「小湊裕也さん、貴方は昨日不幸にも亡くなりました…悲しいことですが貴方の人生は終わってしまったのです。」
ある日の朝、自分と目の前にいる銀髪の女性が座っている椅子2つ以外は何もない部屋で目を覚まし、最初聞いた言葉がそれだった。
「死んだんですか?俺が?」
もし本当に死んでしまったにせよ、死因に心当たりがないどころかかつての記憶がほとんどなくなっているような状態なので目の前にいた銀髪の女性に尋ねてみた。
「はい、信じ難いことかもしれませんが昨夜貴方は交通事故で亡くなりました…」
交通事故…か…ショックで記憶がなくなっているのなら合点が行く。詳細にちょっと興味を持ったが聞いたら後悔するかもしれないし、掘り下げるのはやめておこう。
「そうですか…それでこれから俺はどうなるのですか?」
死後の世界では主に天国行きか地獄行きかを宣告されたり、記憶を失ってから再びこの世に転生することになったりするものだが俺はどうなってしまうのだろうか。
「やけに冷静なのですね。大抵の人は悲しんだり動揺したりするものですが…」
これに関しては自分が人として大事な部分が欠けているからという訳では断じてないはず…そう信じたい。
「死んだら無にはならず、ちゃんと死後の世界があるみたいで安心しました…ところで貴方は誰ですか?」
普通なら女性に話しかけることすらないはずなのに何故か普通に話をしている。こういう特殊な状況がそうさせているのかもしれない。
「わ、私ですか?私は女神エリスです。ここで死んでしまった人の案内などをしています。」
女神エリス?もしかして…いや、まさか…そんなはずは…
「勝手ながらかつての貴方のことを少し調べさせてもらいました。貴方はゲーム好きで、そして…あの世界でこれから起こることを知っていますね?」
「は、はい…」
確かに俺は人からゲーマーと呼ばれる程優れたゲームセンスはないが、様々なゲームに手を出し、どれもかなりやり込む程大好きだ。これを聞くということは…
「これはあくまで強制ではありませんが…異世界へ転生してみませんか?」
ただの推測が確信へと変わった。彼女が言う異世界は間違いなく佐藤和真達が冒険しているあの異世界のことだろう。
「現在その世界は魔王軍により、制圧されました。」
何…だと…?制圧?勇者が全員死にましたってことか?何故?訳が分からない…
「エリス様…その話を詳しくお願いします。」
考えても結論が導き出せるわけもなく、直接質問してみると…
「正常だった世界が何者かの介入により、未来を変えてしまったのです。貴方には時空管理局の職員として、過去へ行き、正しい未来へと導いて欲しいのです。」
時空管理局…?なんか白い悪魔がいそうな場所だな…いや、そうじゃなくて…
「俺が介入している時点で100%忠実な正しい未来へ導くことは不可能なのでは?」
そう、正しいあの世界に俺という人間は存在しない。というよりむしろいてはいけないイレギュラーである。
「すみません、語弊がありました。厳密には魔王幹部及びそれらに準ずる魔物や悪魔を倒したり、本来死なない人間を死なせないこと。そして佐藤和真さん一行をちゃんと組ませることなどです。多少は違う結果になっても大丈夫です。根本がどうにかなっているのであれば正しい未来へと収束します。」
今考えればさっきの疑問がどうにかならなければそもそも俺を送るという結論には至らないよな。あれは愚問だったか。
「では、貴方を異世界へ送る前に特典の話ですが…」
俺はここで重大なミスに気がついてしまった…俺は現在は引退したが一応運動系の部活である陸上部に所属していた。だが、自分の速さに奢ったせいで筋トレなどをサボり、ほぼ全くしていない。そんな腕力貧弱の俺が異世界で剣を握り、モンスターを倒せるわけがないのだ。そして俺に魔力がないならその時点で積みゲーだ。
「安心してください。特典といえど沢山の種類の武器やスキルがあります。貴方に合う武器は必ずありますよ。」
俺の懸念していた事を分かっているかのように彼女は沢山の武器やスキルが載っているリストを差し出した。
「なるほど…至れり尽くせりだな…」
リストに載っていた特典はどこかで聞いたことがあるようなミョルニルやロンギヌスなどの戦闘向きのものだったり、あらゆるバッドステータスから守る指輪のようなサポートしてくれるものなどの大量の神器を始め、身体能力の大幅強化など多種多様なチートが揃っていた。
「この中からどれでもお好きな物を一つだけどうぞ。」
カズマが勧められた魔剣ムラマサや怪力なども発見…能力や説明などもしっかり書かれている。性能やカードの説明だけ見たら強そうなのに実際使ってみたら弱かった…なんてことはザラである。試運転が出来ない以上慎重に選ばなければならない。こういうのに迷うのは俺くらいなのだろうか…と、頭を悩ませているとエリスが一つの短剣を指差した。
「僭越ながら私のオススメを言わせてもらいます。この聖剣ライトニングエッジはどうです?」
「聖剣ライトニングエッジ?」
聖剣?俺に聖剣なんか似合わないですよ…と、普段なら返しているが今ここにいるのは女神様である。オススメをすぐ一蹴なんてことは出来ない。とりあえず説明を聞くことにする。
「この聖剣は魔力を光エネルギーへと変化させ、剣を伸縮させたり、光のエネルギー弾を飛ばすこと。あとは光の速さとまではいきませんが高速移動が可能です。そして他にも様々な応用が利きます。まさにエッジの効いた武器です。」
なるほど、確かに強そうな武器だな…あ、最後の言葉何気上手いな。
「じゃあ、この聖剣ライトニングエッジにします。」
ここらで即決する辺り案外俺は流されやすいのかもしれない。
「了解です…こちらをどうぞ…」
俺はエリス様から聖剣ライトニングエッジを受け取った。これから時空を超える冒険が始まるのか…正直信じられないが異世界へ行けるとなると少しわくわくしつつある。
「準備はよろしいですか?」
「はい、問題ありません…」
「この度は過去へ行くという特殊な状況であるため、貴方には色々とお膳立てをしておきます…この世界のこと…よろしくお願いしますね。」
「分かりました…では、行ってきます…」
そうして魔法陣の中央へと足を踏み込んだ。
これから起こることはある程度認識してはいるが全て正しくいくとは限らないだろう。むしろその方が多いはずだ。
いや、待て…エリス様は確か…『カズマさん達一行をちゃんと組ませること』と言っていた。
これってカズマ達とは冒険出来ないんじゃ…そんな俺の中に生じた少しの気がかりは気づいていないとばかりにエリス様はー
「小湊裕也さん。過去の私には既に話はつけてあります。もしも困ったら頼ってくださいね。それでは貴方の冒険が実りある物でありますように。」
そうして俺は眩い光に包まれた。
最後まで閲覧していただきありがとうございます。
恥ずかしながら処女作です(笑)
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好評であれば続けてみようと思います。