野獣先輩のIS学園物語   作:ユータボウ

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 続きいくよぉ……

 台詞多い……多くない?


3話 部屋割り

「ぬわぁあああああああああああああああん疲れたもぉおおおおおおおおおおおおおおん!」

 

 「チカレタ……(小声)」

 

 放課後、初日の授業が全て終了し、またHRも終わったその瞬間に野獣と一夏はバタンと机に倒れ込んだ。休み時間や昼食の時ですら絶えず周りからチラチラ見られていた二人だ、その肉体的精神的疲労の度合いは最早語るまでもないだろう。机に突っ伏してピクリとも動かなくなった二人に、真耶はやや戸惑いながらも声を掛ける。

 

「あ……あの、大丈夫ですか?」

 

「「(大丈夫では)ないです」」

 

「そ、そうですか……でも、あの、実はお二人に渡す物があるんですけど……」

 

 そう言って真耶が取り出したのは数字の書かれた札付きの鍵だ。どうやら数字の方は部屋の番号を表しているらしいと気付く二人だが、同時に一つの疑問が頭に浮かぶ。

 

「あれ……最初の一週間は家から通うように言われてたんですけど……」

 

「そうなんですけど政府からの指示がありまして……大変申し訳ないんですが今日から二人には寮に入ってもらうことになったんです。あと……部屋の調整もまだ出来てなくて、一ヶ月もすれば二人の部屋を用意出来ると思いますので……」

 

 その言葉に驚いたのは一夏だ。真耶の話を聞く限り、一ヶ月は女子と同じ部屋で過ごさなくてはならないかもしれないのだという。慌てて確認した部屋番号は『1025』、彼は野獣へと目をやった

 

「せ、先輩って何号室ですか……?」

 

「ん~……1145143643641919810号室みたいっすね~」

 

「えぇえええ!? そんな部屋ありませんよぉ!」

 

「嘘だよ(苦笑い)。1030号室だゾ」

 

 困惑する真耶を見て笑う野獣。しかしそんな彼の頭目掛けて、後ろから凄まじい速さで出席簿が振り下ろされた。バァン!(大破)と出席簿が出したとは思えない音が響き、野獣の口から「ヌッ!?」と悶絶する声が漏れる。

 

「教師をからかうな馬鹿者。今のお前は生徒だ、例え山田先生よりも歳上であってもな」

 

「ち、千冬姉!?」 

 

 デデドン!(絶望)と突然現れた実の姉に、思わずいつもの呼び方で呼んでしまう一夏。そんな彼に千冬は呆れた様に溜め息をついた。

 

「織斑先生だ、学習しろ。織斑、田所、お前達の用意は私が既にしておいた。着替えと、携帯の充電器があれば十分だろう?」

 

「「少なすぎィ!!」」

 

 「頭にきますよ~……(激痛)」と呻いていた野獣、そして一夏は間髪入れずに突っ込む。娯楽品の一つもないとはどういうことかと二人は問うが、しかし千冬はそんな言い分など全く受け付けず、「後は休日に自分で取りに行け(無慈悲)」とまるで相手にしなかった。淡々と、ただ伝えるべきことだけを述べていく彼女に野獣と一夏は、ただ「悲しいなぁ……(諸行無常)」と呟くことしか出来ない。

 

「夕食は寮の食堂を使うようにしろ。時間は六時から七時までだ。浴場は今の段階では使うことが出来ん、部屋に備え付けてあるシャワーを使え」

 

「あれ? なんで浴場は使えないんですか?」

 

「周りに女の子しかいないからだと思うんですけど(凡推理)」

 

 首を傾げる一夏に「当たり前だよなぁ?」と説明する野獣。男なのにISを動かせるという例外故に二人はこの学園にいるが、そもそもここは去年まで女子校のようなものだったのだ。ある程度の施設が制限されてしまうことも仕方がないことだろう。

 そんな中で慌てたのが話を聞いていた真耶だ。何をどう解釈したのか、一夏が女子生徒と風呂に入れなくて落胆していると勘違いした彼女は、顔を真っ赤にしながら彼に詰め寄った。童顔巨乳の教師に近付かれた一夏は、思春期の少年らしくさっと目を逸らす。

 

「お、織斑君! いけませんよそんなこと! 女の子とお風呂に入りたいなんて……!」

 

「え!? あの、いえ! 別に入りたくないです!」

 

「そんなに強く否定するんですか!? 女の子に興味がないって、それはそれで問題のような……」

 

「お前ホモか!?(驚愕)」

 

「ちょっ、何言ってんすか! やめてくださいよ本当に!」

 

 勘違いと早とちりで慌てる真耶。面白がって一夏をからかう野獣。とんでもない彼の発言に半ギレになりながら否定する一夏。一夏ホモ疑惑に沸く多くの女子生徒達。騒然となる教室で千冬は一人、本日何度目かとなる溜め息を溢した。

 

 

 

     △▽△▽

 

 

 

「えっと、1025室……1025室……」

 

「こ↑こ↓じゃないっすか~?」

 

 一夏と並んで歩く野獣は目的の1025室を指差す。場所は変わって現在は一年生の学生寮、真耶から部屋の鍵を受け取った二人は、言われた通りにそれぞれの部屋へ向かっていた。因みに野獣の部屋である1030室は一夏の1025室よりやや奥にある。

 

「じゃあ先輩、また後で」 

 

「おっ、そうだな」

 

 先に部屋に辿り着いた一夏と夕食の約束をして別れた野獣は、一人大股で寮を進んで部屋に到着した。コンコンコンとノックを三回、更にはノブも回すが内側からの反応はない。どうやら相方の生徒もまだ来ていないようだった。

 

「しょうがねぇなぁ(悟空)」

 

 そうぼやきながら野獣はゴソゴソとポケットから鍵を取り出し、木製の扉に取り付けられたノブに差し込んだ。ガチャリとロックが外れて扉が開き、彼は「おっ、開いてんじゃ~ん!」と自分で開けておきながら叫ぶ。騒がしい男だ。

 

「お邪魔しま~す(控えめ)」

 

 入室して早々、彼の目に飛び込んできたのは高級ホテル顔負けの内装だった。明らかに二人部屋とは思えないその大きさに、野獣は「はぇ~すっごい大きい……」と感嘆の声を漏らす。これがこの学園の普通なのだから、如何にこのIS学園が規格外の場所なのかが分かるだろう。満足げに頷く野獣は一先ず目の前のベッドに横になろうと一歩を踏み出し──、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お帰りなさいませ。ご飯にしますか? お風呂にしますか? それとも、わ・た──」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 し、と。その言葉は発せられることはなかった。部屋の隅に潜み、野獣の入室と共に姿を現した一人の少女。彼女はその姿を現した瞬間、()()()()()()()()()()宙を舞っていた。重力に引かれ、何が起こったのかすら分からない少女はベッドにボフンと俯せの状態になって落下。間髪入れずにその上へ野獣が乗り掛かった。

 

「お前何やってんだおい!」

 

「……え、ちょっ!? 嘘っ!? えぇ!?」

 

 「じっとしてろお前! もう逃げられねぇぞお前! (拘束)」

 

 「仮面ライダーなんだろ?」と意味不明なことを言いながら、しかしかなり手際よく野獣は少女を、身に付けていたネクタイで拘束する。一方、少女も漸く我に返って自分が拘束されていることに気付いたのか、途端にじたばたと暴れ始めた。しかし縛られた両手はまるで動かず、上に野獣が乗っているせいで体を起こすことも出来ない。ならばと少女は最終手段として専用機の展開を試みるも、肝心の専用機がいつの間にか野獣によって没収されていた為にそれも叶わなかった。

 

 

 

 両手は動かず、専用機も使えない。

 

 自分は今、思いの外にまずい状況にいるのだと、そう気付いた瞬間に少女の顔から血の気が引いた。

 

 

 

「ごめんなさい! すみません! だから離して! お願いします!」

 

 「すみませんじゃ済まねぇんだよ!(無情先輩)。分かってんのかお前!」

 

「ああ逃れられない! やだやめて犯さないで犯さないでよ! ライダー助けて!」

 

「ライダーはお前ダルルォ!? もう許せるぞおい! 職員室に通報しちゃうからなお前!(死刑宣告)」 

 

「やだ! 小生やだ!」

 

 馬乗りのまま携帯を取り出して職員室へと電話をかける野獣に、ショックの余り幼児退行を起こした少女は涙目になりながら訴える。水着エプロンと呼ばれる非常にセクシー……エロいっ! 格好をしている彼女だ、先生に見つかればどうなるかは想像するに難くない。そして、とうとう野獣の電話は職員室に繋がってしまう。

 

「もしもし! すみませんあの、自分の部屋に変態せっ、変態生徒会長が入り込んでるんですけど(特定済み)、不法侵入ですよ不法侵入! 今すぐ来てください! お願いします!」

 

「あ゙あ゙あ゙も゙お゙お゙お゙や゙だあ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙!!!」

 

 夕暮れ時の学生寮に少女、更識楯無の悲痛な叫びが響き渡った。ただ同室となる野獣を驚かせようと思っただけなのに。彼女の心の叫びは誰にも届くことはなく、その拘束は知らせを受けた千冬が駆けつけるまで続いたという。

 




 TTNSさんすこ。何も言わずに抱き締めて照れてるところに告白したい(ノンケ並感)

 でもいきなり部屋に忍び込んで水着エプロンとかしてたらハニトラを疑われても文句言えないんだよなぁ……

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