アンリミテッドは無理ゲーすぎる!   作:空也真朋

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第七話 みそっかす白銀

 訓練場で白銀君がしごかれています。オルタの世界でスーパーソルジャーな彼もアンリミのこの世界ではみそっかすです。あ、また抜かれた。

 とある部屋の窓際で、こうやって白銀君を観察してるのは『みそっかすな白銀君も可愛い!』などとみだらな想いにふけっているからではありませんよ。これは冷徹な観察です。

 誰です?そんな人をメスブタ呼ばわりするも同然の下劣な邪推をしている愚か物は!ハレンチな!ドブ臭いゲス人間め!恥を知れ!

 

 私だよぉ!!!!

 

 本当にそうなのになぜ自分で自分をディスっているんでしょう?

 確かに彼は死んでも死にもどりができる因果導体体質です。でも私がゴット純夏から出された課題的にそれをさせるワケにはいきません。この先もう少し強くなったとしても生き残れないことは確実でしょう。BETA全滅計画以外に白銀君強化計画も考えねばなりませんね。

 そのためにももっとよく観察せねば!

 

 スパーン!

 

 夕呼さんに丸めた本で叩かれました。頭はやめてください。

 

 「いつまでも白銀をデレデレ見てないの。診察は終わったんだから速く行きなさい」

 

 「なにおかしな邪推してんですか!私は戦えない自分に代わり、戦地へ赴かんと訓練に励む未来の衛士達へ感謝を一杯に捧げてるんです!

 乙女が謳う気高き衛士達への讃歌をゲスに貶めるとは!まったくとんだ変態博士だ!」

 

 夕呼さん、呆気にとられた様に私を見て言いました。

 

 「確かにあたしは変態博士だけどあんたのムッツリもすごいわね。こんな絵に描いたようなムッツリスケベってはじめて見たわ」

 

 

 

 

 

 

  こんにちは 沙霧真由です。

 変態博士にムッツリなどというひどい中傷を受けてもめげずにがんばっています。

 夕呼さんの定期検診を受けた後、講義を聴いたり課題をやったりして時間を潰していると、いつの間にか夕食の時間になったのでPXへ行きます。ちょうど二〇七訓練兵の皆さんもいたのでごいっしょさせていただきます。

 

 「皆さんお疲れさまです。白銀君も大分ついて行けるようになりましたね」

 

 「どこが!?これじゃ総合戦闘技術評価演習は絶望的よ!」と千鶴さん。

 

 まあ私もウソですけどね。

 

 「ちびっ娘がわかったようなことを言う」

 

 慧さん無表情でもちょっと苛立っているのがわかります。長いつきあいですからね。

 

 「あ、この娘が彩峰さんが昔から仲が良かったっていう技術部見習いの沙霧真由ちゃんだね。ちっちゃくって可愛いなあ」

 

 ありがとうございます鎧衣美琴さん。入院から帰ってきたばっかりなので会うのは初めてですね。

 

 「仲良くない。ボッチでさみしそうな変な娘がいたから遊んであげただけ」

 

 ありゃ、慧さんたら、昔は自分こそ私やお兄ちゃん以外の他人とはロクに話したことなんてなかったクセに。ま、こういう強がりを言う人だってわかっていますから、こう返します。

 

 「またまた慧さん心にもないことを。本当は私のことを愛してるくせに」

 

 「心にいっぱいある。ほら変な娘」

 

 あ、他人にもわかる不機嫌顔になった。ここまでしないと表情でないんですよね、慧さん。

 

 「わあ、本当に仲良いんですね」と壬姫さん。

 

 「彩峰、仲が良いのはいいが変な娘呼ばわりはいかんぞ。親しき仲にも礼儀ありだ」

 

 正論をこんなに堂々と言えるとはすごいですね。冥夜さん。

 

 「ああもう!この娘のことより総戦技評価演習でしょう!夏に落ちて後がないのよ!どうすんの!?」

 

 あ、千鶴さんキレた。沸点低いなあ。

 すると、隅で小さくなって黙り込んでいた白銀君がいきなり叫びました。

 

 「お、オレがお荷物なのはわかっている!でもやるしかないだろ!」

 

 私、女の子達に体力でボコボコにされても、一欠片の男のプライドを振り絞る白銀君の姿にキュン!となってしまいます。

 可哀想だけど演習は自力でがんばってくださいね。いえ、手助けすることはできるんですよ。

 科学力チートですからね。

 でも原作通りの逆境を乗り越えるのは白銀君を大きく成長させるのに絶対必要なんです。

 

 皆さんが夏の総戦技評価演習の失敗だの白銀君のみそっかすぶりの批判だのやり合っている中、私はある計画を練り上げます。考えが一段落して回りを見まわすと、ありゃ、皆さん気まずくなってみんな黙り込んでいます。

 私、白銀君に話しかけます。

 

 「白銀君、総戦技評価演習がんばって下さいね。私も『白銀君強化計画』がんばります!」

 

 と、女の子っぽく激励。

 

 「は?オレ強化計画?なんだそりゃ?」

 

 「科学の力で白銀君を世界最強のスーパー衛士へと変える計画です。この計画が成った暁にはアメリカ最強部隊の衛士すら白銀君の足下でしょう!」

 

 皆さん目をぱちくりさせて感動しています。

 

 「ほら、変な娘」

 

 「ちょっと、変な薬とかやめてよね」

 

 「えーと……笑うところかな?」

 

 「ゆ……夢があっていいですね!」

 

 「う……うむ! 武なら鍛錬を怠らず日々過ごさば、必ずや世界最強となろう」

 

 「あー真由? 今のオレに世界最強とか恥ずかしすぎるぞ?」

 

 などなど絶賛の嵐の中、私はごはんを食べてこれからの鋭気を養いました。

 

 

 

 

 

 




 ついに横浜基地で動き出した沙霧真由!彼女の企む恐るべき計画とは……?

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