異聞 艦隊これくしょん~艦これ~ 横鎮近衛艦隊奮戦録   作:フリードリヒ提督

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どうも皆さん、天の声です。

青葉「どうも恐縮です、青葉です!」

第3部8章いかがだったでしょうか。以前に登場させた輸送機と空挺装備を縦横に活用したポートモレスビー攻略戦でした。彼我の心理戦も展開した巧妙な作戦をお届けできているかなと言ったようなのが書いた側としての感じです。正直若干思ってたとは違うのですが、その辺はまた考えます。

青葉「あとチョイチョイ言葉の誤用とか改訂を挟んだ事も申し訳ないですとの作者からの伝言も頂いてます。」

実は途中でネタ切れになったとかなんとか聞いたゾ・・・。

青葉「それは黙っててあげましょうよ・・・。」

まぁご期待頂いた方には申し訳ないと言う感じですね。自分自身100%納得のいくものが書けたと言う感じは全然してなくて、勢い任せに走り切った感じなので荒いのは事実なので、今後修正を加えたいと思います。(by作者)

それはそうと、前章の更新中あちこちの章にルビ振りを行っています。主に人名へのルビ振りを重点的に行っています。

青葉「この章の更新中に身に着けたんですよね。」

そうなんだよね。多機能フォームでルビ振れる事を前章の更新中に知ったからね。これは振らねばと思いました。あと傍点の振り方も覚えたので、今後は多少読みやすくなると思います。

青葉「あの、こっちで更新始めてどれくらいになります?」

・・・今月(18/05/02)で17ヶ月目ですかねぇ?

青葉「遅くないです?」

やめて言わんとってマジで。


では今回の解説事項に行きます。今回はですね、「艦載機と艦娘/深海棲艦の関係性」についてです。

まぁこの説明については前々から不思議に思ってた人もいるかもしれませんね。まぁ解説していきましょう。

この世界における艦載機とは、深海棲艦と艦娘では性質が違います。今回はそこら辺の解説になります。

まず艦娘側の艦載機です。これは人と契約した精霊と言ったような役回りになります。艦載機は隷属する艦娘の指示に従って行動し、艦娘側は偵察機を運用する際、契約の対価(ギフト)として偵察機から見える光景を“視る”事が出来ます。物語一番最初の方で紀伊が最初の出撃をした際、木曽がやっていたのが具体的ですね。

因みにギフトとは言っても無条件で出来る訳ではなく、無線でのやり取りがあるのは、情報を共有しなくては艦娘側が認識出来ない為です。その代わり艦娘側が認識さえすれば、艦娘は念話により妖精さんと交信する事で情報のやり取りが出来ます。

一方で、深海棲艦の艦載機は自動兵器(オートマトン)型の使い魔と言う所で、敵を発見した場合自動探知で母艦に伝え、母艦側は監視カメラを見る様な感じで見ています。また攻撃AIを備えており、これが起動した場合敵の位置と速力、針路を自動分析し、脅威度の高い敵を判定し攻撃に移ります。

自己に対する危険度が最も高い目標を優先して攻撃する為、下手に撃つとかえって狙われる傾向にあります。なので艦隊全体で狙いを分散させる事も可能ではあります。航空機型深海棲艦機も同様の立ち位置で、これと汎用型深海棲艦機(タコヤキほか)の差は、汎用型は様々なウェポンパックを換装する事で全ての任務に対応するのに対し、航空機型はそうした汎用性を持たない事です。(B-19型は爆撃のみ、P-39型は制空戦闘と少量の爆装など)

因みに両陣営の艦載機は共に対応する霊力を持っている点は艦娘や深海棲艦と変わりません。航空機型と艦娘の艦載機は外観の違い(黒地にオレンジのヘキサゴンを敷き詰めたデザイン)で識別されます。挙動は全く変わらない為、偽装されると全く見分けがつきません。


今回は以上となります。

青葉「汎用型は深海棲艦戦とかの事ですよね?」

せやな。ただ、空母側で同時に携行するウェポンパックの定数が決まってるらしいのよねん。だから全部戦闘機と言う事態は例がないっちゃぁない。今後は分からぬ。

青葉「分からないんですね。」

そりゃそうでしょう。敵さんの事情はその時々で違うんだから、発想が転換されれば変わる事もあると思うよ?

青葉「それは確かにそうですね。」

では本編行きましょうか。

青葉「大本営からの命令で過去例を見ない現地残留命令を受けた横鎮近衛艦隊、果たしてここからどの様な展開を見せるのか!?」

スタートです!


第3部9章~古戦場の再戦~

2054年2月後半、横鎮近衛艦隊は与えられた命令に従い、ラバウル基地の艦内であるデューク・オブ・ヨーク島沖に停泊していた。

 

未だにラバウルは空襲を受けていたが、以前より頻度は下がっており状況は好転していると言えた。既にブーゲンビル島周辺部は制圧されており、新基地の新設準備が開始されていた。

 

2月23日、サイパンで補給を終えた給糧艦伊良湖と護衛の第十七駆逐隊が、新任の艦娘と共に鈴谷へと戻って来た。

 

 

2月23日10時35分 重巡鈴谷下甲板後部・艦娘発着口ハッチ

 

提督「お帰り伊良湖、艦娘達もお待ちかねだったぞ。」

 

伊良湖「まぁ想像は付きますけどね・・・。」

 

提督「そうだな。浜風達もお疲れ様。」

 

浜風「第十七駆逐隊、任務を完遂しました!」

 

提督「うん。では、護送して来た新任の艦娘達に自己紹介をお願いしようかな。」

 

「お初にお目にかかります。航空母艦、天城です。宜しくお願い致します。」

 

「練習巡洋艦、香取と申します。艦隊の教導は、私にお任せ下さい。色々と優しく、指導させて頂きますから。」

 

「早霜、着任しました・・・。」

 

提督「3人とも宜しく頼む。それにしても香取が来てくれるのは助かるな、訓練の効率がグッと上がるだろう。今から期待させて貰おう。」

 

香取「ご期待に沿えるよう、務めさせて頂きますね。」

 

提督「俺も久々に航行姿勢とか見直そうかな・・・?」

 

香取「えっ・・・?」(困惑)

 

まぁ困惑されるのは当然である。

 

早霜「随分、賑やかなのね。」

 

提督「ま、それが取り柄さね。」

 

早霜「そうなのね、憶えておくわ・・・。」

 

提督「・・・?」

 

その反応に彼は少し不思議そうな顔をしたが、特に気には留めなかった。

 

雲龍「あら、天城なの?」

 

天城「雲龍姉様! ちょっと、宜しいですか?」

 

提督「構わんぞい。」

 

天城「はい! 姉様、お元気でしたか?」

 

雲龍「えぇ、こうして元気にしてるわ。来てくれるか心配したけれど。」

 

天城「こうして来ました。」

 

雲龍「えぇ、そうね。嬉しいわ。」

 

提督「―――。」

 

姉妹同士、やはり再会すると言うのは、お互いに嬉しい事なのだろう。それを見ていると、提督である彼も、なんだか少し嬉しくなるのである。

 

 

「どうも、速達便です!」

 

提督「!?」

 

唐突に外から声が聞こえたので驚く直人。

 

見るとそこには・・・

 

明石「あっ、提督!」

 

提督「明石か!」

 

明石「やっと終わりました。お返し致します。」

 

明石が曳航して来たのは、巨大艤装『紀伊』改であった。コンテナによって隠蔽されており、艀を使って曳航して来た様である。

 

提督「―――あぁ、ありがとうな。搬入を開始しようか。」

 

明石「了解です。」

 

提督「運び込んだら早速見させて貰おう。」

 

明石「分かりました。」

 

明石はこれまで、改修作業の為サイパンに残留していたのである。ついでにラバウルで活動する為の地上機材を運搬して来てもいるのだった。

 

提督「暫くはこっちで過ごす事にもなるからな、気が利いてて助かるよ。」

 

明石「恐縮です。では早速設置作業を指示しておきますね。」

 

提督「ん、お願い。仮拠点設営ってとこやね。」

 

明石「ですね。」

 

提督「安全第一で頼むぞ~。」

 

明石「勿論です、では早速。」

 

そう言うと明石はそそくさとデューク・オブ・ヨーク島に向かうのだった。

 

提督「・・・まぁ、取り敢えず香取は神通さんに慣熟訓練だけ受けといてね。終わったあとで正式に辞令渡すので。」

 

香取「分かりました。」

 

提督「あとの面々は直近の訓練から合流するように手配しよう。大淀も金剛もここにはいないが俺から話は通しておくから。」

 

天城・早霜「「了解。」」

 

提督「まぁ訓練の横で慣熟訓練からだろうけどね。それについてもまずは見て貰った方がうちの訓練のやり方も分かるってもんだろうし。」

 

天城(それはちょっと不安になる言い回しですね・・・。)

 

不安を覚えない訳がない言い回しであったがその不安はある意味的中する。戦前方式の実戦反映式の訓練であるからだが・・・。

 

 

その後鈴谷への艤装の搬入と、明石による仮設基地の完成を待って翌日になり、彼は新装した巨大艤装紀伊と対面する事にして明石を呼びつけた。

 

 

2月24日8時15分 重巡鈴谷中甲板艦首部・巨大艤装格納庫

 

提督「ふむ・・・これが・・・。」

 

対面した艤装は、以前より少しスリムになった印象を受けた。

 

明石「主砲を腰部に移設、可変ギミックを除いた事により背部艤装が兼ねていた主砲用バックパックを縮小、腰部艤装も縮小しまして、一部機能を背部から展開する方式に改める形で移設しました。またこの改修に伴い背部艤装を改修し、51cm砲と80cm砲の接続およびジョイントを改良し、合理性を向上させました。また副砲座の重量削減もしました。」

 

提督「重量削減についてはどの程度になる?」

 

明石「これだけで1割以上マイナスになりました。」

 

提督「ほう、かなり無駄が多かったらしい。」

 

明石「ですが、背部艤装に展開用のジョイントを設けましたので、その分の重量が割増しになりました。」

 

提督「それは止むを得んだろうな。その分を主砲でバランスを取ったのだろう?」

 

明石「はい、主砲の重量に起因するノーズヘビーの傾向を打ち消した形になります。」

 

提督「で、武装の方はどうなっている?」

 

そう聞くと、明石は目を輝かせながら説明を始める。

 

明石「顕著なのは航空艤装です。これまでの運用データを基にしまして仕様を大幅に改良、重量の調整とより大重量の航空機運用に耐えるだけの強度を持たせました。発艦速度は従来通りですが、重量の軽減と、新型機運用能力の改良を行っています。」

 

提督「それはありがたいな、搭載機に変更はないのか?」

 

明石「御慶び下さい。我が造兵廠が技術局と共同して研究していた噴式景雲改のジェットエンジンの研究改良が完了しまして、震電改への実装に成功しました!」

 

提督「なんだとっ!? つまり・・・!」

 

明石「“噴式震電改”です!」

 

提督「それは凄いな、紀伊の制空能力がこれで向上するぞ!」

 

明石「これまで以上に、制空戦闘を優勢に進められると思います! あと噴式景雲改にも同様の新型ジェットエンジンを搭載しまして、機体改修も併せ性能が向上しています。」

 

提督「やれやれ、気合入ってるなぁ・・・。」

 

因みに言って置くと、震電は元より積んでいるが、元々噴式(噴式震電)である。つまり噴式震電改とは「噴式機としての震電改」と言う所から命名されている。

 

明石「主兵装に関しましては、80cm砲を改修しまして、長砲身化とそれに伴う改修を施しました。これにより砲戦射程が改良されています。」

 

提督「具体的には?」

 

明石「120cm砲が大凡有効射程3万5000ですが、同等の有効射程を得ました。」

 

提督「成程、それは凄いな・・・遠距離砲撃の際火力不足を痛感していた所だ、素直にありがたい。」

 

明石「あと、特殊潜航艇蛟龍も、母艦上からの洋上運用にある程度適応するよう改良を加えてあります。それに陸戦部隊も戦車を更新しました。」

 

提督「へ? ただでさえ四式中戦車(チト)だったのに?」

 

明石「今度は五式中戦車(チリ)です!」

 

提督「マジかよッ!?」

 

やってくれちゃったよ・・・。(by作者)

 

提督「75mmの半自動装填装置付きか・・・うん、強いな。」

 

明石「そうでしょう?」

 

提督「まぁ、いいんじゃないかな。」

 

明石「それからバーニアの改良も行いまして、これの小型高出力化にも成功しています。これにより重量削減に成功した他機動力もアップしています。」

 

提督「軽量化と機動力向上で一石二鳥だな。早速動かしてみていいか?」

 

明石「勿論です。」

 

提督「では早速。」

 

そう言うと、彼は艤装スタンドに固定されている自身の艤装に向かい、いつも通り腰部艤装と背部艤装で自身の霊力回路と艤装の霊力回路を一体化する。するとその作用で艤装が体に吸着し、同時に重量軽減作用が働き、いとも容易く彼はその状態で身動きが取れるようになった。そのままだと1トン以上の鉄塊である。

 

提督「んー・・・やっぱりちょっと動かないな・・・。」

 

明石「まぁ、確かに霊力回路も敷き直しですからね・・・。」

 

提督「そう言う時は流してみるに限りますな。―――!」

 

直人は自身の霊力を新しい霊力回路へゆっくり押し込むように流し込む。すると回路の通り方がだんだん把握できてくると同時に、艤装も機能する様になってきた。

 

提督「―――ッ! はぁ・・・はぁ・・・。」

 

明石「どうされました?!」

 

提督「ハハ・・・流石に規模の大きい艤装だからね、少し時間がかかりそうじゃな。」

 

明石「あぁ・・・成程・・・。」

 

流石の直人でも適応に手間取る始末であった。

 

 

12時24分 重巡鈴谷中甲板・食堂

 

提督「ちょっと飯早かった気もせんでもないなぁ・・・。」

 

直人は食後の余韻に浸っている所だった。

 

提督「―――。」

 

近くでは金剛と鈴谷が別々に食事をとっている所であった。

 

川内「提督~。」

 

提督「ん、やぁ川内。」

 

川内「夜戦まだ~?」

 

提督「藪から棒にどうした。」

 

川内「最近夜間の水上戦闘やってないなぁって。」

 

提督「俺が決められる訳でもねぇしな。」

 

川内「でも提督は結構な頻度で“夜戦”をやってるって聞いた事があるよ?」

 

提督「ブッ!?」

 

金剛「―――。」ピクッ

 

鈴谷「―――。」ピクピク

 

中々唐突に凄い爆弾が飛んで来たと直人は思ったものである。

 

提督「その夜戦は意味が違うだろう・・・。」

 

川内「え、そうなの?」

 

提督「えぇ~・・・。」

 

川内「それはいいとして、ちょっと提督に話があるんだけどさ。」

 

提督「ん? 珍しいな、どうした?」

 

川内「その・・・ちょっと内密な話でさ。」

 

提督「まぁ、カウンセリングは提督の仕事だな・・・来なさい。」

 

川内「うん。」

 

そういうと直人は席を立ち、川内を伴って食堂を出る。

 

 

提督「それで? 内密ってのは?」

 

川内「その前に一つ気になっちゃった、提督の言われてる“夜戦”って?」

 

提督「まぁ夜戦には違いないわな。男と女が夜に汗水流す、夜の戦いじゃな・・・。」

 

川内「え、えっと・・・い、いやいや、決してそう言う話じゃないからね!?」

 

提督(変なフラグ立てたかな俺・・・。)

 

川内「と、取り敢えず、二人きりで話したいんだけど、いいかな?」

 

提督「―――分かった、俺の部屋のキー渡すから、先行って待っててくれ。」

 

川内「分かった。」

 

直人が懐から艦長室のキーを取り出して渡すと、川内は前檣楼のエレベーターに向かうのであった。

 

提督「・・・。」

 

大淀「提督?」

 

提督「大淀か、いい所に来た。」

 

大淀「なんでしょう?」

 

提督「今からちょっと川内のカウンセリングをするが、その間艦長室に誰一人入れるな。」

 

大淀「はぁ・・・了解しました。」

 

提督「いいか、誰一人入れるなよ?」ズイッ

 

大淀「は、はい。」

 

直人は大淀にそう厳命すると、川内の後を追う様にエレベーターに向かった。

 

大淀「・・・??」

 

一方訳が分からない大淀であった。

 

 

~艦長室~

 

・・・で

 

提督「随分珍しいが、俺に話とは何だ?」

 

川内「その前に、一つ約束して欲しいんだ。」

 

提督「―――聞こう。」

 

川内「この話は誰にも話をしないで欲しいんだ。金剛さんや鈴谷、大淀さんにも。」

 

提督「金剛達にもか?」

 

川内「うん・・・杞憂だったらいいんだけど、この話は艦娘達にとって悪い話だと思うんだ。少なくとも、龍田以外には話さないで欲しい。」

 

提督「・・・分かった。」

 

川内「―――実は最近、洗脳されていた時の記憶が、少しずつ戻って来てるんだ。」

 

提督「―――!」

 

川内は元独立監査隊の諜報人員である。以前直人を暗殺すべく艦隊に潜入したものの逆に返り討ちにされた所を、如月が偶然開発していた洗脳装置のリバース機能を使い、洗脳を解かれ帰参した艦娘である。因みに洗脳機能は開発直後に直人により凍結された為、洗脳解除装置と化している。

 

川内「その時、あれは確か独立監査隊の幹部だったと思うんだけど、“例の計画”がどうとかって言っていた記憶があるの。」

 

提督「独立監査隊がか・・・?」

 

川内「うん、その計画の進捗について話してるみたいだった。」

 

提督「妙だな・・・。」

 

川内「ここまで言って置いてなんだけど、私が思い出せるのはここまでなんだよね。」

 

提督「いや、それだけでも十分引っ掛かる所が多い。独立監査隊は、憲兵では摘発する事が出来ない我々を監視する事の筈だ。それがなぜ独自の計画を行わなくてはならないのか。」

 

そう、ただの国家警察的権力組織であれば、何も独自に自分達のプロジェクトを立ち上げる必要はないのである。やる事は決まっているし、そんな必要は何処にもないのである。

 

川内「独立監査隊は、艦娘達を洗脳し、諜報人員に仕立て上げてるけど、なまじそれだけに、何をするか分からない。」

 

提督「だから念の為に俺に知らせてくれた、と言う訳か。」

 

川内「本当に悪い事なら、止めないと。」

 

提督「本当にも何も何度か殺されかけてはいるんだけれども。まぁそうだな、龍田とも相談しよう。」

 

 

~その頃~

 

 

12時39分 横浜市街・ホテルの一室

 

「そうか、あの男は無事息災か。」

 

「えぇ。今回の作戦では裏方に徹して前線には出なかったわ。」

 

横浜市街地の路地裏に、黒装束の男と話し込む龍田の姿があった。彼女は柑橘類中佐に頼み込み、一式陸攻二二型乙で横浜に来ていたのである。目的は、とある独立監査隊幹部に接触する為であった。

 

龍田「でも損害も結構出てたみたい。大破艦が6隻はでたようだし。」

 

「ほう、最近は敵の増強に対し力不足の感が出ているようだな。」

 

龍田「そうね、彼も頑張ってはいるけれど、正直後手後手に回っている感じが強いわね。」

 

「所詮はただの艦娘艦隊、と言う訳か。」

 

龍田「まぁ仕方がないでしょう。それより・・・」

 

「なんだ?」

 

龍田「あなた、妙な話を聞いたわよ? 何やら極秘のプロジェクトに関わってるそうじゃない?」

 

「・・・そんなものは知らんな。」

 

龍田「あらぁ~、確かな筋から聞いた話なのだけれど・・・。」

 

「どこから聞いたのか知らんが、そんなモノがある訳がないだろう。第一我々の職権にはない事だ。」

 

龍田「そんなに隠さなくてもいいじゃない。私とあなたの仲ですもの、少しぐらい、教えてくれたって―――」

 

そう言うと、龍田は来ている服をはだけさせる。

 

「・・・っ。」

 

龍田はボディプロポーションもすこぶるいい。それこそ男が夢想してやまない程だ。それに魅了されないとしたら、それは男の好みの問題だろう。龍田は自分が生まれ持ったものを、最大限活用しているに過ぎないのだった。

 

それは置くとしても、龍田は独立監査隊とのパイプと通じて、川内が言ったような怪しい計画がある事を知っていた。この時の接触はそれを探る為のものであった。そして龍田は確かに諜報部員だった。それを得る為には自身の性をも、利用したのであるから。

 

 

龍田(―――バカな男たち。まだ提督とやり合った方が張り合い甲斐があると言うものだわ。)

 

表通りを歩きながら、龍田は思った。ひとたび金と快楽を手にした者は、それを永続的なものにしたがる。心の弱いものや境遇の弱い者ほど、そうなりやすい。だがそうした者達は総じて退廃的かつ退嬰的であり、利己心だけが育って行くようになる。そうした者達程、利用されやすいものは無いのであった。

 

その点直人は聡明で活気に満ちている。少しダメで無謀な所もあるが、それでも龍田とやり合うには十二分に相応しい好敵手たり得るだろう。

 

龍田(帰りましょうか。この町なんかに、いる意味は余りないわ。)

 

龍田はそう決め、足取りを早めるのだった。

 

 

2月26日18時21分 重巡鈴谷前甲板

 

その時彼は、ラバウル第1艦隊との懇親会を終えて鈴谷のタラップを上った所であった。

 

矢矧「あら、提督じゃない。おかえりなさい。」

 

提督「おう、ただいま。」

 

矢矧「大淀が探してたわよ?」

 

提督「あ、マジで? どこ行ったか分かる?」

 

矢矧「確か装載艇の方に行ったと思うけれど・・・。」

 

提督「・・・ヤバイな、入れ違いになりかねん。有難う!」

 

そう言うと直人は大慌てで走り出すのだった。

 

矢矧「フフッ、忙しい人ね、相変わらず。」

 

その後ろ姿を、矢矧は笑いながら見送るのだった。

 

 

軽い短距離走を経て、直人は何とか大淀を装載艇の搭載位置で見つけた。

 

提督「大淀~!」

 

大淀「あっ、提督!」

 

提督「探してたって話だけど、どうしたんだい?」

 

流石と言うべきか、直人は呼吸一つ乱していなかった。

 

大淀「そうなんです、大本営から通信です。」

 

提督「だと思ったよ。大淀が探すとしたらその位だしな。で、内容は?」

 

大淀「命令文ですが、至ってシンプルです。」

 

提督「そうなんか、珍しいな。」

 

大淀「はい。“ガタルカナル方面の敵勢力に、不穏の動きあり。先制してこれを一撃すべし”との事です。」

 

提督「成程、確かにシンプルだ。装載艇を出そう、大淀も来たまえ。」

 

大淀「分かりました。」

 

彼は戻って早々、ラバウル基地司令部に向かったのである。

 

提督(やれやれ、そう中々、楽はさせて貰えないらしい・・・。)

 

そう考えて、彼は苦笑してしまったのだった。

 

 

19時37分 ラバウル基地司令部・会議室

 

直人は会議室に通されて少し待たされた。

 

提督「やれやれ、慌ただしい事だが、まぁ命令ならね。」

 

大淀「そうですね。」

 

 

ガチャッ

 

 

佐野「やぁ、待たせたね。」

 

提督「いえいえ。」

 

佐野「それで、私に御用と言う事だが?」

 

提督「率直に申し上げますと、ガタルカナル方面の状況を。」

 

佐野「説明して欲しい、そう言う所かな。」

 

提督「恐れ入ります。」

 

佐野「まぁこの方面に一番詳しいのは我々だからね、頼ってくれて嬉しいよ。」

 

提督「率直に、今の状況はそれほど変化していないと見て宜しいですか?」

 

佐野「いや、多少は我々に優勢になっているかな。攻撃の手をガ島に集中出来るようになったのは大きいね。ただ、全体として構図は変わっていない。」

 

提督「成程。それで、敵の動きの兆候は見られますか?」

 

佐野「敵の持つ機動部隊がツラギにいる。これが最近俄かに“北へ向けて”動き始めているようだね。」

 

提督「北へですか?」

 

佐野「うん。どうやら、トラックへ再度攻撃をかける腹の様だね。」

 

提督「成程、つまり我々はこれを叩けばいい訳ですか。」

 

佐野「そうだね。恐らく大本営からは“不穏の気配”としか言ってないだろうけど、通報したのは他ならぬ私達だからね。」

 

提督「つまり、我々も頼られている訳ですな。」

 

佐野「頼り頼られ、それでいいのさ。人間社会と言うものはね。」

 

提督「分かりました、お引き受けします。すぐに準備を行い出撃したいと思います。」

 

佐野「うん、頼むよ。無事に帰って来る事を祈ってるよ。」

 

提督「はい、ありがとうございます。」

 

佐野「まぁ、例の如く、楽に勝とう。」

 

提督「そうですね。では―――。」

 

そう言うと彼は軍帽を被り直し、会議室を後にしたのだった。

 

佐野「・・・彼も大変だね。」

 

由良「あの方々は特別ですからね。」

 

佐野「“特別”ね。自分達が特別扱いされると言うのは、果たしてどんな気持ちなんだろうね。」

 

佐野海将補はふとそう考えていたのだった。

 

 

20時18分 重巡鈴谷中甲板・ブリーフィングルーム

 

提督「―――今から2時間前に軍令部から新たな命令が届いた。これに基づき、我々はいよいよガタルカナル方面へ出撃する事になった。」

 

それを告げた途端、ブリーフィングルームにはどよめきが走る。

 

提督「静かに。差し当たってはガタルカナルへの直接攻撃ではなく、出撃してくる、或いは出撃しようとしている敵艦隊に先制の一撃を加える事が目的となる。本格的な攻撃はその後になる筈だ。」

 

それを聞いて再び室内がざわついた。

 

提督「はいはい静かに。今回はソロモン諸島の北方海域に進出して、北へ向け出撃を試みようとする敵艦隊を先制攻撃によって消耗させる事が目的だ。もしかしたら反転して中止してくれるかもしれない。」

 

赤城「敵艦隊の編成についてはどの様な物でしょうか?」

 

提督「出撃して来ようとしているのは機動部隊であるらしい。君ら機動部隊の出番となるだろう。よって今回第一艦隊はラバウル沖で天城らと共に訓練となる。要請があったらばラバウル第1艦隊と演習でもしてやると良かろう。」

 

大和「致し方ありません、了解致しました。」

 

提督「第三艦隊と第一水上打撃群は出撃だ、直ちに準備に移って貰う。差し当たっては以上だ、第三艦隊と一水打群の幕僚は残ってくれ。解散して宜しい。」

 

直人の言葉で艦娘達は各々のタイミングでブリーフィングルームを後にする。

 

提督「・・・さて、どの辺で迎撃しようか。」

 

瑞鶴「航空隊での攻撃だったら、位置を限定する事は難しいけれど、ツラギの北西海上が発進地点になると思う。」

 

提督「そうだな、その辺りが妥当だと俺も思っていた。できるだけ早い方がいいだろうしな。」

 

金剛「敵が出撃してこなかったらどうするんですカー?」

 

提督「その時はツラギ空襲よ。」

 

瑞鶴「その方が楽だものねぇ~。いっそそうなってくれないかしら。」

 

霧島「相手もある事です、そう上手くはいかないでしょう。」

 

提督「そうだな、楽を出来るに越した事は無いが。」

 

霧島「相変わらずですね。」

 

提督「まぁな。兎に角、今回はガタルカナル直接攻撃を行うつもりはないと言う事だけ、覚えておいて欲しい。」

 

金剛「OKデース。それが分かっていれば、作戦も立てやすいネー。」

 

提督「第一艦隊を編成から外したのもそれが理由だ。決戦ではないからね、あくまでも敵に対する先制攻撃が目的だから、一撃したら離脱する訳だ。」

 

瑞鶴「一撃かけるだけ、か・・・。」

 

提督「不満かい?」

 

瑞鶴「そうじゃないけど、やっぱりね・・・。」

 

提督「まぁ言いたい事は分かる。いや分かるつもりだ。だからこそ、敢えて頼むんだ。」

 

瑞鶴「・・・分かった。」

 

一撃しか加えられない作戦、士気に対する影響はやはり避けられない。しかしながらこの艦隊、いっつもこんなんである。なので慣れっこであるわけだ。

 

榛名「それで、具体的にはどうしますか?」

 

提督「ツラギ方面への偵察を強化、同時にその北方も哨戒網に入れ、出撃してきた場合に備える。但しツラギ偵察は24時間遅らせる。」

 

瑞鶴「え、なんで?」

 

提督「キツツキ式に出てこられると困るからさ。」

 

榛名「・・・成程?」

 

提督「・・・つまりさ。敵に偵察した事がバレると、いらん奴まで呼び寄せるからさ。」

 

榛名「それも叩ければ、一石二鳥ではないですか?」

 

提督「いや、今回は長期戦は避けたい。あくまで敵に先制の一撃を与える事だけが今回の目的だからね。そして、あわよくば敵の目論みを中断させたい訳だ。」

 

榛名「成程・・・。」

 

瑞鶴「その分、組織化された一撃が必要だね。」

 

提督「うん、きちんとした索敵と、火力の集中が今回の決め手となってくれるだろう。壊滅させなくていい、敵の致命部に一撃を加えてくれ。それには君らの力が必要だ、瑞鶴。」

 

瑞鶴「うん、任せといて!」

 

提督「期待させて貰う。一水打群は今回第三艦隊の護衛だ、それだけ覚えて置いてくれ。」

 

金剛「出番は無さそうデスネー・・・。」

 

提督「すまないが頼む。対空防御位はやって貰うぞ。」

 

金剛「了解デース!」

 

作戦案は至ってシンプルで、様々な想定が為されるような状況でもないが、それでも洋上遭遇戦などいくつかの状況が想定され、それらに対する対案が考案されていった。それでも普段やる事とさして変わりはない。

 

 

提督「よし、まぁこんな所だろうか?」

 

瑞鶴「そうね・・・。」

 

気付けば、時計の針は24時になろうとしていた。因みに重巡鈴谷に掛けられている時計は全て軍事時計(24時間時計)である。

 

提督「よし、夜分遅くまでご苦労様、今日は散会としようか。」

 

金剛「そうデスネー・・・眠いデース・・・。」

 

提督「俺も疲れたよ・・・休ませて貰おう。」

 

榛名「そうしましょう、皆さん、また明日。」

 

瑞鶴「えぇ、頑張りましょう。」

 

霧島「はい。その為にも、英気を養う事にしましょう。」

 

こうして夜の作戦会議は終了したのである。とは言うものの4時間かかっていないのは、それだけ構図が単純だったからである。だが単純なだけに本質を見失いやすい事を除けば、この作戦案は可もなく不可も無いものだと言えた。

 

 

2月27日7時31分 ラバウル基地司令部・補給部

 

この日の朝、彼はある書類を渡す為ラバウル基地司令部の補給部門を訪れていた。

 

提督「当艦隊の出撃報告用の書類を持参しました。ご査収の上事後処理及び、必要な措置について大本営に問い合わせの上行って頂きたく願います。」

 

担当将校「承知しました。ご武運をお祈りしております。」

 

提督(何とも迂遠な事ではあるが已むをえまいて。)

 

実はこれには深い訳がある。と言うのは、実は出撃した際、消費する燃料や弾薬はその一部分が補填される形式になっているからである。サイパンにいる時はファックスで済ませていたし、幌筵やペナンでは協力を拒まれるか、密接な連携によって行動していたため必要とされなかったが、ここラバウルでは状況が異なっていたと言える。

 

ラバウル基地の部隊はまだ態勢が整えられておらず、故に横鎮近衛艦隊に対し有効な支援を行える状況ではない為、大本営への窓口代わりになっていた訳である。

 

で、消費物資の補填に関する制度は、ともすれば膨大になりがちな艦娘への補給を支援する為の制度であり、その補填は、艦隊全体の保有隻数を100とした、出撃艦数の割合に応じた量が補填されるようになっている。

 

より具体的には、出撃艦数が総数の10%の場合、出撃した艦の搭載する物資の5%が補填されるようになる。総力出撃ならば出撃全艦の燃料弾薬の50%までが、大本営から補填される為消費が実質半減する訳である。これが大型艦の同時多数運用を容易にする為の制度である事は良く分かるだろう。

 

 

8時10分 重巡鈴谷右舷タラップ

 

大淀「お戻りになられましたか。」

 

提督「いやぁ、ホンマ朝から大変やで全く。」

 

大淀「関西弁になってます・・・。」

 

提督「実際関西圏出身だし?」

 

大淀「微妙な線でしょう・・・。」

 

提督「新宮だから確かにそれ言われると痛い。」

 

※関西圏とは「京への関の西」=『関西』なのだが、三重と和歌山は結構微妙なラインで、この二県を関西に含めるかは結構議論になっている。厳密に言うと三重の場合は、丁度半分位の比率で関西と関東が分かたれている状態になっている。

(和歌山の事情を知らないので識者の方がおられましたらコメントで残して頂けましたらここに追記します)

 

大淀「では作戦準備の方をいたしましょう。」

 

提督「そうだね。」

 

直人は大淀に促され、休む暇もなく出撃の準備に移るのだった。作戦前せわしないのはいつもの事だが、この時ばかりは一際忙しかったのは傍から見ていても明らかだったようである。

 

 

2月27日14時02分、重巡鈴谷がラバウルを出港した。出港方向は例の如く南東へ、外洋へ出るとニューアイルランド島の沿岸に沿って北東に舵を取った。ただ、その装備は偶然その任務の特性と合致してはいたが、サイパンへと戻った訳では無かった為前回と同じく航空巡洋艦仕様であった。ただ今回の搭載機は防空に特化せず瑞雲を3機に増やしている。

 

 

そして、ブーゲンビル島北方の敵潜水艦哨戒線を潜り抜け、太平洋を只管進んでいく。

 

2月28日10時07分 重巡鈴谷中甲板・ブリーフィングルーム

 

提督「どうにか予想された哨戒線は抜けた様やな。」

 

瑞鶴「あとはどうにかガタルカナル北方に展開するだけね。」

 

提督「あぁ・・・問題は・・・。」

 

瑞鶴「な、なによ?」

 

提督「敵が俺達にラバウル出航にいつ気づくかさ。」

 

敵は依然としてガ島方面からラバウルへの空襲を続けている。その関係上、爆撃を行った敵機から敵が情報を得るまでの時間的なラグが彼には気になっていたのである。

 

瑞鶴「成程ね・・・。確かに、遅い方がいいわね。」

 

提督「そう言う事よ。ただ、割と頻々(ひんひん)に空襲警報が出てる事を考えるとね、そこまで遅くなることは考えにくい。」

 

瑞鶴「2日に1回は必ず鳴るものね・・・。」

 

大体やって来るのはガタルカナルを出撃した重爆の編隊であるが、時々敵機動部隊の小型機が混じっている事もある。今回先制打に打って出たのは、この深海棲艦隊の機動部隊を一時的にでも黙らせる事にあったと言える。つまるところ、敵の策動を押さえつけると言うのは副目的である訳で、大本営とラバウル基地の意図もそこにあった。

 

ただ、ラバウル進出当初は、ブーゲンビル方面から小型機が来襲する事も珍しくなかった為その頃よりはマシであった。

 

そしてもう一つブーゲンビル島方面の制海権は既に艦娘艦隊が押さえていたが、基地を建設するにはソロモン方面に対して楔を打ち込み、かつそちらに彼らの目を引き付ける事が必要だった訳だ。これからすれば、敵機動部隊を黙らせる事すらもが副目的であり、その本題は人類の戦線前進にあった訳である。

 

提督(あの人は・・・俺の目は節穴じゃないぞ全く。)

 

直人は、その動きを知っていた。と言うのは出撃の数日前、北部ニューギニアへと向かったラバウル基地建設隊とは別に、輸送船団が入港したのを知っていたからだ。更にその積荷に彼は見覚えがあった。と言うのは、それと似たようなものを彼は以前トラック(チューク)環礁で目撃していたからである。

 

瑞鶴「取り敢えず、今は前路哨戒ね。」

 

提督「あ、あぁそうだな。」

 

瑞鶴「・・・フフッ、それじゃ、私は戻るわね。」

 

提督「・・・おう、ご苦労様。」

 

そう言って瑞鶴はブリーフィングルームを出た。

 

提督「・・・佐野海将補、相当食わせ者だな。」

 

一部の者からすればお前にだけは言われたくないと言わんばかりの言葉を発する直人であった。

 

 

その頃ラバウルはガタルカナルからの空襲を受けており、基地側の40分程度の防空戦の末に敵はその目的を果たせなかったものの、湾内に重巡鈴谷の姿が無い事を認めていたのである。

 

つまり彼が心配していた頃には、敵に鈴谷のラバウル不在はバレていたのであった。

 

 

14時15分 重巡鈴谷前檣楼・羅針艦橋

 

提督「なぁ明石よ。」

 

明石「なんでしょう?」

 

彼はふと思う所があって明石に声をかける。

 

提督「高速航行時でも艦娘を収容出来るように出来んものかな?」

 

明石「あー、私も一応似たような事を考えてはいるんですけどね・・・。」

 

提督「どうした?」

 

明石「ちょっと安全性或いは安定性、またはその両方が、欠如してまして・・・。」

 

提督「まぁ難しいよなぁ・・・。」

 

それもそうなのである。以前説明したように、艦娘と艦艇のノットは1.5倍以上の差がある。

※復習

艦艇の1ノット:時速1.852km=1海里

艦娘の1ノット:時速2.638km

 

重巡鈴谷と金剛が同じ10ノットで航行しても、金剛の方が時速約8km速いと言う事は、これをそのまま3倍にすると時速24km程も差が出てしまうのである。こうした環境下で艦艇への高速収容をしようとすると、どうしても艦娘の体が危険なのである。

 

ついでなので言ってしまえば、鈴谷の最高速力は無理をしない範囲では36ノット(66.672km/h)なのだが、艦隊最速の島風はそれを大きく上回る40ノット(艦娘ノット換算で105.52km/h)、なんと40km/h弱も差がつくのだから、そりゃ危険である。

 

明石「方法として幾つかある事にはあります。その一つがハインマットなのですが・・・。」

 

提督「ハインマットと言えば水上機の揚収方法の一つだな。」

 

ハイン・マットとは、長さ30m程の帆布(はんぷ)の幕を流し、その上に水上機を乗せてリールで巻き取り引き寄せてから、クレーンで釣り上げ収容すると言う水上機収容方法の一つである。

 

史実では大和型戦艦に搭載される予定だったが、性能が今一つで取りやめになっている。

 

提督「・・・クレーン収容は効率悪くない?」

 

明石「そうですね、それで安定性も今一つなので・・・。」

 

提督「まぁそうなるよねぇ。」

 

100隻を越す艦がいるのだから効率がどうしても気になるのである。それとこの方法でも艦尾の航跡波の影響をモロに受ける為、速力に制約が出てしまう。

 

明石「あとは舷側に昇降口を設けて曳索(えいさく)を用いて収容すると言う手もありますが・・・。」

 

提督「曳索をつなぐ手間。」

 

明石「ですよね・・・。」

 

提督「スキー場のリフト形式もなぁ。」

 

明石「減速し過ぎると危険ですし・・・。」

 

提督「さりとてハッチを開ける訳にもいかん。」

 

明石「高速航行しながらの開閉は艦のバランスを大きく崩す恐れがありますから。」

 

提督「そうなると、後は何かあるかな・・・?」

 

明石「昇降口を原則にも受けるアイデアの派生で、舷側部にウェルドックを設けると言うのもありますよ。」

 

※ウェルドック:揚陸艦に見られる装備で、喫水線直上の艦尾に扉を設け、その区画を注水する事により上陸用舟艇を収容する設備。海自のおおすみ型揚陸艦を始め日本にも一定数の装備艦がある。

 

提督「ガイドを設けてやれば安全性は高められるけどな、やはり舷側と言う事で安全性を考慮する必要があるのともう一つ。」

 

明石「防御面での問題、ですか。」

 

提督「そうだ。空間装甲なんて艦と艦の戦いではまず役に立たんからな。」

 

明石「小さなウェルドックでも、艦艇の防御上水線部に対しての敵からの攻撃を防げなくなるリスクがある・・・。」

 

提督「あの大型ハッチはああいう構造だからこそ船殻一体型の装甲を張れたが、ウェルドックともなるとそうはいかん。それに注水が必要な関係で艦のバランスと速力を損なう可能性も否定出来ない。」

 

明石「両舷同時に制御する必要がありますね・・・。」

 

提督「・・・そうだ、フォークリフト方式はどうだろう?」

 

明石「フォークリフトと言うと、倉庫の荷役に使うアレですか?」

 

提督「それ以外何があるんだ。あれの要領で、床板を艦娘達の足元に出してやってすくい上げ、艦内に収容するのさ。」

 

明石「・・・ちょっと考えて見ましょう。」

 

提督「そうして貰えると助かるのぜ。」

 

明石「はい!」

 

まぁ、色々と考えて見て、煮詰めていくのも大切な事である。

 

 

3月1日0時06分 ソロモン北方沖

 

~重巡鈴谷前檣楼・艦長室~

 

提督「zzz・・・」

 

 

ガサッ・・・

 

 

提督「すかー・・・」

 

 

~鈴谷左前方7km~

 

カ級「―――。」

 

航行する鈴谷を凝視する一対の眼。しかし“ソレ”が迂闊だったのは、鈴谷の目前で無線を打った事だった。

 

 

~艦長室~

 

提督「すー・・・すー・・・。」

 

金剛「“チャンスネー。”」ササッ

 

鈴谷「“そうだね。”」サササッ

 

提督「すー・・・―――ッ!」バッ ⇐かけ布団投擲

 

金剛「―――!?」

 

鈴谷「ちょっ―――!?」

 

 

ドサドサァッ

 

 

金剛「な・・・起きてたネー?」

 

提督「何がチャンスだドアホウ。何のチャンスだ、何の。」

 

鈴谷「そこから聞こえてたんだ・・・。」

 

提督「生憎と聞き耳はそれほど悪くないぞ俺は。」

 

鈴谷「さ、流石・・・。」

 

金剛「歴戦の提督は能力も段違いネー・・・。」

 

提督「当たり前だ、大体さっき床に入ったばっかしや。」

 

金剛「ヌ・・・!?」

 

鈴谷「ぬかった・・・。」

 

提督「だがあれだな、ここに来た目的は当の昔に見当がついている、夜這いだろ。」

 

金剛・鈴谷「「しかもバレてる(デース)・・・。」」

 

提督「やれやれだな・・・。」(⇐普通に怒っている)

 

ここで溜息を一つつく。

 

提督「だが“据え膳食わぬは男の恥”とも言うしな。お前ら、覚悟しろ。」

 

金剛「えっ、ちょっ?」

 

鈴谷「このパターンは・・・。」

 

 

「「あああああああ~~~~ッ♡」」

 

 

二人の渾身の夜這いがまさかの展開で逆転されたのであった。この後主導権を握られ続けた二人はものの見事にやられ続けたのであった。

 

但し作戦前であった為彼もほどほどにしたのであるが。

 

 

6時40分、横鎮近衛艦隊はこの日も索敵機の第一陣が担当艦から飛び立つ。その頃直人が羅針艦橋に上がった。

 

 

提督「おはよ~って、明石はまだいないのか。」

 

副長「――。(まぁそうですね。)」

 

提督「まぁええやろ。」

 

大淀「おはようございます。」

 

追う様に大淀がやってくる。

 

提督「うん、おはよう。」

 

大淀「敵信傍受班が昨晩、敵潜水艦の通信を捉えました。至近距離だったとの事です。」

 

提督「敵の哨戒線に引っ掛かったようだな。こちらも本格的に動くべき段階に来たようだ。」

 

大淀「そうですね。ところで、昨晩はお楽しみでしたね?」

 

提督「はいはい、その話は後でな。」

 

大淀「そうですね。」

 

物分かりのいい事である。

 

提督「艦隊に出撃準備を。索敵の結果次第では、今日戦闘になるかもしれんな。」

 

大淀「分かりました。」

 

実の所、この出撃はいつ戦闘すると言う事は定めていない。普段であれば突入予定だとかを定めて置くものなのであるが、今回は二つの攻撃方法が併存している為、いつ戦闘になるとは明記できないのである。強いて言うならばツラギ方面突入攻撃が視野に入る程度であるが、直人にとってそれは本意ではないのである。

 

提督「索敵行動を強化しろ、何処から敵が来るか分からんぞ!」

 

隼鷹「“了解~!”」

 

飛鷹「“分かったわ。”」

 

直人は索敵の強化を命じた。これは前路哨戒から、敵地方向への警戒強化を同時に示しており、これにより敵が迎撃に出撃した場合、どの方位に対しても発見・対応出来るようにしたものであった。

 

提督「念の為だ、鈴谷索敵機も出そう。ツラギ方面に3機全機だ。」

 

副長「! ―、―――!(了解! 飛行長、水偵射出準備!)」

 

明石「索敵は念入りに、ですね?」

 

提督「そう言う事だな、艦娘達にも今の内に体を休めて置いて貰わんと。いつ戦闘になるか・・・。」

 

大淀「ではその様に指示しておきますね。」

 

提督「うん。」

 

直人は適切と思われる措置を次々に実行に移すと、悠然と艦橋に留まって情勢の変化に備えたのである。

 

 

時は少し遡ってこの日の0時10分、鈴谷発見の報告はガタルカナル棲地を驚天動地の喧騒に変えていた。

 

飛行場姫「何?! あの巡洋艦がソロモン北方沖に現れた!?」

 

ヘ級Flag「ソノヨウデス。」

 

飛行場姫「まずい、奴らの目標は今度こそこの私よ、何としても阻止しなくては。」

 

「果たしてそうでしょうか?」

 

飛行場姫「―――!」

 

焦るロフトン・ヘンダーソンに異を唱えた者、それは―――

 

飛行場姫「ギアリングか・・・。」

 

駆逐棲姫「例の艦隊の動きは画一性を欠きます。常に新たな着想で新たな戦域にその姿を現しています。結果として我々はその動きを読み切れず、或いは全く関与出来ないままにやられ、しかも今のところやられっぱなしです。」

 

飛行場姫「それで?」

 

駆逐棲姫「常道から言えば往々にして、こうした行動は如何にも重要なポイントに攻撃を行うと考えがちですが、実際そうであった例は半々もあればいい方でしょう、と言う事です。」

 

飛行場姫「では今回はどちらだと?」

 

駆逐棲姫「恐らく“そうでない方”でしょう。我々の規模を把握出来ない程、例の艦隊は愚かではありません。事実彼らは私達を相手にせず、ポートモレスビーのみを集中攻撃して陥落させています。もし私達が初動で救援していれば、状況は変わっていたでしょうが。」

 

飛行場姫「っ・・・、まぁいい。しかしとんでもないタイミングに飛び込んで来たものだな、機動部隊の出撃する正にその日とは・・・。」

 

駆逐棲姫「むしろノースカロライナの機動部隊に迎撃させればいいでしょう。作戦行動のついでと言う事であれば・・・。」

 

飛行場姫「成程な、確かにその通り。いいでしょう、ノースカロライナは予定通り出撃させなさい。」

 

へ級Flag「ハッ!」

 

ロフトン・ヘンダーソンは駆逐棲姫の進言を容れ、横鎮近衛艦隊に対し積極的かつ能動的な迎撃をしない事をこの時点で決定していた。しかし、これはこれで彼の狙った獲物が向こうから飛び込んで来る事になった訳である。

 

 

南方棲戦鬼「“例の艦隊”ね、ソロモン北方沖以来か。」

 

南方棲戦鬼『ノースカロライナ』は闘志を漲らせている。

 

南方棲戦鬼「だが、我が艦隊も練度に劣るとは思われない、質でも同等だろう、我が艦隊にも勝ち目はある。」

 

ノースカロライナは南西太平洋方面艦隊でも歴戦の部類に入る艦隊を率いている。即ち、彼女の指揮下にあるのは戦艦級127、空母級630を主軸とした、16TF(第16任務部隊(タスクフォース))なのである。

 

この16TFこそが南東戦線で問題になっている敵機動部隊である。周密で有効な一打をラバウル方面に加えている為、ラバウル基地も対応に苦慮している状況であり、よしんば接敵しても練度の高さから、人類側の『油断のならない相手である』と言う戦力分析は正しかった。

 

そしてこの16TFこそが、横鎮近衛艦隊が撃退するべき相手であった。

 

南方棲戦鬼「エンタープライズ! 索敵を怠るなよ、奴らは何処に現れるか分からんからな。」

 

ヲ級改Flag「承知しました。」

 

16TF所属空母の全てを掌握し、自身も第1群を指揮する航空母艦級深海棲艦ヲ級改Flagship『エンタープライズ』が、ノースカロライナの傍らで応じる。エンタープライズの名は、アメリカから数えれば十一代目に当たる。

 

 

九代目はジェラルド・R・フォード級原子力空母の3番艦(CVN-80)、十代目はその次級に当たる原子力空母、ウッドロウ・ウィルソン級の6番艦(CVN-91)として2048年に戦争による荒廃から来る不況の中で戦時体制下の量産により就役、2054年現在アメリカ最新鋭の空母の一つとして現役である。

 

因みに九代目エンタープライズは、2045年2月9日に起こったフロリダ沖海戦で撃沈されている。この時生還したエンタープライズ艦長が後年に「アメリカの技術の粋を集めた空母が、こうも呆気なく沈められてしまっては、国民に申し訳なく思うと同時に、合衆国はもうおしまいだと思った。」と手記に記した事は有名である。

 

なおイギリスから数えるとエンタープライズと言う艦名は十七代目に当たっている。

 

 

話を戻すが、この十代目エンタープライズも武勲に恵まれているのか、ノースカロライナの率いる16TFでは最古参のメンバーの一人である。ラバウル沖海戦では当時の高雄艦隊(現・トラック艦隊)を相手に戦果を挙げ、ソロモン北方沖海戦では横鎮近衛艦隊の猛攻を受け大破しながらも潜り抜けたと言う強運を持つ。

 

このため姫級であるノースカロライナからも一目置かれており、また口調から分かる通りオリジナルのエンタープライズである為スペックもその辺の量産型とは比較にならない。まず信頼されていると言っていいだろう。

 

南方棲戦鬼「雑魚の群れを叩きに行くよりは、強敵と会いまみえた方が甲斐があるに違いない。精々、期待させて貰うとしよう。」

 

だがこの時ノースカロライナの脳裏では、横鎮近衛艦隊とは「ソロモン北方沖で出くわした曲者」と言う程度の認識であり、「例の巡洋艦(or艦隊)」=「横鎮近衛艦隊」と言う結びつきが無かった事が悲劇を招く事になるのである。

 

 

8時20分 重巡鈴谷

 

提督「敵発見!?」

 

隼鷹「“しかも空母級がわんさかいるよ!”」

 

興奮した調子で報告してくる隼鷹。発見したのは紛れもなく16TFであった。

 

提督「で、位置は?」

 

隼鷹「“あ、えっと位置は・・・”」

 

飛鷹「“はぁ、全く。位置はツラギ北方160kmよ。どうする?”」

 

提督「そうだな・・・。」

 

直人は暫し考え込んでから決断を下す。

 

提督「ガタルカナルからの航空支援が気になるがいいだろう、全艦隊出撃! 空母を先に出せ、戦艦は最後でいい!」

 

金剛「“了解デース!”」

 

提督「第一次攻撃隊は発艦準備完了次第発艦せよ! 手空きの空母は直掩機を出して上空警戒だ、一刻を争うぞ!」

 

瑞鶴「“了解!”」

 

提督「両舷ハッチ開放! ラバウルで取り付けた作動同調装置の実力を見せて貰おうか。」

 

明石「お任せ下さい!」

 

命令一下、鈴谷後部両舷にある艦娘発進口ハッチが開く。それまで作動が連動していなかった為高速での作動が不可能だった欠点が、今回ようやく解消されたのだ。最大戦速で疾駆する鈴谷から、次々と艦娘達が出撃する。

 

直人が下した命令は至ってシンプル、『攻撃せよ』であった。第二次ソロモン北方沖海戦は、横鎮近衛艦隊がソロモン諸島の北方800kmに陣取って敵を迎え撃つ形での戦闘となった。即ち、かつての大海戦、ソロモン北方沖海戦の古戦場に、彼と彼女達は戻ってきた訳である。新たな仲間達を加えて―――

 

 

南方棲戦鬼「もう発見されたのか、敵は近いぞ、索敵を強化して探し出せ!」

 

ヲ級改Flag「ハッ!」

 

南方棲戦鬼「600km圏内に奴らは必ずいる筈だ、見つけ出してやるぞ・・・。」

 

この時ノースカロライナは、艦娘艦隊の艦載機が作戦行動出来る半径を見誤っていたと言える。敵の性能が分からない場合は自分達と同等と想定するのが一般的だが、今回はそれが裏目に出てしまった格好になる。

 

それを知らないノースカロライナは、小躍りしてエンタープライズに索敵強化の指示を出していたのである。実際には16TFの空母から索敵機が追加発進を開始した頃には、横鎮近衛艦隊からの第一次攻撃隊140機が、既に一航戦各空母から飛び立っていたのである。これが8時27分頃の出来事である。

 

 

8時28分 横鎮近衛艦隊

 

瑞鶴「第一次攻撃隊、全機発艦完了!」

 

飛び去って行く一航戦攻撃隊を見送りながら瑞鶴が直人に報告する。総数140機、中には瑞鶴戦闘機隊の岩本小隊と、翔鶴戦闘機隊の岩井小隊も含まれている。

 

この時の一航戦装備機は三航戦に比べるとまだ弱体であり、天山一一型と九九式艦爆二二型を装備している。戦闘機は若干差異があり、翔鶴戦闘機隊(付岩井小隊)が零式艦戦二二型、瑞鶴戦闘機隊(付岩本小隊)が二二型甲を装備している。

 

二二型と二二型甲の差異はその武装であり、20mm機関砲である九九式が、一号三型銃(短銃身)を装備しているのが二二型、二号三型銃(長銃身)を装備しているのが二二型甲で、外見からも翼内銃の銃身が飛び出している為この二つを見分けられる。

 

提督「“ご苦労様、引き続き警戒を続けてくれ。敵機を発見したらすぐに報告するんだ。”」

 

瑞鶴「了解! ・・・ふぅ。」

 

翔鶴「瑞鶴、お疲れ様。」

 

瑞鶴「翔鶴姉、ありがと。」

 

翔鶴「良く晴れてるわね。」

 

瑞鶴「えぇ、本当に。でもここまで快晴だと、かえって見つかりやすいだろうなぁ。」

 

瑞鳳「余り早いのも考えものよね~。」

 

瑞鶴「動きにくくなっちゃうからね~。」

 

秋月「・・・。」( ̄∇ ̄;)

 

この時秋月は、(食堂で見た会話の雰囲気(ノリ)と同じだ)と内心思っていたのだった。まぁどこでもいつも通りなのが横鎮近衛艦隊であり、言わば自信と余裕の表明のようなところがあった事は確かだった。実際司令官がああなのだから艦隊にも伝播するのは当然だったのだが、ここ数戦張り詰めた雰囲気だったのも確かだろう。

 

※そもそもポートモレスビー攻略もMO作戦のやり直しに近い性格があった為、当時の参加艦艇を始め皆真剣にならざるを得ない

 

 

8時32分、進撃中の第一次攻撃隊から、次のような報告が第三艦隊旗艦瑞鶴へともたらされた。

 

“敵索敵機と思われる機影とすれ違った”と言うのである。

 

この報告はすぐに直人にも届けられた。

 

 

8時34分 重巡鈴谷前檣楼・羅針艦橋

 

提督「ふーむ・・・」

 

瑞鶴「“どうする?”」

 

提督「・・・先手を取ろう、見つからん方が良かろう。」

 

瑞鶴「“―――了解。”」

 

明石「でも提督、撃墜してしまったら、結局いる事が分かってしまうのではないでしょうか?」

 

提督「だがはぐらかせる、“正確な位置”はね。尤も、敵が攻撃されてる事を打電出来ぬまま撃墜出来たら、我々のここへの所在と言う情報は闇へと葬り去れるだろうがね。」

 

明石「はぁ・・・。」

 

提督「今はこれでいい、我々は積極攻撃を開始したばかりだからな。少しでも敵に発見されるまでの時間を遅らせるんだ。敵方へと徐々に接近しつつある現在、敵艦隊の索敵圏内へと我々は確実に接近しているのだからな。」

 

明石「はい。」

 

 

一方で、攻撃隊が敵索敵機とすれ違った事は、敵索敵機から16TFへも通報されていた。それは即ち、横鎮近衛艦隊の攻撃開始を静かに告げていたと言える。

 

~深海棲艦隊・16TF~

 

南方棲戦鬼「なに!? 敵編隊が我々に!」

 

ヲ級改Flag「どうされますか?」

 

南方棲戦鬼「―――レーダーピケット艦を前に出せ、戦闘機を上げていつでも対応出来るようにして置け! そう易々と、長距離航空攻撃を通すものか!」

 

ヲ級改Flag「はい! レーダーピケット艦、前へ!」

 

ノースカロライナも的確に状況を把握し指示を出していく。レーダーピケット艦とは、レーダーを主用して敵を索敵する任務を与えられた艦の事で、第二次大戦では主にアメリカ駆逐艦がこの任を担い、単独で展開して任に当たっていた。このことが、日本軍の体当たり攻撃を困難にし、また米駆逐艦の損耗を増やす事になった事実は、その結果が示している。

 

そしてそれは、深海側にとって最も効果的な迎撃網を整備する事になったのも事実だった。

 

 

一方で、横鎮近衛艦隊が発見されたのは、皮肉にも僅か11分後の8時43分の事だった。彼はその事を確認するや直ちに第二次攻撃隊の発艦を命じた。短期間に畳み掛ける様に攻撃する事を期したのである。そして16TFからも、エンタープライズ以下の第1群から艦載機が発艦を開始していた。

 

 

9時17分 16TF北方40km洋上

 

岩本「―――。!」

 

最初にその存在に気付いたのは零戦虎徹こと岩本徹三だった。彼は直ちにバンクしてそれを伝えると増槽を捨て、急上昇に移った。その時には既に敵戦闘機が上空からダイブしていたのである。

 

 

~重巡鈴谷~

 

瑞鶴「“第一次攻撃隊が敵の迎撃に遭遇、現在応戦中だって!”」

 

提督「なんだって!?」

 

その報告に驚いたのは当の直人であった。今までこう言った事は無く、またして来るとは考えていなかったからだ。

 

瑞鶴「もしかしたら、あの時と同じ手かもしれない。」

 

提督「―――!」

 

明石「まさか、レーダー防空網―――!」

 

提督「ピケット艦を探せ! このままではこちらが不利だ!」

 

瑞鶴「了解!」

 

提督「こちらからもピケット艦を出そう、2隻でいい、至急手配してくれ。」

 

金剛「“了解デース!”」

 

直人は敵に対抗する形でレーダーピケット艦の抽出を決定した。泥縄式でこそあったが、まだ間に合う範疇であると彼は考えたのだった。だがその打算も空しく、9時17分には進出を開始したピケット艦である浜風から早くも第一次攻撃隊接近の報告が齎されたのである。

 

提督「くっ、敵もどうして打つ手が早い、迎撃するんだ!」

 

瑞鶴「“もうやってるわ、見てて。”」

 

提督「分かった、頼むぞ。」

 

瑞鶴「“えぇ!”」

 

 

赤松「アシが短くて攻撃出来ない分、俺達で食い止めるぞ、藤田隊続け!」

 

赤松中佐以下雷電一一型改で編成された加賀戦闘機隊が先陣を切る。ついで蒼龍の藤田怡与蔵率いる、十五試局戦改がこれに続く。横鎮近衛艦隊空母部隊の特徴の一つとして、本来局地戦闘機(=防空用陸上戦闘機)である機体を、艦隊航空隊として保有している点があった。これはそのまま、艦隊防空能力が高い事を指し示していた。

 

 

浜風「“敵機視認、高度4000から5500、距離、本艦より12時方向距離40km!”」

 

提督「浜風とは5kmも離れていない。距離2万で三式弾射撃だ、射距離を満たす各艦射撃用意せよ。主砲旋回、方位60、仰角最大!」

 

明石「了解!」

 

瑞鶴「“攻撃隊にも通知するわね。”」

 

提督「なんでしれっと聞いている。」

 

瑞鶴「“いいじゃない別に。”」

 

提督「せやな。射程を満たさない場合は1万4000で射撃せよ、事後は零式通常弾及び対空機銃、高角砲で迎撃するんだ。追い付けるなら大型艦も主砲を使って構わない。」

 

一同「「“了解!”」」

 

 

赤松「20kmだな? 了解! 全機突入!」

 

赤松中佐を先頭に、直掩隊が覆いかぶさるように突撃する。赤松中佐機の雷電が射撃照準器のレティクルに敵機を収め、必殺の20mm4門を放つ。その一航過を終えてその敵機を撃墜する事は出来たのだが、その時見たものを彼はすかさず報告した。

 

「全機警戒! 敵機の中に航空機型がいる!!」

 

 

提督「航空機型だと!?」

 

明石「そんな、あれは陸上でしか運用出来ない筈です!」

 

提督「俺もそう思っていた・・・だがよく考えて見ると、レポートの中には超兵器級が運用していたというデータはある。前例のない話ではないのだが・・・。瑞鶴!」

 

瑞鶴「“なに?”」

 

提督「発見した敵に超兵器級を捕捉したと言う情報は?」

 

瑞鶴「“いえ、無いわね。もしかすると・・・”」

 

提督「―――敵の量産型が運用している可能性、か。」

 

瑞鶴「“流石ね、私もそう思ってた。”」

 

“航空機型深海棲艦機”、横鎮近衛艦隊もようやく見慣れて来た敵艦載機の高性能機体である。その種類は様々であり、小型戦闘機から高高度戦略爆撃機まで多種多様に渡る。当然艦載機もあってしかるべきである所だった訳だ。

 

しかもこの航空機型は、エンタープライズから放たれたものなのである。その証拠として、赤松機が撃墜した機体の尾翼にはエンタープライズが搭載していた航空隊、VF-6(第6戦闘飛行隊)の識別番号が描き込まれていたのだ。

 

 

赤松「地獄の猫(ヘルキャット)か、相手にとって不足はねぇ!」

 

赤松中佐は闘志を漲らせ、強敵に悠然と立ち向かっていくのであった。余談だが赤松中佐は生前、対戦闘機戦闘には不向きとされた雷電を駆って、今回の航空機型のモデルと思われるF6F“ヘルキャット”艦上戦闘機を撃墜したという実績まで持っている。

 

 

一方、第一次攻撃隊の攻撃は失敗に終わりつつあった。

 

敵戦闘機の強襲により編隊が四散し、それによって結果的に敵対空砲火は分散されたものの、その突破は困難を極め、結局空母に攻撃を集中して10隻を撃沈、24隻に何らかの損傷を与えたものの、全体として損害は軽微であったと言わざるをえず、村田機より次の電文が発信される。

 

「第一次攻撃は全般として成功せるも、攻撃結果不良に付き敵に打撃を与えるに至らず。反復攻撃の要有りと認む。」

 

 

9時29分 横鎮近衛艦隊上空

 

その頃横鎮近衛艦隊の南方20kmの上空は、敵機の墓場と化していた。三式弾の威力を甘く見た敵攻撃隊は堂々とそのラインを押し通ったまでは良かったものの、その先頭集団が三式弾の一斉射撃で吹き飛ばされると事情は多少異なり、混乱し四散してしまったのである。

 

 

~重巡鈴谷~

 

提督「撃て!」

 

 

ズドドオオォォォーーーー・・・ン

 

 

提督「これだけの集中投射だと流石に壮観だな。夜にやったらどんな芸術的な花火かな。」

 

明石「提督!」

 

提督「冗談だよ、言ってみただけさ。」

 

明石「緊張感無さ過ぎませんか・・・。」

 

提督「緊張して勝てるならそうするさ。」

 

明石「は、はぁ・・・。」

 

提督「それより、敵が突破して来るぞ。弾幕形成用意。」

 

副長「!(はい!)」

 

直人は緊張してはいなかったが落ち着き払っていた。

 

提督「多いなぁ、今回は。」

 

明石「来襲機数自体がどうやら4000を超えていたようですし・・・。」

 

提督「ほう、分析早いな。」

 

明石「勿論です、こうした所でお役に立たなくては!」

 

提督「フフッ、お前にはなんだかんだで助けられてるな。その献身に応える為にも、この一撃を防ぐか!」

 

明石「はいっ!」

 

提督「全艦対空戦闘用意! 敵の数は多いぞ、落ち着いてやれ!」

 

一同「「“はいっ!!”」」

 

いつもの事ながら、艦隊の士気は非常に高い。この点は直人も心配していなかった程なのである。これまでの22か月間、彼と艦娘達の間には様々な事があったが、一度戦場に出てしまえば、そこには“団結”の二文字が確かに存在していた。これは横鎮近衛艦隊の様な提督と艦娘が共生関係にある艦隊特有の利点であった。

 

後檣楼電探室

「“敵編隊との距離、1万2000!”」

 

提督「各艦、各自の判断で射撃開始! 水戦隊は攻撃終了後の敵機を狙って攻撃せよ。」

 

明石「何故そうするのですか?」

 

提督「相手が油断したタイミングを狙いやすいと言う事、それ以外には消耗を強いると言う位だな。水戦隊にも出番を与える必要があるが、その際離脱中の敵機は艦娘からでも把握しやすいからな。」

 

明石「成程。」

 

この戦法は「送り狼戦法」と呼ばれている。日本ではB-29迎撃の際に用いられていた戦法でもある。が、水上戦闘機である二式水戦改の性能的限界を知る彼が、少しでも有利な体制で戦闘を行わせようと言う、彼なりの戦術上の配慮が含まれていた。

 

 

一方で、第二次攻撃を要請した電文に対する直人のアクションは無かった。もう既に第二次攻撃隊は発進していたからであって、その構成部隊は板谷茂を始めとしてエース揃いの二航戦と三航戦(旧一航戦)の飛行隊250機から編成されていた。

 

第一次と第二次で100機以上機数が異なるのは、第一撃は敵を消耗させる事に重点が置かれていた訳だが、どちらかと言えばキャリアの短い一航戦の航空隊にはある種たまったものでは無かっただろう。

 

その点戦闘機隊を多めにした瑞鶴の采配は正しかったともいえ、第一次攻撃隊では艦爆は殆ど帯同していなかった代わりに戦闘機は90機が発進していた。足りない分は雲龍などが埋めていたが。

 

 

9時34分、まだ第一次攻撃隊が交戦中のさなか、第二次攻撃隊は高度5000mから一斉に突入を開始した。空戦域は4500m近辺であるため高度優位である。

 

零戦五四型が次々に翼を翻していく。下方では味方も苦戦しているし、その防空網のせいもあって、第一次攻撃隊に随行した戦果確認機である二式艦偵が未帰還となっている程なのだ。猶予は余りない。

 

第二次攻撃隊に随行した二式艦偵は高度を取るため上昇していたが、おかげで空戦場の様子がよく分かった。

 

 

~重巡鈴谷~

 

提督「なんだって!? 数千の戦闘機だと―――!?」

 

赤城「“はい、戦果確認機として随行させた二式艦偵からはその様に報告が。”」

 

提督「・・・我々は敵の実力を履き違えていたのかもしれん。それではまるで棲地の主力並みの勢力ではないか。」

 

赤城「“それも敵の機材は北マリアナ棲地の時とは比較の段になりませんから・・・。”」

 

提督「状況はむしろ悪いと、そう言う訳か。」

 

赤城「“はい。私達の攻撃隊だけで、どうにかなるかどうか・・・。”」

 

提督「―――エース揃いだ、何とかなると信じようではないか。」

 

赤城「“分かりました。”」

 

 

数的には圧倒していた深海棲艦機であるが、所詮はメカに近いものであるから性能は艦娘艦載機より大幅に劣る。この為落ちていくのは殆どが黒い(やじり)や白い球の様な深海棲艦機だけであった。

 

また1機、零戦が濃緑色の主翼を舞わせて敵の新型機を撃墜する。敵機の認識を外した零戦が、瞬く間に背後へ周り敵機を手もなく撃墜する。岩本機や岩井機もそれぞれに2機のコンビネーションプレイで凌ぐ。空戦場は敵機で溢れ返っていたが、撃墜されるのは敵機ばかり、時々日の丸が混じる時もあるが、全体としては第二次攻撃隊の加勢によって優勢に進めていたと言えた。

 

 

南方棲戦鬼「敵が突入して来るぞ何をやっている、戦闘機の一部を割り当てろ!」

 

ヲ級改Flag「ですが空戦の状況が思わしくなく、今割くと総崩れになる恐れが!」

 

南方棲戦鬼「―――くそっ! 対空射撃を絶やすな!」

 

ヲ級改Flag「ハッ!」

 

ノースカロライナは指示を出すものの、その実第一次攻撃隊が離脱した直後ともあって、各部隊は態勢を立て直している最中と言う所であった。この為第二次攻撃隊はその態勢の整っていない敵陣へと突入する事になった。

 

南方棲戦鬼「撃て撃て! 近寄らせるな!」

 

ノースカロライナが吼える。しかし隊列が乱れっぱなしな為所詮は些末な抵抗でしかなかった。それでも尚、レーダー管制まで用いた対空射撃が加わって来た為その射撃は熾烈を極めたのである。

 

艦攻隊が海面に舞い降りているその最中から、至近距離で高角砲弾が炸裂する。艦爆隊にも編隊の維持が困難なレベルで砲火が集中して来ていたが、それでも彼らは整然と進撃を全うしていた。

 

 

「敵機急降下!」

 

南方棲戦鬼「回避ッ!!」

 

彗星艦爆の急降下が開始されると、回避運動の為隊列は更に乱れる。当然ながら護衛艦も対応する為雷撃隊への砲火が薄くなっていた。そこへ天山を軸とする艦攻隊が海面すれすれの高度を、2機1チームで同時に突入を開始した為にどちらを対応すべきか分からず、現場は混乱してしまった。

 

南方棲戦鬼「上下同時攻撃―――見事だな。敵の雷撃隊を狙うのだ、急げ!」

 

ノースカロライナは艦爆のダイブと艦攻の突入に若干の時間差がある事を見抜き、海面付近の艦攻隊に火力を集約するように指示を出した。しかしこれは端的に言うとどちらとも言えないが、どちらにしてもいい結果には結びつかなかったと言えるだろう。

 

艦爆隊への砲火減少で悠々と投弾出来た艦爆隊は、敵の対空射撃中の補助艦艇に対して重点を置いて投弾、更なる混乱を誘発させたところへ艦攻隊が弾幕を突破したのである。

 

 

前檣楼見張員

「“敵機急降下!!”」

 

その頃横鎮近衛艦隊側も弾幕を一部で突破されていた。

 

提督「左回頭、迎撃しろ!」

 

明石「了解!」

 

副長「!(了解!)」

 

随所に設けられた25mm機銃が一斉に火を噴き、船体は右に(かし)ぎながら左へと回頭して行く。直人は艦橋で踏ん張って立っていた。

 

 

ドォォォーーーン

 

 

右舷見張員「“右舷至近に着弾! 至近弾です!”」

 

提督「よし、原進路に復帰!」

 

明石「はい!」

 

明石と直人、副長の3人が揃っている時、直人は艦の制御には関わらず、デバイスを開いているがそこから状況を座視しているのである。因みに操舵を明石、兵装指揮を副長が担当している形になる。但し直人が艦の指揮に介入する事はままあるのである。

 

提督「よくやっているじゃないか、敵も味方もな・・・。」

 

二式艦偵からの報告を受け取りつつ指揮を出している彼は、戦況を眺めながらそう思った。

 

提督「どうやら敵は、にわか作りの混成部隊ではない様だな。」

 

直人は当たってみた感想としてそれを確信したのであった。この時期深海棲艦隊の実情について艦娘艦隊側で把握している情報は少ない為、当たってみて分かった場合が少なくない訳である。ただ一つ言える事は、馬鹿正直に6隻1個艦隊で編成していた艦隊では不利になりがちだったと言う事だろう。

 

 

「敵機直上!!」

 

ヲ級改Flag「ッ!?」

 

南方棲戦鬼「エンタープライズッ!!」

 

彗星(三航戦二番艦所属機)3機が、エンタープライズの直上から五〇番(重量:500㎏)爆弾を投弾する。

 

 

ドドオオオォォォォーーー・・・ン

 

 

ヲ級改Flag「ぐあああっ!?」

 

1発は外れ2発がエンタープライズに直撃する。ヲ級クラスが持つ頭部の帽子型武装は、想像に難くないとは思うがまぁまぁ被弾面積が広く(=目立ち)、この為被弾しやすいのである。

 

ノースカロライナが思わず駆け寄ると、エンタープライズは額に血を流しながらも立っていた。しかし武装は無残にひしゃげ、最早使い物にならないであろう事はノースカロライナにも分かった。

 

南方棲戦鬼「大丈夫か?」

 

ヲ級改Flag「まだ、何とか動けます。」

 

南方棲戦鬼「そうか、良かった・・・お前はいつも、運がいいからな。」

 

ヲ級改Flag「恐縮です。」

 

南方棲戦鬼「急ぎ後方に離脱しろ、お前を喪うのは痛いからな。」

 

ヲ級改Flag「そうさせて、頂きます。」

 

南方棲戦鬼「帰りを待っててくれ。マッコール! 麾下駆逐隊で護衛してやれ。」

※マッコール(ハ級Flagship)

 

ノースカロライナはエンタープライズを後送する手配をすると、自らは陣頭指揮に立ち返って防戦に努めた。しかし損害は無視出来ず、主力空母群の一部が致命的な一撃を受け、30隻以上の空母が撃沈されてしまうと言う痛手を被る事になった。また辛うじて撃沈を免れても、最早作戦行動を続行し得ない艦も多発し、それらは護衛を受けて後方へと引き返して行った。

 

南方棲戦鬼「―――まさかとは思うが、例の巡洋艦は、“例の艦隊”を乗せているのか・・・?」

 

今までそれ程関わりの無かった事だっただけに情報を持っていなかったノースカロライナも、その航空隊の練度を見るに至ってはそう直感したのも無理は無かったし、その直感は的を射ていただけになまじ性質が悪かった。

 

南方棲戦鬼「だとしたら憂慮すべき事態だな。第二次攻撃隊を準備しろ急げ!」

 

ノースカロライナは急いで第二次攻撃の準備を命じる。この間にも横鎮近衛艦隊は攻撃を受け続けていたものの・・・

 

 

~横鎮近衛艦隊~

 

 

ドオォォーー・・・ン

 

 

時津風「いたたぁ~・・・。」

 

天津風「時津風、大丈夫!?」

 

時津風「アハハ、大丈夫だよ、何とか動けるよ~!」

 

 

提督「おいおい・・・時津風、無理はするなよ~。」

 

時津風「“あ、司令! 分かってるって~。”」

 

提督(心配だな・・・)「天津風、ちゃんと見といてくれ。島風は援護してやってくれ。」

 

天津風「“分かったわ。”」

 

島風「“は~い。”」

 

流石に時津風のノリと喋りは直人にも心配になるレベルでのほほ~んとしていたのであった。雪風や天津風とはえらい違いで、島風とは別ベクトルで心配になって来る訳である。

 

 

ただ状況としては、秋月とその教えを受けた摩耶の懸命な射撃により各個撃破された雷撃隊が多かっただけに、艦隊への損害はほぼ皆無で、急降下爆撃によりいくらかの艦(時津風含む)が損害を受けた程度に留まっていた。

 

提督「損害状況は?」

 

明石「応急措置は完了しています。現在船体の再構成を行っている所になります。」

 

提督「うん、分かった。」

 

鈴谷も魚雷1本を右舷後部に、爆弾1発を煙突基部に受けていたが重大な損傷に至らなかったのは不幸中の幸いであろう。

 

提督「まぁなんだな、そうそう簡単にこの船が沈んでも敵わんと言うのはあるがな。我々が持つ技術を結集した船だし。」

 

明石「お褒めに与り恐縮です提督。」

 

提督「畏まらんでもいい。実際よくこれだけのものを創り上げてくれたよ。」

 

明石「そう言われますと、精根かけた甲斐があったと言うものですね。」

 

提督「不沈艦と言うものは幻に過ぎんが、それに近い物を作ってくれたことに、感謝すべきかもしれんな。」

 

明石「ありがとうございます。」

 

提督「それにもう1隻と言う事になってもランニングコストが馬鹿にならんしな。」

 

明石「ッ! アハハハ・・・。」

 

明石にしてみれば、言おうとした事を直人に先に潰されてしまったのであった。

 

 

9時53分、直人は第三次攻撃隊280機の出撃命令を下す。敵の第二次攻撃隊は既に発艦を開始していたが、それを彼は把握していない。しかしそれ程問題とされるような事でもなかったのは確かである。なぜなら、敵の次の攻撃までに、彼らは直掩機を着艦させ、補給させる余裕があったからである。何ならば交代に上空へ上れる機体も存在している。

 

お互いほぼ同時に打った次の一手は、全力を以っての航空総攻撃によって交わされたのである。

 

そしてその大役を指揮官として担う事になったのが、飛龍飛行隊長、友永丈市であった。かつて、圧倒的劣勢を挽回すべく飛び立った悲運の熟練兵は今、堂々たる航空撃滅戦を指揮する身として、艦攻隊の先頭を飛んでいた。

 

 

提督「―――彼がこれだけ堂々たる攻撃隊の指揮を執る事になるとは、思っても見なかっただろうな。」

 

飛龍「“だと思います。”」

 

多聞「“しかも今回はどうやら勝ち戦だ。”」

 

提督「そうですね、負ける要素は今のところない。どうやらお互い対等の相手の様だが、搭乗員の技量と言う点ではこちらが勝っていた様だ。」

 

これに今一つ正確を期すならば、深海側に“搭乗員”の観念は存在していない。深海式のメカニズムによって構築された隷属型AIに近しい人工生物であるからである。

 

提督「しかし最近出番がない。」

 

明石「ない方が、いいんですよ?」

 

提督「まぁ確かに。」

 

直人が出るとしたら敵に超兵器がいる場合である。巨大艤装自体が人類側の超兵器に近しい存在であるが為に、彼はその使い所を見極めているのである。勿論それだけではなく、消費が馬鹿にならないと言う問題もはらんではいた。

 

明石「今回の改装で軽量化を図った事で燃費は良くなってますけど、消費の莫大さはそれほど改善してませんからね。」

 

提督「いやー、そこまで留意してくれるのはありがたい限りだね。」

 

明石「技術者と言うのは、全ての面に於ける性能改善に気を配るものです。」

 

明石は誇りをもってそう断言して見せるのだった。

 

 

10時14分 横鎮近衛艦隊

 

瑞鶴「―――あっ、戻って来た!」

 

翔鶴「本当ね、収容準備!」

 

瑞鳳「はい!」

 

 

提督「随分数が減ったな・・・。」

 

明石「そうみたいですね・・・。」

 

140機いた第一次攻撃隊は、その威容を二周り以上減じさせていた。

 

雷撃機は殆どが被弾し、後の報告を集計した所、帰路11機が何らかの原因により飛行不能となって不時着水したと言う。その他投弾前に撃墜された艦攻6機、投弾後撃墜されたもの9機、帰投したものの修理不能の艦攻18機にも及び、一航戦の繰り出した艦攻隊は壊滅に近い打撃を被っていた。

 

攻撃隊の指揮を執った村田少佐機も辛うじて母艦に滑り込んだが、最早飛行可能にする事は不可能であった1機に名を連ねている。だがこれはむしろ、それだけの損傷を負った機体をここまで飛ばせた事をこそ、称賛するべきであろう。

 

戦闘機隊も圧倒的寡勢と言う状態で長時間にわたる戦いを強いられたが為に、90機の零戦は68機にまでその数を減じていたが、岩井特務中尉・岩本中尉は生還しており、やはり岩井機に被弾は無かった。そしてこの戦いで岩本機は撃墜数14機を数える大戦果を挙げていた。第一次攻撃隊の戦闘機では断トツで多い。

 

提督「・・・これだけの損害を被ったのは久しぶりだな。」

 

瑞鶴「“ごめんなさい、もう少し多くの戦闘機を要請していたら、こんな事には・・・。”」

 

提督「何を言うんだ、そんな状態でも、彼らはよく頑張ってくれたよ。これだけの奮闘を、誰が馬鹿にする権利があるものか。瑞鶴のせいじゃないよ、戦いは相手があってこそだ。」

 

瑞鶴「“うん・・・ありがと。”」

 

提督「―――帰還機を直ちに収容しろ! これ以上、1機も1人も失う事はならんぞ! 各駆逐隊は不時着機の対処に備えろ!」

 

直人は威儀を正して指示を出す。どれだけ失うものが多かろうとも、それを局限するのも彼の仕事である。この戦いで人類は多くのものを喪い、その終わりの日まで失い続けるだろうが、例え文明が後退しようとも、この戦いを勝ち抜かなくては彼らに未来はない。

 

その為には出来得る限り何も失わない方が良い。それは当たり前の事だが、彼の心情ともマッチした事柄でもあった。

 

 

バキッ―――

 

 

瑞鶴「ッ―――!」

 

瑞鶴の手元に握られようとした矢が、また1本折れた。艦載機5機に相当する1本の矢だが、これで折れた矢は、瑞鶴のものだけでも5本目である。

 

瑞鶴「・・・相当やるみたいね、敵は。」

 

翔鶴「瑞鶴・・・。」

 

瑞鶴「―――また、今日も多くの子達が帰ってこなかった。」

 

加賀「・・・それが、戦争なのよ。」

 

瑞鶴「分かってるわよ! でも・・・。」

 

瑞鶴は粛然とせずにはいられなかった。加賀の言う通り、これが戦争なのだ。しかし誰しもがそうして受け入れられるような、強い心を持ち合わせている訳ではないのである・・・。

 

 

一航戦と七航戦が艦載機収容を7割ほど終えた10時27分、敵の第二次攻撃隊が接近してきているのを、横鎮近衛艦隊のレーダーピケット艦が捉えた。

 

~重巡鈴谷前檣楼・羅針艦橋~

 

提督「ここで敵を防ぎ止めろ! 今が正念場だ、稼働する全ての戦闘機を出せ!」

 

瑞鶴「“了解!”」

 

 

瑞鶴「第三艦隊旗艦より各空母へ、稼働全戦闘機、発艦急げ!」

 

赤城「了解!」

 

飛龍「“了解!”」

 

雲龍「“分かったわ。”」

 

隼鷹「“はいよ~。”」

 

龍驤「“了解したで!”」

 

瑞鶴「ここを凌ぎさえすれば、何とかなる!」

 

摩耶「おう、任せな!」

 

提督「“瑞鶴の言う通りだ、各員の健闘に期待する。”」

 

一同「「“了解!!”」」

 

横鎮近衛艦隊は、全ての力を敵機に向けるべくその兵装に仰角をかけた。一方ピケット艦の1隻である浜風は、既に敵機の一部からの攻撃を凌ぎ続けていたのだった。

 

 

浜風「くっ―――!」

 

爆弾を回避し、魚雷を避け、敵機を薙ぎ倒す浜風。しかしキリがない。一部とは言っても、敵編隊の総数は優に2000を超えている。その一部とは100機に迫る数となる。

 

浜風(“あの日”を思い出すわね・・・。)

 

浜風はその日の事を鮮明に覚えている。襲い掛かる敵機、炸裂する多数の砲弾、それを掻い潜って魚雷を投下する敵の雷撃機と、合わせるように降下してくる急降下爆撃機。

 

弾を受け、矢矧に励まされたのも束の間、右舷中央部に魚雷を受けた、記憶はその直後で途切れている。最後に見たのは、必死の回避運動を経ながらも尚沖縄に前進しようとした“大和(かのじょ)”の姿だった。

 

浜風(この体ならばもう、あんな事は起きない! 二度と、沈むものですか!)

 

もとより幽霊船が如きものならば、幽霊同士の戦いで沈む事は、浜風のプライドがそれを許さない。そのプライドこそは、かつて“帝国海軍ここにあり”と太平洋に鳴らした、昔日の日の丸を、その最末期に至るまで担った者のプライドであった。

 

 

浜風ら一部のピケット艦が攻撃に晒されている中、ピケットラインの内側およそ50km程の空域では、横鎮近衛艦隊が繰り出した戦闘機隊が敵の攻撃隊を迎え撃っていた。

 

およそ200機宛の戦闘機を絞り出した横鎮近衛艦隊ではあったが、これが破られれば後はなく、直人の座乗する鈴谷も含め、決死の防空体制が全艦隊で取られていた。

 

 

提督「鈴谷水戦隊はピケットラインに急行せよ! なんとしても守り抜け!」

 

明石「敵編隊の進撃、かなり遅滞しています!」

 

提督「よし、輪形陣の構築を急げ、今の内だ!」

 

金剛「“了解デース!”」

 

明石「大丈夫でしょうか・・・。」

 

提督「大丈夫だ。俺達は生き残れる、そう信じよう。」

 

明石「―――はい。」

 

直人は覚悟を決めていた。なんとしてもこの一撃を凌ぐ。そうでなくては、第三次攻撃隊や帰投中の第二次攻撃隊の戻る場所が無くなってしまうからだ。

 

 

横鎮近衛艦隊の第三次攻撃隊が敵艦隊へ攻撃を開始したのは、横鎮近衛艦隊への第二次攻撃が始まって13分後の、10時40分であった。この時直掩機は流石に連戦が祟って最初に上がったものは着艦しており、交代の機体が順次発艦している真っ最中であった。そこへ彗星を先頭に急降下爆撃隊が降り注いだのである。

 

たちまちにして複数の空母が爆炎に包まれ、何が起こったかが把握されるより先に、天山を先頭にした雷撃隊が突入を開始した。既に発艦を終えていた敵戦闘機は個々に交戦を開始するも、位置的に絶対的有利を占める艦娘艦隊の零戦を前にしては為す術も無く、蜘蛛の子を散らすように蹴散らされていった。

 

南方棲戦鬼「て、敵襲だ、迎撃しろ!!」

 

そこまでしてようやく状況を理解した深海棲艦隊も対応を始めるものの、既に対空防御陣は既に二層目まで破られてしまっており、とっくの昔に手遅れになりつつあった。

 

南方棲戦鬼「―――!」

 

 

ドオォォォーーー・・・ン

 

 

瑞鶴「“旗艦と見られる敵深海棲艦に魚雷命中!!”」

 

提督「よし!」

 

戦果報告の度に沸く横鎮近衛艦隊だが、この頃には漸く戦闘機隊の迎撃をすり抜けた敵攻撃隊の一部が到達し始めており、全く気を抜けない状態にあった。

 

羽黒「“150度方向から敵雷撃機ですっ!”」

 

提督「現場の判断に沿って迎撃!」

 

羽黒「“は、はいっ!”」

 

提督「ここまでを見るに、敵の侵入は大凡食い止められている。これなら何とか・・・!」

 

前檣楼見張員

「“本艦上空に敵機!”」

 

提督「言ってる傍からか、回避運動を!」

 

副長「―――!(面舵一杯!)」

 

対空射撃は収まることなく、絶え間なく続いていた。それを突破出来ず、次々と敵機が撃墜されていく。その絶対数すらも、戦闘機隊が決死で防ぎ止めている成果もあって、一度に10機や20機と言う数でしかない。

 

 

提督「―――。」

 

明石「・・・提督?」

 

提督「―――どうした明石。」

 

明石「いえ、提督が、どこか別の所に思いを馳せておられるようでしたので・・・。」

 

直人の顔を覗き込んで明石が言った。

 

提督「いや、そんな事は無いと思うが・・・。」

 

明石「提督は嘘をつかれるとき、右の眉が震えます。」

 

提督「!?」

 

思わず右の眉を覆う直人。

 

明石「ハァ・・・単純なんですね、そう言うとこは。」

 

提督「その微妙に反応しづらいセリフやめい。」

 

明石「それで、何をお考えでした?」

 

提督「それは―――俺達はいつまで戦うのかとね。」

 

明石「この戦いが終わるその日までです。」

 

提督「それは分かっている、それは分かり切った答えだ。だがそれまでに、我々はどれ程の敵と相対しなくてはならないのだろう・・・。」

 

明石「それは・・・。」

 

提督「今もなお、数千の敵機と戦っている。確かにそれは多いのだろう。だが・・・」

 

明石「だが・・・なんです?」

 

提督「・・・これから相対する事になる敵の数は、一体この何倍になるのだろう。グァムにいる講和派深海棲艦隊とはうまくやれている。なのに、我々は何故戦わねばならないのだろう。お互いに言い分を聞き合い、手を携える事だって、十分可能だと言うのに・・・。」

 

明石「それはきっと、考え方の差でしょう。それに、戦場ではそうした想いも意味を成しません。私達に出来るのは、降り注ぐ火の粉を払い続ける事だけですから。」

 

提督「・・・そうか、いや、それをお前から聞けただけでも少し安心した。」

 

彼自身、その在り方に自信があった訳ではなかった。講和を為し得るかどうかについても、その素地がある事は分かっていても、現在戦っているのは、講和派と同族の深海棲艦であるからだ。

 

歴史の秘めたる可能性は、今までの歴史を振り返ればかくの如しである。第一次大戦前、中央同盟国に与したイタリアが、直前になって協商側に寝返った事など誰が想像出来ただろうか?

 

関東軍の暴走を、当時の誰が予想し得たであろうか? ましてや満州国の建国やそれに打ち続く一連の外交紛争など、誰もが考えも及ばなかった事に違いないのだ。運命の女神の気まぐれたる事かくの如しなのだ。彼ら講和派深海棲艦隊が、いつまた人類に弓引く事になるかなど、分かりはしないのである。

 

ましてや、講和派深海棲艦隊が外部からの流入により質的にも量的にも膨張を続けている状況下では、その組織そのものの思想的変質も止むを得ないのだから・・・。

 

 

後年、明石は筆者の取材に対して次のように述べている。

 

「あの頃(第二次ソロモン北方沖海戦前後)、提督は闘志の向け方について随分思い詰めていたようでした。話せば分かり合える相手と、何故戦わないといけないのかと。そしてそれは、提督が戦い続けていた時期の大半に付き纏った命題だったように今は思います。」

――石野 明美氏への筆者取材ノートより抜粋――

 

これに見られる通り、彼は終始、戦う事に対し迷いながらも、明確な目的と覚悟を持っていた事になる。当然そのメンタルバランスは揺らぎやすいものでこそあったが、その様な状態でも尚、彼の指揮は精彩を欠く事が無かったのである。これは正に驚倒すべき事実であっただろう。

 

 

南方棲戦鬼「なに!? 攻撃失敗だと!?」

 

部下からその報告を受け取ったノースカロライナは、相対している敵が只者でない事を悟らざるを得なかった。

 

南方棲戦鬼「まさか、奴らが噂に聞く“例の艦隊”だったのか―――!?」

 

それに気づくのは些か遅すぎた。その頃には630隻いた空母は後送も含めれば365隻にまで減らされ、残りの空母も艦爆隊によって少なからぬ打撃を受けており、最早16TFがまともに機能しようも無い事は明らかであった。

 

南方棲戦鬼「―――退くか、已むを得ん・・・。」

 

ノースカロライナは最早決断せざるを得なかった。最早作戦の続行は不可能であったし、一旦引くべきであると判断したのは正しい選択であった。何より、今回の作戦が敵に勘付かれていたのではないかと言う疑いが彼女にもあったのである。

 

南方棲戦鬼「艦隊、残余の艦載機を収容次第反転。攻撃隊は攻撃を中止、帰投せよ。」

 

ノースカロライナは全部隊に対し撤退の命令を発したのである―――。

 

 

蒼龍「敵が・・・」

 

瑞鶴「退いて行く・・・?」

 

 

提督「終わったのか・・・?」

 

明石「そうなんでしょうか?」

 

提督「攻撃進路に入った雷撃機が反転しただろう。急な帰艦命令が出たとしか考えられん。」

 

明石「た、確かに。」

 

提督「わざわざ攻撃進路を再設定する必要があったとは、到底思われないからな。あれに投弾されていたら、恐らくこの船もただでは済まなかった筈だ。」

 

明石「言われてみると、さっきの一群は完全に進路に対して垂直に突入していました。機数は7機いましたから回避は至難の業と言えるかもしれません。」

 

提督「うん。そこから考えると、我々は非常に危険な状態だった筈だが、その状態を放棄して反転離脱したという事は、恐らく離脱を促す何らかの命令が出たと見るべきだろう。」

 

明石「艦載機に対する離脱を促す命令としては、帰投命令しかない、と言う事ですか。」

 

提督「そう言う事だな。」

 

この点彼の推測は全く正鵠を射ていた。そしてこの時点で、彼はこの事が作戦の成功を意味している事を確信したのである。

 

提督「艦隊、陣形を再編しつつ様子を見る。空戦中の各隊は空域を離脱して艦隊の上空に戻れ。各艦は戦隊ごとに損害状況を順次報告せよ、以上だ。」

 

直人は全ての部隊に対して事後処理の指示を出した。それはこの戦いが終わったという事を、間接的に麾下艦娘達へ表明してもいたのである。

 

 

瑞鶴「“一航戦、翔鶴小破、航空機損失延べ92機よ。”」

 

金剛「“三戦隊、比叡小破オンリーデース。”」

 

雲龍「“七航戦、損害無し、艦載機損失延べ20機。”」

 

提督「やはり艦載機への損害が多いな。」

 

明石「そうですね・・・。」

 

明石が報告を記録しながら答える。

 

赤城「“三航戦、加賀小破、損失機数延べ78機です。”」

 

提督「赤城と加賀がそれだけの損害を出したのか・・・!?」

 

赤城「“面目ありません。”」

 

提督「本格的な航空打撃戦だったのだ、仕方がない。」

 

直人はそう言ったが、実際に高性能な機体が揃っている三航戦艦載機隊でさえ、これだけの損失を出した事は驚くべき事であった。だがそれは総合的に見ると、全体的に三航戦航空隊と比較して性能で劣る機体の多い各航空戦隊の航空隊に混ざっていった事を考えると、妥当な判断であった。

 

高性能機も旧式機に混ざって少数では、損失が増えるのは仕方のない事であったのも確かであるが・・・。

 

提督「―――機種転換か・・・。」

 

明石「おっ、やっちゃいます?」

 

提督「サイパンに帰らんとなぁ・・・。」

 

明石「そうですねぇ~・・・。」

 

機種転換ともなれば大規模な航空機の生産が必要となる事からも、サイパン島に一度戻らないと出来ない為、現段階では諦める他に手もなさそうであった。

 

この時点ではまだラバウルへの進出命令が解除されていない為、それが望めないというのが現実だからだ。

 

提督「・・・昼前だな。」

 

腕時計を見ると、11時39分になっていた。

 

明石「そうですねぇ・・・。」

 

提督「よし、第二種警戒体制に切り替える、手の空いた者は休憩だ。」

 

副長「――。(分かりました。)」

 

提督「俺達も休憩にしよう。」

 

明石「ありがとうございます! はぁ~疲れた~・・・。」

 

提督「俺もさ、何より腹が減ってなぁ。」

 

直人のこの一言は、霊力の行使は相応にエネルギーを使うものであるらしい事の何よりの証左であっただろう。

 

明石「食事の用意ですね?」

 

提督「うん、伊良湖が今頃やってくれていると思うがね、少しばかり手伝いに行こう。」

 

明石「そうですね、任せっぱなしですし。」

 

提督「せやな。」

 

直人は艦隊に反転命令を出すと、明石と共に艦橋を降りたのだった。

 

 

11時45分 重巡鈴谷中甲板・食堂

 

改めてだが、鈴谷の食堂は中甲板の中でも、ダミーの煙突(1番煙突)直下に位置している。厨房を併設しているこの食堂は、中甲板中央通路の突き当りでもあり、通路は迂回して左右に分岐する形で艦首方向へと続いている。

 

そして厨房の排気はダミーの煙突を利用していて、貧弱だがそれらしい煙が出るようにはなっているのだ。

 

厨房の暖簾を、直人と明石はくぐる。

 

提督「失礼するよ。」

 

伊良湖「提督! もう終わったのですか?」

 

提督「その様だ。差し当たって2人で昼食を作る手伝いでもと思ってね。」

 

伊良湖「宜しいのですか?」

 

提督「たまにはね。」

 

明石「そうそう。」

 

少し茶目っ気も含ませて二人はいう。

 

伊良湖「では、お願いします。」

 

提督「そう来なくっちゃ。」

 

 

この時、直人は簡単な青菜の和え物を短時間の内に全員分作り、その手際の良さに驚いたのと同時に、それが非常に好評だった事を、伊良湖は覚えているという。

 

ただこの時、直人は自嘲気味にこうも言っていたようだ。

 

提督「自炊はする方だが、やっぱり、慣れない事は大変だね。」

 

伊良湖「まぁ・・・。」

 

伊良湖としてはこの時が、直人が自炊をする事自体を初めて知った瞬間でもあったようだ。

 

 

提督「で、だ、()っちゃん。」

 

赤松「おう、どうした。」

 

提督「今回の敵、どうだった?」

 

赤松「どうって・・・まぁ、並では無かった感じはあるな。」

 

提督「並ではない、か。」

 

赤松「あぁ、少なくともその辺で相手するような連中とは比べ物にならんと思ったな。空戦術も洗練されていた。あの混戦の中であれだけ組織立った戦闘が出来るのは並大抵の事じゃ無ぇな。」

 

提督「そうか・・・何者だったんだろうな。」

 

赤松「例の機動部隊だったとしたら、こりゃ大手柄だぜ?」

 

提督「確かにそうだな。」

 

赤松「おう、もちっと誇ってもいいと思うぜ?」

 

提督「いや、俺はそれほど何かしたって程でもないさ。」

 

「提督、お疲れ様です。」

 

横から声をかけてきたのは、作戦中レーダーピケット艦として前進していた浜風である。

 

提督「浜風か、ご苦労だったね。」

 

浜風「いえ、こちらこそ、空中支援を頂きました事、感謝します。」

 

提督「なに、提督として当然の責任を果たしたまでの事だ。それよりも、大事ないか?」

 

浜風「おかげさまで、何とか。」

 

提督「そうか、それは良かった・・・。」

 

心底安心したように直人は言うのであった。

 

浜風「提督は、いつも私達を支えてくれますが、なぜ、そこまでするのです?」

 

提督「部下を想わずして、上官が務まるか。そう言う事よ。」

 

赤松「おっ、いい事言うねぇ~。」

 

提督「茶化すな松っちゃん!」

 

赤松「ガハハハハハ!」

 

浜風「部下への情愛、ですか。」

 

提督「言い換えればそうだな。そもそも人と言うのは、主義主張の為には戦わん。それを体現した“人”の為に戦うんだ。俺に出来る事はそう多くはない。だからこそ、せめて皆の精神的な支柱になれればいいと、そう願っている。」

 

浜風「―――提督は、誰の為に戦っているのですか?」

 

提督「・・・そうさな、強いて言えば、置いてきてしまった家族を守る為さ。」

 

浜風「置いてきてしまった・・・?」

 

提督「あぁ。俺は少なくとも形式上は、鬼籍に入った身だ。少なくともこうしている間は、家族に会う事も出来ん。俺が死んだと聞いて、家族は皆悲しんだに違いない。そうさせてしまった償いとしても、これ以上日本を脅威に晒させる事が無い様に、俺はこうして戦っている。」

 

近衛艦隊は秘中秘の存在、そこに所属する者は皆死んだ事になっているし、表沙汰には記録にも残らない。その身の上は、家族に会う事すらも封じてしまっているのである。

 

提督「会えるものなら、また会いたいものだがね・・・。」

 

浜風「提督・・・。」

 

提督「そう言えば里帰りなんていつ以来だろう・・・8年前が最後か。」※2046年

 

赤松「おいおい、そいつぁいかんなぁ~。」(腕組み)

 

提督「・・・行けって言いたいのだろうが無理だぞ。」

 

赤松「だとしたら何を聞いてたんだ俺は・・・。」

 

提督「冗談だ。全て片付いたら、何とかして貰うさ。」

 

浜風「確かに、今はそんな事も言っていられませんね。」

 

提督「お前にそれを言われるんだな、だが確かにその通りだ。この戦いが終わらんと、帰郷どころじゃない。」

 

浜風「はい、早く提督がまたご家族に会う為にも、私達も頑張らないといけませんね。」

 

提督「ありがとう、俺も最善を尽くすよ。」

 

 直人は、置いてきてしまったものの多さを考えていた。だが今からでも取り戻せるものがある事も分かっていた。それを思い致す時、彼は自分が今まで生きてきた環境全てを投げうってこの場に立っているという事を改めて認識しているのである。

それはいつの日にかもう一度帰るべき場であり、人間である以上捨ててはならないものである筈だからである。しかしだからといって、彼の戦いが掣肘されるが如き事もまたあってはならない事は彼自身が一番よく知っていた。

彼がそこへ立ち返る為にも、この戦いは終わらせなければならないのであった。

(因果な事だ、俺は戦う事を強いられているのだな。)

 彼はつくづくそう思うのであった。ある意味に於いて、見えざる者の手と言うのはかくも残忍であると言う事の例証でもあったのかもしれない。

 

 

第二次ソロモン北方沖海戦―――そう呼称される海戦は終わった。

 

横鎮近衛艦隊:艦娘62隻、艦艇1隻、艦載機748機

深海棲艦隊(16TF):深海棲艦3127隻、艦載機4219機

 

 この大兵力のぶつかり合いは、横鎮近衛艦隊の戦術的勝利に終わった。艦隊戦になっていれば、敗北は必至の所を、横鎮近衛艦隊は航空戦力を以って一挙撃滅を図り、結果その策は大なり小なり成功したのである。

その航空戦も、横鎮近衛艦隊は辛うじて大破艦4隻、中破艦7隻で抑える事が出来、逆に敵艦隊の主力に対し、大打撃を与える事に成功した。

が、その代償は軽くなく、各航空戦隊を合わせると、実に航空機472機を失ったのである。優勢の敵に対して行った航空打撃戦の代償であった。

 

そして本来であれば戦いはここで終わった筈であった。しかしその帰途、一つの幕間狂言が待ち受けていたのである。

 

 

それは3月2日の午後、鈴谷がブーゲンビル島の北方沖に差し掛かろうかと言う時であった。

 

 

14時18分 重巡鈴谷前檣楼・羅針艦橋

 

後部電探室「“艦橋へ、こちら後部電探室!”」

 

提督「どうした!」

 

後部電探室「“対空電探に感あり! 反応―――”」

 

そこでオペレーターが絶句する。

 

提督「なんだ、はっきり報告しろ!」

 

後部電探室「“反応、極めて大!”」

 

提督「なんだと? 編隊ではないのか!」

 

後部電探室「“違います! 極めて大型の飛行物体が、本艦を追ってきます!”」

 

提督「全艦戦闘配置! 対空戦闘用意!」

 すかさず出された直人の命令を副長が復唱する。今彼らの身に、只ならぬ事態が起こりかかっているのがほぼ間違い様が無いのは、誰の目にも明らかだった。

「一体何が・・・。」

そう逡巡する彼の元へ第二報が入る。

後部電探室「“飛行物体との距離、およそ5万2000!”」

 

提督「―――単機の癖に随分と遠くで捕捉したもんだ、確かに相当なデカブツだぞ。」

 

明石「偶発的な遭遇や単なる索敵機でないことは確かです。我々は今、制圧下にある海域の只中にいる訳ですから。」

 

提督「それは分かっている。いや、だからこそ問題なんだ。」

彼も後方を注意深く座視する他に無かったのだが―――

 

 その正体は10分程して明らかになった。直人の双眼鏡が、明らかに異様なものを捉えたからだ。

「なっ、なんだあれは!?」

―――それは余りにも()()()に航空機を象った様にしか見えない、巨大な物体だった。

余りに大きく分厚い主翼は、その翼長にも拘らず殆ど荷重で反っておらず、二つの機首と一つの胴体、二つの尾翼を備えたその機体は、余りに魁偉な外見を形成している。

明石「シルエット照合します―――こ、これはっ!」

 

提督「なんだ!」

 

明石「始祖鳥(アルケオプテリクス)ですっ!!」

 

提督「超兵器だと!!??」

 

 そう、それは魁偉でありながらも威容とも言え、であればこそ“異様”なものであった。

機体上面に多数の戦艦級主砲を装備し、巨大な胴体には目一杯の武装が積み込まれ、それがこれまた巨大な噴射式エンジンによってどうにか安定して飛んでいると言う風情は、確かに異様な光景と呼べるだろう。

『“超巨大爆撃機”アルケオプテリクス』と呼称されていた()()は、アメリカが生み出した正に“空中戦艦”と呼ぶに相応しい存在であり、先の大戦で旧式戦艦と侮ってかかった戦艦三笠の手により撃墜された筈の存在(もの)である。

 

提督「黒い―――始祖鳥・・・。」

 アルケオプテリクスは海軍機として運用されていて、時期によって異なる2つの塗装パターンで知られるが、しかし今現れたものは、“全面黒色”である。

 

明石「深海棲艦機なのでしょうか・・・。」

 

提督「だとしたらとんでもない事になる、迎撃するぞ!」

 

明石「分かりました!」

 

提督「主砲弾種徹甲、艦娘艦隊に緊急出動命令! 準備出来次第発進!」

 

明石「榴弾や三式弾ではないのですか!?」

 

提督「相手が装甲されている以上榴弾は効果がない、急げ!」

 

明石「はいっ!」

 アルケオプテリクスが注目される所以は、その武装や機構のみに留まらない。その装甲板にも注目される。想定されたのは14インチ(35.6cm)級の火砲からの徹甲弾による、2万5000mからの直撃弾。

これ程遠距離からのものが想定されたのには、戦艦級の主砲は俯角が制限される為であったとされる。しかし―――否、であるが故に、重巡鈴谷の20.3cm(8インチ)砲でもチャンスはある―――。

 

提督「全砲門最大仰角で待機! ワンチャンスを逃すな、一発で仕留めるつもりで行け!」

 

明石「どうなさるおつもりですか!?」

 

提督「知れたこと、ギリギリまで引き付ける!」

 

明石「成程、近ければ近いほどいいと言う事ですね?」

 

提督「そう言う事だ。進路反転180度!」

 

明石「コースターン、ヨーソロー!」

 

後部電探室「“敵機との距離、およそ3万5000になります!”」

 

提督「大丈夫だ、まだ間に合う。この艦は舵の効きがいいからな。」

 1万4000トンの巨体が、その身にそぐわないとまで思えるほどの勢いで波を押し分け旋回する。操舵機構に関しては現代のものを採用している為、操舵能力は往時の比ではない。

そして回頭が終わると、艦娘達が出撃を開始する。

 

金剛「“提督ゥー! 燃料と弾薬がどっちも全員出撃分は無いデース!”」

 

提督「構わん! 金剛と対空射撃向きの艦娘だけ出撃させろ!!」

 

金剛「“OKデース! 秋月サン、摩耶、付いて来るネー!”」

 

提督(聞こえとんねん・・・。)ハァ~

 

呆れながらも言葉には出さないのがせめてもの優しさであろう。

 

 

この時出撃したのは、前述の3人の他に、赤城・加賀・夕雲・巻雲・長波・五十鈴・榛名・比叡・霧島の9隻であった。全員少なからず対空射撃の経験を持つ艦娘達である。

 

赤城「戦闘機隊、発艦!」

 

加賀「少佐、行きなさい!」

 

赤松「任せろォ!!」

 

火星エンジン(雷電)と金星エンジン(零戦五四型)の爆音が瞬く間に響き渡る。そして加賀飛行隊長赤松少佐の雷電一一型改が先陣切って舞い上がっていく。

 

提督「―――あいついっつも先陣切ってんな。」

 

明石「1番機らしいですよ?」

 

提督「なるほど納得。」

そりゃ当然いつも一番槍である。

 

明石(こんなやりとり前にもあった気が・・・。)

 

 

秋月「アルケオプテリクス・・・。」

 

摩耶「思い出すか?」

 

秋月「マリアナ沖では、遂に守り切れませんでしたから・・・飛鷹さんを・・・。」

 マリアナ沖海戦では、史実に於いて起こった小沢艦隊の攻撃の翌日に起こった第58任務部隊による追撃が起こらず、その代わりにアルケオプテリクスが繰り出された格好となっていたのだ。

アルケオプテリクスが撃墜されたのは、フィリピンへの増援輸送を護衛している戦艦三笠と遭遇した時であったから、レイテ沖海戦の時には既にいない事になる。

「今度は、守って見せます。提督と、鈴谷と、皆さんを!」

復仇に意気上がる秋月、相対するは因縁のアルケオプテリクスの生まれ変わり。相手にとって不足はない。

 

金剛「全艦、第一警戒航行序列発令デース!」

 

一同「「“了解!”」」

 

 

明石「敵、発砲!」

 

提督「!」

 ブーゲンビル島沖空海戦―――彼らがそう仮称した戦いは、公式記録にはない。あくまでそれは幕間狂言でしかなく、所詮その程度の性質でしかなかった事を如実に表していただろう。

しかしことはそう単純では無かった―――。

 

前檣楼見張員

「“敵第一射飛来、着弾―――今!”」

 

ドドドドオオオオォォォォーーーー・・・ン

 

複数の水柱が殆ど間を置かず屹立(きつりつ)する。本数なんと10本―――

「―――“聞きしに勝る”、とは、正にこの事だな。」

 

「はい―――。」

距離2万m、既に敵第二射は放たれていた。

 

提督「来るぞ、構えろ!」

 

ドドドドオオオオォォォーーーー・・・ン

 

副長の懸命な操舵で敵弾を紙一重で回避する鈴谷。これも鈴谷が高度な演算能力で操縦者をバックアップするから出来る芸当であって、普通ならとうの昔に被弾している所である。

 

提督「前から疑問だったが、この演算能力はどこから?」

 

明石「それ程必要ないと思いましてご説明してませんでしたが、実はこの1階下に演算中枢室がありまして、ここから接続する時も演算中枢に直付けするから出来る事なんですよ。」

 

提督「世の中、知らない事は多そうだ。」

 

明石「いつの世もそうです。」

 

前檣楼見張員

「“第三射、来ます! 距離、1万2000!”」

 

ドドドドオオオオォォォーーーー・・・ン

 

「“左舷下甲板中央部に漏水!”」

 

「“第二倉庫に亀裂発生!”」

 

提督「ダメージコントロール! 至近弾でこれか・・・。」

 

前檣楼見張員

「“距離、1万!”」

 

提督「まだだ―――」

じりじりと時が過ぎる。十数秒の間、直人はその時を見極め、そして―――

 

前檣楼見張員

「“距離、8000!”」

 

提督「今だ、撃て!!」

 

ドドドオオオォォォーーー・・・ン

 

鈴谷の前部20.3cm連装砲6門が一斉にアルケオプテリクスに向け斉射を放った。弾種は敵の装甲を貫く為の徹甲弾。アルケオプテリクスのそれに比べれば迫力に欠けるものの、タイミングはバッチリ、高度4000mを飛ぶ敵を迎えるには十分である。

 

提督「どうだ―――!?」

 

ガガガガガァァァァーー・・・ン

 

 

砲弾は5発が直撃すると言う驚異の命中率を叩き出すも、空しく弾かれたのみに終わった・・・。

 

提督「なっ!」

 

前檣楼見張員

「“敵下部銃座発砲、多銃身砲とロケット弾です!!”」

 

アルケオプテリクスは機体上面に12インチ(30.5cm)65口径連装砲2基、下面に3基の合計10門の他、自衛武装として多数の機銃座を、対地装備として多連装ロケットランチャーポッドと57mmバルカン砲を固定装備として機体下面に装備している。他にウェポンベイ(ここでは爆弾倉の事)に魚雷もある筈だが、高度が高過ぎる為か使用してこない。

 

提督「全員物陰に退避、衝撃に備えろ!!」

 

が、魚雷などどうでもよく、彼はその危険性を悟った。

 

ズドドドドドドドドドドドドドドドドドドォォォォォォォーーーー・・・ン

 

 瞬く間に大量のロケット弾と57mm砲弾が鈴谷に突き刺さり爆発する。余りにも一瞬の出来事に、艦娘達も不意を衝かれた。この時の状況を秋月は比喩としてこう表現した―――『火山が噴火したようだった』と。

全艦業火に包まれる鈴谷、それを見た金剛らは漸く事態を悟った。

 

金剛「提督、大丈夫ネー!?」

 

金剛がすぐに司令部の安否を尋ねたが、返答が帰ってこない。それもその筈、艦橋も火に包まれていたのだ。

 

「ヒデェな・・・鈴谷が空母になっちまったみたいだ。」

 摩耶がそう表現したのは無理もない。上部構造物と呼べるものは殆どが吹き飛び、前檣楼と、主砲であっただろうモノが辛うじて原形を留めていたに過ぎないのだ。

魚雷発射管も対空火器も、主砲やカタパルトも使えない。全兵装が、あの一瞬で使用不能にされたのである。妖精達も半数以上が一瞬の内に焼き払われてしまった。

 

金剛「提督、返事をするデース!」

 

秋月「そんな―――!」

 

夕雲「提督、大丈夫よね・・・?」

 

長波「信じよう、夕雲姉さん。」

 

夕雲「・・・そうね。」

 

榛名「敵、左に旋回しつつ降下しています! 鈴谷右舷に回るつもりでしょうか・・・。」

 

金剛「―――これ以上、やらせないデース!」キッ

 

金剛の眼が、いつになく真剣になった。

 

霧島「お供します、お姉様。」

 

そして霧島が―――

 

霧島「―――貴様(きさん)、なにしてくれとんじゃ。」

 

比叡(霧島が―――!)

 

榛名(眼鏡を―――!)

 

一同((はずした!))

 

外しちゃいました。

 

金剛「援護頼むネー。」

 

霧島「お任せを。」

 

金剛が敵予想進路上を一直線に突進する。

 

秋月「“待って下さい、どうするつもりですか!?”」

 

金剛「もっと近い所から浴びせるんデース!」

 

秋月「“―――!”」

 

秋月はその一言で、全てを悟ったのであった。

 

 

赤松「なんて野郎だ、分かってた事だがびくともしねぇ!」

 

一方攻撃を続ける赤城と加賀の戦闘機隊であったが、高々20mm機関砲程度ではお話にならない。銃座の幾つかにダメージを与えた程度である。噴射口もきっちり装甲化されているだけに弱点も少ないのだ。

 

 

霧島「よくも提督を―――!」

 

霧島は怒りに身が震えていた。無理もない、司令部との連絡が途絶え、鈴谷も大破しているのだから。

 

霧島「横鎮近衛の艦娘の生き様、見とけやオラァ!!」

 

霧島が、怒りと共に全門斉射をアルケオプテリクスに放った。

 

 

“攻撃進路進入完了”

“高度270mに修正”

“進路上に「コンゴウ」クラス2”

“脅威度2、攻撃続行判断”

 

“・・・・・・”

 

“問題なし、Human Cruiser(ヒューマン クルーザー)への攻撃シークエンス続行”

“ウェポンベイ、問題なし”

“魚雷投下用意”

“敵抵抗、微弱”

 

霧島による35.6cm砲の斉射さえ、アルケオプテリクスのAIは「抵抗微弱」と判定されてしまったのである。これが正しく超兵器としての貫禄と呼べない事もない。

 

最大速度750km/hを誇る巨鳥が、爆弾倉を開き急速に鈴谷へ迫る。その距離1万9000。

 

 

金剛(撃ってこない、むしろ好都合ね。)

 

金剛はアルケオプテリクスから2000m、反航戦である為急速に距離が縮まる。

 

金剛(―――今!)

 

金剛はタイミングを合わせ、なんと水上でスライディングをかけた。その頭上を今まさにアルケオプテリクスが通過しようとした瞬間―――

 

金剛「ファイア!」

 

 

ドドドオオオオォォォォーーー・・・ン

 

 

ドガアアアアアアアァァァァァァーーー・・・ン

 

 

発砲音と爆裂音が殆ど同時に響き渡る。そして距離が余りにも近く、金剛も炎と煙の渦に巻き込まれた。

 

霧島「お姉様は―――!?」

 

霧島ら他の艦娘も金剛の姿を見失う。その中爆煙を割り裂いてアルケオプテリクスがその姿を現した。

 

秋月「そんな!?」

 

摩耶「マジかよ・・・!」

 

長波「まだ飛んでやがるのか・・・。」

 

巻雲「不味いですよう!」

 

五十鈴「落ち着きなさい、兎に角撃つのよ!」

 

榛名「いえ、見て下さい―――!」

 

 

“ウェポンベイへの回路破損”

“3番エンジン出力低下”

“魚雷の一部誘爆、機体下面損害大”

“揚力低下、傾斜右7度、姿勢制御困難”

“攻撃シークエンス中止、空域を離脱、基地に帰投”

 

 アルケオプテリクスは損害の大きさから空域を離脱した。幾条もの黒煙を曳きながらも、それは辛うじて飛んでいたのである。これが人智を越えた超兵器の頑強さであった。これが為に第二次大戦は大幅に長引いたと言われている程である。

 

 

霧島「終わった・・・?」

 

気付けば眼鏡をかけていた霧島が呟く。

 

比叡「お姉様!」

 

金剛「ハーイ。」

 

霧島「ご無事でしたか・・・。」

 

金剛「機関が上手く動かないケドネー。」

 

榛名「それは―――大変です!」

 

霧島「思い切りスライディングしましたからね・・・。」

 

そう、艤装を稼働状態のままスライディングすると、構造上艦娘機関は背中に背負う形になっている為、思いっきり水につけてしまう事になる。艦娘機関は霊力で稼働するとは言っても特性上は機械に近い部分もある。艦娘機関は水に浸かる様には出来ていない(水密性を備えていない)為、機関が急速に冷やされる事で作動不良に陥ってしまう訳だ。

 

金剛「そうデス、テートクは!?」

 

榛名「そうでした!」

 

戦闘でそれどころではなかったのだから仕方ないと言えば仕方がないのだが・・・。

 

摩耶「提督ー、聞こえてっか~。」

 

提督「“オウ、みんな無事だったか?”」

 

金剛「提督、無事だったんですネ!?」

 

 

~重巡鈴谷前檣楼・羅針艦橋~

 

提督「あぁ、なんとかな。」

 

明石「一時はどうなるかと・・・。」

 

五十鈴「“そっちは大丈夫なの!?”」

 

提督「羅針艦橋はな。操艦も出来るが、各所の火災はまだだ。全然予断を許さない。」

 

金剛「“皆は大丈夫なんデスカー?”」

 

提督「どうやら下甲板までは被害が及んでいないようだ。だが延焼の度合い如何ではどうなるか・・・。」

 

金剛「“分かったネ。”」

 

霧島「“武装についてはどうです?”」

 

提督「そっちについては全部やられた、動けるだけだ。応急修理でどうにか機銃がいくらかって所かもしれん。」

 

霧島「“成程・・・鉄の箱舟でしかない訳ですか。”」

 

提督「そうだな―――ゲホッゲホッ」

 

霧島「“大丈夫ですか!?”」

 

提督「まだ些か煙たいのでな・・・それより、護衛を頼む。」

 

金剛「“オフコースデース、無理はナシデスヨー?”」

 

提督「心得ておこう。」

金剛らからの通信が切れると、直人は明石に声を掛ける。

 

提督「全く、消火器1本命の盾だな。」

 

明石「本当にそうです。」

 

提督「ありがとうな、備えあればなんとやらッて奴だ。」ニッ

 

明石「えぇ。」ニコッ

 実は直人が隠れた羅針艦橋背後の部屋であるエレベータールームには、火災発生時の為に消火器が3本あった。被弾した直後それが目に入った2人は、何言うともなくそれをひっつかみ、艦橋の火災を早期に消し止める事が出来たのだ。

それからは煙が収まるまで煙を吸わない様に身を伏せていたのだ。この為操艦も出来なかったと言う訳で、最初の安否確認で返答が無かったのは当然だったのである。

 だがまだ、鈴谷は全体的にまだ火災に包まれており、“文字通り”予断を許さないのだった。

 

提督「全艦、火災の消火を第一とせよ! 艦娘達も協力してやれ!」

 

明石「消火ポンプは半数が破壊されてます、手動式のものを使うしかありませんね。」

 

提督「そうだな。エレベーターは稼働するのか?」

 

明石「稼働しますが、電路に火が及びそうです。」

 

提督「よし、ではそこからだな。」

 

明石「私達も行くのですね。」

 

提督「当然だ、自分の船だからな。」

 

そう言うと、直人は1本残った消火器を手に、エレベーターに乗るのであった。

 

 

 その後、火災は16時間かけてようやく鎮火され、損害状況をチェックしたのだが、上部構造物から上甲板、中甲板の一部に至る部分が被弾ないし火災で損傷を被り、武装は航空甲板のサイドデッキにある数基の機銃を除いて稼働出来なかった。

 即ち継戦能力の全てを失った訳である。艦載機は全て破壊され、魚雷も全て爆発してブリーフィングルームや訓練区画が全損するなど、まともに動かせるのは艦の動力と操舵、艦娘発進口を残すのみであった。主錨すらも錨鎖から断ち切られ、予備の錨を使う他なかった程である。

 上部構造物は高角砲座は跡形もなく吹き飛び、後檣楼は瓦礫の山になり、デコイの煙突も面影すらない。レーダーも全て使用不可能になり、前檣楼にも穴が開く始末である。

主砲に至っても瓦礫の山、甲板も穴だらけ。正にただ走るだけの巡洋艦(クルーザー)と化していた。

 

※重巡は艦種記号「CA(Armord Cruiser(アーマード クルーザー))」である。

 

 

3月3日7時21分 重巡鈴谷前檣楼・羅針艦橋

 

提督「幾らなんでも直せるかこんなん!!」

 

明石「そうですね・・・。」

 

提督「なんとしても帰投を認めさせんと・・・。」

 

そう、鈴谷の自己修復能力はある程度の損害までならカバーできるが、武装への霊力伝達回路だったり、構造物そのものまでは直せない。この為これだけ損害が大きくてはお手上げであり、長期のドック入りは避けられないのだ。

 

提督「通信用のアンテナも吹き飛ばされたからな、戻ってから言うしかないし・・・。」

 

そう言う直人の顔は苦り切っていたのだった。

 

 

その日の21時11分、傷ついた鈴谷は、デューク・オブ・ヨーク島の錨泊地に錨を降ろした。その時直人は医務室にいた。

 

~重巡鈴谷中甲板・医務室~

 

提督「具合はどうだ白露。」

 

白露「うん、なんとか、軽い熱傷で済んだみたい。」

 

医務室には火災の消火作業中誤って煙を吸い込んだ艦娘数名が運び込まれていた。

 

白露もその一人で、白露は熱風を吸い込んで咽頭(いんとう)熱傷と喉頭(こうとう)熱傷と診断されていた。実際少々声がかれていたが、大事無さそうであった。

 

提督「いの一番に運び込まれたらしいじゃないか。」

 

白露「嬉しくないって~。」

 

雷「白露は数日で痛みもなくなると思うわ。他の子も同じようなものだから安心して頂戴。」

 

提督「それは何よりだな・・・雷も、ご苦労様。」

 

白雪「私もお手伝いしたんですよ?」

 

提督「そうだね、白雪もありがとうな。」

 

白雪「はい!」

 

 

3月4日の朝、直人は早速ラバウル基地司令部に出頭した。

 

 

8時10分 ラバウル基地司令部・司令官室

 

提督「当艦隊のラバウル撤収について、大本営に要請願います。」

 

佐野「・・・随分藪から棒だね?」

 

提督「そうでしょうか?」

 

佐野「まぁ、ここに来て連戦だからね、無理もない事だが・・・。補給は続けられるのだが、何か問題かい?」

 

提督「鈴谷の修理が必要です。それを行うにはサイパンのドックに戻す必要があります。少なくともここにはそれだけの設備は無いと存じます。」

 

佐野「成程・・・分かった、掛け合おう。」

 

提督「有難う御座います。」

 

佐野「あとで様子も見させて貰うよ、添え書きと言う事で役に立てるかもしれない。」

 

提督「感謝します。」

 

佐野「構わないさ、この数週間だけでも、よくやってくれていたからね。」

 

提督「恐縮です。」

 

佐野「報告の方も、聞かせて貰おうかな。」

 

提督「分かりました―――」

 それから10分、直人は作戦結果の報告を行った。最終結果としては作戦は成功し、敵の企図も粉砕し、艦娘艦隊は依然として健在だが、母艦である鈴谷が大破し、継戦能力の全てを喪失していると言う状態である事を、佐野海将補も知った。

 

直人がラバウルを通じて大本営に掛け合った結果、横鎮近衛艦隊の帰投が決定、久しぶりのサイパン島と相成った。3月5日15時14分、ラバウルを発った鈴谷は、応急修理のみを済ませて3月9日11時39分にサイパンに帰着、帰着と同時に鈴谷は造兵廠の2番ドックに入港したのである。

 

3月9日11時44分 サイパン島造兵廠2番ドック岸壁

 

提督「サイパンだああああああ!!」

 

金剛「帰ってきたデース!」

 

明石「生きてますね~。」

 

鈴谷「そうだね~。」

 

瑞鶴「ラッキーだったね、私達・・・。」

 

5人揃って喜びを隠せない様子である。

 

提督「武装ゼロだからな、護衛も付けてくれたとはいえ危なかった・・・。」

 

明石「隠顕式兵装の検討が必要ですかねこれは・・・。」

 

提督「副砲だけでも大概だと思うけどねぇ。」

 

鈴谷「でも多い事に越した事ないじゃん?」

 

提督「まぁ・・・そうね。」

 

明石「取り敢えずは、高速時の収容についてですね。」

 

提督「あぁ、頼むぞ。」

 

大鯨「提督、お帰りなさいませ!」

 

提督「大鯨か、大鯨もご苦労だったね。」

 

大鯨「いえ、大丈夫です。それより、ご紹介したい方がいます。」

 

提督「・・・ふむ?」

 

大鯨が言うと、大鯨の後ろから1人の艦娘が現れた。

 

大鯨「さぁ、自己紹介してください。」

 

「はい・・・ドイツ海軍所属、潜水艦U-511です。ユーとお呼びください。少し遠出してきました。よろしくお願い致します・・・。」

 

提督「あ、あぁ、宜しく。大鯨、説明してくれるか?」

 

大鯨「こちらが、トラックで任務中にユーさんがいらした際に、持参していた任書、だそうです。」

 

「ふむ・・・?」

 直人が大鯨の差し出した1枚の印刷紙に目を通すと、確かにそれはU-511の配属先を明記した辞令だった。

しかもそれには、軍令部総長の山本 義隆海幕長と横鎮長官の土方 龍二海将が連名で擦印してあるのだから彼は驚いた。つまりそれは、彼が押し頂いて受けるべきと行って然るべき事例でもあった訳だ。

 

提督「・・・確かに、辞令は本物だな。しかしそうか、我が艦隊に名高いUボートが配属か。些か買い被られている気が、しないでもないね。」

 

大淀「―――あら、いいではありませんか?」

 

提督「大淀か。」

 

大淀「上が買い被っておられるのでしたら、買い被らせておけばいいのではないでしょうか?」

 

提督「お前な、言い方。」

 

「フフッ、そうでしたね。出過ぎた事を申しました。」

と、特に悪びれもせずに言う大淀である。

 

(ある種この艦隊で最も恐ろしい女かもしれんね。)

 直人のこの人物評も、あながち間違っていなかっただろう。

そして彼らは連れ立って鈴谷の岸壁を離れ、新人のユーちゃんの為にお互いの自己紹介をしながら、司令部の方に戻っていく艦娘達の列に混じるのであった。

 

 

 横鎮近衛艦隊による遊撃作戦は、敵の行動を事前に制すると言う目的を見事果たした。損害の大きさに驚いた飛行場姫は、トラック泊地に対する攻撃を中止させ、戦力の再建に入った程である。

その事態は思わぬものさえ呼び出してしまったものの、辛うじて重大な事態にまでは至らず、ラバウル基地に重要な情報を提供する事が出来たと言うのは幸いだっただろう。少なくとも南東方面にも超兵器がいるというのは重大な関心事であったのも確かである。

 “払った代償も多かったが、相応の見返りを得た”、それが今作戦の総評であった。

そしてこれに前後する形で、直人を驚かせる出来事がサイパンに巻き起こった。

 

 

3月10日15時02分 甘味処『間宮』

 

提督「はむっ・・・うーん、美味い!」

 

直人は間宮のスペシャルパフェを食していた。

 

間宮「ありがとうございます。」

 

提督「間宮さんのスイーツを食べると、またぞろ帰ってこれたって実感が沸くよ。」

 

間宮「まぁ、褒めても何も出ませんよ?」

 

提督「ハハハ・・・」

 

大淀「提督ッ!」ハーハー

 

提督「よう大淀、そんなに慌ててどうした。」

 

因みに大淀の息が荒いのは、走って来て息が上がっているのが半分、間宮のパフェを目の前にして食べたいのが半分である。大淀にとってもそれは強い誘惑なのだった。

 

大淀「提督、すぐに来てください、大変な事が!」

 

提督「あとにしてくれ、私はコレを食べるので忙しい。」

 

大淀「パフェどころではありません!」

 

提督「うー・・・で、どうした。」

 

大淀「どうしたって・・・ハァ~・・・空母棲姫が、亡命を求めています! 提督を頼ってです!!」

 

提督「何ッ!?」ガタッ

 

間宮「まぁ!」

 思わず直人も立ち上がりかけ、テーブルの上のパフェが揺れる。

2054年は、年明けからまだ3か月しか経たぬ内に、およそそれまで考えられてきた事柄が当たらぬばかりか、それを裏切る様な事ばかりが続いていたのは事実であっただろう。

 しかしこれ程の重大事は少ないとも言えた。深海棲艦、それもその中央に近い姫級深海棲艦の亡命。直人も幾度となく拳を交えた、因縁の相手の亡命―――それも交えた相手を頼んで。

この様な事態が起ころうとは、直人は想像もしていなかったのであった・・・。




艦娘ファイルNo.125

雲龍型航空母艦 天城

装備1:25mm三連装機銃
装備2:12.7cm連装高角砲

伊良湖がサイパンに取って返したついでにドロップ判定を行って貰った結果着任した艦娘の1隻目。
雲龍と同じ様に艦載機を持たず、実力も実績も低いと言うおまけもついた航空母艦級であったが、雲龍の実績もあって値切り目には見られていない。
着物については最早突っ込まれさえしなかった辺り、艦娘達が如何に服装が多彩かを良く表している。(主に島風とか長門型とか)

艦娘ファイルNo.126

香取型練習巡洋艦 香取

装備1:14cm連装砲
装備2:12.7cm連装高角砲
装備3:25mm連装機銃

日本初、そして最後の練習巡洋艦となった香取型の長女。
艦隊でも初の練習航海専門の船と言う事もあり、直人からの第一印象もかなり良かったようで、期待もされている。
が、直人が艤装運用をするとは知らない為それについて困惑する様子も見られた。

艦娘ファイルNo.127

夕雲型駆逐艦 早霜

装備1:12.7cm連装砲
装備2:25mm連装機銃

夕雲型に連なる艦隊型駆逐艦の1隻。
どうもただならぬ気配を漂わせているが・・・。
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