♚IS学園の大魔王   作:くぼさちや

21 / 33
頑張ってますよ?
ちゃんと書いてますよ?
しかし書き始めた当初の勢いはどこへやら(笑)
そんなこんなで第20話です!
ど~ぞ~


20話 「悩めるあの娘はシャイガール」

「そうか、あの大和望一郎がな」

 

 ディスプレイ越しに、職員室で報告を受けた千冬は腕を組み、椅子の背もたれに背を預けた。

 その後も楯無の報告は淡々と続く。

 

「はい。私自身が肉眼で確認しました。付近の防犯カメラの映像も照合した結果、適合率61%で大和望一郎本人であると思われます」

 

「映像はこちらでも見た。ほぼやつとみて間違いない。」

 

 別モニターに映したカメラの映像を横目でチラリと見る。

 望一郎の顔が確認できるタイミングで停止されたそれは、すでにデジタル処理が施されている。

 解像度の問題で本人と断定するには十分と言えない不鮮明なものではあったが、千冬はこれに確かな確信があった。

 イギリスの第四世代である《サイレントゼフィルス》はもちろん、国家が所有するISは基本搭乗者の手にあるか、量産型IS複数機による警備のもと、厳重に保管されている。

 事実、《サイレントゼフィルス》の保管庫には相当数の《ラファールリヴァイブ》が配備されていた。

 それらISを強奪するには警備を破るだけの武力はもちろん、当然のことながら防衛施設に関する詳細な情報が必要であり、連中はそれを持っていた。

 そして学生とはいえ専用機持ち数名でやっと破壊できるだけの高い性能を持った無人機を所有。となれば、亡国機業に強力な後ろ盾があったことは楽に想像できる。

 

「こちらも襲撃者について、いつか成果がある。解析班からの報告によると、やはり、無人機に搭載されていたコアは以前のクラス別トーナメントと同様、未確認のコアだった。」

 

「となると、やはりこれらの襲撃には束博士も関与しているのでしょうか?」

 

「いや、違うな」

 

 千冬は否定で返すと、手元の資料を見た。今回の襲撃で用いられた無人機に関するデータだ。

 ISのコアとは物理的な衝撃では破壊できない。

 今回の件では、大破したゴーレムのコアこそ無事だったものの、ゴーレムⅢは簪によってコアごと胴体を真っ二つに断たれていた。

 

(あれは束によるものではない。コアの複製は今やどの国も実験を繰り返している。そのいずれかの国かと検討をつけていたが、望一郎が絡んでくるとなれば、話は変わる)

 

「織斑先生?」

 

 楯無の言葉にようやく千冬はディスプレイに視線を戻す。

 

「なんにせよだ。大和望一郎が関わっているともなれば、こちらとしても連中の認識を改めざるを得ない。なにせあれだけの無人機を退却のために切り捨てていくくらいだ」

 

「連中にとって、オリジナルのコアを用いない無人機はそれほど価値のないものなのか、それともあれくらいのものはまたいくらでも作り出せるということなのか......」

 

 千冬はシワの寄った目頭を揉み、ため息をつく。

 

「頭の痛い話だな。いずれにしても今回の襲撃で奴らの挙げた成果はない。しばらくは問題なかろうが、次は今回以上の戦力を投入して《白式》を獲りにくるぞ」

 

「一夏くんはどうします? もともとこうした標的から身を守る実力をつけさせるために、先生はわたしを阿九斗くんの特訓につけたわけですが、亡国機業の狙いが一夏くんだとわかったとなれば......」

 

「その心配はいらん。お前はそのまま紗伊の実力強化にあたってくれ。こんな状況だ。生徒のひいきなどとは言ってられん。織斑は私が鍛え直す」

 

「わかりました。では、こちらからの報告は以上です」

 

 ディスプレイから光が消え、やつれ気味の千冬の姿が暗くなった画面にうっすらと見える。

 ここ連日の疲労を吐き出すように大きく息を吐く。

 

「やつとは5年ぶりか。粗製品でよくもやってくれる。再会したあかつきには刀を交えることになりそうだが、さて」

 

 そう呟く千冬はどこか遠くを見るようにして目を細めた。

 

 

 

 

 

 それはクロエが阿久斗の部屋へやって来た日と同日。

 機材のケーブルをいくつも接続した《黒鉄》を前に、簪は一人、ポツリと呟いた。

 

「コアのリンクが、安定してる」

 

 先日の学園祭襲撃の際、阿久斗のマナによって変質を遂げた専用機。それは簪が解決できずにいたあらゆる問題点を克服し、大幅な仕様変更を加えられた形で目の前に鎮座している。

 

「特殊武装はフルマニュアルミサイル。メイン武装にプラズマ砲とコイルガンが二門ずつと、近接装備の高周波振動薙刀と脚部ブレード......」

 

 もはや簪の知る機体ではなかった。

 解析結果を別の機材に入力し、複数のチャートに基本性能をまとめたところで、簪はひとつの違和感を覚えた。

 

「おかしい。機体の性能、こんなに低くはないと思う」

 

 こうしてデータ上の数値を見ると、第三世代のISの性能として過もなく不足もない。しかし、実際にこれを用いて戦った簪の感覚では、第三世代機のなかでもかなり高い部類だと想定していた。

 

(やっぱり、これは阿久斗のマナによって機体の性能が底上げされているってこと? となると、ゴーレムとの戦闘記録を照合して、どれだけデータに誤差があるのか確認しないと......)

 

 それからコンソールを操作し、調べられるものを一通り調べ終えると、簪は椅子の背もたれに身を預けた。

 ダメ元ではあったものの、いくら解析を進めても《黒鉄》からマナなるものの存在を確認することはできなかった。

 そっと息を吐き、真後ろを逆さまに見るようにして背もたれから首を垂らす。

 

「もっと実戦データが欲しい......」

 

 ゴーレムとの一戦だけではやはり情報が足りない。

 頼める相手となると、真っ先に思い付いたのが阿久斗だった。しかし、学園祭での負傷を考えると傷が完治しているとはいえ、しばらくは安静にさせたい。

 ともなれば、頼みやすいと言う意味において大差なく、それでいておおよそ親しいとまでは至っていない選択肢ばかりが残るのだから、簪は自分のコミュニティの狭さにため息が出た。

 

「頼めるとしたら一年の専用機持ちか、あとはお姉ちゃん......だけど」

 

 簪はその中で姉に頼る選択肢を真っ先に除外した。身内とはいえ、関係にしこりを残した現状では頼りづらく、それこそ、姉の後追いばかりしている自分への嫌悪がそれを拒ませた。

 しかしなんにせよ、取れる手段は多くはない。

 

 翌朝、簪は1組の教室の前に立っていた。

 他の教室とは違い、このクラスには一夏や箒などを初め、多くの専用機持ちが所属している。

 

(まだそんなに話したことはないけど、この前の学園祭のこともあるし、不自然には思われないはず)

 

 簪は1組の教室の戸に手をかけた。

 

「......と思いたい」

 

 教室の戸に手をかけたまま動くことができない。

 はたして皆は他クラスである自分の話しを聞いてくれるのだろうか。話しを聞いてくれたとして、『そんな交流なかったのに、いきなり馴れ馴れしいな』などとは思われないか、そもそも自分のことを覚えているのか。

 そんな不要とも言える懸念がグルグルと脳裏を巡り、渦巻く思考によって簪は完全に行動を止めた。

 

「......ううぅ」

 

 早い話が、臆病風に吹かれたのである。

 

 

 

 

 

 

 その日の夜、簪はベッドに身を投げた。

 

「アニメでも見よう...」

 

 自室で一人、力なくそう呟いてはみたが、ベットに突っ伏したまま一向に動く気配がない。

 この疲労は体力とは違う、気力の問題だった。

 今朝はクラスにいきなり押しかけるような真似は避け、途中からは専用機持ちが単独でいるタイミングを見て話しをしてみるつもりだった。

 しかし、一夏を中心に代表候補生が輪を作り、一組のクラスメイトでさえ近づきがたい雰囲気で一夏を取り合い始めてしまえば、もはや簪の付け入る隙はなかった。

 ならばと、放課後に寮の部屋に訪問しようと意気盛んでみれば、まだほとんど話したことのない各人の扉を前にして、結局は怖気づいて帰ってきた。

 

(やだな、わたしってこんなに臆病だったんだ...)

 

 情けなさが熟成して、半ば憂鬱になり始めたとき、不意に扉をノックする音が聞こえた。

 

 コンコンコン

 

(......誰?)

 

 消灯時間までいくらか余裕があるとはいえ、この時間に人が訪ねて来るのは珍しい。

 心当たりもなくドアを開けると、予想外の来客に簪は一瞬身構えた。

 

「よう、簪さん。阿久斗いるか? この前借りてたノート返すのすっかり忘れててさ」

 

 ノートを片手に、一夏は屈託のない笑顔でそう言った。

 阿九斗が同室だった頃は、ときどきちょっとした用事で一夏が来ることはあったものの、阿九斗と玄関先で話して帰っていくのがほとんどだ。

 簪もそうしたときには顔を合わせることはなく、こうして応対に出たのも初めてのことだった。

 

「もう部屋が変わって、ここにはいない。部屋番号なら117号室だから」

 

 どうやら部屋替えについてはなにも知らなかったらしい。

 驚いた様子で頭を掻いて、来たときと同じく簪に笑いかけた。

 

「いつの間に俺たちと同じフロアになってたのか。じゃあ今からでも行ってみるよ。ありがとな」

 

 軽くお礼を言って立ち去る一夏。その袖を咄嗟に、簪は掴んだ

 

「待って織斑くん。今度よかったら《黒鉄》の戦闘データの収拾を手伝って欲しい...かな」

 

 ふと出た言葉に簪自身も驚いた。

 何を隠そう今日一日、一組の専用機持ちに頼もうと奔走するなかで、意図的に一夏を避けていたのだから。

 そもそも、簪の《打鉄弐式》が未完成であったのは、開発元である倉持技研が一夏の《白式》の製作を優先した結果であった。

 本人に非があるわけではないことは分かっていながらも、一夏に対する憎悪を拭えず、つい威圧的な態度を取ってしまったこともある。

 それが経緯はともあれ、専用機が想像以上の形で完成したことや、学園祭での共闘が簪に心境の変化をもたらしたのかもしれない。 

 今はそれほど、一夏に対して嫌悪感を抱いていなかった。

 そして翌日、織斑一夏の快諾のもと、データ収拾を目的とした模擬戦が行われることとなった。

 

「よし、それじゃあ始めるか。いつでもいいぜ!」

 

 一夏は雪平弐型を展開し、正面に構えた。

 同時に簪も近接武装であるブレードチェーンソーを展開する。

 

「よろしく......お願いします」

 

 構えた薙刀の黒い刃が、午後の西日を受けて妖しく光った。

 




皆さまの評価、感想などお待ちしています!
これがホントに励みになるんです(笑)
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。