Fate~友達が戦争に行ってぼっちの君へ~   作:えだまめ。

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なろうで連載だった小説です。


プロローグ、1

 ある日、友達が姿を消した。

 それは本当に突然の事で、此処でたった一人の友人、ウェイバー・ベルベットは時計塔を去ったのだ。

 

 遡ること二年、それは、ウェイバーが此処に来る前の事。

 

 そのころ、俺はいわゆる「ぼっち」だった。

 

 魔術師は基本的に自らの腹の内を見せるようなことはしない。

 魔術師は進んで痛みを分かち合うような友を作るようなことはしない。

 魔術師は秘匿を一番とし、他者をいかに出し抜くかという事しか考えていない。

 

 それでも、魔術師は群れる。

 

 矛盾するようだが、友とは違う。

 これは他の魔術師達から研究成果を盗めないか、みたいな下心、欲ムンムンの集まりなのだ。

 

 

 だが、その集まりにも一応基準みたいなのがある。

 相手の研究成果について知るならば、当然自分と同格、または、自分よりも格上の持つ研究結果を盗み出せた方が成果は大きい。

 例外はあるかもしれないが、やはり、確率でいうならこの例の方が多いだろう。

 何故か時計塔にいて、血統は何代続いているのかもさえ分からないような三下なぞ相手になどされない。

 

 そう───つまりそれが、今の俺の置かれた状況だ……。

 

 でも、俺は諦めなかった。

 俺は他の魔術師連中とは違う。自分から望んで一人でいるような事は頼まれたってやらない。

 

 何とか今の状況を変えられないか、と考えた挙句、ついに俺は結論に至った。

 今でも思い出せる。あの時の感動は、筆舌に尽くし難いほどに思えた。

 

 「話しかけられたら惜しまずに情報の開示を」

 

 それが、俺の切り札。最終兵器にして最後の砦。

 同年代と思しき魔術師達と、もっと積極的に関係を持とうと思ったのだ。

 

 俺が話しかられる事は少ない。それでも皆無じゃない。

 そしてそのチャンスを逃さないためにも、俺は今まで怠ってきた研究に励んだ。

 

 ひとえに、友を作るために……!

 

 話しかけられてなにも開示する情報が無くては本末転倒。

 このときの俺は、基礎魔術を始め、工房だけでならそれなりの魔術師として起用していた。

 

 そして、その時俺は確信する。

 

 いける、と……!

 

 

 

 

 

 俺は…なかなかに…甘かったようだな………

 

 本当に驚いた。

 今の俺は限定的ではあるものの、本当に魔術師だったのに……。

 

 たまたま話しかけてきたオルセッロ君と短い会話をした後、研究成果の事を仄めかしてみたのだ。

 この時の俺は達成感に満ちていた。当然食いついてくるだろうと高をくくっていた。

 

 確かに食いついてきた。だが、それは自分の予想しない方向に。

 

 その時の会話を再現するならこんな感じだったか───

 

 

 「おい、お前どこでそんな研究成果を掠め取ったんだよ……」

 

 「どこって、俺が研究して辿りついた答えの一端だっつの」

 

 「嘘をつくな!! お前がどうしようもない落ちこぼれだって事くらい誰だって知ってるんだよ!!」

 

 「え、えぇ?」

 

 「どうやったかは知らないが…くそっ、こんな三下に研究成果を盗む力があったなんて……」

 

 「い、いやだからこれは──」

 

 「気持ちの悪い!そうやって俺のも盗もうとしていたんだろう!!」

 

 

 

 今までろくに研究を進めない惰性が祟ったのか、オルセッロ君の理解への姿勢のなさか、俺の計画は早一日で終結した。

 

 この時にオルセッロ君の怒声を聞いていた魔術師は少なくなく、瞬く間に俺の評判が広がった。

 他の魔術師達はかげでこそこそしているから問題は無くても、俺の場合は仮定がどうあれ研究成果を盗んだ悪者扱い。

 

 以前に増して他の子達からの視線は冷たくなり、反応は良くなるどころか最悪だ。

 俺に話かける奴は一人もいなくなったし、俺の話を聞く奴もいなくなった。

 

 

 そうこうしている内に、無視されるのが気にならなくなった。

 あのころの俺の目は、完全に死んでいたと思う。本当に生きるだけの毎日だった。

 

 かつて、つまらない自分の作戦を始動させる前の、自分への罵声までもが恋しくなった時だった。

 

 ウェイバー・ベルベットの入学。

 

 まだその時はなにも思わなかった。

 こいつも、他の魔術師と同じく俺を居ないものとして扱うのだろうと思っていた。

 

 

 彼に対する周りの魔術師の反応は最初こそ好意的だったが、しだいに辛辣なものになっていった。

 それもそのはず、彼の家の血統はまだ三代しか続いておらず、魔術刻印もお粗末、回路の数も少ない。

 ウェイバーとの関係が疎遠になるのも頷ける。

 

 そんな実力でどうやって時計塔に入れたのかは疑問だが、どんどん表情の曇っていくウェイバーに対し、俺の表情はどんどん明るくなっていく。

 

 自分と同じ、落ちこぼれの登場に。

 

 自分だって気づいていた。

 もう彼らと関係復帰は無理だって。

 それでも、自分に嘘をついて真実に気付かないようにしてた。

 

 気づけば早い。

 今の俺には、ウェイバーしかいない。このぼっち人生に終止符を打つのはウェイバー以外の何者でもないのだ!!

 

 手始めにおしゃべりからいこうじゃないか。

 前情報の少ないウェイバーになら、忌避されずに会話が進むはず。

 

 と思っていたら何か散々言われて結構傷ついた。

 

 しかしめげない!!

 

 今まで無視し続けられてきた俺にとって、それはご褒美だぜウェイバー!

 

 どんな言葉にも屈さず、時折、挫折しそうになる心を奮い立たせること約一週間。

 俺の絶え間ない努力の賜物か、ついに、時計塔で初めての友達を手に入れた!

 

 

 

 

 

 友達になって分かったが、こいつ、自分が落ちこぼれだと思ってないらしい。

 すんごい前向きな心の持ち主なわけじゃなく、本当に自分が天才だと信じて疑っていないのだ。

 しかも、それに加えてプライドもやけに高い。

 

 その彼の欠点を指摘し、面倒くさい性格を直してあげたいのもやまやまだが、前言した通りウェイバーはプライドが高い。もしかしたら選択肢を間違えるかもしれない危険な事はしたくない。

 もしウェイバーを失えば、俺はまた、あのぼっちライフに逆戻りだ。そんな目も当てられないような事を御免こうむる。

 

 と、いうわけで。

 

 ごめんねウェイバー、俺は君の今後の心配をすることしかできないんだ!

 

 

 しかし、そんな彼とも仲良くしていると良い所も分かってくるものだ。

 とりあえず優しい。

 プライドが高いのはさて置いて、他の魔術師連中は俺を見下し突き放し、自分の利益を最優先したのに、ウェイバーはなんだかんだで俺を友達という役につかせてくれた。そこには彼自信の利益も絡んでいたのかもしれないが、奴らとは比べるのもあほらしいほどだ。

 

 ……違うか、他の魔術師が人として死んでるのか……

 

 ついでに言うならば、罵声だったり嫌味だったりは照れ隠しだったりする。

 そこは喜ぶだろう、という所で文句を言ってきたことから、それは事実だ。

 

 うん、事実だ。あれは照れ隠しであって、本当に怒ってるわけじゃないから、ウェイバーがマゾとかじゃないから……ないから!

 

 

 

 

 友達になって日も経ち、お互い、胸を張って親友だと言えるようになって、他愛もない話をしたり、魔術について語らいあったりもした。

 

 そんな時なのである。我らが誇る時計塔の天才、ロード・エルメロイこと、ケイネス先生の講義の時だ。 

 先生が講義を始める前に、生徒によって書かれたという魔術の論文を発表した。

 誰がそんなの書いたんだ、などと思ったのも一瞬、そういえば我が友が、

 

「構想三年、執筆一年にわたる会心の出来さ!」

 

 と自慢気にいっていた。

 しかも、あのケイネス先生に提出までするといったので止めようとしたのを覚えている。

 ……てか、やっぱり提出したのかよ。

 アレに関しては完成報告しか受けておらず、内容は全く知らない。ノータッチだ。

 

 ウェイバーの方を見ると、

 

 すごく、にやにやしてるにやにやしてました。

 

 

 友の顔の事はさておき、さて、今から発表か、と内心ドキドキしながら待っていると、唐突にケイネス先生は論文を破り捨てた。

 しっかりとウェイバーの名も出して。

 

 アイツ、一体なにしてやがんだ……!!

 

 普段、適当に暮らしている自分とは思えないほど、正当な事で怒りを抱いた。

 今すぐ声を荒げて止めに行こうかと思った時、先にウェイバーが教室をでていってしまった。

 追いかけようかと思ったが、タイミングを逃したみたいで、教室のみんなはひとしきり笑ったあと何事も無かったかのように、講義を続けた。

 

 ウェイバー、ゴメン。こんな俺をゆるしてくれ。

 

 

 

 

 一度寝たら昨日の怒りも収まり、幾分かは冷静にモノを考えられるようになった。

 

 そしてもう一つ、ウェイバーが時計塔からいなくなった。

 付け加えて、ケイネス先生の荷物とやらも同時に無くなったらしい。

 

 おそらく、昨日公開処刑をくらったこのが理由だろうが、友人の俺に何もいわず出ていくのはいかがなものか。

 

 アレか、追いかけなかったのが悪かったのか?……心の狭いやつだな。

 

 しかし、そのことに関して、皆が何事もなかったの如くいつも通りのままの中、ケイネス先生は見るからに苛立っていた。

 確かに荷物が無くなったのだ。理解できない事も無い。

 そしておそらく、先生はウェイバーが荷物を盗んだと思っているらしい。

 そしてまた、俺もそう思っているのは、友人失格なのだろうか。

 

 いったいどんな理由で先生の荷物をパクろうなんて思ったのか、昨日の恨みか、はたまた、そうでないなにかか。

 

 とりあえず、事を聞いた俺は今日一日、講義を受けるのを辞めた。

 正直、友人の居ない中でこれ以上ここにいるのは嫌だ。もともと、なんでここに居るのかさえ曖昧なのでいや、ホントどうでもいいんだわ。

 出て行ったウェイバーを追いかけて、それから適当に旅でもしていけたら、それで充分じゃないか。

 

 だが、ウェイバーがどこへ行ったかなんて全然想像つかない。

 少なくともアイツはイギリスに居続ける者だと思っていたし、海外へ行く金があるとも思ってもみなかった。

 

 盗んだ荷物が何か関係しているのか……?

 

 そう思考した俺は、古臭い電球ピカーン!を思い出させた。

 

 そうだ、そうだった。

 そういえば、近々ロードが極東で行われる魔術の競い合いに出るとかなんとか噂を聞いた覚えがある。

 先生の荷物とやらも、これに関係すること……なんだろうな、きっと。

 

 ついに思い浮かんだ手がかりに若干興奮しながらも、その先について考える。

 

 いや、とりあえず、こういったことは図書館に行けば何か分かるかもしれないか。

 

 

 

 

 「おーおー、すっからかん、すっからかん。誰もいねー。」

 

 

 さっそく、図書館にいったが、やはり誰もいなかった。当然だ。

 本来なら今は講義を受けいている時間なのだ。誰もいるはずはない。

 いや、まず、いたら駄目だな。俺みたいなサボりでもしてい……るのだろうか。

 まぁ、監視役みたいなおばちゃんなら居るけど……。…………もっと若いのはいないのか。

 

 思考がズレかけていたのを修正し、本題に戻る。

 図書館───というのは俺の勝手な言い方である。実は、もっと長ったらしい名前があるのだが頭で考えるのも面倒なのでつかわない。───には、およそこの世界にあるであろうほとんどの魔術関連の書物を保管している場所だ。

 そんなワケで、前を見れば、見上げるような本棚が今の視界の中だけでもぎっしりと映る。視点を変えればまだまだあるし。

 この中から特定のモノを探し当てるなんて考えるだけでも頭が痛くなる。夜通し探しても見つかりそうにない。なんか嫌だなあ、と十分くらい意味もなく歩いた後、覚悟を決めて本格的に探し始めた。

 

 しかし、最初の俺の考えを裏切って、極東で(以下略に関する書物は、(本を見るために)置いてある数十とある(照明つき)机の内の一つの端にまとめて置いてあった。

 やる気はなかったが、覚悟を決めてやり始めたので肩すかしをくらったような感じだ。

 

 てかこれしたのウェイバーじゃね?アイツも探したのか……。がんばったな……。

 

 ウェイバーにねぎらいの想いを抱きながら、書物に目を通す。

 正直、俺は競い合いといっても本当にただの競い合いだと思っていた。だが、しかし、そこには俺の考えがいかに甘かったか、といわんばかりのことが書いてあった。

 

 

 『聖杯戦争』

 

 

 魔術師同士の殺し合い。日本の冬木という町で、七人の魔術師達が聖遺物とよばれる触媒を用いて、英霊───サーヴァントを召喚する。

 魔術師達はマスターとして、字の通り、命をかけて最後の一人になるまでサバイバルを続ける。

 そして、最後の一人には、何でも願いが叶えられる……。

 

 他にも色々、細かいコトも書いてあったが、重要な内容はこんなところか。

 知りたいことは分かったので、もう、残っている本は必要なさそうだ。

 ウェイバーがどんな経緯で、先生から聖遺物をパクったのかは分からないが、アイツの事だ。きっと、先生に成り代わって聖杯戦争に参加するつもりだろうな。て、ことは、もう日本についてる頃なのか。

 

 ……大丈夫なのだろうか?プライドは高いし、そのことを認めやしないが、アイツは簡単な魔術ですら失敗するような、三下も三下な残念魔術師なんだぞ?

 下手をしたら召喚さえおぼつかないかもしれない。

 

 少し過剰に考え過ぎかもしれないが、本当に心配だ……。そこまで思って、ふと、気づく。

 

 (昨日のこともそうだが、俺、ずいぶん入れ込んでるなぁ……)

 

 自分から望んでなった友達だが、当初は「ぼっち」から抜け出すために、藁にもすがる思いで友達になった。

 それが、今では、身を案ずるまでになるなんて……。これじゃまるで、本当に友達みたいだ、と思う。

 

 無意識のうちに口角が上がる。

 

 (どうやら、もう無視できそうにない)

 

 そう思いながら、身支度を整える。とりあえずは、あのケイネスに一言、いや、五言ぐらい説教かましていこう。そのあと、さっさと日本に飛ぶか。

 それまで、待ってろよ。ウェイバー君!

 

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