野獣先輩のIS学園物語   作:ユータボウ

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おまたせ(満を持して)。

ところでこんな三ヶ月も更新してない作品を見てる人なんているんですかね……(素朴な疑問)。


9話 鈴音

「先輩、食堂行きましょうよ」

 

「あっ、いいっすよ(快諾)」

 

 昼休み、一夏は野獣と箒、そしてセシリアとその他大勢の女子生徒を伴って食堂へ向かう。鈴音の突然の登場に驚かされこそしたものの、彼と野獣は午前中の授業を何事もなく終えることが出来ていた。

 むしろ、気が気でなかったのは箒とセシリアの方だ。鈴音という二人からしてみれば『やたらと一夏に馴れ馴れしい、自分の知らない女子』が現れたことで頭がいっぱいとなっていた二人は、真耶から注意を受け、千冬から出席簿を何度も落とされる羽目になったのである。

 ちなみに授業そっちのけで妄想の世界に入り込み、コロコロと表情を変えていた二人を見た一夏や野獣、クラスメイト達は皆「何やってんだあいつら……?」と首を傾げていた。端から見れば突如顔をしかめたり、また笑い出したりしていたその様子は、はっきり言ってとても不気味だったのだ。

 

「待っていたわよ一夏、先輩!」

 

 彼等が食堂に到着した直後、ラーメンの乗った盆を持った鈴音が前に立ちはだかった。浮かべられた活発そうな笑顔、僅かに覗く八重歯、ふわりと揺れるツインテール。その姿を見た一夏は改めて彼女、凰鈴音がここにいるのだと認識する。

 

「えっと……とりあえず鈴。そんなとこにいると他の人の邪魔になるんじゃないか?」

 

「そうだよ(便乗)」

 

 控えめな一夏の指摘と野獣の便乗に、鈴音は顔を赤くして「わ、分かってるわよ!」と声を張り上げた。何故怒鳴るのかと一夏は首を傾げるが、すぐさま券売機に並んで昼食を購入する。彼が選んだのはお馴染みの日替わり定食、野獣もまたいつものラーメンだ。

 

「ところで鈴、お前いつ日本に帰ってきたんだよ? 連絡の一つも寄越さないでさ。それに、いつの間に代表候補生なんかになったんだ?」

 

「質問ばっかしないでよ。それにアンタこそ、なんでISを動かせてるの? あと先輩も。よりによって知人二人がISを動かしたとか聞いた時、凄くびっくりしたんだからね」

 

 席に着くなり会話に花を咲かせる一夏と鈴音。およそ一年ぶりの、それも思わぬ再会ともあって、彼らには聞きたいことが山のように積もっていた。そんな二人を野獣は微笑ましげに見つめながら、時々振られる言葉に「おっ、そうだな」と相槌を打つ。

 

「一夏、そろそろ説明してくれ。お前達はどういう関係なのだ?」

 

「そうですわ(便乗)。まさか、お二人はお付き合いされているのではありませんわよね?」

 

 しかし、そんな楽しげな雰囲気の三人とは反対に残された二人──すなわち、箒とセシリアの機嫌は悪い。そして耳を済ましていた他のテーブルの生徒達も一夏と鈴音の関係が気になるのか、こくこくと二人の言葉に同意を示している。キッと細められた目に一夏は僅かに怯み、一方の鈴音はセシリアの問いに目を泳がせた。

 

「いやそんなこと……(しどろもどろ)」

 

「何言ってんだよセシリア。俺と鈴はただの幼なじみだよ」

 

「……田所さん、本当ですか?」

 

 確認のためと一夏から視線を移す箒に、野獣は首を縦に振った。

 

「(RNが日本に来たのはHUKが転校してからだし、知らなくても無理は)ないです」

 

「あぁ。箒が引っ越したのは小四の終わりだろ? 鈴が来たのは小五の頭だから、ちょうど入れ違いになったって感じだな」

 

 野獣と一夏の言葉に納得し、何よりも安心したのか、箒とセシリアはほっと息をつく。その後、彼女達はお互いに自己紹介を交わすのだがその際、言葉にせずともライバルであると悟ったのか、バチバチと火花を散らした。

 

「またこの展開か壊れるなぁ……(諦観)」

 

「? 先輩、何か言いました?」

 

「いやいや、何でもないっすよ」

 

「あ、そうだ(唐突)。一夏アンタ、クラス代表になったそうね」

 

 遠い目になった野獣に一夏が首を傾げる中、ラーメンを全て食べ終えてスープまで飲み切った鈴音が突然呟いた。

 

「ん、おう。成り行きなんだけどな」

 

「ふ、ふ~ん」

 

「それがどうかしたのか?」

 

「まずアタシさぁ……専用機、あんだけど……焼いてかない? (意味不明)」

 

 チラチラと一夏の様子を伺いながら、気恥ずかしそうに言葉を紡ぐ鈴音。ついでにその発言もよく分からないものだったが、彼女と四年にも渡る時を過ごした一夏には、その真意がはっきりと伝わっていた。

 

「おっ、ISの特訓を見てくれるのか? (圧倒的理解力)そりゃ助か──」

 

「その必要はないぞ(AKMHMR並感)。一夏には私が付き合うことになっている」

 

「一夏さんの訓練にはイギリスの代表候補生であるこの私が同行します。二組であるあなたの施しなど必要ありませんわ!」

 

 助かるぜ、と。一夏が言い切るよりも早く箒とセシリアがバァン(大破)とテーブルを叩き、己の意見と共に勢いよく立ち上がった。そんな二人に鈴音は明らかに機嫌を悪くし、そのまま激しい口論へともつれ込んでいく。三人が三人共、一夏を独占したいと考えているのだ。当然口論が収束する様子はいつまで経っても見られない。

 

「あの、なんかとんでもないことになりそうなんですけど、それは大丈夫なんですかね……?」

 

「これもう分かんねぇな(投げ遣り)」

 

 はぁぁぁ~~……と、取り残された男二人の口から、クソデカ溜め息が溢れた。

 

 

 

     ▽△▽△ 

 

 

 

 放課後、野獣は一夏や箒達とISの訓練をすべくアリーナへ向かう──ことはなく、一人夕日の射し込む廊下を歩いていた。やがて彼はとある扉の前で立ち止まるとそこでノックを三回、内側から聞こえた「入って、どうぞ」の声に従い、扉を開けた。

 

「ようこそ、生徒会室へ。急に呼び出したりしてごめんね」

 

「今日はこの後、CHYとこの辺に来てる美味いラーメン屋の屋台に行くつもりだったんだよなぁ……(大嘘)。こっちの事情も考えてよ」

 

 わざとらしく肩を落とし、やれやれとばかりに首を横に振る野獣に対し、彼を呼び出した人物──更識楯無はクスクスと小さく笑った。同室となり、かれこれ一月もの時間を共にした彼女は、野獣という男の人となりをおおよそ理解している。故に、今の台詞も真に受けることはなくさらりと聞き流した。

 

「IS学園にラーメン屋の屋台が来る訳ないでしょ。ここはれっきとした教育機関なんだから」

 

「はぁ~……つっかえ。まぁええわ(寛大クレーマー)。それで、今日は何をすればいいんすか?」

 

「とりあえずは書類の分別をしてほしいわ。判子が必要なものとそうでないものとに、ね。本当は虚ちゃんがいてくれる筈だったんだけど、少し外せない用があるらしいの」

 

 美味しいお茶がないとやる気も出ないわと、楯無は作業をしながら息をつく。右腕たる従者の不在は主である彼女に、なかなかのダメージを与えているようだ。そのせいか、作業を進めるペースも普段より遅いように思われる。

 

「だからって生徒会のメンバーでもない俺にヘルプを寄越すのはどうなんですかね……」

 

「私と田所君の仲でしょ~? この埋め合わせはきっとするから、今だけは猫の手も借りたいのよ」

 

「ん? 今なんでもするって言ったよね? (幻聴)」

 

「流石にそこまでは言ってないわよ!?」

 

「嘘だよ(気さくな笑い)。ま、俺がいれば1145141919人力だし、TTNSは少し休憩して、どうぞ」

 

 そう言って野獣は普段の虚の定位置である楯無の傍らに移動すると、机に積まれた書類の分別に取り掛かっていく。1145141919人力とまではいかずとも、野獣が加わったことで必然的に楯無の負担は軽減される。いつもの余裕を少しずつ取り戻した彼女は、野獣と会話を交わしながら生徒会長としての仕事をこなしていった。

 

「そういえば、田所君は一年二組の転校生……凰さんと知り合いなのよね? どうだった? 久々に再会してみて」

 

「んにゃぴ……やっぱり元気なまま……が、一番いいですよね」

 

「それだけ? もっとこう……『お前のことが好きだったんだよ!』みたいな、そんな感想はないの?」

 

「飛躍しすぎィ! なんでそんなこと言う必要があるんですか?」

 

「え~。でも、田所君と凰さんって随分と仲がいいわよね。普通『親友の弟の友達』となんて、そんなに仲良くならないと思うけど」

 

 楯無は興味津々とばかりに紅い瞳を細め、野獣を見つめる。暫しの間、無言で見つめ合う両者だったが、やがて先に折れた野獣が「しょうがねぇなぁ(悟空)」と観念したように呟いた。

 

「とは言ってもICKを通して知り合って、美味いラーメンの話から料理のことで盛り上がって、気付いたら今みたいになってただけなんだよなぁ……(追憶先輩)」

 

「ふ~ん……なるほどね。まぁ、そういうことにしておきましょうか」

 

 腹を探るように野獣を眺めていた楯無だが、一人納得したかのように頷くとそれ以上踏み込むようなことはしなかった。彼女の追及がないということを察した野獣もまた、小さく息をついて分別の作業に戻った。

 

 野獣の言ったことに嘘はない。実際、野獣が鈴音と初めて出会ったのは一夏を通してのことであるし、親交を深めるきっかけとなったのも、ラーメンを初めとする中華料理だった。

 しかし、それらはあくまでもきっかけに過ぎない。本当の意味で二人の距離が縮まったのは、鈴音の両親が不仲となり、精神的に参り果てた彼女が野獣に相談を持ちかけたことなのだ。きっかけが両親の不仲とはなんとも皮肉な話であるが、悩みや不安といった心中を吐露し、最後には声を上げて泣いた鈴音はその日以降、野獣のことを『心を許せる大人』と認識し、全面的な信頼を寄せるようになったのである。

 だが、野獣を慕う鈴音とは裏腹に、野獣本人は彼女に負い目を感じていた。鈴音から相談を受けておきながら、結局は彼女の両親の離婚を止めることが出来なかったからである。このことについて、当時一大学生であった野獣に非は一切ない。しかし、だからといって全く気を病まないという訳でもないのだ。少なくともこれは彼にとって、進んで人に話したいことではなかった。

 

「悲しいなぁ……(戻れぬ過去)」

 

「へぇ、田所君もそういう顔をするのね」

 

「俺だって人間なんだし、当たり前だよなぁ?」

 

 そう言って笑う野獣の顔には、先程までのどこか憂いを感じさせる影はなかった。その切り替えの早さに楯無も一瞬動きを止めるも、すぐにつられてふっと笑みを浮かべる。

 

「ところで喉渇いた……喉渇かない?」

 

「そうね。虚ちゃんもいないし、仕方ないから何か淹れてくるわ。田所君は何かリクエストはある?」

 

「そうですねぇ……。やっぱり僕は、王道を征く……アイスティーですか」

 

「分かったわ。少し待っててね」

 

 二人の放課後は、こうして過ぎていった。

 




コメディもシリアスもこなせる先輩は役者の鑑って、はっきり分かんだね。

ちなみに、先輩は親友に世界最強と天災がいる一生ネットの宝物なだけの一般人なので、楯無さんが暗部に属してることは知りません。

次の投稿は……ナオキです。
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