異聞 艦隊これくしょん~艦これ~ 横鎮近衛艦隊奮戦録   作:フリードリヒ提督

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えー、まぁ、イレギュラーと言いますか、そういったものが出現する事は最初から決まっていたのですが、普通じゃつまらんと言って作者が暴走しました。<(_ _)>

とまぁ今回は新艦娘がぞろぞろ新規加入したのですが、今回は開発について解説します。

2章に於いて、建造は錬金術に通ずると言う説明がありましたが、ホムンクルス製造はしてないのでご安心を。開発も錬金術に通ずる部分がある技術が使われているらしいです。

建造に比べて開発は、そこまで複雑でややこしくはありません。

素材を持ってきてそれを錬金して出来上がるのが艤装な訳で、これもまた妖精さん達の仕事の出来一つで結果が変わると言う代物です。

建造と少し違うのは、艦娘の艤装に装備し使う為の霊力回路を組み込んでやる事なんだそうで。

これに関しては妖精さんしか知らないブラックボックスとのことでしたはい。


鳳翔制空隊のネームドとして登場させて頂きました柑橘類氏、ありがとうございます。正直出演希望を頂いたときは「その発想はなかった!」という思いで一杯でした。

柑橘類氏は作者のゲーム仲間で、WT(War Thunder・ウォーサンダー)というゲームを結構やり込んでいる方でして、ステータス補正もその成績に基づいたものにしております。


今後も出演希望は募集しようと思います。需要あるのかどうかは別として。(ないけど)

柑橘類氏には厚くお礼申し上げます。鳳翔航空隊は近々大活躍をしてくれる筈です。その時までもうしばらくお待ち頂けたらと思います。


それでは今回はいよいよ出撃回という事になります。

ではどうぞ。


第3章~俺も出るぞ~

4月12日午後8時 紀伊宅

 

 

カリカリカリ・・・

 

 

提督「撃針の太さはこうで、次は射撃機構だな・・・」

 

直人は、銃の図面を引いていた。

 

その図面を見るだけでも、それは生半可な大きさではない。

 

長さ約2mと少しの2丁、背負い式の2つの弾倉、その弾倉の上には何やら大きな擲弾が乗っかっていた。

 

※擲弾(てきだん):ライフルの先端に装着し、銃発射のガス圧で発射する兵器。用途としてはグレネードランチャーに近い。

 

図面のタイトルは「30cm速射砲」であった。

 

 

 

翌13日の早朝、直人は早々と横鎮近衛艦隊司令部造兵廠前へと現れた。

 

 

提督「おろ? こんな朝早くに明かり?」

 

直人は誰かいるのかと思い、そのまま造兵廠へ入って見渡してみる。

 

直人「―――誰もいない・・・のかな。」

 

明石「ん。」ヒョコッ

 

明石が機械の群れの中から顔を出した。良く見たらまたもや作業着姿であちこち油で黒く汚れている。

 

直人「あ、明石さん、おはようございます。」

 

明石「え、あっ、提督、おはようございます!」

 

直人「こんな朝早くからっておっとと。」

 

足元を妖精さんが数人明石の元へ走っていく。

 

明石「今朝来てみたらここにいつの間にか妖精たちがいて、ここの機械全部に憑依してるんですよ。」

 

提督(えっと、ここって200以上機材あるよね・・・スゲェひとつ残らず妖精さんが・・・。)

 

感心しながら直人は

 

提督「つまり妖精さん達の力が加わって楽に動かせるようになった、と。」

 

と言った。

 

明石「まぁそういう事になりますね。」

 

提督「ほーん。あぁそうだ明石さん。急いでこれを艤装に装備する兵装と同じ形式で作って欲しいんだけど。」

 

そう言って昨夜突貫で引いた精密図面を渡す。

 

直人は『銃をメンテする以上銃の構造を理解しないといけない』という事で、定規とシャーペンだけで精密図面を引くようになったのだ。

 

明石「30cm速射砲、ですか?」

 

直人「あぁ。それを俺の兵装にしたい。」

 

明石「でも提督の艤装って―――あ。」

 

明石がハッとした表情になる。

 

明石「大淀さんから聞かされましたけど、本当だったんですね。」

 

提督「大淀さん? あの人は・・・言うなとは言ったけどまぁ、明石さんならいいか。そういうことだ。脚部艤装を着けて進水は出来るが気軽に持ちだせるような武器が無いとな。頼めるかい?」

 

明石「わかりました。2時間半で仕上げます。」

 

妖精さんスゲェ!!

 

提督「できたら言いに来てくださいな。」

 

明石「分かりました。さぁみんな! 初仕事にかかるわよ!」

 

提督「あ、艤装の事は他言無用だからね?」

 

明石「それも、大淀さんから承ってます。」

 

提督「なら、いいけどね。」

 

明石さん達が作業を始めたのを後目に、提督は執務室へと赴いた。

 

 

 

13日午前5時 中央棟2F・提督執務室

 

 

 

ガチャッ・・・バタン・・・コツッコツッコツッコツッ・・・

 

 

提督「ふぅ。」ドサッ

 

執務室へとやって来た直人、流石に大淀もいなかったようだ。

 

外を見ればまだ夜が明けたばかり、小鳥のさえずりが聞こえて来た。

 

提督「今日で3日目だな、そろそろ出撃しましょうかねぇ。」

 

などとぼんやり考えていた。

 

 

午前6時

 

 

カリカリカリ・・・

 

 

提督「うごごごご・・・」

 

大淀「さぁ、早く終わらせてくださいね。」

 

いつも通り書類と格闘中。

 

 

そのまま更に1時間・・・

 

 

大淀「さぁ、もう少しですよ!」

 

提督「よーっしゃぁー!!」

 

無理矢理やる気を奮い起こす直人。

 

金剛「終わったらティータイムにするデース!」ガチャッ

 

大淀「まずは書類仕事からですよ。」

 

遅れてきた金剛と冷静にその事を告げる大淀。そこへ・・・

 

 

コンコンコン・・・

 

 

提督「どうぞ!」

 

 

ガチャッ、トコトコトコ・・・

 

 

提督「お? 造兵廠の妖精さんか。」

 

現れたのは安全第一の黄色いヘルメットを着たつなぎ姿の妖精さん。

 

大淀「どうしましたか?・・・ふむふむ・・・提督、工廠で作ってる艤装が出来上がりそうだって言ってますが。」

 

提督「分かった。出来上がったら艤装保管庫裏に届けに来てほしいと伝えて。」

 

そう言うと妖精さんは頷いて執務室を出て行った。

 

大淀「艤装、というのは?」

 

提督「出撃の時に見送りに来れば分かるんじゃないかな?」

 

大淀「は、はぁ・・・。」

 

提督「よっしゃぁ、俄然やる気がわいてきた、やるぞぉ!!」

 

 

10分後・・・

 

 

提督「よし出来た!」

 

大淀「お疲れ様でした。」

 

金剛「こっちも出来たのデース!」

 

遅れてきた割には結構早かった。

 

提督「大淀さん、全艦娘を会議室に集めて。」

 

大淀「分かりました。」

 

そう言うと大淀は、書類の山を抱えて出て行った。

 

 

 

4月13日7時29分 食堂棟2階・会議室

 

 

集められた全8隻の艦娘と大淀さん。

 

提督「それじゃぁ始めよう。最初の作戦行動だが、東京湾沖の哨戒行動を行う。だが実戦部隊が編成されていなければ始まらない。よってまずは艦隊を編成しておきたいと思う。」

 

金剛「旗艦は私に任せるデース!」

 

蒼龍「いや私が!」

 

旗艦の座は確かに名誉ある地位だが、故にこういう具合に競合する場合も少なくない。

 

提督「静かに。編成は考えてある。」

 

それを直人は抑える。

 

大淀(提督の思案を、聞かせてもらいましょうか。)

 

大淀は、直人の力量を類推にかかる。

 

提督「まず、横鎮近衛第4艦隊総旗艦は、金剛、お前に任せる。」

 

金剛「やったのデース!」

 

大淀「提督、総旗艦と言うのは?」

 

提督「この鎮守府全ての艦隊を全て統括する、言わば実戦部隊の総指揮官だな。金剛、責任は重大だぞ。」

 

金剛「提督の為に、頑張りマース!」

 

提督(ブレないなぁw)( ̄∇ ̄;)

 

そう思いつつ直人は続ける。

 

提督「なお金剛は第1水上打撃群旗艦も兼務する。第1水上打撃群には金剛の他、飛鷹、蒼龍、木曽、綾波を付ける。」

 

金剛「直属兵力、と言う訳ですネ?」

 

提督「その通り、臨時編成と言っても金剛の本隊であり現状我が艦隊の基幹戦力だ。予備戦力として神通をつける。司令部防備は扶桑と鳳翔でやってもらう。防備の統括は暫く扶桑に任せる。」

 

扶桑「わ、私が、ですか?」

 

提督「あぁ。数少ない砲戦戦力だ。守りは任せるぞ。」

 

扶桑「ありがとうございます。まだまだ未熟ですが、務めさせて頂きます。」

 

提督「うん。では第1水上打撃群には出撃してもらう。俺も出るぞ。」

 

一同「えぇ!?」

 

何も知らないメンバーは驚きを隠せなかった。

 

大淀「提督、まさかあれで出るおつもりでは!?」

 

提督「いや、それはない。あれの脚部艤装は使うけどね。」

 

蒼龍「でも無茶ですよ提督。武器も無いのに!」

 

当然の異議申し立てである。

 

提督「皆の動きを見ておこうと思ってな。なぁに、自分の身は自分で守る。後ろから見ているだけならいいだろう?」

 

と、その場は取り繕う直人。

 

蒼龍「でも・・・」

 

提督「とにかく、出撃準備だ。第1水上打撃群は艤装を装着し哨戒任務に。いいな。」

 

有無を言わさずという口調でキッパリと言って提督は会議室を出た。大淀が慌てて続く。

 

蒼龍「うーん・・・大丈夫なんでしょうか・・・。」

 

金剛「ノープログレムデース。提督は凄い人だから、大丈夫デース!」

 

真実を知る金剛が胸を張って言い切るが、他の7人は首を傾げるばかりであった。

 

 

基本的に艦娘が出撃する時には、艤装倉庫裏のドックから沖へ出ることにしている直人であるが、その決まり通り出撃メンバー全員がその司令部裏ドックに集まっていた。

 

 

7時40分 司令部裏ドック

 

 

金剛「提督を待ってるんですガ、どこにいるか分かりませんカー?」

 

明石「私もここでこれを持って待っていてくれと言われてるので・・・。」

 

金剛「それは?」

 

明石「提督が使うと言ってました、新しい兵装だそうです。」

 

ひとつひとつ妖精さん数人がかりで下から支えていたそれは、銃は優に明石さんの身長より長く、弾倉は2つ、大きな擲弾(てきだん)付きの大型弾倉が用意された。

 

その時であった。

 

 

ズズズズ・・・

 

 

金剛「な、なんですカー!?」

 

明石「壁が開いてます!」

 

横12m、縦8mの隔壁が、左右に開いていく

 

金剛と明石はちょうど隔壁扉の中央付近に立っていた為、扉が直撃することは無かった。

 

提督「お待たせ♪」

 

明石「提督!」

 

エレベーターの様に昇降する地下格納庫の床に立ってせり上がってくる直人である。

 

金剛「提督、凄い足回りネー。」

 

提督「あぁ、まぁね。」

 

直人は背部艤装は勿論だが、傍から見れば某人気アニメに登場したガン○ムヴ○ーチェの脚部を彷彿とさせるような箱型脚部艤装を着けていた。

 

長さは腰下まで、膝の所には関節部が付いていた。

 

また太腿のあたりにユニット接続用スロットがあり、この両側に、2本の滑走路を模した、これもまた長方形の箱型大型航空艤装も装着していた。内蔵されたボウガンで連続射出されるようになっている。

 

 

ズズズズ・・・ゴゴォォ・・・ン

 

 

重い音を立てて扉が止まり、エレベーターフロアが止まる。

 

明石「提督、御注文の装備、こちらで宜しかったでしょうか。」

 

提督「うん、良い出来だ、それにしてもホント早いね。」

 

明石「お褒めに与り恐縮です。」

 

明石は素直に直人の賛辞を受けた。

 

提督「では早速行ってくることにするよ。」

 

そう言いながら直人は弾倉2つを背負い数本のベルトで固定、2つの砲身も支持用のベルト2本を肩と体に巻き安定させる。本来それだけ大重量の装備なのである。

 

明石「お気をつけて。」

 

提督「あぁ。カタパルトへの接続完了。航空戦艦『紀伊』、出撃する。」

 

あとはアメリカ空母式の電磁カタパルトで発進するのみである。脚部艤装後面に左右一つづつ装着された機動バーニアを稼働させておき、電磁カタパルトが直人を一気に前に押し出す。

 

慣れた動きで着水し、バーニアを止めて前進していく。

 

提督「おーい、急げよー!」

 

金剛「ハイ! 出撃デース!」

 

4人「はい!」

 

金剛たちも続いた。

 

直人に追いついた5人はその前方で単縦陣を組み、直人はその後ろをついて行くことにした。

 

 

午前11時半 房総半島南方海上・三宅島東北東沖26km付近

 

 

蒼龍「索敵機からの報告も無し、かぁ・・・。」

 

飛鷹「私の方も何もいないみたい。」

 

索敵機を念の為飛ばした飛鷹と蒼龍ではあったが、現状は空振りに終わっているようだ。

 

金剛「何もいない事に越したことは無いデース。」

 

綾波「そうですね。」

 

木曽「まぁ、一つ言うなら静か過ぎるって位だな。」

 

木曽がそう言った途端直人が何かに気付く。

 

提督「む・・・。」

 

金剛「どうかしたネー? 提督ゥー。」

 

提督「対空レーダー感あり、敵偵察機!」ジャキジャキッ

 

直人が背部艤装に装着してきたレーダーが敵を捉えるや否や、直人はすかさず30cm砲の銃口を空へ向ける。

 

金剛「ええっ!?」

 

ダダンダダンダダンダダンダダァァァー・・・ン

 

号砲一発、直人が30cm速射砲を5連射計10発放つ。セミオートリロードを採用している30cm砲2門は、もの凄い速さで砲弾を送り出す。更に15cm高射砲も連続射撃を開始する。

 

その内の1発が見事敵機を捕えた。

 

綾波「はぁわぁ~・・・。」

 

蒼龍「あれ? もしかして提督一人で足りたんじゃ?」

 

提督「んな訳ないだろ。」

 

すかさずそう言う直人である。

 

金剛「流石デース・・・。」

 

素直に賛辞を贈る金剛をよそに飛鷹が一つ懸念を述べた。

 

飛鷹「さっき落とした偵察機、パッと見だけれど艦上機型よ。空母が付近にいるかもしれないわ。」

 

それを聞いた直人、むしろ余裕である。

 

提督「ふむ。いい機会だ、初実戦にはもってこいだな。では、索敵は俺に任せて貰おう。短時間で確実に見つけてやる。偵察隊発艦初め!」

 

両サイドのボウガンから4本づつ矢が放たれる。

 

1本1本が焔と共に5機の景雲改ジェット偵察機になって飛んでいく。

 

太平洋戦争末期に開発されていた高速偵察機景雲にジェットエンジンを搭載したものが景雲改である。

 

それが全40機、開角8度の扇状に分散し飛び去る。

 

 

ゴオォォォー・・・

 

 

飛鷹「・・・あんなのあり?」

 

提督「ありなんです^^」

 

蒼龍「私の97艦攻より速いなんて・・・」

 

提督「お、早速か。15番機からテ連送、敵発見だな。 続いて6番機、21番機、36番機からもテ連送、多い多い。」(焦

 

流石に直人も焦る。

 

テ連送はモールス信号で「テ・テ・テ・テ・・・」と打電する日本軍の暗号の一つで、「敵発見」を意味する。

 

だが余り間を置かず敵を発見出来たのは、敵が意外に近かった事もそうだが、ジェットエンジンを搭載した景雲改の高速性能のおかげであろう。

 

金剛「打電した機体の向かった方向もバラバラ・・・という事は4個艦隊ですカ!?」

 

提督「まぁ、そうなるな。」

 

因みに最左翼が1番、最右翼が40番までの連番である。角度差は8度であるから、例えば1番機と6番機では48度も針路に角度差がある。1番機と40番機では320度もの差である。そこから4個艦隊と推測するのは容易い。

 

蒼龍「どうします? ここで迎撃しますか?」

 

提督「無論だ。いざという時には俺も参戦する。」

 

金剛「了解、全艦戦闘準備! 蒼龍と飛鷹は攻撃隊を飛ばして下サーイ!」

 

飛鷹・蒼龍「了解!」

 

飛鷹「第1次攻撃隊、発艦開始!」

 

蒼龍「さぁ~、行くわよっ!全艦載機、発艦始めッ!」

 

綾波「私が前に出ます!」

 

提督「艦載機発進後蒼龍と飛鷹は後方に下がって収容と第2次攻撃隊編成を、俺が護衛に付く。あとの3隻は今は待機!」

 

5人「了解!」

 

各々かそれぞれ戦闘態勢に入る。

 

提督「15番機から、編成は空母ヲ級エリート1、軽空母ヌ級2、重巡リ級1、軽巡ヘ級2、駆逐艦ニ級エリート2、無印4、6番機の方はリ級エリート2をメインにヘ級エリート2、軽巡ホ級フラッグシップ1、エリート2、駆逐二級フラッグシップ2、エリート3、ハ級エリート6だ。」

 

蒼龍「それって結構やばいんじゃ・・・」

 

流石の多さとその質に蒼龍がたじろぐ。

 

提督「21番機から、戦艦ル級エリート1、無印2、リ級改フラッグシップ1、フラッグシップ1、エリート2、雷巡チ級フラッグシップ3と軽巡ト級エリート3、無印2、ニ級エリート11、これが多分主力だ。36番機は補給部隊のようだな。補給艦ワ級エリート5と無印が7、随伴にリ級エリート1とホ級エリート1、無印2、ハ級エリート2、無印4だな。6番機から追加、護衛と見られるヌ級エリート2だそうだ。」

 

 

要約(正面0度基準)

◎268度方向(6番機)

軽空母:2 重巡:2 軽巡:5 駆逐艦:11

◎340度方向(15番機)※最短距離

空母:1 軽空母:2 重巡:1 軽巡:2 駆逐艦:6

◎28度方向(21番機)※主力(推定)

戦艦:3 重巡:4 雷巡:3 軽巡:5 駆逐艦:11

◎148度方向(36番機)※補給部隊?

補給艦:12 重巡:1 軽巡:3 駆逐艦:6

 

 

金剛「豪勢デース・・・。」

 

金剛も流石に怖気付くが直人は全く余裕であった。

 

提督「多分俺の気配に釣られてきたな。丁度いい。鎮守府正面海域の敵ごと全て吹っ飛ばしてしまおう。」

 

木曽「おいおい、無茶は言うもんじゃないぜ?」

 

提督「まぁ任せろ。正面と左翼側は俺がやる。金剛達は補給部隊を片付けてくれ。」

 

主力と支援の機動部隊を単艦でやるらしい。

 

木曽「自信の程は?」

 

提督「フッ、まぁ見てりゃわかるさ。」

 

木曽「相当な自信だな、まぁ見させてもらおう。」

 

木曽が期待を込めてそう言うと、直人も俄然気合が入る。

 

提督「おうよ、伊達に西沢隊と江草隊、友永隊乗せてないからな。」

 

蒼龍「えっ!?」

 

例の巨大艤装の事を知らない蒼龍、流石に驚く。

 

提督「蒼龍の江草隊隊長妖精、最初から俺のとこにいたんだぜ? まぁなんとかなるさ、任せとけ。」

 

蒼龍「は、はぁ・・・。」

 

綾波「司令官、御武運を。」

 

綾波の言葉に直人も気楽に応じる。

 

提督「おう、そう簡単には死なんさ。しっかし空母も守りながら、か。きつい相談だぜ全く。」

 

しかし彼は渋面を作るどころかどこかウキウキしている様にも見えて、そうした彼の余裕が、彼女らの緊張を徐々に和らげていった。

 

綾波達3人は取り舵を切って敵別働へ向かい、直人は30cm速射砲のグリップを握り直す。

 

提督「流石に敵機全部は防ぎきれん。蒼龍達も迎撃機を上げておいてくれ。」

 

二人「了解!」

 

弓と式神で艦載機を上空援護に出す二人。

 

提督「さて、派手におっぱじめますか。全艦載機発艦!!」

 

2つのボウガンがけたたましい唸りを上げ次々に矢を放つ。

 

攻撃機、魚雷装備の流星改を友永 丈市(ともなが じょういち)が直卒した180機。その少し後ろ上方に同じく流星改、こちらは爆装で80番(800㎏)の徹甲爆弾を搭載した江草 隆繁(えぐさ たかしげ)指揮の同じく180機。

 

360機の攻撃隊を護衛するのは、別名「ラバウルの魔王」と称された、西沢 廣義(にしざわ ひろよし)(広義)を先陣とした新鋭機震電改180機の内の120機である。

 

※艦これに於いて震電改=震電の艦載機型 という説明があるが、本作ではジェット戦闘機に改修した震電を震電改としている。

 

残り60機は上空援護に残し、全480機の攻撃隊。

 

この数はマリアナ海戦時の日本機動部隊の攻撃隊総数に匹敵する数である。

 

ただしその技量と機材の質は比較にならない事は言うまでもない。

 

飛鷹「・・・。」( ゚Д゚)

 

それを見た飛鷹、完璧に絶句していた。当然である。直援も含めて540機の大編隊、本来日本であれば空母10隻が結集してやっと運用出来る規模の航空部隊である。

 

否、これは最早地上航空部隊である。(米高速空母群であれば空母5隻分である、怖い)

 

蒼龍「凄い大編隊ですねぇ・・・。」

 

提督「フフ~ン。」ドヤァ

 

彼の艤装の持つ実力の一端である。「奴もいい仕事をしてくれた」と感謝の念を心の中に押しとどめながら、自慢げである。

 

蒼龍「案外提督一人でもういいんじゃ・・・。」

 

提督「一人で戦える訳がないのは歴史が証明している。」

 

蒼龍「う~・・・そうですけど・・・。」

 

直人の言葉は否応なく説得力を持つものであった。

 

欧州で二度の世界大戦を戦ったドイツでさえ、その背後には多くの隣人たちの手があった。では日本はどうであったか?

 

日本のWW2時、アジアにおける同盟国は傀儡国家、それも弱小国ばかりであった―――。

 

提督「んなことより、お客さんのお出ましのようだぜ。対空電探に感あり、機数150、200、まだ増える!」

 

蒼龍「えぇ!? こっちまだ二人で38機しか上げてないのに!」

 

飛鷹「流石にまずいですよ提督!」

 

提督「慌てるな。落とせばいいのだろう? 落とせば。弾種変更、対空ベルト。」

 

二人「へ?」

 

直人が大型弾倉の弾薬から砲に内蔵された弾倉の弾に切り替える。

 

提督「直援隊突撃待て。信管よし、対空砲撃連射!!」

 

 

ダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダ・・・

 

 

凄まじい勢いで対空砲弾が吐き出されていく。

 

対空ベルトの砲弾は、対空榴散弾・3式弾改・3式弾改・3式弾改・曳光対空榴散弾の順で撃ちだされる。

 

この対空榴散弾は言い換えれば散弾銃のショットシェルと同じで、時限信管で爆発し無数の鉄球を敵にばら撒くものである。曳光対空榴散弾はその曳光弾バージョンであり、多少威力は落ちるが効果は同じことである。

 

しかも見ての通りこの速射砲の対空砲弾薬ベルトには、5発に3発の割合で対空徹甲焼夷弾「3式弾改」が装填されている。これは榴散弾の鉄球を、そのまま大口径機銃の徹甲焼夷弾に置き換えた代物である。

 

これは敵にして見れば、秒間9.4発という凄まじい勢いで鉄と炎の雨が降り注ぐのだから堪ったものではない。

 

弾数こそ片門69発といえど、それにより敵攻撃隊は半壊、残りも編隊を大きく崩し、混乱状態に陥った。

 

二人「!?」( ゚Д゚)

 

安定して絶句する二人。

 

提督「よし、直援隊突撃!」

 

蒼龍「ハッ、私たちも!」

 

飛鷹「えぇ! みんな、やっちゃって!」

 

震電改に続き零戦21型と96艦戦が突撃を開始する。が、ベテラン揃いの3隻の航空隊にとって、指揮統制の混乱した相手など赤子も同然であった。

 

1機また1機と撃墜されるのは敵ばかり。

 

僅かな撃ち漏らしも、直人の正確な対艦徹甲弾による狙撃で撃墜されていった―――。

 

 

 

気付けば敵攻撃隊は影も形も無かった。

 

提督「まぁこんなもんよ!」

 

飛鷹「本当に何とかなったわね・・・。」

 

蒼龍「鮮やかな手際でしたね、提督。見事です!」

 

蒼龍は褒めるが直人は気を引き締める。

 

提督「いや、むしろこっからだ。二人は下がっててくれ。」

 

蒼龍「分かりました。」

 

飛鷹「えぇ。」

 

直人は空母2隻に突出を控えるように言う。

 

提督(さぁて、敵は30隻以上、弾足りるかね――――にしても木曽の奴、「視て」やがったな。)

 

そう―――直人らの上空には、いつの間にやら木曽の放った水偵が飛んでいたのである・・・。

 

 

 

 

 

三宅島東方海域 午後2時10分頃 金剛隊

 

 

金剛「ファイアー!!」ダアァァァ・・・ン

 

綾波「てぇっ!」ダァンダァン

 

木曽「くっ!甘い!」ザザザザバッ ダァン

 

敵別働と3人の戦闘は、事前に蒼龍たちの航空隊がある程度打撃を与えていたおかげで有利に進んでいた。

 

ハ級elite「ギュオアアアアアアッ!」ドガアアァァァーーーン

 

ハ級eliteに木曽の雷撃が直撃、波間に没す・・・

 

事前に艦載機を放てなくなっていたヌ級エリートも綾波と金剛の砲撃で片付く。

 

 

ドガアアァァァァーーー・・・ン

 

 

綾波「ああぁぁぁっ!!」

 

直後ニ級Flagの砲撃が綾波を捉える。

 

木曽「綾波! 大丈夫か!」

 

綾波「うっ、ううぅぅ・・・な、なんとか・・・。」

 

金剛「木曽サン! 綾波サンを下がらせて下サーイ!」ダァァァーーン

 

中破した綾波を下がらせる木曽、金剛がその間に戦艦の大火力で敵を牽制する。

 

その時上空に友軍機が飛来した。蒼龍らの放った第2次攻撃隊である。

 

木曽「金剛、蒼龍からの攻撃隊だ。」

 

木曽がそれに気づく。

 

金剛「分かったネー。」

 

金剛達の戦っていた補給部隊は既に半壊しており、撤退の構えを見せていた。

 

木曽「にしても、提督、中々の強者だな・・・。」

 

木曽は戦闘の合間に、偵察機を介して直人の戦いぶりをつぶさに“視ていた”のである。

 

 

一方その頃・・・。

 

 

 

同刻 三宅島南東海域 紀伊部隊

 

 

提督「水上レーダー感あり、12時と1時半の方向、距離それぞれ25000か。」

 

敵艦隊をレーダーと目視両方で捕えた提督。敵艦隊中央からは猛烈な黒煙と爆発が見受けられた。本隊に対する航空攻撃が未だに続いているのだ。6番機が報告してきた敵別動隊については、紀伊航空隊の集中攻撃で全滅の憂き目を見ていた。

 

提督「そろそろ航空攻撃も完了して徐々に戻ってくる頃合いだな。」

 

蒼龍「凄い事になってますね・・・。」

 

提督「そりゃ最新鋭機による総攻撃だからな。」

 

それを聞いた飛鷹がぶうたれて言った。

 

飛鷹「いいなぁ~・・・私もいい艦載機欲しい。」

 

提督「ま、その内な。」

 

直人がそう言ったその時自身の攻撃隊より、『攻撃完了、我が方被撃墜破42機』と伝えて来た。

 

機数が多い分損害も激しかったようだが、流石に頑丈なだけあるようだ。

 

尤も、これだけで済んだ、と言っても過言ではない。と直人は考えていた。それだけ彼は自身の艤装の実力に自信を持っていた。

 

 

 

提督「うし。ちと突っ込みますかね。」

 

そう言って直人は30cm速射砲2門を構え突撃した。

 

砲戦距離は射程の2万1000より少し内側の2万m。

 

距離一杯で撃つと失速して届かない恐れがある為だ。

 

 

ダダダダダダダダダダダダダダダダ・・・

 

 

またもや凄まじい勢いで、艤装の射撃管制機能を使い対艦用の徹甲弾が放たれる。

 

リ級改Flag「・・・!!」

 

 

ドガガガガガァァァァーーー・・・ン

 

 

たちまち右翼のリ級改Flagを狙撃した砲弾が6発直撃、ひとたまりもなく轟沈する。

 

立て続けに正面のヌ級2隻もこれまた狙撃で轟沈する。

 

ヲ級elite「・・・!」

 

ル級elite「・・・!」

 

提督「む、突っ込んできますか。」

 

ニ級elite「ギョアアアアアアッ!」

 

チ級Flag「・・・!」

 

正面と右翼からそれぞれ護衛の軽巡以下水雷戦隊が突っ込んでくる。

 

提督「いい筋だ。艦娘相手なら有効だが相手を違えたな。」

 

 

ダダダダダダダダダダ・・・

 

 

左右から挟撃を試みた敵水雷戦隊だが2つの目標を同時に蜂の巣と化す直人。

 

1門ずつ別目標を狙えば問題ないと踏んだのだ。

 

駆逐艦などは耐えられるはずも無く3発以内で爆沈、軽巡や雷巡も瞬殺された。

 

パキィィーーン

 

提督「む!?」

 

気付けば敵の戦艦の副砲有効射程に入っていたようで、放った砲弾がその副砲弾を弾いていた。

 

提督「吹っ飛べやぁおらぁ!!」

 

すぐさまお返しの大連射、それにより敵ル級eliteは原形すら留めぬ無残な姿と化す・・・。

 

その後も30cm砲弾の雨あられ、残った敵も次々と骸と化し、中軸を失った敵残存も散り散りに何とか逃げおおせたほどであった。

 

 

 

蒼龍「・・・。」

 

飛鷹「・・・。」

 

余りの驚愕で言葉が出ないお二人。

 

当然と言えば当然である。これまでに見た事も無い、途方もない大火力を目の当たりにしたのだから。しかし、これはまだその実力のほんのひと欠片に過ぎない・・・。

 

提督「蒼龍! 終わったぞー。」

 

蒼龍「・・・これ、本当に私たち必要だったんでしょうか・・・。」

 

提督「金剛たちの支援にて戦果ちゃんとあげてるじゃない。補給艦隊に手傷負わせてるし。」

 

蒼龍「そりゃそうですけど・・・。」

 

ちょっと不満げである。

 

金剛「“ヘーイ提督ゥー! こっちは終わったのデース!”」

 

金剛から通信か。

 

提督「ご苦労様。浦賀水道で合流しよう。」

 

金剛「“了解デース!”」プツッ

 

提督(切られた!?)ガビーン

 

どっちが指揮官だか分からない始末である。

 

飛鷹「あっちも終わったみたいね。早く帰りましょうか。」

 

蒼龍「そうね。長居は無用よ。」

 

提督「分かってるよ。帰ろうか。」

 

 

 

夕刻 鎮守府建造棟前

 

 

提督「さてどうなりますやら・・・。」

 

実は金剛がさらっと敵艦の残骸を拾って持ち帰っていたのである。

 

直人はル級の艤装の片方を持ち帰るもドロップの判定には何も引っかからなかったのである。

 

そう。今は金剛の持ち帰った残骸が判定に引っかかった為、その結果待ちなのだ。

 

 

ガチャッ

 

 

直人と金剛が待っていると目の前のドアが開き妖精さんが出て来た。

 

金剛「フム、終わったそうデース。」

 

提督「うん。連れて来てちょ。」

 

今日の直人随分と軽い。

 

そして出て来たのは・・・

 

愛宕「私は愛宕。提督、覚えて下さいね?」

 

司令部施設を重視させた結果艦橋が大型化してしまった高雄型重巡の2番艦。

レイテ沖海戦の折、パラワン水道で潜水艦によって沈められちゃったけどね。

 

提督「勿論だ。俺がここの提督だ。一つよろしく頼む。」

 

いい胸だっ`・ω・)b(by作者の心の声)

 

金剛「では提督、後は私がご案内しておきますネ!」

 

提督「あぁ、頼んだ。」

 

 

 

13日薄暮 司令部造兵廠

 

 

明石「この敵の艤装で刀、ですか?」

 

提督「あぁ。」

 

直人はその足で造兵廠へ行き、ル級の艤装を持ち込んだ。

 

明石「浄化処理をすれば霊力刀には出来ますが、そういうことですか?」

 

提督「そういうことだ。頼めるかい?」

 

明石「お安い御用です! しっかり打っておきますね!」

 

提督「ありがとう。じゃぁ俺はこれで。執務机の上に置いといてくれればいいよ。」

 

明石「分かりました!おやすみなさい提督。」

 

提督「あぁ。お休み。」

 

直人が明石にそう言い起き造兵廠を辞する。その足で彼は司令部を出、宿舎へと戻って行ったのだった。

 

こうして、初出撃の1日は終わりを告げたのだった・・・。

 

 

 

13日深夜・硫黄島

 

 

リ級改Flag「申シ訳ゴザイマセン、ヨモヤ一介ノ人間ゴトキニ遅レヲ取ッタヨウデス・・・「モンタナ」サマ・・・。」

 

リ級改Flagが首を垂れる先で、闘志を漲らせる深海棲艦が一人。モンタナと呼ばれたその深海棲艦が言う。

 

ル級改Flag「面白イ奴ガイル様ダナ・・・。宜シイ、デハ次ハ私ガ直々ニ出ヨウ。艦隊ノ編成ヲ。」

 

リ級改Flag「ハ。全力デ行キマスカ?」

 

ル級改Flag「アァ、勿論ダ。ソノ艦隊指揮官、艦娘ニノミ戦ワセルソノ辺ノ連中トハ違ウヨウダナ、実ニ興味ガアル。」

 

モンタナが興味を示したのは、その艦隊が『他とは違う』事だった。そしてそれに気付いた最初の深海棲艦の指揮官が、そのモンタナであった事は事実だ。

 

 

直人達が交戦したのは、硫黄島を拠点とする日本本土攻撃を任務とした、ル級Flag「モンタナ」率いる中部太平洋方面艦隊の分派部隊、そのほんの一部である。更に言えば、その“硫黄島艦隊”の前哨攻撃艦隊と直人達が、偶然接触しただけである。

 

その無傷健在である硫黄島艦隊主力が、直人のその戦いぶりを見て動く、目標は何処へと向けられるか?

 

 

直人の采配や如何に?




艦娘ファイルNo.11

高雄型重巡洋艦 愛宕

装備1:20.3cm連装砲
装備2:61cm4連装魚雷
装備3:零式水上偵察機

初ドロップが特異点を含んでいるのはもう黙っておこう。
三宅島近海での遭遇戦でドロップした初ドロップ艦。
だが時を経るごとに忘れ去られがちになってしまう。だがその豊満なボディは健在である。


艦娘ファイルNo.0b

特殊航空戦艦 紀伊

装備1:30cm速射砲(火力+65 対空+45 命中+7 回避-3)
装備2:30cm速射砲
装備3/4:機動バーニア
装備5(搭載180):震電改(西沢隊)
装備6(搭載180):流星改(友永隊)
装備7(搭載180):流星改(江草隊)
装備8(搭載60):景雲改(第4飛行隊)
装備9:五式15cm高射砲+ウルツブルグレーダー

超巨大機動要塞戦艦『紀伊』の航空艤装特化形態。
といっても航空艤装と脚部艤装以外の殆どを全パージしただけの簡単なものではあるものの、その航空火力は侮れない上、新装された30cm速射砲は元が対物用長距離カノン砲であっただけに、その威力は艦娘のそれとは比較にならないものがある。

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