異聞 艦隊これくしょん~艦これ~ 横鎮近衛艦隊奮戦録 作:フリードリヒ提督
青葉「どもー恐縮です、青葉です!」
次回予告、定期的にやりたくなってしまう。
青葉「しかも銀○伝14話の次回予告まんまじゃないですか。」
気になる人はようつべで調べて下さい。
青葉「ステマにもならないですよそれ。」
うるせぇ81cm魚雷積んだ内火艇で雷撃やるか?
青葉「ヤメテクダサイシンデシマイマス。」
ちょっと今回はコメ返しの後に前章に引き続いて放談です。(またまたすみません。)
今回からは名前を紹介させて頂きます、御都合が悪い方いましたらご連絡ください。
リオン さんより
「2-4うちも現在そこでストップ中…」
407ページと聞いてハテナマークでしたが、成程前ページの南西諸島沖のワードですね。以前にも言いましたが2-4は悔恨の海ですので記憶に残っています。
実際復帰後攻略する時にレベリングついでに結構周回した覚えがあります(笑
青葉「その時はあっちの私も現役でしたね。」
・・・何が言いたい。
青葉「いえ? 別に。」
OTK さんより
「関数電卓か」
26ページ、魔導電卓術式の事ですね、元ネタは関数電卓・・・ですが科学研究で使うようなのを除けば大抵の計算式は解ける程度の魔術です。因みに直人が錬金術以外で行使できる数少ない魔術だったりします。
因みに名前がぱっと浮かばないのでさらっと募集させて頂きます。
僅か1時間前(15/12/17 9:59時点)にコメント頂きました、ありがとうございます。
青葉「便利なものもあったものですね・・・。」
なおこれは水戸嶋も使えます、日常的に使っていた函数暗号を解く為に習得しています。
青葉「日常的に難解な暗号を使うってどういう環境なんです・・・。」
ナイショです。
青葉「アッハイ。」
コメントして頂きありがとうございます。今後もコメントはこのような形で返させて頂きますので宜しくお願いします。(そういえば紹介分にも書かないとですね。)
今回の設定放談は前章で出たワード、「軍令部第二部」についてです。
そもそも軍令部(大本営)とは何か?
Wikiによると、
「陸海軍を“統帥する”(=率いる)天皇直属の最高統帥機関であり、天皇の命令(奉勅命令)を『大本営命令(海軍は大海令、陸軍は大陸命)』として発令する最高司令部的機能を有する。
その首座に天皇があり、その最高幕僚として「軍令部総長」と「陸軍参謀総長」が連座する形式で、この二人の幕僚の元に大勢のスタッフが作戦の立案から実行に至るまで包括的に指導するという体裁をとっていた。
従来は戦時のみ設置されたが日中戦争(シナ事変)以降事変でも設置されるようになり、対米戦終戦まで半ば常設状態であった。」という事のようです。
要するに旧日本軍の指揮系統のトップが大本営、ということになります。(日中戦争からはその頃既に昭和天皇が主導権を軍に奪われていたので、天皇は裁可するだけと言う様な状態でしたが。)
今回出てきた軍令部第二部というのは、大本営・海軍軍令部第二部がそのモデルとなっています。元々は大本営にも海軍部(軍令部)と陸軍部(参謀本部)が存在していまして、それぞれに組織形成が異なります。
今回は大本営海軍部をモチーフにした組織構成であり、大迫一佐が部長を務める第二部は、『大本営海軍部海軍参謀部第二部』がその元ネタです。具体的には、海軍の「軍備計画・兵器整備・運輸・補給」を担当する部署です。
大迫一佐の軍令部第二部は根本の仕組みとして軍備計画を各艦隊に任せている為、それ以外の3点を主な業務としています。つまり後方担当の部署です。
青葉「海軍参謀部第二部は史実では一応まともに機能していた数少ない部署ですね。」
でも時を経るにつれ輸送船がなかったんや・・・。
青葉「そうですね・・・末期は本当につらかったです。」
なお大戦末期には陸上に発電機を置いたり、陸上から送電線を引いて艦内電力を調達してたそうです。つまりボイラーの火が消えてます。
青葉「後者に関しては現代でもやってる手法ですね。」
燃料の節約にね。でもその当時は燃料が無いからという切実な理由やったんだぜ。
青葉「そう易々戦争なんて、するもんじゃないですね。」
戦争をしないで他国の力をかさに着るのも、国として健全な在り方じゃないけどね。勿論だからと言って常に戦争していればいい訳でもないが。「戦争とは経済行為だ」と言う様に、「正当な権利の元に」「利益を欲するが故に」自分の主張をゴリ押すのに戦争はするもの、それによって認知させるのが狙いな訳で。だから俺は自衛隊なんて張子の虎だと思ってる。
青葉「ボロッカスに言ってますね・・・どこの日章旗の国とは言いませんけど。」
さて、長々とお待たせしました。ようやく横鎮近衛艦隊の出番が訪れます。
無双出来るかはさておき活躍にご期待を! どうぞ!
2052年11月25日3時58分 キスカ島北東沖
水兵A「いやぁ、やっと帰れるんだな。」
水兵B「あぁ、全くだ。本土に家族を残して、こんな北の海まで来たが、無駄じゃなかったと思いたいね。」
水兵A「陽動作戦だからな、戦えばそれでいいなんて、楽な仕事だった。」
水兵B「そうだな、難しい事ごちゃごちゃやらんといかんとなるときついしな。」
水兵A「うん・・・な、なんだあれ!?」
水兵B「どうした―――なんだあの光!」
水兵A「なんか、やばいんじゃないか?」
ギュウウゥゥゥゥゥゥゥゥゥン
水兵B「すぐに報告を――――」
ビシャアアアアアァァァァァァァァァァァァーーーー・・・ン
11月25日8時23分
補給線を断たれ、窮地に陥った日本軍艦隊に対し、深海棲艦は、一挙に反撃に転じた。
~ニューブリテン島・ラバウル沖~
小澤「敵の射程圏内入りまで、あとどれ位だ?」
オペレーター「およそ、7分です。」
小澤「よぉし! 全艦総力戦用意! 総司令部及びパラオ基地艦隊に連絡、『我、敵と遭遇せり』とな!」
オペレーター「はっ! 直ちに。」
小澤「さぁ、間も無く美川艦隊が駆けつける。敵を挟み撃ちに出来るぞ!!」
CIC一同「オォッ!!」
小澤(最も、美川の方も今頃は・・・)
~ブーゲンビル島北岸沖~
美川「いよいよ始まったか・・・。」
オペレーター「敵艦ロックオン!」
美川「全艦ミサイル順次発射、急げ!」
副官「艦娘艦隊は、如何しましょうか?」
美川「艦娘艦隊は正面で敵艦隊の迎撃に当たって貰おう、但し深追いはするな、一撃して離脱するぞ。」
副官「分かりました。」
オペレーター「敵艦発砲!」
美川「回避運動!!」
~ニューアイルランド島北方720km付近~
提督「全艦ついてきてるな!?」
榛名「脱落艦、ありません!」
直人は敵の策を最初に看破した一人であり、その窮地から味方を救うべく全速航行を続けていた。
明石「提督! パラオ艦隊を始め各艦隊が交戦状態に入った模様です!!」
提督「遅かったか・・・。」ギリリッ
直人は想像していたより状況が酷い事に歯ぎしりをしていた。
提督「急ぎニューブリテン島の高雄艦隊救援に向かう! 針路―――――」
金剛「5時方向敵艦隊デス!!」
提督「なにっ!?」
その方角に確かに敵がいた。戦艦を基幹とした大規模な打撃群が迫ってくる。
提督「くそっ、全艦砲雷撃戦用意! 一水戦と二水戦は突入準備、各空母は艦載機を発艦! 第一艦隊は弾薬を極力温存せよ!」
扶桑「わ、分かりました!」
赤城「全艦載機、」
加賀「発艦!」
赤松「よっしゃぁ行くぜぇ!!」
鳳翔「航空隊、出撃です!」
柑橘類「久しぶりの出番だ、行くぞ!!」
全空母から艦載機が次々と飛び立つ。零戦21型や22型、99式艦爆や97式艦攻が敵艦隊へ肉薄する。
霧島「距離1万1000!!」
提督「少し近いな、まぁいい。全艦砲撃準備! 航空攻撃と相前後して撃ちまくれ!」
一同「はいっ!!」
赤城「提督、私達も砲戦に―――」
提督「空母が前にしゃしゃり出るんじゃない、下がってろ。」
赤城「は・・・はい。」
8時39分、直人達横鎮近衛艦隊は、友軍を目前にして足止めを喰らう格好になった。
~ミッドウェー島近海~
氷空「むぅ・・・止むを得んか。」
呉近衛赤城「提督?」
氷空「艤装を出せ! 呉鎮“防備”艦隊は集結しろ!」
呉近衛赤城「ですがそれでは隠匿性が・・・!」
氷空「構うものか、現状を打破し撤退する方が先だ!!」
呉近衛赤城「わ、分かりました。」
水戸嶋は格納庫へと走る。現状を打破する為に。
11月25日11時09分
~ラバウル沖~
副官「敵味方の損害は絶対数に於いてこちらが有利です。ですが艦娘艦隊の燃料不足もあり敵の方が数で勝ります。それに・・・」
小澤「我が艦隊は食い物も無く、士気の低下が著しく、また前線にいても燃料欠乏で戦闘継続不能な艦娘も次第に増してきている。」
副官「はっ、このままでは・・・。」
~ラバウル沖・南方棲戦鬼艦隊~
ル級改Flag「南方棲戦鬼様、敵ハ既ニ、我々ノ包囲下ニアリマス。」
南方棲戦鬼「ヨシ、全艦ニ伝エロ。“撃テバ当タル、只管撃チマクレ”トナ。」
ル級改Flag「ハッ!」
~ガタルカナル島北方沖~
副官「敵の追撃を振り切れません。どうされますか?北村提督。」
北村「どうするも何も、ここは逃げの一手じゃ。全速でパラオ方面へ撤退するんじゃ。」
副官「ハッ!」
北村「・・・やれやれ、撤退準備をしていた我々でもこの有様、他の艦隊はダメかね・・・。」
副官「何か、仰いましたか?」
北村「いやいや、何でもない。年寄りは独り言が、多いのでな・・・。」
~南方棲姫艦隊~
南方棲姫「ふむ、最初から逃げに徹するか・・・戦術的には正しいが――――」ニヤリ
~ブーゲンビル島北岸沖~
美川「直線運動はするな! 蛇行しつつパラオ方面に撤退する! 揚陸艦艇に動けなくなった艦娘を収容しつつ進め!」
副官「分かりました。ところで提督、小澤海将補からの救援要請は如何しますか?」
美川「援護が出来る余裕はない。小澤さんには悪いが・・・。」
副官「・・・分かりました。」
オペレーター「5時方向魚雷推進音! 本数4本!!」
美川「迎撃短魚雷で撃退せよ!」
オペレーター「ハッ!」
CICスタッフ「トラックナンバー2107から2113にミサイル発射します!」
美川「よし、発射!」
副官「我々は助かる、のでしょうか?」
美川「―――分からん。天に祈ろう。」
~ラバウル沖~
副官「小澤提督。我が艦隊はこの短時間で既に2割の損失を出しています、艦娘艦隊も約5%が沈没ないし、行動不能に陥っています。退却か、玉砕かを選ぶしかありません。」
小澤「不名誉な二者択一だな。えぇ?」
精悍な顔つきにニヤリとした笑みを浮かべて小澤海将補は言った。
副官「・・・。」
小澤「玉砕は性に合わん、逃げるとしよう。」
副官「ハッ!」
小澤「損傷した艦を内側に入れ、紡錘陣形を組め! 敵の防御陣の一角を突き崩すんだ!! 艦娘艦隊も同じようにするんだ、急げ!!」
小澤海将補の策は、北の敵包囲の薄い部分を突き崩す事だった。
小澤「砲火を集中しろ! 撃って撃って撃ちまくれ!!」
~南方棲戦鬼艦隊~
南方棲戦鬼「怯ムナ! 敵ハ最後ノアガキダ!!」
タ級Flag「北側ノ防御陣ガ!!」
南方棲戦鬼「ナニッ!?」
小澤「今だぁっ!!」
南方棲戦鬼「ウヌッ!?」
敵包囲の間隙を突き、小澤艦隊の紡錘陣先端が、敵包囲を突破した。
副官「提督、本艦も!」
小澤「まだだ! ギリギリまで踏み止まって味方の退却を援護する!」
小澤海将補の空母しょうほう(翔鳳)もミサイルを撃ちまくる。その間に艦隊の半数以上は脱出に成功した。
小澤「よし、脱出する! 最後のミサイルを、全弾発射しろ!!」
全ミサイルランチャーが、その最後の装填弾頭を射出する。ガスタービンはフル回転で最大戦速まで艦を加速させていく。
その時――――
ズドオオォォォォォーーーーーー・・・ン
小澤「うおっ!?」グラグラッ
艦が被弾し全体が振動する。小澤もよろめいて転倒した。
副官「被害状況知らせ!」
オペレーター「右舷後部スポンソン被弾、SSMミサイル発射機が誘爆した模様!」
小澤「に、二次被害はどうだ!」
オペレーター「誘爆の影響で右舷後部舷側エレベーターのレイルが歪んだようです、使用不能!」
小澤「くっ・・・まぁいい、それで済んだのを幸いとしよう。全艦速やかに――――」
オペレーター「前方新たな敵艦隊! 数・・・およそ7万!!!」
小澤「どこから来た!!」
オペレーター「恐らくは・・・未制圧のトラック方面かと・・・。」
小澤「これは・・・嵌められたぞ!!」
副官「提督!!」
小澤「分かっている。このまま強行突破を図る! 突撃!!」
11月25日12時01分
~ガタルカナル南東沖~
戦列の南端にあって、ヌーメアからの敵襲を警戒していた舞鎮艦隊は、深海棲艦高速機動群集団に奇襲され、這う這うの体で離脱を図っていた。
副長「ッ! 提督、あれを!!」
栗畑「む? んなっ!!」
栗畑海将が見た先には、あまりの進軍速度に日本艦隊内に入り込んでしまった深海棲艦の姿があった。
栗畑「な、なんと素早い・・・!!」
副官「まるで、嵐か何かの様な・・・!」
駆逐棲姫「これは・・・少し速度を落としましょ。距離を置かないと攻撃も出来ないわ。」
ネ級Flag「はい、全艦減速!!」
潮が退く様に深海棲艦が後退、そこから猛攻が始まった。
~ミッドウェー沖~
水戸嶋「全艦追い過ぎるなよ! 死にたくなければな。」
ズドオォォォ・・・ン
水戸嶋「む!?」
その爆発音は呉鎮海軍部隊旗艦、大型イージス巡洋艦みょうぎからのものだった。
北上「あれってCICの辺りじゃない?」
水戸嶋「卿もそう思うか・・・。」
嫌な予感を覚えつつも、それにばかり構ってもいられない状況であるのも確かだったが・・・。
11月25日12時39分
~ニューアイルランド島北方630km地点~
提督「撃てぇ!!」
ズドドォォォォォーーンドドドドォォォォーーーーー・・・ン
金剛「何としても切り抜けるのデス!! 突撃デース!!」
妙高「2時半の方向敵影です!!」
提督「何ィ!?」
直人はその方角に敵がいる事を把握した、半ば半包囲された形になる。
提督「・・・。」
明石「提督!」
直人は決断した。
提督「よし、一旦後退して陣形を再編する。急げ!」
金剛「退くんデスカ!?」
提督「そうだ、ここで沈みたくはないだろう?」
金剛「・・・そうですね、分かりまシタ。全艦後退デス! 急いで!!」
村雨「はぁーい! あっ!!」
村雨が声を上げた次の瞬間―――
ドオオォォォォォーーーーー・・・ン
提督「村雨!!」
村雨「ううう・・・本当に困るんですけどぉ・・・。」(涙目
艤装から黒煙を出し膝を突く村雨。
白露「村雨を援護!」
時雨「そうだね!!」
傍にいた白露達がカバーに入っていた。
雷「村雨中破、後退を具申するわ!」
提督「・・・許可する、但し出来るだけ迅速にな。」
雷「了解!」
直人は、艦娘達の成長を感じていた・・・。
~モレスビー沖~
門田「全艦落ち着け! 冷静に対処しろ!! ここを抜ければ帰れるぞ!」
副官「あっ! 駆逐艦いなづま、右舷側より本艦に激突します!!」
門田「なんだとっ!?」
ゴゴオオオオォォォォォォォーーーーン・・・
門田「うおわっ!!」
上海艦隊は既にダレス海峡方面へ敗走中だったが、それを追撃したデュアルクレイター指揮の艦隊によって混乱の渦中にあった。
そんな中、ミサイル駆逐艦「いなづま」が、旗艦であるイージス巡洋艦「すずや」に衝突したのだ。
門田「そっ、損害状況を!」
オペレーター「駄目です、艦首の3分の2が切断されました。浸水が止まりません!!」
副官「司令官、退艦を!!」
門田「くっ―――止むを得まい・・・!」
門田一等海佐は渋面を作ったものの副官の進言を容れ、総員退艦命令を出し、自らも命からがら脱出した。
イージス巡洋艦すずやは、遂に帰る事が叶わなかったのである。
~ガタルカナル南東沖~
舞鶴艦隊は壊滅状態にあった。与えられた艦艇はすっかり消耗し尽し、完全に敵の突撃陣に食い殺されたような状態であった。
栗畑「・・・味方は後、何隻になっているか?」
副官「ハッ―――艦娘艦隊は防備艦隊の艦艇80隻が未だ無傷で残っていますが、損傷を負い行動不能となった艦が1000隻余り、他の艦娘は沈没するか航行不能となり、或いは四散した模様。艦艇はこの旗艦「はやしも」他、護衛艦2隻を、残すのみです。」
栗畑「そうか・・・」
タアァァァァーーーン
副官「っ!! 栗畑海将!!」
副官が駆け寄るが既に遅かった。
副官「・・・指揮権を引き継ぐ。全艦機関停止、敵艦隊に交戦の意志の無い事を伝えろ。総員退艦せよ。」
最早、水上艦で逃げる道はなかった。副司令官久東海将補の指示で、舞鶴艦隊司令部は、艦を放棄する事を命令として発したのであった・・・。
浜河「・・・まずいね・・・。」
指揮官自決の報はすぐに浜河元帥の舞鎮近衛艦隊に伝わった。
榛名「どうしますか?」
浜河「・・・よし、僕達の戦いはもう終わった。この上は、傷ついている味方や脱出する将兵たちの突破口を作ろう。」
榛名「はい。」
しかしこの時既に敵艦隊は包囲を解いており、彼らが一戦交えることは無かったのだが。
11月25日15時01分 大本営
土方「永納海将閣下。既に上海・大湊・舞鎮艦隊は通信途絶。呉鎮艦隊の小賀海将は重傷、佐鎮の吉村海将は戦死。呉鎮は艦艇の半数と艦娘の3割超、佐鎮は海軍が艦娘艦隊を逃がすべく奮戦し、艦娘艦隊は1割弱の損失に留まりましたが、海軍は2隻を残し、全滅です。リンガ・パラオの両艦隊は辛うじて敵の追撃を振り切りましたが、やはり3割近い犠牲を出しています。高雄艦隊は先刻まで健在でしたが、ニューアイルランド島の北側で足止めを受け、既に4時間弱が経過しました。我々は、敵の策に乗せられたのです。」
戦況は深刻なまでに悪化していた。その報告を永納海将は静かに聞いていた。明らかに彼の不徳の成すところであるのは、実感していた。
呉鎮艦隊は副官の指揮で退却が出来ているものの、舞鎮艦娘艦隊は四散してんでんばらばらに、上海艦隊は司令部が指揮能力を喪失し潰走、大湊艦隊は艦艇2隻と艦娘の6割を何とかまとめ急速撤退を行っていた。報告によれば大湊艦隊は突如謎の光線に襲われ、瞬時に旗艦他艦艇の殆どと艦娘の4割を消失したと言う。
土方「今は一刻も早く、各基地に撤退すべきです。閣下、御決断を。」
永納「―――兵力の再編成を行う。SN部隊をソロモン北方沖に集結させよ。」
土方「閣下・・・!!」
永納「このまま引き下がる訳には行かんのだ。SN全軍ソロモン北方海域で集結! これは命令である!!」
これは、永納海将個人の、意地と矜持の問題だった。
11月25日16時18分
~ニューアイルランド島北岸沖~
小澤「簡単に言ってくれるものだな。我が艦隊には既に戦える艦艇はほぼいない。待ち伏せを退け辛うじて浮いてるだけだ。この上一戦交えるのか?」
副官「しかし、行かねば敵中に孤立してしまいます。」
小澤「そうだな・・・。」
~ニューギニア北岸・サラモア沖~
提督「艦隊集結だと?」
明石「傍受した通信によると、その様です。」
直人は何かに使うかもしれないと思い牽引してきた内火艇に搭載した通信機でその事を知った。
提督「馬鹿な・・・撤退すれば傷口を広げなくても済むのに。」
明石「どうしますか? 我々も――――」
合流するか、そう言おうとした明石の一言を直人は遮った。
提督「いや、耳目に触れる所で大暴れするのはまずい。我が艦隊はあくまで極秘でなくてはならん。」
明石「ではどうするんです?」
提督「最終局面で敵陣の一角を切り拓く。恐らく包囲されてるだろうし戦える艦も僅かな筈、そこから逃げて貰う。」
即ち敵包囲を外から食い破り、一時的に維持した後味方が逃亡出来たタイミングで自分達も退く、ということだ。
明石「では表立って参戦はしない、と?」
提督「そうだ、機密保持の関係で積極策に出れない分、他の艦から反発もあろうがな。」
懸念材料はそこだけだった。
提督「我々は近衛艦隊だ。その存在は極秘とされ、俺達の存在は公表されていないし、俺も死んでいる事になっている。そりゃそうだ、どうとでも理由は付けられるからな。」
明石「提督―――!」
その言い様に明石は目を見張って声を出した。
提督「俺達は闇の艦隊、存在が他に知れればはぐれ艦隊、海賊と同じと扱われる危険だってある。そうなれば艦娘と刃を交える事にだって繋がりかねん・・・俺だって、目の前で艦娘や船が、沈むところを傍観するしかないのは悔しいんだ。」
明石「・・・。」
明石は瞑目した。彼の中には二つの激流が渦巻き、激しくせめぎ合っている事を知ったからだ。
直人はそもそも守勢に向いた指揮官ではない。
その真髄は、守勢にあっての攻勢防御と、攻勢時における高速機動展開と速攻によって形を成す事が多い。これまでだってそうだったし、これからもそうだろう。
防衛省が行った直人を司令官としたこの人選は、土方らにとっては最高の、幹部会などからすれば最悪の人選であったと言える。そしてその真髄の片鱗が今、発揮されようとしていた。
提督「作戦はこうだ。我々はまず敵包囲の外側で待機して戦局を見守る。そして時機を見て、俺がウラズィーミルで敵陣を奇襲し包囲を消し飛ばす。その隙間に我が艦隊を二手に分けて入り込ませ、隙間を埋めさせぬよう防壁となり猛攻を加える。味方が離脱し終わったら、素早く陣を纏めて撤収する。殿は俺がやるが各艦は反撃態勢を整える。」
明石「でも相手が追ってきたらどうするんですか?」
提督「その時は俺達の命運も尽きたって事さ。」
明石「え!?」
その一言に明石は驚きを隠せなかった。
提督「今回は相手の知能を試す意味もある。此方が万全の態勢で退いていると知れば、普通追撃はしない。されれば大損害を与える代わり俺達は海を枕に死ぬだろうね。」
明石「提督・・・。」
提督「何、そう容易く死ぬ気はないさ。」
この戦い、正面からまともにぶつかれば、圧倒的大軍で迫る深海棲艦を相手に、勝算など初めからないのだ。だが一時的に食い止めるだけなら話は別、という訳だ。
提督「だがこれには、艦娘達の迅速な展開が欠かせない。うまくいくかね。」
直人は、人として生まれ変わった艦娘達の特徴である瞬発力と機動性を最大限活用すべく、機動力に重点を置いた訓練をこれまで積ませてきている。
その結果が夕立だったのだが、彼女は傑出し過ぎているだけである。
提督「少なくとも、美川提督、小澤提督、そして北村提督にはこれからも、日本を守って貰わんといかんからな。でないと本土が深海棲艦に跳梁されてしまう。」
明石「日本を再び焦土としない為にも、ですね?」
提督「そうだ。例え一分でも、戦略的勝利の可能性があるなら俺は賭ける。」
明石「提督・・・。」
那智「うむ! その意気や良し!!」ドドォォーーン
提督「いっ!?」ビクッ
明石「ふええええ!?」ガタタッ
直人の背後から現れたのは、左翼にいた那智だった。
提督(気付かなかった・・・)ドキドキ
実は背後からのさり気ない接近に弱い直人である。心臓バクバクである。
那智「私は全面的に協力させてもらおう。」
提督「そ、そうか・・・ありがとう、すまんな・・・。」
那智「なに、私達は提督の命令抜きじゃ、動けんからな。」
提督「無しで動く奴もいるけどね・・・。」
苦笑してそう言う直人であった。
直人はその日の内に左右両翼の戦力の振り分けを決めた。
右翼 金剛指揮
戦艦:金剛・榛名・山城・伊勢
重巡:妙高・那智・羽黒・最上
軽巡:球磨・多摩・大井・木曽・川内
駆逐艦:白雪・初雪・漣・潮・初春・子日・若葉・白露・夕立・大潮・満潮・黒潮
左翼 霧島指揮
戦艦:比叡・霧島・扶桑・日向
重巡:高雄・愛宕・摩耶・筑摩
軽巡:龍田・長良・五十鈴・由良・神通
駆逐艦:深雪・叢雲・綾波・響・雷・電・時雨・村雨・五月雨・朝潮・陽炎・不知火・島風
中央/後衛 紀伊指揮
中央
戦艦:紀伊
重巡:青葉・加古
軽巡:天龍
駆逐艦:睦月・如月・長月・菊月
後衛
空母:赤城・加賀・蒼龍・鳳翔・飛鷹・祥鳳・千歳・千代田
軽巡:名取(7水戦旗艦)
駆逐艦:皐月・文月・望月・三日月
11月25日22時11分
名取「さ、流石に御冗談ですよね!?」
提督「駆逐艦の頭数の事か?空母が危なくなれば俺も戻るから、その時は呼んでくれ。」
青葉「流石に軽巡1と旧式駆逐艦4で空母8隻の護衛は、無理ですからねぇ・・・。」
睦月「むぅ~・・・。」
長月「なぜ私達は後衛なのだ!? 私達だって戦闘くらいやれる!」
まぁ当然反発がある事は覚悟していたが、これも想定内だった。
提督「七水戦には今回も前線から引いてもらい空母護衛に就いてもらう。同時に俺を含む本隊の護衛も兼ねるだけの事だ。不満か?」
菊月「睦月型は、古いとでも言いたげだな。」
早とちりして憤慨した菊月がそう言う。
提督「おっと、菊月の言い様は些か心外だな。別にそんな事は思ってないし、単なるエゴだよ、これは。」
菊月「エゴ、だと・・・?」
提督「そう。お前たち睦月型には、出来るだけ硝煙の中とは別の場所に、立たせてやりたい、とね。菊月達はまだ幼い。それなのに我々提督はそれを戦いの道具として使っている。俺は出来るだけ君達に戦って欲しくないんだ。」
いつか大淀に彼は語った。
『睦月型の様な幼子を戦場に出すとは、提督というのも業が深い』と。
直人は自らの意志の範疇に於いては、睦月型に戦わせるつもりは無かった。例え綺麗事だとしても、それだけは貫こうと、心に決めていた。
長月「・・・綺麗事だ・・・綺麗事だよ司令官。」
提督「そうさ、だからこれは俺のエゴだ。だがただの綺麗事でも、幼子を使うほど我が艦隊の戦力は困窮していないぞ?」
長月「だろうな・・・だが、私達だって艦娘だ、それなりの矜持はあるつもりだ。」
睦月「長月ちゃん・・・。」
そろそろ止めておこうよ、そう言おうとした睦月だったが、言葉が出てこなかった。
提督「―――いいか長月。軍隊や艦娘艦隊というのは一つの道具だ。それも無くてもいい類の道具だ。それを知った上で、出来るだけ無害な道具になってほしい。君達には無限の未来があるかも知れない。それを悔恨と自責の念に駆られて生きたくは、無いだろう?」
皐月・三日月「司令官・・・。」
菊月「・・・未来、か。」
その言葉を、菊月は奥歯で噛みしめる様に呟いた。
提督「君達艦娘が、この戦いが終わった後どうなるかなんて誰にも分からない。居られるのも今だけかもしれない。だけど君達には、恐怖や後悔に囚われず、今を平穏に暮らす権利がある。それが今の日本という国だからだ。お前はもう、血猛き戦士の眠る、水底の箱舟ではないだろう?」
諭すように直人は言う。
長月「・・・そうだな。私達は、最早単なる“戦闘艦”ではないのだったな。」
提督「あぁ・・・そうさ。」
長月「分かった、司令官。指示に従おう。」
長月はようやく分かってくれたのだった。
菊月「だが・・・敵が近接してきたなら、その時は発砲してもいいのだな?」
提督「無論だとも。その身を守る為なら手は惜しむなよ。」
この時放たれた言葉は、自分達を害する者に容赦をしない、直人の信念を形にした命令であった。
当時、横鎮近衛艦隊に勝る艦隊は無い。
都合4カ所に近衛艦隊が設置され巨大艤装が配置されているが、近衛艦隊でもトップの練度を持っているのが、横鎮近衛である。
他の通常艦隊にしろ、物量はあっても練度は無く、更にハワイ沖や今回の出兵でかなり沈めてしまっている。故に練度向上や装備の質的向上は相当に遅い。
徴用された提督達は、誰にも分らぬ艦娘の扱い方に手をこまねき、扱いかねている部分も多く、故に損失がかなり大きかったのも、損耗が拡大した大きな要因となっていた。無論基地クラスや超兵器クラスの敵の強大な力が、消耗を強いて来たのも事実である。大湊艦隊が潰滅した“謎の光線”がいい例であろうし、知能体が多数いる深海棲艦を、人間側がなめてかかったのも一因ではあった。
その中でも直人にせよ水戸嶋にせよ、艦娘を扱いかねているのは事実であった。だがその中にあってよく立ち回り、戦力の保全に努めてきたと言える。無論流血が無かったとは言えない。金剛や飛龍、雪風を始め直人もかつて、少しでも運が悪ければ死んでいる程の瀕死の重傷を負っている。
これは並大抵の事ではない。だがそのおかげを以て、横鎮近衛は最強の艦隊として、陰に君臨していたのである。それが遊んでいる状態というのが、この状況を作ったと言えなくはないが、それの責任も彼らに帰せられるべきところではないし、泰然自若・“動かざること山の如し”を地で行くようなやり方ではあったが、その結果と成果が今、示される時が来たのである・・・。
~ガタルカナル島~
ル級改Flag「敵は、このガタルカナル北方550km付近に集結するつもりのようです。飛行場姫様。」
飛行場姫「最早戦エマイニ・・・イイデショウ。奴ラガソロモンヲ墓ニ選ブト言ウナラソノ願イヲ叶エテヤロウジャナイ?」
ル級改Flag「はっ。全艦隊、敵の集結点に進出せよ!」
駆逐棲姫「へぇ、まだやるんだ。いいわ、なら徹底的にやりましょう。艦隊針路350、急ぐわよ!」
残敵の掃討中命令を受けた駆逐棲姫は、集結命令地点への移動を開始すべく命令を出した。
ネ級Flag「ハッ! 直ちに。残敵掃討はどうしますか?」
駆逐棲姫「放っておきなさい。戦意を失った敵を無闇に追撃しても、誇れはしないわ。」
ネ級Flag「ですが、後日の禍根を断つ意味で・・・」
副官たるネ級Flagの意見は最もだったが、それを駆逐棲姫は制した。
駆逐棲姫「セーラム、落ち着くの。これは命令なのだし、従うのが道理よ。」
ネ級Flag「分かりました、ギアリング・・・いえ駆逐棲姫様。」
ネ級フラッグシップ「セーラム」は、駆逐棲姫「ギアリング」の指揮に従った。
深海各部隊は北進を開始、その結果、多くの艦娘が窮地を逃れ、生還に成功したのである。
11月27日正午過ぎ 日本艦隊集結地点付近
北村「それにしても貴官らが無事でよかった。それに、紀伊元帥の来援には感謝の意に堪えない。」
提督「いえ、とんでもありません。どうやら我々が相手にしたのはトラック島からの一隊だったようです。」
退却する際に苦心したことを思い出しながら、直人は言った。
小澤「では貴官は私の恩人という事だな紀伊元帥、敵戦力を分散してくれた。」
提督「いえいえ、私は別に大したことはしてませんから。それにこれは作戦の不備に起因するものですから。それよりも、提督方にお尋ねしたい事があります。」
美川「それは?」
提督「艦艇の残りの弾薬量です。」
北村「成程。要するに、我々に残された継戦能力か。」
提督「そうです。」
なぜこのような事を聞いたかと言えば、この作戦はタイミングが重要となるからである。少しでもタイミングを誤れば、横鎮近衛艦隊か、包囲された友軍のどちらかに、余計でかつ甚大な損害が生じうるからである。
北村「本艦の残った弾薬はスタンダードミサイルが10発と、76mm速射砲弾53発、20mm機関砲弾約1200ほどだそうじゃ。他のどの艦も、弾薬は9割以上使い果たしているようでな。」
小澤「我々もそうだ。本艦のミサイルは全弾使い果たしたし、CIWSの弾も500発を割っている。」
美川「こちらももってせいぜい3時間というところ、全力戦闘では1時間半だ。」
他二人も同意する様に頷く。
提督「分かりました。では私の考えている策を説明します。」
直人は通信を繋いだ3人に、2日前に考案した作戦を説明した。
北村「成程、大胆な策じゃな。」
美川「しかしそれでは全滅の危険がある。」
提督「ご心配なく、我々は敵の一部分を相手にすることになります。結果それは縦深陣のようなものですが、我々が穿った包囲の隙間から脱出頂ければ、諸提督方にはそれでいいのです。」
小澤「・・・分かった。貴官の意見は最もだ。この上は精々派手に敗走するとしよう。」
覚悟を決めた様子で小澤海将補が言った。
美川「そうだな。艦載機も総動員しよう。」
小澤「うむ。」
北村「しかし、我々の脱出後はどうするのかね?」
提督「我々が殿を務めます―――御心配なく、玉砕は趣味じゃありませんから。」
北村「そうか。紀伊くん、死ぬんじゃないぞ。君が儂らを必要としたように、儂らにも君は必要なのだからな。」
提督「十分心得ておりますとも。では、御武運を祈ります。」
北村「うむ。」
三提督と直人は敬礼を交わし、直人は通信を切った。
集結点には、健在だった高雄・リンガ・パラオの3艦隊に加え、指揮官が自決ないし敗亡した舞鎮と上海の敗残部隊が―――もっとも舞鎮に残った艦艇は1隻も無かったが―――合流し、寄せ集めの混成軍という様相を呈していた。
大型イージス巡洋艦4隻・イージス巡3隻・イージス駆逐艦4隻・汎用駆逐艦16隻・汎用護衛艦6隻・イージス護衛艦3隻・空母3隻・ヘリ空母3隻・強襲揚陸艦13隻・給糧艦2隻/糧秣合計10トン未満・弾薬補給艦3隻/弾薬合計720トン。泣いても笑ってもこれが、3提督の元に残った、SN方面遠征軍本隊の戦闘可能な艦艇であった。
これにSN方面に向かっていた艦娘艦隊5個の内、合流して来て尚且つ戦闘に耐え得る艦、総勢10万5000余隻が結集され、更に小澤艦隊の4隻の空母の内、健在な旗艦しょうほう含む3隻の空母と、統合戦闘機F35のA型76機、B型49機、E型67機、合計して193機の母艦航空隊。ヘリ空母などに搭載された70機余りの戦闘ヘリが加わる。
強襲揚陸艦と損傷度合いの酷い艦艇は全艦が本土への帰還途上にある。航行不能、または戦闘不能となった艦娘を満載して。また空母とヘリ空母は本隊後方に位置している。いうなれば、日本国軍の殿とも言うべき戦力であった。
陣容だけを見れば、堂々たる艨艟である。しかし弾薬は窮乏し、食料に事欠き、損傷艦が全体の半数近くを占め、まともに戦えるのは航空隊と艦娘達のみという、“惨状”であった。
11月27日13時28分 ガタルカナル北方・横鎮近衛艦隊集結点
提督「・・・無残なものだな。遠征軍は艦娘艦隊では残存の約11倍強、艦艇でもこれの3倍近い数がいたと言うのに。」
ビーッ、ビーッ・・・
提督「はい。」
直人の艤装『紀伊』に直通で通信が入ってきた。
浜河「やぁ。元気かい?」
提督「駿佑! 無事だったのか!」
浜河「ハハハッ、名前呼びになってるよ。まぁね、舞鎮近衛、52隻全艦健在さ。僕含めてね。」
提督「あぁ・・・良かった! 本当に!」
浜河「君は今どこに?」
提督「あぁ、集結点の北西370km付近にいる。」
浜河「そう、そこで待機するんだね。」
提督「・・・あぁ。流石は『駿河』だな、お見通しという訳だ。」
浜河「フフッ。」
浜河駿佑の艤装は戦艦『駿河』、情報戦に特化された性能を持つが、火力もそれなりに強力である。無論その最大口径は61cmである為、水戸や紀伊には届かない。
提督「だが極秘回線だぞオイ。」
浜河「適当にチャンネル合せたら聞こえちゃった♪」
「嘘こけやおい。」
浜河の言葉に思わずツッコミを入れる直人ではあったが、それに浜河は笑って言った。
「まぁ、適宜突入を頼むよ。白馬の王子様♪」
提督「おまっ―――はぁ、まぁいいさ。ちゃんと持ちこたえてくれよな、行く時に死んでたら許さんぞ。」
浜河「勿論さ。この艤装が伊達じゃないって事を証明する機会だからね。」
提督「おう、頑張れよ。」
浜河「うん。」プツッ
そして浜河の方から通信を切られるのであった。だが直人は懐かしそうに言った。
「フフッ、良かった、無事で。」
「お知り合いから、なんですか?」
いつの間にやらいた明石が言う。
提督「・・・明石、いつの間に内火艇横付けしたよ。」
明石「さっきですよ?」
提督「おおう・・・。」
会話に夢中になっていて気づかなかった事に顔を覆う直人である。
明石「それより・・・」
提督「ん? あぁ・・・まぁ知り合いっちゃ知り合いだな。5年前の元同僚さ。」
明石「5年前・・・?」
提督「さぁ、そろそろかね。」
鳳翔「提督、敵です。方位は本艦隊正面(南東向き)を基準とし、11時半から1時の方角に展開しています。」
提督「左右対称の扇型だな?」
鳳翔「はい、そうです。」
提督「規模は分かるか?」
鳳翔「お待ちください・・・・・・規模は5個艦隊、1個が50万から70万程度の戦力を従えているようです。」
概算250万~350万というとんでもない数である。
提督「これが南方海域の底力か。」
鳳翔「そのようですね。」
提督「宜しい、その10分の1は沈めてやる。」
鳳翔「気合入ってますね・・・。」
夕立「やるっぽーいっ!!」
那智「夕立よ、出番はもう少し先だぞ。」
夕立「待ち切れないっぽい!!」
時雨「まぁまぁ、気長に待とうよ夕立。」
張り切り過ぎている夕立を諫める時雨。
夕立「むー・・・そうするっぽい。」
赤城「1航戦の名に懸けて、勝利を!」
加賀「提督に、栄光を。」
蒼龍「飛龍に手土産を!」
妙高「提督のお役に立ちます!」
神通「その為にも、勝ちましょう!」
二水戦メンバー「オー!!」
川内「夜じゃなくても、私達が一番よ! 締まっていこう!!」
一水戦メンバー「オー!!」
提督(こんな時なのに士気も高いな。これなら・・・いける!)
直人は確信に似たようなものを覚えていた。
11月27日14時01分、戦端は開かれた。
北村「撃てぇ!!」
美川「テェーッ!!」
小澤「全機突撃! 主砲射撃始め!」
駆逐棲姫「征け! 勝利は目前だ!」
戦艦棲姫「撃テ!」
デュアル「ファイア!!」
南方棲鬼「ファイアー!!」
南方棲戦鬼「突撃ダ!!」
霧島「始まりました、提督。」
提督「そのようだね。今は待機だ、大丈夫、出番はすぐに来る。」
金剛「り、了解デス・・・。」
この直前金剛が暴走しそうになっていてほとほと困っていた直人である。
直人は3人の提督の言っていた弾薬量から、継戦能力はせいぜい1時間半と見積もっていた。無論そのギリギリまで待つのは得策ではないが、そのタイミングを計るのが重要であった。
~駆逐棲姫艦隊~
ネ級Flag「“全レーダー使用不能!! 敵によるジャミングですッ!”」
電撃的に敵を包囲した敵軍の内、西側から北西にかけてを担当していた駆逐棲姫達は、突如レーダーが使えなくなった。
駆逐棲姫「なんですって―――!? 照準をレーダー照準から光学照準へ切り替えなさい!」
ネ級Flag「“は、はい!”」
セーラムの声には、普段なら有り得ないノイズが混じっていた。
駆逐棲姫(おかしい・・・何かが変だわ・・・。)
その状況に駆逐棲姫は疑問を抱いた。そもそも、レーダーは電波を発射して目標を検知する、電子戦装備の基礎とも言うべき装置である。無論使うものは電波であるから、特定の周波数帯というものがある。
しかし深海棲艦や艦娘が使う電子装備と言えば、霊力を交えて機能している、人類の技術とは異なる形態の特殊なものであり、それに対してこれまで人類が積み上げてきた技術では干渉するどころか、混線させる事すらおぼつかないのだ。
だが事実として、この時一部の深海棲艦部隊はその全てが余りに強烈なジャミングの為、部隊間の通信でさえ困難をきたすような状況になっていた。それはどう考えても普通ではない。
駆逐棲姫(とうとう、人類が我々の電子機器を打ち破る方途を見つけた・・・? それとも何か別の方法で? ・・・いえ、それでは―――)
ギアリングが至った結論はそこだった。ジャミングの中で、アクティブジャミングの片割れである所謂
よって電波妨害には3つの方法がある。
一つは相手の使用周波数帯が特定出来ている場合に行う「
二つ目は「
これらに代替する方法として三つ目の「
しかしどの方法も、これまで深海棲艦には通用しない筈のものだった。そもそもとして、この世界自体が、強力なジャミングに晒され続けているようなものである以上、発信する側も受信する側も、それこそ高出力で突破できる数百㎞程度ならともかく、それ以遠では通信を始めとした電子装備を使う事すら出来ないのだ。よって、電子戦技術は前提が成立しない。ましてや、人類側の
駆逐棲姫(だが現実として、我が方の通信やレーダー波が脅かされている。いったい何が―――)
一方で日本艦隊は完全に包囲され、その状況にあっても一進一退の攻防が行われていた。その中にあって、海上自衛軍諸艦隊は艦娘艦隊と共同して善戦こそしたが、所詮多勢に無勢に過ぎなかった。
14時38分 空母しょうほう
「“敵艦1隻撃沈!”」
「“誘導爆弾1発命中!”」
「“こちらブラボー3、損傷の為帰投します。”」
小澤「こちらフェニックス、帰投を許可する。」
「ブラボー3、了解。」
オペレーター「司令! 敵機が数機向かってきます!」
小澤「艦隊上空のデルタチームに対処させろ!」
オペレーター「はっ!」
小澤艦隊はその航空戦力の総力を挙げて敵艦隊を空爆していた。
ジェット機な為に深海の艦載機は追い付けず、ステルス機であるが為にレーダーにも映らないF35を前に、深海側も手痛い犠牲を払っていた。無論F35の損害も少ないながらあったが。
当然ながら制空権は敵に帰したが、敵航空戦力も膨大な犠牲を支払っていた。敵艦載機はレシプロ戦闘機をモデルとしている物と思われていて、そのクセ機動力は高いが速度が遅いと言う点があり、それを利したF35は、超高速一撃離脱戦法によって無双するが如き威力を発揮したのである。
小澤「僅かではあるが、我々は優位に立っているな。」
小澤海将補はそう確信した。
敵が一部ながらレーダー射撃を出来ない事と、小澤艦隊航空戦力の奮戦がそれを立証していた。
最も前者は小澤海将補も知る由が無かったが、空は兎も角海では劣勢一方であり、継戦能力が限界に達するのは時間の問題であることは、小澤海将補も理解していた。
14時43分 大型イージス巡洋艦「くらま(四代)」
美川「むぅ・・・。」
オペレーターB「汎用護衛艦『しきなみ』弾薬欠乏!」
オペレーターA「イージス護衛艦『まなたか』大破!」
オペレーターC「汎用駆逐艦『しらゆき』『はつゆき』弾薬欠乏!」
オペレーターB「ヘリ空母『さつま』沈没!」
美川一等海佐のパラオ艦隊は、次第に弾薬が欠乏し、壊滅しつつあった。これにはパラオ艦隊が最南端に配されており、深海ソロモン方面軍主力たる戦艦棲姫艦隊の総攻撃を受けた為もあった。
ズドオオオォォォォーーーー・・・ン
美川「ぬううっ!?」
その最中、彼の乗艦くらまが被弾した。
副官「ぐはっ!!」
美川「栗谷三佐!」
美川一等海佐の副官である栗谷三等海佐は、被弾の衝撃でよろけた拍子にCICの機器に背中を強打していた。
副官「ぐ・・・あ・・・」
美川「救護班急げ! 被害状況報告!!」
オペレーターB「左舷舷側中央部に被弾、第3居住区中破! 第2予備電源室全損、舷外電路も破損しました!」
美川「まだ行けるか・・・?」
そう思った直後絶望的な知らせが舞い込む。
オペレーターD「1番砲塔弾薬欠乏!!」
美川「なにっ・・・!!?」
大型汎用巡洋艦くらまは、3基の速射砲を装備している。この内2番砲は退却中に弾を使い果たし、1番砲と3番砲で応戦していた。しかしその片方が弾薬を使い果たし、火力が半減した。ミサイルなどとうの昔に欠乏しているし、CIWSなどは射程8000から1万2千で行われる砲戦では到底出番も無かった。
美川「くそっ・・・ここまでか・・・?」
副官「提督!」
美川「分かっている。なんとしても援軍まで持たせろ!」
オペレーター「「おぉーーっ!!」」
美川一等海佐はCICにいる面々を鼓舞する。しかしジリ貧である事も理解していた。
一方の北村/リンガ艦隊は、美川艦隊ほど深刻ではないにしろ、南方棲鬼艦隊の粘り強い波状攻撃に晒され窮地にあった。既に攻撃は13波に上り、艦娘艦隊の損害も甚大であった。
だがその時、苦戦する本隊の包囲されている海面の北西では、いよいよ動き始めようとする影がある。
―――14時51分
提督「―――頃合いか。いくぞ! 全艦突撃、事前指示通り行動せよ!!」
金剛「了解!」
榛名「了解しました!」
夕立「突撃っぽい!!」
那智「征くぞ!!」
神通「全艦続いて!!」
川内「いくわよ!!」
名取「行きます!!」
赤城「全艦載機発艦始め!!」
飛鷹「いくわよ!! 全機発艦!」
鳳翔「全機発艦!」
柑橘類「突撃陣形作れ! 一挙に押し潰せ!!」
加賀「航空隊、出撃!」
赤松「全機行くぞ! 生き残れよ!!」
直人達はいよいよ動いた。この不毛な戦いを終わらせる為にも、彼らは征かなければならなかった。そこに、例え勝利の栄光がなくとも、自分達の包囲突破を待つ将兵や艦娘達が存在する以上、行かない訳にはいかなかった。
11月27日15時03分 深海棲艦包囲網北西側外周7.5km
提督「混沌は収束されるものだ。収束への引き金、私が引かせて貰おう!!」ガチャッ
直人はそうして口上を垂れ、ウラズィーミルを銃口に装着し、決定的一撃となる引き金を引いた。
ドォォンドォォォォーーー・・・ン
~駆逐棲姫艦隊~
駆逐棲姫「電波妨害はまだ解消できないの!?」
その頃深海側では、ジャミングが更に悪化したことで焦りを募らせていた。ジャミングの為に戦果も予想より大幅に下回っていて、その上解決するばかりか悪化したとあっては尚の事があり、深海側も不安と焦燥から士気が下がり始めていた。
最も、ジャミングが更に悪化したのには理由があり、直人が自らジャミングを試みて妨害電波を放っていたからである。ただ、何者かが既にジャミングをかけている事までは把握しておらず、迷彩の効果もあって彼のこの急接近はこの瞬間まで悟られていなかった。
ル級elite「ダメデス、アマリニ強ク、サキホドカラ2重ニ妨害ガ・・・」
ドォンドォォォ・・・ン
駆逐棲姫「なんだ・・・?」
駆逐棲姫がその音に気付いた時、戦端は開かれた。
ドゴオオオオオオオオオオオオオオ・・・
駆逐棲姫「なっ・・・!!」
ウラズィーミルは、駆逐棲姫艦隊と南方棲鬼艦隊の丁度境目に着弾した。
その範囲内ではその海域の好天と好条件により千四百万℃に迫る超高温が瞬間的に発生、文字通り敵を消失させた。
それは正しく、満天の星空の元2000隻以上を滅却した横須賀沖の火炎地獄を、そのまま再現した感もあった。そしてその一撃によって、敵包囲は完全に穴を穿たれた状態になった。
提督「よし、道は開けた! 全艦突入して包囲再建を防げ!!」
一同「おぉ!!」
直人の号令一下、航空隊と水上部隊双方が突撃した。
提督「敵包囲下の全艦隊に告ぐ! 包囲中の敵は我ら横鎮防備艦隊サイパン分隊が引き受ける!! この突破口から落ち延びられよ!!」
直人は呼び掛ける。その呼びかけに応じ、士気の下がっていた全部隊が逃げに入る。
提督「よぉしよしいい子達だ、この上は精々、敵の気を引く事だ。」
ズドオオオォォォォォォーーーーーー・・・ン
直人は片方だけ120cm砲を撃ち放つ。
その時既に艦娘艦隊は包囲を分断された敵の2つの断面にそれぞれ取り付いて猛攻を加えていた。上空からは1航戦航空隊を旗艦とする攻撃隊が猛然と襲い掛かった。
~左翼部隊~
霧島「さて・・・」チャッ
霧島が遂に・・・
霧島「マイクチェックの時間だゴラァァァァ!!」
ズドオオォォォォーーーーーーン
比叡(眼鏡を・・・外した!!)
霧島(度なんて、初めから入ってませんけどね・・・。)
霧島はメガネこそすれ度など入っていなかったのである。が、気合が入って豹変した様になる霧島である。
霧島「ア? 敵機来るぞ! 摩耶ァ!!」
摩耶「お、おう! 対空防御射撃、開始だぁ!!」
愛宕「さぁ! いくわよ!」
高雄「えぇ!」
ドドオオオォォォーーーーーーン
龍田「さぁ・・・死にたい船は、何処カシラァ?」ゴゴゴゴ・・・
なんかただならぬ雰囲気を漂わす龍田がいる。
長良「任されたからには、必ず勝つ!」
五十鈴「そして生きて帰る!」
長良「えぇ、そうね!」ドドォォォン
時雨「くっ! 多い!!」
ドォーーーン
時雨「きゃっ!?」
バシャアアァァァァーーン
至近弾の衝撃で尻餅をつく時雨。
村雨「時雨! 大丈夫!?」
五月雨「ふ、フォローに!」ドンドン
時雨「大丈夫、直撃はしてないよ―――!///」
だが時雨はハッとなった後驚きの表情になってから赤面した。
村雨「ど、どうしたの? やっぱりどこか・・・?」
時雨「いや、違うんだ・・・」
村雨「じゃぁ、一体・・・?」
そう問いかける村雨に、時雨は少し顔を赤らめて言った。
時雨「し・・・下着がっ―――下着が、外れたんだ・・・///」
村雨「えっ・・・。」
どうやら至近弾と尻餅をついた衝撃で、下着が外れたらしい。
村雨「なんだそんなこと・・・早く立って、ここで沈む訳には行かないでしょ!」
時雨「あぁ、待ってよ!」
慌てて立ち上がり、村雨に続いて突入する時雨であった。
若干苦戦する左翼部隊を尻目に、右翼部隊では圧倒的な優勢で戦況が推移していた。
~右翼部隊~
夕立「えええええええええい!!!」ザバババッ
綾波「はあぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
ドォンドォンドォンドォン・・・
金剛「バアァァァァニングゥ、ラアァァァァァァァァァッヴ!!!」
ズドオオオォォォォーーーーーーン
初雪「早く帰りたいし、頑張ろ。」
ズガガガガガガガッ
大井「93式魚雷、20発! やっちゃってよ!」ザザザザッ
なんせこの5人がいる。縦列陣且つ両翼正面の敵が別々の指揮系統で指揮を執っている故に小部隊単位で戦う深海棲艦に勝ち目は今の所無かった。
~駆逐棲姫艦隊~
駆逐棲姫「セーラム! ヘレナ!」
ヘ級elite「ハッ!」
ネ級Flag「なんでしょうか?」
駆逐棲姫「・・・セーラムならもう察してるでしょう?」
ネ級Flag「私達二人で左右から敵右翼を崩す、ね?」
駆逐棲姫「そう言う事よ。行きなさい!」
ネ級Flag「了解。」
ヘ級elite「了解!」
11月27日15時21分 日本艦隊北東側
提督「急げ! 長くは持たん!」
天龍「急いで包囲の外に出るんだ!」
右翼と左翼の奮戦の中、直人は懸命の退避誘導を続けていた。
包囲の中で動けなくなった艦娘も少なからずおり、その護送をする艦娘の手助けも、同時にこなさねばならなかったが。
提督「名取、七水戦の状況は?」
名取「“は、はい。今は全員包囲の中にいますけど、みんな無事みたいです。”」
提督「そうか・・・。」
天龍「提督! あれ!」
そう言って天龍は右翼部隊の方を指さす。
提督「どうした・・・?」
直人もその方角を見つつ問う。
天龍「敵が右翼部隊を左右から挟もうとしてやがる、しかも恐ろしく足が速いみてぇだ。」
提督「となると、右翼が危ないな。」
蒼龍「“こちら空母部隊、右翼に支援の要有りと認めます、指示を。”」
フッ、流石だ。と独り言ちると直人は指示を出す。
提督「必要を認める、直ちに航空支援を。」
蒼龍「“了解!”」
提督「さて、俺もいっちょやりますかね。」
距離はおおよそ1万4千、普通に狙い撃てる距離だった。
提督「ファイエル!!!」
ズドドドドドドォォォォーーーーーー・・・ン
直人は副砲である80cm砲と51cm砲を全門発射した。
右翼部隊へ左右から側面攻撃を行った深海棲艦隊の内、左翼を指揮したネ級Flagship『セーラム』は、直人が放った砲撃の正確さとその威力に舌を巻いた。
ネ級Flag「くっ! 敵もどうして打つ手が早い、これまで相手にしてきた奴らとは全然違うようね・・・。」
「敵機来襲、9時ノ方向デス!!」
ネ級Flag「チッ・・・! 後退するわ、このままでは不利よ!」
「ハ、ハイ!」
ネ級Flag(敵にも骨のある奴はいるみたいね、再戦を楽しみにしましょう・・・。)
提督「ほう、後退するか。敵にもやる奴はいるらしい。」
天龍「みてぇだな、そうでなくてはこれから面白くねぇ。」
敵左翼の後退を見ていた二人はそう言う。統合幕僚会議で彼が賀美作戦参謀に対して言った通り、敵にも出来る奴は確かにいたのである。
それも、日本艦隊司令官よりも優秀な人材が数多く。
皐月「あっ! 司令官!」
提督「おぉ皐月か! どうだ状況は。」
護送を終えて戻ってきた皐月に直人は状況報告を求めた。
皐月「動けなくなった艦はもういないね。海軍部隊も素早く離脱してたし、三日月と一緒にいる少数の艦娘達が逃げ遅れ出してる、って所かな。」
提督「・・・敵が追撃に出ている、という事か?」
皐月「うん。」
直人はその点も予想の内に入れており、その為の対抗策もあった。
提督「ふむ・・・その部隊の包囲離脱までどれ位かかる?」
皐月「え、えぇっと・・・?」^^;
そう聞かれ困った表情になる皐月である。
三日月「司令官、皐月にあまり難しい質問しちゃダメですよ?」
そこに護送から戻ってきた三日月がやって来た。
提督「あっ―――うん、ごめん。」
皐月「アハハハハ・・・。」
彼は艦娘の向き不向きを無視した質問をした事を詫びると、三日月が質問の答えを切り出す。
三日月「最後の部隊は離脱を終えました。すぐにでも撤収可能です。」
その答えに直人は少々意外そうな顔をした。
提督「ふむ? 早かったな・・・いやまだだ。味方が完全に離脱しきるまではな。」
三日月「ではあと20分ほど粘りますか?」
提督「そうなると追撃される可能性もあるな・・・。」
「―――そうだね、だから来てあげたよ。」
そこに、直人にとってはよく聞き慣れた男の声がした。
「浜河! なんで戻ってきた!?」
驚く直人に、浜河は事も無げに言う。
浜河「そりゃ、こうなるのが見えてたからだね。この『駿河』が電子戦を重視した装備だって事、忘れてない?」
提督「―――成程。お前のおかげで、俺もあそこまで気づかれる事は無かったと言う事か。」
直人はこの時、起こっていた全てを理解した。ギアリングらが受けていたジャミングの正体、それは巨大艤装『駿河』の仕業だったのだ。超兵器級深海棲艦には及ばぬとはいえ、艦娘に比べれば圧倒的な出力を誇る艦娘機関を用いた電波妨害、しかも浜河はスウィープジャミングを敵の使用している全ての周波数を割り出して複数同時に実行したのである。当然継続的な敵のジャミングによって効果は減殺されるが、そこはそれ、主な狙いを敵レーダー波に絞って出力を集め、敵の妨害をバーンスルーしたのである。これが出来たのは、深海棲艦が力任せに1から10まで全ての周波数に対して、猛り狂ったようなバラージジャミングを仕掛けていたからであった。
が、その張本人である浜河は、涼しい顔をして彼に言う。
「それに、僕達“4人”が揃えば、敵を鼻白ませる位は、出来るでしょ?」
提督「―――へ?」
その言葉に唖然となる直人。答えはすぐに分かった。彼の後ろに、2人の大きな影が控えている事に気づいたのだ。
氷空「全くこんな時に、何とも間の抜けた顔だな、直人。」
泉沢「シャキッとしてくれよ、リーダー!」
戦艦『水戸』の水戸嶋氷空と、戦艦『和泉』の泉沢和征が、浜河の背後から現れた。
提督「お、お前ら!? MI方面にいたんじゃないのか!?」
氷空「駿介から連絡を受けてお前の司令部に問い合わせたら、全艦引き連れて出た、と言われたんでな、救援に来た、という訳だ。」
泉沢「そういうこと。」
提督「そうだったのか・・・。」
直人は自らの幸運に深く感謝した。MI方面隊が後退した後、彼らは上官の許可を得て取って返すように南下し、直人の元に急ぎ馳せ参じたという訳である。巨大艤装の高速性能なかりせば不可能な芸当だっただろう。
提督「―――すまん、力を貸してくれ。」
氷空「水臭いぞ、素直に頼めんか。」
笑いながらそう言う水戸嶋。その言葉に力を受けて、彼は力強く言う。
「・・・そうだな、頼む!」
3人「オウ!!」
ここに5年前、短い間ながらも寝食を共にし、死地を駆けて生き帰った、『第1任務戦隊』の戦友が、艤装を身に纏い一堂に会した。
その主砲は最も小さい物でも61cm、最小口径でも46cm砲であり、最大口径は直人の120cmゲルリッヒ砲と泉沢の100cm電磁カノン砲、水戸嶋の90cm連装砲である。
提督「さ、久々に、揃ってぶっ放すかね!」
氷空「是非も無し!」
浜河「攻撃バックアップは任せて。」
泉沢「暴れてやるぜ!!」
提督「あ、その前に、だ―――」
忘れていたものを思い出した様に直人は言う。
提督「横鎮近衛全艦、“逃げろ”!!」
3人「っ!!」ガクッ
余りに間の抜けた命令に3人はずっこけた。言っておくが、直人は至って真面目である。
金剛「“りょ、了解デース!”」
赤城「“了解!”」
霧島「“了解です。”」
天龍「し、締まらねぇ命令だなぁ。」
苦笑しながら言う天龍である。
提督「何言ってんだおめぇも逃げるんだよ。」
天龍「馬鹿言え。『一人じゃ戦えん』とか公言してる奴が護衛無しでいいのか?」
この一言は地味に痛い所を突かれた形になった。
提督「・・・ハッ、一本取られたか。すまんが頼む!」
天龍「オウ!」
その裂帛の一声と共に天龍は腰に差した刀を抜き放つ。
天龍「提督達に近寄る不逞な奴ァ、片っ端から切り刻んでやるよ。」
その目をギラつかせる天龍、士気は十分である。
氷空「フッ、卿が一本取られるとは、珍しい事もあったものだ。」
提督「駄弁ってる場合か、来るぞ。」
浜河「索敵データリンク。三次元測的ネットワークセットよし、いつでも行けるよ!」
提督「フッ―――懐かしい感覚だ、よく“視える”ぜ。」
その時、直人ら4人には敵1隻1隻全てが、正確に、詳細に、はっきりと、“視えて”いた。
舞台は・・・整った。
11月27日15時21分
戦艦棲姫「追エ! 邪魔ヲスル奴モ生カシテ帰スナ!」
戦艦棲姫の総指揮の下、勝利を確信した深海棲艦隊は遅ればせながら追撃態勢に入った。その勢いは猛追と呼んで差し支えなく、普通にいけば、止められるものはいない筈だった。だがその先頭に立った駆逐棲姫は、その前面に、今まで見た事もない巨大な艤装を見て思わず目を見張った。
駆逐棲姫「―――あっ・・・あれは、なに・・・!?」
「あの巨大な艤装・・・まさか!」
ハッとなったのは、傍らにいたネ級Flag「セーラム」であった。
駆逐棲姫「セーラム、知っているの!?」
ネ級Flag「は、はい。“あの時”私もグァムにいましたから、あれは―――――」
戦艦棲姫「アレハ、マサカ・・・!!」
セーラムと戦艦棲姫が、期せずして同じ結論に至った。しかしそれは、余りに遅すぎた。何せ彼女らにしてみれば、こちらの妨害をバーンスルーされ、レーダーと言う目を潰された上で、目視で人を、艤装込みであったとしても発見するのは、余りに困難と言わねばならなかったからである。
しかし、その余りに酷な現実は、実際問題として、これから彼らの上に降りかかるだろう災禍の予言に過ぎなかったのだ。それは、当時でも深海棲艦隊の中で知る人ぞ知る、グァムに血の雨を降らせた張本人であり、彼らにとって、初めて手痛い打撃を負わせたものなのだった―――。
提督「各艦砲門順次発射、統制砲火、撃ち方始め。」
氷空「ファイエル!」
浜河「ファイア!」
泉沢「撃てええええ!!」
ズドドドドドドドドドドドドドドドドド・・・
その砲声は、途切れなかった。
―――統制順次砲撃、それは4人揃って初めて出来る戦術であり、4人の火砲と、駿河の持つ戦術情報装備である『三次元測的ネットワークシステム』、紀伊の持つ高度な照準装備を合わせて、精密な連続砲撃を繰り返すというもの。どう少なく見積もっても4人合わせて300門以上の妖精式自動装填砲―――しかも凄まじいサイズのものばかり―――が、間髪無い射撃を加え、敵艦隊を容赦なく食い荒らす、と言うものだが、そこに浜河の駿河が行う正確なナビゲートと、紀伊から貸し与えられる正確無比の測距能力が加わる。
砲撃諸元を瞬時に計算し、さらに敵の回避運動の正確な予測も加わり、その命中率は9割を超える。しかも水戸嶋氷空の水戸に装備されたフェーズドアレイレーダーまでも加わり、航空部隊が紀伊と水戸から飛び立つ。その光景は正に、他者を圧倒するものがあった。
―――『第1任務戦隊』は、その威力を数倍、数十倍にして、この海に帰って来たと言っても過言ではないのである。
ドドドドドドドドドドドドドド・・・
駆逐棲姫「くっ!!」
南方棲戦鬼「怯ムナ! 反撃シロ!」
南方棲鬼「チィッ!」
追撃する深海棲艦隊の先端に集中される、余りの連続砲撃の量と密度に、さしもの深海棲艦も鼻白んだ。1本の矢ではすぐに折れるが3本束ねれば中々折れない、という格言を体現したかの如き観があった。
戦艦棲姫「マ、マズイ! 全艦一旦後退! 態勢ヲ立テ直スゾ!」
戦局不利と見た戦艦棲姫は後退命令を出した。
ネ級Flag「ぐあああああっ!!」
駆逐棲姫「セーラム!」
セーラムを射抜いたのは、和泉の副砲の一つ、74cm(約29インチ)3連装砲だった。
ネ級Flag「くっ・・・大丈夫ですなんとか。沈みは―――しません!」
ズドオオオオォォォォーーーーーー・・・ン
デュアル133「グアアアアアアアアッ!!」
戦艦棲姫「ナッ・・・!?」
デュアルクレイターが続いて“撃ち抜かれた”。
これは同じく和泉の100cm電磁カノン砲の超音速弾によるものであった。無論セーラムとは被害のレベルが違った。
戦艦棲姫「デュアルクレイター、シッカリシロ!!」
デュアル133「ダメ・・・デス。モウ・・・助カリマセン・・・。」
戦艦棲姫「ソンナッ・・・!」
デュアル133「武運、長久ヲ・・・戦艦棲姫、サマ―――!」
戦艦棲姫「・・・アァ、アァ勿論ダ! オ前ノ無念、必ズ晴ラシテヤル・・・!」
そこから戦況は、嵐のように変化した。
駆逐棲姫「後退よ! 急いで!」
南方棲戦鬼「クッ・・・全艦・・・後退!」
提督「よし、敵の後退に合わせて、逃げるか。」
氷空「ふむ、そうだな。」
泉沢「趣味じゃねぇなぁ・・・。」
天龍「全くだぜ・・・。」
浜河「まぁまぁ二人とも・・・」^^;
デュアル133「・・・ココマデ、ダナ・・・アレ・・・ナンで、涙なンか・・・」
戦艦棲姫「ナニ!? 逃ゲ出シタダト!? 奴ラハ勝ッテイタデハナイカ!?」
南方棲鬼「ですが、追撃しても間に合わないでしょう・・・。」
戦艦棲姫「・・・クッ!!」
15時49分、両軍の撤退を以って、戦闘は終結した。
提督「ぬぅー・・・左舷に喰らっちまった・・・。」
氷空「敵の反撃も凄まじかった、無傷では、済むまいよ・・・。」
浜河「その中で無傷だった僕はどう言えば・・・。」
泉沢「運が良かっただけだろうが―――ッ! イテテテ・・・」
そんな会話をしながら帰途に就く5人。
天龍「オレ様が砲弾を斬って無けりゃ、提督今頃あの世かもな?」
提督「ハハハ、感謝しておこう。」
天龍「ヘヘッ。」
~15時36分~
戦艦棲姫「調子ニノルナヨ―――!!」
ズドドォォォーーーーン
その時戦艦棲姫の放った砲弾の内1発は、直人への直撃コースだった。
提督「しまっ・・・!!」
自らの失態を悟った直人、その時――――
天龍「そうは―――」ザバアァァァッ
ヒュッ
天龍「させるかよ。」ザザァッ
提督「なっ・・・」
直人は驚いた。天龍が本当なら自分に直撃する筈の砲弾を、真一文字に両断してのけたのだ。
~現在~
提督「全く、艦娘達にはいつも助けられる。」
氷空「全くだな。」
天龍「そうだろ~、褒めろ褒めろ♪」
ご機嫌な天龍であった。
南方棲姫「してやられたな・・・。」
駆逐棲姫「そうね、ワシントン。敵にも中々どうして、出来る奴がいるみたいね。」
南方棲姫「そうだな、そうでなくては、この先張り合い甲斐がない。」
駆逐棲姫「全くよ。次に会いまみえる時が楽しみね。」
南方棲姫「うむ・・・。」
ワシントンとギアリングは、去り行く横鎮近衛艦隊を、見送る他に術も無かった。それが命令であればこそ、止むを得ざるところはあったにせよ――――
結果として、第一次SN作戦は、完全な失敗に終わった。
艦艇179隻、航空機822機、人員総数32万0294名、艦娘艦隊96万2351個艦隊、艦娘総数107万1267隻を動員した遠征軍は、艦艇喪失91隻、航空機損失74機、戦死者9万7480名・負傷者8万6813名、艦娘艦隊喪失19万1968隻という大打撃を被り潰滅した。艦娘艦隊の喪失数が少ないのは、それに倍する数の中・大破艦や行動不能艦の収容と撤収に依るところが大きい。
SN作戦の敗因は、大本営と艦娘艦隊の慢心、敵を過度に過小評価したこと、計画の一貫性の無さとずさんさ、補給線防備の軽視、艦娘艦隊の練度不足、大本営の作戦指導力の欠如、有為の人材の欠如、戦域に関する理解不足などなど、大きな理由だけでもこれだけ存在する。
これ以降、自衛軍はその戦力消耗を終戦まで再建する事が叶わなかった。それほど大きな犠牲を払って尚、作戦は失敗した、失敗してしまったのだ。そしてその補充として、簡便な手法で増強する事が出来る艦娘艦隊の拡充が図られていくことになる。
ある意味でこの物語は、ここからが本番と言えるだろう。即ち戦いの一方の主導権が、『人間』ではなく『艦娘』に握られるようになっていく事を意味したからだ。
11月28日午後2時11分 サイパン島東岸沖
提督「ふぅー、着いた着いた。」
直人達はあの後、三胴内火艇と艦娘達に合流、その足で撤退中の友軍艦隊に合流し、自らの無事を知らせると、水戸嶋らと別れてのんびりと帰途に就いた。
提督(これは、一つのピリオドかも知れん。だがまだまだこれからとも言える。この局地的、戦術的勝利に驕ることなく、大局的敗北を受け止めていく必要がある。大本営でも人事刷新は免れまい・・・。)
彼が思っている通り、これは一つの固定したカタチの崩壊というピリオドとなった。そしてその先には、艦娘達の知恵と努力が問われる時代が、到来しつつあるように思われたのである。
直人の予想通り、彼のサイパン帰還から三日を隔て、永納総長更迭と、新人事の発表が、為された。その結果は次章で述べるが、主だった幹部クラスはその半数以上が解任となった。
しかし―――直人は手放しで今回の勝利を喜ぶ事が出来なかった。
否、勝利というには余りにも小さな―――そう、小さな勝利であった。横鎮近衛艦隊は退却の手引きをしたに過ぎず、彼らが敵を打ち破った訳ではないからで、仕事が終われば彼らでさえも、脇目も振らず逃げるしかなかったのだ。
退却の手引きしか出来ない状況であった事は確かだ。その戦力差からして、南方方面の深海棲艦勢力が強大である事は最早言を待たぬ厳然たる事実として、また大きな問題として、首をもたげていた。
だが、それを思い知らされるまでに払った犠牲は、余りにも、大きすぎた。大きすぎたが故に、彼らは今後、方針を転換せざるを得なくなるだろう事は目に見えて明らかだった。
南方海域は今や再び、死の海と化そうとしていた。それを前にして、直人は心の内で、黙祷を捧げるのであった。今回の無謀な作戦で死んだ、多くの烈士たちの御霊が少しでも安らぐ事を願って・・・。