触れるもの皆殺すマン   作:アストラ9
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第三話 スケルトン(物理)は突然に。

 

「おいにいちゃん、随分美味そうなもん食ってんじゃねえか?」

 

 

 そう言う男は、笑いながら此方に刃物をこれでもかと言うくらいに見せつけてくる。

 服装を見た感じ、どちらかと言えば華やかな暮らしはしていないらしい。毛皮の服に片刃剣、剃られていない豪毛と髭。

 よくあるテンプレファンタジーに出てくる、山賊のような服装だった。若干、匂いもキツイ。

 

 

「おいおい、にいちゃん、そんなしかめっ面するこたぁねえだろう? 別に全部取ろうって訳じゃあねえんだ。ちょっとそこにあるもん持ってくだけなんだよ」

 

 

 そうではない。お前が臭くて息が出来ないんだよ。

 

 と言いたい所だが、そう言う訳にもいかない。

 どうやら彼らは飛行機の物資を盗みに来たらしい。つまり、盗賊という線が強くなったので、逆らえば唯では済まないと言う事だ。

 

 まあ飛行機は何気に大きいからな。見つかって当然だろう。

 だが、だとしたらやばいかもしれないな。飛行機目掛けて人、特に盗賊がやって来るんじゃあ、こっちの身がもたない。

 そんな事を考えていると、

 

 

「……どうやら抵抗する気はねえみてぇだな、お前」

 

 

 などと山賊Aが呟く。

 どうやら俺の沈黙を抵抗なしと受け取ったみたいだ。

 

 

「よぉし! お前ら、そこにあるもん片っ端から持っていけ!!」

 

「「了解っす、ネンダルさん!!」」

 

 

 目の前の男の指示で、後続の二人がキャリーなどを漁りに行く。

 デブの棍棒持ちは俺が作った山を、斧を持ったガッチリ系は飛行機の中に入って行った。

 どうやら、目の前の男がこの集団にリーダーらしい。

 なんとなく、チンピラっぽいから下っ端だと思っていたのだが。

 

 それはそれで、別にどうでもいいだが。

 ついでに言うならば食料さえ奪って行かなかったら全部持って行って貰っても構わないんだが。

 だって俺、あの中身大して使えないし。道具すぐぶっ壊れるし。

 だからどうぞ好きなものを持って行ってくれ。

 

 

「お、そうだ。お前それ寄越せよ。見た瞬間に食いたいと思っちゃったんだよね〜」

 

 

 ニヤニヤしている男は手元にある鳥そぼろご飯弁当に向けて手を伸ばしてくる。

 それを阻むようにして即座に弁当の蓋を閉じ、両手で包み込んで阻止した。

 その俺の対抗策を見て男は、チッ、と舌打ちをして手に持つ剣を此方に向けてくる。

 

 

「おいおい、あんまり俺を怒らせるんじゃあ、ねえよ? 

 これでも俺様はここいらを根城にする山賊一味、『ベルガ一味』で上から23番目に偉いんだ。おめえなんか一撃なんだよ」

 

 

 ニヤニヤ男はいきなり自己紹介を始める。

 どうやら彼らは印象通り、山賊だったらしい。しかも一応有名な所の。(まあ自分はそれがどれ程の物か知らんが)

 また、山賊一味の規模が分からないが、最低でも25人はいると見て良いだろう。仮に彼らを一番下っ端と見てだが。

 そして、そんな規模の山賊に喧嘩を売るとどうなるか、そんな事は分かりきっている。

 

 リンチされるに決まっているだろう。

 

 リンチを回避するには彼らの言う事に従わなければならない。この場で言うなら、ここで彼に鳥そぼろご飯弁当を渡す事だ。

 

 だが……

 

 

「だからどうしたって言うんだよ。俺はぜってぇお前なんかには渡さないからな、俺の鳥そぼろご飯弁当」

 

 

 今現在、俺にとって鳥そぼろご飯は、数少ない贅沢品なのだ。

 それを取り上げようとするのは、レストランでステーキ食べてる奴のを無理やりぶんどって食べるのと、大差ない。

 

 それゆえに、俺は鳥そぼろご飯を死守した。

 もしもご飯が無くなったら、俺は死んでしまうのだ。特に、精神的に。

 

 

「あぁん⁉︎ お前、良い度胸してんなぁ? 自分がどうなっても、知らないってか?」

 

 

 予想通り、男は激情する。井の中の蛙の如く、自分が至上と考えている人種にとって、反抗というふた文字は、余程癪に触るものなのだろう。

 故に、怒ることは容易く想像できた。勿論、こういった事(・・・・・・)をしでかしてくるであろう事も。

 その上で言わせて貰おう。

 

 

「いえ、まだ僕は死にたくありません」

 

 

 別に、やられたいから反抗した訳では無い。誰が、こんな何処とも知れない場所で死のうと思うのだ。

 

 

「今頃言ったっておせぇええんだよ!!」

 

 

 しかし、そんな許し(笑)を乞う言葉は届けられない。

 

 手に握る片刃剣を此方に向けて振るってきた。なかなかの速度が出ている。その速度は包丁を使う主婦達のソレを軽く超えていた。

 当然である。質量も、リーチも違うのだ。包丁に刺された時よりも簡単に命を刈り取れるだろう。

 つまり、このまま何もしなければ俺は死んでしまう。いい人生だったなぁ……と、言いたい所だが。

 

 

 ——残念ながら君の詰みであるよ。山賊君。

 

 

 バギィン! という砕けるような快音が森の中を響く。さながらそれは、森の鼓動のようである。

 そんな鼓動とは相対的に、目の前の男の顔は、驚愕の一文字で埋まっていた。

 

 

「……あぁ⁉︎ どうなってんだ、コイツ!!」

 

 

 角材と、先の尖った金属に分裂してしまったものを見て、男が叫ぶ。唾が顔に掛かってしまったが、相手の立場になって考えれば、当然である。

 

 なんせ、触れただけで武器が無力化されたのだから。

 

 

「てメェ、俺の愛刀に何しやがった!! ブッ殺されテェのか!!」

 

「フン、何を言っても無駄だ。俺の前ではお前は、全くの無力なのだ。何せ、俺には魔法が掛かっているのだからな!!」

 

 

 そう、俺には、自他共に(道具を物理的に)殺す、最凶のチート能力があるのだ。自身の餓死の確率を上げる、設備を意味も無く解体するという謎の能力だが、こう言った場では非常に有用である。

 故に、俺は男に対して大きく出れたのだ。

 

 

「ま、魔法だと!? まっ、まさかお前は……!!」

 

 

 男が何やら呟き、一歩後ろに下がる。その顔はさっきよりも若干、青くなっているようだ。

 どうしたのだろう、そう心配していると、

 

 

「くそ、流石に"国家の秘密兵器相手"にやるのはヤベぇとは思うがよ……このままで引き下がれるかってんだ!!

 エンダル、ザルドゥ!!」

 

「「へい! 了解っす、ネンダルさん!!」」

 

 

 意味不明な事を喋って、二人の配下を呼び寄せる山賊A、もとい男。

 "国家の秘密兵器"というのが何か気になるが、今の状況で気にすることでは無いだろう。何しろ、今の自分に国家という存在は全く関係ない訳だし。余計な情報を仕入れて混乱するのは、無駄である。

 

 今はこの場を逃げる事を一に考えるとしよう。

 

 まあ実際相手の武器は全て無効化出来るので、俺は何もしなくていいのだが。パッシブスキル万歳である。

 

 

「おいお前ら、今すぐ武器をおけ!」

 

「「……なんでですか、ネンダルさん?」」

 

 

 二人の疑問は最もである。何故そんな事をするのだろうか?

 なんでですか、ネンダルさん〜。

 

 

「武器がぶっ壊れちまう位だったら、素手で殴れば良いんだよ! 素手なら壊れる心配はねえからなぁ!!」

 

 

 ……あ。

 

 

「流石ネンダルさん! 頭の回転が早い〜!!」

 

「よっ、男前ぇ!!」

 

「へっへっへ、そう褒めんなって!」

 

 

 そんな感じで、山賊Aの事を褒めまくる敵陣営。漫才を見ているようで、楽しい。

 が、そんな事は言ってられない。対抗策を練られてしまったのだ。早急になんとかしなければ、殺され——

 

 

「……それじゃ、覚悟しろよ? 生きてる事を後悔させてやるからな」

 

 

 ——るのは確定のようだ。パッシブスキル万歳、アレは嘘だ。前言撤回である。あんなクソ能力、草の根を分ける程度にしか役に立たねえ。

 

 無念執念失念である。何故自分はあんな行動をしてしまったのか。そんな言葉が自分の中で数多く生まれるが、それが声に出る事はない。

 

 自分の喉は既に、恐怖に竦んでろくに動かないのだから。

 

 時間が遅くなっていると感じる。周りがスローモーションになっていて、とても不思議な感覚だ。なんだか、昔見たアニメ『007』でこんなのを見た気がする。

 そんな余裕な事が考えれている割には、心臓の鼓動はやけに速かった。少しでも動こうと、生き残る可能性をあげようと必死なのだろう。

 だが、それも今で終わりだ。先ほどのようなパッシブスキルは、生き物には効かない。コレで俺は、ジ・エンドなのだ。

 

 デブの拳が顔面に触れる。そう認識した。

 

 

 ——ああ、これで俺は死ぬのかぁ……。

 

 

 なんて事を考えて、俺は死んだのであった——筈なのだが。

 

 

「え、エンダルぅぅ!!!」

 

 そんな叫ぶ声が聞こえると同時に、俺は意識を戻した。

 そして、そんな俺が意識を戻した先にあったもの。それは

 

 

——人間の頭蓋骨がよく目立つ、人骨と生肉の山だった。

 

 

「ファっ!?」

 

 

 俺は、何度目か分からない、驚愕の事実に目を背けたくなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 アレからは、非常に早く事が進んだ。

 

 目の前のエンダル(仮)の姿を見て、残った二人は逃げてしまったのだ。

 下っ端が逃げ出したのはまだ分かるが、リーダーである山賊Aが逃げるのはどうなのだろうか。流石にスケルトンとかした彼が可哀想である。

 

 ま、俺を襲ったのだから自業自得だとは思うが。

 

 

「……」

 

 

 改めて、出来立てホヤホヤのスケルトン(現実)と、肉塊の山を見る。

 実に、生々しいグロ画像(目の前)である。こんな物をリンクに、ネットに上げるやつは、余程のサイコパスだろう。人骨を他人に見せようなんて、とてもじゃないが理解出来ない。

 

 それはともかく、俺の『解体マスター』の守備範囲の広さには、酷く驚いた。まさか人間すら解体出来てしまうとは。

 この分だと、他の動物も可能だろう。動物には使えないとは思っていたが、何故そんな勘違いをしていたのだろう。

 

 

「いや、そんな事は既に分かっているんだけどね」

 

 

 動物を"解体"するというのはつまり、ぶっしゃぶっしゃババーン、が目の前で行われる訳である。

 俺の意思なしでグロ映像を見せられるのだ。耐性が付いていないやつには地獄だろう。

 まあ俺にもそんな耐性はないが。

 

 という訳で勿論、胃の中をぶち撒けさせて頂きました。喉が大層痛いで御座います。

 

 そんな訳で、山賊騒ぎは呆気ない結末を迎えて終わった。予想外にこの最凶チートが強すぎたせいだ。

 流石に強すぎるのでは無いかと、今更ながらに思った。

 

 そういう俺は今何をしているかと言うと。

 

 

「く、くせぇ……」

 

 

 人肉人骨を掘ったばかりの土に埋葬する作業である。

 流石に人肉は臭った為、放置ではまずい。かと言って、食べるのは論外だ。同種族の肉を食べる気にはならないし、そもそも美味しくないと友達に聞いた事がある。

 ま、その友達も食べた事がないらしいので、実際どうかは知らんが。

 

 割れている木の板をスコップがわりに掘り続ける事、数時間。

 

 人肉と人骨をそこまで移動するのに1時間ちょい。

 

 シャベルでまた埋め立てて、地を固めるのも1時間ちょい。

 

 結局作業は朝まで続いてしまった。誰かが盗っ人に来たせいで、俺は徹夜である。どうしてくれるのだろうか?

 

 しかし、山賊達は良いものを落としてくれた。

 

 

 棍棒と金属片の事である。

 

 

 今の俺にとって、唯一の武器と言えるのは、この最凶能力(解体マスター)のみである。そう言う系以外で言えば、木の枝程度の関の山である。

 

 その程度の武器(物理的)しか、持っていない。武器(現象的)に護身の大部分を、頼っている状態なのだ。

 

 そんな俺に、棍棒と金属片という、最強の素材が舞い降りて来た。これは誠に幸いである。誠氏ね。

 

 

 棍棒を地面に半分埋めて、簡単な固定を掛ける。

 

 足を棍棒の上に乗せて体重での固定底上げを施し、金属片で一部の表面をちょっと削る。削った跡は『1』の字そっくりである。

 

 そして今削った穴に金属片の尖った所を押し付け、木の板でもう反対側を叩きつける。コレを何度も繰り返す。

 

 

 暫くやって金属片がある程度埋まれば、棍棒の強化の完成である。飛び出る金属片によってその見た目はさながら、ハルバートのようだ。

 棍棒なのでそうは見えないのが現実だが。

 

 

「はぁ〜、……眠い」

 

 

 現在の時刻は、05:28。

 もう朝である。肉の埋葬と近場の後片付け、ハルバ棍棒を作っていたらいつの間にか、時間が過ぎていたらしい。

 時間が経つのは、実に早いものである。

 

 

「まだやる事はいっぱいあるけれど……ま、いいか」

 

 

 眠気には勝てない。それがこの(サバイバル)世界での真実である。わざわざ睡眠を削ってまで仕事してふらっと来たら、体調崩して今度こそジ・エンドである。

 

 この時俺は再び、敵は戦闘相手では無く、食生活に潜むのだと知った。

 

 

「……おやすみなさーい」

 

 

 誰に掛けるわけでもない言葉を空虚に放ち、壁ハウスの壁に横になる。

 今日は久方ぶりに、ゆっくり寝れそうだ……。

 

 

 

 

 

 







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