異聞 艦隊これくしょん~艦これ~ 横鎮近衛艦隊奮戦録   作:フリードリヒ提督

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第3部13~14章幕間~“(きわみ)”の胎動~

――2054年6月30日――

 

 

7時22分 司令部前ドック岸壁

 

この日、彼は疲労の色濃い夕張に代わって執務室に現れた明石に呼び出されてドックにやって来ていた。大淀を連れて来てみるとそこには、艤装を一新した金剛と夕張がいた。

 

提督「これが・・・。」

 

金剛「私の、新しい艤装、デスカー・・・。」

 

明石「はい、夕張さんからこの改装案については話を聞いていましたが、いざやってみるとここまでバチっとハマるとは思いませんでしたね。」

 

大淀「同じ人の艤装とはとても・・・。」

 

夕張「形にするまで1ヶ月弱と、時間かかりましたけどね・・・。」

 

そう言う夕張の目にはクマが出来ている。相当睡眠時間を削った事は想像に難くない。

 

金剛の艤装は、殆ど一新されたと言ってよかった。

 

45口径46cm砲は、砲塔ごと拡張される形で55口径にまで砲身を延長し、これまで通り12門を弾薬1200発(1門当たり100発)と共に搭載、更に装填機構を一新する事によって装填時間をこれまでの半分(約45秒前後)に縮小、俯仰角に変化こそなかったが、旋回速度と俯仰速度も水圧式から電動式に改めた結果、劇的にその性能を上げている。

 

その主砲配置が、辛うじて金剛改二である事を思わせる名残であったが、この主砲の特色でもある完全な自動化を達成したのは、金剛が改装を受けるに当たって参照されたものの影響を色濃く受けて可能となったものだった。

 

艦娘機関はその出力を三割以上強化され、それに伴って各種機構が作り直された。その消費を担う推進機関も強化され、最高速力は2艦娘ノット強引き上げられて32艦娘ノット丁度になった。金剛の身体への負担は、金剛の成長そのものがそれをカバーし、今まで通りの負担で運用する事が出来るようだった。

 

更に特徴的なのは航空兵装で、オートジャイロの発着が可能になったのである。敢えてオートジャイロに限定したのは、ヘリコプターに相当する装備がない為であるが、これにより搭載機種の幅が多少なり広がったのは事実である。

 

背部艤装を見ると、煙突形状が一本の誘導煙突に改められ、マストは新たに設けられた艦橋型構造物と、誘導煙突の前縁部を組み合わせたその上部に、戦後に見られるような塔型マストが装備された。

 

その、艦橋部分である。そこには平面型の火器管制レーダーが装備されていたのである。

 

提督「これって・・・。」

 

夕張「SPY-1D フェーズドアレイレーダーです。多機能型のレーダーで―――」

 

提督「そうじゃなくって、なんでこんなものが?」

 

夕張「巨大艤装『水戸』が実は付けてるんですよ。そのデータを頂きまして。」

 

提督「そ、そうだった・・・。」(絶句)

 

夕張「なのでその機能の一部であるマルチターゲティングシステムを金剛さんの艤装に組み込みました。火器管制機能はそのもののついでです。」

 

提督「ふむ・・・。」

 

夕張のこの発言には隠された含意がある。金剛は元から各砲個別照準射撃と言う唯一無二のアビリティを有している。にも拘らずマルチターゲティングシステムを搭載し、火器管制をもののついでと称した。即ちマルチターゲティングシステム自体もただの補助に過ぎない事になるのだ。

 

提督「金剛の砲撃が、また冴え渡るな。」

 

金剛「お任せデース!」

 

夕張「早速色々とテストをしましょう、公試データがいるので、お願い出来ますか?」

 

提督「まぁ、今日1日君に貸すよ。」

 

夕張「ありがとうございます!」

 

陽炎「―――遅刻遅刻!」タタタタ・・・

 

提督「ハイストップ陽炎!」

 

陽炎「ふえっ!?」

 

提督「また遅刻かぁ?」

 

陽炎「そ、そんなことは・・・」

 

金剛「遅刻デスネー。」

 

夕張「えぇ遅刻です。」

 

大淀「そうですね。」

 

提督「ハイ秘書艦代理な。」

 

陽炎「またこのパターン!?」

 

陽炎、2度目の遅刻ペナであった。

 

 

その後試験運用をしてみた結果、いくつかの改善点が見つかった。

 

例えば艤装の大型化に伴い定格の速力が出なかったとか、霊力が消費しきれずオーバーロードしている、艤装側の応答時間が長いなどがそれである。

 

特にオーバーロードしているのは致命的な問題で、直接エネルギーロスに繋がる為、それも含めて再改修を行い、後日再びテストと言う運びになった。

 

 

22時10分 中央棟2F・提督私室

 

提督「成程、分かった。」

 

夕張「では―――」

 

提督「そういえばだ。」

 

夕張「なんでしょう?」

 

提督「この改装に名前はあるのか?」

 

夕張「一応プラン名は“きわみ”となっています。」

 

提督「きわみ?」

 

夕張「艦娘艤装の力を“極める”と言う意味を込めて“(きわみ)”です。」

 

提督「成程、“究極”の極だな。」

 

夕張「そうでもあります。」

 

提督「では、今の金剛の姿を仮に、金剛(きわみ)改二としようか。改修した仕様を極改三と言う事で呼称するのはどうかな。」

 

夕張「いいですね、その方が明確で分かりやすいです。」

 

提督「では、極改三への改修、頼むぞ。」

 

夕張「お任せ下さい! ですが・・・少し休みを頂きます。」

 

提督「許可しよう。よく頑張ったしな。」

 

夕張「ありがとうございます、おやすみなさい~・・・。」

 

そう言って夕張は憔悴しきったその身を引きずるように提督私室を後にするのであった。

 

 

その改修の合間を縫って、横鎮近衛艦隊司令官紀伊直人は、横浜大本営を訪れていた。膨大な資料をその手に携えて、である。

 

 

7月1日13時02分 大本営・軍令部総長オフィス

 

提督「私が最初の来訪者、と言う訳ですか? 閣下。」

 

山本「そうだな。」

 

提督「伊藤一課長殿はお久しぶりです。」

 

そう話しかけたのは、山本海幕長の隣に立つ53歳の海将補に対してである。細顔であり頬の肉付きも少し薄いが、白髪の目立つ黒い頭髪と、シャープな目つきの対比が印象を与えずにはおかない容姿を形成している。

 

伊藤「7年ぶりだな。」

 

伊藤(いとう) 孝介(こうすけ)海将補はそう短く応じた。彼は山本人事における軍令部第1部第1課長を務める幕僚の一人であり、軍令部の作戦主任参謀を兼務する人物である。その戦略構想能力には非凡なものがあり、状況を的確に分析する才にも長けている。

 

これらの事から山本海幕長の信任も得ている優秀な人材であったが、人付き合いが少々不得手なのが玉に瑕な所であろうか。本人は生真面目過ぎるだけなのだが。

 

提督「総長殿に頼まれました件に付きまして、詳細な検討が終わりましたので提出致します。」

 

山本「ご苦労だった。すまないな、無理を言って。頼めるのも貴官だけなのでな。」

 

気さくな口調で山本海幕長は言う。

 

提督「流石にあの3人では、こんな事は中々難しいでしょうね。」

 

山本「そうだろう。」

 

あの3人、と言うのは元第1任務戦隊の構成メンバーの事を指している。

 

水戸嶋(みとしま) 氷空(そら)(使用艤装:水戸)は攻守につけ堅実で隙無く、的確な機動によって勝敗を決する所に定評がある。しかし戦場に於ける状況分析とそれを戦術に生かす以外にこれと言った特色が無い前線指揮官タイプである。

 

浜河(はまかわ) 駿介(しゅんすけ)(使用艤装:駿河)は戦略面に於ける条件を整える局面に於いて才能を発揮する後方処務の達人ではあるが、状況を分析し戦略に役立てるという能力は参謀の気質であり、立案能力に才がある訳ではない。

 

泉沢(いずみさわ) 和征(かずまさ)(使用艤装:和泉)はそもそも闘将タイプであり、短気な所があるのが否めない。攻撃における積極性と巧妙さに定評があるのだが、水戸嶋と同じ様に前線指揮官の気質であり立案には向かない。

 

山本「それでどうかね、可能かね。」

 

提督「―――結論としては可能です。但し条件があります。」

 

山本「それは?」

 

提督「一つは参加部隊の指揮官達が、その目的を銘記し誤る事が無い事です。この作戦はその規模の大きさ故にアクシデントが相当に起こる事は容易に想像出来ます。但しこれは、指揮官を一つの任務のみに固定する事を必ずしも意味するものではありませんが。」

 

いらぬ事を一つ言ってから、直人は二つ目を述べる。

 

提督「二つ目として、敵の最新情報に則って、適切な戦力配分を行う事です。この方面には相当な規模の敵が展開している事が推定されていますが、これらに対して戦力を惜しまず投入する事です。」

 

山本「成程、確実に成功させる為には重要な事だ。」

 

提督「最後に、敵の目を欺いて事を運べるかどうかです。言い換えれば、敵がどこまで素通りさせてくれるか、と言う事になるでしょうか。」

 

この言葉には皮肉が混じっている。これまでこう言った大規模作戦を行う際には必ずと言ってよい程敵方によって察知されるのが常であったからだ。

 

山本「その轍は踏まん、豪州方面に対する攻勢と言う事で表面上は取り繕う。貴官らには、その第一撃を担って貰う事になるだろう。第十一号作戦の失敗はやはり、貴官らが前線に居なかったからだと私は考えている。」

 

提督「買い被り過ぎですよ。」

 

伊藤「しかし大規模作戦に際し、貴官らが直接参加した作戦は尽く成功し、しなかった作戦はことごとく失敗してきた。艦娘艦隊を過小評価する訳ではないが、貴官らの実力は、1個艦隊で1泊地に勝るとも考えている。」

 

提督「買い被らないで頂いて結構です。あくまで戦闘効率が、他の艦隊に比べて高いだけですよ。」

 

山本「だが君達には素晴らしい母艦と、巨大艤装があるではないかね。」

 

提督「・・・。」

 

その事は否定出来なかった。彼の巨大艤装もまた、往時は非常に高い戦力を持つと評価されて来ていたからであった。

 

山本「貴艦隊は特一級臨戦体制の状態で待機して貰いたい。命令は追って伝える。」

 

提督「ハッ!」

 

山本「では下がって宜しい、ご苦労だった。」

 

提督「失礼します。」

 

直人は山本海幕長と敬礼を交わし、オフィスを後にした。

 

山本「―――どうかね。」

 

伊藤「非常に高い水準の検討がされています。これであれば、最新情報と突き合わせ作戦立案が可能でしょう。」

 

山本「では早速始めてくれ。」

 

「ハッ!」

伊藤海将補も直人を追う様に、直人の提出した資料を持ってオフィスを後にした。

 

山本「―――FS、か。」

 

 

「やぁ大淀。」

 

「お疲れ様でした。」

1階のエントランスホールで直人を待っていた大淀は顔をほころばせる。

 

提督「全くお役所も楽じゃないね。雰囲気がヤダヤダ。」

 

大淀「それも提督のお仕事の内です。」

 

提督「やれやれ、損な役回りだ事。」

 

そう肩を竦めて見せる直人。

 

大淀「でも、何の検討だったんです?」

 

提督「秘密です。」

 

大淀「なんでそこまで教えて頂けないんです?」

 

提督「そう上から言われてるからさ。」

 

大淀「そうですか・・・。」

 

残念そうにそう言う大淀だったが、直人は決して口を割る事は無かった。

 

 

その後、金剛の艤装は無事改修を終える事が出来、むしろ極改二で想定されていた以上の性能を一部で弾き出すようになった金剛極改三の性能は、首脳陣を納得させるに十分であった。

 

極改三では更に対空兵装と防盾が刷新され、防盾は艤装の大きさが拡大したのに合わせて厚みと大きさが更に大きくなり、対空兵装は高角砲に代わってこんごうが近代化改修の際に搭載した国産の速射砲が搭載され、機銃も20mmCIWS“ファランクス”の他、戦時改装でこんごうが搭載したエリコンKD 35mm連装機銃を搭載している。

 

この近代化改修と戦時改装を施されたDDG-173 こんごうの改装内容と言うのが、武装面に於いては数で勝る中国海軍に対抗するという目的で行われたものであるという面と、この改装が行われた2037年当時実用化されたばかりの国産速射砲を装備するという目的があった。

 

この36式127mm速射砲は、艦の大きさによって単装と連装とを使い分けられるよう設計されており、こんごう型などの大型護衛艦は、近代化改修によりオートメラーラや米国製の127mm単装速射砲から36式連装速射砲に換装されたのである。

 

開発にはこんごう型までの54口径127mm単装速射砲(イタリア製)とそれ以降の62口径5インチ単装砲(Mk.45 mod.4/米国製)の2つが参考にされたが、最終的にイタリア製のものに長砲身化の改修を施し、その際の機構に米国製Mk.45を参考にし、ハイレートと長砲身化の両立を実現した。

 

そこへ更に連装砲架を開発する事で、万が一近距離砲撃戦になった場合でも高い火力を保持できるように考慮された上、長距離砲撃戦も遂行する事が出来る様に誘導砲弾にも対応している。この為最大射程は約106kmにも達している。

 

戦時改修により対空火器として追加されたエリコンKDは、元々海保が巡視船の一部に装備していたものを流用したもので、陸自も在庫を持っていた為それなりの数を砲塔として確保する事が出来た。マウント位置はこんごう型では第二煙突の中腹両舷である。

 

金剛は極改装でこれらの内容を含んだ改装を行い、エリコンKD連装砲架を2基、ファランクス2基、連装高角砲6基を連装速射砲に全て換装した形になる。それまでは金剛自身かなりの数の機銃を装備(完全装備時18基)していたのだが、流石にこれらを4基に纏めてしまうと防空能力の低下が懸念された為、エリコンKDに関しては追加で4基が装備されている。

 

因みに、流石にミサイルはないものの、3連装短魚雷発射管を追加した為、対潜攻撃能力が付与されている点は特筆するべきだろう。

 

 

7月4日8時02分 司令部前ドック岸壁

 

ただ、それを見た提督の反応はと言うと・・・

 

提督「・・・こんなに近代化しちゃって大丈夫?」

 

明石「大丈夫でしょう。」

 

夕張「ミサイルの実用化が出来ませんでしたし、誘導砲弾も流石に実装は出来ませんでしたから・・・。」

 

提督「あぁ・・・そう。」

 

精々速射砲の射程は2万メートルあるかどうかと言う所である。

 

夕張「でも金剛さんもこれで対潜攻撃が出来ますから、ソナーも使い道がありますよ。」

 

提督「おいお前まさか―――」

 

夕張「こんごうと同じものです!」

 

提督「おい・・・。」

 

OQS-102艦首装備式ソナーを装備してしまったようである。確かにこれで短魚雷の誘導は捗るのだが・・・。

 

提督「・・・これがリアルチートか。」

 

明石「敵の物量の方がチートです。これ位は許されますよ。」

 

提督「そ、そうかな・・・。」

 

夕張「あと敵の超兵器級もですね。」

 

提督「確かに。」

 

それについては全面的に納得する直人であった。かくして金剛は極改装によって超戦艦と化したのであった。

 

作戦の発動前―――彼らはそれとは知らなかったが―――、横鎮近衛艦隊が行ったこの戦力増強策は、何かをモチーフにその要素を取り入れるというものであった。その理論には、何もこの世界のものでなくても良いというおまけまでついていた。

 

 

~遡って極改装の説明を受けている時~

 

夕張「―――例えば、並行世界で別の姿になった同一設計同一名の艦がいるとして、その情報を引き出す事が出来たなら、それをモチーフにして改装が出来るんですよ。」

 

提督「・・・まさに魔法だな。」

 

夕張「私もそう思います。実は提督の戦艦紀伊を作る際もその方法で作っているんですよ。」

 

提督「そうだったのか、しかし一体どういう手品だ?」

 

夕張「妖精さんの秘密だそうです。」

 

提督「あぁ・・・そう。」

 

この時ほど妖精さんに疑問を覚えた事は無い。もしかしたら妖精さん達の中には、世界を股に翔ける者がいるのではないかと勘繰った程である。勿論誇大妄想の誹りを受けかねない想像ではあったが。

 

 

一方、極改装のすったもんだに隠れて、一つの騒動が巻き起こっていた。

 

「そんな話聞いてないでち!!」

 

2054年6月21日10時32分 中央棟2F・提督執務室

 

提督「だがもう決定事項なんだ!」

 

ゴーヤ「私達に何の相談も無かったのはどう言う事でちか!」

 

イク「そうなの! 母艦がいなくなったら、どうやって活動するのね!」

 

提督「だから予備の艤装は残すと言うとろうが! それに大鯨の艤装はもう一揃え揃える予定だから潜水母艦がいなくなる事は無い!」

 

イムヤ「でもそれまでの潜水母艦の空白はどうやって埋めるつもりなの! それに空母に改装しちゃったらその訓練もあるのに!」

 

提督「空母の数がただでさえ足りんと言うのに無茶を言うんじゃない! あっちを立てればこっちが立たんのだ、その位分かってくれよ・・・。」

 

ゴーヤ「だからと言って潜水艦隊の活動を阻害する理由にはならないでち! 撤回するでち!」

 

ここまでで分かる通り、そのひと騒動と言うのは、大鯨を龍鳳に改装する件に付いてである。名取、由良、鬼怒、阿賀野、矢矧などの改への改装を終えた次の改装として実行する間際の事である。因みにこの時他に、長波・衣笠・足柄・最上・鳥海・大和・漣・敷波・涼風・若葉・初霜・熊野・利根・天城・秋月が改に、蒼龍と飛龍が改二へと改装されている。

 

潜水母艦は長期に渡る潜水艦の行動に於いては重要な要素足り得るが、それも条件次第なのである。そもそも潜水母艦は前進基地に待機して潜水艦に専属して補給を担うものなのだ。

 

提督「潜水艦隊の活動そのものは潜水母艦を必ずしも必要とはしていないだろう。そんなに不満なら給糧艦伊良湖を貸し出してやっても良いのだぞ!?」

 

ゴーヤ「・・・。」

 

提督「それに潜水艦隊の活動拠点となる基地だってある。暫くはそれを活用する事にしてくれ。これは、命令だ。いいな。」

 

イク「・・・仕方ないのね。」

 

そう言ってイクに連れられて潜水艦隊の代表者4人は執務室を去った。

 

提督「・・・思ったより猛反発を受けたが、まぁ致し方ないな。」

 

大淀「重要なのは、確かですからね。」

 

提督「そうでもないよ。さて、建造棟に指示を出そう。」

 

 

こうしてできたのが航空母艦「龍鳳」である。

 

 

18時29分 建造棟1F・艤装改造区画

 

実は艤装の改造は造兵廠ではなく建造棟の一角で行う。この為実はイメージされるよりも建造棟は縦横に広いのである。

 

提督「これが、新しい姿か。」

 

そう言って見やる大鯨改め龍鳳の姿は、趣を一新していた。着物を身にまとい、艤装の一部でよろい、弓と矢筒を携えたその姿は、紛れも無く航空母艦であった。

 

龍鳳「今までとは違う、力強さを感じます。実戦が楽しみです!」

 

提督「お、そうか。」

 

如月「ねぇ提督、ちょっと装備のリストを見てくれる?」

 

提督「どした、どれどれ・・・。」

 

そのリスト(電子データだが)を見た彼は、妙な点に気付いた。

 

提督「・・・箱根隊?」

 

それは艦戦だった。零式艦戦五二型(箱根隊)と言う名が記されていたのだ。

 

龍鳳「どなたでしょう・・・。」

 

提督「俺も初めて聞く名前だな。」

 

龍鳳「どんな実力をお持ちなのでしょうか?」

 

提督「・・・ここは―――」

 

 

~翌日朝~

 

演習海域に来た鳳翔と龍鳳。

 

提督「さてさて、見させて貰いましょうかねぇ。」

 

それを遠巻きに、偵察機を飛ばしながら見る直人。

 

鳳翔「柑橘類さんと対決ですかぁ。」

 

柑橘類「どんな奴だか知らんけどな、まぁ、やってみるさね。」

 

龍鳳「箱根さん、行けますか?」

 

そう呼ばれた龍鳳の肩に乗る妖精は小さく頷いて言った。

 

箱根「いつでも。」

 

提督「“両者準備いいな、発艦して宜しい。”」

 

その声を聞いた二人は矢を番えて放つ。龍鳳は初めて演習の場で矢を引くのだが。

 

提督「・・・ホーカー・シーファイアの初陣って所か。」

 

鳳翔の飛ばした戦闘機を見て言い放った一言である。

 

 

~遡る事一週間前~

 

提督「・・・どうしても欲しいのか?」

 

柑橘類「おう。」

 

提督「・・・鳳翔さんはなんて?」

 

柑橘類「提督が良ければ、だってよ。お前がいいって言えばいいらしい。」

 

提督「やれやれ・・・分かったよ、シーファイアはくれてやる。」

 

柑橘類「やったぜ! これでグリスピ(※)は俺のもんだ!!」

 

※グリフォンエンジン搭載のスピットファイアの事、初期~中期型はマーリンと言う別のエンジンだった

 

提督「はぁ~・・・。」

 

 

大馬力のグリフォンエンジンを轟かせて一気に高度を取る柑橘類機。これに対して五二型に乗る箱根少佐は、焦って高度を上げず様子を見る。

 

提督「―――始め!!」

 

直人の号令で試合が始まった。

 

 

―――勝負は30秒足らずで付いた。位置エネルギーで優位に立つ柑橘類中佐は理想的なダイブアンドズームで仕掛け、そこから格闘戦に移ったが、その攻撃は尽く空を切り、瞬く間に運動エネルギーを失ったのである。

 

気付けば振り切れない位置に、箱根機があった。

 

 

提督「―――強いな。」

 

百戦錬磨の柑橘類中佐が負けたと言うのは彼にとって衝撃の大きなものだった。

 

 

箱根「改めて、箱根(はこね) 佐久(さく)、元傭兵だ。宜しく頼むで。」

 

提督「心強い戦闘機隊指揮官を得られて嬉しい限りだ、宜しく。」

 

自己紹介を受けて彼は少し顔をほころばせて言ったものである。しかし彼の脳裏にその名は無かった。これ程の腕の傭兵なら、何故名が知れていないのか。

 

それを問い質すと彼は言った。

 

箱根「―――私はこの世界の人間やない、とだけ言わせて貰おう。」

 

そう簡潔に答えたのみであった。

 

 

超戦艦の出現と新たなエースの着任、この二つを得て、横鎮近衛艦隊は更に自信を色濃くするのであった。

 

直人にとっては幸運の極みではあったが、少佐待遇とした箱根 佐久については疑問を残したままである。ともあれ、横鎮近衛艦隊空母航空部隊は、更に一層の実力を付けたのは明白な事実なのであるから、そこを否定できる点は無かった。

 

こうして劇的な戦力強化は、様々な事に疑問を覚えつつも粛々と実行に移され、来たるべき日を迎えるに至るのであった。

 

~幕間 完~




艦娘ファイルNo.1b

金剛型戦艦 金剛極改三

装備1:55口径46cm三連装自動砲
装備2:55口径46cm三連装自動砲
装備3:一式徹甲弾
装備4:カ号観測機(観測)
装備5:68式3連装短魚雷発射管(対潜装備)
装備EX:SPY-1D フェーズドアレイレーダー

EXアビリティ1:砲塔個別照準射撃
EXアビリティ2:マルチターゲティングシステム

補助装備(対空):35式127mm連装速射砲(両用砲)/エリコンKD 35mm連装機銃/ファランクスCIWS
補助装備(対潜):OQS-102艦首装備式ソナー

夕張の意見具申を実行し完成した超戦艦。それまでの艦娘では考えられないレベルの火力と精度、防御力の全てを、艤装の大幅な改装と言う一手で両立させた、金剛の新しい姿。
防空能力や対潜能力も刷新された事により、艦隊旗艦として遺憾ない能力を振るう事が出来る他、全ての火器がレーダーないしソナーと連動している為、非常に効果的な攻撃が行えるようになった。敵の物量に対して夕張が導き出した結論の結晶であるだろう。


艦娘ファイルNo.124b

龍鳳型航空母艦 龍鳳

装備1:零式艦戦五二型(箱根隊)
装備2:彗星一二型
装備3:流星一一型

潜水戦隊からの抗議を退け、大鯨の艤装を改装して出来た航空母艦。
その際特異点として未知の航空隊を引き連れて横鎮近衛艦隊第三艦隊に参陣したのであった。

◎箱根 佐久(はこね-さく)
階級:少佐

龍鳳飛行隊長兼戦闘機隊隊長を務める妖精。
匿名希望の第三者とのコラボキャラであり、元は別世界で様々な機体を乗りこなす傭兵としてその名を轟かせていた歴戦の傭兵隊長である。
部隊の指揮能力に秀でており、空戦指揮官として優秀な手腕を誇る。
言葉の端々に関西弁が混じる。
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