異聞 艦隊これくしょん~艦これ~ 横鎮近衛艦隊奮戦録   作:フリードリヒ提督

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どうも、天の声です。

青葉「青葉です! 最近出番が少なめです。」(´・ω・`)

基本裏方なのでシカタナイネ、まぁ考えとくよ。

青葉「あ、はい。」


えー、16年9月作戦に参戦して更新も遅れ気味でしたが今日からまたしっかりやっていきましょうか。今日の解説は史実解説、バタビア沖海戦です。

青葉「日本軍の同士討ちについても解説しますよ!」


1942年2月27,28両日に渡って繰り広げられたスラバヤ沖海戦に於いて、ジャワ方面に展開する連合軍ABDA艦隊(豪英蘭(オランダ)米4国艦艇からなる多国籍艦隊)は、旗艦たる軽巡デ・ロイテル(蘭)と指揮官カレル・ドールマン提督の戦死によって統制を失った。

残存艦艇である米重巡ヒューストンと豪軽巡パースは、先任であるパース艦長の指揮の下でバタビア(現ジャカルタ)へと撤退した。

その頃バタビア西方のバンタム湾には既に日本軍輸送船団が近接しており、バタビアが既に安全な場所でないことから、28日夕刻になって、停泊僅か半日でパースはヒューストンと共に出港、ジャワ島南岸にある港湾、チラチャップに向け、スンダ海峡を抜け離脱を図った。


スンダ海峡はジャワ島とボルネオ島の間にある海域であり、インド洋へと抜けることが出来る場所である。

ただ日本軍の第16軍司令部が上陸予定だったバンタム湾はそのスンダ海峡の近くにあった為、連合軍にとっては時間との勝負であった。


一方の日本軍は2月18日、ジャワ島攻略に向け第16軍が仏印のカムラン湾を56隻からなる大船団に分乗して出港した。第16軍司令部は司令官今村均陸軍中将、司令部乗船は陸軍丙種特殊船「神州丸」である。

これを取り巻くのは第五水雷戦隊(名取旗艦)を主軸とした第三護衛隊、指揮官は五水戦司令官原顕三郎少将で、指揮下に5個駆逐隊を擁しており、間接支援部隊として栗田健男(当時少将)の第七戦隊(最上型重巡4隻 旗艦:熊野)と、第十九駆逐隊の1個小隊が所在していた。


しかし第七戦隊と五水戦、2つの司令部は戦闘方針が真っ向から対立、2月27日(スラバヤ沖海戦開始直前)に熊野所属水偵が敵艦隊発見の報を発した際、栗田司令部と五水戦司令部は、兵力保全を重視する栗田と、艦隊決戦を主張する原少将で真っ向から対立し、丸一日電文で言い合った挙句GF司令部が仲裁に入る一幕もあった。

そのあげく、第七戦隊はスラバヤ沖海戦には参戦していない。


3月1日午前0時、日本軍船団はバンタム及びメラク湾へ上陸を開始、バンタム湾に軽巡1・駆逐艦10、メラク湾に駆逐艦6隻が護衛に付き、第七戦隊から第二小隊(最上・三隈)と十九駆所属の駆逐艦「敷波」が分派され、三隈艦長の指揮で西方支援隊として参戦した。

連合軍は指揮艦である軽巡パースを始めとし、重巡ヒューストンと蘭駆逐艦エヴェルトセンの3隻のみである。


連合軍はバンタム湾に東方から接近する形となったが、前方に輸送船団を発見し、照明弾射撃の後ヒューストンが遠距離から砲撃を行う。しかし護衛艦艇がいないものと思い込んでいた2隻は0時9分に駆逐艦吹雪に接触されており、砲撃中その後方に艦艇がいる事にようやく気付いた。

気付いた直後の0時47分に触接を続けていた吹雪が距離2500から魚雷9射線雷撃を行い、続けて主砲弾16発を射撃した。いないどころか哨戒にかかっていた事を知った両艦は右回頭しつつ吹雪に反撃を行った。海戦の戦端はこの段階で開かれたと言える。(第1合戦 吹雪は反撃を避け煙幕で逃走)


また0時37分から20分間駆逐艦春風が船団と敵の間に割り込んで煙幕を張った為、ヒューストンとパースは砲撃続行が出来なくなった。

また0時45分には原少将より突撃命令が発令、それに伴い各駆逐隊は集結の後突入を開始、また1時13分に西方支援隊(七戦隊二小隊)とメラク湾にいた第十二駆逐隊(白雲(未実装)・叢雲)が後着、それぞれ戦線参加するに至り、連合軍の劣勢は明白となった。(第2合戦)


1時10分頃から2時にかけて各部隊は砲雷撃を次々と敢行しその結果パースとヒューストンはそれぞれ大破し、1時42分にパースは沈没した。ヒューストンはパース沈没後も15ノットで突破を図るも敷波の雷撃と銃砲撃によって退艦命令が出され、2時06分に沈没した。(第3~4次合戦)


だがここでバンタム湾で悲劇が起こる。1時35分、バンジャン島沖合を航行中の第2号掃海艇が突如第2缶室に魚雷を受け沈没、続いて1時38分に陸軍輸送船「佐倉丸」(9,246トン)が第4船倉に、2時頃に更に左舷機関室に被雷し沈没、1時40分に病院船「蓬莱丸」(9,192トン)の左舷機関室にも1本が被雷、横転着底、更に輸送船「龍野丸」(7,296トン)が魚雷回避中座礁、神州丸も魚雷1本を受け大破着底してしまう。


今村中将は3時間重油の浮く海を泳ぎ続け4時30分に拾い上げられた後岸へ上陸したが、無線機を海没してしまい司令部機能を喪失してしまった。第16軍司令部に欠員が出なかった事は幸いであったが、作戦進捗状況が分からない不便には耐えねばならなかった。不幸中の幸いだったのは、那須支隊を始めとした第2師団を主軸とした各部隊指揮官が、所期の予定通りに作戦を遂行した事であった。

その後、海戦直後から調査を行った結果、敵が雷撃を行った痕跡の無い事、魚雷の射線、爆発の威力に加え、上陸地点近くに九三式魚雷(俗に言う“酸素魚雷”)の尾部が打ち上げられたことが判明する。


これらから導かれた結論が、1時27分に放った最上の2度目の雷撃(左舷8射線)が目標とした軽巡パースを外し、輸送船団へ殺到したものだ、と言う事だった。

当然第三護衛隊の主要幹部総出で第16軍司令部に陳謝に行ったのだったが、今村均中将はこれを快く受け入れると、今回の1件を「敵魚雷艇による損害」として公表する事を提案し、海軍の顔を立てたのであった。

なお文献によっては、誤射を行ったのは駆逐艦吹雪であったとするものもあり、諸説ない訳ではない。


長くなりましたがこんな感じです。

青葉「栗田中将ェ・・・。」

なんでも後で五水戦司令部にいた(?)人が七戦隊の先任参謀に「一体どこにいた!」と聞いたら「栗田少将が“七戦隊を大切にして欲しい”と言われたんだ。と言っておられた」と返されたそうだ。

だからと言って後ろに下がるのはおかしいと思うがね。結局第七戦隊の第一小隊(鈴谷・熊野)はスラバヤ・バタビア沖の両海戦に参加していないし。

青葉「最上さんと熊野さんが話していたのはこの事ですね。」

うん、艦娘なら誰しもこう言う様な話がない訳じゃないし。

では少しコメ返しをば。(現在エブリスタ側では閲覧できないコメントですがご了承ください。)


オタ☆ さんより
『本当に良い性格してるww』

これは主人公に対するものですが、えぇ自分でそう思います。基本作者の性格と持論を投影しているキャラ(=紀伊直人)なので、ちょいちょいこういうとこはあります。まぁ作品内では少ないでしょうが。


いつき さんより
『砲声』

これは前章で山城が被弾した際に敵の砲声が無かった事についてですね。
この部分に関しては、「突然の遭遇」と言う描写を際立たせる為に敢えて敵の最初の斉射については砲声を描写していません。レーダー射撃を使った大遠距離砲撃によるラッキーショット(深海側視点)と言う事で。


以上ネタばらしでした。

青葉「そろそろ本編行きませんか?」

同意、んじゃ始めようか。


第2部9章~横鎮近衛艦隊、休暇の巻~

2月26日のことである。直人の唐突な発言が、思わぬ方向に発展する。

 

 

 

2月26日午前11時10分 中央棟2F・提督執務室

 

 

提督「艦娘に久々に休暇取らせようか。」

 

大淀「仕事終わらせて下さい。」^^#

 

提督「はい。」(´・ω・`)

 

金剛「―――。」アホ毛プルプル

 

この日仕事をだらだらとやっていた直人は、大淀から散々怒られながら書類を進めていた。

 

大淀「終わらせるまで昼食は無しですからね?」

 

提督「そ、そんなご無体な―――」

 

大淀「何か?」

 

提督「・・・何でもないです。」

 

自分に非があると分かっていた為二の句を返さなかった直人である。

 

提督(きゅ、休暇は絶対取らせるぞ・・・。)

 

 

 

同じ頃、司令部裏には訓練を終えて艤装の整備に入ろうとする艦娘一同の姿があった。

 

暁「つ、疲れた・・・。」

 

響「暁、お疲れ様。」

 

そう言って暁にタオルと水(訓練後必ず配給される)を手渡す響。

 

実は作戦直後のドロップ判定にて―――

 

 

 

2月24日9時18分 建造棟

 

 

暁「暁よ、一人前のレディとして扱ってよね!」

 

提督「―――。」

 

 

 

雷「暁じゃない!」

 

電「お久しぶりなのです!」

 

響「ハラショー、今日はいい一日だ。」

 

暁「皆、待たせちゃったみたいでごめんね?」

 

雷「ホントよ! どれだけ待ってたと思ってるの。そういうとこも相変わらずなんだから。」

 

 

 

ワイノワイノ

 

 

提督「・・・ま、第六駆逐隊、全員集合って事で。めでたしめでたしっとな。」

 

那智「あぁ、そうだな。」

 

大淀「えぇ・・・。」

 

 

 

てな事があったのだ。

 

暁「あぁ、ありがとう響・・・。」ゴキュゴキュ

 

暁が受け取った水を喉を鳴らして一気に飲む。

 

響「ふふっ、どうだい? うちの訓練は。少しは慣れたかな?」

 

暁「慣れる訳ないでしょ! 物凄く厳しいじゃない!」

 

電「厳しいのは当たり前なのです。」

 

暁「うぐっ・・・。」

 

末っ子にぴしゃりと言い返されて二の句が出ない暁である。

 

まぁ厳しいのも当然だろう、何せあの神通と北上が教官なのだから・・・。

 

 

 

那智「しかし、中々の厳しさだな。」

 

羽黒「でも戦いの基本を改めて習得するという意味では、神通さんにはお世話になってます。」

 

羽黒は気弱な部分もあるが生真面目な艦娘、この言葉も本心から出たものである。

 

妙高「その通りですね、那智もこの艦隊に馴染めるといいのですが・・・。」

 

那智「まぁ、それは時間が解決してくれるだろう。今急いて何かをしても始まらない。」

 

那智は暁と同時に着任した艦娘である。即日訓練に参加したが基礎訓練は順当に済ませ基本戦術から叩き込まれていた。現在は第1艦隊第5戦隊所属である。

 

妙高「それもそうですね、ふふっ。」

 

那智「ん? 何か、おかしなところがあったか?」

 

妙高「いえ、相変わらずだと思って。」

 

那智「―――そうか。」

 

 

 

陽炎「疲れた~・・・。」

 

雪風「陽炎姉さん、はい、お水です!」

 

艤装倉庫東側の壁面に座り込んでいた陽炎の下に、雪風が水を運んできた。

 

陽炎「あぁ、ありがと、雪風。」

 

雪風「今日の訓練も疲れました・・・。」

 

陽炎「そうね・・・でももう慣れたわ。慣れって、恐ろしいわね。」

 

雪風「でも、ちゃんとお休みも貰えるみたいですし、大丈夫ですよ。」

 

陽炎「はぁ~、一度休暇届だそうかしら・・・。」

 

休暇届は文字通りの代物である。海路で五日(往復十日)かかりはするが、本土に行く事も出来る立派な休暇取得届である。

 

雪風「それも一つ、いい手かもしれません。」

 

陽炎「何なら雪風も一緒に取る?」

 

雪風「私はまだ大丈夫です、お気遣いありがとうございます。」

 

と言う雪風。実際雪風は姉妹の中でも体力がかなりある方ではあるのだが。

 

陽炎「・・・まぁそれだけ元気なら大丈夫だろうけど、無理しないでよ? ちゃんと休まないと、倒れたりしたら大変よ?」

 

雪風「はい!」

 

元気に応じ、雪風はその場を去った。

 

陽炎「・・・休暇届、か。たまには艦娘じゃない、人らしいことを、か・・・。」

 

この休暇届のシステムは正式に定められたものではない。その設けられた理由は直人の意向による所が多かった。

 

「艦娘も人間であるならば、たまには人らしい日常を送っても、許される筈である。」と言うのが直人の持論の一つであった。そして艦娘がそうした日常を送る手助けとして、休暇届の仕組みが設けられたのだ。

 

当然その手回し(輸送船への便乗・滞在に関する諸々など)をするのは大淀と直人である。そしてその直接の上司が彼に対する理解の深い土方海将と、彼の親友大迫尚弥一佐なのだからその点は楽だ、何せ互いに気心の知れた間柄なのだから。

 

 

 

提督「お、おわったぁ・・・。」

 

12時手前で漸く終わらせる直人。

 

大淀「お疲れ様です、提督。」

 

提督「メシだメシ~っと。」

 

金剛「そうデスネ~。」

 

金剛が背伸びをして直人の言に応じる。

 

大淀「今日はもう上がられます?」

 

提督「うん、そうだね。遠征と警備の処理は任せるよ。」

 

大淀「はい、お任せください。」

 

直人はその面に関しては専門家ではない。ならば誰か他の、そう、専門家に任せた方が賢明である、と直人は思っていた。

 

ある意味でその考え方が彼ののろけではないかと言えなくはないのだが。

 

提督「よっしゃ、んじゃ金剛、行こうか。」

 

金剛「ランチタイムデース♪」

 

金剛が直人に続いてその背中をちょこちょこと追いかけ、二人して執務室を出る。

 

大淀「―――はぁ、仲が宜しい事で・・・人の前では程々にしているようですが・・・。」

 

大淀は普通に格好のつかない直人を見て溜息をつくのだった。

 

 

 

2月26日は水曜日である。その厨房担当は―――

 

 

12時04分 食堂棟1F・食堂/厨房カウンター

 

 

提督「お疲れさん、祥鳳。」

 

祥鳳「提督こそ、毎日お疲れ様です。」

 

担当は祥鳳である。

 

提督「にしても祥鳳が作る飯は無難で堅実だな、失敗も少ないから皆安心して食べてくれるだろう?」

 

祥鳳「はい、私も偶には凝った料理をお出ししたいとは思うのですが、中々踏み込めなくて・・・。」

 

提督「フフフ、まぁ凝った料理は凝った料理でそれが得意な奴がいるさ。無理して一歩踏み出す事はない、それで転がり落ちてもいかん、何事も確実にな。」

 

祥鳳「はい。」

 

金剛「・・・ワタシの時は論評しませんデシタヨネ?」ゴゴゴ

 

提督「金剛は美味しいし手は込んでるけど、その手の入れ方が今一歩感がある。ま、精進するんだな。」

 

金剛「ぐっ―――。」カキーン

 

その言葉に固まる金剛も日々努力中なのである。

 

提督「―――フッ、食べよっか。」

 

金剛「オ、OKデース。」

 

二の句が返せなかった金剛は、より一層の努力を誓って直人に続くのだった。

 

 

 

金剛と一緒に祥鳳の肉じゃがを食している所へ、一人の艦娘が昼食のトレーを持ってやってきた。

 

提督「―――!」

 

大淀「お向かい宜しいですか?」

 

提督「うん、いいけど。」

 

大淀「では失礼します。」

 

そう言って大淀が直人の向かい側に座る。

 

なお直人の左隣に金剛が座っている。

 

大淀「頂きます。」

 

提督「―――。」

 

何をしに来たのだろう、そう思いながら直人は無言で箸を進める。

 

大淀が食べ始めて少しして、大淀が口を開く。

 

大淀「そう言えば、執務中に仰っていた事、詳しくお聞かせ願えますか?」

 

提督「・・・艦娘に休暇取らせたいって言ってたアレ?」

 

大淀「えぇ。」

 

提督「うーん、そこまで深く考えてた訳じゃないんだけどね、ほら、そろそろ横鎮に出向かんといかんし。」

 

大淀「それのついで、ですか。」

 

提督「大当たり~。と言っても作戦準備もあるからすぐ戻る必要もあるしどうするかまだ決めてないんだ。」

 

笑顔で直人が言った。

 

大淀「成程、考えましたね。」

 

と、少し考えていた大淀が言った。

 

提督「まぁメインは横鎮での会議なんだけどね。」

 

因みに何故大本営への説明と再作戦の打ち合わせに横鎮へ態々行くのかと言うと、その方が他者の目を欺きやすいからだ。

 

大淀「それで、どうなさるんです?」

 

提督「うん、まだ、何とも言えない。呼び出しさえまだ来てないしな。」

 

大淀「それが、先程届いたからこうしてお話に来たのです。」

 

それで直人は合点がいった。何もなく大淀がこうして話をしに来る訳はないのだと、直人は思っていたのだった。

 

提督「成程な・・・期日は?」

 

大淀「3月1日の午後2時とのことです。」

 

提督「土曜日だな、今回金剛は随員にするにしては外れるな。」

 

金剛「な、なんでデース!?」

 

金剛が慌てて問い返してきたが、直人は厨房の方を左手の親指で指した。

 

金剛「う・・・ウヌヌ・・・。」

 

そう、土曜日は金剛の厨房担当日である。

 

提督「休暇の為に厨房抜ける、は論外だぞ。お前の腕に全艦娘の食事がかかってるんだからな。」

 

金剛「あう・・・ハイ・・・。」

 

バッサリ言われて金剛がしょげる。

 

提督「まぁ、なんだ。またの機会に考えておこう。」

 

金剛「我慢しマース・・・。」

 

残念そうだが切り替えるのも早かった。

 

提督「大淀、休暇を取らせるとして、連れて行けそうな艦娘のリスト、まとめてくれるか?」

 

大淀「スケジュールからでいいですか?」

 

提督「それだけじゃダメだ、どの程度働き詰めであるかとか、そうした面からも頼む。」

 

大淀「承りました。」

 

執務優先で一度は蹴り飛ばされたかに見えた休暇案が、一挙に日の目を見ようとしていた。本当に見るかは兎も角として―――。

 

 

 

2月29日8時47分 中央棟2F・提督執務室

 

 

提督「で、行けそうな奴のリストが漸く出来上がったと。」

 

大淀「まぁ、各艦とのスケジュールの擦り合わせもありますので・・・。」

 

特に駆逐艦に関して言えば、哨戒班のスケジュール等を勘案して訓練日程をも組み立てているだけに、神通や北上とも協議がいるのである。因みにこの時第一航空艦隊は遠洋練習航海で留守である。

 

提督「―――成程な、少し考えさせて貰おう。」

 

大淀「分かりました。」

 

提督「ところで今日の書類は?」

 

自分の執務机に紙切れ1枚見当たらない事に気付いた直人がそう言った。いつもなら予め書類は全て机に準備されているのだ。

 

陸奥「あら、そう言えばそうねぇ・・・。」

 

と、この日秘書艦席に座る陸奥も言った。

 

大淀「本日提督が処理する案件は、ございません。」

 

提督「・・・ゑ?」

 

思わず直人の口から声が漏れた。

 

大淀「本日の提督の業務は、訓練視察です。」

 

提督「・・・それで書類が無いと?」

 

大淀「いえ、書類が無いですので代わりと言う訳です。」

 

と大淀は言う。

 

陸奥「あらあら、大変ねぇ。」

 

完全に他人事のように言う陸奥。因みにこの日金剛は定期的に艦娘達が取っている(取らされている)休養日で訓練にも参加していない。

 

提督「それならいっそ休みでええやん・・・。」

 

大淀「提督が休みを取っていいとでも?」

 

提督「軍隊じゃあるまいに・・・。」

 

確かに正規の軍ではない。

 

大淀「それに提督はいつも半日しか仕事やってないじゃないですか!」

 

提督「うぐっ・・・!?」

 

そう、この男一日働き詰めではなくいつも半日で仕事を終わらせているのだ。

 

提督「―――はぁ、分かった分かった・・・。」

 

とうとう観念する直人であった。

 

提督「てか気になる奴は“特別教練”していいんだよな?」

 

大淀「御随意に。」

 

その点は適当にはぐらかす大淀だった。そもそも訓練内容は大淀の与り知るところではない。

 

提督「さいで。」

 

結局直人は軍服をそのままに黒いマントを着け、帯刀して執務室を出たのだった。

 

 

 

9時26分 司令部正面水域

 

 

ドォンドォンドォン・・・

 

 

司令部正面の訓練水域はこの日も盛んに砲声が響いていた。

 

提督「お、やってるねぇ~。」

 

とそこへ直人がやってきた。

 

神通「提督! 執務の筈ではなかったのですか?」

 

提督「これが仕事だとー、訓練の視察してこいって大淀が。」

 

神通「えっと、書類の方は・・・?」

 

提督「かくかくしかじか。」

 

神通「成程、そう言う事でしたか・・・。」

 

これで分かるのは小説の特権です()

 

提督「まぁ、少しだれか借りるかもしれんが基本気にせずやってくれぃ。」

 

神通「分かりました。」

 

北上「こうなったら今日はとことんしごかないと、ねぇ?」

 

六駆「「!?」」ギョッ

 

提督「気にせんでもいいからいつも通りやってやれ。」

 

北上「んー、まぁそう言うなら・・・。」

 

六駆(ホッ・・・。)ホッ

 

北上をすかさず諫める直人である。グッジョブ。

 

 

 

横鎮近衛艦隊の訓練は実戦形式で行われる。ウォームアップなどなし、最初から全力である。

 

仮想敵を決め、様々な想定で戦闘教練を行う。無論これには双方の側に立った指揮官の柔軟な対応力が問われる訳だが・・・。

 

提督「へぇ~、確かにこいつは苛烈だ、軽い戦にさえ見える。」

 

神通「恐縮です。」

 

観戦していた直人はそう論評した。

 

提督「しかし双方共に固定概念があるな、動きが硬い。」

 

今回仮想敵は敵艦隊の中央部と言う想定で、これを側面から水雷戦隊で強襲し、その後ろから重巡部隊がついてくると言った形である。

 

指揮は仮想敵側が霧島、水雷戦隊側が指揮官役初抜擢の木曽で、水雷戦隊側は一水戦を指揮し、後方に第五戦隊がいた。

 

提督「霧島は基本に忠実で堅実だな、しかし一つ手を打てば崩れそうだ。」

 

仮想敵艦隊を指揮する霧島は密集隊形からの集中砲火で水雷戦隊を迎え撃つ。これによって木曽の率いる水雷戦隊の駆逐隊は近寄れないでいる。

 

提督「木曽は木曽で突入するのはいいんだが、引いて突っ込んでまた引いてを繰り返しているのでは密集した敵陣は崩せん、神通はいい采配をしていたようだが、木曽ではそうはいかんか。」

 

神通「何分、旗艦役が初めての方ですので・・・。」

 

提督「いや、経験不足もそうだが、一番の理由は固定概念の存在だ。木曽は恐らく魚雷発射を狙っているのだろうが、我が艦隊は総じて練度は高いから、中距離でも当たらないと踏んだのだろう、踏み込もうとしているように見える。」

 

神通「成程、それでしたらあの行動にも説明はつきます。」

 

霧島「霧島も霧島だ、黙って耐えれば敵は退くと思っているらしい。密集隊形は却って魚雷の的になりやすいのにな。」

 

神通「はい・・・。」

 

この後も少し直人の論評は続いたが、総じて言えば『両者共に赤点』であった。

 

 

 

9時36分、このせめぎ合いは結局物別れのまま終了した。結局木曽は霧島の防御陣を崩すには至らず、霧島も攻め手に欠いてみすみす取り逃がす事となったのだ。

 

提督「・・・見るに耐えんな。」

 

神通「・・・提督?」

 

そう言って直人が拳を握る。

 

提督「ここはひとつ、柔軟な戦術がどんなものか見せてやらねばなるまい。俺が防御側指揮官をやってやる、一度やってくれんか?」

 

この突然の申し出に神通は

 

神通「それは――構いませんが、どの様な編成になさいますか?」

 

と応じた。この直人の返答が―――

 

提督「うん、司令部防備艦隊と司令部直隷部隊を使わせてもらう。」

 

というものだった。

 

 

 

9時50分、状況が開始される。

 

 

想定は「“敵の前線へ回航中の超兵器を発見、航路上で待ち伏せ攻撃を行う”」と言う物だった。無論直人の指定である。

 

攻撃側指揮官は霧島のまま、横鎮近衛の第一航空艦隊を除いた全艦艇、対する直人は司令部直隷戦力である第四駆逐隊と第一潜水戦隊のほか、以下の艦艇が加わる。

 

 

サイパン島防備戦隊(鳳翔旗艦)

第十八戦隊(天龍/龍田)

第五十航空戦隊(鳳翔)

随伴:夕張

第七水雷戦隊

名取

第二十二駆逐隊(睦月/如月/皐月/文月)

第三十駆逐隊(長月/菊月/三日月/望月)

 

 

全ての艦が揃いも揃って旧式艦である。(それを言うと新鋭阿賀野型はまだ着任さえしていないが。)

 

しかし直人の装備は、ストライダーフレームの脚部艤装と言う以外はほぼフル装備である。(※実は最初から)

 

天龍「ひっさびさだなぁおい、提督の指示を仰げるとは。」

 

夕張「だ、大丈夫かな・・・。」

 

名取「だ、大丈夫です、提督の采配を信じましょう。」

 

鳳翔「その通りです、提督は腕は確かですから。」

 

夕張「そ、それを聞くと逆に緊張するなぁ・・・。」

 

鳳翔の言葉であればこそだろうが・・・。

 

提督「駄弁るな、始まるぞ。」

 

3人「はい。」

 

龍田「―――フフッ。」

 

鳳翔「参りましょうか。」

 

 

 

神通「“状況開始!”」

 

 

 

提督「全機発艦!」

 

鳳翔「参ります!」

 

 

 

蒼龍「発艦始め!」

 

龍驤「いくでぇ!!」

 

霧島「二水戦、一水戦、突入準備!」

 

神通・川内「“了解!”」

 

双方共に艦載機が発進する。

 

今回直人は出撃機数を定数の半分にしている。なので定数600機の所半数の300機のみが出撃する。

 

補足しておくが、言うまでもなく撃沈判定を出させる目標は直人である。相変わらずの化物扱いである。(最も自分で言い出したものが納得されてしまったのだが。)

 

提督「戦爆攻90機ずつ、いつもの半分だが、まぁハンデだな。」

 

この他直人は120cm砲と30cm速射砲も装備していない。当然であるが上陸戦装備も搭載していない。

 

鳳翔「いい艦載機ですね―――私にも、扱えるのでしょうか・・・。」

 

提督「艦娘の身体になった今なら使えると思うよ。流星でも烈風でも。」

 

鳳翔「フフッ、そうでしたね。」

 

柑橘類「おいそこぉ! うだうだ喋るなぁ!」

 

提督「黙って突っ込め!」

 

柑橘類隊長のツッコミをしっぺ返しで返す直人である。半ばその流れを懐かしく思いながらも直人は、鳳翔と話しているその間にも戦術を組み立てるのである。

 

 

提督(配下部隊は空母1軽巡3駆逐艦9潜水艦1。ここはひとつ、天龍と龍田の突っ込ませるのも一興だが返り討ちになるのがオチだな・・・いや、まてよ?)

 

直人は一つ、思いついた事を実行する。

 

提督「天龍、龍田! 敵左翼隊に航空攻撃とタイミングを合わせて斬り込め!」

 

天龍「えぇっ!? 正気か提督! 接近する前に―――」

 

提督「考えがある、撃たせはせんから突っ込め!」

 

龍田「はぁい♪」

 

龍田はノリノリで突っ込む。

 

天龍「あっ、おい龍田! ええいもうなるようになれ!!」

 

龍田に続いて天龍がヤケクソになって突っ込む。

 

提督「駆逐隊は舞風を中央に逆楔型の陣形で待機だ、内角130度、間隔180m。」

 

菊月「ちょっと待て、少し広くないか?」

 

菊月の指摘は直人の想定範囲内である。確かに艦娘の展開範囲としては広い。

 

提督「そうだよ? 広けりゃそれに越したことはない、後は分かるな?」

 

菊月「なに・・・?」

 

提督「右翼隊の突撃に備えろ、夕張は・・・まぁ不測の事態に即応出来るよう待機。」

 

夕張「了解!」

 

夕張を予備戦力とした直人は、残った最後の1隻に指示を出す―――

 

 

 

霧島「右翼及び左翼、突入!」

 

霧島は左翼を指揮して指示を出す。右翼に伊勢と山城と榛名、左翼に日向と扶桑、中央に陸奥を配している。

 

ところで霧島がなぜいるのかと思われた方もいるだろう。(※霧島は1航艦所属)

 

実は霧島、一航艦の出港時、風邪でダウンしていたのである。なお霧島曰く心当たりはないらしい。そんでもって霧島は第一艦隊の遠洋練習航海時に随伴させる事となり残留していたのである。

 

陸奥「果たして、上手く行くかしら?」

 

霧島「敵の戦力はごく少数かつ弱体です。分進合撃による時間差攻撃で、取り巻きは崩せるでしょう、後は数の差で圧倒するまで。」

 

榛名「どうでしょう、提督は時に驚くような戦術を編み出しますから・・・。」

 

霧島「大丈夫です榛名。私の戦況予測によれば、多少の不測の事態は十分対応可能です。」

 

そう霧島は断言して見せる。勿論霧島も数度の実戦を経験してはいるのだが、その時は参謀程度の立場であり、一度旗艦は経験しているがこれだけの規模を一度に統率するのはこれが最初である。

 

榛名「だと、いいのですが・・・。」

 

榛名は不安を隠せなかった。

 

 

 

その頃攻撃側左翼隊は、猛烈な空襲に見舞われていた。無論の事ながら本隊の空母部隊から戦闘機の応援は出ているのだが、護衛戦闘機が異様なほど手練れているのだ。

 

それもその筈、直衛に出ていたのは鳳翔戦闘機隊の他戦艦紀伊の震電改(西沢隊)のうち40機である。震電改の残り50機は上空直援で現在進行形で二航戦その他の攻撃隊を防いでいる。

 

補足しておくがこの震電改は艦これに実装されたそれではなく、“噴式機”(ジェット機)である。

 

柑橘類「・・・相も変わらず、ずっこくねぇか? あれ・・・。」

 

柑橘類隊の零式艦戦二二型とは次元が違う強さを誇る震電改噴式戦闘機。攻撃力は比較の段ではない30mm機関砲4門と言う重武装である。(零式艦戦22型:20mm×2 7.7mm×2)

 

圧倒的な速度差で零戦を翻弄する震電改40機の乱舞する姿がそこにはあった。しかもそれに乗り込むは百戦錬磨の妖精達である。手が付けられないこと請け合いである。

 

一方直人の本隊を襲おうとした攻撃隊も、艦爆や艦攻が徹底的に狙い回され、航空攻撃は頓挫しようとしていた。

 

柑橘類「下の連中もやってるねぇ。」

 

 

 

提督「航空攻撃は上手く行きそうだな。」

 

一方左翼隊の艦娘へは景雲改2を始め流星改の爆装/雷装90機ずつが猛然と襲い掛かっていた。

 

 

 

ドオオォォォーーーン

 

 

日向「くぅっ!!」

 

扶桑「敵機、来ます!」

 

 

―――ィィィィィィ・・・ン

 

 

爆弾を投下し終えた景雲改二が肉薄する。

 

日向「このままでは・・・!」

 

熊野「対空射撃、撃ちますわっ―――!?」

 

 

ドドドドドドドドドド・・・

 

 

那智「なっ――!?」

 

その様を唯一まともに見た那智は目を疑った。景雲改二は確かに数機が那智へ攻撃を仕掛け那智を中破に追いやっている。しかし爆撃機と思っていたそれが機首から火を噴いたではないか。

 

熊野「きゃぁっ! 何をするんですの!?」

 

 

キイイィィィィィィーーー・・・ン

 

 

突入してきた景雲改二は銃撃したのみで航過した。元よりその胴体中央下部のパイロンに爆弾はなかったが。

 

景雲改二(景雲改 V2)にも30mm機関砲が4門備え付けられている。震電改が搭載しているものと同じモデルだ。所謂自衛用であるが、威力は手加減ない。

 

日向「くっ、早すぎる・・・!」

 

扶桑「爆弾を投下しない・・・どういう・・・?」

 

 

 

天龍「どうなってやがる、こんな至近まで接近出来たぞ。」

 

それから数分後、天龍は左翼隊から900mまで肉薄していた。

 

前方では駆逐艦を主な目標として随所で航空機による執拗な銃撃が続けられている。

 

龍田「銃撃で気を引いてた訳ね。ここまでくれば、私達のものよ。」

 

天龍「おうよ、前進!」

 

流星改にも20mm機関砲2門がこちらは翼内固定で付いている。その割りに艦これではそれが対空値に反映されていないのだが。(自衛用だからか?)

 

直人の考えとは正にこの銃撃だった。銃撃によって戦闘力と注意を徐々に削いでいく事で、天龍達の接近を容易とするのが目的だったのだ。

 

提督「“峰打ちだぞー、刺突も禁止だからな。分かってるなー?”」

 

天龍「わーってるよ、いくぜ。」

 

提督「“頼んだぞ。”」

 

天龍「おう、手助け感謝するぜ、これで暴れられる。」

 

因みに銃撃の効果は敵の戦闘力を削ぎ落とすのに十分役に立つ。何故なら日本の重巡や軽巡、駆逐艦の砲塔防御は弾片防御を考慮したものであり、敵の砲弾を防御する様には出来ていない。

 

戦車でもあるまいしそんな大きな砲塔に装甲を着けたら大抵重心が上がってしまい、条約型などでは排水量超過の原因になるのだ。

 

その様な装甲で口径20mmや30mmの銃弾を防ぎ得るかどうか、少し考えればお分かり頂けるであろう。

 

暁「ちょっ、撃てないんだけど!?」

 

電「私もなのです~!」

 

猛爆を受ける左翼隊ではこうした主砲の不良が続出していた。

 

最上「うそっ、3番砲がっ!」

 

熊野「私は見事に、左足の1基しか動きませんわね・・・。」

 

完全にボロボロである。

 

最上と熊野が固定装備している15.5cm砲は、全周25mmNVNC甲板で防御されているのだが、肉薄して放たれる大口径機銃弾を防げる代物ではない。

 

これは他の重巡の20.3cm連装砲も然りで、弾片防御程度の装甲であり、弾丸を撃ち込まれることは想定されていない。防げても小銃弾がせいぜいであろう。

 

那智「くっ・・・武装の半数がダメになったか・・・。」

 

妙高「考えましたね、提督・・・。」

 

 

 

提督「高々スプリンター防御程度の装甲なら、機銃掃射で事足りるのだよ。」

 

夕張「えげつない事するわねぇ・・・。」

 

提督「夕張相手なら航空機関砲だけで戦闘不能に出来るが試してみるか?」

 

※夕張の装甲は何処であろうが景雲や震電に積まれた30mm機関砲の演習弾で貫通できます。

 

夕張「正直勘弁して下さりませんか!?」

(※更に夕張は対空火器のプラットフォームが不足しています。)

 

提督「そうだろうな。ただでさえ装甲薄いものに機関砲の徹甲弾だの徹甲榴弾だの撃ち込まれたんじゃ敵うまいな。」

 

夕張「大体ジェット機なんてどうやって迎撃しろっていうんですかぁ!」

 

正に正論である。

 

 

 

天龍と龍田が左翼隊に斬りかかった頃、攻撃側右翼隊は直人が左翼に配した駆逐艦隊と交戦していた。当然ながら突撃態勢を取る右翼隊を止める術はない。

 

舞風「この編成でどうすればいいのよ~!!」

 

菊月「・・・待てよ? この状況、この態勢―――まさか!」

 

提督「“はい菊月ご明察。ではそのように指示できるね?”」

 

9人「!!」

 

直人に丸聞こえであったらしい。

 

菊月「あ、あぁ。各艦に通達、敵の突進に合わせ中央は後退、右翼左翼は前進、その際楔型を崩すな!」

 

長月「――そうか!」

 

皐月「成程ね。」

 

文月「行くよ~!」

 

菊月「そこから先は私がタイミングを合わせる、指示を待ってくれ。」

 

8人「“了解!”」

 

こうして直人と菊月の作戦が始まった。

 

 

 

鳳翔「・・・えーと、提督は何をお考えなのです?」

 

提督「フッ、今に分かりますよ。」

 

直人は余裕である。

 

夕張「提督! 敵中央隊突っ込んで来たよ!」

 

提督「――! 遂に動くか、だが―――」

 

 

 

陸奥「続けぇ!」

 

陸奥率いる中央隊は、第六戦隊を中心に大井/北上/木曽の第十一戦隊をも含む高速打撃群だ。左翼隊は一水戦、右翼隊は二水戦が配されている為この中央隊は予備戦力に近い。駆逐艦は1隻もいない。

 

加古「さぁ化物退治だ、やるぞぉ!」

 

青葉「なんで私まで~!」><;

 

たまたま居合わせた場合訓練へ参加させられる青葉だったが、どうやらかなり間の悪いタイミングだったようだ。

 

北上「さぁ、いっちょやりましょうかね!」

 

大井「突撃します!」

 

利根「いざ!」

 

筑摩「えぇ、参りましょう、姉さん!」

 

木曽「一気に懐に潜り込んでやる!」

 

 

 

名取「・・・あれっ? そう言えばイムヤさんは・・・?」

 

実はイムヤの居所は誰も知らない。

 

提督「ヘヘヘ~、内緒♪」

 

名取「え、えぇ・・・。」

 

 

 

摩耶「ええい、こうなりゃあの駆逐艦共打ち破って本隊へ肉薄だ!」

 

右翼隊で歯噛みしてそういう摩耶。右翼隊への航空攻撃はなかったからである。

 

羽黒「お、落ち着いて下さい摩耶さん・・・。」

 

と宥める羽黒。

 

摩耶「だってよ―――ん? そういや向こうに潜水艦いたよな?」

 

羽黒「え、えぇ・・・。」

 

摩耶「何処へ行きやがった・・・?」

 

 

 

球磨「や、ヤバイクマ、下がるクマ!」

 

多摩「にゃ、にゃぁ~!!」

 

重巡組が止める隙に下がる第十三戦隊の球磨と多摩。

 

球磨「なんてことだクマ、空襲で主砲を壊す作戦とは、考えたクマね・・・。」

 

多摩「も、もう1発も撃てないにゃ・・・。」

 

多摩は主砲全損と言うとんでもない状態だったのだ。後退命令もやむなしだったかもしれない。

 

多摩「―――にゃ? そう言えば、提督の方には潜水艦がいたはずにゃ。」

 

察しの良い猫は嫌いだよ。

 

球磨「そ、そうだクマ! 一体どこへ・・・!?」

 

球磨はその直感から、直人の意図とその狙いを洞察した唯一の艦娘だった。

 

多摩「ど、どうしたにゃ?」

 

球磨「陸奥が危ないクマ!」

 

 

 

利根「―――! 前方雷跡、鈴谷!」

 

鈴谷「えっ!? どこっ―――」

 

 

ドオオォォンドオオォォォーーーン

 

 

鈴谷「や、ヤダ、マジでっ・・・!?」

 

鈴谷に出た判定は、大破(戦闘続行不能)。

 

利根「くっ、一体どこからっ!」

 

 

ドオオォォォーーーン

 

 

蒼龍「くああああっ!?」

 

陸奥「蒼龍!?」

 

蒼龍「ごめん、ドジった・・・。」

 

青葉「ど、どうなってるんですかぁ!?」

 

陸奥「と、とにかく突撃態勢解除、散開!!」

 

 

 

イムヤ「――フフッ、海のスナイパーイムヤに、お任せよっ!」

 

イムヤが中央隊右前方に移動し魚雷4射線を放つ。

 

潜水艦の潜航は霊力で自身の周囲に空気球を作り出して行う。

 

要は泡の中で活動する為呼吸などをすれば必然空気球は小さくなるが、それが潜航可能時間である。無論艦娘によって生み出せる空気球の大きさも異なるが。

 

そしてその魚雷は、水中に霊力を用いて顕現させる方式、方法としては一部軽巡などと同じ手法だ。

 

話を戻すが直人のイムヤに出したミッションは、「突撃してきた場合の中央隊の足止め」であった。

 

イムヤ「これ位お手のもの、よ!」

 

イムヤは存分に活躍できる舞台とタイミングを十全に整えて貰えた事で御機嫌であった。

 

 

 

提督「おーおー、やってんな。」

 

と手を眉間に当てて日光を遮りながら見据えて言う直人。

 

名取「す、すごい・・・。」

 

提督「何の、まだまだ。鳳翔さん、行けます――行ってますねもう。」

 

鳳翔「はい、お任せ下さい。」

 

鳳翔は既に第2次攻撃隊を出していた。直人も攻撃隊の収容と再装填を行っていた。

 

提督「よーし、順次発艦、鳳翔航空隊に続け!」

 

鳳翔に続き、直人も準備出来次第航空機を出撃させる。

 

柑橘類「おうおう、ちょい遅いんじゃねぇのぉ?」

 

提督「その口縫い合わすぞ。」ゴゴゴゴ

 

柑橘類「オーコワイコワイ」

 

鳳翔「お二方とも、程々にして下さいね?」

 

二人「はい。」

 

流石おかんの貫禄である。

 

 

 

一方で左翼でも直人の策が始まろうとしていた。

 

舞風「ま、まだ~!?」

 

睦月「そ、そろそろ・・・」

 

如月「こっちも限界よぉ~!」

 

菊月「よし今だ! 全艦魚雷全弾発射!!」

 

8人「魚雷!?」

 

てっきり砲撃と思い込んでいた8人はそう問い返してしまった。

 

菊月「早くしないかッ!!」

 

長月「わ、分かった!」

 

全艦相前後して魚雷を放つ。姿なき暗殺者、九三式魚雷56射線が、右翼隊両側面から正面までの全面から迫る。

 

 

 

摩耶「なんだ? 包囲でもしようってのか?」

 

羽黒「さ、さぁ・・・。」

 

逆楔型の陣形、いわゆる鶴翼の陣形だが、本来は攻勢側が包囲戦術を用いる際に使われるものだ。

 

羽黒「包囲するには隻数が―――ッ!?」

 

摩耶「どうし―――」

 

 

ドドドドドドドド・・・

 

 

摩耶「ぐあああっ!」

 

伊勢「ぐおっ!?」

 

山城「いやああああっ!!」

 

愛宕「そんなっ・・・!」

 

密集隊形は完全に仇となった。

 

ごく狭い範囲を狙って扇状に放たれた56射線魚雷は、完全なクロスファイアとなって襲い掛かった。

 

逃げ場は、無い。

 

右翼隊は殆どが魚雷を受けて満足に動ける状態ではなかった。が―――

 

 

 

夕立「あちゃぁ~・・・」

 

雪風「計算ずく、でしたか・・・。」

 

この二人が無事であった。二人ともきょろきょろしている。

 

神通「夕立、雪風! 無事、でしたか・・・。」

 

雷撃を受け航行不能の神通がその二人の状態を確認し安堵の声を漏らす。

 

夕立「どうするっぽい? まともに動けるのは私達だけっぽいよ?」

 

神通「そうですね、でも“あなた達だった事が”この際幸いでしょう・・・。」

 

雪風「神通さん、もしかして・・・。」

 

雪風は神通の意図が分かった気がした。

 

神通「えぇ―――行ってきなさい。」

 

夕立「・・・了解っぽい!」

 

神通「伊勢さん、いいですね?」

 

伊勢「え、えぇ。それしか手はないわね。」

 

伊勢も神通の策に乗った、それは唯一勝つ可能性を秘めた策だった。

 

雪風「神通さん―――行ってきます!」

 

神通「行ってらっしゃい。気合を入れてやるのよ、いいわね?」

 

雪風「はいっ! 頑張ります!」

 

夕立と雪風、絶望的な突撃が始まった。

 

 

 

提督「後は任せときゃ勝手に片が付くでしょ。中央隊を砲撃、撃て撃てぇ!!」

 

と直人はらしくも無い事を言う。

 

名取「あの、夕立さんの事は・・・?」

 

と名取が恐る恐る指摘する。

 

提督「・・・あ、それを失念してたわ、ありがと名取。」

 

名取「いえ!」

 

その短いやり取りの後、直人・名取・夕張の3人は徹底的に中央隊を打ちのめす。航空攻撃は早々に終わっており、雷撃と砲撃のみが降り注いでいた。相変わらず航空機も一斉攻撃をやっているのだが、その練度たるや素晴らしいものである。

 

提督「成程、あの陣を突破する事は容易いが、夕立となると、厄介だな・・・。」

 

その事を再認識しつつも、頭の片隅に留めるだけであった。

 

 

 

雪風「私が引き付けます、夕立さん、前へ!」

 

夕立「了解!」

 

雪風が正面にいる舞風に砲撃を放つ。

 

舞風「うおおおおっ!?」

 

夕立「そこをどくっぽいッ!!」

 

 

ズドドドドド・・・

 

 

舞風の周囲には次々と至近弾が着弾する。

 

舞風「うう・・・ん? 夕立は何処――」

 

雪風「あなたの相手は、私ですっ!」

 

舞風「ッ!!??」

 

水柱に紛れ詰め寄る雪風を躱す舞風、その隙に夕立が舞風を突破し後方へ回る。

 

 

 

提督「よし、大方大破判定が出たかな?」

 

呆れる位早い仕事である。数こそ少ないとはいえ大型艦だらけであったのだが・・・。

 

鳳翔「っ! 提督、9時半の方向!」

 

提督「何ッ!?」

 

直人は咄嗟にその方向を向く。

 

夕立「うおおおおおおおおおお!!」

 

雄叫びを上げ突撃する夕立の姿が、そこにはあった。真っすぐ、真一文字にである。

 

提督「夕立か、本当にきやがった!」

 

名取の進言は現実のものとなった。

 

提督(こいつらじゃ反応が間に合ってない、ならば!)

 

直人は夕立と正面対峙し、80cm砲弾と51cm砲弾の雨を降らせる。が、夕立の勢いは止まらない。巨大な水柱を掻い潜り急速に直人に迫る。

 

夕立(主砲じゃ絶対に届かない、魚雷も普通に撃ったら外れる、なら――!)

 

提督(零距離雷撃か、安全装置までも外す訳だな。是非も無し。)

 

夕張「提督!」

 

名取「司令官!」

 

提督「任せろ―――」

 

そういうと直人は、脚部以外の艤装を殆どパージし、艦娘機関の部分のみを装着した状態で抜刀する。

 

因みに鋼鉄の塊なので普通は水没するが、内蔵式フロート付きなので安心である。

 

提督「参る!」チャキッ

 

直人は刀の刃を返すと猛然と夕立に斬りかかる。

 

 

キィンガキィンドォンドドォォンカシィンガィンピィンズドォンズドォンガキンガキィンキィンキィン・・・

(※余りの高速なので効果音のみでお届けしております。)

 

 

名取「―――!?」

 

名取、呆然。

 

夕張「この二人強すぎない・・・?」

 

鳳翔「フフッ、そうですね。」

 

驚く夕張とそして笑顔で返す鳳翔。なお鳳翔は特定条件下ではあるが直人に勝った経験を持つ。

 

鳳翔「でも提督、格闘戦は然程お強くないんですよ。」

 

その勝った話を引き合いに出す鳳翔。

 

夕張「そ、そうなんだ・・・。」

 

厳密に言えば形式ばったのが苦手なのだが。

 

 

ガキイイィィィィーーー・・・ン

 

 

直人渾身の縦割り斬りを主砲の砲塔で受ける夕立。

 

提督「や、やるな・・・。」

 

夕立「ヘヘッ、勿論っぽい。」

 

因みに夕立は近接戦闘演習で順番を待ち切れず飛び出した挙句背負い投げ一本で綺麗にダウンしている過去がある。

 

夕立「あれから少しは腕を磨いたっぽい。」

 

提督「ほう? では今度またアレをやらんとな。」

 

夕立「望むところっぽい。」

 

提督(しかし離れれば即座に魚雷が飛んでくるな。はてさて・・・)

 

直人は即興で策を立てる。

 

提督「はぁっ!!」

 

 

ギャリイィィィィーー・・・ン

 

 

直人は鍔迫り合いから一挙に攻勢に転じる為一気に振り抜き夕立を吹き飛ばす。

 

夕立「今ッ―――!」

 

夕立は吹き飛ばされる中で魚雷を放つ。確かに吹き飛ばした時の直人は完全に踏み込んでいてすぐに動けはしない、しかし夕立は一つ盲点があった。

 

提督「ふんっ!」

 

 

ゴオオオオオオオオオ―――ッ

 

 

夕立「ッ!?」

 

夕立は、直人がわざわざリスクを冒した理由をすぐに察するに至る。

 

提督「はっはっは! 甘いわぁ!」

 

なんと直人、力んだ足で動けない所へ無理矢理脚部ブースターのバーニアを点火し、踏み込みも足して一気に飛んだのだ。

 

夕立「くっ!!」ドォンドォン

 

夕立が咄嗟に主砲で対空砲撃を撃つ。

 

提督「はあああっ!!」

 

それを直人は極光で斬撃を飛ばし、砲弾をいなしつつ夕立を攻撃する。

 

但し負の霊力で傷を付けないよう、自らの霊力を刀に纏わせてそれを飛ばすという迂遠な形ではあったが。

 

夕立「くぅっ!」ガガガガッ

 

夕立がそれを受け止める。しかし、真打は最後にやってくる。

 

提督(――光路・抜刀――!)

 

直人がまだ鞘に納まっていた希光を左手で抜き打ちの要領で抜刀、そのワンアクションで斬撃を飛ばす。こと霊力を用いた“斬撃を飛ばす”事については極光より希光に分があるのだ。

 

夕立「ぐっうあっ!!」

 

その一撃を夕立は受けきれず、大きく態勢を崩す。

 

提督「はああああああっっ!!」

 

直人は希光を素早く納刀すると極光を振りかぶり、夕立の左肩から右脇腹にかけ一閃した。(※当然峰打ちです)

 

夕立「ぽ・・・ぽいぃ。」

 

 

バッシャアアァァーーン

 

 

提督「ふぅ・・・」シュゥゥゥッ、チャキン

 

鳳翔「提督、お見事な手前でした。」

 

提督「世辞にも良い流れとは言いにくいね、あれ抜刀術で1回で決めるとこだよ。」

 

直人は苦笑して言う。

 

そしてこの瞬間、直人の勝利が確定した。

 

 

 

天龍「ふぅ、やっと片付いたか。」

 

龍田「そうねぇ。」

 

球磨「ク・・・マ。」ガクッ

 

多摩「にゃぁ~・・・。」

 

 

 

陸奥「くっ・・・やるじゃない、提督も・・・。」

 

鈴谷「か、加減しなさ過ぎ・・・。」

 

利根「のじゃ・・・。」チーン

 

筑摩「姉さん、大丈夫です、か・・・?」

 

 

 

神通「だめ、ですか。」

 

扶桑「そうね・・・。」

 

日向「届かない、か・・・。」

 

村雨「うそでしょ・・・。」

 

 

 

雪風「むー・・・。」

 

皐月「や、やっと大人しくなったね・・・。」

 

睦月「終わったのね・・・。」

 

菊月「どうなる事かと思ったがな・・・。」

 

 

 

榛名「ダメ、でしたね・・・。」←右翼隊

 

霧島「“そうね・・・私もまだまだ、経験不足みたいね。”」←左翼隊

 

両者共に大破判定でへばっている模様。

 

直人が自ら、久々に指揮を執ったこの演習は、直人の防衛側が旧式艦の寄せ集めであったにも関わらず勝利した。

 

無論直人自身の力が圧倒的であった事は言を持つまでもないが、それでも単独では全員を倒す事は不可能であった事も事実で、それを補ったのが僚艦との連携と彼の戦術であった。

 

 

 

柑橘類「おーおー、やってくれたねぇ・・・。」

 

提督「よう、お疲れ。」

 

柑橘類「お疲れさん。」

 

今日も大奮闘の柑橘類隊長、1人で30機は撃墜判定を出したという。

 

柑橘類「だがそろそろ新しい機体が欲しいとこだな。」(´・ω・`)

 

提督「はいはい、検討しておこう。」

 

と応じる直人であった。

 

 

 

その日の昼下がり食堂で霧島と会食した直人は、霧島からその演習の事を切り出され、こう質問を受けた。

 

霧島「本日の演習の際、司令が用いた策。あれは何か参考にしたこと等あるのですか?」

 

これに対する直人の答えは単純明快だった。

 

提督「いや、ない。」

 

霧島「・・・え?」

 

提督「俺は基本戦術書とかそういった類の物は読まない事はないけど、そんなに深く知ってる訳じゃぁない。それらの知識を使ってそれらしいことをやってるだけさ。独創と閃きでね。」

 

実の所直人の言には偽りはない。事実として直人の内には最初から腹案と呼べるものはないし、単なる趣味から入っただけに固定観念もない。最も直人の発想力はここからきているのだろうが。

 

霧島「で、では、参考にした戦術も、何も・・・?」

 

提督「無い。自分で見て、感じた事を、戦術に反映する、それが俺のやり方だ。」

 

霧島「成程・・・。」

 

提督「と言っても理屈ありきの直感だけどね。」

 

彼の戦術理論は理屈と直感が全てだ。理詰めの大将と大淀には言われた事もあるが、実際には野性的な一面もあるのが、彼の考え方の一端を示しているのだろう。

 

提督「中央隊の編成不備に関しても最初から洞察はしてたしな。だから潜水艦を配置して足止めをした訳だが。」

 

霧島「その根拠は?」

 

提督「軽巡以下の小型艦の姿が無かった。」

 

霧島「見てらしたんですか?」

 

霧島がそう問いかけた。

 

提督「いや、始まる前に見た。戦場と同じようにね。だからイムヤには最初に指示を出しておいた訳だ。」

 

霧島「で、では左右の敵に対しては?」

 

提督「うん、右翼方向へは徹底的な空襲と銃爆撃で特に武装と推進系を破壊、更に注意を逸らしている隙に十八戦隊の突入で無力化、左翼方向へは誘引戦術による魚雷のクロスファイアで足を止め砲雷撃で沈黙させるつもりだった。正面方向は俺と名取、夕張で黙らせればいい。」

 

直人はこれを全て自分の目で見て立てたのだ。既存の戦術に囚われないという点に於いて、直人が霧島の様な軍師タイプの艦娘達に勝るポイントでもあっただろう。

 

霧島「・・・どうやら、私の完敗ですね。」

 

提督「フッ、そうか。」

 

霧島は改めて、自分が未熟である事を知ったのだった。

 

天龍「よう、提督。」

 

そこへ天龍がやってきた。

 

提督「おう、今日はご苦労さん。」

 

天龍「ホントだぜ全く、たった二人で敵打撃群のど真ん中に突っ込めって言うから何事かと思ったぜ。」

 

提督「だが見事やってのけたじゃないか。」

 

天龍「援護なしじゃ到底叶わなかっただろうさ、ありがとよ。」

 

天龍は素直に謝意を表する。

 

提督「なんの、日本巡洋艦と駆逐艦の弱点って砲の装甲が皆無な事だからな。」

 

因みに言うと5500トン級までの軽巡は悲惨である、なんせ砲塔ではないので砲が殆ど剥き出しなのだ。こうなると機銃弾でも致命的である。

 

天龍「しっかし戦闘機の機関砲で重巡洋艦の主砲を無力化できるとはねぇ。」

 

提督「日本の重巡は重量削減と言って砲塔装甲削ってるから仕方ない側面はあるがね。」

 

海外を見ると、妙高と同時期の米・ペンサコラ級重巡(20.3cm砲10門・32.5ノット)の主砲装甲は正面だけは64mm厚を確保している事を見ても、日本の重量削減策は徹底したことが見て取れる。(エスカレートした結果が最上ではあるが。)

 

その分欠点も内包してはいたものの、米国をしてその性能に恐れを為させたのは納得のいく話である。(ペンサコラ級以降は3連装×2+連装×2から無難な3連装3基になり、砲力的に劣りまた依然欠陥も多かった。)

 

提督「まぁ今回はその欠点をモロに突いた訳だがね。」

 

そう考えれば直人も人が悪いというものだが。

 

天龍「まぁなんにせよ上手く行って良かったぜ、霧島の姉さんにはちと手こずったがね。」

 

提督「・・・マジ?」

 

そう言われて思わず霧島を見る直人。

 

霧島「――不覚は取りましたが。」

 

提督(マジかよ・・・。)

 

素で思う直人でございました。

 

 

―――彼が物心ついた頃、海はまだ、人々の娯楽の場だった。

―――彼が少し賢くなった頃、海はまだ、人々にとって魅力と恵みに溢れていた。

―――しかしいつしか、海は脅威と恐怖の溢れる場所として、誰からも近寄られなくなっていった。

―――それでもロマンとスリルを求めてか、はたまた愛国心か、或いは正義感からか、様々な動機で、海へ漕ぎ出す者は大勢いた。

―――しかし、待ち受けていたのは、冷厳たる現実に他ならなかった・・・。

 

 直人は彼が初めて見た時の、喧騒と笑顔に溢れた海の姿を知っている。またその沖合で毎日漁に繰り出す小さな船達の事を知っている。

彼がこうしてこの場にいるのは、まだ幼い純粋な心に、あの光景をもう一度取り戻したいと、そう思ったからなのだろうか・・・。

 

 

3月1日土曜午前8時37分、サイパン飛行場の一角には、慌ただしく発進準備の進むサーブ340B改の姿があった。

 

提督「これに乗るのも久々だな。」

 

タラップを横付けされているそれを見上げて言う直人。既に暖気運転は始まっており辺りにはエンジンの爆音が響く。

 

 

 

陽炎「休暇かぁ。」

 

雪風「休暇です!」

 

黒潮「でも急やなぁ。」

 

不知火「ですね。」

 

日向「まぁ、そうなるな。」

 

陽炎「でも霞は勿体ないわねぇ、わざわざ断ってまで訓練なんて。」

 

雪風「そうですねぇ~、でも、それも一つだと思います!」

 

日向「そうだな、なにも無理して休む事はない、それがしたいなら、それをしている時が一番気の休まる時間だ。」

 

 

 

神通「まぁ、たまにはいいかもしれませんけど・・・。」

 

提督「まぁ流石に、神通さんもたまには休んで下さいな。働きづめじゃいつか倒れますよ?」

 

神通「そうですね、お心遣い、本当に嬉しいです。」

 

 

 

熊野「本土の“今”、どうなっているのかしら。」

 

最上「楽しみだねぇ。」

 

鈴谷「ねー!」

 

古鷹「加古、向こうに着いたらどうする?」

 

加古「そうだねぇ~、取り敢えず散策かねぇ。」

 

 

 

村雨「新しい服とか、買っちゃおうかしら?」

 

五月雨「お給金、普段使わないので溜まってますし!」

 

実はお給金も艦娘には多少出ているのだ。が、艦娘の諸々の維持管理経費に含まれる=提督の財布から出るという事で直人達提督の首を絞める結果を生んでいたが。(結果として貰える量そのものは多いがほぼそう言った事に消えてしまうのが常であったが。)

 

夕立「それもいいけど、色んなもの食べたいっぽい!」

 

五月雨「それもいいですねぇ~・・・。」

 

村雨「食べ過ぎると太るわよ?」

 

夕立「き、気を付けるっぽい・・・。」

 

あの夕立も女の子であった。(←超失礼

 

 

 

提督「気楽なもんだねぇ・・・。」

 

神通「・・・提督は、そうではないのですか?」

 

提督「ん? あぁ、俺仕事なんで・・・。」

 

神通「そ、そうだったのですか?!」

 

あくまで直人は仕事である。

 

大淀「提督・・・。」

 

見送りに来ている大淀が心配そうな目で見る。

 

提督「大淀、心配性なのはいいが、もちっと気楽に構えときな、大丈夫さ。俺は幹部会の連中に、そう簡単にやられはせん。」

 

大淀「そう・・・ですよね――はい、そうします。」

 

大淀が心配しているのは、直人と大淀が一部の艦娘を巻き込んで仕掛けた計略の作用を心配しての事であったことは事実だ。それが分かった直人はそう言って大淀を落ち着かせようとするのだった。

 

 

提督「んじゃそろそろ、行こうか。」

 

日向「あぁ。」

 

神通「はい。」

 

直人に続き、今回選ばれた艦娘達14人が次々に乗り込む。

 

大体の艦娘は訓練や実戦での実績や頑張りを評価されたものであったが、神通に関しては直人に無理矢理説き伏せられて休暇を取り、雪風は霞が辞退した空き枠に充当されていた。

 

まぁ雪風は前回の作戦で、夕立と揃って勲功第一の殊勲を賜った艦であったが。

 

川内(いよいよ、巨悪の総本山へ殴り込みかぁ、どうなりますか。)

 

そして今回護衛役として、川内が随行する事になった―――。

 

 

 

8時43分、サーブ340B改はサイパンを離陸し、途中まで戦闘機の護衛を受けつつ一路厚木へと向かった。

 

 

 

~横浜・某所~

 

嶋田「今日、紀伊直人が本土に戻って来るそうです。」

 

牟田口「それについては私も知っている。しかし護衛はいないそうじゃないか。」

 

嶋田「はい、休暇を取る艦娘共以外は。」

 

来栖「では、この機会が最大のチャンスかもしれん。一挙に始末してしまいましょう。」

 

牟田口「いや、待て。奴は2日の間滞在すると言う、今は様子を見よう。護衛が本当にいないのか、それを見極めてからでも可笑しくあるまい。」

 

嶋田「はっ。」

 

来栖「分かりました。」

 

 

 

16時19分、紀伊直人率いる横鎮近衛艦隊の一行は、厚木へと降り立った。

 

例の如く機体はそそくさと格納庫へと秘匿され、直人達は迎えの車で横須賀鎮守府へと向かった。

 

 

 

16時38分 国道16号・横浜市旭区付近

 

 

提督「わざわざ出迎えてくれなくても・・・。」

 

大迫「なんの、久々に親友が戻って来るっていうんだ、出迎えなくてどうする。」

 

直人らの乗る先頭車のドライバーは、直人の親友でもある大迫尚弥一等海佐であった。SN作戦以来直人ら近衛艦隊の補給を担当していたのだが、この日は土方海将の代役として出迎えに来たのだった。

 

 

提督「そう言われると、確かにその気持ちは分かりますね。」

 

すると川内がこんな事を口に出した。

 

川内「へぇ~、提督本土に友達いたんだ。」(超失礼テイク2)

 

提督「―――おい。」

 

大迫「こらこら、提督に失礼だろう。」

 

二人してそれぞれに反応を返す。

 

川内「だって意外だったんだもん。」

 

提督「だもんて・・・。」

 

日向「まぁ、そうなるな。」

 

提督「日向もか・・・。」

 

話していないとはいえそう言われてしまうのは些か傷付くのであった。

 

大迫「やれやれ、直人、お前のとこの艦娘は皆こうなのか?」

 

提督「皆、と言うより、特別規則も設けてないんで基本フレンドリーなだけですよ。」

 

と言う直人であった。軍規の無い軍隊の特殊性であっただろうが。

 

大迫「へぇ~、そうなのか。」

 

提督「まぁうちは“非正規兵”ですから、それなのに更に規則でがんじがらめなんて可哀想ですし、基本的な部分の規則はないんですよ。それでもいくつか決まりごとはありますけど。」

 

大迫「逆に言ってしまえばそれだけなんだな。」

 

提督「そうなりますねぇ。」

 

ただそれでも敬称で呼ばれる事が多いのだったが・・・。

 

大迫「―――あぁそうだったな、お前堅苦しいの苦手だったな!」

 

提督「それでもあなたと土方海将には頭が上がりませんよ。」

 

大迫「ははっ、そうか。」

 

川内&日向(この男、何者・・・?)

 

提督たる直人に頭を下げさせるだけの人物であるから、部下から見れば存在さえ知らなかったその友人の正体が気になるのは道理だったが、彼はこの時多くは語らなかったという。

 

 

17時47分、直人らは横鎮本庁へ到着、ここで直人と休暇の艦娘達は別れ、日向が直人に随行して本庁に赴いた。

 

 

 

17時53分 横鎮本庁1F・大会議場

 

 

横鎮本庁にあるこの大会議堂は、統合幕僚会議をやった大本営の会議場には劣るが、それでも数個艦隊の幕僚が一堂に会し、会議をする事が出来るだけの広さはある。

 

今ここに集ったのは、横鎮長官 土方 龍二海将、横鎮防備艦隊後方参謀 大迫 尚弥一等海佐、軍令部総長 山本(やまもと) 義隆(よしたか)海将他数名である。

 

無論直人と、金剛の代わりに副官として指名された日向もいる。

 

提督「海幕長、お久しぶりです。」

 

直人が敬礼をして言う。山本海将(※海幕長たる海将)も直人の第1任務戦隊に関わっていた軍人の一人である。

 

山本海将もおよそ軍人らしいとは言いにくい面構えをしている。ぱっと見だとどちらかと言えば肉屋の店頭にいるオヤジ、と言う印象を受ける。

 

山本「紀伊君も元気そうで何よりだ。まずは今回の作戦、ご苦労であった。」

 

提督「ありがとうございます。結果は思わしくありませんでしたが。」

 

山本「はっはっはっ、まぁ詳しい事は座って話そうではないか。」

 

と静かに笑って山本海将は言った。

 

山本「ところで、私の隣の者の事は知っているかな?」

 

提督「存じております、宇島(うじま) (はじめ)海将でいらっしゃいますね? 山本海幕長の片腕と名高い。」

 

宇島「まぁ、そう褒められるような実績を積んできた訳ではないがね。君が紀伊 直人君か、宇島だ。宜しく。」

 

握手を求められ直人は応じる。

 

提督「宜しくお願い致します。確か今は、軍令部の総参謀長でしたね。」

 

宇島「そうだ、君にはぜひ会ってみたいと思っていた、こうして会えて嬉しいよ。」

 

宇島海将は目つきは中々鋭いが、面長で頬が痩せているのが色濃く印象に残る人物であった。そのせいなのか表情に乏しいようだった。

 

この二人は面識が無かったのだが、何せこの人物も中々の有名人な為直人はそれなりに知っていた。

 

提督「尾野山一佐と黒島一佐も、お久しぶりです。」

 

黒島「久しぶりだな。」

 

尾野山「あぁ、“曙”の一件以来だね。」

 

尾野山(おのやま) 信幸(のぶゆき)一等海佐は、軍令部第3部長として、SN作戦後に就任した人物である。曙、と言うのは、直人がかつて関わった計画の名前である。

 

ある計画――曙計画では作戦前の敵の動静を調査し、直人が動くに当たり貴重な情報を齎した情報戦のスペシャリストである。直人とも面識があり、丸顔にべっ甲柄の角眼鏡が印象深い。

 

一方黒島(くろしま) 高市(たかいち)一等海佐は、賀美二佐の後任として作戦参謀となった人物で、正確な戦力分析と作戦立案に定評のある人物で、丸めた頭に三角に近い様な特徴的な瞼の開き方、への字に曲がった口元が特徴でこちらも丸顔。

 

直人は海自内に結構知り合いが多いのだ。それも立場柄上層部に。

 

 

 

提督「では早速ご報告させて頂きます。」

 

全員が着席してから、直人はそう切り出した。

 

土方「うん、失敗したそうだが?」

 

提督「残念ながら、お手元にご用意した資料を見て頂ければ、おおよその事情が分かる筈です。参加した艦娘からの報告を統括したレポートです―――」

 

そこから直人は掻い摘んで説明した。だがそれについては前述した通りなのでここでは省略する。

 

土方「ふむ、致し方ない状況とはいえしかし、作戦は失敗と言わざるを得んな。」

 

提督「その点については小官も同意見です。誠に申し訳なく思うと共に、小官の不徳を恥ずる所です。」

 

直人は自らの非を認めていない訳ではない。しかし今回は釈明をする為に来た訳ではない。

 

提督「しかし私としましては、再度今回の作戦について、再検討を加えた上でもう一度行う機会をお与え頂きたく、今日は参りました。」

 

と直人は言った。

 

山本「ほう、聞こうか。」

 

と山本海将は言った。

 

 

提督「まず元の作戦案ではスンダ海峡を越える事になっています。しかしこれでは余りに大回りに過ぎ、駆逐艦では航続力のギリギリです。」

 

タウイタウイ泊地を経由するとは言っても、スンダ海峡を越えてインド洋経由でアンダマン諸島へ突入するのでは、足の短い駆逐艦はそもそも使えないという点を直人は指摘した。

 

第二次大戦中にしても、駆逐艦はその大きさの都合上重油搭載量は少ないのに大出力のボイラーを搭載する為燃費がそれなりに悪く、従って足も短いと言う難点を抱えていた。洋上補給にしろ限度もある。

 

艦娘になろうが、それは同じ事である。

 

提督「我が艦隊では先日、艦娘運用の母艦として重巡鈴谷を完成させた事は先日ご報告した通りです。しかしそれにした所で、ルートは短い方が良い。攻撃を受けるリスクは減らすに越した事は無いのですから。」

 

これに黒嶋一佐が反論する。

 

黒嶋「それは私も考えた。しかしアンダマン海方面は敵の防御正面であり、少数の艦隊で撃砕するにはリスクが大きいと思うが。」

 

東からアンダマン海方面に向かうには二つのルートがある。スンダ海峡からインド洋へ出て北上するルートと、マラッカ海峡から西進するルートだ。

 

距離的に見て近いのは後者である。しかしマラッカ海峡ルートでは敵本防御線に正面から突入する事になる。

 

提督「アンダマン海についてですが、先日リンガ泊地の艦隊が制海権を奪取しております。従って敵の防御力が最も発揮されるのは、アンダマン・ニコバル両諸島の周辺に限定されると考えてよいでしょう。」

 

 

これに対し、総参謀長 宇島海将が意見を述べる。

 

宇島「目下セイロン島方面は敵の棲地となっており、そこには有力かつ大規模な敵が在泊している事が判明している。これが東進して作戦中の部隊を攻撃する事態は想定しているのか?」

 

提督「無論です、しかし勝ち目はないでしょう。よって我が艦隊は可及的且つ速やかにアンダマン諸島に展開する必要があります。これを達する為重巡鈴谷に加え、稼働可能の全艦艇を動員し、且つ急襲によって一挙に制圧するつもりです。」

 

これを将棋で例えれば急戦中飛車戦法であろう。即ち五筋に上下左右に無限に動く事が出来る飛車を構え、相手の玉に対して強襲を仕掛ける戦法だ。

 

尾野山「しかし、人目に付くのではないか? マラッカ海峡沿岸には少なからず居住区域もあることだし。」

 

尾野山一佐がこう述べたが、直人はこう切り返した。

 

提督「それに関しては情報と諜報を担う軍令部第三部の力量が試されるのでは?」

 

尾野山「・・・情報統制か、已むを得まいな。」

 

人目に付くのでは? と今更心配するには既に遅すぎる節が無い訳ではない。実際艦娘艦隊は避けて通っているが、一般の住民に対しては普通の艦娘艦隊を気取る艦隊だ。その特殊性を考えると、水面下で噂になっていると考えられなくはないのである。

 

提督「すみません、この様な言い草で大変恐縮ではありますが、尾野山一佐にはまたお手数をお掛けする事になりますが、お願いします。」

 

と直人は頭を下げた。

 

尾野山「分かった。そもそも近衛艦隊の活動を秘匿する事も仕事の内だ、任せて貰おう。」

 

提督「助かります。」

 

土方「しかし、マラッカ海峡を通るとなると、リンガ泊地がかなり近い場所を通る事になるが、それについてはどうかね?」

 

と土方海将が言う。

 

提督「その件に関してですが、北村海将補にお会いして、協力を仰ぎたいと考えております。」

 

土方「・・・ほう?」

 

提督「我が艦隊だけが先走ることは望ましくはないでしょう。それに、制圧後の維持については、その戦域を担当する司令部が行う事になっている事もあります。手前勝手に動く訳にもいかないでしょう。」

 

土方「一理あるな、お前らしい。」

 

と土方海将は言った。山本海将と大迫一佐も同意するように頷いた。

 

宇島「北村海将補と言えば、今定例報告のため横浜へ来ておりますが。」

 

山本「おぉ、そうだったか。紀伊君、何なら北村海将補と話しておくか? そう言う事なら私から言付けておく。」

 

提督「ありがとうございます、そうして頂けると助かります。」

 

山本「なに、サイパンからリンガまではまた遠いだろうからね。それにまたとない機会なのだし、会って行くといい。」

 

提督「感謝します。」

 

直人は、山本海将の好意を素直に受け取って置く事にしたのであった。

 

 

 

「確かに、情報通り護衛は付いていないようだ――あぁ、副官と思われる艦娘が一人。」

 

その直人を、遠距離からストーキングする黒い影が二つあった。

 

独立監査隊の実働部隊でも、情報収集を担当する部署の構成員である。

 

「―――分かった、監視を続ける。」

 

 

 

提督(―――馬鹿め、反射抑制用の塗料くらい、レンズに塗って置かんか。)

 

彼らの動きは既にバレていた。直人は目ざとく、反射対策もしていない間抜けな諜報員の双眼鏡が、反射した光を目ざとく見ていたのである。

 

提督「では明日午前、北村海将補の宿泊先に伺います。」

 

山本「分かった、伝えておこう。」

 

そうして直人は彼らと別れ、宿舎に戻るのだった。

 

その日の夜―――

 

 

 

 

 

3月1日23時10分 横鎮防備艦隊宿舎付近

 

 

ガサッ、ガサッ・・・

 

 

闇夜に溶け込み、宿舎に忍び寄る複数の人影。全員が武装している。

 

川内「・・・。」

 

その光景を屋根上から見る川内。手には直人から借り受けた、サプレッサーを装着したHK416が握られていた。

 

川内(悪く思わないでよ、これも提督の為―――)カチャッ

 

山型屋根に伏し隠れて銃を構える。

 

 

 

「あの部屋だな?」ヒソッ

 

「あぁ。」ヒソッ

 

 

パシュッパシュパシュッ

 

 

「うっ!」

 

「ぐあっ!」

 

 

ドサドサドサッ

 

 

「狙撃かッ! 散れっ!」

 

リーダー格と思しき黒覆面の男が指示を出す。しかし、艦娘であり戦闘の専門家でもある川内から、散開程度で逃れられるほど甘くはない。

 

川内「―――っ。」バシュッバシュッバシュッ

 

川内が引き金を引けば必ず一人が倒れる。精密な射撃が、確実に、しかも殆ど悲鳴も上げさせずに暗殺者達の息の根を止めていく。

 

「馬鹿な・・・情報が違うぞ、こんな馬鹿な話があるか!」

 

暗闘のスペシャリストであった川内を護衛に随行した、直人の人を見る目は確かであった。5分経たぬ内に、念に念を押し50人以上を送り込んだ暗殺部隊は全滅した。

 

 

 

牟田口「なんだと―――!?」

 

来栖「バカな、50人以上送り込んだのだぞ!」

 

幹部会の面々は驚いた。

 

嶋田「間違いないのか?」

 

森田「は、はい。全員の反応が、ロストしています・・・。」

 

牟田口「まさか・・・護衛がいたか―――。」

 

彼らはきちんと、彼が熟睡した事さえも掴んでいたのだ。しかし送り込んだ暗殺部隊は全滅した。そこから導かれる結論はそれしかなかったと言っていい。

 

嶋田「何たる事だ、欺かれていたのか・・・。」

 

気付きはした、しかし後の祭りであった。

 

牟田口「よくもコケにしてくれたな・・・許さんぞ。」

 

牟田口はプライドをいたく傷つけられていた。正面からやり合う事は望むところだ。しかしこうも容易く欺かれたのだ、無理もないだろう。

 

牟田口は紀伊直人を必ず消してやると、心に誓った。

 

戸籍上は兎も角としても、社会的には消されている直人であるが、それでも生ある限り一人の人間である以上は、である。

 

 

 

提督「ん・・・」

 

寝ていた直人はサプレッサーの付いた銃の銃声で目を覚ます。サプレッサーは射撃音を消すとは言っても、意外と作動音など音はするのだ。

 

少しして銃声は止む。

 

 

スタッ。

 

 

提督「・・・川内か。」

 

川内「えぇ。」

 

川内がベランダに姿を現す。日向はよく眠っているようだ。

 

提督「やはり消しに来たか。」

 

川内「50人以上、全員殺しました。」

 

普段の川内からは想像出来ない冷淡な声で川内は言った。

 

提督「・・・そうか。」

 

直人はそれだけ言って、再び床に就いた。

 

川内「フフッ。お疲れ様。」

 

川内はいつもの様子に戻り、ベランダから姿を消したのだった。

 

 

 

3月2日8時41分 横浜市街・大本営仮泊舎106号室

 

 

ピーンポー・・・ン

 

 

「どなたかな?」

 

インターホンから返って来る如何にも好々爺と言う温和な老人の声。

 

提督「石川です。」

 

と告げると声の主は言った。

 

「おぉ、来ると聞いとったよ、開いているから上がりなさい。」

 

提督「はい。」

 

直人は玄関の扉を開け、中に入る。

 

室内は至って簡素な造りの部屋で、間取りも1LDKだが必要な物は全て揃っている。

 

提督「お邪魔します、北村提督。」

 

北村「ほっほっほ、そう畏まらんでいい、まぁ、掛けてくれ。」

 

その日の部屋の主である北村海将補は、椅子に腰かけて直人が来るのを待っていたようだった。

 

 

北村「それにしても、こうして話をするのは何年ぶりかな?」

 

提督「そうですね、二人きりで話をするのは、5年ぶりだと思います。」

 

北村「そうか、あれからもう5年になるか。年を取ると日が経つのも早いもんじゃ。」

 

提督「何を仰いますか。提督は幾つになってもご壮健であられる。今でもリンガ泊地の司令官職にあって、その巧みな手腕を発揮しているじゃありませんか。」

 

北村「ふふふ、そうじゃな。じゃがな紀伊君、それは我が海上自衛軍の人材が、枯渇寸前である事もまた指し示しておる。現に儂はとっくに引退しても可笑しくない歳じゃが、お偉いさん方が中々ウンと言うてくれんでな。」

 

北村海将補は海上自衛軍最年長の提督として知られる人物だ。そのキャリアは周辺国との、今では最早馬鹿馬鹿しいとまで言われる領海争いをしていた頃から培われてきた経験に依って立つ。

 

その老練な手腕は内外問わず評価されており、一時は『アドミラル・トーゴーの再来』とさえ謳われた名将である。

 

この年の1月に70歳になったが、まだまだ現役である。最も北村海将補も言う通り、且つ誤解を恐れずに言えば、“挿げ替える首も無いのにあたら有能な人材を失う事は出来ない”と言う軍上層部の意向があった事は否定出来ないが。

 

提督「確かに、有能な人材程、今まで煙たがられてきましたからね。」

 

北村「それが日本式社会の弊害じゃ。異端を排除し自らの保身を図らんとする輩が日本には多過ぎる。」

 

提督「全くそうです。それが為に今の日本は人材の発掘さえ難しい状態にある。」

 

例え日本の地中深くに希少な資源が眠っていた所で、見つけられなければただの石ころ同然である、直人が言いたいのはその事であった。

 

提督「ところで北村提督、本日お伺いしたのは、ただこうしてお話をする為ではないのです。山本海将から既にお話のあった事と思いますが。」

 

北村「そうじゃな。山本海将を通じて話は聞いとるよ、とんだ災難だったそうじゃな。」

 

提督「はい、提督にもご協力頂いたにも拘らず、とんだアクシデントでした。」

 

北村「それで再度の作戦決行を願い出たそうだが、この老人に頼みがあると聞いてな。わしに出来る事なら協力しよう。」

 

その言葉に、直人は本当に頭の下がる思いであった。

 

提督「その言葉に甘えていくつかお願いがあります。一つは、アンダマン諸島を制圧するに際し、同島の維持に関してリンガ泊地の戦力を抽出し、警備隊を組織して派遣して頂けないかと思うのです。」

 

これは山本海将に語っていた事そのままの内容だ。

 

北村「成程な、そういう事なら、こちらでもなんとかしてみるとしよう。で、他には?」

 

提督「はい、ペナンに、通信隊を派遣されたそうですが、補給地として、ペナンをお貸し頂けないかと思うのです。」

 

北村「補給地・・・?」

 

その用途に北村海将補は首を傾げた。

 

提督「我が艦隊は艦娘運用の為の母船として、重巡鈴谷を竣工させました。この船の装備する機関は、艦娘機関の基幹設計をそのままに大型化したものと言って差し支えの無いものなのですが、それでもサイパンからアンダマン海へ直行となると航続力が足りません。」

 

北村「成程、それで補給用の場所が必要だが、人目に付かない方が良い、と言う事じゃな?」

 

提督「ご明察、恐れ入ります。」

 

直人は素直に頭を下げた。

 

北村「分かった、それに関しても防備艦隊の方に言付けて手を打って貰う。」

 

提督「ありがとうございます。」

 

北村「それで、何時頃決行の予定なのかの?」

 

提督「それをここで申し上げると機密上の問題もありましょう、ですので決行直前になりましたらこちらから函数暗号でご連絡するという事で構いませんか?」

 

北村「承知した、ではこちらでも準備を進めておくとしよう。」

 

提督「御協力感謝致します。」

 

直人がそう謝意を表すると

 

北村「なに、貴官とは五年前からの仲ではないか、必要とあらば頼ってくれ。」

 

と北村海将補は言うのだった。

 

 

 

直人が仕事をしている一方で艦娘達はと言いますれば・・・

 

 

 

3月2日9時56分 横須賀市街・ショッピングモール

 

 

村雨「この服いいわねぇ~。」

 

夕立「おぉっ、似合ってるっぽい!」

 

五月雨「村雨姉さんはセンスいいんですね~!」

 

若干褒め言葉になっていない言葉をサラッという五月雨である。村雨の表情が一瞬引き攣ったのは言うまでもない。

 

 

 

陽炎「へぇ~、基本的に何でもあるのね~。」

 

不知火「そうですね――はむっ。」

 

不知火は1階のフードコートでイチゴのクレープを買ったようだ。

 

黒潮「それにしてもおっきいなぁ、そこいらの工場より大きいんとちゃう?」

 

そういう黒潮は手にたこ焼きの器を持っている。2個食べて6個残っていたが。

 

雪風「凄いです、食べ物も服も何でも、戦争中なのに結構安く売ってます。これが今の日本なんですねぇ。」

 

雪風の言は色々な意味で正しかった。商売人の逞しさを垣間見るエピソードとしてここに記しておくが、物流が交通網の復旧中で思うに任せない今日、物価はかつて高騰したまま下がろうとしないのが現状であった。

 

しかしそれでもショッピングモールなどではできる限りの商売をしようと、この様な情勢下でもより良いものを出来るだけ安く提供しているのだ。物資が窮乏しているにも拘らず、である。

 

 

 

加古「お、この本は良さそう・・・」

 

一人で書店で本を物色する加古。

 

古鷹「―――加古?」

 

その加古をようやく見つける古鷹。

 

加古「お、古鷹。」

 

 

古鷹「詩集なんて買ってどうするの? 加古、いつもごろごろしてるじゃない。」

 

加古「馬鹿だなぁ、寝る為の本だよ。」

 

古鷹「あっ・・・」( ̄∇ ̄ )

 

趣味とは関係無い事を悟る古鷹であった。

 

加古「これ頂戴。」

 

店員「1080円になります。」

 

加古「ほいほいっと・・・」

 

 

 

筑摩「あの戦争からもう100年以上になりますけど、日本はこんなに進歩していたんですね・・・。」

 

鈴谷「そうだね~、こんな事なら熊野や最上もつれて来たかったけどねぇ。」

 

利根「無理強いは出来んじゃろ、吾輩達だけでも楽しまねば。」

 

利根がこう言う裏には、あくまでこの休暇メンバーの選出は、直人の厚意に基づく向きが強かったことが際立って理由として立っている。

 

第一休暇とは言ってもその為だけに司令部の主力艦隊を見掛け倒しにする訳に行かない事も事実だった。

 

鈴谷「そうだねぇ~、それじゃ、たっぷりお土産買って帰らなきゃ♪」

 

利根「そうじゃな、そうするとしようか!」

 

第八戦隊の面々も、この休暇をのびのびと楽しんでいるようだった。

 

 

 

一方で、12隻の休暇組を他所に『それどころではない』とばかりに職務で走り回る直人は、3月2日のお昼過ぎ、横鎮本庁の食堂で大迫一佐と話をしていた。

 

提督「北村海将補も相変わらずお元気そうでしたよ。」

 

大迫「そうか、それは何よりだが、あの人も本来、もう既に隠棲している歳だからな・・・。」

 

直人の持ち出した北村海将補の話題で話をする二人。

 

今更であるが、“北村”と書いて“きむら”と読む。

 

提督「えぇ、しかし戦争の真っ最中ですからね、有能な人材は手元に置いておきたいのでしょうね。」

 

大迫「今まで散々有望な人材をぞんざいに扱っておいて、今更気のいい事だと思わないではないがね。」

 

提督「新進気鋭の若手士官達の可能性を潰してどうして軍隊が成り立つのか・・・。」

 

自衛軍は今、下級士官が、人材の数と能力の両面から不足していると言う大問題を抱えているのだ。その根源が、指導層の傲慢と保身故である事は一部の軍人などには分かっていたのである。

 

大迫「それは兎も角としても、必要なものがあったら、いつでも言ってくれよ。何もお前一人だけで戦ってる訳じゃないんだからな。」

 

提督「ありがとうございます、自分の方でも少し考えてみます。」

 

と直人は謝した。

 

提督「しかしいつ見ても、横須賀と横浜は昔と変わらぬ賑やかさですね。」

 

大迫「まぁな、横須賀には軍港があるし、横浜は官庁の一部がある、自然の帰結として物資や人が集まる分、已む無い事だな。」

 

提督「そうですね、今頃あいつらも市街地ではしゃぎ回ってるでしょう。」

 

と直人は休暇中の艦娘達に思いを巡らせる。

 

日向「提督――」

 

提督「どうした日向?」

 

日向「あそこに座っているのはまさか・・・」

 

そう言って指を差したのは直人達のいる食堂隅の反対側の隅の席。

 

提督「あれは―――!」

 

大迫「あぁ、って落ちつけ、敵ならこんなところにいるものか。」

 

ホルスターから銃を抜こうとした直人を静かに、しかしピシャリと制止する大迫一佐。

 

そこに座っていた人物は二人。どちらも深海棲艦と会いまみえた者には馴染の深いモノクロの外見であり、双方共に白髪である―――と言うより、モノクロの外見と言う時点で直人が敵と思ったのも無理からぬことだっただろう、彼も前線に立つ者の一人であるのだから尚更である。

 

提督「大迫さん、あれは一体・・・。」

 

大迫「あぁ、内地では控えめながら報道されてたんだが、深海から“亡命”してくる深海棲艦が、ほんの少しだがいない訳じゃないんだ。」

 

提督「亡命、ですか・・・?」

 

それを聞いた直人と日向は当惑気な顔をした。それもそうであろう、これまで深海棲艦は個々の意識に疎い所があると考えられてきた、いや信じ込まれていたからである。

 

大迫「彼らの話によれば、深海棲艦にも派閥があるそうで、その派閥抗争に敗れた深海棲艦が、僅かな手勢と共に亡命してくる事が、これまでで2件だけあったんだよ。」

 

提督「派閥抗争・・・。」

 

直人はこの時初めて、深海棲艦も結局は人と殆ど変わらない事を認識したのである。

 

大迫「ただ上では扱いかねてるようで、一応は横鎮預かりと言う体裁をとっているが、処置がまだ未定なんだそうだ。」

 

提督「そう言う事か・・・。」

 

つまりこうだ。国と国との戦争であれば、敵国出身者ないし敵国人の血筋にある者を自国の兵士にして、敵国民に「我々はこれだけ寛容な国家である」と言う事を見せつける事で自分達は勿論相手に対する宣伝材料にする事が出来る。

 

しかしながら、深海棲艦は国ではない。ただ単に「裏切り者とそれに加担する賊共を討つべし」となるだけである。つまり軍事利用はするだけ無駄、しかし放逐して自分で養わせた所で出来る筈も無ければ敵愾心を抱く国民に袋叩きに遭うだけだ。

 

なので大本営では民主国家の建前上からも、ましてこれ以上敵を増やしたくも無いと言う考えからも、手元に置く以外どうしようもないと言うのがこの時の状況だった。

 

日向「あの深海棲艦二人の艦名と所属は明らかになっているのです?」

 

大迫「ん? あぁ、こちらから見て右に座ってるのが“アルティメイトストーム”、元は深海中部太平洋方面軍隷下にいて、強襲揚陸部隊を指揮していた超兵器級のオリジナルだ。その隣りがタ級Flagship“アラスカ”、アルティメイトストームの副官だったそうで、こちらもオリジナルらしい。」

 

それを聞いて仰天するのは直人の方である。

 

提督「オリジナルの個体なんですか!?」

 

大迫「あ、あぁ。」

 

提督「てっきりクローンだと思ってましたが・・・そうか、“派閥争い”と言うのは生半可ではないと見える・・・。」

 

大迫「そう、なのか?」

 

と大迫に問われた直人はこう答えた。

 

提督「えぇ、私の知る限り、オリジナルの超兵器が出てきた例と言えば、例の横須賀防衛戦くらいで、それ以外我々が接敵した超兵器は全てクローンです。つまりオリジナルの超兵器は、地位的にかなり高位にいると言う事になる。」

 

大迫「成程・・・。」

 

提督「・・・。」

 

大迫・日向「・・・?」

 

直人が急に考え込んだので二人は何だろうと思った。

 

 

 

アルティ「・・・。」

 

その3人の会話を見て黙りこくっているのは当のアルティメイトストームだった。

 

アラスカ「また私達の話でしょうか・・・“アルティ”様。」

 

流暢な発音で話すのはアラスカだ。超兵器アルティメイトストームは、名前が長く愛称としてアルティと言う名前で親しまれていた。

 

アルティ「えぇ、しかし一人は何度か見たことあるけど、もう一人は見かけない顔ね。」

 

この発言は直人を見ての事だ。

 

アラスカ「そう言われてみれば、確かにそうですね。新任の士官でしょうか・・・。」

 

アルティ「いずれにしても、余り関わりはないわね。」

 

アラスカ「そ、そうですね・・・。」

 

 

 

提督(・・・そうだな、この際―――)

 

大迫「・・・直人?」

 

提督「―――大迫さん。」

 

大迫「お、おう?」

 

唐突に声を出した直人に大迫は当惑しながら応じる。

 

提督「さっきの物資補給の件ですがね。」

 

大迫「うん。」

 

提督「霊力偽装曳航ブイを80、曳航用フックの部品を4組―――」

 

大迫「ふむふむ。」

 

大迫一佐はさっとシャーペンとメモ帳を取り出して、直人の言った内容をメモしていく。

 

提督「それと―――」

 

大迫「―――?」

 

直人が一拍置いて続ける。

 

―――あの二人を亡命してきたグループごと―――と。

 

 

 

3月3日午前10時28分、直人のサーブ340B改は厚木基地を離陸し、サイパン島へと戻る。それから程無くして、直人は次段作戦の実施準備完了を確認し、作戦発動準備体制に移る。

 

直人ら横鎮近衛艦隊の手に移された、アンダマン諸島攻略作戦再実施の時は、刻々と迫りつつあった。そしてそれはまた、新たな時代の先駆とも言うべき事態への、ほんの踏板に過ぎなかったのである。




艦娘ファイルNo.91

特Ⅲ型(暁型)駆逐艦 暁

装備1:12.7cm連装砲
装備2:61cm3連装魚雷

第6駆逐隊が待望した旗艦で、特Ⅲ型のネームシップ。
本来ならばこのクラスは10隻以上を建造する筈であったが、軍縮により4隻止まりに終わった経緯がある。
直人を加えた特別演習では天龍龍田に軽くシメられてしまったが―――?


艦娘ファイルNo.92

妙高型重巡洋艦 那智

装備:20.3cm連装砲

妙高型の2番艦、特異点も無い。
姉妹の中では観察能力に優れるタイプで、熊野への銃撃を唯一目視した艦娘でもあり、その行動と光景に驚く一コマもあった。

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