異聞 艦隊これくしょん~艦これ~ 横鎮近衛艦隊奮戦録   作:フリードリヒ提督

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2017年、謹賀新年を申し上げます。天の声です。

青葉「もう1月19日ですよ、遅過ぎませんか。どうも恐縮です、青葉です! 今年も宜しくお願いします!」

なんだかんだ言うんじゃないか。

青葉「まぁ一応は・・・ねぇ?」

まぁそうだね。


この章が今年最初の新章となります。ようやく移植作業も終わりましたので、ここから更新ペースはゆっくりになると思います。基本的には最初に章を立ち上げ1000文字程度執筆、そこから継ぎ足していって長いスパンで1つのお話を纏め上げるという方式を採ります。なので表面上は更新されていない様に見えても、文字数はじわじわ増えていきます。

青葉「エブリスタ以来の方式を踏襲する訳ですね?」

そう言う事。エブリスタはページ区切りだったので更新状況も分かりやすかったのですけど、まぁシステムの違いですし止むを得ないでしょう。

エブリスタからの方、またお世話になります。何卒これまでと変わらぬご愛顧の程宜しくお願い致します。

こちら側の方々、初めまして。非才の身ながら今後も書いていきますので、どうかよろしくお願いいたします。


さて今回は海軍陸戦隊の紹介をしようと思ったのですが、それまですると長くなってしまいますので、このまま本編という事で解説コーナーはなしです!

青葉「無しにするんですか!?」

いや、書いたんだけど強制タブ再展開で消えてしまった・・・。(ブラウザ:IE)

青葉「も、モチベの問題ですね分かります・・・。」

まぁそろそろ始めて・・・そう言えば今日のゲストどうした?

青葉「そう言えばまだ来てな―――」

加古「ごめんごめん! 寝坊したぁ!」←ゲスト

遅いよもう始めちゃうよ! という事で今回ゲストの筈だった横鎮近衛艦隊所属、加古さんにタイトルコールお願いしよう。

加古「うえぇ? あぁ、うん。第2部11章、スタート!」


第2部11章~歴史の岐路~

2053年3月26日15時17分、サイパン西方沖に到達し、帰着まで1時間強という地点にいた鈴谷艦内で艦内放送が流される。

 

 

~鈴谷・羅針艦橋~

 

提督「業務連絡業務連絡、総員そのまま聞いてどうぞ。」

 

明石(・・・。)( ̄∇ ̄;)

 

その気楽さに思わず言葉を失う明石。

 

提督「あと1時間半弱で帰港するけども、一つ注意事項がある。今司令部には“客人”が一組来ている訳なんだが、そのお客人を見ても決して驚かない様に。まぁ、慣れてるだろうから蛇足かもしれないけど。以上!」

 

すると放送を終えた直人に明石が思わず聞いた。

 

明石「あの・・・その客人って、一体何者なんです?」

 

提督「んー? お前が日頃から付き合っているのと同族さ。」

 

明石「んー・・・んんん??」

 

余計に疑問が増える結果になったのであった。尤も、これはわざわざそう言う風に伝えているだけであったが―――。

 

提督「ま、着けばわかるさ。」

 

明石「は、はぁ・・・。」

 

誰なんだろう・・・と半ば本気で思う明石を横目に、直人は艦の操艦を続けるのであった。

 

 

 

16時37分、重巡鈴谷が司令部前の岸壁に接岸、タラップが降ろされた。

 

提督「ふぅ、2週間ぶりのサイパンだ、南方は暑くて敵わん。」

 

明石「暑いのはダメなんですか?」

 

提督「いや、寒いのがダメ、すぐしもやけが出来る。」

 

明石「あぁ、そう言う意味でダメなんですか・・・。」

 

提督「だから暑い方がいいかなぁ、雪は好きだけど。」

 

明石(結局どっちなんですか・・・。)

 

そんな会話をしながら一番にタラップを降りていく直人達を下で出迎える者があった。

 

 

大淀「提督、御無事の御帰還、何よりです。」ザッ

 

局長「相当派手ニヤッタヨウダナ、アトデ点検シテオコウ。」

 

提督「出迎えご苦労。」

 

下で出迎えたのは大淀と局長であった。

 

提督「そちらが“お客人”だな?」

 

大淀「そうです。」

 

そう言う大淀達の左横に、ここでは見慣れない人物が二人いた。

 

明石「―――この人達っ・・・。」

 

アルティ「横鎮預かりからこちらに転属になった、元深海中部太平洋方面艦隊所属、アルティメイトストームだ。」

 

アラスカ「その副官、アラスカです。」

 

アラスカはタ級Flagshipである事は既に2部9章で述べた。だがその時とは違い服の襟首に星二つの襟章が付けられていた。

 

アルティメイトストーム――アルティ――の容姿はWWⅡ期アメリカ海軍士官コート調の服装で、下はサーキュラースカートにヒールブーツという出で立ちである。風貌はタ級に近いが顔の肉がもう少し厚く、瞳もサファイアである点が異なる。因みに背丈は直人(172cm)より少し低い程度だ。

 

※参考までに

金剛169.6cm

榛名170.1cm

比叡169.7cm

霧島170.1cm

明石159.2cm

大淀165.1cm

 

 

提督「横鎮近衛第四艦隊司令官、紀伊直人だ。今回の件、手数をかけたが、許して貰いたい。」

 

アルティ「構わない、少なくともあの空気の中にいるよりはましだよ。」

 

明石「て、提督―――」

 

提督「騒ぐな、艦内でも言っただろう。」

 

局長「ソウダソウダ、ソレニ今更過ギルダロウニ。」

 

直人と局長が口を揃えて明石に言う。

 

アルティ「そう言う事らしいな、ワールウィンドとモンタナが生きていると知った時は、些か驚いたが。」

 

提督「あぁ、モンタナはよくこの艦隊を支えてくれている。感謝に堪えない。」

 

局長「ソノ言葉ダケデ十分ダヨ。」

 

ワール「ま、自分の悪運の強さには感心するけどね。」

 

アルティ「違いない。ところで、私達をここに呼んだ理由を、聞かせて貰いたい。まさか同族同士で殺し合え、と言う訳じゃないでしょうね?」

 

そう聞くと直人はかぶりを振った。

 

提督「とんでもない。俺が頼みたいのは、今回連れてきた捕虜の統制だ。」

 

アラスカ「捕虜・・・?」

 

提督「そうだ。」

 

捕虜というのは言うまでもない、アンダマン諸島で降伏した240隻余りに上る深海棲艦達の事だ。

 

アルティ「―――成程ね、中々面白い、それでいて見所のある司令官の様ね、あなたは。」

 

提督「―――お褒めに与り、光栄の至り。」

 

そう言う直人は心中で言葉の意味を測りかねていた。

 

アルティ「分かったわ、引き受けてあげる。いつまでも深海の捕虜たちが孤児では可哀想だし。」

 

提督「そう言って貰えてよかった。」

 

アルティ「でも流石にその収容所をここに作る訳にはいかないでしょう? どうするつもりだ?」

 

と、問いかけるアルティ。というのは、サイパンは完全な要塞化が済んでおり、一寸たりも動かしがたい状態にあったのだ。

 

提督「ひとまず隣のテニアン島にそう言った施設を設営しようと思う。無論収容所とは言うが、必要なものは用意する。粗雑なモノは作らせないという点に関しては、私が保証しよう。」

 

アルティ「成程、棲地化してはならない、という訳だな。」

 

提督「そうだ、されれば我々が困る。出来れば君達とだけでも、友禅の誼(よしみ)を通じていたいと願う。」

 

分かりやすく噛み砕いてしまえば、これ以上敵を増やしたくないから仲良くしたい、という所であった。

 

アルティ「えぇ、承知したわ。恐らく、あなた達では深海棲艦を統制するのは難しいだろうし。」

 

提督「―――感謝する。」

 

と、話がおおよそ纏まってきたところへ大淀がこんな事を言った。

 

大淀「提督、この様な事を言えばお怒りになるかも知れませんが、もし、アルティメイトストームさんが反旗を翻したら、どうなさるおつもりなのですか?」

 

アルティ「―――。」

 

アラスカ「・・・。」

 

その言にアルティとアラスカは目が険しくなる。そして返された返答は至極真っ当であった。

 

提督「その様な事は、無い。これでもアルティを信用してるんだよ?」

 

アルティ「・・・!」

 

大淀「ですが―――」

 

提督「だが、万が一、という事がある事も重々承知している。言われるまでも無い事だし、仮にも深海棲艦であるからその危惧は至極当然だろう。もし戦わば、その時は一戦仕るまでの事。」

 

大淀「そう、ですか・・・。」

 

提督「だけどさっきも言った通り俺はアルティを信用している、だからその様な事はない、そう信じる。」

 

―――深海棲艦にテニアン島を明け渡す―――この判断は言わば、一方的かもしれない直人の信用によって成された判断だったと言える。勿論大淀の言が何一つ間違った見識から出されたものでない事も事実である。

 

提督「だが当然ながら防備は引き続いて我々がその一切を取り仕切らせてもらう。そこは了承して頂きたい。我々はまだ、虜囚達の扱いを決定していない事もある、取り敢えずの間、捕虜となった深海棲艦の統率をお願いする。」

 

アルティ「―――心得た。」

 

アラスカ「アルティ様?」

 

アルティ「場合によっては、テニアン島は、我々一派の寄る辺となるやもしれんな、司令官殿。」

 

 

アルティメイトストームはこの申し出を受諾、コーンウォールから指揮権を引き継ぎ、テニアン島へと向かった。

 

 

大淀「―――提督。」

これでいいのか―――アルティ達を見送りつつもそう問おうとした大淀に、直人が先んじて答えを出す。

 

提督「これでいいんだ。我々は戦意の無い者まで無節操に殺すような、そんな慈悲の無い連中に成り下がってはならん。そうなれば、大局を誤る事にも繋がりかねんからな。」

 

大淀「・・・はい。」

 有史以来、ただ殺して戦争が終わるのならば、大量虐殺の悲劇は世界中で巻き起こっただろう。組織的かつ大胆で慈悲もなく殺戮が行われる事は避け得ない。しかしそれで戦争が終わる訳ではないし、それは新たな憎悪を巻き起こし、戦いが終わる事は決してない。

直人がそれを理解していればこそ、彼らは柔軟に動き得るのである。用兵に余裕が出来る、遊撃兵力たり得る、勝利を勝ち取り得る。そしてそれを欠いた時、彼らは負けるのである―――なぜなら彼らは、援軍など最初から望み得ない、陽、在らざる身の上なのだから・・・。

 

 

3月30日になると、彼ら横鎮近衛が捕虜を収容している事は横鎮中央―――土方海将と大迫一佐―――の知る所となっており、その報告と一緒に送られていた必要物資(生活用品等必要最低限の物資)の追加要請が受理され、既にサイパンに向けてそれを積んだ輸送船が横浜を発っていた。

 

 

3月30日10時27分

神奈川県横須賀・横鎮本庁/司令長官室

 

土方「捕虜、か・・・。」

 

大迫「手元に置きたいのは分かりますがね、直人も無茶な事をする・・・。」

 

司令長官室で、そのサイパン行き輸送船団を見送る二人。

 

土方「いざという時は自力で対処するとある。激発しても、問題はないと信じたいが・・・。」

 

 流石にこの二人と言えど、懸念材料の多いこの措置には危機感を抱いていた。

最悪の場合、直人がアルティに預けた捕虜を指揮下に置き、造反して直人らに対し一戦仕掛ける可能性さえあるのだ。超兵器級が、仮にも手勢を率いて自陣近くにいるという事は、当時の認識からしても、それだけ危険だったのである。

 まぁそれを言ってしまえば、ワールウィンドを客人として迎えている時点で手遅れでもあったのだが。

 

大迫「しかし相手は亡命したと言っても超兵器です。流石に無茶ではないでしょうか・・・。」

 

土方「あいつの事だ、何か策があればと思うが・・・。」

 

 

 

一方の横鎮近衛側―――

10時55分 サイパン司令部中央棟2F・提督執務室

 

提督「策? んなもんはない!」

 

大淀「えっ・・・。」

まさかの、無策であった。これには大淀も心底驚いたが、彼はこれに言葉を続けた。

「いいか大淀。何か策があるのかというがな、そんなものを考えるのであればまず、真っ先に、“相手から信用される”策を考えろ。確かにこんな商売やってりゃ人間不信になるのは分かる、なぜならそう言う商売だからな。だがいいか、敵を信用しても、敵から信用されなきゃ叛乱は起こるんだ、例え敵味方の関係でなかったとしても同じことが言える。」

 

大淀「は、はい。」

 

提督「だからまずは、相手からの信用を勝ち取れ。それが俺の策だ。平和とは、信用が全てだ。まずはそこからだよ。」

 

大淀「は、はぁ・・・。」

 

直人は大淀にそう語って聞かせた。

提督(自分でも、甘いのは分かってる。だが、戦いより、戦わざる道を選んだ方が、いいに越したことはないではないか・・・それが彼らに理解されないならば、その時は―――)

 

直人は平和・協調路線を取ると同時に戦う決意をも、この時ばかりは固めていたのである。

 

 

 『平和とは、実力あってのものである』というのが彼の持論であり、且つそれを成し得る実力を持つ身の上である以上、その決意は至極当然であったと考えられなくはない。しかし、もしそうなった場合、待つのは悲劇的結果であるという事をもまた、その時点で既にして暗示していた決定であった事は事実である。

 

提督「実力無き平和は夢に過ぎん、それも悪夢の類だ。人々は享楽と退廃の夢を見る、明日も平和だと己に言い聞かせるだろう。だが約束された平和など一日たりともない、あるのは“偶然の”結果としての、平和と安寧だけだからな。我々の今の境遇がそうだ。トラック島の敵は以前と打って変わって静かになった。であればこそ、我々は今こうして安心して施設の造営に当たれるんだ。」

 

大淀「成程、敵が絶えず侵攻して来ている状況では、戦力増強も訓練も、ままなりませんからね・・・。」

 

提督「そう言う事。何事も成すのであれば、邪魔の入らぬ内が一番早く済む。邪魔が入らぬ事是平和と、文字通り言えるのだからな。友好的関係の構築にしろ戦の準備にしろ同じ事だ、何事も今の内、だよ?」

 

大淀「はい、肝に銘じます。」

 

直人は今のサイパンの状況―――穏健無事な状況が長続きするとは初めから考えていない。側面にトラック環礁を抱えている今日、敵側に攻撃の主導権がある事は事実だ。なればこそ彼らは早晩ここを奪回する必要に迫られていたのだが、それは今、成される事ではない。もう少し先の話である・・・。

 

 

ガチャッ

 

 

金剛「戻ったのデ~ス!」

 

といつも通りの元気さで戻ってきたのは秘書艦の金剛である。と言っても普段より少し上機嫌そうだ。

 

提督「お帰り~、漏らさなかったか?」

 

金剛「漏らしてないデースッ!」ムキーッ

 

提督「ハハハ、その様子なら大丈夫そうだな。」

 

金剛「そう言えバ、第一艦隊は今どのあたりデショウ?」

 

金剛が言うのは第一艦隊の遠洋練習航海の事だ。水上火力の中心部隊という事で彼も第一艦隊に関しては航海に出し渋っていたのだが、今回ようやく日の目を見た次第で、実は金剛の機嫌の良さもここからきている。

 

大淀「予定通りなら16日の行程の三日目ですし、今は―――福島県沖ではないでしょうか。」

※大凡正確です

 

金剛「oh! まだその辺りデスカ。」

※第一水上打撃群の経済的巡航速度は15ノットほど

 

大淀「巡航速度も遅いですし、仕方がないでしょうね・・・。」

※横鎮近衛の第一艦隊のそれは10ノット強

 

足の遅い戦艦5隻が主軸とあってはやむを得ない所は確かにある。

 

提督「まぁあいつらがいない間は航空戦力が中心になるからな、その点は頼むぞ、総旗艦殿?」

 

金剛「お任せあるネ!」

 

 

コンコン

 

 

提督「どうぞ~。」

 

明石「失礼します!」

 

やってきたのは明石さん。何か報告があるようです。

 

提督「おぉ、終わったかい?」

 

明石「はい、千歳さんの“甲”への改装、木曽さん他数名の改装、蒼龍及び地上転用中の飛龍艦載機隊の機種転換、完了です!」

 

提督「よしっ、でかした!」

 

戦力増強案は現在進行形であったのだ、その証拠がこれであっただろう。

 

今回改装されたのは―――

 

・蒼龍 (無印)⇒改

・千歳 改⇒甲

・木曽 (無印)⇒改

・望月 (無印)⇒改

・黒潮 (無印)⇒改

・大潮 (無印)⇒改

・霞  (無印)⇒改

 

の以上6隻。バンタム湾夜戦に始まりここまで三度の大奮戦を見せ異例の速さで改となった霞を始め、元々改装に要求されるデータの少ない千歳などを始め、駆逐艦に関しては電探を装備した連撃装備となったと考えてよい。

 

 

そして二航戦の機種転換は搭載機種全てに実施されその結果次の通りとなる

 

・飛龍改

艦戦(岡嶋隊):零式艦戦二一型⇒同三二型

艦爆(小林隊):九九式艦爆一一型⇒同二二型

艦攻(友永隊):九七式艦攻⇒天山一一型

爆戦(精鋭):零式艦戦六二型⇒零式艦戦六三型(いずれも爆戦)

・蒼龍

艦戦(藤田隊):零式艦戦二一型⇒同二二型

艦爆(江草隊):九九式艦爆一一型⇒同二二型

艦攻(金井隊):九七式艦攻(爆装)⇒天山一一型(爆装)

艦偵(NEW!):二式艦上偵察機

 

はっきり言ってしまえば艦爆はマイナーチェンジである。あと蒼龍艦攻隊は初めから敵基地絶殺マンなので気にしない方向で行こう。(だって中の人水平爆撃の名手なんですもの・・・。)

 

因みに以前述べられていた一航戦の機種転換については既に完了しているので併せてここで紹介させて頂く。

 

・赤城

艦戦(板谷隊):零式艦戦五二型⇒同五四型(標準5段階目)

艦爆(千早隊):彗星一一型⇒同一二型(標準4段階目)

艦攻(村田隊):天山一二型⇒同一二型甲

 

・加賀

艦戦(赤松隊):零式艦戦二一型⇒同三二型

艦爆(牧田隊):九九式艦爆一一型⇒同二二型(標準2段階目)

艦攻(北島隊):九七式艦攻⇒天山一一型(標準2段階目)

 

端的に言ってしまおう。赤城艦戦隊の世代が全然違う件。(因みに蒼龍艦戦隊の二二型で標準3段階目である)

 

因みに両者とも改装はまだであるが然るべき時になれば実施されるであろう。

 

 

提督「しかし相変わらず赤城の艦載機はあてになっていいな。」

 

中々凄い言い草であるような気もするが、端的に言ってしまえば事実だろう。

 

明石「あ、それとドロップ判定が終わったので、来て頂けますか?」

 

提督「分かった、今行こう。」

 

そう言って執務机から立ち上がった直人は、明石に続いて建造棟に向かったのであった。

 

 

 

11時08分 サイパン司令部建造棟

 

提督「さて―――自己紹介をお願いしようかな?」(見慣れない制服・・・新クラスか)

 

そう、この司令部にも最新鋭クラスの艦隊型駆逐艦の着任である、その記念すべき第一陣は―――

 

 

 

「夕雲型一番艦、夕雲、着任しました。フフッ。」

 

第十駆逐隊旗艦―――駆逐艦夕雲、着任。そしてそれと時を同じくして加入した艦娘がもう一人。

 

阿武隈「こんにちわ、軽巡阿武隈です。只今着任しました!」

 

提督「二人とも宜しく頼む。まぁ見て分かると思うが私がこの艦隊の指揮官だ。」

 

金剛「総旗艦の金剛デース、宜しくネー?」

 

阿武隈&夕雲「宜しくお願いします!」

 

この頃になると金剛も総旗艦の肩書を堂々と使う様になっていた。漸く自信がついてきた証左であったろうか、はたまた別の理由があったのか、それは分からないのだが。

 

 

しかし、阿武隈にとってこの着任時期は非常にまずいものであった。

 

 

由良「久しぶりね、阿武隈ちゃん!」

 

阿武隈「また由良と一緒に戦えるんだね!」

 

とまぁ姉妹の再会を祝う一幕は今回もあった訳だが。

 

提督「感動の再会なのは分かるけども、司令部の案内頼むぞ~由良。」

 

由良「承知しておりますとも♪」

 

と返す由良は上機嫌なのが顔どころか声にまで出ているのが、容易に窺い知れたのだった。

 

提督「はぁ、やれやれ・・・。」

 

金剛「気持ちは分かりますケド、度が過ぎるのはナンセンスですよネ?」

 

提督「主に千歳の時の千代田な。」

 

そんな事を思い出しながら直人は建造棟を後にしたのであった。

 

 

 

11時40分 中央棟2F・提督執務室

 

その決定が下されたのは意外な速さであった。

 

提督「テニアン島が重要防御地域となる事は目に見えている。横鎮でも事情は聞いて来ちゃいるんだが、アルティは“派閥抗争”に敗れ生命の危険を回避するため我が軍門に下ったのだという。」

 

軍門に下る、という言い回しには語弊があるがそれはひとまず置こう。

 

提督「恐らく奴らの事だ、仲間内の気配には敏感だろうから気付くのは存外早いだろう。そうなると再びその生命が危機に陥る事も十分考えられる。という訳で司令部防備艦隊の増員をしたい訳だが、これがまたどうして思うに任せない訳だ・・・。」

 

大淀「―――提督、僭越ながら一つ宜しいでしょうか。」

 

提督「いや、大淀の言いたい事は分かっている、つもりだ。阿武隈を付けよと言いたいのだろう?」

 

大淀「はい、阿武隈は所属がまだ定まっておらず、着任直後という事もあり現在の艦隊の練度も踏まえますと、今のままの状態では作戦行動に齟齬をきたす可能性が考えられます。」

 

 

つまりこう言う事だ。

 

 味方内の練度に隔たりがある場合、どうしても練度の低い味方は、命令を受けても反応が鈍い。無論才覚のある者なら話は別であるが、そうでない者にはこの物差しは当てはまると思って良い。

一方熟練者は手慣れている分反応速度が速いから、機敏に動く事が出来る。この反応速度の差が、戦場では十分大きな意味を持つのだ。その最たるものが敵弾接近予知とその回避である。

 敵弾の接近を察知するのは簡単だ、砲弾の飛翔音を聞き取れば良い。しかし周囲は音に満ち溢れている。波の音、砲声、爆発音、或いは対空砲の射撃音や敵機の爆音が聞こえる場合もあるだろう。

そこから敵弾の飛翔音を聞き取ってかつ誰に向かっているものなのかを予想する必要がある。これは経験なかりせば不可能だ。

そして敵弾回避は、艦娘と言う身の上であるならば百分の一秒であってもその運命を分かつ。敵弾洞察能力がずば抜けているとか飛びぬけた幸運を持っているだとか自らを鍛え抜く事に余念がない=訓練量が多いだとかならば話は別(と言っても当人達が回避運動を欠かしている訳ではない点には留意されたい)ではあるが、そうでもなければいざという時の反応速度と瞬発力のどちらかが欠ければ即被弾に繋がる世界である。

 この事からも分かる通り、熟練者と新参者を組ませるという事はリスクが絶えず付きまとっている為、彼はその点を憂慮したのである。

 

 

提督「・・・いっそ、そうするか・・・。」

 

大淀「―――と、仰いますと?」

 

提督「阿武隈の防備艦隊編入案だ。今暫くは司令部防備に当たらせて腕を磨かせよう。」

 

金剛「OKデース、それでどうするネー?」

 

一応編成は直人の仕事である為金剛がそう問い返すと直人は

 

提督「うーん、じゃぁ夕張と組ませて第十五戦隊編成という形で。後は金剛に一任する。」

 

金剛「了解デース!」

 

 直人はその他一切の処理を金剛らに任せる事で様々な業務を無難にこなしていると言っても過言ではなかったかもしれない。そう言った逃げ場がない場合は持ち前のデスクワークスキルで乗り越える、と言った様なやり口である。

但し、よく分からないからというよりは彼自身がただ単に面倒臭がっているだけである。(やろうと思えばやれる)

 だがこれは艦娘にして見ると不本意極まる決定と言えた。それもそうであろう、誰しも第一線での勤務を望む筈だ。

それが二線級の防御部隊に送られたとあっては尚更だっただろう。(事実司令部防備を取り仕切るのは大正時代に出来たような艦艇ばっかしである。)

 

阿武隈「なんで着任早々後方部隊勤務なんですか!? 前線部隊との艦隊運動訓練とか他にもやれることないんですか!?」

 

 と、当の阿武隈にさえ突っ込まれたのだが、艦隊との練度の格差を引き合いに出されてしまい、阿武隈も引き下がらざるを得なかった。

そして直人がその事を引き合いに出したその事が嘘でない事は、実は翌日に早くも阿武隈の目前で詳らかとなる。無論素の訓練でも相当厳しいがそれに全艦娘が馴染みつつある事も事実だったが、問題はそこじゃぁない。

 

 

 

3月31日9時52分 司令部正面水域・演習海面南端

 

阿武隈「―――!?」

 

この時阿武隈は司令部を向こう側に見る形で直人を捉えていた。その阿武隈が見る先には―――

 

 

提督「それそれそれぇ!!」(小手調べだ―――)

 

ズドドドドドドドオォォーー・・・ン

 

51cm連装砲を順次射撃している直人と―――

 

暁「―――レディにそんな砲撃、当たりっこないわ!」

 

その目標になった駆逐艦、暁がいた。

 

提督(さて、どうやってんのかなぁ―――?)

 

実はなんでこんな事になっているかというと発端はこの日の演習/執務開始前に遡る。

 

 

~7時57分・中央棟2F・提督執務室~

 

提督「―――。」ピラッ

 

直人が持っていたのは、神通の提出してきた艦娘達の訓練状況と技能考査が書かれた資料である。神通のそれは更に実戦での戦歴も踏まえた評価が為されている極めて正確なものだったが、直人はその中でも異彩を放つ艦娘がいる事に気付いていた。

 

提督「暁、か―――。」

 

それが、件の駆逐艦『暁』だったのである。

 

提督(要検証か。まぁ神通が言うのだ、試してみようじゃんか。)

 

その資料の追記事項の欄には、「当該艦娘の技能について、要検証の必要を見とむ」と添えられていた。そこで出て来たのが他ならぬ直人だった訳である。閑話休題。

 

 

51cm砲の正確な射撃を放つ直人、余談だがこの砲撃時、彼らの目には若干俯瞰視点から(要は上から見下ろすように)物が見えている。観測機を飛ばせばそれを通して“視る”ことで砲撃測距が可能となる。いつぞやに木曾が直人の実力を訝っていた際に、その様子を眺めたのもこの手法である。

 

直人はこの艤装の能力を使って、暁の力を見極めようとしていたのだ。

 

放たれた51cm砲弾は全12発、全ての砲を撃った訳ではないが、駆逐艦なら至近弾だけでもまずひとたまりもなく消し飛ぶ威力を秘める。

 

 

ザザッ、ザザザザッ――――

 

 

ズドドドドドドド・・・ン

 

 

暁が機動した直後巨大な水柱が林立する。

 

阿武隈「―――!?」

 

その大きさと密度に遠巻きに見ていた阿武隈が驚愕する。それもそうだろう、2トンの巨弾は大和の主砲弾でさえ見劣りするのだ。威力は段違いと言ってよい。(最も80cm砲ともなると文字通り「次元が違う」ので撃たなかったところはある。)

 

更にその着弾分布は直径80m以内に収まっている。直撃していなかったら普通だと奇跡的だろう。(最も彼に言わせると「大分手は抜いている」とのこと)

 

果たして―――

 

 

提督「―――ッ、なに!?」

 

暁「フフッ、へっちゃらなんだから!」ザザッ

 

提督(無傷ッ、だと―――!?)

 

元々演習弾なのでその辺りは多少勘案しても、普通51cm砲の直撃を食らって無傷でいられる道理はない。まして駆逐艦程度では至近弾でさえ致命的な所、完全な無傷で突撃してくる暁の姿があった。

 

提督(馬鹿な・・・これなら、どうだ!)

 

 

ズドドドドドオオォォーーー・・・ン

 

 

続けて放つのは80cm三連装砲の内の2基6門。照準をかなり絞る超精密射撃である。(最も80cm砲では着弾分布は良く絞って50mがせいぜいだが。なお艦娘規格46cm砲の最小着弾分布範囲は約35m前後だとされる)

 

 

 

―――しかしこれさえも、暁は軽く躱して見せた。

 

 

 

提督(駆逐艦1隻に至近弾さえ出ないとは・・・暁の才、並の物ではないな。ならば―――!)

 

直人が遂に意を決し、120cmゲルリッヒ砲を交互射撃する。

 

暁「―――ッ!」キッ

 

提督「―――!」

 

直人は暁のある挙動に気付く。

 

 

ドオオオンズドオオオォォォォォ・・・ン

 

 

紙一重で回避され空しく上がる水柱、直人はこの砲に関しては距離と初速の関係から直射しているのだ。直撃コースのそれが―――外れたのだ。

 

提督(そうか―――そう言う手品か!)

 

神通の提出した資料に書かれた暁の妙な点、それは「暁が着任此の方一度たりとも損傷を被った事が無い」と言う正にこの一点にあった。しかもこれについては演習時の事については除くとしても、その模擬戦闘の時でさえ、被弾するケースが圧倒的に少ないという。

 

ある日などは、周囲の自勢力の艦娘が大破判定を連発する中、単身その時敵対勢力の旗艦役をした金剛に肉薄するというワンシーンまであったとさえ書かれていた事が直人の興味を引いた。当然金剛の周りを固める艦娘達も反撃するが一太刀も浴びせる事が出来ず、金剛が懐に肉薄される手前で、暁の回避パターンを予測した砲撃で辛うじて食い止めるという始末であったという。

 

提督(ならば、こいつが通用するかな。)

 

そう考え背中から騒々しい機械音と共に展開されるはこれまたいつぞやにお目見えしたKHYシリーズの第一弾。

 

 

キュイイイイイイ・・・ブオオオオオオオオオオッ

 

 

暁「ふえっ!?」

 

降り注ぐ30mm砲弾、そう、“30mmバルカン砲 アヴェンジャー改”である。

 

暁「ちょ、お、おおおっ!? きゃぁっ!!」バシャアァァン

 

最初はどうにか回避しようとし、4発まで躱すも及ばず―――。

 

提督「ふぅ・・・やっと止まったか。」

 

結構無慈悲なやり方であるが。弾幕は正義である。(射撃時間1秒弱)

 

但し付け加えるならば、射撃した距離はアヴェンジャー改の最大射程ギリギリである4150m弱で、正直なところ対向速度がなければ届かない距離である。当然ながら正確な射撃など期すべくもなく、50発程度射撃した中のかなりの数が外れたが、それでも数発が正確に暁を直撃コースに捉えていたのである。

 

暁「あんなの聞いてないわよぉー!」ガバッ

 

提督「言ってないからな!」ドヤッ

 

暁「むぅぅ~~~・・・」プクーッ

 

頬を膨らませて不服そうな様子で直人を見据える暁、可愛い。因みにこの勝負は先に一撃した方の勝ちであった。

 

なおアヴェンジャー改を搭載する場合、背中に背負う為30cm速射砲が装備不可能となる。なおこれには両手で支持しないと反動を抑えられないという理由もある。それもその筈、元モデルであるGAU-8 アヴェンジャーは、搭載したA-10 サンダーボルトⅡが目標に向けて射撃すると速力が落ちるという程反動が凄いのである。

 

直人の場合両舷前進一杯+バーニア噴射でどうにか押さえているほどだから、その反動は馬鹿にならないのだ。

 

提督「しかし、成程な―――ありがとう。戻っていいぞ。」

 

暁「あ、うん・・・。」

 

何が分かったのだろう、と言った様子で暁は首を傾げながら訓練中の艦娘達の中に戻っていった。

 

提督(これは・・・えらい才能かも知らんぞ―――)

 

 

阿武隈(あの子―――駆逐艦?)

 

遠巻きに見ておきながら戦慄する阿武隈である。

 

 

 

13時27分 中央棟2F・提督執務室

 

神通「それで、如何でしたか?」

 

直人に呼ばれるまでもなく自ら執務室を訪れた神通は、直人に感想を求めた。と言うのは、神通本人が暁の敵弾回避が明らかに他の艦娘と違うプロセスを踏んでいる為、指導しかねているという事が、今回神通が「検証の要有りと見とむ」と結んでいた理由なのだ。

 

これに対して、直人は結論を述べた。

 

提督「うん―――暁は驚くべきことに、“目視”で弾幕を掻い潜っている。」

 

神通「目視・・・ですか? でも砲弾の飛翔は音でしか判別出来ない筈では―――?」

 

提督「実際そうなんだが、どうやら暁には“視えて”いるらしい、驚くべき動体視力と言わざるを得ないが、どうやらそれだけではない。」

 

神通「と、仰いますと?」

 

神通が問いかけると直人は驚きの可能性を口にした。

 

 

提督「暁はその目視した砲弾から、“弾道”を読み取って回避しているかもしれん。」

 

神通「なんですって―――!?」

 

直人がそう結論付けたのにはちゃんと証拠もある。

 

 

普通撃ち上げた砲弾は、運動エネルギーを失うにつれて軌道が下にたわみ、やがて失速して落下を始める。だが落ちて来るまでにはタイムラグが生じるのは自明の理だ。

 

一方で直線状に射撃、すなわち直射した砲弾については、射撃した時に加えられた運動エネルギーが着弾時にかなり残っている。その代わり射程が短いもののタイムラグが少ないという特徴がある。

 

暁は砲弾の飛翔角度や速度と言った事を瞬時に見分け、それに応じて回避の仕方を変えているのである。

 

例えば遠距離砲撃だった51cm砲の回避については柔らかい動きで余裕を持って弾道と着弾点を予想し完全回避、一方で、直射した120cm砲については、直撃コースと見るや即座に鋭角的な鋭く早い回避を行い、二発とも6000m以遠であったとはいえ完璧に回避したのである。

 

 

提督「暁はこと敵弾回避に関しては天性の才覚を持っていると言っても良い。」

 

神通「特殊な、回避法ですね・・・。」

 

直人はそう結ぶが、その後直人はこう続けた。

 

提督「だが特殊な才能は時として人に何かしら欠落させるとはこの事だろう―――神通、暁は射撃や雷撃が苦手ではないかな?」

 

神通「―――はい、そうです。」

 

提督「だろうと思った、白雪より多少腕が立つレベルだからな、この射撃成績は。」

 

神通の資料にはきちんと演習時の砲撃成績や、基本戦闘訓練時における成績が事細かに記されている。この為1人辺りA4用紙3枚刷りになっているほど情報量は多い。この辺りは神通の几帳面さと言うか真面目さを象徴する事柄として後々まで続けられる事になる。

 

そしてそれらは、直人にとってはありがたい事に艦娘同士の比較対象をより鮮明に行う事が出来た点について、戦い終わって後神通をかなり高く評価したという。

 

因みにどういった水準かと言うと駆逐艦に且つ砲撃のみに限った話では、

 

秋雲が最低レベル(25~29%)、白雪で命中率39%、

夕立が81%、時雨77%、如月72%、

雷67%、電71%、響69%、朝潮64%、陽炎66%、望月81%

と、改二ではない艦娘達がそれでも6~7割の命中率を持つのに対し、

 

暁:43%

 

と、艦隊にいる者では白雪に次ぐレベルで砲撃が苦手なのである。

(因みに駆逐艦娘は砲が小さい分軽量で取り回しやすい為、命中率はかなり高い。

巡洋艦では軽巡平均6割強・重巡平均5割半前後、戦艦は4割強とがくりと落ちる。)

 

 

提督「―――向上の見込みは、あるのかい?」

 

と直人は口調を変えて柔らかく言った。これは神通の性格を考えての事だ。

 

神通「筋はいいのですが―――磨けば、或いは。」

 

提督「分かった、では神通に任せよう。きっちりと腕を磨いてやってくれ。」

 

神通「はい、では失礼しても?」

 

提督「うん、ご苦労様。」

 

と直人はなりを崩していった。

 

神通「では、失礼します。」

 

神通は一礼すると執務室を去った。

 

 

提督「・・・さて、どうしたもんか―――。」

 

直人は、ふとそう考え込まざるを得ないのであった。

 

 

艦娘達には特殊な技能を持つ者が多い事も事実だ。

 

その在り方や、何を“持って”顕現したか、ふとしたきっかけや人為的なミスなど、それら特殊技能を持った艦娘達を生んだ原因は多種多様だが、兎にも角にもそれらの能力は主として戦闘に用いる能力である場合が殆どである。

 

この艦隊にも既に何人かそうした能力を持つ者は居る。

 

―――霊力空間固着跳躍―――川内

―――弾道予測回避―――暁

―――パペッター(傀儡――くぐつ――使い)―――島風

―――砲塔毎個別測距能力―――金剛

 

この他身体能力(?)そのものが一つの異能とも言える青葉も含め、直人にとって貴重極まりない艦娘達にも特殊な才幹を持つ者が少なくない事を、この事は示していたとも言えるだろう。

 

提督「―――。」

 

直人は瞑目し考えた。艦娘達の、まだ明らかになっていない出現の理由、その出自を―――。

 

 

17時24分―――

 

提督「―――ッ・・・。」パチッ

 

いつの間にやら寝てしまっていたようだ。

 

執務室に人の影はない。

 

提督「―――っ。」

 

体を起こそうとした直人だったが何かが背に掛けられている―――毛布だ、微かに金剛の部屋の香りがする。

 

提督(・・・やれやれ―――俺とした事が。)

 

とんだ無様を見せてしまった。と直人は肩を竦めて思ったが、そこで思い煩っても仕方ないと思考を切り替え、金剛が掛けて行ったのであろう毛布を畳み始めるのだった。

 

 

4月2日8時48分 中央棟2F・提督執務室

 

エイプリルフールも過ぎたこの日、直人が一つ方策を決定した。

 

提督「近接戦闘演習第二回をやろう。」

 

金剛「―――!?」ビクッ

 

大淀「畏まりました、ではその様に。」

 

提督「お、今回は反対しないんだね?」

 

第一回の時の事を思い出しびくっとした金剛を他所に直人は大淀にそう言った。

 

大淀「えぇ、今日のご予定、提督は特に何もありませんしそれに―――」

 

大淀が言葉をとぎる。

 

提督「・・・それに?」

 

大淀「提督はお止めしても聞く方ではありませんから。」

 

諦められていた様だ。好都合だったが。

 

提督「そうかそうか、では早速―――」

 

金剛「チョッ、チョット待つネーテイトクゥ!」

 

と堪りかねて金剛が言った。

 

提督「ん? どうした? あぁ、お前も参加するんだぞ金剛よ。」

 

金剛「イヤソウジャナクテと言うか、本音を言うとやりたくないデース!」

 

提督「おや、そうかい? 拒否権ないけど。あと、エイプリルフールは昨日だぞ。」

 

金剛「エッ・・・。」ガックリ

 

本当にやるのか、と尋ねようとしていた金剛だったが、機先を制された上そう返されて言葉を失いうなだれるのであった。

 

 

~2052年6月29日・訓練場~

 

提督「それそれどうしたぁ! たとえお前でも手は抜かんぞォ!!」ビュッ

 

金剛「ウグウッ!?」

 

回し蹴りを片腕でどうにか押し留める金剛、お互い素手なのだが―――。

 

金剛「ギブ、ギブデース! 強すぎるヨ・・・。」

 

とまぁこんな醜態ぶりだったのである。

 

 

 

金剛(終わった・・・デース・・・。)

 

と、思うのも至極当然だっただろう。何故ならあれ以来朝潮らとは違い、「なにもしていない」のだから。

 

金剛(――――――!)

 

が、ここで一つ金剛の脳裏にひらめきが走る―――。

 

 

 

9時27分 サイパン島訓練場

 

司令部敷地のすぐ北側に、海側からは木々に遮られ見えないこの訓練場に、艦娘達が再び集められた。但し哨戒から帰ったばかりの者と、哨戒に出たばかりの者は除かれている。

 

と言っても哨戒12班(深雪・叢雲)が帰投し、哨戒14班(白露・村雨・島風)が指名で出動していっただけである。

 

提督「喜べ、近接戦闘訓練第二回だ。」

 

さぁ皆さんご唱和ください。

 

一同「「「喜んでないっ!!!」」」

 

提督「仲睦まじきは善きかな善きかな。」

 

朝潮「まぁ、再戦の機会を心待ちにしてはいた所です、受けて立ちましょう。」

 

時雨「そうだね。今回こそ、勝つよ。」

 

雪風「今回は私も参戦ですっ!」

 

鳳翔「ふふっ、頑張って下さいね?」

 

雪風「はい! 頑張ります!」

 

提督(何だろう、雪風に勝てる気がしないんだが。)

 

※気のせい(多分)

 

金剛「―――――♪」

 

霧島「・・・?」

 

自信ありげの金剛を見て首を傾げる霧島。

 

榛名(策があるんでしょうか・・・?)ヒソヒソ

 

比叡(そう・・・かもしれませんね。)ヒソヒソ

 

同じくひそひそ言い合う榛名と比叡。

 

睦月「うーん・・・やっぱり・・・」

 

如月「そうねぇ~。」

 

長月「艦娘が格闘と言うのはどうなんだろうか・・・。」

 

この三人の力量はじきに分かる。

 

 

提督「はい今回のエキシビジョン枠誰かやりたい奴いるー?」

 

そんな枠いつできたと。

 

そしてその言葉に一同静まり返る。前回やった川内は兎も角として、その前回やった川内が負けた所を見ている艦娘達が立候補しようとしなかった。

 

「やれやれ、だらしがないわね。」

 

と、まだ聞き慣れない声色の凛とした声が響く。無論艦娘である。

 

長いポニーテールの黒髪、赤い瞳が印象的な長身の艦娘。

 

周囲の艦娘は、驚きと同時に「知らないからそう言えるだけでしょう!?」と心中に押し留めてそう思った。

 

その艦娘はまだ着任して間がない―――実を言うと4月1日、大型建造での着任と言う、着任ほやほやの新人である。

 

 

提督「ほーう? 期待の新人の御登壇、と言う訳だな? “矢矧”よ。」

 

矢矧「えぇ、そうね。」ザッ

 

阿賀野型軽巡洋艦三番艦『矢矧』、その最初の相手は、実戦ではなく深海棲艦相手でもないが、その相手こそは―――彼女の付き従う提督であった。

 

雪風「では、雪風もやります!」

 

提督「!」

 

陽炎「えっ!?」

 

その申し出に陽炎と直人は驚いたが、直人は逆に闘志を燃やし、陽炎は心配した。

 

陽炎「ちょっと雪風!? あなた確か今回初参加・・・」

 

と、言いかけて陽炎は口をつぐんだ。雪風のその瞳が余りにも、自信に満ち溢れていたからだ。

 

雪風「だいじょうぶですっ! 何とかなります!」

 

陽炎「はぁ・・・言い出したら聞かなそうだわ。いいわ、なら―――一発ガツンとかましてらっしゃい!」

 

雪風「はいっ!」

 

提督「ハァーーッハッハッハ!! その意気やよしッ! その挑戦に応えようぞ!」

 

完全に台詞回しが悪役なのは言うだけ野暮だろうか・・・。

 

舞風「頑張れ雪風ェ~!」

 

陽炎「頑張りなさい!」

 

皐月「ファイトォー!」

 

 

ワアアァァァァァァーーッ

 

 

雪風と矢矧に大声援が飛ぶ。(一部除く)

 

金剛「提督ゥー! その小生意気な新人に一発思い知らせるデースッ!!」フーッ

 

完全に直人が舐められたと思ったのか金剛が興奮気味に唸る様に檄を飛ばす。

 

提督「おーう、任せろ~。」コキコキ

 

指を鳴らしながら応じる直人。

 

やっぱり悪役―――それもセリフ的に言えばチョイ役のそれ―――を演じるのであったが。

 

 

3人が2:1で相対した時には、雪風がトンファー、矢矧が長剣(ロングソード)、直人はショートソードの二刀流で身構えていた。

 

このショートソードの二刀流の利点は、日本刀の二刀流と比べ重量バランスが取れ、尚且つ総重量で比較すると軽い点だ。欠点は刀と比べてレンジ(間合い)が短い事だろうか。しかしそれを置いても対応能力は上がる為対多数戦で有利である。

 

青葉「さぁ今回のカードは紀伊直人VS矢矧・雪風ペア! これは善戦に期待したいですね!」

 

だからどこから湧いたんだ貴様は。(※因みに今回は艦娘達に紛れ込んでいた様子。)

 

局長「アイツニトッテハ楽ナ試合ダトオモウガナ、人数差ガドウ響クカ・・・。」

 

青葉「そこらあたりにも注目していきたい所です!」

 

 

提督「・・・さぁ、来るがいい。」ザッ

 

直人は左手の剣を構え、右足を下げて身構える。

 

左の剣の構えは防御的だったが、身構え方自体は攻撃的なものだ、受け止めた後で右の剣で即座に反撃が出来る。その証拠に木製の模造刀でこそあるがその右手の剣の打撃面は外向きである。

 

矢矧「フーッ、フッー・・・ッ―――」

 

矢矧は長く深呼吸をする、雪風はトンファーを構えて直人ににじり寄る。二人ともまだ直人と10mは距離を置いている。

 

提督「―――――。」(どっちからくる・・・矢矧か・・・雪風か――――)

 

直人はその点を測りかねた。両者油断なく直人にプレッシャーをかけ続けた事もある。が、雪風の僅かずつの接近に、直人は思わずそちらに注意の比重を傾けてしまう。

 

矢矧「――――ハァッ!!」ダッ

 

短い、しかし力強い裂帛の怒号と共に、矢矧が一挙動で間合いを一挙に詰め自らの間合いに直人を捉える。

 

提督(何ッ―――!?)

 

直人は完全に面食らって後ずさった。矢矧が使ったのは直人も使う剣術の極意(技術)の一つ―――

 

 

カアアァァァァーーーン

 

 

提督「くっ!」(一撃に無駄なく全ての力を込めてくるとは―――)

 

矢矧の一太刀は直人の左の剣でいなされていた。しかしまともに受け止めていれば、電の一発を受けた時と同じ様に片腕は使えなくなっていたであろうことは、彼の経験則からしても、自明の理であった。

 

しかし直人は同時に、矢矧の異常なまでの剣の技量に心中舌を巻いていた。

 

建造されたばかりであるのにも拘らず、縮地の技法と言い一撃の重みと言い、余りにも熟達『しすぎている』のである。

 

雪風「ハアアアアッ!!」

 

そこまで思い至った時雪風が突進してきた。最早剣で防ごうにも間に合う距離ではない。

 

提督「ふんっ!!」バッ、ババッ

 

直人はとっさにトンファーの突きの一撃を右に身を捩って躱すとそのまま飛び、後方一回転ジャンプの要領で飛び退った。

 

提督「ふうっ―――」スタッ

 

直人が着地した正にその時―――

 

矢矧「ハァッ!!」

 

矢矧が目前で既に直人に向かって剣を振りかぶっている。

 

提督「でやあああっ!!」ヒュバッ

 

直人は咄嗟に左の剣を身体の右からすくい上げる様にして、矢矧の剣戦を遮るように振る。何とか一撃防がなくてはならなかった、完全に体制を崩しているからだ。

 

 

コオオオォォォォーーーー・・・ン

 

 

提督「くぅっ!」

 

矢矧「うあっ!?」

 

交錯した力はお互いの態勢を崩させるのには十分だった。

 

態勢を素早く立て直す直人に対して矢矧は自らの一撃の反動を食い弾き飛ばされていた。

 

提督(―――!)

 

視野の端に雪風の姿が映る、突進して来ているのがよく分かった。どうやら矢矧は再び縮地を使ったらしく、雪風は丁度間に割り込むような形だったものの道を譲っていたものであるらしい。

 

雪風「えいっ、やぁっ、たあっ!!」ブゥンブゥンブゥン

 

直人は最初の二撃を身を捩って躱し―――

 

 

スカアアァァァァーーーン

 

 

三撃目のアッパーを真正面から右の剣で上から叩き付ける様に相殺する。

 

雪風「うぐっ!」

 

提督(こいつらっ―――やるな!)

 

直人は素直にその力量を認めた、しかし退かなかった。ところが―――

 

雪風「はぁっ!!」

 

 

ズドッ―――

 

 

提督「うぐおっ―――!?」フラッ

 

右の剣を振り抜いた直後のお留守な懐に雪風のトンファーが胸板に直撃した。

 

これには堪らず直人もよろめいたが直ぐに立て直し隙を与えない。実際すぐに矢矧の追撃が来たがこれは難無く受け流して事なきを得た。

 

提督「いやああああああっ!!」

 

次の瞬間直人は一転攻勢に転じ、雪風と矢矧を同時攻撃する態勢で剣を振るう。

 

 

カァンカァンコォンカァン―――

 

 

青葉「これは凄いっ! 紀伊提督、二人掛かりをものともしていない様に見えます!」

 

龍田「いえ、さっき一発貰ったわねぇ。」

 

実況の面々は前回と同じだ。

 

青葉「えぇ!?」

 

局長「丁度胸板ノアタリダ、呼吸ハ乱レテイルダロウ。」

 

 

局長の推理は正に慧眼と言う他ない、呼吸のリズムの違いから直人がペースを乱し、徐々に矢矧と雪風が押し始める。

 

提督「くっ!」

 

矢矧「はぁっ!!」

 

 

カアアアァァァァン

 

 

雪風「せいっ!」

 

 

スコォォーーーン

 

 

提督「ぬぅ、こうなれば―――――」

 

直人は最早後がなかった。このまま打ち合いを続ければ押し負けるのは彼の方だからだ。そうと決まればと、直人は矢矧に向き直りつつ後ろに飛び力を溜める。完全に雪風に左側面を晒す事になるが、それに拘泥している場合ではない。

 

矢矧「――――ッ!?」

 

急激な直人の動きの変化に矢矧は一瞬追従できず動きが止まる。その隙を、直人は見逃さず一度開いた間合いを一挙動で瞬時に詰める。

 

提督「我流、二刀十字斬!!」

 

繰り出したのは腹を横なぎに、通り過ぎざま背筋を縦に背面で切り上げる技。縮地と組み合わせて繰り出される瞬足の二連撃だ。

 

 

ズドドォッ

 

 

矢矧「うああぁァッ―――!」

 

 

ドシャァッ――――

 

 

青葉「矢矧さんダウン―――起き上がって来ません!!」

 

局長「―――マダココカラダ!」

 

 

そう、ここからである。

 

 

雪風「はああああああっ!!」

 

凛とした気声を上げ雪風が突っかかる。しかし雪風に集中できるようになった直人は冷静に対処する。

 

提督「それそれそれそれ!!」ブンブンブンブン

 

 

ヒュッヒュッカァンヒュバッ―――――

 

 

しかし――――――当たらない。

 

まるで剣の軌道に“アタリ”を付けているかのように軽々と避けていく。時に海老反り返りで紙一重の回避さえも披露した。

 

提督(何故だ・・・なぜ当たらないっ―――!!)

 

そう思いつつも、彼は攻撃に重点を傾けて剣を振るっていく。しかしその身軽さで、雪風は軽々と直人の猛攻を回避していく。直人に焦りが生じ、それが攻撃一辺倒に傾倒させていったと言っても、あながち過言ではないだろう。

 

 

カァンカァンカァン―――――

 

 

提督「ハアアアアアッ!!」

 

雪風「ハイッ!!」

 

 

バキイイィィィ―――――ッ

 

 

提督「―――――!?」

 

直人の右の剣が、雪風のトンファーに弾き飛ばされ――――砕けた。

 

激しい打ち合いを重ねた剣が遂にその強度の限界に達したのである。

 

雪風「セイヤッ!!」

 

 

ズドムッ―――

 

 

提督「カハッ――――」

 

更に一瞬の虚を衝き、雪風の一撃が鳩尾を直撃する――――

 

 

ザワザワッ―――

 

 

提督「う・・・ぐっ―――!」ドサッ

 

直人が―――片膝を突いた。

 

雪風「・・・私の勝ちですね、しれぇ?」

 

左のトンファーを突き付けて雪風が言う。

 

提督「あぁ―――そして、私の敗北だ。雪風。」

 

片膝を突かされ、片一方の剣を砕かれておいて、挽回の余地などどこにもなかった―――否、敢えてそれをしなかった。

 

 

青葉「か―――勝ったのは、雪風・矢矧ペアです! 大金星です!!」

 

龍田「あらあら大変ねぇ。」

 

局長「ホウ・・・アノ紀伊直人モ負ケルコトハアルトミエル。」

 

 

金剛「ウ・・・ソ・・・!?」

 

※マジです。

 

陽炎「やったじゃない雪風!」

 

舞風「ほえぇ・・・ホントに何とかなっちゃった・・・。」

 

黒潮「ホンマ凄い子やなぁ。」

 

同型艦にまで驚かれる大金星である。

 

神通「やりましたね、雪風さん・・・!」

 

北上「へぇ~、流石幸運艦だねぇ~。」

 

木曽「北上姉さんは、あれ運任せだと思うか?」

 

北上「んー、どっちかっていうと、運に全振りしている、と言うか・・・上手く言えないけど、運に全てを委ねている感じじゃない、かな。」

 

と評価する嚮導艦北上。一方で――――

 

伊勢「自分の土俵の上だった筈だけど・・・そんな事もあるんだね。」

 

日向「まぁ、完璧な奴と言うのもいないものさ。」

 

天龍「そうだな―――。」

 

そう、一応はフェアな土俵の上だった筈なのである。実際直人は今回も非凡ならざる才覚を発揮して矢矧をその一撃の下に叩き伏せたではないか。その直人を以てして、雪風一人に勝つ事が出来なかった点に驚きを隠せない者もいたのだ。

 

「でも意外だねぇ、往生際悪いと思ってたけど。」

 

と話すのは二度手合わせした川内さん。確かに前回エキシビションマッチをやった際にも、空に逃れた川内に数度対空斬撃で撃墜を試みて逆に失敗した前科はある。(最もこの時は着地した川内に隙を与えず連撃でK.Oしているが)

 

3人(いや、まぁ、実際往生際の悪さは際立ってるから否定出来ない。)

 

確かに(色々と)往生際は悪い直人である。しかしこの思われ様である。

 

 

提督「やるじゃぁないか、雪風。ゲホッゲホッ・・・」

 

雪風「ハイッ! ありがとうございます、大丈夫ですか?」

 

提督「あぁ、まぁな。少しは加減して欲しかったな―――ふぅ。」

 

そう言ってなんとか呼吸を整えて立ち上がる直人であった。

 

 

さて、ここからは当然ながら順に一人ずつ演習をやっていく(これ実は端的に言って直人にとっても結構ハードなトレーニングだったりする)訳なのだが、今回は前回と比較し善戦した艦娘がそこそこいたようだ。

 

 

提督(う~む、やはりこういう武器は、慣れない。)

 

 

カンカンカンカァン―――――

 

 

睦月「まだまだ、ここからなのね!!」

 

 

カァーーン

 

 

睦月の得物は薙刀(なぎなた)、大雑把に言えば幅の広い脇差に長い柄を付けた様な武器だ。戦国時代に於いて、女性の武器と言えばこの薙刀だ。これに対し直人は異種格闘技戦の如き真似はせず、薙刀と同じ長柄武器である十文字槍を使っていた。

 

十文字槍は一般的な槍の派生形で、日本では枝物と呼ばれる槍の一種、普通の槍の穂、その付け根に長さ5cm未満の短い刃が交差する様についている形のものを指す。大河ドラマ『真田丸』他の真田信繁(幸村)を題材にしたゲームやドラマなどで幸村が持つ武器として頻繁に登場する事から馴染みのある方もいるだろう。

 

提督(睦月め、何処で練習していた?)

 

と、嬉しい悲鳴ではあるがそう思った。

 

睦月(如月ちゃんに特訓付けて貰ったのが活きたにゃし!)

 

まさかの原因は如月だった様子。

 

提督(なんにせよ、まだ、甘い―――!)

 

直人は自身から見て左に薙ぎ払って来た睦月の一撃を素早く払うと、構え直す時の勢いを利用して少し短めに握り直してから距離を詰める。

 

睦月「えっ――――!?」ビクッ

 

気付けば、睦月の首元には槍の穂先があった。

 

補足しておくが、直人は長柄武器は“慣れない”が“使えない”訳ではない。先端が極端に重くなければ、の話であるが。そしてその気になれば今の様に、槍を使いながら縮地を用いる事は造作もない事なのである。

 

提督「長柄武器を使うのであれば、柄を握り直しながら戦う事を覚えんとな。同じ長さで戦っていたのでは、間を読まれやすい。」

 

ここで言う“間”とは、攻撃間隔と間合いの二つを指している。相手にして見ればリズムが一定なら崩しやすく、間合いを悟れたならば付け入る隙は十分あるからだ。

 

睦月「が、頑張るのね・・・。」

 

提督「宜しい、精進を怠らぬ事が武術の肝要な所だからな。」

 

とはいえ、小柄な体で長柄武器を扱うのだからその点は褒めなければならないだろう。

 

 

この睦月の後を受けた如月は睦月をやや上回る奮戦ぶりを見せたが敢え無く退場、長月の番となった。この長月は前回素手で直人に僅差で敗れた(と言うのは直人自身が疲弊していたのも要因の一つ)為、今回リクエストしたのが「鉤(かぎ)」と言う武器である。

 

分かりやすく言えばボトムズ(筆者は知らない)やガンダムシリーズにも出てくる、アイアンクローと呼ばれるロボットの手の甲に付ける鉤爪を模した武器を、人間サイズにリサイズしたものだ。

 

ここで一つ付け加えさせて頂くが、直人は要望に応じて一々武器を即製錬金で作っている訳だが、艦娘達には手品師扱いされている。(好都合ではある。)

 

 

長月「はああああっ!!」

 

提督「はぁぁぁ―――っ!」

 

 

カンカンコンカンカン・・・

 

 

激しい応酬が繰り広げられる様はカンフー映画かなんかかと言わんばかりの迫力があった、と後にある艦娘は語ったと言うが、それほどの打ち合いであった事はまず間違いない。

 

この時直人が用いたのは小太刀2本であった。直人はこれを逆向きに持つ事で、鉤を器用に受け止めていった。

 

 

なおものの数分しか持たず弾かれた隙を突かれて小太刀を首筋に突き付けられ退場。(現実は非情であった)

 

因みに長月の敗因は、そもそも慣れない武器だったのと、絶対的な体力が欠けていた為だった。(と言っても直人が使ったのは小太刀だった為そう重い一撃を加えられる訳ではない筈なのだが、その辺はやはり体格差か。)

 

 

さて、何か思いついていた金剛である。というのは――――

 

金剛「さぁ、行くデス!」ヒュッ

 

直人が目を見張ったのはその前回との差だ。自信満面のその手に握られたのは、なんと睦月や如月と同じ薙刀だった。

 

二人との体格差から見ても、得物の大きさも分相応に見えた。

 

提督「へぇ、学習はしたらしい。」ヒュヒュヒュヒュッ、ザッ

 

直人は槍を回して威圧した後構えた。やはり十文字槍である。

 

因みに十文字槍などの枝物の槍は、馬上での扱いが難しい為熟練者のみが扱う槍であったらしい。その枝分かれした刃先で馬を引っかけてしまいがちだったとか。但し馬を扱わない侍の場合は恐らくそうした枝物も良く使った事だろう。足軽には普通の槍が『お貸し槍』として支給されたようなのでそう言ったものは使われない。

 

金剛「しないと思われてたナラ、心外デスッ!!」ダッ

 

提督「思ってねぇっ!」ダッ

 

相前後して両者突進する。が、金剛が先だった為直人は縮地を使ってタイミングを合わせつつリズムを取っての突進である。

 

こうした戦いにはリズムというものがある。近接戦闘では自分のリズムを崩された方が不利となる訳だ。

 

 

カアアァァァァーーーン

 

 

提督「へぇ、どんなものかと思えば、初めてとは思えんな。」

 

金剛「そうデス、ネッ!!」

 

次の瞬間には弾き飛ばされる直人、長柄武器に慣れていない弱みが出た結果になる。

 

提督「くっ・・・!」

 

急いで構え直す直人。

 

しかし既に金剛は次の挙動に出ていた。

 

提督(速い―――ッ!)

 

直人は間一髪のところで咄嗟に防御姿勢を取る。

 

 

コオオォォォーーーン

 

 

提督(へぇ・・・やるじゃん。)

 

直人は内心舌を巻いたが、同時に加減のタガが外れた。

 

金剛「どうデスッ!」

 

提督「あぁ、正直驚いた、ではこんどは、こちらの番だ!」

 

そうして直人はその受け止めた姿勢から無理矢理一気に槍を振り抜いた。当然金剛は吹き飛ばされるが、その金剛を追いかける形で直人が動く。

 

提督「でやあああああああ!!」ダッ

 

 

ズドォッ

 

 

金剛「カハッ――――!!!」

 

メリッとめり込むような音がしたような気がするほど強烈な一撃が、金剛の鳩尾に入った。これにはさしもの金剛もたまらずぶっ倒れた。

 

提督「ふぅ。」シュタッ

 

加減が無くなるとすぐこれである。

 

一同「「――――――。」」

 

一同唖然。

 

金剛「ゲホッゲホッ―――」

 

そして苦しそうにむせる金剛であった。

 

提督「あっ、ごめん、加減忘れてた。」

 

まぁ、こんな性分である。

 

 

 

とまぁこのような具合で、各々一応進歩は見られた。が、所詮その程度、と言う艦娘が大半であり、前回直人を窮地に陥れた時雨や川内などの艦娘達も今回は軽く捻られた。

 

しかしながら金剛の時の一例に見られるように、加減してはかえって危険な場合もあり、そうした事が理由で時雨などの艦娘は蹴散らされた、と言っても無理からぬ表現だったろう。

 

 

 

4月3日、直人は造兵廠ドック前から久々に20m三胴内火艇に乗り、護衛に木曽と叢雲を選んでテニアン島へ向かった。と言っても凌波性は悪い為牽引して貰ったが。

 

ところで、テニアン島はサイパンから海を隔てて僅か8kmの位置にある島だ。

 

元々は先住民族の島だったがスペイン植民地となってからグァムに島民が強制移住させられたため、野生化した家畜達が住む島となり、その後ドイツに売却された後は時折ハンターがやって来ると言う状態、日本統治時代にやっと本格開発がスタートし太平洋戦争の後アメリカ領となった。

 

2040年代、次々出現していた深海棲艦の拠点『棲地』にサイパンがなった煽りを受けて、と言うよりは巻き添えを食らう形でまとめて棲地化、アメリカは半ば領有を放棄する形で身を退いていたが、ここには今、横鎮近衛艦隊の捕虜収容所が完成していた。

 

 

 

~ラム・ラムビーチ~

 

捕虜収容所はラム・ラムビーチの奥にある。この場所も棲地化と交戦の影響(この辺りは北マリアナ戦時、呉鎮近衛艦隊が大規模な戦闘を行っていた)を受けていたが、横鎮近衛艦隊造兵廠の設営隊も協力しての突貫工事で早くも簡単な揚陸程度なら出来る様になっていた。

 

9時40分、直人はラム・ラムビーチに設けられた桟橋から収容所に向かった。

 

 

9時50分 テニアン島捕虜収容所

 

提督「どうだアルティ、捕虜達は大人しくしているかい?」

 

収容所を視察しながら直人はここを管轄するアルティメイトストームに問うた。

 

アルティ「今はまだ。どうやら自分が助けられると思わなかった者が多いようで、どちらかと言えば茫然自失と言う方が近いかも知れん。」

 

提督「成程?」

 

確かにこれまで、人間が深海棲艦を助けた等と言う話はつとに聞き及ばぬところだ。それを考えれば可笑しくはない反応だろう。

 

アルティ「それにしても、あの時横鎮の食堂で見かけた青年士官のような出で立ちをした男が、よもやここの提督だとはな。艦娘共の提督と言うのは、大体そんなものなのか?」

 

提督「んー、若いのもいりゃぁ壮年の者もいるし、男も居りゃ女もいる。風の噂じゃまだ幼いのに提督になったとか犬が提督になった*1とか、眉唾だろと言う様な噂まであるし。」

 

アルティ「い、犬が・・・か・・・。」

 

提督「なんでも二足歩行で歩くし人の言葉を介すらしい。眉唾だろうと言われてるがね。」

 

アルティ「それは流石にそうだろう・・・犬の艦隊に私の同族が蹴散らされていると思うと情けないとは思うが・・・。」

 

提督「まぁ艦娘艦隊は提督が前線に来る訳じゃないんだがね。」

 

アルティ「その様だな。それはそうと、この短期間にここまで充実した設備を整えてくれた、感謝に堪えない。」

 

アルティは素直にその事を謝した。

 

提督「大概は本土から送って貰ったモノばかりなんだがね。今局長が海水ろ過装置を設置してくれていると思うから、それが出来るまで真水の安定供給は待っててくれ。」

 

アルティ「・・・紀伊提督。」

 

提督「何かな?」

 

アルティメイトストームは、ここに来てから思っていた事を口にする。

 

アルティ「貴官は、どうして我々、元来敵である筈の深海棲艦に、ここまでの事をしてくれるんだ?」

 

これに対し直人はこう答えた。

 

提督「“敵”とか“味方”とか言うのは、結局のところ結果的な形態として言われるものだ。そして“その結果に至る”までの過程には、得てして“錯誤”が存在する。これは我々人類と君達深海棲艦の双方に言える事だ。」

 

アルティ「錯誤?」

 

提督「そうだ、今でこそ我々と君達の関係は最悪だが、そのおかげで光明は見えるかもしれないと、俺は考え始めているんだ。“和平”への一筋の光がね。」

 

アルティ「和平―――。」

 

その言葉を、アルティは噛み締めるように言う。

 

提督「世界の人口は大幅に減ってしまった、特に島嶼部では全滅してしまい、人々の居住に耐えない島々も多くある。しかし深海棲艦ならそこに居留する事も出来る。そうして深海棲艦に、少なくとも安全に暮らせる様な場所を確保する。」

 

アルティは相槌を打ってその話を聞いた。

 

提督「そうすれば―――思い違いだったら謝るが、もし深海棲艦が陸地を求めて戦っているとするならば、その希望が叶えられる訳だ。確かに人間は利己的な所もあるが、それ位融通は効くと俺は思うがね。」

 

アルティ「・・・提督の慧眼には恐れ入るな。」

 

提督「褒めても何も出ないよ。ただ、自分達に人間と同等の権利を保障させる、と言うことであるならば、それには長い時間が必要になるだろう。我々は既に、お互い血を流し過ぎてしまった。それも含めて、怨恨の想念が消えるには、何十年となくかかる。粘り強さは求められるだろうね、艦娘達でさえ人権的に苦労させられている所はあるからな。」

 

実際のところ直人の言う事は、これまでにも例のある事である。彼はその知り得た事実を伝えているだけである訳で、単に物知りであるだけである。しかしその言葉は、アルティを感服させるに足るだけの重みを持っていた。

 

“歴史”とは、単なる記録ではない。そこには、人々が汲み取るべき教訓が数多く詰め込まれているのだ。その事自体が、彼の言葉に重みを持たせているのである。

 

アルティ「・・・私達は、人間達に権利を認めさせたい訳ではない。単に日の当たる場所で、営みを送りたいだけだ。」

 

提督「―――――!」

 

それは、直人が初めて聞いた、深海棲艦の本音であり、また総意であった。

 

アルティ「では私はこれにて。捕虜の統率は、まだ十全とは言い難い。この中途半端な今の時期は少々鋭敏な所もある、気を付けて。」

 

提督「―――分かった、ありがとう。」

 

直人は、それ以上何も聞かずその場を立ち去ったのであった。

 

 

アルティ(やれやれ、私とした事が少し喋り過ぎた様だ・・・。)

 

 

~ 捕虜収容所~桟橋 小路~

 

提督「・・・木曽、叢雲。」

 

木曽「ん?」

 

叢雲「―――何?」

 

帰りの道すがら直人はこんな事を聞く。

 

提督「お前達は俺のこのやり方を、どう思う?」

 

その声は心なしか、どこか少し躊躇いがちであった。

 

叢雲「甘い――――とは思うわ。なんであれ、私達にとって不倶戴天の敵である事に、変わりはないもの。」

 

木曽「確かに。この意識を変える事は、並大抵じゃねぇとは思うぞ。だが俺は悪くねぇとは思う。少なくともどうやら、深海棲艦にも戦いを望まない勢力がいる事は、確からしいからな。」

 

提督「ほう、木曽はそう思うか?」

 

木曽「今の深海棲艦のやり口は実力的の一語に尽きる。そんな好戦的な連中から、好き好んでではないにしろ逃れてくる深海棲艦がいる、と言うのが証明だろう?」

 

木曽の言う事は正鵠を射ていた。少なくとも、一枚岩の団結で固く結ばれている訳ではないのは事実であろう事について、直人自身も認めざるを得ない所はある。

 

提督「それはその通りだ。だからこそ、そうした立場の弱い者達は誰かに守って貰わなければならない。そして身内に助けを求めれば命が危ないと踏んだからこそ、アルティもアラスカも人間の元に逃れたのだろうよ?」

 

木曽「そうだな・・・。」

 

叢雲「ほんっと、お人好しね・・・。」

 

提督「滅多に言われんがね、お褒めに与り恐縮だな。」

 

叢雲「ほ、褒めてなんかないわよ・・・。」

 

提督「はいはい。」

 

こういう場合は飄々としている直人であった。

 

 

この時、彼らはこれ以上は語らなかった。

 

アルティも、あの一言だけしか言わなかった。

 

この事が、直人に尚暫く、不毛な戦いをさせる事になる。だが、直人のこの措置が、実はその後の歴史に於いて大きな転換点であった事を知る者は少ない。何より彼らの得た知識やデータ、端的に言ってしまえばその『経験』は、その後の歴史に大きな変化を与えたのだ。これがなければ人類は更に5年以上、深海との戦争を続ける羽目に陥っていただろう。

 

しかし知られていないのも無理はない、彼らは秘密の艦隊であったのだから。提督たる紀伊直人も、戦い終わった後のそうした傾向は承知の上であった事だろう。

 

 

 

4月6日10時31分 中央棟1F・無線室

 

大淀(来ましたか・・・。)フゥ

 

一息ついて思う大淀。この日丁度暗号コードが切り替わる日だった為解読に手間取っていたのだ。

 

そう、今回入電したのはサイパン司令部宛の函数暗号である。

 

 

~中央棟2F・提督執務室~

 

大淀「提督、大本営より受電。」

 

提督「―――読め。」

 

直人は姿勢を正し言った。

 

大淀「ハッ―――『現在、大本営では次期作戦の開始を準備中である。ついては作戦の当該海域に対する事前攻撃作戦について、横鎮近衛艦隊にこれを打診したい。作戦開始時期は今月中旬、攻撃目標は、豪州北西部―――ダーウィン棲地』以上です。」

 

提督「・・・ほう。」

 

両肘立てて手を組み、顎を乗せた状態で直人は声を漏らす。

 

金剛「来ましたカ・・・。」

 

大淀「作戦の詳細について資料もあります。」

 

提督「後で見させて貰おう。それにしても棲地攻撃か―――随分頼られているな、金剛よ。」

 

と悪戯っぽく言う直人に金剛はいう。

 

金剛「あんまり買い被られても困りマスネ、提督ゥ?」

 

これは提督に向けての労いも兼ねた言葉だった。

 

提督「うむ、全くそうだ。しかし今回は言葉を選んだな。」

 

大淀「送り主は、山本軍令部総長です。」

 

提督「そうか、道理で。」

 

幹部会からなら命令文になっただろう。しかし今回は打診の知らせであった。

 

提督「―――うん、大本営に返電、『打診の件について、綿密な検討の後御返事する』と伝えろ。」

 

大淀「分かりました。」

 

それを聞いた大淀は立ち去った。

 

金剛「やらないのデース?」

 

提督「そうじゃない、確かあそこには、超兵器級の在泊情報が複数あった筈だからな。」

 

これは青葉からの情報である。また情報料を取られてしまった代物だが、まぁ役に立ったのだから今回は良しと言う事になるだろう。

 

金剛「ソレハ・・・精査が必要、デスネ。」

 

提督「そう言う事。あれこれ調べてみよう、事前準備は入念にな。」

 

金剛「OKデース!」

 

いつもの通り意気揚々と答える金剛であった。今回も全く、気負っている感じは見せなかったのであった。

 

提督「金剛、青葉に連絡を取ってくれい。」

 

金剛「oh? またなんでデス?」

 

と金剛が言うと直人は言った。

 

提督「青葉のネットワークを使う。あと龍田も呼んでくれぃ。」

 

金剛「了解デース! 青葉とは直接トークするデース?」

 

提督「勿論だ、こう言う事は直接、ね。」

 

まぁ、そうなるな。

 

 

数分後、青葉が横須賀から通信を寄越してきた。どうやら新聞の編集作業中だったらしい。

 

青葉「ポート・ダーウィン棲地の情報ですかぁ。」

 

提督「そう、敵の戦力についての情報が知りたい。何も詳細じゃなくていい、口コミの類の集約で構わないから、青葉の持ってるネットワークを使って集めて欲しいんだ。」

 

青葉「情報料はお高く付きますよぉ?」

 

と言う青葉の反応が分かり切ってた直人は返す刀で言う。

 

提督「間宮のVIPか?」

 

青葉「まぁそうですねぇ~、でも今回はちょっと足りませんかねぇ。」

 

提督「・・・えぇ。」(´・ω・`)

 

流石に困惑した。普通間宮のVIPと言えば艦娘達は小躍りして喜ぶようなレベルなのである。それを毎度毎度貰っておいてこれである。

 

提督「―――で、ご希望は?」

 

青葉「“殊勲賞”です、司令官。」

 

提督「・・・殊勲賞―――。」

 

 

『殊勲賞』とは―――

 

大きな功績を挙げたと提督が判断した艦娘に対して受勲を行う為に、割と頻繁に大本営が送ってくる勲章である。

 

言ってしまえば論功行賞における、勲功一番の者に送られる勲章だ。

 

これまで登場しなかった事から分かる通り、直人はこれを使用していない。だが大本営は定期的にこれを送り付けて来る為不良在庫が埃を被っている有様だったのだ。(一番古いものは着任時に初動で使う用に渡されたものから全て残っている)

 

一方で他の鎮守府では使っていると言うから、単に直人が存在を忘れていただけの事だろう。

 

 

提督「―――あぁ、あれか。使わんから忘れていた。」

 

青葉「て、提督・・・殊勲賞は使ってなかったんですか。」

 

提督「んー、まぁな。」

 

青葉「水戸嶋提督は使ってましたよ?」

 

提督「なんでお前が知ってんの!?」

 

まぁ当然の事ながらこうなる。

 

青葉「いやぁ例の一件(※)で忍び込んだ際に気付かれてまして、それ以来のお付き合いです。」(∀`*ゞ)テヘッ

※序章11章参照

 

提督「そういやそんな事も・・・お前マジか。」

 

割と機密性に関わる問題である。

 

青葉「横鎮と呉鎮の協力は取り付けてあります!」

 

提督「お前マジか・・・ならいいよもう。」

 

抜け目の無さに諦めた直人であった。

 

提督「なら殊勲賞も付けてやる、それでいいな?」

 

青葉「はい! ありがとうございます!」

 

こうしてギャラ問題に決着がついて青葉とは話がついた、続いて龍田との話し合いが待っていた訳だが。

 

 

龍田「敵棲地偵察、ねぇ。」

 

呼ばれた『第八特務戦隊(通称:八特)』旗艦龍田は、それを聞いて考え込んだ。手には作戦の資料が握られている。

 

龍田「準備期間が短くなぁい?」

 

これは調査をする事に関してだ。

 

提督「無論俺も可能な限り手は尽くす、八特のほうで何とかやって貰いたい。」

 

確かに、あと2週間もないような作戦の前に、『情報収集』・『事前攻撃』と言う二つの事をやらなければならない。となれば、準備は早々に実行しなくてはならない事になる訳で、しかもあまり時間はかけられないと言う事になる。

 

龍田「隠密偵察って言う事になると、私の戦隊では川内ちゃんかしらねぇ。」

 

実はしれっと八特に編入されていた川内さんである。

 

提督「まぁ、あいつは確かにそうだな。」

 

直人も認めるその隠密行動能力は、川内の持つ隠密戦装備に裏打ちされてより確たるものとなっている。光学迷彩はどの界隈でも強い。(鋼鉄シリーズを除く)

 

龍田「空輸してくれないかしらぁ?」

 

提督「・・・マジでぇ?」

 

苦り切った顔で渋る直人。今回調査を行う場所も場所である為空輸にしても降ろす場所がリンガしかないのだ。

 

 

ここで今回目標とされたポート・ダーウィンについて説明しよう。

 

このダーウィン港は、豪州(オーストラリア)北部の港湾の一つだ。日本軍の蘭印攻勢たけなわの時期、側面支援中の南雲一航艦から空母艦載機が、大挙してここを空襲した事がある。

 

日本軍はここが連合軍の重要根拠地であると見做していたのだが実際にはそんな事はなく、閑散とした港町にちょっとした軍事施設がある程度だった。(つまりただの補給港)

駐屯兵力もさして多くはなかったがほぼ奇襲に近かったこともありダーウィンにいた連合軍は踏んだり蹴ったりの大損害を被っている。

 

 

これだけか、と聞かれるとこれだけである。本当に何もない訳で。

 

ただかつてのサイパンと同じくここも棲地化しており、名実ともに一大根拠地と化している。

 

 

提督「しかし“バルバロッサ”は出せんぞ?」

 

バルバロッサ―――サーブ340B改が元々短距離機だったものを改造して出来たものであることは周知の事と思うが、それでもリンガには届かない。パラオに一度降ろして給油を行ってからになる為、どうしてもかなりの時間がかかってしまう。

 

龍田「えぇ、承知しているわ。でも連山改なら、行けるんじゃなぁい?」

 

提督「・・・。」

 

全くぐうの音も出ない直人。連山(改)ならフェリー飛行の場合航続距離にして3500km(推定)を優に超えるからだ。

 

龍田「可能な限り手は尽くしてくれるんでしょう?」

 

提督「―――自分で言い出した事だ、曲げはせんよ。それについては了解した。すぐに手筈を。」

 

龍田「分かったわぁ~♪」

 

そう言って龍田が去った後、直人もその手筈を整えるため執務室を後にするのだった。

 

 

大淀「あっ! また逃げられた!」

 

金剛「ポートダーウィン偵察の手筈を整えるんだそうデース。」(苦笑)

 

大淀「あの人は・・・。」

 

完全に虚を衝かれた大淀であった。

 

 

 

川内が案外暇していた事もあって手筈はすぐに整った。

 

直人も20分後には飛行場への連山改の展開を終えていた事もあり、川内は早速笹部機の連山改に搭乗し、リンガへと飛び立っていったのだった―――。

 

 

 

川内が戻ったのは4月11日の事だった、偵察に3日、空輸に1日づつを費やしたものの、その時になると青葉のネットワークからも情報が次々と寄せられてきたため、川内帰着を待って作戦会議と相成った次第である。

 

 

 

4月11日16時20分 食堂棟2F・大会議室

 

提督「・・・ふむ?」

 

すぐに直人は情報の不整合に気付いた。

 

青葉の情報は全ての情報を総合して出されたものなので確度はそこそこにある。川内も目視と無電傍受で偵察を行っている為これも相当な確度である。

 

しかし青葉からのそれは超兵器級『複数』の所在を示しているのに、川内のそれは超兵器級『1隻』の所在を示していたのである。

 

川内「あれ・・・?」

 

川内もその事に気付く。

 

大淀「青葉さんの情報が、正確さを欠いた、と言う事でしょうか・・・?」

 

提督「―――確かに、多方面からの報告を総合すると戦果が過大報告されると言う事はよくある事だ・・・しかし、青葉の情報は写真付きだ、それもつい最近のな。」

 

川内「となると、移動していた可能性が・・・?」

 

提督「有り得ん事ではないな。総旗艦幕僚の意見を聞こう。」

 

と言って発言を促した相手が、当の幕僚である霧島と榛名である。

 

霧島「私の考える所では、ポートダーウィンの超兵器は周辺に行動中のものと考えます。無線を封止していた可能性は否定出来ません。」

 

一航艦参謀を兼任している総旗艦参謀の霧島に対し、総旗艦兼一水打群副官榛名の意見はこうであった。

 

榛名「私は、ポートダーウィンの超兵器は一時的にここを留守にしているものと推測します。仕掛けるなら今しかないと思います。」

 

提督「ふむ・・・。」

 

二人の主張に共通するのは、『居ないのは一時的なものでいずれ戻ってくる』と言う事だ。

 

提督「初春の意見はどうか?」

 

第一艦隊参謀を務める初春はいう。直人の要請で日程を繰り上げながら練習航海を終えた、その足での参加だ。

 

初春「ふぅむ・・・これは、一つの“紛れ”やもしれぬ。」

 

提督「―――見せかけ、と言う事か。」

 

初春「左様、表面上は複数いる様にの。」

 

提督「それも確かにあり得る話だ。筑摩はどう思う?」

 

第一水上打撃群で金剛の参謀を務めている筑摩も進言する。

 

筑摩「私は今現在も、ポートダーウィンに敵超兵器が複数隻いる可能性を提唱します。今の初春さんとは逆の方法になりますが、詳細な所在などについては無線等で欺瞞しているのではないでしょうか。」

 

つまり、存在を仄めかせた上で港には1隻しかいないように見せかけておいて、実際には必ず複数隻がいる、というやり口だ。そうすると敵の指揮官は相当悪辣かつ巧妙である。

 

提督「だとすればまんまと出し抜かれたことになるな、川内は。」

 

川内「私も目立たない距離から見て来ただけだから・・・反論出来ないのが辛い。」ガクリ

 

肩を落とした川内は、偵察時しっかり高倍率で夜間も使える大型双眼鏡を持って行った筈なのだ。その上でこの始末なのだから敵指揮官は更に始末に追えない。

 

提督「なに、お前の責任じゃないさ。しかしどちらを信用したものか・・・。」

 

直人は思考をフルに使って考える。実のところ今回の作戦は、直人を消極的にさせるのには十分だった。

 

敵超兵器級が複数いる可能性、その超兵器級が周辺で活動している可能性、そうした場合の包囲殲滅の危険性。これだけでも十分すぎる位だ。

 

川内「でも、大規模な棲地、という程変色海域は広くなかったと思う。」

 

提督「・・・ふむ?」

 

川内「実は、航空偵察もやってきたんだ―――」

 

提督「もっと早く言って!」(懇願)

 

川内「あ、うん・・・ごめん。」

 

変色海域というのは、敵棲地の影響を受けて汚染が進行した海域の事だ。大抵の場合赤褐色に変色する。その範囲は汚染度合いによって拡大する傾向がある、色の濃淡も汚染の度合いに応じて変化する為、それらのデータは敵棲地の規模を測る指標となるのだ。

 

そしてその汚染度合いは、駐屯勢力が大きければ進行が早まる、という推論が存在し、また海洋汚染などの深海による汚染は故意に制御可能であるという推測もある。無論憶測の域は全く出ないのではあるが。

 

提督「で、どの程度なんだ?」

 

川内「大凡ポートダーウィンを中心に半径約14km程度、どっちかって言うと補給基地って言う規模じゃないかな。」

 

提督「グァムは40kmだった、とすると・・・。」

 

グァム棲地攻撃のさいこの変色海域が話題に上らなかったのは、その範囲がサイパンまでを覆うには余りにも小さかった事と、そこに至る前に直人が遠距離砲撃で勝負を決めてしまった事が大きい。

 

提督「補給港か・・・前進基地にしては規模が小さすぎるからな・・・。」

 

しかしながら、『超兵器級に対する補給港』なら意味合いは全く違ってくる訳で、それが為に直人は思案していた。

 

霧島「やはり、危険ではないでしょうか・・・。」

 

筑摩「私もそう思います。」

 

初春「いや、そう思わせる事こそが敵の狙い目じゃ。」

 

榛名「そうです、今しか好機はありません!」

 

金剛「私は――――」

 

話を聞いていた金剛が、口を開いた。

 

金剛「行くべき、だと思いマース。」

 

艦娘達「―――――!!」

 

提督「ほう――――」

 

直人が興味を示す。

 

金剛「敵は依然、積極攻勢を渋っているようデス、ライン再構築なら超兵器級をチョイスして引き抜き、他戦線へ転用しようとする筈ネ。となれば、敵行動は欺瞞、例え複数いたとして、攻撃した場合退避を図る可能性が考えられるネ。」

 

提督「成程、即ち牽制しているだけで、消耗を恐れて撃っては来ないという訳か。」

 

金剛「イグザクトリー!」

 

提督「うむ、青葉の定期レポとも整合性の十分ある話だ。川内はどう思う?」

 

川内「言われてみれば確かに、という感じだね。哨戒が意外と厳重でその割に戦力は大々的にいる様に見えなかったから、その線は強いと思う。」

 

提督「宜しい、では私は実行に賛成する。」

 

霧島・筑摩「――――!」

 

その発言に驚いたのは反対派幕僚である。

 

霧島「ですが、大損害が予想されます! それでも強行なさると言うのですか!?」

 

提督「今まで損害を考慮した事があったか?」

 

霧島「いえ、ですが司令―――――」

 

提督「多数決だ、霧島。」

 

霧島「―――!!」

 

その直人の一言は有無を言わせぬ強いものだった。

 

提督「最も民主主義的な決定だ、異存はあるまいな?」

 

筑摩「・・・。」

 

霧島「・・・はい、ありません。」

 

提督「結構だ。慎重も度が過ぎれば逆効果である事を厳に心得ることだ。」

 

会議は、直人の決断により参加の線で纏まった。この強引さは直人の多少のリスクを計算に入れる所から来ていた。そう、この程度のリスクは直人にとっては“多少”なのであり、直人はこれを計算に織り込みプランを組むつもりだった。

 

 

こうして、作戦への参加要請受理が正式に決定した。この場に空母部隊(一航艦)の幕僚が参謀の霧島以外いないのは、彼女らが航空戦部隊であって艦隊戦時の実働部隊ではないからだ。

 

その夜、大本営への打電文は直ちに函数暗号によって打電され、大本営中枢の手に渡ったのであった。

 

 

 

4月13日6時13分 サイパン司令部前岸壁

 

打診の受理から38時間程が経過した4月13日、鈴谷への物資・食料などの積み込みが完了した。作戦案の練り上げも完了し、乗船の序列発表も完了している。

 

鳳翔「提督・・・。」

 

出港を前に岸壁から海を眺める直人に、鳳翔は躊躇いがちに声をかけた。

 

提督「鳳翔。留守を頼む。」

 

直人は十数分前、乗船序列発表の時と同じ事を振り返って言った。

 

提督「今は司令部にも余力がない、あなたしか、この責任重大な任務を―――母港を守る任せられる人がいないのです。どうか・・・お願いします。」

 

鳳翔「―――。」

 

直人のこの言葉に、鳳翔はひとしきり思案した後、言った。

 

鳳翔「提督は、いつも私を買い被られます―――ですが、やりましょう。提督や、皆さんのお帰りを、一日千秋の想いで、お待ち申し上げております。」

 

鳳翔のその力強い言葉に、直人は安心した。その十数分前には「冗談ですよね?」と視線で強く訴えかけて来ていたからだ。

 

提督「ありがとうございます――――必ず無事に帰ります。今回は少し、長引くやもしれません、2週間半で戻るつもりですけどね。」

 

鳳翔「はい、お布団を温めて、お待ちしております。」

 

提督「そ、それは色々気まずくなるから不味い、かな・・・?」

 

鳳翔「ふふっ、そうでしたわね。」

 

 

そんな会話の後、直人は全艦娘の乗船を確認し、足早にサイパンを出立していったのだった。

 

目指す先は、ひとまずの寄港地と協力を求めたタウイタウイ泊地である。

 

 

 

様々な思惑が交錯し、一つの戦いが今、幕を開こうとしている。それは直人達にとって、初となる長期戦であった。

 

2053年、春の風吹く4月中旬、彼らは再び居慣れた島を離れ、遠き戦地へと赴いたのである。何とも知れぬ影を打ち払うべく、彼らは白波を立てて南へと下っていくのだった――――。

*1
ピクシブの作品に「柴ドッグ提督シリーズ」と言う末武(まつたけ)氏作の艦これ二次創作があるので、気になる方は見てみよう。直人の言う犬の提督の噂はこの作品の提督の事を指す。




艦娘ファイルNo.93
長良型軽巡洋艦 阿武隈

装備1:14cm単装砲

アンダマン海制圧戦の後のドロップ判定で着任した艦娘。
特異点の無い凡庸な軽巡艦娘だが、それ故に司令部防備強化を図ろうと考えていた直人に槍玉に挙げられてしまう形になり、司令部防備艦隊に配属されてしまった。
序列は夕張単独であった第十五戦隊の二番艦である。


艦娘ファイルNo.94
夕雲型駆逐艦 夕雲

装備1:12.7cm連装砲
装備2:25mm連装機銃

アンダマン海制圧戦の後、阿武隈と共に着任した艦娘。
こちらも特異点はなく、今回の作戦では着任して間がないと言う事で司令部残留を告げられている。


艦娘ファイルNo.95
阿賀野型軽巡洋艦 矢矧

装備1:15.2cm連装砲
装備2:20.3cm連装砲(初期では8cm高角砲)
装備3:22号対水上電探(初期では無し)
装備EX:斬艦刀(天龍刀モデル)(初期では無し)

この作戦から二水戦旗艦を任ぜられた新鋭艦。
阿賀野からの交代が早いのは二水戦は必ず新型艦を配備するという原則に則った事も一つの要因だが、その技量と度胸を買っての事である。
またしても大型建造をやってハズレを出した結果ではあったが、異様に剣の技量に優れると言う特異点を持ち、それ故急ぎで天龍の被り艤装から刀を取り分け、矢矧に合わせて改修したものを装備させてある。この措置は水雷戦隊は意外と敵陣突入が多い事に依る。
無論いきなり精鋭水雷戦隊の旗艦を務められるだけの器量と実力を持ち合わせている事は、言を待たないだろう。
なお矢矧に関しては初期装備ではなく鈴谷乗船後、即ち換装された実戦用装備に準拠している。


~司令部ゲストシップ紹介~

司令部ゲストシップNo.4
アルティメイトストーム級超兵器級深海棲艦 アルティメイトストーム

日本に亡命してきた超兵器級深海棲艦で、アルティメイトストームクラスのオリジナル。名前が長い為『アルティ』の通称で通っている。
横鎮預かりの頃は周囲から好奇の目で見られる事が多く、それ故にそうした視線を煙たがっている節もあったようだ。
どうやら深海棲艦内の派閥抗争に敗れてきたようで、元は中部太平洋方面艦隊の指揮下で強襲揚陸艦隊を指揮していた。
今はテニアン島の捕虜収容所で監督官として捕虜の統率を行っている。

司令部ゲストシップNo.5
深海棲戦艦 タ級フラッグシップ『アラスカ』

アルティと共に亡命してきたアルティの副官で、タ級のクラスの一つであるアラスカ級のオリジナル。他のタ級に比べ機動力に優れるが火力では劣っている。
亡命前から彼女をよく支えており付き合いが長いらしく、上官への忠誠は篤い。
テニアン島に移った後も捕虜収容所でアルティを支えている。


~深海棲艦艦級紹介~

アルティメイトストーム級超兵器級深海棲艦

ステータス(カッコ内はクローン版)
HP:330(290) 火力:264(227) 対空:75(60) 装甲:95(79) 射程:超長

18インチ連装砲 18インチ連装砲 8インチ単装砲(AGS) 40mmバルカン砲 20cm12連装噴進砲

肩書は『超巨大ホバー戦艦』。
端的に言えば『ホバークラフトに46cm位の口径の砲積んで地形不問で60ノットでぶっ飛ばす!』という戦艦。流石アメリカらしい発想だがそれを実現出来たのは超兵器機関のおかげである。しかもちゃっかりイギリスからAGSの技術を譲り受けている辺りもヤンキーどもの商売センスの高さを伺わせる一端であるが、どちらかと言えば試験艦という性格が強かったため量産されなかった。
主に太平洋戦線で上陸戦支援を行い活躍したが、サイパン攻略の際硫黄島方面から出撃してきた日本軍の超兵器『近江』の正確なレーダー射撃を前にして、ホバー形状特有の脆さを露呈して敗れ去った。
深海棲艦となってもその実力は健在で、艦娘には追従不可能な速度と地形走破能力の両方を有している珍しい存在で、沖縄方面侵攻や中国沿岸域攻撃に参加していたりもする為目撃例が数多く存在する。

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