんなに大きく手を振り、その場に背を向けて搭乗員口を出ました。

 

 すると、

 

 

 ―――――ポタッ

 

 

 いきなり鼻から血が出ました。そしてそれは止まらず、私の手と床を赤く染めました。

 

(これは……………脳からの血ですね。やっぱりウソ吐きは幸せになれませんか)

 

 私はその場で気が遠くなりました。

 

 

 

 

―――――4月1日 桜花作戦、始動

 

 

 

 

 




 石仮面に真由の血がかかった!
 何がおこる!?


 ………何もおきません。別の話になっちゃいますから
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