灰と幻想のグリムガル ~オリオンの耀き~   作:西吉三

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ついカッとなってやった、ただし、後悔も反省もしていない……( ´_ゝ`)

「廃と群像のグリムガル ~不惑の幻想~」を読まれている方に見放されるのだけが、正直怖い。




Level.1 甘く、苦すぎる追憶
プロローグ.主人公達の訪問


 シェリーの酒場、2階の一角。

 喧噪(けんそう)渦巻(うずま)く1階と比べると、ぐっと静かで落ち着いた空間になる。そこはクラン・オリオンが習慣的に陣取っている場所だ。通称“談話室(サロン)”。談話室(サロン)には剣や盾、壺のような調度品が置かれ、いくつかの大きな(テーブル)がある。各(テーブル)には枝つき燭台(ジランドール)が置かれ、蝋燭(ろうそく)の柔らかく温かい光が周囲を照らしていた。

 全くの新人か、よほどの馬鹿でない限りは、他の義勇兵が用無く談話室(サロン)に入ってくることは無い。それほどオリオンは有名なクランだった。

 ハヤシはそこにいた。

 ハヤシはクラン・オリオンの団員だから当然と言える。白銀に輝く鎧を身に着け、クランのシンボルとなっているX型に並んだ七つ星の紋章が入った白いマントを羽織っていた。原作では短髪に細い目をした男という設定だが、アニメでは割と長めの髪になっている。

 実はカツラだ。

 アラバキアの技術水準で作られたカツラは、遠目なら隠しきれるが、近くで見るとバレバレだ。乗っかってる感が半端ない。というか、浮いている。違和(これじゃない)感。そう言わざるを得ない。

 そして良くずれる。

 ソフトクリーム好きの某白い犬の妖怪なら「バレバレずらー」と2つの意味でばらしてしまう。恐ろしい。

 話までずれてしまった。恐ろしい。

 

 今日は談話室(サロン)に来客があった。

 最近、リーダー兼神官を失ったという新人義勇兵の5人が、クランマスターのシノハラを訪ねてきている。神官を失うことは大きな痛手だ。神官は小隊(パーティ)の要と言える。

 おまけにリーダーときている。小隊(パーティ)としては終わりになってもおかしくない。

 さらに盾役(タンク)もやっていたという話だ。そんなアホな話はあまり聞かない。色んな役目を背負い過ぎだ。小隊(パーティ)を組む意味は、役割の分担、負荷軽減にある。人間の能力は有限なのだ。

 もし、多くの役割を兼務することが本人の希望だったのであれば、職業(クラス)の選択に間違いがあったのではないか? 神官ではなく、聖騎士をしていれば良かったのではないか? 聖騎士であればリーダー、盾役(タンク)、そして戦闘後の治療者(ヒーラー)を兼ねることも全く無理が無い。

 また話がずれてしまった。“もんげー”恐ろしい。

 

 5人の訪問の用向きは“メリイ”の件だという。

 ――メリイ!!

 「メリイ」という単語を耳にした時点でハヤシの耳は通常の3倍程度に大きくなっていたが、気が付かない振りをしていた。オリオンでは、()われてもいない他人への余計な干渉といった紳士、淑女にあるまじき下品な振る舞いは好まれない。本当は興奮でおしっこを漏らしそうな位、会話に参加したかったが、ハヤシはその感情を抑えた。

 

「メリイのこと……ですか?」

 

 クランマスターのシノハラが少し驚いたような顔をする。しかし、これには少し演技が入っている。実はメリイのことをシノハラが尋ねられるのは、これが初めてではない。メリイが悪行を重ね始めてから、被害に遭った義勇兵が、幾度となくシノハラの元を訪れている。

 

「はい……昨日話をしていましたよね?」

 

 質問をしているのは、5人の新人義勇兵達の新たなリーダーであるハルヒロという盗賊(シーフ)だ。リーダーと言っても、ぼさぼさ頭の下に眠たそうな目を覗かせている少年で、若く、そして見るからに未成熟な体付きをしていた。

 

「ええ……彼女が、なにか?」

「教えて欲しいんです。メリイのこと。本人に聞いても教えてくれないと思うし」

「ふむ…………」

 

 シノハラは軽く唸った後で、少し黙考する。この黙考の時間もシノハラの演技だ。素晴らしい。何度も同じリアクションをしているとは思えない、自然な流れだった。当然、この後の流れも決まっている。

 高名なクランマスターの沈黙を、新人義勇兵の5人は緊張した面持ちで眺めていた。

 

「それでしたら、私より、ハヤシの方が適任でしょうね」

 

 シノハラは人差し指で(テーブル)を1度だけ叩いた。

 ハヤシはシノハラの方を振り返り、黙って静かに移動すると隣の席に立つ。

 ――遂にきた! 名シーン。はっきり言ってここしか俺の見せ場は無い。後は、メリイが明るい元の姿に戻っていく様子を、生暖かい目で見つめるカット位しか登場シーンは無い。一世一代(いっせいちだい)名語(めいがた)りを()せてやろうじゃないか!!

 大興奮の心とは裏腹に、ハヤシはヒロインの不幸な過去を語る元仲間を演じ切るため、仲間を失った心的外傷(トラウマ)を癒やせないままでいる渋い大人の戦士という(てい)で顔を作った。

 

「ハヤシは以前、メリイと同じ小隊にいたのです」

 

 そう言われて、新人義勇兵達5人はハヤシの完璧に作られた顔を見上げる。

 

「はぁ(……ヅラ?)」

 

 ハルヒロはハヤシと呼ばれた男の髪の毛が気になったが、そこに触れるだけの勇気はなく、話を聴く姿勢になった。

 

 ハヤシはシノハラの隣の席に座ると、メリイとの過去について語り始めた。

 通算76回目となるこの語りは既に名人芸の領域を超え、国宝級の神技となっている。台詞(せりふ)仕草(しぐさ)、表情、視線、沈黙、()、溜め、どれをとっても最早(もはや)完璧で、もちろん間違えること等無い。

 

 ――さあ、始めようじゃないか! 俺の絶対時間(エンペラータイム)!!

 

 

 




「廃と群像のグリムガル ~不惑の幻想~」を読まれている方には、「本編書かずに、何遊んどんねん!」とお叱りを受けそうですが……、

どうしてもハヤシの話が書きたかったんです! ごめんなさい! m(。・ε・。)m だが反省はしていない。

今後も連載するかどうかは未定です……。

|ω・)チラッ
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