野獣先輩のIS学園物語   作:ユータボウ

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 8月10日、19時19分の投稿です(迫真)。急いで仕上げたので出来の方は、多少はね?

 野獣の日を勘違いしたノンケがTwitterで大惨事になってて涙が出、出ますよ……(苦笑)。


8話 転校生

「こんばんは~! 新聞部の黛薫子で~す! 今日は話題の一年生、織斑一夏君と田所浩二……さん? に、特別インタビューを行いたいと思いま~す! 二人共、宜しくお願いします」

 

「「宜しくオナシャス」」

 

「じゃあ織斑君からね。まず年齢を教えてくれるかな?」

 

「十五歳です。学生です」

 

「うんうん。え、身長と体重はどれくらいあるの?」

 

「え~……身長が172センチで、体重が60キロです」

 

「60キロ? 今なんかやってんの? 体重の割にがっちりしてるよね」

 

「特にはやってないんですけど、アルバイトならやってます(どや顔)」

 

「あ、アルバイトやってたんだ。っていうのは肉体労働みたいな?」

 

「ん、そうですね」

 

「週どれくらいやってんの?」

 

「シュー……三日か四日ぐらいですね」

 

「へぇ~……彼女とかいる? 今」

 

「いないです」

 

「ふ~ん……風俗とかは行くの?」

 

「行ったことありま……ないです」

 

「そっか。じゃあ──オ◯ニーとかっていうのは?」

 

「やりますねぇ!」

 

「やるんだ」

 

「やりますやります」

 

「ふ~ん。週何回とか、そういうのはある?」

 

「シュー……うーん……何回っていう感じじゃない、でも頻繁に、やってますね」

 

「じゃあ……最近いつ抜いたの?」

 

「最近は……三日前、って何言わせるんですか!?」

 

「ちっ、ここまでか。じゃあ次、田所さんお願いしま~す」

 

「オッスお願いしま~す」

 

「いやいや! 先輩何してんすか!? やめてくださいよ本当に!?」

 

 

 

     ▽△▽△

 

 

 

「あ、そうだ(唐突)。そういえば二組に転校生が来るらしいよ」

 

 言い出したのは果たして誰だったか、四月も下旬に入ったある日、一時間目の授業開始を待つ一夏達の耳にそんな話が入ってきた。四月なのに転校生とは、と首を傾げる彼等に声を掛けてきた女子生徒は言葉を続ける。

 

「えっとね、確か中国の代表候補生なんだってさ~」

 

「あら、私の存在を危ぶんで今更転校生を送り込んできたのでしょうか?」

 

 代表候補生という単語に反応したのは、同じくイギリスの代表候補生たるセシリア。クラス代表決定の際にした傲慢な発言により、クラスメイトとの間に少なからず軋みのあった彼女だが、後日発言を撤回し謝罪したことで今ではキチンとクラスに馴染んでいる。

 また多少の上から目線な態度も、彼女の個性であるとして周りからは微笑ましく見守られていたりするのだが、当人はそれに気付いてはいない。

 

「転校……中国……代表候補生……あっ、ふ~ん(察し)」

 

「先輩、どうかしたんですか?」

 

 何かを察した野獣に一夏が尋ねるが、彼はなんでもないと言って口笛を吹き始めた。そのあまりに白々しい態度に周りから一斉に視線を浴びる。しかしそれでも態度を変えないことから、これ以上彼が話すことはないようだ。

 

「ま、まぁ田所さんは一旦置いておくとして、別のクラスに転入するなら私達が気にすることもないのではないか?」

 

「え~、でも代表候補生なんだよ? 織斑君も気になるよね?」 

 

「おっ、そうだな」

 

 すんなりと肯定の意を示した一夏に箒はむっとなって彼を睨む。IS学園に転校してくる者はすなわち女子であり、まだ見ぬ異性に想い人が興味を持ったことが箒としては面白くなかったのだ。

 しかしそんなことを欠片も知らない一夏からすれば、箒が勝手に不機嫌になったようにしか見えなかっただろう。そんな彼女から視線を外した一夏は、未だに掠れた口笛を吹く野獣に問うた。

 

「先輩も気になりますよね? 中国からの転校生、しかも代表候補生なんて」

 

「ま、多少はね? ていうかその転校生って十中八九()()()だと思うんですけど(名推理)」

 

「え、あいつ?」

 

「一夏、転校生など気にしている場合ではないだろう。クラス代表のお前には来月、クラス対抗戦が控えているのだぞ」

 

 野獣の意味深な発言に聞き返した一夏の声は、割り込んだ箒によってかき消される。クラス代表とクラス対抗戦、その二つが一夏の頭をぐるぐると回った。

 各クラスの代表同士がISで戦うクラス代表戦。以前行われたクラス代表決定戦でセシリアと野獣に負けたにも関わらず、二人が辞退したことでクラス代表となった一夏には、このイベントに参加する義務があるのだ。

 

「一夏さん、クラス対抗戦は大切なイベントです。今後の訓練はより実践的なものにしていきましょう。安心してください、教官は私、セシリア・オルコットが務めますわ! 専用機持ちでIS操縦の経験も豊富となれば、一夏さんの指導役にこれ程相応しい人材はいませんもの!」

 

「なんでも優勝クラスには学食デザートの半年フリーパスなんだとか」

 

「はぇ^~すっごい豪華……(恍惚)」

 

「ほんとぉ? じゃあ絶対負けられないね!」

 

「頑張ってね織斑君!」

 

 一人言えばまた一人と便乗するクラスメイト達に一夏は思わず苦笑いを浮かべた。専用機とはいえまだまだ彼はIS初心者、あまり期待されても困るというのが正直な気持ちなのだが、そこは口に出さずに黙っておく。人の好意には鈍感な一夏だが空気は読める男なのだ。

 

「今のところ、専用機があるのって一組と四組だけでしょ? でも確か四組は使えない筈だから余裕なんじゃない?」

 

 

 

「その情報、古いよ」

 

 

 

 ポロっと溢れたその何気ない一言に、入口である扉の方から反論が飛んできた。聞こえた全員が一斉にそちらへと視線を向け──そこで腕を組み、片膝を立てて扉に凭れ掛かるツインテールの少女を見た。

 

「二組も専用機持ちがクラス代表になったわ。簡単に優勝出来るなんて思わないことね」

 

「え、鈴……お前、鈴だよな……?」

 

 ふふんと不敵な笑みを浮かべる少女──凰鈴音と、突然現れた親友に戸惑いを隠せない一夏。他のクラスメイト達も揃って呆然となる中、しかし野獣だけは「うわぁ……これはRNですね間違いない。なんだこれは……たまげたなぁ……」と一人どこか納得したように呟いていた。

 

「えぇ……何かっこつけてんだよ、全然似合ってないぞ」

 

「なっ……!? 失礼な奴ね! なんてこと言うのよアンタは! もう許せるわよ!」

 

 一夏の本音に鈴は一転して激昂する。そんな彼女の背後に近付く影が一つ。途端に教室中が「やべぇよやべぇよ……」とざわめいた。

 

「おい」

 

「何よ……って、痛ぁい!?」

 

 鈴が振り返ったその瞬間、バァン!(大破)と凄まじい音が教室に響き渡る。「くぅ~ん……(涙目)」と踞って悶絶する彼女の横を通り抜けて現れたのは、一組の担任である千冬だ。その肉食獣のごとき鋭い目は、未だに痛みと衝撃から立ち直れていない鈴へと向けられている。

 

「もうすぐホームルームの時間だ。さっさと教室に戻れ」

 

「ち、千冬さん……!」

 

「織斑先生と呼べ。あと同じことを二度言わせるな」

 

 「()……すみませんでした(センセンシャル)……」

 

 ろくに回らない舌で言い切り、ふらふらと鈴は一組の教室から去っていく。そんな彼女の背中を見た生徒達が思ったことは一つ──、

 

 

 

「「「「「(一体何しに来たんだろう……?)」」」」」

 

 

 

 

 そんな素朴な疑問は、千冬のホームルーム開始の合図と共に霧散していった。

 

 

 

     ▽△▽△

 

 

 

 凰鈴音にとって、織斑一夏は初恋の相手である。

 

 二人が初めて出会ったのは小学五年の頃、一夏が通う小学校に鈴音が転校してきたことが切っ掛けだ。しかし今でこそ一夏に()()()()な彼女だが、別に一目惚れをした訳ではないのである。数いる有象無象の中に一人、それが当時彼女が持っていた印象だ。

 

 しかしある日を境に彼女の中で一夏の存在は、有象無象からかけがえのない一人へと大きく飛躍することとなる。

 

 原因は中国人(チャイニーズ)ということで、まだ日本語の扱いに拙さの残っていた鈴音をからかっていた生徒達を、一夏がヒーローのように颯爽と現れて成敗したからである。複数の相手に囲まれてからかわれ、不安と悲しみで泣きそうになっていた彼女には、突然現れた一夏はまさにヒーローそのものだったのだろう。

 その日以来、鈴音にとって『日本に来て初めての友』となった一夏は、そこから更に時間を掛けて『初恋の相手』にまで昇華されることとなる。その後、両親の離婚により鈴音が中学二年の頃に中国へ戻ることとなり、二人は離ればなれとなってしまうのだが、それから一年以上が経った現在でも、鈴音にとって一夏は特別な存在のままなのである。

 

 しかしそんな一夏にぞっこんな彼女にも、彼以外に気に入っている男がいた。

 

 

 

 そう、言わずと知れたあの男──野獣こと田所浩二である。

 




 次回の投稿は11月4日5時14分です(予約投稿)。

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