Fate~友達が戦争に行ってぼっちの君へ~   作:えだまめ。

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一話と二話、展開がすごいカクカクしてましたね。見て驚きました。死にたい、とかいったら「死ねばいいのに」のCDを手渡されたり。

今回はただのテンプレ回です。ちなみに、私はこういう話が苦手だったりします。だから嫌いです。


第三話 白の貴婦人とスーツの腐女子

 

 だらだらと山を降り続けて、ついに町に着いたころには、もう1時近くであった。

 仕方がない。安定した足場を探そうにも落ち葉で滑るし、気を抜けば、足を通して腰と内臓にくる衝撃をもらう羽目になる。ゆっくり、ゆっくり歩きながら降りていたらこの時間になっていたのだ。仕方がない。

 

 ついでに、ここに他にマスターがいないとも限らないので───

 

 【護符】ランクE-

 万能。攻撃に使える訳ではないが、だいたいの補助的な効果が見込める。

 

 ───を使って魔術師の匂いを消しておいた。

 

 もう昼過ぎのためか、家族や子供連れの母親によって町は賑わっている。

 町を見て周るにしても、前回の霊脈探しの時に結構見て周ってるんだよな。こんなことになるなら、真面目に霊脈探ししていれば良かった……。

 

 仕様が無いので、とりあえず前回目星をつけていた店に順番に入っていくことにした。

 

 まずは、ヴェルデというショッピングモールに入る。時計塔暮らしで建物の大きさ自体に興味は無いのだが、いや、冬木ハイアットホテルは別な。アレは他に例えようが無い位良かったから。

 とにかく、俺がヴェルデに望んでいるのは大きさじゃなく、その品揃えの多さ。

 時計塔じゃあり得ない規模の店舗の数々。中には定食屋まであったのを俺は目ざとく見つけていたぞ!

 前回は片手間に来ただけだったために全然見て回れなかったが、今回は時間を気にせず見て回るさ! おっ、あんなところにゲームとかいうやつが!

 

 

 

 

 結局、4時間も居てしまった。それなのに、金が気になって何一つ戦利品が無いのが辛い所である。

 時間を使いすぎだろ、なんて事を言う輩が居るかもしれないが、むしろ、欲望に打ち勝って財布の紐を緩めることをしなかった俺を褒めて欲しい。

 まだまだ余る程ある大金を持ってはいるが、どこでまた必要になるか分からない。使うのは今日は2000円まで、とか思っていたら欲しいものは全てそれの上をいったのである。

 

 しかし、ヴェルデにいると時間を忘れて遊んでしまっていたため、飯も食べていなかった。

 と言うわけで、定食屋『まきむすび』に入ることにした。ここは、目星を付けた場所の二つ目である。

 和風の出で立ちと、内装まで俺好みだったので覚えている。同様にちょっと中を覗いただけで飯までは頂いていない。

 

 

 「いらっしゃぁぁいっ!」

 

 「うおっ!」

 

 何気なく、店の暖簾(のれん)をくぐった俺にいきなりの大声。不覚にも驚いてしまった……。

 そういえば、ランサーにも同じような事をされた記憶があるような。

 

 来客に対してとんだあいさつをしてくるもんだと、その相手を見ると年が5、6歳程度であろう少女だった。

 

 「……お手伝いかな?」

 

 「うんっ!!私ねここでばいとしてるんだよっ!!」

 

 少女に恥ずかしい所を見られて、少し顔が赤くなってしまったのが分かる。少し目線を外しながら質問をすると、また大声で答えが返ってきた。どうやら、これがデフォらしい。

 

 「バイト? いや~、お嬢ちゃんはすごいね~」

 

 「すみません、お客さん。あゆきがご迷惑をおかけしたようで……。この子、ここで働きたいって言うから、お客様の少ないこの時間帯だけ店に置いているんです」

 

 バイト? なにそれ? 全然意味が分からないが、適当に褒めていてあげると、奥から少女のお母さんらしき人が出てきた。

 まだ若い。二十後半くらいだろうか。しかもなかなか美人だ。奥さんは優しい笑みを浮かべながら説明をしてくれた。少女はあゆきというらしい。

 

 「あ、いえ。迷惑なんてしてませんから」

 

 「いえ、本当にすみません。どうぞ、こちらです」

 

 ヘコヘコと頭を下げる奥さんを見て、ほんの少しムラッときたがおくびにも出さない。その後丁寧にテーブルまで案内された。

 

 「ご注文はどれになさいますか?」

 

 「ぁ~と、じゃあ、カツ丼ください」

 

 「かしこまりました。カツ丼一つ!」

 

 『まきむすび』とかいう名前のくせにお握りよりその他の方が多いメニューを見て、軽く思案してから注文を告げる。

 それを聞いた奥さんが会釈をしてから注文を厨房に届くように伝えて、奥へと下がっていった。

 俺がカツ丼を選んだのは価格が800円と安いからである。2000円までが許された懐にとって800円など安い安い。それに、前々から食べたいと思っていた。正確には一昨日から。

 

 厨房があるであろう奥からは飯の良い匂いと、トントンと小気味の良い音が鳴っている。あれはなんだろうか。

 

 「ねぇ、お兄ちゃんっ!!」

 

 「うっ」

 

 気づくと隣にあゆきの姿。声をかけられるまで全然気づかなかった。またしても少女相手に失態を見せてしまった。

 

 「……何だい?」

 

 驚きで高鳴る心臓を抑えながら少女に問いかける。

 

 「お兄ちゃんはさっ!! どこから来たの?? ここらへんに住んでる人じゃないでしょ!! 私みたことないもん!!」

 

 やはり大声であゆきが答える。どうやら、少女には俺がここに来たばかりだと言う事を見破られていたらしい。

 

 「イギリスからね」

 

 「イギリス?? どこそこ??」

 

 おお、知らないか。当然だな、まだ5、6歳くらいだし。

 

 「ここより遠くにあるんだぞ。そこにはな、怖~い魔法使いがわんさかいてな」

 

 「魔法使い!? それホント!?」

 

 メルヘンな事に反応するか。でも、『怖い』には反応しないんだな。

 そんな会話をしていたら、丁度奥からお盆を持った奥さんが出てきた。

 

 「こら、あゆき。またお客さんに迷惑かけて」

 

 「えぇ~、迷惑じゃないってお兄ちゃん言ってたよ??」

 

 「もう、そういう事じゃないでしょ。本当にすみません」

 

 「いえいえ、可愛らしいお子さんですね」

 

 そう答えた俺だが、もうお盆の上のカツ丼に釘付けになっている。朝、昼と食べていなかったのだ。俺の手にはすでに箸がスタンバっている。しかし、800円の割にでかい。特大サイズの丼に入れてある。

 

 「あら、ずいぶんお腹が減っているみたいね?」

 

 そう言って、奥さんはお盆を俺の目の前に置く。鼻腔をくすぐる良い匂いが漂ってきた。

 

 「いただきます!」

 

 「ご飯はお代わり自由だから、いっぱいお代わりしてね」

 

 奥さんの話を最後まで聞かずにカツ丼に食らいつく。

 朝、昼と飯を抜いた俺にとって、カツ丼は正しく極上の褒美であった。ただひたすら箸を動かす。

 カツ一口に対して米を頬張り二口食べるものだからカツよりも米がグングン減っていく。

 

 「おかわりお願いします!」

 

 「うふふ、はいはい」

 

 新たにつげられた米を凄まじい速度で口に入れていく。目標は、まるで米が消えるように見えるくらい。

 結果、特大サイズの丼を7分弱で完食しきるという自己最高記録を叩き出した。

 

 「ごちそうさまでしたぁ」

 

 「良い食べっぷりねぇ」

 

 「自己最高記録ですね!」

 

 キリッ。

 俺がそんなことを言うと、奥さんはまた笑った。あゆきも下でニヤニヤしている。

 なんて温かで心地よい場所なんだろうか、ここは。ホント、魔術師達はなんであんなにも冷たいのやら……。

 

 「ご飯ありがとうございました。とても美味しかったですよ。じゃあ、俺は行く所もあるので。御馳走様でした」

 

 「お兄ちゃんいっちゃうの??」

 

 あいさつもして、店から出ようとした時にあゆきが残念そうな声を上げる。

 

 「うん。お兄ちゃんはな、今から用事があるんだ。そろそろ準備もしなきゃいけないんだよ」

 

 「えー、ヤダヤダ!! お兄ちゃんもっといてよ!!」

 

 優しく諭す俺に、相変わらずの大声であゆきが反抗する。この短期間によくもまあ懐かれたものだ。

 

 「こら、あゆき。お客さんに迷惑かけちゃ駄目だって言ってるでしょ。あんまり言う事聞かないと、もう店でバイトさせてあげないわよ」

 

 「ヤダヤダ!! ばいとしたい!! お兄ちゃんと遊びたい!!」

 

 俺にもっといてほしいと言うあゆきを奥さんが叱る。あゆきの目はうっすら潤んでいるように見えるが、なおも反抗する。

 こんな時の対処法には、何かあげるのが一番良いんだぞ! たぶん。

 

 「ほら、あゆきちゃん。お守りだ」

 

 「お守り?」

 

 今すぐにも泣き叫びそうなあゆきに魔術用の護符をあげる。俺の手持ちにはこんなものしかなかった。見た目は只の紙切れ。あゆきがこれを受け取るかどうかは分からない。

 

 「これはなんと、あゆきちゃんや家族のみんなを守ってくれる魔法の紙きれなのだ。でも、我儘をいうとあげられないんだけど、どうする?」

 

 これでも、あながち嘘ではない。魔術用の護符でしかないが、護符の名の通りそういった側面も多少なりとも有している。厄払い程度には確実に効くだろう。

 あゆきは静かにそれを受け取ってくれた。

 まだ目に見えて残念そうな顔をするあゆきの頭に手を置き、優しく語りかける。

 

 「良い子だ」

 

 どうやら涙は止んだようだ。と思ったら急にあゆきに抱き着かれた。

 

 「また絶対に来てね!!」

 

 その声はさっきまでの大声だ。機嫌も直ったらしい。

 

 「ホントあゆきが迷惑をかけてごめんなさい。ありがとうございます。この子、泣いたらすぐに泣き止まないから。

 今からまた出かけるんですよね? この季節は五時にはもう日が暮れますから、気を付けて下さいね。あゆきの事もあるし、今度来たときはサービスしますよ?」

 

 「はい」

 

 奥さんからあいさつをもらって、今度こそ店を後にする。

 振り返ったらあゆきが大きく手を振っている。それに答えて大きく手を振り返して別れのあいさつを終えた。

 

 

 

 

 『まきむすび』を後にしてから、俺は唸っていた。さっきは行く所があるとか言って店を出たが、約束の時間にはまだ余裕がありすぎる。

 どこに行こうかと悩んでいると、前方に少し人だかりがあるのに気付いた。よく見れば、周りの人たちもそちらの方向をチラチラ見たりしている。

 気になって周囲の目線の方向に目をやると、そこには、見た限りでも外国人と分かる二人組がいた。

 

 白いロングコートを着た女性と、スーツを身に纏った16歳くらいの美少年。

 まるで絵に描いたように様になった組み合わせだ。周りの人が目を奪われる気も分かる。

 

 だが、俺はそれと違った意味でも興奮を覚えていた。俺意外の旅行者に巡り合えたという事実に。

 初めはウェイバーがいればいいかな、とか思ってたけど会ってないし。つまり、サーヴァントはアレだし、心細かったのだ、たった一人の旅行は。

 出来ることならここであの二人組にお近づきになって、聖杯戦争が終わるまでの間、話し相手として時々話を出来るならこの上ない喜びだ。

 

 というワケで、周りの目線を気にしながら二人組に声をかける。

 

 「あの、あなた達も旅行ですか?」

 

 「ハイ?」

 

 俺の問いかけに反応したのは白いロングコートを着た女性の方だった。隣の少年は訝しむような顔でこちらを見ている。

 

 「実は連れを追いかけてここに来たんですが、その連れが見つからなくてつまらなかったんです。良ければ、今日一日だけでもいっしょに周れませんか?」

 

 「えぇ? ねぇ、聞いたセイ……アル? いっしょに見て周れないかですって」

 

 「アル…? あぁ、ええ。聞きましたが、こちらの男性は些か怪しいようにも思いますが……」

 

 セイ? 何だそれ?

 白いロングコートの女性が謎の言葉を発したが、反応の方は良い。しかし、傍らの少年からは警戒されているようだ。

 

 「アル、わざわざ声をかけてきてくれた人に失礼じゃないかしら? せめて、もうちょっとオブラートに包まないと」

 

 「すみません、アイリスフィール。得体の知れない男性です」

 

 「おい」

 

 ロングコートの女性、アイリスフィールさんがアルさんに注意した。別に気にしてないんだけどな、と心の中で思っていたのだが、全然変える様子がない。オブラート破けてますよ。

 

 「ちょっとアル、全然変わらないって……アハハっ」

 

 「あ、あの、アイリスフィール? 笑わなくても……」

 

 「そうですよ。アルさんのオブラートはすごく薄いらしいですから、そこの辺り大目に見てあげないと」

 

 焦るアルさんにここぞとばかりに反論だ(半分以上に挑発を含む)。

 アイリスフィールさんにはアルさんの言葉がツボったようで、大声を出しながら笑っている。周囲の人達から視線が集まって居心地が悪くなるのでやめてほしいな……。

 

 「なっ、貴方からバカにされる筋合いは無いぞ!」

 

 「初対面の人に二度も罵声を浴びせられる筋合いも無いんだけど。たしかに、いきなり声をかけてきたら怪しいと思うのは仕方ないかもしれないけど、言葉は考えて使うべきだぞ」

 

 「くっ……!」

 

 アルさんが、もうアルでいいや、が吠えたてるので言い返してやると言葉に詰まった。

 ハハッ、見たかこのイケメン!!

 

 「……あれ、あんた女か?」

 

 イケメンと、思考してから気づいたが、男にしては声が高い。胸元を見ればスーツが少し盛り上がっている。

 

 「そうだが。貴様、どこを見ている……?」

 

 殺気混じりにアルが俺を睨み付ける。女だよな? マジで怖いんだけど……。

 

 「アル。一般人に殺気を向けるなんて何考えてるの? ダメでしょ」

 

 「す、すいません……」

 

 俺が硬直していると、アイリスフィールさんがアルを叱る。しゅんとなるアル。なんだかあゆきと被るな。

 それよりも、殺気? 一般人? もしかして、この人達ちょっと言えないお仕事とかしてるのか。

 

 「お詫びといったらなんだけど、貴方の提案に乗らせて頂けないでしょうか。二人よりも、やっぱり三人の方が楽しいもの」

 

 ふっと笑いながらそういうアイリスフィールさん。何ていい人だ……。アルとは大違い……なんて思ってたら睨まれた! 思考を読まれているのか……!?

 

 「ありがとうございます。アイリスフィールさん」

 

 「あら、アイリでいいわよ。貴方はなんていうの?」

 

 「西篠湊人です。ミナトでいいですよ」

 

 アイリさんの優しさに感動しながら、こちらからも名前を告げる。友好な関係を築くには、まずお互いの名前を知ってる事が大事だからな!

 アルがさりげなくこちらを睨んできているが気にしない。

 

 「じゃあ、いきましょうか」

 

 

 

 

 二人と色々な所を周って時刻はもう8時。あれからアルとは口喧嘩を何度かしたが、初めよりも友好的になったんじゃないだろうか。ちなみに口喧嘩には全部負けた。

 アイリさんはそれを横で見ながら始終笑っていた。多分、彼女は今日と限らず笑みをいつも浮かべているのだろう。

 

 「じゃあね、湊人君。私達はこれから帰らないといけないから」

 

 「いえ、こちらこそ。とても楽しかったです」

 

 「礼儀のなっていない返答ですね。ミナトは目上の者に対する言葉遣いが全くもってなっていません」

 

 「黙ってろよ、男装腐女子」

 

 アイリさんといい感じのあいさつを交わしていると、横からアルが挑発をかましてきたので言い返してやった。意味が分からなさそうに頭上に「?」を浮かべている。自分の服装でも鏡で見てみろ!

 

 「またお会いすることがあったらお喋りしましょうね? アルとも仲が良いらしいようだし」

 

 「ええ、また。アルは、ハイ。そういうことにしておきます」

 

 最後にアルがムッとしたが無視だ。口喧嘩に勝てない奴にはな、無視が一番なんだよ。

 アイリさんがアルを携えて海がある方へ歩いていく。

 さて、俺も倉庫街へ行くか。約束の時間よりも早いが今から待っていても良いだろう。

 

 聖杯戦争第一戦。今からテンションあがってきたぁぁ!!  

 

 

 

 




知ってたかい……?あゆきのお母さん、最初はあらあらうふふなんて言ってたんだぜ……。
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