あの世界の彼がIS世界に来たってよ──更識楯無の波乱万丈な一年──   作:緑化

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三話 軟禁されました→よし脱獄だ!→自由の未来へアイキャンフラァァイ→見つかりました→怒られました

 

暗い部屋に三面ディスプレイの光だけが彼女とその周囲を照らす。

 

壁一面に掛けられ整理整頓された工具類。機材などに用いるケーブルなどなど。

 

中央のディスプレイでは青と赤が入り乱れながら右に行き左に行きを繰り返し右のディスプレイには%を記す数字と何らかの動きを示すグラフが写し出されて上下している。

 

現在、数値はの青が80%で彼女が優勢だ

 

 

「くふ…くふふ…」

 

 

カチャカチャと彼女はキーボードを叩く。

漏れ出る声に彼女自身、気付きもしない。

 

どうしてこうなったのか? 何が原因なのか? 調べれば調べる程に謎は深まっていく。

 

それが楽しい、それが愉快だ、これほど心踊るのはいつぶりだろうか?

 

白騎士が大空を縦横無尽に駆け抜けた時と同じだろうか?

 

 

 

「おおっと!? アクセスへの一斉拒絶と来たか! これは俄然楽しくなってきたよ! よーし、本気出しちゃうぞ!」

 

 

ディスプレイの半分を一気に赤が占拠したと同時に目まぐるしく変化する情報を前に彼女は実に楽しそうにキーボードを叩く。

 

それはまるで鍵盤に想いを乗せて表現するピアニストのようだと見ている者がいれば言っただろう。

 

だか突如として彼女の指は、演奏を終えたように止まる

 

 

「……あ〜あ、やっぱりここまでか…いいとこ行ってると思うんだけどなぁ…」

 

 

 

残念だなぁと笑いながら彼女は横に置いていたミネラルウォーターの入ったペットボトルを手に取り一気に呷るかと思えば咽せないようにチビチビと飲み始めた。

 

ディスプレイの中には青が99%を占める中で一つだけ、どうしても崩せない赤があり、アクセスへのエラーコードが写し出されている

 

 

「そんなに大事なのかな? 違うね、気になってるだね…」

 

 

 

うーんと背筋を伸ばして固まっていた体をほぐす

 

 

「実に興味深いよ、異邦人くん…さーって束さんお腹すいちゃったからご飯にしよー」

 

 

篠ノ之 束 この世界においてISを作り上げた若き天才は椅子から腰を上げて部屋を出て行く

 

 

──近い内に会いに行くのも楽しそうだね

 

 

その呟きを聴くものは誰もいない

 

 

 

 

 

 

「ふぁー……よぉ寝た」

 

 

場所と時は変わりここはIS学園の地下にある一室。

 

現在は亮輔の軟禁部屋となっているここで亮輔は愚痴る。

 

昨日の夜に千冬と真耶の二名から尋問を受けた彼はベットの上で身体を起こした。

 

壁時計を見れば時刻はおそらく朝の7時、昨日から今までずっと建物の中に居たので外が朝か夜かは分からないが、昨日の襲撃時に見えた外の景色に月も有ったので、自分の体感と壁時計からすれば今は朝だ

ろう。

 

寝起きで怠い身体で洗面所へと向かい顔を洗い、備え付けられた歯ブラシで歯を磨きトイレで用を足す

 

 

「洗剤は…流石にないか」

 

 

その後は洗濯機へと昨日まで着ていた服を下着もろとも一式、投入、スイッチオン。

 

全裸でスタスタとクローゼットを開けてそこにある服に袖を通していく。

 

何故かツナギが多かったが動きやすいので問題ない。

 

次に彼はキッチンルームへと向かい冷蔵庫、開けられる収納棚の全ての中身を確認

 

 

「なんもない…そりゃそうだ」

 

 

 

気分は旅行先のホテルで自分の家とは違うなーみたいな感覚。

 

この男は自分が軟禁されてる自覚が一切なかった

 

 

(さて、やることやったし……あとは…)

 

 

あとはこの部屋から出るだけだ。

 

この部屋に窓は無く、色々と探してみたが人が出入りできる場所はあのドアのみ。

 

そう判断した彼の動きは早かった。

 

取り敢えずはドアの前まで行きドアノブに手をかけて開くかどうかを確認、開く筈もない。

 

当たり前だと思いながら彼はドアの横にあるパネルに目をやる。

 

昨日の晩に千冬達が退室した時にはこのパネルを操作してから出て行った、ならばこれが開閉の端末なのだろう

 

 

(開けるだけなら簡単なんだが…バレるよなぁ)

 

 

このタイプは経験からして壁の埋め込み式であり力強くで引き出して、配線をショートさせてやれば安全機構が働いてドアの鍵は開くのだが、確実に不正な開け方として監視にバレる。

 

異邦人で一応の戦力も見せた、これで監視してない訳がないのだ、普通に考えれば。

 

だが昨日の二人、千冬と真耶を参考にしてみる。

 

千冬は確かに脅威だが搦め手には弱そうだ、いや、確実に彼女は前線に出て暴れるタイプ、電子戦はおろか裏方の戦いは経験なさそう、つかない、あれは前に出して暴れさせるのが一番の自分と同じタイプだ、だから断言できる。

 

次に真耶だが彼女の方が厄介だ、前線も裏方もそつなくこなす、オールマイティーなタイプだ。

だがだからこそ、彼女生来の気性が今に関係する、昨日の事を考えるにサポートする立場の人間だ、それこそ千冬なんかとコンビ組ませたら戦場で無双するタイプ。

 

だからこそ昨日、千冬と共に彼を尋問しに来たのは悪手だ、いや、千冬と真耶が彼の尋問に来たこと自体が悪手以外の何物でもない。

 

昨日の状況を鑑みるに普通なら彼女達より上の人間、もしくはそれに特化した人間が尋問に来る筈だ。

 

むしろそうなるように動いた、なのに来たのは彼女達二人だ、これは彼女達がここで一番の戦力だと言う証拠に他ならない。

 

勿論、彼女達より上の人間はいるだろうが、所詮は立場が上なだけの連中だろう。

 

そんな連中に遅れを取るほど自分は弱くもないし無能でもない

 

 

「そういえばもう一人居たな……」

 

 

 

思い出すとどうにも引っかかる青い髪をした少女だが今は関係ないと頭を振って、この感情を払う。

 

そもそも考えてる間に開けてしまったので考えてる暇はない。

 

開けたドアの先を覗き込む、見張りもいなければ、見渡した範囲に監視カメラもない、ヤル気あんのかと問い正したくなる程にザル警備だ

 

 

 

 

「こんなザル警備ならそう動いても文句はないってことだろ?」

 

 

 

口元に笑みを浮かべた亮輔は走り出す、あとはなるようになれだと言わんばかりに

 

 

 

 

 

 

 

「ふぁー…おはよう、虚ちゃん…」

 

 

これまた場所と時は変わり、IS学園の寮の一室、ここは更識楯無と布仏虚の部屋だ

 

 

「おはようございます、今日は少しだけ遅いですね…やはり昨日の件が堪えて?」

 

 

「…うーん…どうかしら?…眠いは眠いけど、家で仕事してた時とあんまり変わんないかしら…ふぁー」

 

 

 

「それは堪えていると言っていいかと思います」

 

 

 

そうかしら?と答えながら楯無はベットから降りて洗面所へと向かう。

 

今日は休日、学園も休みだからノンビリと過ごしたいがそう言うわけにはいかない。

 

昨日の件がある、如何に自分がここでは学生であろうとも昨日の現場に居た以上は色々と聞かなければいけないことは山ほど出来た。

 

せっかくの休みなのについてないなぁとボンヤリとした頭で楯無は顔を洗い、意識をハッキリとさせてから歯を磨き終えてから洗面所から出る。

 

そこには先程までパジャマ姿だった筈の幼馴染はいなくメイド服を完璧に着こなした虚がキッチンで朝の一杯を準備していた

 

 

「今日はどちらになさいますか?」

 

 

「うーん……どっちかと言うとコーヒーな気分?」

 

 

かしこまりましたと言う声を背にクローゼットから制服を取り出そうとして手が止まる。

そういえば彼女が朝の一杯を聞いてくるなど珍しい。

いつもなら聞かずに自分の判断で決めているのに

 

 

(それだけ疲れているってことよね…参ったなぁ…やっぱり、休んだ方がいいのかしら?)

 

 

クローゼットを前に考える、制服を着たらその日は少なからず『仕事に関わる、私服なら完全なオフ』と自身の気分だけだが、そう決めているのだが

 

 

 

「お嬢様、準備が出来ました」

 

 

「ひゃあ! あっ…」

 

 

悩んでいる間に準備を終えた虚の言葉に驚いて『私服』を手にしてしまった。

これは仕方ない、手にしたからには着なくてはと楯無は私服を着る事にする。

 

後ろから幼馴染特有のやれやれみたいな視線を感じるが無視することにする

 

 

(どうせ会うなら私服の方がいいわよね?……あれ、誰に会おうと…!?)

 

 

瞬間、顔を真っ赤にする、そんな筈はない、だって一回しか会ってないのだ、そんな筈はないのだ。

 

ささっと服を着て楯無はスタスタとドアの前に歩いていく

 

 

 

「さぁ、今日は休日だしね! しっかりと休みましょ! まずは朝食からよ!」

 

 

「……___ちゃん? コーヒーはどうします?」

 

 

「あっ…ごめん、虚ちゃん!いただきます!」

 

 

無表情だが長年の付き合いだからこそ分かる彼女の悲しそうな表情に楯無は本名を言われた事も忘れて慌ててコーヒーを頂くのだった

 

 

 

「……なにこれ?」

 

 

「……乱闘としか言えませんね」

 

 

 

──キサマァ! どうやってあの部屋から出たぁ!?

 

 

──ふはは!!あんな出てくださいって言ってるザル警備で俺がどうにか出来るかバーカ!!

 

 

──ふ、二人ともやめてくださーい!! 食堂がムチャクチャになっちゃいますよー!!

 

 

 

朝食をと食堂へときた二人の目に飛び込んで来たのはIS刀を持った千冬とその斬撃を笑いながら躱す彼、そして二人の大立ち回りを涙目で必死に止める真耶の姿だった。

 

いや、既に食堂はムチャクチャになってますけど

 

 

 

──秘技、影分身!!

 

 

──完全な質量を持った分身だと!? キサマは本当に人間か!? 私にも教えろそれ!

 

 

──ふはは! チャクラも練れんのか!?この愚か者ぉ!!

 

 

 

 

「……虚ちゃん…私、部屋に帰って虚ちゃんの朝ごはんが食べたい…」

 

 

「ではすぐに準備にかかりましょう。その後はゆっくりとお休みしてください」

 

 

虚の優しさに涙が出そうになる。

もう一刻も早くこの場から離れたいと楯無は思う

 

 

「あ、更識さんお願いします、二人を止めるのを手伝ってください!」

 

 

 

具体的には涙目で必死にこちらに縋り付いてくる緑髪の教師に見つかる前に

 

 

──ゴォッド!フィンガー!!

 

 

──ダァークネス!フィンガー!!

 

 

もう本当にどうしろと? こんな生身で万国ビックリ超常人間ショーしてる二人を前にどうしろと?

 

 

 

「……もう家に帰りたい……簪ちゃんの笑顔が見たい……」

 

 

 

最愛の妹との笑顔を思い出しながら楯無は必死に現実逃避した。

 

その後、二人の大立ち回りは食堂の長、アイさん(あだ名、女性46歳)の覇王断空拳に止められるまで続いたのであった

 

 

 

 

 

 

 

 

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