異聞 艦隊これくしょん~艦これ~ 横鎮近衛艦隊奮戦録   作:フリードリヒ提督

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どうも、天の声で御座います。

青葉「青葉ですぅ!」

初春「初春じゃ。」

と言う事で、今回は艦隊の知恵袋、初春さんをお呼びしました。

初春「知恵袋か、ま、そうかもしれんのう。」

まずは作戦お疲れ様です。

初春「どんな作戦でも、完遂するのがわらわ等の使命、何の事はないぞ。」

青葉「まぁ、そうですよね~。」

でしょうね~。

いよいよ劇中の時が2年流れようとしている訳ですが、この第3部にも終わりが近づいています。と言ってもこの章のあと更に2章は続きますが。

青葉「続くんですね・・・」

初春「続くんじゃのう・・・。」

続きますよ~。そんなところで今日の解説行ってみますかね。


今日の解説事項は、「深海棲艦に対抗するには如何なる方法があるのか」です。

艦娘が深海棲艦に対しうる唯一の存在、と言う訳ではありません。実の所、人類もその猛威に対抗する術がある事はこれまでにも幾度となく証明されてきました。

では具体的にはどのような方法があるのか。それを見て行きましょう。

まず一つ目は、物理攻撃です。

単純な物理力を敵の生体部分に対し投射する事による殺傷を期します。深海棲艦の装甲は生半可な実弾攻撃を無力化してしまいますが、生体部分に撃ち込めば話は変わってくる訳です。またこの防がれてしまう事が、大戦型艦艇を再生産すべきだという主張の根拠でもあります。

防がれてしまうものとしてはミサイルもあります。これは以前にも語った通り、目視で追尾/迎撃する事が出来る個体も存在する為です。これも大戦型艦艇を再生産すべきだとする根拠の一つとなっています。

また近接攻撃も非常に有効です。生々しい表現ではありますが肉であれば刃物も通ります。但し非常に高いリスクが伴う事を覚悟せねばなりません。更に駆逐艦級には生体部分が少ない事から、実弾攻撃は効果が薄いと言わざるを得ません。例外としてモノアイのみは対物ライフルでも貫徹可能です。

2つ目は、「人も艤装を使う」と言う事です。

巨大艤装に見られるようにそう言った発想は艦娘出現前に存在しているので、現実的に兵士個人が重火器を運用するには最適です。しかし欠点として、そもそもの霊力行使者の数が少なすぎ、しかも能力も人によりけりと言う先天的な弱点を抱えています。

更に生産に手間がかかり過ぎ、しかも絶対数を確保出来ない事から期待された成果を収め得るとは限りません。それらのデメリットを全て解消したのが艦娘と言う存在である事からもお分かりになると思います。

3つ目は、「人が霊力を纏った武器を使う」事です。

これは直人が用いる霊力刀や艤装として製造された30cm速射砲などに見られる様に、武器そのものが霊力を纏っている武器を人が使うと言うものです。但し製造法については謎が多い上、作れる者も僅かで供給するリソースに乏しいのが現状ですから、現実的とは到底言えません。

但しこの手法は、霊力を扱う才能がなくとも誰にでも扱える力であるという事がメリットとして挙げられます。であればこそ、妖精さん達も門外不出なのですが。

初春「これらの欠点の殆どを解消し、利点を多く残すのが、わらわ達艦娘と言う訳じゃな。」

そういう事。ただ伊勢と日向の刀は普通の刀だし、天龍や龍田などの近接武装は霊力を通さないと霊力武装として機能しないので・・・。

初春「よく出来ておるものよな。」

本当にそうだな。

そしてその4つ目として研究されているのが、「人間が持つ因子自体の変質」です。

人間は本来中性霊力、つまり正でも負でもないその間の霊力(酸性とアルカリ性、中性の性質をイメージするといいでしょう)しか先天的に持っていない訳ですが、これを改変する事により艦娘と同じ性質である正の霊力を持たせ、艤装の運用を可能にするという発想が成されています。

霊力の指向性は訓練次第では獲得も可能である為、この理論は誤ってはいません。しかし非常にリスクの高い研究でもあり、失敗すれば人外の怪物と化してしまう危険も孕んでいます。世界中で語り継がれている怪物の伝承のいくつかはこの因子の変異によるものだったとも言われている位です。


解説内容は以上となります。

青葉「お疲れ様です!」

初春「ご苦労じゃったな。」

ありがと。では早速本編行きましょ。

青葉「本編スタートです!」

取られたァ!?

初春「大人げないのぉ・・・。」

青葉「たまにはね?」

まぁいいか・・・。


第3部12章~超えて来た海、受け取って来た想い~

2054年4月11日―――

 

 

8時12分 サイパン司令部中央棟2F・提督執務室

 

提督「今日で丁度、2年か。」

 

大淀「そうですね、確か今日は艦隊2周年を記念して祝杯を挙げるんでしたね?」

 

提督「祝賀パーティーの日だったな。」

 

大淀「ですね。数日前から鳳翔さん達が仕込みをやっています。」

 

提督「やれやれ、随分と運がいいな、先日着任した艦娘達は。」

 

衣笠「楽しみにしてましたよ。」

 

提督「お茶ありがと。やれやれ・・・。」

 

 

~4日前~

 

4月7日午前10時52分 建造棟1F・判定区画

 

三隈「御機嫌よう、三隈です。」

 

山雲「朝潮型駆逐艦、六番艦、山雲です~。よろしくお願いいたしま~す。」

 

提督(まーたふわふわしてんなぁ・・・)

 

朝雲「朝潮型駆逐艦、朝雲、着任したわ! 貴方が司令・・・かあ。ふうーん。ま、いいわ。」

 

提督(値踏みされてしまった・・・。)

 

荒潮「その四番艦、荒潮ですぅ~♪」

 

提督「マジか。」

 

明石「ようやく出ましたよ・・・。」

 

荒潮「改めて、宜しくお願いしますねぇ?」

 

局長が連れてきた艦娘である荒潮、非正規のルートだった為これまで戦列に加える事が出来ないでいたが、それが今日漸く合流となり、第八駆逐隊が完全編成となった。

 

そして第九駆逐隊が編成され、第七戦隊は鈴谷が第八戦隊に居る為これで完全編成となる。

 

提督「皆宜しく頼む。」

 

朝雲「えぇ、宜しく・・・ってっ、えぇっ!? げ、元帥!?」

 

提督「・・・。」

 

朝雲「あっ―――えっと、その・・・」

 

提督「いいよ、俺、それ程能力に自信ないから・・・。」

 

直人がみるみる元気を無くすのが分かる大淀と明石。

 

大淀「提督、流石に今ので自信を無くさないで下さいよ・・・。」

 

明石「そ、そうですよ! 朝雲さんも気付かなかっただけでしょうから・・・!」

 

朝雲「そ、そうそう・・・。」・ω・;

 

提督「はぁ~・・・。」

 

朝雲「その・・・値踏みしちゃってごめんなさい、謝るわ。改めて、宜しくお願いします!」

 

そう言って朝雲は綺麗な敬礼をする。

 

提督「あ、うん・・・宜しく。」

 

それに直人も答礼し、事後を最上にぶん投げたのであった。考えてみればこの4人全員最上とは縁がある。荒潮は古参メンバーではあったが、案内人と言う事で直人の指示で同伴させられたのであった。

 

 

その後、ひょんなきっかけで、三隈は鈴谷から、朝雲と山雲は大潮から、それぞれ艦隊がもうすぐ2周年という事を聞きつけた様だ。

 

 

~今に戻りまして~

 

提督「―――やれやれ。」

 

衣笠「いいじゃない、人数は多い方が!」

 

提督「まぁ、そうさな。」

 

口が軽いのも考え物だと直人はこの時思ったのであった。

 

大淀「私もこうして2年もの間、提督のお傍に仕えさせて頂きました。これでも、御縁だと思ってるんですよ?」

 

提督「大淀にそう言われると、なんと言うか・・・。」

 

そう言って頭を掻く直人。

 

提督「・・・2年、か。短いようで長かったが・・・早かったな。」

 

大淀「そうですね・・・。」

 

彼にとって2年は、かけがえのないものだった。そのかけがえのない時が、今も刻まれ続けている。そう思うと、彼にとっても心に来るものがあった。

 

提督「・・・明日からちょっと休暇でも取るか。休暇申請書の書類だけ持って来てくれ。」

 

大淀「はい。」

 

金剛「休暇なんて、珍しいですネー?」

 

提督「たまにはよかろ。」

 

金剛「そうデスネー。」

 

提督「金剛も休暇を取って構わないんだぞ?」

 

金剛「たまに取ってるヨー?」

 

提督「そうだったな。」

 

衣笠「お茶、下げますね。」

 

提督「ありがと。」

 

衣笠「私もそろそろ休暇を取ろうと思うんだけど。」

 

提督「勿論、休暇届を金剛に提出してくれ。」

 

衣笠「あ、それは済んでるけど、一緒に行かせてくれないかなぁって。」

 

金剛「―――。」ジーッ

 

提督「その申し出はありがたいけど、今回は無しにしてくれ。行きたい場所もある。」

 

遠い目をして言う直人を見て、衣笠は答える。

 

衣笠「―――分かった。気を付けてね。」

 

提督「すまんな、また今度という事で。」

 

衣笠「うん! それじゃ!」

 

そう言って衣笠が執務室を後にする。

 

金剛「・・・“また今度”?」

 

提督「ステーイステイ、落ち着け金剛。」

 

金剛「どう落ち着くネー?」

 

提督「別に何も含意してねぇよ、心配し過ぎなんだよなぁ・・・。」

 

金剛「本当ネー?」

 

提督「変な所で気を揉み過ぎなのさ、少しは信用してくれ。」

 

金剛「鈴谷さんの前例があるのに?」

 

提督「うぐっ―――!」

 

痛い所を突かれて絶句する直人であった。

 

提督「さ、流石に自分でも無いと思いたいんだよなぁ・・・。」

 

金剛「まぁ、あれは例外みたいなものネー。」

 

提督「まぁ・・・完全に俺が襲撃受けてるしな。」

 

金剛「・・・3人目は無しネー。」

 

提督「分かった分かった、心得てはいるよ。襲撃は保証せんぞ。」

 

金剛「ウーン・・・。」

 

普段襲撃している側なだけに返しにくい金剛であったとさ。

 

 

15時25分 サイパン島演習場

 

 

キィンキィンキィンキィンキィン・・・

 

 

提督「ハァッ!!」

 

天龍「てやぁっ!!」

 

 

ガィィンガキィン、キィンキィン・・・

 

 

龍田「天龍ちゃんも、腕を上げたわねぇ~。」

 

日向「まぁ、そうだな。」

 

伊勢「動きが鋭くなった。あの提督と互角なんて・・・。」

 

暇を持て余していた直人が真剣で打ち合う相手を探し、結果天龍との一騎打ちとなっていたのだが、それを嗅ぎ付けた3人が見に来たという構図だった。龍田に隠し事はまぁ出来ないのだ。

 

日向「だが提督もどんどん動きに鋭さが増している。流石だな。」

 

伊勢「しかも息切れもしてないからねぇ。」

 

龍田「天龍ちゃんはまだそのレベルまでのスタミナはないものねぇ。」

 

 

天龍「はぁ・・・はぁ・・・お、おかしいだろ・・・。」

 

提督「何がかな?」チャキッ

 

天龍「何であれだけ打ち合ってて・・・。」

 

提督「まぁ、タフネスさが足りないんだろうよ? 朝潮を見習った方がいいぜ。」

 

天龍「マジか・・・。」

 

電「お、遅れましたなのです~!」

 

第 二 の 刺 客

 

提督「お前まで来るのか・・・。」

 

電「お、お邪魔でしたか・・・?」

 

提督「・・・いや、そんな事はないが。」

 

龍田「・・・。」ニッコリ

 

提督「やっぱりお前の仕業か・・・。」

 

そう、この天龍以外の3人を呼び寄せた張本人は龍田、しかも偶然を装ってるので尚の事性質が悪い。

 

 

電「やああああっ!!」

 

提督「くっ―――!?」ズザザザァッ

 

側転ジャンプ斬りを受け止めてノックバックさせられる直人。極光を振るう直人でもこれは辛いものがある。

 

電は何を聞いたのか錨持参で来てしまったのだ。その重さに加えて運動エネルギーがジャンプからの振り降ろしで足された結果恐ろしい威力になる。電は決して腕力がある方ではないが、この様にして威力を上乗せする事によって対抗している訳である。

 

提督「律儀にも程が―――ッ!」

 

 

ガキイィィィィン

 

 

提督「くううっ!!」

 

更に追撃を受け止める。

 

電「いつもながら、強いのです―――ッ!」

 

提督「頭が回るお前も十分だと思うがね・・・!」

 

 

ギチギチギチ・・・

 

 

提督「だが―――」ギラッ

 

 

ガリガリガリ―――ッ

 

 

電「!?」

 

直人が鍔迫り合いをしている刀を自分側に引き、それによって全体重をかけていた電の錨が滑り、バランスを崩しながら直人の小脇をすり抜ける。

 

提督「―――!」

 

 

ヒュバッ

 

 

電「っ!」

 

そこから身を翻した直人、電の首筋に刀を振り抜く直前で止める。念の為峰打ちである。

 

提督「はい、今回も俺の勝ち。」

 

電「流石・・・なのです。電では敵わないのです。」

 

提督「何を言う。充分強いよ、お前は。」

 

電「・・・そんな事ないのです。」

 

そう謙遜して見せた電であった。

 

 

20時00分 食堂棟1F・大食堂

 

それから5時間後、艦隊2周年を祝う祝宴は静かに始まった。特に訓示も無く、ただ乾杯の音頭を取っただけであった。

 

提督「ッ、ハァ~・・・。」

 

盃を空ける直人。

 

大和「あら、提督。」

 

提督「大和か。パーティー楽しんでるかい?」

 

大和「それはもう。」

 

提督「そりゃ良かった。」

 

大和「提督も誰かと一緒に居られるかと思いました。」

 

提督「そうさな、一人で食って飲むのが趣味って訳じゃないが、こういう時一緒に居る相手ってのは、まぁあんまりいねぇやな。皆姉妹艦もいる子が多いし・・・」

 

大和「―――提督。」

 

提督「ん?」

 

大和「その・・・ご一緒しても構いませんか? 私はまだ、妹が来てませんから。」

 

提督「―――!」

 

そう、大和の妹である武蔵はまだ着任していない。同僚である夕張と明石、自ら警備を買って出たあきつ丸など、姉妹艦が居なくとも他の部署の艦娘と関係がある艦娘は多いが、ただ一人大和だけはあぶれてしまった存在だったのだ。

 

提督「分かった、構わないよ。」

 

大和「提督―――!」

 

提督「一人寂しくなんて、お前らしくもない。」

 

大和「・・・はい!」

 

大和は直人に付いてパーティー会場の食堂を歩く事になる。

 

 

提督「よっ、金剛。」

 

金剛「Oh! テイトクでしたカー。」

 

榛名「どうも!」

 

パーティー会場を歩いていると榛名と一緒にいる金剛に出会う。

 

提督「相変わらずカタコトは抜けないねぇ。」

 

金剛「ム~、これでもマシになったほうデスヨー?」

 

榛名「そうですね、前と比べても、姉さんは大分日本語に馴染んできてます。」

 

提督「そうだな。まぁ一人くらい英語を話せる艦娘が居ないとな、もし外国の艦娘と出会っても困ってしまう。」

 

金剛「その時は喜んで通訳するネー!」

 

提督「ありがと。」

 

金剛「今日は大和さんデスカー。」

 

提督「まぁ、そうだな。」

 

榛名「提督は皆さんに慕われてますね。」

 

提督「ハハ・・・そうかな。」

 

榛名「きっとそうですよ。」

 

提督「だと、いいけどな。それじゃ!」

 

そう言って直人はまた歩き出した。

 

大和「本当に提督は人気がありますからね。」

 

提督「外には敵も多いからなぁ。」

 

大和「政敵の類から守って頂けるのも、提督のおかげですから。」

 

提督「お、分かる?」

 

大和「私もかつては、連合艦隊旗艦でしたから。」

 

提督「そうか、そうだな・・・。」

 

 

その後プレートに料理を取っている時、横から話しかけてきた者がある。

 

「てーとくっ♪」

 

それは鈴谷だった。

 

提督「鈴谷か、どうだパーティーは。」

 

鈴谷「楽しんでるよ~。」

 

熊野「あら、提督。」

 

最上「提督だ~!」

 

三隈「提督、ここにいらしたんですね?」

 

大和「あら、最上型の皆さん勢揃いですね。」

 

鈴谷「折角だから今日のパーティー、4人で一緒に回ろうって事になって!」

 

提督「おっ、それは良い事だ。それで三隈、どうだい居心地は。」

 

三隈「あ、はい。姉や妹達もいますし、慣れない事は多いですけれど、とてもいい艦隊だと思います。提督がどんな艦隊を作り上げて来たのか、分かる気がします。」

 

提督「ハハ、そいつはどうも。」

 

熊野「謙遜なさらないで下さいな。提督はまず雰囲気の楽しい艦隊をと、常に努力なさっている事を、知らない子はいませんわ。」

 

提督「そうか、この2年で随分と成果も挙がったと俺自身思ってはいたんだけど、自信が無くてね。」

 

鈴谷「自信持って言っていいよ~、ここほどいい雰囲気の艦隊って珍しいと思うし!」

 

提督「鈴谷が言うんだから間違いなかろうね、ありがと。」

 

鈴谷「どういたしまして。じゃぁね提督!」

 

提督「おう!」

 

鈴谷がそう言うと4人は人混みの中に消える。

 

提督「やれやれ、騒がしい奴だ。」

 

大和「でも、楽しそうです。お二人とも。」

 

提督「楽しそう、か・・・そうだな。」

 

頭を掻きながら苦笑する直人である。

 

 

それから暫く食事を楽しんだ直人だったが、やがて涼みに出たいと言い食堂の前に出た。

 

提督「今日も晴れてるな。」

 

大和「星が綺麗に見えますね。」

 

提督「そうだな・・・。」

 

星空を見上げた直人は、ふとこんな事を思った。

 

提督「・・・かつて、あの星々は神々なのだという信仰があった地域もあったと聞く。が、今の俺には、あの星々はこの戦争で流された血と涙と、命の寄せ集まりと思えてならない。」

 

大和「提督―――。」

 

提督「それだけ、この戦争が奪った物、喪わせた物は大きかったと言う事だ。これからも増える事は間違いない。いつか誰かが終わらせるにしても、それさえ今ではない。」

 

大和「・・・きっと終わります。夢がいつか醒めるように。」

 

提督「そうだな。」

 

大和「―――この艦隊に居なければ、私はあれだけお役に立つ事は出来なかったかもしれません。それをこんなにも、提督は私の事を使ってくださる。感謝してるんですよ?」

 

提督「大和・・・。」

 

皐月「おや? 司令官―――と、大和さん!?」

 

提督「やぁ。」

 

大和「こんばんわ。」

 

皐月「こ、こんばんわ。」

 

提督「どうした皐月。」

 

皐月「あ。うん! ちょっと休憩。」

 

提督「・・・そうか。俺達もなんだ。」

 

皐月「ふーん? 成程ね。」

 

そう含ませぶりに言う皐月。

 

提督「大分涼しいな。」

 

大和「暑い時期ですと気温が下がりませんけどね。」

 

提督「悩み所よなぁ、日本も似たようなもんだが。」

 

皐月「・・・司令官。」

 

提督「―――どうした?」

 

珍しくトーンの低い声で自分の事を呼んだ皐月に、直人が問いかける。

 

皐月「・・・僕、この艦隊に来れて、良かったと思ってる。あのまま、元の艦隊が残ってたとしても、こんな楽しい思い出や、沢山の活躍は、出来なかったかもしれない。」

 

提督「皐月・・・。」

 

皐月「前の艦隊の司令官は、あんまり僕達艦娘と向き合ってくれなかった。でも、今は違う。司令官―――紀伊提督は、しっかり面と向き合って、僕達と接してくれた。今となっては当たり前だと思えるけど、ここに居なきゃ、そうは思えなかったかもしれない。」

 

提督「俺もな、東京湾外からのSOSを聞きつけて、元々あの日は出撃する予定だったんだが、その予定を繰り上げて出撃して来たんだ。正直俺が単騎で出て発見出来なかったらとは思ったけど、本当にあの時会合出来て良かったと思ってる。」

 

皐月「あの時は嬉しかった、助けが来たって思えた。こう見えて、結構司令官には一杯感謝してるんだよ? その・・・ありがとう、ボク達を拾ってくれて。ボク達と―――出会ってくれて、ありがとう。」

 

提督「どういたしましてってかこちらこそだよ。お前達が来てくれたおかげで随分艦隊も賑やかになったしな。それに、お前達がいるおかげで、俺は安心してサイパンを留守に出来る。感謝してるよ、皐月。」

 

皐月「エヘヘッ、お互い、どういたしましてだね!」

 

提督「そうとも。」

 

司令部防備艦隊―――一見地味な部隊である。指揮系統としては司令部(ここでは提督を筆頭とする首脳陣の事)の直隷部隊であり、現時点に於いて旗艦の鳳翔以下、軽巡6・駆逐艦10及びサイパン基地航空部隊で編成される部隊だ。

 

任務としては様々な要請への対応や、司令部周辺海域の警備、有事の際の司令部防衛など様々であるが、後方兵站線を護る為の二線級の任務が主だ。

 

華々しさを求めがちな人々の心理には中々合致しない任務だが、実際直人が外に出る為には、こういった任務は欠かせないのである。頭数の少なさを航空部隊で補っている現状はさて置いて。

 

川内「おっ、何の話?」

 

提督「川内か。」

 

川内「私に隠れて内緒話~?」

 

提督「何がお前に隠れてだ、ずっと聞いてたんだろ分かってんぞ。」

 

川内「―――バレてたかぁ。」

 

立ち聞きされていたようだ。

 

川内「まぁ、私も提督には感謝してるからね。」

 

提督「ほう?」

 

川内「提督に拾って貰えなかったら、今頃この世にいないか、今でも裏の世界にいただろうから。前線になんて、絶対出られなかっただろうね。その点、提督には感謝してるんだよ? 一度は提督を殺そうとまでしたのに、そんな私でも使ってくれる。ありがとう、そしてこれからも。」

 

提督「当たり前だろう、バンバンこき使ってやるから覚悟しとけ~?」

 

川内「うん! 期待してる。」

 

艦娘にとっては使って貰えているという事だけでも喜ばしい事であるという意識がある。むしろ何の任務も与えられていない状況は艦娘達を不安にさせる訳だが、彼は基本的にどの艦娘も手持無沙汰にする様な事はしないのである。

 

例えそれが、“手持無沙汰にさせて置く事が合理的でないから”と言う理由だったとしても、艦娘達の目線で見ればありがたい話なのである。

 

提督「思えばこの2年、色んな事があった。死にかけた事も1回だけでは無かったな。」

 

皐月「そうだね・・・。」

 

大和「考えてみると、色んな事がありました。そのせいでしょうか、随分と、時間の流れが早かった様に思えます。」

 

提督「あぁ。色んな戦場で、色んなものを見た。時に後方で指揮を取る事を余儀なくされたこともあった。色んな奴に出会い、色んな敵と出会い、色んな友と会った。」

 

大和「様々な事が起こり、積み重なって、今がある。私達もそうでした。」

 

提督「ホントそうだよな、補給担当官が大迫一佐じゃなかったら今頃もっと苦しい状況だぜ。」

 

大淀「本当にそうですね。」

 

提督「おぉっ、大淀か。」

 

大淀「はい。大淀、ここに。」

 

提督「やれやれ、驚かせないでくれよ。」

 

大淀「あら、それはそれは。失礼しました。」

 

そう茶目っ気たっぷりに言う大淀。

 

提督「・・・思えば、初めて司令部に行った時出会ったのも、お前と明石だったな。」

 

大淀「はい。以来2年間、ここまで不束者ながら来させて頂きました。」

 

提督「何を言う、お前が居なかったら執務が煩雑になっていた所だ。ありがとうな。こんな俺を支えてくれて。」

 

大淀「何を仰いますか。まだこれからでは無いですか、そのお言葉は、早過ぎますよ。」

 

提督「そうだな・・・そうだった。」

 

金剛「そうデスヨー?」

 

提督「―――金剛。」

 

金剛「随分とお揃いデスネー?」

 

提督「気付けば、な。そう言えば、まだ言って無かったな。」

 

金剛「何をネー?」

 

提督「・・・ありがとう、あの時、俺の―――俺と部下達の命を救ってくれて。もしあそこで金剛が居なかったら、俺は今頃こんな所で艦隊を率いるまでも無く、横浜沖の海底に沈んでいる所だった。命の恩人に言う礼としては、余りに遅過ぎた気がするが、それでも言わせてくれ。ありがとう。」

 

金剛「今更お礼なんていいヨー。それに、お礼はもう充分過ぎる位貰ったネー。」

 

提督「金剛・・・。」

 

金剛「―――この2年、色んな事があったネー。色々失敗もしたケド、その度に前に進めたのは、提督のおかげデース。」

 

提督「・・・俺は、何もしちゃいないさ。」

 

金剛「・・・そうね。」

 

提督「まぁ、俺が特別と言うだけなのだろうが、かつての縁が、今こうして俺を支えてくれる。山本海幕長、土方海将、大迫一佐、宇島海将、北村海将補、小澤海将、尾野山一佐、門田一佐―――そして、氷空。あの日の縁が、今こうして、日本を、人類を救う為に第一線で頑張っていると思うと、思う所もある。」

 

 7年前、4人の青年達が、巨大艤装を駆って北マリアナに殴り込みをかけた。それから既に7年が経過しようとする今日、その7年前に勇躍した青年達が成人し、その青年達を支えた者達が、日本を救う為に日々その頭脳を駆使している。

それ程注目される事ではない。しかしこうして見ると、因果なものである。あの日と今日本を救おうとしている、その顔触れが殆ど同じなのだから。

 

提督「―――7年前、初めて巨大艤装に出会ったあの日から、俺の運命は変わっていたのかもしれんね。ここにこうして立つ事は、俺の運命だったのかもしれん。そう思えば、あの日の孤独な死闘は、決して無駄では無かった。」

 

大和「でも提督は今、孤独ではありませんね。」

 

川内「そうそう!」

 

皐月「僕達皆が付いてるよ!」

 

金剛「地獄の向こうまで付き合うネー!」

 

大淀「この戦いが、終わるなら。」

 

提督「―――そうだな・・・俺はもう、一人じゃない。お前達が居て、支えてくれる多くの人達がいて、共に戦う盟友達もいる。孤独感なんて無いし、いつでもお前達とお互いに笑い合える。そう思える事は、幸せな事だな。」

 

大和「私もそう思います、提督。」

 

提督「・・・3年目も、より一層頑張ろう。この戦争を終わらせるには、今までと同じじゃダメだ。昨日より強く、昨日より毅然と、日進月歩で、変わり続けなければ。俺達が、この戦争を終わらせる為には、それは必要だと思う。それを胸に刻んで行こう。」

 

5人「「はいっ!」」

 

 星空の下で、6人は心意気を新たにする。それは戦争の転換期を超えたからこそ、そして艦隊創始2年という節目の日であればこそ出来た事だった。

彼の言った事は至極普通の事だったが、そもそも彼が格好付けて物を言った事はそれ程多くないのである。

 彼にとっての幸運とは、この様に多くの良い仲間を得た事と、恵まれた環境の中にあった。であればこそ、彼は数多の幸運を勝ち得た。

結局の所幸運とは、十全に準備を整え土俵に立った者が、万に一つ勝ち得る事の出来るものなのであるという、何よりの証左なのであった。

 

 

夜の帳は落ちる。例えそれが、誰にとってのどんな一日だったとしても―――日は落ち、月は沈む。

 

2054年4月11日は、こうして終わった。結局深夜までどんちゃん騒ぎでこそあったが・・・。

 

 

翌日、直人は機上の人となった。夜明けと共にサーブ340改(バルバロッサ)がサイパンを発って厚木へと向かったのだ。護衛の為の最小限の人員を伴い、日本に発ったのである。

 

 

まぁ、タダで済む訳もなく・・・

 

 

4月12日10時57分 空自軍厚木基地駐車場

 

提督「さて早いとこ離れないと―――」

 

「直人、尾行に気付かないのはまだまだだな。」

 

提督「・・・うげ。」

 

その声だけで呼んだ相手を特定した彼は、思わず声を上げる。

 

「お忍びか?」

 

提督「―――当然でしょう、“大迫さん”。」

 

その主は横須賀鎮守府司令部後方主任参謀である大迫(おおさこ) 尚弥(なおや)一等海佐であった。今回も直人はさも当然かの様に彼に捕まるのだった。

 

大迫「お忍びで来ると言うのはどんな要件なんだ? そもそも休暇届でバレてる訳だが。」

 

提督「てかなんで目を通してるんすか!?」←土方海将宛で出した

 

大迫「後方主任参謀だぞ俺は。」

 

提督「まぁ・・・それは。」

 

大迫「やれやれ。なんでもいいが、用件が終わったら横鎮司令部に顔を出してくれ~。」

 

提督「はぁ~、了解致しました。」

 

大迫「頼むぞ~。」

 

提督「はい。あ、大迫さん。川内と伊勢日向は連れて行きますが、残りの面々は一旦横鎮の方に預けていいでしょうか?」

 

大迫「分かった。」

 

金剛「えぇ~!?」

 

鈴谷「なんでよ!?」

 

龍田「二人とも、落ち着きなさい?」

 

提督「そうだぞ、含む所がある訳じゃないんだから。」

 

金剛「だったら―――」

 

提督「見つかったらまずいからこそ、最小限の人員で行くんだよ。分かるかな?」

 

鈴谷「―――金剛、ここは引き下がろう。私達、護身術が出来る訳じゃないし・・・。」

 

金剛「ムムム・・・分かったネー。」

 

渋々引き下がった金剛であった。

 

 

この後厚木基地から新横浜駅まで車を飛ばし、新幹線で名古屋駅まで“のぞみ”に乗り、そこから特急南紀に乗り紀伊半島を下る。

 

 

17時37分 JR紀勢本線 新宮駅前

 

提督「・・・久しぶりに来たな。」

 

と言う直人の格好はいつもと違っていた。端的に言うと変装していた。

 

あごひげを付け、かつらを付け、初老の紳士風に変身していたのだった。

 

提督「―――三人は尾行と同じ形で付いて来てくれ。」

 

川内「分かった。」

 

伊勢「了解。」

 

日向「まぁ、そうなるか。」

 

そう言い置いて直人は歩き出す。10m~20m程後ろを3人が続く。この3人も艦娘の服は着ず、各々の私服を身に着けていた。刀は弓道具の袋に入れて偽装する形である。

 

 

30分ほど歩き、駅前から商業区を経て住宅街に至る。彼にとっては慣れ親しんだルートだが、その町並みは彼の中では随分と違って見えていた。3年も歩いていなかったのだ、当然だろう。

 

不意に彼が歩みを止める。そこは1軒の家の前だった。その表札に書かれていた苗字は―――

 

 

“紀伊”

 

 

提督「―――。」

 

静かに佇む直人。リビングには彼の遺影があった。彼の母親がその遺影を拝んでいた。

 

提督(母さん・・・すまない、嘘をついて―――)

 

彼は心の中で、自分でついた訳でもない嘘を母親に詫び、更に歩みを進め、3軒先で足を止める。

 

その表札には「佐々木」と書いてあった。

 

提督(瑞希・・・お前が先に逝って、もう随分経つな。新宮大空襲からもう8年か・・・。)

 

 2046年3月19日の新宮市への大空襲。彼はその時、様々に喪った人々の姿を見た。その彼が唯一、取り返しの付かないものを失ったとすれば―――それは彼の幼馴染であっただろう。

その時16歳の彼には、幼い時からずっと一緒の、同級生の幼馴染が居た。それが“佐々木(ささき) 瑞希(みずき)”という女の子であった。

 

提督(生真面目で、活発で、明るくて、綺麗で、世話焼きで―――もう二度と見る事の出来ない後ろ姿だが・・・。)

 

彼女はその空襲で命を落としたとされている。その死体は現在でも(よう)として行方が知れず、恐らく空襲で行方不明になったのだろうとされ、死亡認定がされている。

 

提督(・・・戻ろう、誰か見知りの者に見つかる前に。)

 

直人は踵を返して、駅に向け足早に戻ったのだった。

 

川内(・・・佐々木?)

 

川内はその名字に些かばかり聞き覚えがあったが、なんだったか、それを思い出す事は出来なかった・・・。

 

23時37分、直人らはとんぼ返りで横鎮本庁に戻ると即座に寮に戻り床に就いた。翌日になり、直人は司令長官室に顔を出す事になるのだった。

 

 

4月13日7時49分 横鎮本庁・司令長官室

 

提督「防備艦隊司令官、出頭命令に応じ参上しました。」

 

土方「随分と待たせてくれたな。」

 

そう言いつつ彼は周囲に手でサインを出す。それを見た土方海将の幕僚は司令長官室を出た。

 

土方「・・・さて。」

 

提督「申し訳ありません、自分の遺影に陰ながら手を合わせて参りました。」

 

土方「・・・そうか、分かった。それは置こう。」

 

提督「それで、何事でありましょうか。」

 

土方「君にまた、頼みたい事があると、山本幕僚長から言付かっている。」

 

提督「ハッ、何なりと。」

 

姿勢を正して直人は言った。

 

土方「まぁそう威儀を正す事はない。と言うのは、また、急行を一つ、拾って貰いたい。」

 

提督「急行、でありますか。」

 

土方「そうだ、欧州からのな。」

 

提督「・・・分かりました。で、今度のランデヴーポイントは?」

 

土方「―――アッドゥ環礁の西方だ。」

 

それを聞いた彼は、ニヤリと笑いながらこう言った。

「またしても、大胆であります。」

 

大迫「とはいっても、前回とそれ程変わりないポイントだ。今度は独伊の合同部隊が送り届けて貰えるだろう。」

 

提督「承知、致しました。必ず成功させましょう。」

 

土方「頼む。今度の便は、重要な艦娘艦隊の技術を積んでいるようだ。」

 

提督「と、いいますと?」

 

土方「いや、技術と言うよりは、他国の艦娘用の装備だ。艦載機だがね。」

 

提督「本当でありますか。」

 

土方「無論艦娘の派遣もあるという事だ。到着すれば、恐らく貴官の艦隊に配備されるだろう。」

 

提督「感謝致します。万全を尽くしてアラビア海に赴きましょう。」

 

土方「今度の作戦は、艦娘艦隊の全力出撃に呼応したものだ。アラビア海への潜行は困難だろうが、その手腕に頼らせてもらう。」

 

提督「ハッ!!」

 

こうしてまた直人は大任を背負わされたのであった。まんざらでも無く。

 

土方「それともう一つ、君にやって貰いたいものがある。君の戦略的才幹を発揮出来る仕事だ。」

 

提督「・・・はぁ。小官に出来る事なら何なりと。」

 

土方「うむ、実はな―――」

 

 

その後、艦娘達を観光にでも行かせた後、金剛や鈴谷と街中をぶらついた後、昼食を約束した大迫一佐の所へととんぼ返りするというハードスケジュールっぷりを披露する直人であった。

 

 

12時36分 横鎮本庁1F・食堂

 

提督「すいません、待ちましたか?」

 

大迫「いや、気にしなくていい、さっき仕事が終わった所だ。しかし君も忙しいな。」

 

提督「えぇ、まぁ。」

 

大迫「まぁ、食べようか。」

 

提督「はい。」

 

大迫「そうだ、お前も提督になって2年だったな。おめでとう。」

 

提督「あぁ、ありがとうございます。」

 

大迫「お互い長く戦ったもんだな。」

 

提督「全くです・・・。」

 

どこか懐かしむように言う直人。

 

大迫「さて・・・だ。」

 

提督「?」

 

大迫「派手にデコイを流出させたらしいな。」

 

提督「は、はい。まぁ・・・。」ギクリ

 

大迫「―――そう気まずそうにするな。補充が欲しいか聞きたいだけだ。」

 

提督「はい、こちらでも生産出来るようになりましたが、1個艦隊で供給できる数は限られますので。」

 

大迫「分かった、定数分また補充する。で、他に何か入用のものはあるか?」

 

提督「・・・そうですね。」

 

少し考える直人。

 

提督「・・・前回届けられた積み荷の一つに、“Bf110”がありましたよね?」

 

大迫「あぁ、そうだな。」

 

提督「あれは今どうなってます?」

 

大迫「あぁ、何分陸用機と言う事でどこも持て余していてな・・・。」

 

提督「―――我が艦隊の基地航空隊に、貰えますか?」

 

大迫「―――今はラバウル基地にあるはずだが・・・。」

 

提督「そうなんですか?」

 

大迫「俺達も、艦娘用航空機を陸上運用する方法の研究は進めてるんだ。ラバウルがその試験場でもあった訳だが。」

 

提督「成程、そうだったのですね。」

 

大迫「うん・・・そこで成功を収めつつある今、これをより効果的に運用するべく、中央も考えているようだ。」

 

提督「()()()―――費用対効果の話ですね。」

 

大迫「言い換えればそうなる。」

 

提督「そうですか・・・まぁ、後方にあるサイパン基地では、敵も来ませんからね。」

 

大迫「それに十分過ぎるだけの数を持っているだろう。」

 

提督「そうですね、望み過ぎと言うものでした。」

 

大迫「そう言う所も直人らしいがね。」

 

提督「そうですかね・・・。」

 

苦笑して言う直人である。

 

提督「・・・今の所これと言って必要なものは無いですね。」

 

大迫「そうか、分かった。何かあればまた言ってくれ。」

 

提督「はい。」

 

大迫「しかし最近は中央のお偉方も随分と大人しくなったな。」

 

提督「―――幹部会。」

 

大迫「あぁ。流石に山本閥が相手では手が出ないようだ。しかし徐々にその影響力を取り戻そうとする動きもあるようだな。」

 

提督「まさか・・・。」

 

大迫「人が変わった位では奴らは小動(こゆるぎ)もしないという事だろう。」

 

提督「なんと言う図太さか・・・。」

 

大迫「今後また何があるか分からん。気を付けてくれ。」

 

提督「・・・大丈夫です。その為に川内を連れて来ている訳ですから。」

 

大迫「そうか・・・。」

直人自身、身辺警護に余念はない。その為に、そう言った事に向いた艦娘をことあるごとに従えているのであった。

 

提督(あの事は―――伝えないでおこう。)

 

大迫「どうした直人。急に黙って。」

 

提督「あ。いえ、なにも。」

 

大迫「ん? そうか。」

 

提督「それにしても、戦線は緩やかな膠着状態のようですね。」

 

大迫「おかげでこちらとしても戦力の再建に余念なく取り組めるってものだが、それは敵だって同じ筈だ。それを叩いて回ってるのがお前達と言う事になるが―――」

 

提督「こちらはその再建を終えている、と言う事ですか?」

 

大迫「そう言う事だ。そこで今回インド洋に於ける敵勢力の縮小を狙った攻撃をやる訳だ。丁度東京急行が来るからでもある。」

 

提督「成程、責任重大ですね。」

 

大迫「味方の作戦が失敗すれば、輸送船団を伴った状態で水上戦闘と言う事態も想定される。油断はするなよ。」

 

提督「勿論です。実施時期に余裕がありますから、万全の備えで行きます。」

 

大迫「頼むぞ。スエズ経由の東西連絡が継続出来るかは、お前達次第なんだからな。」

 

提督「はい、任せて下さい。」

 

考えてみればとんでもない大任を仰せつかっている横鎮近衛艦隊。たった1個艦隊100隻程度の小艦隊に任せていい重責ではとてもないのだが・・・。

 

提督「そう言った任務は―――我々の専門ですから。」

 

彼は得てして断らない。自分達にしか出来ない事が一つでもあるならば、彼はそれを行わなければならなかったし、それを理解してもいたし、何より彼がそうしたかったのは事実である。

 

 

14時18分 戦艦三笠上甲板・右舷副砲区画

 

直人はまた、三笠を訪れた。

 

提督「ここが三笠のケースメイト部か・・・。」

 

当然だが砲はなく、模造砲の基部のみがそこにある。

 

提督「日本海海戦や黄海海戦、いや―――この船の生涯で、一体何発もの射弾を送り出したのだろうか・・・。」

 

「そうね・・・数え切れない位、とでも。」

 

提督「―――。」

 

気づけば背後に“彼女”はいた。

 

提督「・・・三笠。」

 

三笠「えぇ、そうね。」

 

提督「―――いつまで、我々は戦えばいいのだろうな。」

 

三笠「・・・貴方達は、歴史を紐解けば常に戦争をしている。人が争い続ける事に終わりなんてない。」

 

提督「・・・そうだな。」

 

三笠「でも―――確実に事態は動いている。貴方は自分に嘘のない道を行くといいわ。」

 

提督「お前は・・・どうするんだ。」

 

三笠「さて、どうするのでしょうね。」

 

提督「―――そうか。」

 

彼は敢えて何も言わなかった。三笠もそれは希望してないし、直人もそれは分かっていたからだ。

 

提督(我々は・・・いつまで戦い続ければいいのだろうか・・・。)

 

終わりのない戦争。しかし必ず終わると信じた彼の胸中に去来したのは、果たして―――?

 

 

やがて直人は記念艦三笠を去った。三笠と再び言葉を交える事無く、彼が信じる仲間達の元へと帰ったのである。

 

 

17時27分、バルバロッサの機内で、自動操縦にした直人が機内で金剛と話をしていた。

 

提督「あ、それはですねー―――」

 

鈴谷「寒い言い訳したら怒るよ?」

 

提督「ステイステイ。落ち着かんかい。」

 

金剛「で、なんでなんデース?」

 

直人が問い詰められていたのは、実は金剛からディナーを共にしたいと言われたのだが直人がそれを断り、挙句さっさと予定を切り上げてしまったからである。

 

提督「日本本土がボロボロになってるって言うのは知ってるだろ? あれのせいで電力の供給が安定してなくてな、計画停電が全域的に行われているんだ。」

 

鈴谷「ふんふん。」

 

提督「横浜も例外じゃなくってな・・・たまたま今日の夜その計画停電にかかってたんだ。だからさっくり切り上げて来たって次第なのさ。」

 

鈴谷「仕方ないかぁ・・・。」

 

金剛「デスネー。」

 

提督「ディナーだったら今度手料理でも作ってあげるからそれで勘弁してくれ~。」

 

鈴谷「マジで!?」

 

金剛「本当デスカー!?」

 

提督「そうだよ。」

 

川内「やれやれ、羨ましいなぁ。」

 

鈴谷「・・・。」ジロッ

 

川内「ッ―――!」ビクッ

 

この時川内が見た鈴谷の顔は、それまで見たどんな表情よりも恐ろしかったそうな。

 

 

4月14日7時02分 中央棟2F・提督執務室

 

大淀「また船団との合流ですか。」

 

提督「そう言う事だな。」

 

大淀「分かりました、前回と同じように―――」

 

提督「まぁまぁまぁ、待たんかい。作戦指示書はここにあんねんよく読みや。」

 

大淀「あ、はい・・・。」

 

大淀はそう返事して直人から作戦指示書を受け取ると中身を読み始めた。因みに直人は昨日帰りの機内で熟読していた。

 

大淀「・・・5月4日以降、ですか。」

 

提督「5月6日までには来る筈だからそれと合流せねばならん。お互い無線封止している中、果たして上手く行くかな。」

 

大淀「インド洋地域・・・またここに向かう事になるとは思いませんでしたね。」

 

提督「そうだな。予めペナンに前進する必要もある。手間な事だが、スケジューリングも含めお前達二人に任せる。」

 

大淀「分かりました、手配します。」

 

金剛「了解ネー!」

 

直人がそう述べるとすぐさま執務に取り掛かった。いつもの日々だが、艦隊運営3年目、ペンも走ろうと言うものであった。

 

 

そんな中、久しぶりにアイダホから連絡があった。

 

グアム基地の整備が概成し、かつ情勢も落ち着いているという事で招待を受けたのである。

 

 

15時28分 グアム島アプラ港深海棲艦基地

 

グアムに駐在する講和派深海棲艦隊総司令部は、アプラ港にある。

 

この港湾はグアム中西部に位置する港であり、かつては米軍の軍港もあった場所であったが、グアム北部のジーゴを中心点として棲地化した際にその瘴気に侵された者は全滅、残りも蹴散らされてしまい全島的に無人となった。このため島北部にあるアンダーソン空軍基地跡には、B-52などの米軍軍用機の残骸が現在でも残っている。

 

グアムを米国から譲り受けた講和派深海棲艦隊は、このアプラ港に基地を設け、これまでその整備・拡充に励んでいた。思えば自ら壊した場所を再建するのも可笑しな話であったが。旧アプラ港の原型を残すのは、北側の珊瑚礁上に築かれた堤防位なものであるが、それも補修されている。

 

重巡鈴谷を港内に投錨させ、内火艇に移乗した直人は、港の桟橋の一つに降り立った。

 

提督「久しぶりだな、アイダホ。アルティも。」

 

アイダホ「はい。我々は貴方方を歓迎します。」

 

アルティ「その節は世話になった。」

 

提督「うん。」

 

大淀「凄いですね、想像以上に整備が進んでいます。」

 

アルティ「これまで戦闘と整備の連続だったが、どうにか完成と言える程度まで漕ぎ着けた。」

 

提督「やれやれ、立派に仕上がったものだな。」

 

アイダホ「ありがとうございます。」

 

提督「深海棲艦が棲地を持たず基地化しているというのは殊更珍しい話でもないが、これほどの物は例が無かろう?」

 

アイダホ「知りうる限りでは。」

 

提督「そうか・・・立派なものだ。」

 

アイダホ「北方棲姫様がお待ちになっておられます。こちらへ。」

 

提督「分かった。」

 

直人はアイダホとアルティの案内を受けてグアム島に足を踏み入れたのであった。

 

 

一方・・・

 

 

鈴谷「大丈夫かなぁ・・・。」

 

最上「“心配?”」

 

鈴谷「ん~? まぁね~。」

 

三隈「“提督を信じて送り出したんですから、信じてあげるのが勤めでなくって?”」

 

鈴谷「まぁ、そうだね・・・。」

 

重巡鈴谷で直人を送り出した鈴谷が心配そうにしていた。何かあった時の為に仰角こそ掛けていないが全ての火器が厳戒態勢を取っている。

 

 

暁「まぁ、鈴谷さんが心配するのも分かるわ。深海棲艦の中に送り出したんですもの。」

 

熊野「講和派の方々を信用しないと言う訳ではありませんが、もしテロリストが紛れ込んでいたらと思うと・・・不安ですわね。」

 

暁「そうよね・・・爆(はちゅ)テロなんかされたら・・・。」

 

響(噛んだ・・・?)

 

雷(噛んだ・・・。)

 

電(呂律が追い付いてないのです。)

 

噛んだ内である。

 

五十鈴「―――言えないなら“爆破”でいいじゃない暁。」

 

暁「い、言えるもん!」

 

熊野「暁さん、一人前のレディと言うものは、失敗を素直に認めるものですわ。」

 

暁「そ、そういうものなのね・・・。」

 

五十鈴「まぁそうね。ま、提督なら大丈夫よ。ね、電?」

 

電「なんで電なのです!?」

 

五十鈴「あら、提督の実力を一番知ってると思ったのだけれど。」

 

電「そ、そうですね―――そうです、司令官さんなら、きっと大丈夫なのです。電なんかじゃ、とても敵わない位強い人なのです。」

 

雷「電、そんな事じゃダメよ! 電はもう少し自信を持っていいのよ?」

 

金剛「でも、勝った事がある人が殆ど居ないのは事実ネー。」

 

雷「うっ、そうね・・・。」

 

直人に正面から勝った事があると言えば、あの鳳翔さん位なものである。あとは雪風が矢矧とタッグを組んだ際にも勝ってはいるが。

 

しかもそれは条件付きであり、鳳翔は直人が護身術を苦手としていた為でもあり、雪風は次元の違う幸運によって救われただけである。

 

最上「そう言えば近々またやるらしいよ?」

 

電「なのです!?」

 

三隈「何を、ですか?」

 

金剛「近接戦闘訓練の話デスカー?」

 

最上「そうだね。」

 

三隈「近接戦闘、ですか?」

 

響「艦艇にとっての近接戦闘は近接防空射撃の事で、三隈も防空と思ったかもしれないけど、そうじゃなくて人としての近接戦闘の事だよ。」

 

三隈「格闘術、ですか?」

 

電「だけじゃなくて、剣術や槍術など、手足を使ってする戦闘全般が対象なのです。」

 

三隈「成程・・・必要ですか?」

 

雷「必履修よ・・・また来ちゃったかぁ。」

 

熊野「4回目ですわね。銃剣道の練習、余り出来てませんわ・・・。」

 

“一人前の”レディがまさかの銃剣道であった。字の通り“銃剣”(銃の先端に装着する短剣)を装着した銃を模した「木銃」で突き合う競技武道である。

 

元は西洋式の銃剣術(フランスから導入したフランス式銃剣術)が元になっており、明治期に槍術の心技(形状が槍に近い為)と剣術の理論を折り合わせて銃剣を扱う際の技能(日本式銃剣術)として完成されたものが、競技武道化したものでこの二つの武道と比べると歴史が浅い。

 

ただ、竹槍訓練も銃剣術であった他、学校の体育で取り入れる所も多く、終戦後禁止された武道が解禁されると瞬く間に復興して、全日本連盟が作られたり自衛隊の体育に取り入れられたりと現在でも健在である。当たり前のように全国大会もある。

 

因みに自衛隊で現在も取り入れられている理由は単純で、現用の自動小銃にも銃剣の装備があるからである。昔の歩兵銃と比べ全長こそ短くなった上に塹壕戦がメインとなった第一次大戦頃からは使う機会も激減こそすれ、突発戦闘の際に有効足りうる装備には違いないからである。特に市街地では。

 

 

深海棲艦が基地を設営する場合、一つ特徴的なものがある。それが、司令部中枢となる「ドーム」である。グアム基地の施設は殆ど人間達が建てる物と大差ないのだが、一つだけ異質なものはそのドームであった。

 

深海鋼で全面を構築するそれは白く外面が塗装され、その中に北方棲姫がいる訳である。

 

提督「・・・気になったんだが、あれは一体何なんだ?」

 

アイダホ「まぁ、そうですね・・・北方棲姫様がこの基地を制御する為の“座”がある場所、とでも申しましょうか。」

 

提督「制御・・・?」

 

アイダホ「はい。北方棲姫様に限りませんが、基地級の艦は、その能力として『その土地に根を張り、基地を形成する』という特性を持ちます。本来棲地が出現した時の莫大なエネルギー流から生まれ出てくる、基地級深海棲艦ならではの所業と言うことも出来そうです。」

 

提督「そう言うからくりであったか・・・。」

 

アイダホ「今までにも提督は、棲地中枢にある姫を倒そうとなさってきましたが、それは理論上は正しいのです。根を張っている根源を断てば棲地は消える訳ですから。」

 

提督「成程な・・・。」

 

アイダホ「ここも基本的には同じ方式ですが、棲地化はしておりません。元々棲地でしたから起点はあるのですが、条約もありますし、北方棲姫様も本意ではないようです。」

 

提督「そうなのか?」

 

アルティ「シーブルーの綺麗な海が、見てて好きなんだそうだ。」

 

提督「そうか・・・。」

 

アイダホ「まぁ、必要のある時しかあそこにはいないのですが・・・着きましたね。」

 

ドームは入り口だけぽっかりと穴が開いており、中は照明がちゃんとあった。北方棲姫の姿はドームの中央、一段高くなった所にあった。

 

提督「負の霊力が充満しているな。」

 

アイダホ「そこだけご容赦を。我々の特性でもありますので。北方棲姫様、提督がお見えになられました。」

 

ほっぽ「―――ナオト!」

 

提督「やぁほっぽちゃん。」

 

かれこれ数ヵ月ぶりに再会した直人とほっぽちゃん。

 

ほっぽ「久しぶり・・・だね。」

 

提督「あぁ、お互い忙しかったからね。」

 

ほっぽ「ほっぽも、大変だった!」

 

提督「(´ー`*)ウンウン、よく頑張ったな。」ナデナデ

 

ほっぽ「ナオトも!」

 

提督「ありがと。元気にしてた?」

 

ほっぽ「うん!」

 

提督「そりゃ良かった。体は大事にするんだぞ~。いつも元気で居なきゃな。」

 

ほっぽ「うん、分かった。」

 

提督「それじゃ。お互い頑張ろうな。」

 

ほっぽ「うん! ほっぽ、頑張る!」

 

提督「その調子!」

 

 

短い時間でこそあったが、互いの立場を弁えた短い交流と言うものを2人とも知っていたが故にこそ惜しむ気持ちはない。それよりも今は、目の前の事に全力を挙げなければならなかったからだ。

 

 

15時39分 グアム島講和派深海棲艦隊総司令部2階の一室にて

 

提督「小会議室だな。」

アイダホに案内されて通された一室には、彼の事を待つ者があった。

「久しいな紀伊提督。」

講和派深海棲艦隊実戦部隊の長、超兵器級深海棲艦アルウスである。どうやら部下からの報告を受けていた所だったようだ。

提督「変わりないか?」

 

アルウス「フッ・・・変わったよ。色々とな。」

 

提督「そうか・・・アラスカも、大事なかったか?」

 

「ありがとうございます、お陰様で。」

アルティメイトストームの副官、アラスカははにかんでそう答えた。

提督「そうか。まぁ世間話もなんだから早速始めよう。」

 

アルウス「そうだな。」

 

アラスカ「では、私は失礼します。」

 

アルウス「うん、頼むぞ。」

そのやり取りでアラスカが退出した後、3人は本題へと入っていく。

「まず一つ率直にお尋ねするが、そちらの状況はどうなっている?」

 

アルウス「ひとまずは平静そのもの、と言ったところだな。各地からの志願兵は続々と集いつつあり、総数では既に60万に達しようと言う所まで来ている。基地の拡充も順調だ。トリンコマリーがサブ基地であるラモトレックアトール泊地に来てくれたのが効いている。ポナペも順調に設営が完了しつつある。」

 泊地棲鬼トリンコマリー、以前の戦いで降伏してきた敵の基地級深海棲艦である。引き渡した後リンガ泊地預かりで拘留されていたが、講和派との交渉の結果そちらに移管となった訳である。

彼女自身、その在り方に疑問を抱き始めていた頃だったという。

「そうか・・・トリンコマリーがな。」

直人も些か思う所あり気にそう言った。

アルウス「今の所、中部太平洋は平穏そのものだ。ウェーク島の離島棲姫との間には戦闘が続いているのはそちらでも同じだろうとは思うが。」

 

提督「あぁ、そうだな。」

 

アルウス「我々も艦隊を派遣しているが、先頃戦力が徐々にではあるが増強されつつあるようだ。」

 

提督「その傾向は我々の側でも掴んでいる。我が艦隊も今潜水艦部隊を派遣して通商破壊に当たらせてこそいるが、雀の涙と言う所だな。」

 

アルウス「深海側の戦力補充のスピードは、人類側の予測を上回っているかもしれんからな・・・。」

 

提督「なんだって・・・?」

 

アルウス「―――クローニング技術、深海で使われている事は知っているな?」

 

提督「それはまぁ。我々も何度かクローン超兵器とは戦火を交えているが。」

 

アルウス「あのクローニングは、一般の艦艇にも行われている。これが意味する所は―――」

 

提督「敵の戦力補充の速度は、艦娘が補充されるより遥かに早い―――!!」

 

アルウス「貴官の前では言いにくい事だが・・・。」

 

提督「―――。」

 

アルウス「潜水艦や駆逐艦などは、一日に一千隻規模で量産されている。性能が劣化しなければ、今頃は地獄絵図だっただろうな。」

 

提督「確かに、ひと月に3万隻か・・・。」

 

アルウス「多いと2000~4000隻量産される事もある。」

 

提督「むぅ・・・。」

 

アルウス「軽巡クラスでも多いときは1000隻以上になる事はある。」

 

提督「そのペースで量産されたら、確かにあれだけの戦力を維持する事も出来る。」

 

アルウス「しかもこのペースは年々徐々にだが上がっている。月に数十隻程度最大で上がっているという話がある。」

 

提督「長引けば長引くだけ不利か・・・。」

 

アルウス「そのクローニング、実は棲地のエネルギーで賄われているんだ。“建造”と同じような理屈、と言う訳さ。」

 

提督「そうなのか!?」

 

アイダホ「アルウス様の仰っている事は事実です。ただより効率よく、大規模にしただけの事でして。工場と同じ様に効率化が推し進められているといった状況にあります。」

 

提督「成程・・・。」

 

大淀「生命と言うものに対する、冒涜にも等しい行為ですね。」

 

アルウス「―――私達がこう言うのも心苦しいが、深海には“命”という概念に乏しい所がある。我々は純粋なる兵器として生まれて来た身だ。人間が仮にいなくなってしまったら、兵器という意識しかない我々は、同族同士で殺し合う事になっていたかもしれん。」

 

提督「そうかもしれん、大いに不毛な事だが・・・。」

 

アルウス「それを変えたのは、他ならぬ紀伊提督、貴方だ。貴方の行動が無ければ、我々の意識に命という概念は芽吹かなかったかもしれない。自らがそこにいる事に、意義を見出そうとする動きを作り上げたのは、貴官の行動あってこそなのだよ。」

 

提督「―――なんというか、そう面と向かって言われてみると、自分のしてきた事に間違いは無かったと思えるな。」

 

アルウス「例え後の世で虐げられたとしても、私達はもうかつての自分ではない事を知っている。自らの尊厳を貶めないようにする事は出来る。しかし、その様な事を考えるにも、君達と共存して戦うという今この現状が無ければ、到底考え至らなかっただろう。」

 

提督「俺も同感だ。ところで、今の強硬派の状況は、一体どうなっているんだ?」

 

アルウス「今の所、度重なる戦力の消耗で動きが止まっている。無論貴官らがその2割ほど占めているようだが、ここ数か月、被害が急速に拡大しているようだ。基地への攻撃も積極性を増している事から見て、艦娘艦隊の練度は向上しつつある。そう見て差し支えはない。」

 

提督「そうか、やはりな。」

 

アルウス「・・・何か、思い当たる節でも?」

 

提督「いや、敵が最近受け身である事が多い様に思えていたんだ。この間タサファロング沖に行った時もだ。これだけ戦力を揃えて置いて、侵攻作戦の一つもないのは妙だと思っててね。」

 

アルウス「まぁ、貴官らが暴れすぎた事も一因にあるのだろう。立て続けざまにやられては動く事も出来まい。精神的プレッシャーという奴ではあるがね。そもそもロフトン・ヘンダーソン様は、万全な戦略体制の確立をまず重要視される方だ。それ無くしては動きが止まるのだろう。」

 

提督「戦略的に見ても、我が艦隊の存在はプレッシャーになっている、と?」

 

アルウス「それだけではなく、時折残敵掃討とでも言うかのように現れる艦隊があるそうだ。心当たりはあるのではないか?」

 

提督「・・・成程、呉鎮近衛艦隊の事かもしれん。」

 

アルウス「心当たりはある様だが・・・そうか、提督にも分からんか。」

 

提督「他艦隊の動向まで逐一チェックはしてないよ。膨大過ぎるからな。」

 

アルウス「そうだろうな。まぁそのせいもあって、ここ数か月の損耗率は過去最大だ。平穏派や穏健派には厭戦気運が広がっているが、その統制に強硬派は必死になっているようだ。ただ、そのやり口がな・・・。」

 

提督「強引すぎる、と言う事か。」

 

アルウス「そう言う事だ、当然反発も大きく、そうして我々に合流する者が増えている。」

 

提督「我々としては友軍の戦力が増えていい事だと言いたい所ではあるが・・・。」

 

アルウス「事はそれ程単純ではない、と言うところだな。」

 

提督「そうだな、複雑な事象の組み合わせによって、現在の状況がある事を考えると、一筋縄では説明できん。」

 

アルウス「そうだな・・・我々がしてきた事も、貴官らが成してきたことも、この状況には関係があるからな。」

 

提督「うーん・・・で、暫く動きは無さそうなのか?」

 

アルウス「今後4ヵ月は間違いなく動きは取れんだろう。それでなくとも最近一筋縄でいかない事を彼らも認識している筈だからな。今は戦力の集約を図る筈だ。」

 

提督「成程な。」

 

アルウス「ま、貴官らがまた何かしでかすというのならば話は別だろう。」

 

提督「ま、その辺は何とも言えんな。」

 

アルウス「そうだろう、作戦上の機密もあるだろうし、そこまで深くは問わんが、まぁそう言う事だ。君らが今打撃を与えるならば、それだけで1ヵ月は最悪の場合反攻開始は伸びるかもしれんが、それも彼らの考えようだ、確定的でない事だけは留意してくれ。」

 

提督「そうだな、了解した。」

 

アルウス「ところで、君達の状況はどうなんだ?」

 

提督「と言うと艦娘艦隊全体の、と言う事か?」

 

アルウス「そうだ。勿論君らのコンディションもある。今後我々が作戦を行うに当たって参考にしたい。」

 

提督「我が艦隊はいたって意気軒高、いつでも作戦準備が出来ている―――とまでは今はいかないが、それも数日の間の話だ。ただ、今は物資の集積が追い付いていない。もう少し余裕を見ようと愚考している。」

 

アルウス「いや、大事な事だ。戦略的優位点を生み出して置く事は後の展開に於いてもより優位に立ちやすくなる。」

 

提督「そうだな。全体的状況についてだが、こちらも戦線の再構築を急いでいるそうだ。敵が進行の足を止めている今を好機と捉えてもいるらしく、西方では早くも作戦の立案中との事らしい。」

 

アルウス「そうか、我々でも聞いていたが、どうやらまたインド洋方面らしいな。」

 

提督「北村海将補も積極的に行かれると思っていた所だ。珍しい事なのだがね、老獪な名将という評が強いのだが・・・。」

 

アルウス「そうらしいな。」

 

提督「あぁ。まぁともかく、準備されている作戦が発動されれば、恐らく西方からの攻撃は暫く無くなるだろう。威力偵察に対する迎撃が主務となる穏やかな拮抗状態が続くだろうね。」

 

アルウス「そうだな、期待させてもらう。」

 

提督「そうして貰えるとありがたい。」

 

アルウス「さて、積もる話がある者もいるだろうが、生憎ワールウィンドは出払っていてな。私もそれなりに多忙の身だ。」

 

提督「それは私も同じようなものだ、そろそろ失礼するとしよう。」

 

アルウス「そうか。」

 

提督「次に会う時は、そうだな。ゆっくり落ち着いて話が出来る時が良いな。」

 

アルウス「フッ・・・難しいが、そうなる事を祈ろう。」

 

提督「うん。それではな、行こうか大淀。」

 

大淀「はい!」

 

直人はそうして席を立ち、小会議室を後にした。

 

アルウス「・・・ゆっくり話を、か。」

 

アイダホ「確かに・・・そうしたいですね。」

 

アルウス「その為に、今我々が成すべき事を成さねばならんのだ。」

 

アイダホ「はいっ!」

 

 

その後鈴谷に戻った直人は、その周囲で待機していた艦娘達からもの凄く安心されたそうだがそれを意に介さない直人、ささっと港を引き上げたのである。潜水艦に寄り付かれても敵わないからであった。

 

 

そしてその翌日である。

 

 

4月15日13時42分 サイパン島屋外演習場

 

提督「久々の参集演習だからと言って及第点下がると思うな! 急がんかい!」

 

抜き打ちの招集訓練に慌てふためく艦娘達、一部は既に来ているが来てない艦娘達を全棟連絡で叱咤する直人である。通信機材は大淀が準備し、仮設太陽光パネルで電力を送っている。その位の快晴である。

 

大淀「少々気が抜けていますね。」

 

提督「全くだ、仮にも軍隊だという事を理解させるにはこれが一番だな。」

 

鈴谷「でもきついってこれぇ! 最上型でも間に合ったの私だけだよ!?」

 

提督「そのお前が間に合った事の方が驚きだったんだけどね。」

 

島風「私もいるよ~。」

 

提督「おう、流石早いな、誉めてやろう。」

 

島風「やったぁ!」

 

この艦隊の島風はいかなる時でも素早い。遅いのは寝起きと食事だけであるが、それも人並み。なので素晴らしい模範的な艦娘である。スピード狂な事以外は。

 

結局10分更にかかって集合が終わった。かかった時間、22分。島風のタイム、8分12秒(身支度込みで9分37秒)。

 

提督「遅い! 22分かかるのは緊張感が足りてない証拠だぞ! いつ攻撃を受けてもおかしくないという事を、忘れてはいかんぞ!」

 

一同「「はいっ!!」」

 

提督「では第4回近接戦闘演習を始めるとしよう。」

 

青葉「―――あの。」

 

提督「おぁっ!? お前何時からそこに!?」

 

どっとその瞬間笑いが巻き起こった。

 

青葉「2分程前です。背後が甘いですよ?」

 

提督「で、今日はいないと思ってたが?」

 

青葉「鈴谷さんから話を伺いまして。」

 

提督「鈴谷かよ!?」

 

青葉「エキシビションマッチとか見れないかなぁと思いまして。」

 

提督「えっ・・・。」

 

考えていなかった直人に困惑が走る。

 

「それだったら私とやろうよ~。」

 

提督「ッ―――!」

 

そこへ手を上げた一人の艦娘がいた。

 

島風「ね、提督!」

 

提督「島―――風・・・か。」

 

島風「ニヒヒ~。」

 

提督「ふーん・・・よかろ、そこまで言うなら。」

 

島風「よ~し、やっちゃうぞ~!」

 

天津風「島風がやるなら、私もやろうかしら。」

 

提督「あ~もう続くよね~・・・。」

 

天津風「別に構わないんじゃない?」

 

島風「そうだそうだー!」

 

提督「分かったよ、二人揃ってかかってくるといい。」

 

青葉「おぉっ!? 久々の2対1ですか?」

 

提督「じゃないと多分あの二人が納得せんでしょ。」

 

青葉「そうでしょうねー。」

 

半ば諦めて観念した直人だったが、まぁ知っての通り勝算絶無では決してないのがこの男の強さであった。

 

提督「そいだば、やりましょうか。」

 

 

エキシビションマッチは通例として真剣。故に彼は極光と希光の2振りを今回も差していた。

 

 

青葉「さぁ始まりました! 第4回近接戦闘訓練エキシビションマッチ! 司会はお馴染み青葉でお送りします!」

 

日向「まぁ、そうなるな。解説の日向だ。」

 

伊勢「同じく伊勢、今回はこの3人でーす!」

 

青葉「さて今回の一戦、どう見ますか?」

 

伊勢「私の記憶が間違って無ければ、島風は割と小さめの武器を好む傾向がある様に見えるわ。小太刀や苦無なんかね。」

 

日向「トンファーを扱ってる時もあったな。」

 

伊勢「あぁ、そう言えばそうね。全体として格闘戦レベルの近距離が島風の間合いね。」

 

日向「天津風はバックラーとランスの併用が特徴的だな。」

 

伊勢「ランス自体の長さは2m足らずの物だから、兵士用のものとしては一般的な長さね。」

 

青葉「ランスってそんなに短いものでしたっけ・・・?」

 

伊勢「一般的なものは中世のもので4~5m前後、ここまでくると騎馬兵や重装騎兵が使う為のものなんだけど取り回しが効き辛くて、それより後のハンガリー騎兵では3m程度だったりするわね。」

 

もう少し詳しく説明すれば、天津風の持つものは長さ約2m弱の円錐形であり、ヴァンプレイトという大きな傘状の(つば)が付いているモノだ。穂先の最大直径は根元で14cmある。

 

ランスと言うと刃は無く、突き刺す事を念頭に置いて作られているものを指し、一方でスピアは、方陣を組む槍兵が持つパイク(4~7m)よりも短いものを指し、こちらは刃が付いている。

 

ただランスはそもそも重心が偏っている為扱いが難しい武器でもあるのだが・・・

 

日向「一方でバックラーは腕に装着する小型の盾だから、両手が使えるんだ。」

 

青葉「おぉ、それを生かして間合いで勝負出来る訳ですね?」

 

伊勢「そ、ただ、提督の間合いも凄いから、どこまでやれるかしら・・・。」

 

青葉「不確定な事柄も多いですね、さぁ、一体どうなるのか予想がつきません!」

 

 

提督「―――本当にいいんだな?」

 

天津風「えぇ、提督の全部を、私達にぶつけて欲しいの。やるからにはそれ位じゃなきゃ。」

 

提督「・・・。」

 

島風「あの手品みたいなのも~!」

 

提督「あれは戦闘向きじゃないというかなんと言うか~。」

 

寒い言い訳である。

 

提督「まぁ始めるとしようか。」

 

天津風「えぇ、そうね。」

 

直人が極光を鞘から引き抜く。天津風も自身のランスを構える。島風は小太刀を二刀持ちして身構えた。

 

提督(バックラーにしては妙に大きいような・・・。)

 

直人は既にして違和感を覚えていた、艤装に装着されている天津風の盾は直人の目測で方形で縦30cmほど、横幅23cm程のもの。バックラーは円形が当たり前で天津風の着けているバックラーも円形だが、どう見てもその直径は40cmはある様に見えた。

 

提督(これは・・・太刀筋に気を付けないとすぐに弾かれる奴だな。)

 

盾が大きいという事は、その分防御出来る範囲が広い事を意味している訳である。

 

島風「よーし、行くよ天津風!」

 

天津風「OK!」

 

天津風がその重装備に見合わぬ速さで突進する。

 

対して直人はその激突時の衝撃を受け流すか避けるかそのどちらかを選択する為にもまずは身構えた。

 

天津風「ハァッ!!」

 

短い裂帛の気声と共にランスの穂先が直人を狙う。

 

提督「―――!」

 

それを紙一重で躱す直人だったが、その背筋に冷たいものが走った。

 

提督(早いっ―――!)

 

その穂先の早さは直人の想像を大幅に超えていた。

 

そしてその直後、直人は背後に風の流れを感じた。自然とは異なる風である。

 

提督(―――!?)

 

島風「おっそーい!」

 

提督「くっ!!」

 

島風の一太刀を身をよじって避け、崩した態勢と天津風と島風に挟まれた状況を、捩った勢いを使って転がる事で解決する。

 

更にそこからくる2人の追撃を左右へのバックステップで凌ぐ。

 

提督「なんと言う―――!」

 

天津風「私達が何もしない訳ないじゃない。」

 

島風「やられっぱなしで終わったら、艦娘の名が廃っちゃうもん!」

 

提督「ふぅ―――! 成程な。これは気を抜いたら終わりだな。」

 

実際のところ直人は天津風の機動力を低いものと想定していたが、それが覆った今となっては話は別である。

 

提督「盾に気を取られていたが、成程・・・重装備に見合った脚力はある訳だ。ならば―――!」

 

直人がギアを入れ替えた瞬間である。

 

 

ヒュバッ

 

 

天津風「―――!!」

 

 

ドオオォォォォーーー・・・ン

 

 

島風「オウッ!?」

 

天津風「霊力刃―――!」

 

直人の放った霊力刃が、天津風のバックラーに襲い掛かったのである。防ぎ止めこそしたがその衝撃は並の剣戟とさして変わらない。

 

 

青葉「―――あれはっ! 提督の刀が、白銀(しろがね)色に輝き出したァ!」

 

 

提督「気は―――抜けんな。」

 

 直人がそのギアを入れ替えた瞬間、極光の黒鉄色よりも暗く、鈍く紫に輝いていた黒い刀身が、深海から削りだしたその闇を振り払ったかの様な白銀色に光っていた。

それに釣られるように、彼の黒い瞳が左目だけ淡く赤い光を放っていた。

 メカニズムだけ説明すれば、霊力が通る回路と言うのは、魔術回路が体を貫く神経と同じ様に張り巡らされているのに対し、霊力回路は血管と同化している。そして眼球は瞳孔に至るまで毛細血管は張り巡らされている。その血液が、霊力の行使を行う事によって赤血球の赤色に発色する訳である。

ただこの色の出方は人による様で、夕立は両目の全体から赤い光が迸る様に出るのが特徴でこれは勢い余って霊力が瞳から大気中に出てしまっているからのようだ。(※明石&雷提供)

これに対して直人は左目の瞳孔のみが発光するという表現が正しい。こちらは霊力を極光に放出して居る為である。

 一方で同じ霊力を用いる深海棲艦は、力が高い者だと元より瞳孔から強すぎる力を普段放出している種もある。タ級やレ級がその代表的な所だが、力の強い者だと色が変化するようで、ノーマルが水色、エリートが赤色、フラッグが黄色、改フラッグが青色なのは読者諸氏も存じているであろう。

 

天津風「―――!」

 

島風「!?」

 

一方で二人は直人の気配が明らかに変わったのを感じ取っていた。人間からより“艦娘”に近付いた者が持つ、言わば艦娘にだけ感じ取れる気迫と呼べるモノに等しいそれは、それまでとは違うという事を如実に感じさせるには充分であった。

 

提督「ハァッ!!」ダッ

 

そして次の瞬間、直人が縮地で一挙に距離を詰める。思い切り気圧されていた島風は一瞬対応が遅れ、その一瞬の間に直人は既に間合いまであと少しであった。

 

島風「速いっ―――!!」

 

 

ガキィィン

 

 

提督「はぁっ!!」

 

島風「おうっ!?」

 

島風二度目の驚きは、まんまと受け止めてしまった島風の軽い体を、直人が刀を振り抜いた際に吹き飛ばした時であった。それ程の腕力がなぜ発揮されたのか、これは魔術の領域である、強化魔術であった。魔術界では基礎の魔術でもあり、これを腕の筋肉に用いただけである。

 

日向「―――32m91!」

 

青葉「目算でそんなに求められませんよね!? と言うかなんで分かるんですか!?」

 

日向「勿論目測だ。」

 

伊勢「ま、そうなるわね。」

 

 

天津風「なっ―――!」

 

提督「ッ―――!」ギラッ

 

天津風「ッ!! ハァッ!!」

 

天津風はランスを突き出すが、進路を変える事は出来ない―――

 

 

ガキィィィーーン

 

 

提督「ほう、金属製、明石の仕業か。」

 

天津風「えぇ、そ・の・と・お・り・よっ!」

 

天津風は盾を押し出して極光を外すとランスを両手で構え再び突き出す。

 

それを直人は転がる事で躱すが、天津風は更にランスを直人に向かって振り降ろす。

 

 

ガアアァァァァァーーー・・・ン

 

 

提督「くぅっ!!」

 

島風「やああああっ!!」

 

直人がその重量を受け止めた正にその瞬間島風が再び背後を取る。直人は片膝突いた態勢な為難しい所である。

 

提督「ッ―――なら!」

 

直人は自身の左後ろ方向にいなすように刀を傾けると共に前転して天津風に向かって右側からすり抜けた。すると天津風のランスが地面に叩きつけられ、島風の小太刀はその天津風のランスに叩きつけられる結果になった。

 

そして直人はその間に向き直る。

 

提督「ハァッ!!」

 

 

ドッ―――

 

 

天津風「ぐ・・・がっ!」

 

提督「まずは一人。」

 

 

―――ドサァッ

 

 

島風「天津風! まだまだぁっ!!」

 

提督「セヤァッ!」(“光路・一閃!”)

 

 

ヒュバァッ

 

 

直人は真一文字で霊力刃を放つ。が。

 

島風「とおっ!」

 

島風はそれを紙一重で飛び越して回避し、そのまま背後を窺う。

 

提督「―――!」

 

直人はその島風と対面で足に力を込める。

 

提督(“我流―――)

 

直人は一挙に縮地の技法で島風の真下をくぐって逆に島風の背後に出る。

 

 

ザザァッ―――

 

 

提督(―――燕返しッ!!”)

 

 

ヒュバァァッ―――

 

 

島風「はっ―――やー・・・い。」ドサァッ

 

 

カラァンカラァァァン

 

 

青葉「―――! 勝負あり! 提督の勝ちですッ!!」

 

伊勢「天津風への最後の切り返し、流石ね。」

 

日向「まぁ、そうだな。」

 

 

金剛「流石私のダーリンデース!」

 

鈴谷「でも今からあれとやり合うんだよね・・・。」

 

三隈「そ、想像したくは、ありませんわね・・・。」

 

熊野「もう慣れましたわ・・・。」

 

最上「諦めてるっていわない? それ。」

 

実際この後熊野が諦めても仕方のない位の激しい訓練が繰り広げられたのは事実である・・・。

 

結局7時間に及んだ訓練が終わると、艦娘達も直人本人も流石に音を上げているのはその激しさを物語っているとも言えた。直人自身も手は抜かなかったし、艦娘達もそれを知っても知らずも全力で応対する為、艦娘達も疲弊する。結局お互いに音を上げる訳である。意味合いが違うが。

 

結局殆ど例外に等しい艦娘を除いて、今日も直人に勝つ事は出来なかったのであった。むしろ勝てるのは雪風と鳳翔位なものである。

 

 

21時11分 中央棟2F・提督私室

 

提督「疲れた・・・明日筋肉痛だ・・・。」ドサァッ

 

疲れ果てた直人がベッドに倒れ込む。

 

金剛「デスネー・・・。」

 

鈴谷「まぁまぁ、鈴谷がケアしておいてあげるから。」

 

提督「助かる~。」

 

そのお供として付いてきた二人。鈴谷が早速直人の疲れた筋肉のケアを始める。

 

金剛「でも、実際あの訓練って必要なのデスカー?」

 

提督「―――片言が中々抜けんな、金剛よ。」ニヤニヤ

 

金剛「茶化すのはNOネ。」

 

提督「まぁ、そうだな、相当特殊な状況だが、重要なのは確かだ。地上に突入する場合を想定してそこで戦う術を身に付けておく必要もある。」

 

金剛「地上に突入、デスカー?」

 

提督「そう。例えば重掩蔽物が相手である場合、砲撃で撃破出来ない場合がある。そこに籠られては困る訳だ。そこで、地上戦に持ち込む。普段は陸戦隊を使っているが、それで対処しきれない場合、艦娘達が地上戦を出来ると大変心強い事になる訳だ。」

 

金剛「成程・・・。」

 

鈴谷「でもそれって何も艦娘でなくて良くない?」

 

提督「艦娘と同等の火力を艦娘と同じサイズで出せるなら、な。」

 

鈴谷「それは・・・。」

 

提督「ポートモレスビーでもあの訓練があったればこそ、作戦を円滑に進める事が出来たと言える節がある。無論それは、陸上で運用された艦娘が的確な対地砲撃を行ったからでもあるが、何度も肉薄されてそれでも無事に戻ってこれたのは、やはり近接武装の存在が大だろうね。」

 

鈴谷「そう言われてみると・・・確かに。」

 

提督「まぁこれは日常生活でもそうではあるんだが、悪漢共に襲われた時、護身術を心得ているかどうかってのはそれによって随分違う。同じように戦場でも、自分の体で如何にして戦うかを心得ているかも、非常に重要なんだ。」

 

鈴谷「日常、かぁ・・・。」

 

提督「・・・鈴谷、どうした?」

 

鈴谷「あー、えっとね。たまに分かんなくなるんだ。」

 

提督「―――何が?」

 

鈴谷「何が日常なのか、ってコト。」

 

提督「・・・。」

 

鈴谷「私達は艦娘、戦うのが使命。それが日常である筈のもの。でも私達はこうやって、何もない、平和な時を、くだらない話ばっかして過ごしてる。でも・・・そのせいで、分かんなくなっちゃうんだ。」

 

金剛「鈴谷・・・。」

 

鈴谷「戦いとこの今、どっちが日常で、どっちが非日常なのか・・・そう思うと、提督の事が、どうしようもなく遠く感じて。私―――」

 

提督「フッ―――らしくないぞ、鈴谷。」

 

鈴谷「だって・・・。」

 

提督「確かに俺は人間だ。日常と言うものがどういうものかを知り、その前提で艦娘達を扱っているかもしれない。一方で艦娘達は日常とはどんなものなのか、その線引きが曖昧なんだ。」

 

鈴谷「そうだね。」

 

提督「だから、俺が悪いんだ。お前達に日常と言うものの定義を見定めさせないまま、戦地へと送り出している。」

 

鈴谷「それはっ、違うよ提督! 私達はただ―――」

 

提督「分かってる。俺の役に立とうとしてくれている。それは良く分かってるんだ。だが俺も分からなくなる時がある。この戦争とは―――俺達提督は一体、何なのだろうとな。」

 

金剛「テイトク・・・。」

 

提督「俺達提督は、確かに、お前達艦娘を率いる身かもしれない。だがお前達を率いるという事はどういう事なのか。戦場に、二度と帰ってこれないかもしれない場所に、お前達を―――」

 

 

その瞬間直人の脳裏によぎるものがあった。

 

―――吹雪、出撃します!

―――はい、司令官。

―――私も最前線で戦いたいんです!

―――私、信じて待っていますから・・・

 

 

提督(吹雪―――!)

 

金剛「・・・提督?」

 

提督「―――お前達を、死地に追いやっている。平時なら殺人教唆で刑務所行きだな。戦争だからこそ許されているのかもしれない。でも・・・」

 

金剛「・・・。」

 

提督「俺達は軍人だ。艦娘達も含めて。軍人と言うのは、誰かの命を仕事で奪うんだ。それは、人間が最も野蛮な一側面であり、それを制度化したものだからだ。確かに人々は、軍隊を勇ましい存在だと賛美している。だがそれは虐殺者の集団だ、そんな小綺麗なもんじゃない。」

 

鈴谷「・・・そうだね。この手はもう血に汚れてる。深海棲艦達を一杯沈めてきた。提督の命令だもんと思ってたけど、よく考えたら―――そうすること自体、本当は、あっちゃいけないんだね。」

 

提督「そう、戦争なんて、やらない方がいい。でも人は相争う生き物だ。自分の好都合は他人の不都合だという事を理解しようとしない者達が、自分が好都合な為にその不都合を打破し押し付ける。我々は今、その真っ只中に身を置かされた存在だ。そして様々なものを失ってきた。」

 

金剛「―――!」

 

直人の顔をまじまじと見ていた金剛は驚いた。

 

彼は―――泣いていた。

 

とめどなく溢れだす涙が、彼の膝を濡らしていく。

 

提督「仲間と、家族と、周りの人達との絆。ごくごく普通の生活が、俺にとって、何よりもかけがえのないモノだったと気づいた時、俺は自分がなぜこんなところでこんな事をやってるんだろうと思った―――自分の手を血に染めてでも守らなきゃいけないものって一体何なんだ? そんな答えを、出せる奴なんていない。」

 

鈴谷「提―――督・・・。」

 

提督「自分の手を、誰かの手を、血に染めさせてまで、俺達は何を護ろうって言うんだ? その挙句、誰かの事を、犠牲にしてまで―――!」

 

2人「「―――!!」」

 

二人は気付いた。あの出来事が、直人の硬い決意に、少しずつ亀裂を入れていたのだという事に。

 

提督「吹雪―――ッ!」

 

第三次アリューシャン海戦で起きた、直人にとっては初めての出来事―――“轟沈”。彼はこの時初めてその喪失感と敗北感とを味わった。そしてそれは、現実と言う名の神が突き付けた、彼に対する命題でもあった。

 

“お前が護ろうとしているもの、それは誰かを犠牲にしてまで守るべきものなのか?”

 

―――人の未来を護る。

 

よく口にされる言葉である。同時に大義名分でもあり、人類が生きる未来を護る、これは“聖戦”なのだと言うのが、一般的な言い草だ。勿論これは公式なプロパガンダではないのだが。

 

一見すれば分かるほどの綺麗事である。しかしこの綺麗事を信じて戦っている者も居る。勿論彼も、信念の上はその気持ちで戦ってきた。しかしここに来て、吹雪を喪ってこの方、彼がずっと悩みに悩んだ命題であった。

 

金剛「―――でも、提督を私が助けなかったら・・・。」

 

鈴谷「金剛?」

 

金剛「今頃提督は海の底ネ。確かに、助けなければこんな事にはなってなかったかも知れないデース。」

 

鈴谷「金剛、何を言って―――」

 

金剛「でも!」

 

2人「「―――!」」

 

金剛「私は後悔してないデース。本当の事を言えば、私はあの時、余り人目に付かないようにと指示されていたネー。でも、目の前で襲われている人を助けないのは、私達艦娘の名折れデース!」

 

鈴谷「金剛・・・。」

 

提督「・・・。」

 

金剛「それに日常は、その環境によって姿を変える。違いますか?」

 

提督「―――!」

 

金剛「私にとっての日常は、提督とこうして一緒に居る事ネ。それでいい。それだけで、私は十分以上に幸せだから・・・。」

 

提督「金剛・・・。」

 

鈴谷「・・・そうだね。私だって、提督と一緒に居たいから、時に戦場に行っても、自分を見失わずにいれる。提督は、そうじゃないの・・・?」

 

鈴谷のその言葉を聞いた時、彼は確かに思い出した。戦い始めたときに想い、そして忘れかけていた、彼の戦う理由を。

 

提督「―――そうだったな。世界の為とか、未来の為とか、俺達がしてきたのは、そんな事じゃなかったな。“ここにある今”を護る為に、戦ってたんだったな。」

 

金剛「そんなガラにも無い事考えるなんてらしくないネー!」

 

鈴谷「そうそう! 提督は私達のものでもあるんだからね?」

 

提督「いつから俺はお前達の私有物になったよ。全く・・・」

 

直人は苦笑しながらそう言った。が

 

提督「そうだった。おかげで思い出したよ。何の為に戦っていたのか。俺はもう、“何も失わない為”に戦うんだ。お前達も、この場所も、俺が手にする全てのものは、俺のものだ。だからついてこい、俺の為にな。」

 

金剛「勿論デース! 地獄の果てまでお供するネー!」

 

提督「お前達が地獄に行くのは困るな、ヴァルハラに共にゆかにゃ。」

 

鈴谷「そう言う事なら、死んだ後は、ヴァルハラ制覇だね?」

 

提督「マジかいな。だが、悪くない。」

 

言いながら、半ば本当にそう思う自分がいたのだった。

 

こいつらと一緒なら、地獄でもヴァルハラでも制覇出来る、そう彼は思ったのである。

 

提督(そうだ・・・深海だろうが艦娘だろうが何だろうが―――救うんだ、俺の手で。今なら、それが出来る。俺達皆で、俺達皆のものを救うんだ。それが結果として、世界を救う事に繋がるに違いない。)

 

日常とは、その場にいる全員の“所有物”に他ならない。その日常を守るとは即ち、艦娘達を喪わない事に通じているのである。そしてその日常が戦闘中に波及すれば、その敵さえも救う事になる訳である。

 

提督(世界平和なんて言うつまらんお題目に付き合うつもりはないが、俺は、俺が護りたいと思ったものの為に戦おう。それを俺のものにする為に戦おう。俺が手放さずに済むようにする為にこそ、戦おう。最後まで―――)

 

揺らいで崩れかけていた決意が、再び一つに収束する。それは彼に再び、強い意思を取り戻させ、彼が固めた決意を思い起こさせたのである。“護る”のではなく“喪わない”ように、そう固く誓ったのは、他ならぬ提督自身であったのだから―――。

 

提督「さて・・・飯にするか・・・と言いたいけど、作るのメンドクサイ・・・。」

 

鈴谷「まだ食堂空いてるよ?」

 

提督「動きたくないで御座るぅ~・・・。」

 

金剛「相当疲れてるネー?」

 

提督「過重労働だー。残業代くれぇー・・・。」

 

鈴谷「・・・提督業に残業代とかあるの?」

 

金剛「無いネ。」

 

提督「お慈悲を~・・・。」

 

金剛「無いネ。」

 

提督「しょんなぁ~・・・。」(´・ω・`)

 

鈴谷「・・・!」キュピーン!・ω・

 

金剛「?」

 

鈴谷「仕方ないなぁ、私が軽いもの作ってあげる♪」

 

提督「え、マジ?」

 

鈴谷「私からの残業代♪ ありがたく受け取っときなさいな!」

 

提督「・・・アイマム。」

 

鈴谷「フフッ、金剛、手伝って!」

 

金剛「OKネー♪」

 

結局、直人はその残業代を、2人の軽食と言う形で受け取るのであった。

 

 

~その後~

 

<ギブアンドテイクだよぉ~♡

<お覚悟ネ~♡

<うにゃああああああああああああっ!!! あっ♡

 

いつものオチが付きました。襲われて意思は抵抗しても体は正直なのであった。

 

提督(疲れてるのに勘弁してぇ~・・・)

 

涙目ながらに思う直人なのであったが流されるままに身を委ねてしまうのだった。

 

 

 西方作戦の前、すったもんだあった直人の身の回りだったが、その結果として、彼は決意を新たにした。その後の彼に見られる不屈の意思は、この様な経緯で生まれたものだった。これ以降、直人は悩む事は無くなった。悩む必要が無かったからである。

 護るという事は、何かに対してそれに代わる責任を負うものだ。それは提督が負うには重すぎる重責であり、彼にそれを背負うつもりはなかった。彼が志したのは、彼が持っていたものを取り戻す、ただそれだけである。

ありとあらゆる彼が失った物。もう戻ってこない物もありこそすれ、それでもこの手に留めて置けるものなら、彼はそれら全てを取り戻す。

彼はそう決め、新しいものを手にする事によって、もう戻ってこないモノの隙間を埋めようとした訳である。

 結果として、彼は護る事を放棄したと言える。彼を、何かを護る為に動かすのが上の仕事だと割り切り、その命令に従い、彼も本懐を遂げる。知られざるギヴアンドテイクが成立した訳である。これを以て、彼はこの戦争に意味を見出したともいえる。

 そして発動される作戦名―――『第十一号作戦』に於いて、彼が関与するのは、その攻勢をプラフとした欧州・東亜連絡作戦―――“東京急行”と比喩されるそれの第二便の受け取り手としての役割であった。

当然この機密事項は、一般には通知されない。即ち誰の手も借りないアラビア海への潜行作戦である訳である。

困難な事は百も承知。危険な事も百も承知。重要な事さえも承知の上。ただ重要であるから、彼らは赴く。元よりそういう艦隊であればこそである。でなければ、彼らがそこにある意味が無くなるからである。そして、やるからには勝つ。かつての第一回の経験を活かし、万全を期す。それが彼の信条であった。

 2054年4月20日、横鎮近衛艦隊がサイパン島を出撃する。目的地はマレー半島西岸・ペナン島秘匿基地。横鎮近衛艦隊の旅路は、まだ険しく、長い・・・。

 

 

~次回予告~

 

4月25日に発動された第十一号作戦。

その深海側に生じた混乱に付け込む形で、横鎮近衛艦隊がペナンを出港する。

目的地は英領インド洋地域。

それは彼にとって、ある意味に於いて最も過酷な戦いとなった!

『―――私は、お前の闇を見る事が出来る。』

 

次回、横鎮近衛艦隊奮戦録第3部13章『闇を覗く者—発動、第十一号作戦!—』

艦娘達の歴史が、また一ページ・・・




艦娘ファイルNo.132

最上型重巡洋艦 三隈

装備1:20.3cm(3号)連装砲
装備2:零式水上偵察機

最上型重巡洋艦最後の1隻。
装備が3号砲である以外に変わりはない。


艦娘ファイルNo.133

朝潮型駆逐艦 山雲

装備1:12.7cm連装砲
装備2:61cm四連装魚雷

おっとり系な朝潮型駆逐艦。
朝雲とペアを組むがそれ程特別な点はない。


艦娘ファイルNo.134

朝潮型駆逐艦 朝雲

装備1:12.7cm連装砲
装備2:61cm四連装魚雷

しっかり系の朝潮型駆逐艦。
山雲と対になる存在だがペア組んでも普通に普通である。


艦娘ファイルNo.135

朝潮型駆逐艦 荒潮改

装備1:10cm連装高角砲
装備2:10cm連装高角砲
装備3:13号対空電探

気づけば2年程前に局長が拾ってきた深海棲艦の残骸から判定で着任した艦娘、荒潮。
それが遂に建造された事によって改めて正規の艦娘として着任した。
元より改なのは特異点ではなく、いざという時の切り札として訓練されていた為である。
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