私立希望ヶ峰学園において、予備学科から本科へ上がれる制度とは有って無いようなものであり、非常に稀なことである。
というか、ここまでの歴史上で1名しかいないという事実がある以上、稀もクソもないだろう。
その生徒の名は、日向創
『超高校級の相談窓口』として才能を認められ、七海千秋率いるクラスに配属されてからはやくも1ヶ月が過ぎ、クラスメイトとも完全に打ち解けることができていた。
そんな、ある日のことである。
──やけに目覚めがいい。
本来朝は苦手なはずなのに、なぜかこの日だけは頭が冴えていた。
起き上がり、まず目に入ったのは電源をつけた覚えがないのに光を放っている電子手帳
寝ぼけてつけたのかと思いつつ、さり気なく画面を覗き込み...
日向創は絶句した
左右田の次に上手いとクラス内で噂にされているツッコミスキルも発揮すること無く、現実が信じられないかのようにまばたきを何度も繰り返した。
そして、気がつくとその下に羅列してある文字を呪文のように口に出していた。
『全生徒の中から被験者第一号に日向創を選出。個人のデータベースや、数日の研究者達による監視に基づき、一定期間才能の改変を行う。なお、これは本人の本質を抽出した結果であるため、クレームその他は一切受け付けない』
訳が分からなかった。
完全に絶望的な状況だった。『一定期間』というのはどれくらいの長さかを明示されていないことがますます不安を重くさせていた。
日向「これが...俺の本質?皆にばれたら軽蔑される気しかしない...なんとかバレないようにしないと...」
『超高校級の相談窓口』と書いてあるはずのその場所に書いてあったのは
『超高校級のナナミスキー』
...なんじゃこりゃ
──朝食は共通の食堂でとっている
普段大抵早く顔を出す日向が最後というのは明らかに不自然であり、若干の不安さが顔ににじみ出ていたようで、
小泉「大丈夫?何か顔色悪いけど」
西園寺「日向おにぃなんかいつにも増してもぶいねーきゃはは」
罪木「お注射ですか?お注射ですか?うふふ」
七海「疲れてる?」
と、たくさん心配?をされてしまった
この1ヶ月で多少なりとも信頼関係が築けた証なのだろうが、今はそれどころではない。
七海の顔なんて見れたもんじゃなかった。
なんとかその場をあしらって朝食は乗り切った
...のだが
──HRで事は起こった。
我がクラスの担任である巨乳女は元気に、そりゃあもう快活に言い放った
雪染「皆さんに大事なお知らせがあります」
ソニア「まあ、なんでしょう」
田中「はっはっはっ!心して聞こうではないか!」
雪染「本日から一定期間、日向くんの能力が『超高校級のナナミスキー』に変更されました!」
俺は、世界が止まる音を聞いた
左右田「えっと、ネタかなんかっすか?」
左右田のナイスフォロー?により回復の兆しが見えそうになるが
雪染「いいえ!これは生徒の本質を徹底分析した結果らしいから、マジよマジ!」
『超高校級のKY』との呼び声高いちさ先生のより撃墜
小泉「その『ナナミ』って...『七海千秋』ちゃんのことなんです...か?」
雪染「さあね〜☆本人ならよく知ってるんじゃなーい?」
どういう意図があるのかは分からないが、逃げ道を一つ一つ潰していくちさ先生はいまの俺にとってただの鬼にしか見えなかった。
七海「...」
珍しくはっきり目が覚めている七海は無言。
完全に軽蔑されただろうなと思いつつ刑事裁判の被告人のような気持ちでなんとか弁解をひねり出した。
日向「いやその...好きと言ってもいろいろあるだろ?カレーが好きだとかハンバーグが好きだとか」
狛枝「日向くん。まだ七海さんだと断定しきれていない場でそんな言い訳を始めるだなんてそれはもう自供のようなものなんじゃないかな」
白髪ワカメの言う通りだった。ねっとりボイスで正論を聞かされるのはなんとも耐え難かったが、今はそれどころではない。なんとか反論しなくては...!
日向「仮に...そう仮にだ。俺が七海のことを好きだとしようか。」
澪田「いやーバレバレだったっす!仮にするまでもないっす!」
左右田「いやぁ超高校級に好きだったとは」
日向「好きだったと仮定してもだ。別にその先に何を望んでるわけでもない。ずっと一緒にいたいってだけなんだ。」
罪木「も、もはや仮定にした意味ないですぅぅ」
西園寺「うーわ。よくそんな恥ずいセリフ真顔で言えるよねー。こっちが恥ずいよー日向おにぃ」
もうやけくそだった。周りから色々言われるが、ここで何より大事なのは七海の反応だろう。おれは顔が熱くなるのを感じながらも七海の方をちらりと見ると...
ボンッ!
...そんな効果音が聞こえそうなほど顔を真っ赤にしながらもかろうじて立っていた。
少なくとも嫌悪感を抱かれてはいないようだと安心したが、もはやこれは半ばセクハラのようなものだ。どう声をかけていいかわからなかった。
さっきから心臓が非常に活発に活動していて、思考という人間の機能の一部は完全に停止していた。
いつの間にか周りは静かになっており、七海に何かを期待するみんなの視線に耐えられなくなったのか、おそるおそる七海が口を開いた。
七海「...ねぇ。日向くん。」
日向「な、なんだ?七海」
七海「私ね、恋とか愛とかよくわかんないけど...私も日向くんとずっと一緒に過ごしてたい...って思うよ?」
日向「あ、ああ」
七海「こういう時ってどうすればいいのかな?告白ってやつをすればいいのかな?」
日向「いや、ここは俺からさせてくれ。」
七海「わかった。」
日向「七海。いや、千秋。あなたの事が超高校級に好きです。僕と付き合ってくれませんか?」
七海「OK...だと思うよ?」
日向「そこは言い切ってくれよ...」ハハッ
七海「言い切るのは結婚式までとっておこうと思って...だめかな?」
日向「い、いいんじゃないか」
七海「よかった。これで日向くんとずっと一緒だね。凄く嬉しい」
九頭竜「これは...なんとも...」
狛枝「二人の希望が今まさに一つになってるんだね!!こんな場面に立ち会えるなんて僕はなんて幸運なんだろう!」
弐大「がっはっはっ!情熱的じゃのう!」
豚神「そうと決まれば早速パーティーを開いてやろう。」
小泉「この場合、カップル誕生パーティー?それとも、婚約パーティー?」
左右田「婚約...でいいんじゃね?確定しちゃってるようだし」
ガヤガヤガヤガヤ
その後も冷やかしやパーティーについてなどで散々盛り上がり、教室は大賑わいだった。
一時はどうなるかと思ったが、結果的には能力のお陰で七海と付き合えることになった。もしかしてこれが学園の狙いだったりするのか?だったらありがたい話だ。
雪染「そうだ日向くん!その能力、全校集会で発表されるらしいわよ!よかったわね!」
前言撤回。学園に強要された鬼畜羞恥プレイだったようだ。
心の中でそのうち報復してやろうと決意した日向であった。
──学園長室
仁「どうやら成功したようだね。」
雪染「ええ!もう大成功ですよ!超高校級カップル誕生です!」
仁「お節介かもしれないが、このプロジェクトを進行させていこう。サポートを頼む。」
雪染「任せてください!」
今回行われるこのプロジェクトの名は...
『超高校級カップル育成及びあわよくば結婚まで後押ししちゃおうぜプロジェクト』
誰が思いついたのか不明だが、はた迷惑なプロジェクトだ。
これから先も、生徒達にそのプロジェクトが施行されていく予定らしい。
次のターゲットは...
『78期生の誰か』に決定