異聞 艦隊これくしょん~艦これ~ 横鎮近衛艦隊奮戦録   作:フリードリヒ提督

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ちわっす! 天の声です!

早速ですが今回はドロップについてと、幾つか新用語の解説に行きます。

ではドロップのメカニズムから説明しましょう。

ドロップ、といえば皆さんが思い描きそうなのが・・・(以下作者の独創と偏見なので悪しからず)

T督「い、今起こったことを簡単に話すぜ!今俺の艦隊が深海棲艦と戦ってて、その戦闘が終わったと思ったら、敵の煙の向こうから艦娘が現れたんだ。な、何言ってるか分からねーと思うが(ry」

と、こんなかんじだと思います。あるいはこれと似たような感じかもしれませんね。

ですが全く以て非科学的すぎる上非合理的過ぎます。そこでこの作品では以下の通り解釈しています。

まず戦闘後、洋上に浮かんでいる敵の残骸をささっと拾って持ち帰ります。(決してモンハン宜しく剥ぎ取りではない。決して。)

その後、妖精さんにそれを渡し、その残骸が発する霊力波、簡単に言ってしまえば字の如く霊力の波ですね、それを計測してもらいます。その波の中に艦娘であることを示すものを検出した場合、浄化処理を施した後艦娘建造と同様錬金に入ります。

この一連の作業を、直人ら横鎮近衛艦隊内では「ドロップ判定」と呼んでいます。言い得て妙ですねw

因みに大抵の場合残骸は纏まった量が無いと浮いてきません、不思議ですね、浮力が残ってるんでしょうか?

続いて新ワード。


・深海棲艦のコードネーム

深海棲艦側だけが用いている物で、ほとんど同一容姿の個体ばかりなので、コードネームが使われている。またクローン個体である場合は「○○1」「○○2」という具合で数字が振られる。

・30cm速射砲

ネタは某吸血鬼バトルアクション系アニメに登場するドラキュリーナのメインウェポンから頂きました。付属する広域制圧用巨大擲弾「ウラズィーミル」も健在でございます。
この世界では艤装の主砲口径はcm⇒mmにしてあるだけなので、30mm対戦車カノン砲は30cm砲となります。(その他の例:41cm砲=41mmなど)
要はセンチをミリに置き換えるだけです。なおミリをセンチに置き換えるケース(通常兵装の艤装化)の場合は、通常の艤装とは桁違いの威力を持っています。が、射程が艦娘艤装のそれに比して劣る点は留意する必要がある。

・浄化処理

ドロップに関連したりする事項である。
簡単に言えば、深海棲艦の持つ負の霊力を浄化し、正の霊力にする工程。
深海棲艦の装甲や艤装は、人間の鉄鋼よりも遥かに優れた剛性と加工のし易さを誇っており、それを利用する際に必要な作業である。
それをしなかった場合、それを使った構造物が負の霊力によって侵食され、最悪意思を持つ化物になる可能性がある。らしい。


・超兵器級深海棲艦についての情報

超兵器級に分類される深海棲艦は、少なくとも250~300存在するとされ、これとは別に量産型超兵器級深海棲艦が数多く存在する。4章末尾にその渾名だけ登場した「マスターシップ」は深海棲艦の頂点に立つ存在であり、人類側から見れば最凶最悪の超兵器級とされる存在。北極棲地に座しているが、今は眠りについていると言う・・・。


ま、ザックリこんなとこだね。


今回はいよいよ硫黄島の敵が動き出すようです。


この危機に彼らはどう対応するのか、ご注目下さい、どうぞ。








と言いたい所ですが、もう少しあります。

この辺りで柑橘類氏について私が把握してる範囲でご紹介させて頂きます。


・柑橘類氏

やっているゲーム:艦これ(鯖:パラムシル 嫁艦:榛名)・WT(ウォーサンダー 主に日本機と英国機、ソ連戦車を使用)・WoT(ワールドオブタンクス 鯖:NA&ASIA)・WoWs(ワールドオブウォーシップス 鯖:ASIA 日本駆逐艦&巡洋艦の使い手)・SF2(スペシャルフォース2)・CX2(コンカークロス2 鯖:統合サーバー)

作者が知っている範囲だけで結構広範囲のゲームをやっている作者のネット上での友人。艦これ提督であり所属は幌筵泊地サーバー、嫁艦は榛名(なお未ケッコンな模様)。その他のゲームもそれなりにやり込んでいる様子。FPSの影響からかはたまた元々からかの銃好きで、作者も何度かその方向のアドバイスを貰っている。
『なんだかんだで色々手助けしてしてくれる頼れる戦友かつ教官』とは作者の弁である。因みに好きな戦闘機は零式艦戦32型。


・零式艦戦22型(柑橘類隊)

機種:戦闘機
装備性能:対空+8 命中+2 索敵+1

作中の2年前に事故死した直人の友人が偶然艦載機妖精に転生した結果生まれた部隊。柑橘類隊の名称はネットでその友人が使っていたハンドルネームから。並外れた空戦技能を駆使した一撃離脱戦法を身上とする。
鳳翔改の1スロ目に配備されている為麾下の部隊は隊長入れて14機と少ないながら、それぞれが卓越した技量を誇っており、中々凄まじい能力を秘めているようだ。
隊長妖精「柑橘類」は、何と喋れる為無線が普通に使える。因みに直人が彼の事を知ったのは鳳翔さん建造の翌日。
なお普段は鳳翔さんの自室におり、たまに肩の上にちょこんと乗っている時がある模様。
柑橘類隊であることを示す為、所属機は垂直尾翼を濃緑色単色迷彩の上から斜め半分をオレンジに塗り、左右主翼上面に稲妻マークを入れている。



フフフ、「流石に紹介しとかないと」と思ってやったった。反省はしていない。(キリッ

では今度こそ本編どぞーww


第5章~横須賀防衛戦~

4月17日早朝 父島北方海上 横須賀鎮守府所属「毒嶋艦隊」所属零式水偵

 

 

グウウウゥゥゥゥゥゥーーーー・・・ン

 

 

エンジンの轟音を唸らせ、1機の零式水偵が父島付近に到達していた。

 

横須賀鎮守府第5036艦隊、通称「毒嶋艦隊」に所属する艦娘から飛び立った哨戒機である。

 

この日は晴れ渡っており雲も少ない、絶好の見回り日和であった。

 

海は父島の漁村から出たと思われる船が数隻浮いている以外は平穏そのもの、彼らの役目は終わるかに見えた。

 

機長妖精「!?」

 

その零式水偵の機長が、前方海上に夥しい数の敵艦がいる事に気付いた。

 

そしてそれを守るように敵機が大量に飛んでいる。

 

その様子はすぐに毒嶋艦隊司令部に知らされた。

 

 

 

4月17日午前6時 毒嶋艦隊司令部執務室

 

 

任務娘「当艦隊の出した哨戒機が今日早朝、夥しい数の敵艦隊を確認したとのことです、提督。」

 

毒嶋「ふーん、その艦隊はどこに向かってる感じー?」

 

この司令部の提督「毒嶋」は、例えるならばド○えもんに出てくるスネ夫をもっとキザっぽくした感じであり、妙にヘラヘラしている感が否めない。

 

任務娘「日本本土に向け北上しているという事です。」

 

毒嶋「ふーん、多分関係ないっしょ、一応上に回しといてー。」

 

任務娘「は、はぁ・・・。」

 

この男、無能に付き。

 

 

 

午前7時ごろになり、毒嶋艦隊の掴んだ情報は横鎮近衛艦隊の直人の耳にも入った。

 

大淀「大本営からは、その敵が脅威となる場合にはこれを撃滅せよとの指示が出ています。」

 

提督「それは承知している。直ちにでも出撃するところだが、各艦隊の掴んでいる情報がばらばらだ。進路は欺瞞航路だとしても何処へ向かっている?」

 

そう、彼が出撃を渋ったのは、敵が欺瞞航路を取っていることが明らかになっているからである。

 

なぜならその後接触した偵察の第2報では、第1報と異なり東北東へ向かっていると知らせてきているし、第3報では南下しているとも言ってきている。

 

これでは何処へ出撃すればいいのやらさっぱりなのである。更に第6報を告げた偵察機が消息を断ち、それ以降敵の動向も不明、深海棲艦に人間側のレーダーを攪乱ないし電波を掻き消す程度簡単に出来る事も推察されることから、迂闊に手を出せないでいた。

 

提督「ふーむ・・・。」

 

直人が暫く押し黙る。

 

暫しの静寂が執務室を支配する。

 

その静寂を破ったのもまた、直人であった。

 

提督「暫く続電を待ち様子を見よう。場合によっては綾波を偵察に出す。」

 

金剛「出撃しないのデスカー?」

 

提督「敵が目標とする可能性のあるのは、呉や大湊、横須賀と言った艦隊司令部の在地、あるいは名古屋、大阪、静岡などの人口密集地であることが考えられる。だがそれを一つに絞るにしては情報が不足している。」

 

大淀「ではその様にします。」

 

金剛「ウゥ~・・・今すぐ出撃したいデース!!」

 

更に駄々をこねる金剛、これを直人は言下に拒絶した。

 

提督「情報不足の中で迂闊に動けば最悪艦隊は生きて帰れんだろう。しかも我々は秘密艦隊であり、派手に動けばその秘匿性が失われる事になる。他者に我が艦隊の情報が知られぬ様、秘匿性保全には最善を尽くさねばならん。今は兎も角待ちの一手しかない、分かってくれ。」

 

金剛「~~・・・。」

 

金剛も不承不承という感じで引き下がる。

 

提督「全艦に通達、臨戦態勢で待機だ。待ちの一手だが緊急出撃に備えてもらう。」

 

大淀「分かりました。」

 

金剛「了解デース。」

 

二人が部屋を去った後、提督はさらに暫くの間思慮に耽った。

 

提督(もし仮にこの敵襲が呉や大湊に向かった場合はその時で判断すればいい。が、問題は浦賀水道へ向かうコースの場合だ。早期発見できねば、侵入の阻止は不可能だ。最も杞憂であればいいが・・・。)

 

待ちの一手はこの場合最良の選択であり唯一の良策であった。

 

しかしこの最悪の想定が皮肉にも現実と化すとは、神の身ならぬ彼が知る由も無かった。東京攻撃の危惧という点では最低でも予想を逸していたという事だけが、唯一幸いであった。

 

 

17時16分 食堂棟2F・大会議室

 

提督「・・・という事だ。よって、敵の大艦隊による浦賀水道一帯の攻撃が予想される。狙いは恐らくここ横須賀であり、俺個人の予測ではあるが、敵攻撃目標は東京ではないと踏んでいる。」

 

 会議室では、直人と大淀を始めこの鎮守府に集った者達が集められていた。

第一報を受け取ってから10時間程が経過し、その間得られた情報により、浦賀水道周辺ないしその以北への襲撃がほぼ確定されたが、先刻海軍横須賀基地所属のイージス艦「きぬがさ」が、「敵深海棲艦の大群、浦賀水道西岸を北上中。計器にノイズを認む。」と打電した直後攻撃を受けたとの知らせが、緊急電で入ってきたのだ。

 きぬがさは速射砲とミサイルで応戦するも左舷舷側に被弾、ガスタービン1基を損傷しながらも、命からがら横須賀へと逃げ帰ったと言う。

 

大淀「きぬがさの戦闘詳報を見るに、敵旗艦は知能体である事が予測されます。これまでの敵とは段違いの相手である点は明らかです。敵の物量にしても、ヲ級エリートが30隻以上、同フラッグシップだけで10以上確認されることから、空母を主体とし50以上確認されている戦艦と連携した水上打撃群であることが考えられます。」

 

会議室にざわめきが起こる、これまで日本近海では例を見ない大艦隊であるから当然だった。

 

提督「静かに。今次防衛戦は横須賀在駐の全艦隊を挙げて当たる事になっており、我々は敵戦力の内4割半の事前漸減を担当する事になった。敵主力を減殺し、戦力の弱い他艦隊への負担を減らす事が目的だ。」

 

会議室に集まった面子を見ながら提督が言った。中には新参の艦の姿もある。

 

初春「確かにそれも一計じゃな。じゃがそうすればわらわ達の被害も無視は出来ぬぞ?」

 

その新メンバーの一人、初春が正論を突いた発言を返す。

 

提督「分かっている。恐らく横須賀付近沿岸への攻撃もあると思われる。その敵は引き付けつつ俺が叩く。この場所は横須賀鎮守府管轄内で最も入り組んだ場所であり、同時に横鎮司令部群では最も外洋側に突出した位置にある。」

 

横鎮管区の司令部群は、主として横須賀港湾とその周辺区域一帯に集約されている。これに対し横鎮近衛艦隊司令部のある八島入江は、横須賀市街の南、相模半島で最も浦賀水道に張り出した観音崎にあるのだ。

 

最も、その岬は既に原形を留めていないが・・・。

 

提督「今から編成される艦隊はこの司令部の入り江の入り口にて司令部攻撃に来た敵を引き付けてもらう。これを機に艦隊も再編しようと思う。」

 

今度は全員が静かに直人が手にした紙に書かれた内容を、聞き逃すまいとしていた。

 

提督「まず主力、第1水上打撃群。金剛、羽黒、摩耶、木曽、赤城、蒼龍。旗艦は金剛。」

 

金剛「私の主力部隊旗艦は、揺るがないネー。」

 

赤城「わ、私ではないのですかっっ!!??」ガビーン

 

金剛がドヤ顔かましてるが赤城、落ち着け。

 

羽黒「わ、私ですか!? うぅ・・・緊張します・・・。」オロオロ

 

提督「これが初実戦の羽黒には致し方ないか。だが少なからず活躍出来る事を期待させてもらう。なにより、空母を守れる艦として、羽黒の力が必要だ。やってくれるな?」

 

羽黒「は、はい・・・が、頑張ります!」

 

感無量と言う面持ちで羽黒が言う。主力抜擢が余程嬉しかったのだろう。

 

摩耶「全く、こんな気楽な会話が出来る内は、大丈夫だな。」

 

提督「そう言う摩耶は大丈夫だな?」

 

摩耶「当然だっての、任せろ!」

 

自信たっぷりに言い放つ摩耶、羽黒とはえらい違いだが空虚なものではない。

 

提督「摩耶に期待するところはその艦隊防空力だ。空母を敵機から守ってやってくれ。」

 

摩耶「おう!」

 

摩耶は着任当初から改二として着任しているのだ。故に対空火力が他の重巡の比では無い。しかし経験の無さは否めなかった

 

蒼龍「またよろしくお願いします、赤城さん!」

 

赤城「えぇ、よろしくお願いします。」ニコッ

 

提督「蒼龍と赤城は制空と敵艦隊への事前攻撃が主目標だ。初陣の2人の為により多くの戦果を期待する。また第1水上打撃群は湾から出ちゃダメね。」

 

6人「はい!」

 

金剛らは兎も角この赤城(殲滅担当)の本気を舐めてはいけない。

 

提督「続いて第1艦隊、扶桑、愛宕、神通、綾波、初春、飛鷹。旗艦、愛宕!」

 

扶桑「私は今回、旗艦ではないのですね・・・。」

 

提督「扶桑には旗艦任務よりも専ら敵殲滅に努めてもらうのとは別に、空母部隊の前衛としての艦隊の性格から、その火力をより効率的に使ってほしい。」

 

愛宕には愛宕の役割がある様に、扶桑にも扶桑の役目はきちんとある。それを知った扶桑は頷いた。

 

扶桑「提督が、そう仰るなら―――この扶桑、全力で参ります。」

 

旗艦と言う役割は意外に頭を使う。それが攻撃を阻害しては意味がないと言う直人の判断であった。

 

提督「頼むぞ。愛宕に哨戒部隊旗艦を任せたのはこういう状況を見越してだったんだが、まさか今日になろうとは思わなかった。」

 

愛宕「誰も予想だにしなかった事です、私も精一杯頑張りますね!」

 

提督「ありがとう。」

 

雷「ねぇ司令官! 私は?」

 

本作品初登場、『ダメ男製造機』と早くから呼ばれる兆しのある雷が質問を飛ばす。

 

提督「まぁまぁ焦るでない。司令部防備艦隊、鳳翔、天龍、龍田、雷、白雪。旗艦、鳳翔!」

 

つまりお留守番ですえぇ。

 

鳳翔「あらあら、私ですか?」

 

提督(何かの間違いじゃ? と問う視線が突き刺さってくるな。)^^;

 

流石にたじたじとなるもののすぐに気持ちを立て直して続ける。

 

提督「司令部防備艦隊は司令部に来襲した敵機と、迎撃に出る金剛達が撃ち漏らしてこっちに来た敵の殲滅。多分金剛たち12隻では多分完全殲滅は無理だからな。」

 

天龍「おっしゃぁ!腕がなるぜ!」

 

雷「どんな相手でも、雷に敵う訳無いんだから!」

 

白雪「後方勤務、とはいっても防衛任務は付き物ですね。お任せ下さい。」

 

提督「恐らく敵の狙いは横須賀港だ。この防衛が最終目標になるが、それに隣接する鎮守府も攻撃対象になるだろうし、周辺海岸も危険だ。欲を出さず、状況に応じて堅実に立ち回ってくれ。善戦を期待する。以上だ。」

 

一同「はい(おう)!」

 

 

 

しかしこの判断は、問題こそ無いにせよ、完全な間違いとして露呈する事になる。

 

敵、ル級改Flag「モンタナ」率いる硫黄島艦隊の目的は、あくまで「横鎮近衛艦隊の捕捉撃滅」にあったからである。

 

それを知らぬまま、彼らは臨戦体制へ入った。

 

 

 

4月17日20時37分、その轟音は突然にして起こり、それを合図に戦闘が始まった。

 

深海棲艦によって突然の夜襲によって開始された横須賀防衛戦は、深海棲艦の第1撃で、油断しきっていた艦隊司令部数個を、地上待機の艦娘や提督、施設をも纏めて、瞬時にして壊滅状態に追いやった。第二撃、第三撃と続く攻撃で横須賀港内は騒然となり、一部指揮系統で混乱が生じてしまう。

 

このような事態に陥った原因は、敵が予想を上回るスピードで横須賀侵攻を実行した為であり、分析と作戦立案の不備による所が大きかった。

 

だがその混乱から立ち直るまでの時間を稼いだのは、他でもない横鎮近衛艦隊である。

 

 

1時間ほど前

 

 

~第1水上打撃群~

 

赤城「攻撃隊、発艦してください!」

 

蒼龍「第1次攻撃隊、発艦始め!」

 

 

~第1艦隊~

 

飛鷹「攻撃隊、発艦始め!」

 

扶桑「扶桑型の、本当の力、お見せします!」

 

 

~司令部裏ドック~

 

鳳翔「いつまでも演習という訳には行きません。航空隊、発艦!」

 

【柑橘類】「おかん! 見ててくれ!」

 

鳳翔「えぇ、気を付けてね。」

 

【柑橘類】「分かってる。行くぞ皆!」

 

 

 

赤城から82機、蒼龍から63機、飛鷹から58機、鳳翔から42機、そして扶桑から23機、計268機の艦載機が発進、総勢3000を超す深海棲艦の本隊へ突撃を敢行した。

 

鳳翔隊は制空隊を司令部防衛に残し、残る部隊のみで突撃したが、この判断は間違っていなかった。

 

 

 

~第1水上打撃群~

 

 

赤城「指揮官機よりト連送です。」

 

蒼龍「江草大佐、頼むわよ・・・。」

 

 

 

二人がそんな祈りを捧げていた頃、司令官は一人、司令部近くの浜へと繰り出していた。

 

長い銃身と背負った大型弾倉、30cm速射砲と、明石謹製の霊力刀「極光(きょっこう)」を、妖精さんは何をどう頑張ったか黒(うるし)塗りの桐製の鞘に納めている。

 

この刀はあの会議の後すぐに明石さんが届けてくれたものである。

 

 

 

ちょっと遡って15時半

 

 

ジャキッ、ジャキッ

 

 

提督「よし、いってみますか。」

 

艤装倉庫で30cm速射砲の準備をする直人、今回は洋上へは繰り出さず海岸での水際防衛を試みるつもりであった。

 

明石「あ、提督!」

 

そこへ、一振りの刀を納めた鞘を手にした明石がやって来た。

 

提督「おぉ、明石さん・・・その刀は・・・ようやく、出来たんだね?」

 

やたらと時間がかかっていたのを気にかけていた直人である。

 

明石「はい。しっかり鍛えておきましたから、深海の戦艦や巡洋艦クラスであれば通じると思います。」

 

提督「それは凄いな・・・。」

 

直人はそう言いながら、刀を少し引き抜き根元の部分を見る。

 

深海棲艦の使う鉄鋼の最大の特色は、黒い色合いである。

 

ただ、見た目は黒一色だが、光を反射させると紫に輝くのだ。

 

提督「うん、良い刀だ。銘はそうだな・・・極光、とでもしておくか。」

 

即興で銘を決める直人。この“極光”の名を持った霊力刀は、この後事あるごとに彼を救う事になる。

 

明石「極光、ですか・・・いいですね!」

 

提督「ありがとう明石さん。いい仕事だ。」

 

明石「いえいえ、私が今出来る事といったら、これ位ですから。」

 

そう言って謙遜して見せる明石の顔が、今極光を腰に提げた直人の脳裏をよぎる。

 

提督「ありがとう明石さん。必ず勝って帰る、この刀と共にな。」

 

独り言のように呟く直人。

 

その沖合には既に、深海棲艦と思しき無数の黒点が見受けられた。

 

霊力を垂れ流すことで生まれる強大な気配で誘い出したのだ。

 

提督「さて始めようか、化物共。今宵一夜限りのパーティーを!」

 

彼は30cm速射砲を沖合の敵に構え、狙いを定め、射撃を開始した。

 

横須賀鎮守府全体が混乱のるつぼにある中、敵の攻撃を一手に引き受けた横鎮近衛艦隊。

 

赤城と蒼龍の航空隊を軸にした攻撃隊が、悠然と敵に襲い掛かる。

 

その魚雷はたった1本で敵深海棲戦艦をも沈め、その急降下爆撃は深海棲重巡をたやすく葬り去る。

 

殊に金剛がこの時見せた働きは目覚ましく、46cm砲が狙った艦を正確に、しかも2~3隻纏めて一斉射で仕留める神技を披露した。

 

羽黒の火砲が、初陣ながら敵軽巡をしたたかに打ち据え撃沈する。

 

扶桑がその航空甲板に被弾を受けつつもなお41cm砲10門の咆哮を轟かせる。

 

綾波が特型の誇る日本海軍駆逐艦で2番目に多い9射線の魚雷を一斉に放ち、敵を水底へ叩き込む。

 

摩耶が、慣れないながらもその対空火力を以って敵機を叩き落とし、艦隊を敵機から必死に守る。

 

愛宕が、初春が、神通が、それぞれが自らの持てる全てを以って戦い、傷を負おうともなお、直人の命令に沿い戦い続ける。

 

そして空中では、何れも劣らぬ最強の荒鷲達が、数で圧倒的に勝る深海棲艦の艦載機を相手取って大健闘をしていた。

 

被害は敵に比べれば無きに等しく、落ちるのは黒い敵機だけ。

 

横鎮近衛艦隊司令部付近でも、オレンジの映える垂直尾翼を持った柑橘類率いる零戦隊が、僅か14機ながらも180機以上を相手取り五分の戦いをしていた。

 

そして司令部近くの浜辺では、徐々に押されつつも、山なり弾道で8000mへ砲弾を届かせる砲撃を続ける直人の姿があった。

 

 

~観音崎海岸沖~

 

モンタナ「奴ニ違イ無イ! 一斉ニ撃チカカッテ仕留メロ!!」

 

「私の出番はまだかしら? モンタナ。」

 

目標を捉え勝利を確信するモンタナに話しかける影が一人、流暢な言葉で話す。

 

モンタナ「ナニ、モウスグダ。」

 

「・・・そう。」

 

 

 

―――直人は引き金を引き続ける。

 

イ級を徹甲弾が一撃の元に葬り去り、ヘ級の体を薄殻榴弾が断ち切り、ル級の装備と体を弾丸の雨がバラバラにし、空母を何も出来ぬ内に肉塊へ変え、飛び立った敵機も的確に撃ち落とす。

 

直人は元々提督として非凡な才を文武両面で備える逸材だ。しかしそれでさえも限界がある事を、この戦闘は証明していた。

 

しかしその距離は徐々に詰まりつつあり、既に3kmの所まで来られてしまっていた。

 

提督「くそっ、多い・・・!!」

 

直人は自らの読みが誤っていた事への悔しさから唇を噛む。狙いは横須賀ではなく『彼自身』であった。即ち、先の1発を放った事で敵に見つかってしまった事が、敵の策を容易ならしめてしまったのだ。

 

提督(それになんだ・・・この容易ならざる気配は・・・?)

 

少なくとも千隻はいる深海棲艦を既に半数程度まで撃ち減らしているのだから大したものではあるが、未だ衰えぬ敵の勢いの中に、彼は何かとてつもないものを感じ取っていた。

 

彼の感じ取った気配は二つ、一つは通常艦だが、もう一つは何か違う。

 

提督(計器のノイズ・・・そしてこの存在感。成程―――超兵器級か、こっちに来てることは、不幸中の幸いだった。)

 

直人は全てを悟るに至った、計器のノイズは、超兵器級の接近を感知する最も簡易な方法だからだ。

 

愛宕「“提督! 横須賀の他の艦隊が、ようやく出撃を開始しました。”」

 

直人が耳に着けているインカムに愛宕から連絡が入った。

 

提督「“よし、第1艦隊は入り江まで後退し、以後防衛態勢に入れ!”」

 

愛宕「“分かったわ~。”」

 

ズンズンドゴォォォォォーーーーー・・・ン

 

提督「くぅっ!?」

 

直人の周囲に次々と砲弾が着弾し始める。どうやらこちらを視認するほど距離が縮まったようだ。

 

提督「雑魚共が、五月蠅(うるさ)いんだよぉぉ!!」

 

裂帛の気合と共に霊力が背部の弾倉へと伝達される。

 

ガシャンガシャンと音を立て、折りたたまれたアームが、弾倉の上に載った二つの擲弾を持ち上げていく。そのアームが完全に伸び切ったところへ、直人が砲の砲口を擲弾後部に突っ込み接続する。

 

提督「これでも、くらっとけぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」

 

 

ドォォンドォォォォーーーン

 

 

通信をしている所へ砲弾を撃ち込まれた怒りと共に、まるで巨大な艦砲を射撃したような音と共に、後尾の推進薬に点火された巨大擲弾、ウラズィーミルが、不規則な弾道を描いて飛翔する。

 

その威力はすぐに明らかとなった。

 

補助推進があっても所詮は擲弾であり重力に引き寄せられ、5000m飛んで敵艦隊左右両翼に展開する前衛水雷戦隊のど真ん中に着弾した2発のウラズィーミルは、着弾地点の半径800mにいた敵を瞬時に死に追いやった。

 

半径350m圏内では、超高威力火薬による猛烈な爆風と破片、衝撃波の嵐が吹き荒れ、その外側では、高濃度気化焼夷剤が爆発の勢いで撒き散らされ、更にそれが爆風で発火、気化爆発を誘発し、一瞬ながら数千万℃に達する超高温爆発を発生させ、同程度の温度を持った爆風によって、瞬時に敵は塵と化した。

 

その範囲にいた艦は、艦種種類の隔たり無く、全てが大破ないし爆沈、もしくは撃墜されている。

 

更にその範囲の外に居ても安全ではなく、有効半径の外側更に500m円周の敵には漏れなく高温爆風のおまけがつく。

 

余りの高温を持った爆風の為、炎上しなければ運が良いと言える。

 

敵前衛艦隊は文字通り炎の海に消え去った。

 

その炎に包まれた洋上を、悠然とこちらへ進む1隻の敵深海棲艦がいた。

 

容姿はタ級に近いが髪は茶髪で瞳も茶色、服は丁度ナチス海軍第1種軍服に近い。流麗の美女、と言う印象を与える容姿だ。

 

その艤装は、飛行場姫に近いものがある。滑走路に該当する部分が船体のような形になり、右が艦首、左が艦尾であることが窺え、両側に3連装砲塔が2つ。その内側にある飛行場姫での対空砲は、4連装ミサイルランチャーにすりかわり、更に背中側には推進ノズルと思しき構造が見受けられる。どうやら航行時は右側で一本になっているものらしい。

 

さらに両側の外周には4連装魚雷発射管。

 

提督「超兵器級深海棲艦、シュトルムヴィント級超高速巡洋戦艦・・・。」

 

シュトルムヴィント級は超兵器級でもかなり弱い部類に入るがそれでも強敵であることに違いはない。何せその最高速力は65ノットとも80ノットとも言われるからだ。

 

主砲は14inch(インチ)3連装砲を初めミサイルや魚雷など多岐に渡るが一つ一つ脅威になるレベルでもない。

 

その脅威はひとえに速度とそこから繰り出される急加減速性能と、縦横無尽に駆け回る敵が四方八方から放つ多彩な攻撃であると言える。

 

シュトルムヴィント級は、全体的に早くて30ノットから40ノットの艦娘にとっては最も相性が悪いと言える艦の一つだろう。

 

提督「面白い。一つ相手になってやろう。」

 

しかし、強敵を相手取りながらも些かの戦意低下も無し。

 

「図に乗るなよ、人間風情が。」

 

提督「生憎とそんなつもりはないがな。」

 

「私の前で、水面に沈むことを許そう。楽にあの世へ送ってやる。」

 

提督「ほう、それは魅力的だが生憎死んでる暇はない。今ここで勝たせてもらう。」

 

そして戦いは始まった。

 

提督「おらああああぁぁぁぁぁぁ!!」ダダダダダダダダダダダ・・・

 

「ハアアァァァァ!!」ドドドドォォォーーーン

 

巨砲相撃ち、火箭が空を切り裂き怨敵を仕留めんと突き進む。

 

砂が舞い上がり水柱が何本も上がる。そしてその水柱を掻い潜る様に、シュトルムヴィント級が駆け巡る。

 

「食らえ!!」シュゴゴゴォォォーーー・・・

 

提督「む?」

 

シュトルムヴィントが直人を狙いミサイルを放ち、それに合わせて主砲を斉射する。

 

提督「ぬうう!?」

 

土埃が舞い上がり視界を遮る。

 

提督「なんの!!」ダンダダンダダダダン・・・

 

提督がミサイルの推進音のみを頼りに砲を放つ。

 

それらは見事吸い込まれるようにミサイルに命中、4発飛来したミサイル全てを叩き折った。

 

提督「いい加減当たれぇ!!!」ダダダダダダダダダダダダダダダ・・・

 

30cm速射砲はセミオートである為引き金を引く速度=速射速度に直結する。

 

それが今機関銃の様な勢いで砲弾が吐き出され、予想航路上に幅広く弾幕を形成していた。

 

「ッ!!」

 

ドォォンドドドォォーーー・・・ン

 

残響の様に砲弾の炸裂音が響く。

 

しかし有効打は4発のみ、残りは弾かれてしまった。

 

軍艦は大抵の場合、自分の装備した主砲を防ぐ事が出来る様に装甲を設けている。

 

シュトルムヴィントの場合は主砲は14インチであるから、それを防げなければ話にならないという訳であり、直人の砲は30cmである。威力では80cm砲クラスに肉薄するものの、口径の関係上貫通力が威力に見合っていない。

 

つまり正確に装甲を撃ち抜けばどんな装甲でも貫通は可能、しかしこの場合、少しでも角度が悪ければ弾かれるという理屈である。

 

提督「成程、あの個体、オリジナルか。」

 

呟くように言う直人、その結論は正鵠を射ていた。

 

クローンであるならばシュトゥルムヴィント級が相手の場合彼の砲が貫通できない道理はない。なぜならクローンはオリジナルと比べ性能が劣化するからだ。

 

目の前の敵は超兵器としては底辺クラス、そのクローンは量産型超兵器級の上位互換でしかない筈である。それが目の前の敵には弾かれた、つまりオリジナルであると直感したのだが―――

 

提督「くそっ、速いな・・・」

 

その速度に翻弄され如何ともし難かった。

 

予想航路上に砲弾をばら撒くしかしようが無く、それを殆ど躱されているのだから無理からぬことでもある。

 

既に4000m程まで詰められている直人だったが、曲射射撃に囚われていた彼は、ある一つの点に気付く。

 

提督「平射すればいいじゃん。」

 

普通大型砲は山なりに撃ち、銃火器などは真っ直ぐ狙いをつけ撃つのが普通である。

 

如何に大型とは言え銃でそれをやっていては当たりはしない。

 

提督「なーんで気が付かなかったんでしょ。まぁいいや。」

 

水平に構え直し撃つ直人。効果は如実に表れた。

 

元々水上という二次元空間であり、躱すにしても前後左右にしか躱す事が出来ない哀しさ、被弾を重ねていく敵超兵器。

 

「う・・・ぐぅ・・・。」

 

遂に全速行進が不可能になったシュトルムヴィントだったが、半数しか残っていない主砲を使い応戦する。

 

「まだだ・・・まだだぁぁぁぁぁ!!」ドドォォォーーー・・・ン

 

提督「ここは退けん。退く訳には行かんのだ!!」ダダダダダダダダ・・・

 

意思と意思がぶつかり合い、炸裂し合う。

 

そして砲弾応酬約10分足らず、遂にシュトルムヴィントはその戦闘力の過半を失った。

 

「そんなっ・・・私が・・・うぐっ・・・」

 

そこには傷付きふら付きながらも立つ、無残な姿の深海棲艦・・・少女がいた。

 

提督「諦めて沈め、愚かな勇者よ。」

 

そう呼びかける直人であったが・・・

 

「まだ・・・沈む訳にはいかない!!」ザザァッ

 

提督「―――!?」

 

直人の驚きは、突如としてシュトルムヴィントが浜に向けて突進を始めた事にあった。この上は肉弾戦で決着をという事であろうか。

 

さらにそれに呼応するように、敵の生き残りも後に続く。

 

提督「諦めの悪い奴等め!!」ダダダダダダダダ・・・

 

慌てて引き金を引き続けるが、シュトルムヴィントは左右に避けこれを躱す。

 

躱した弾丸は背後の敵艦に命中しそれらを四散させた。

 

これまでは相手が雁行(がんこう)していた事で、左右に走り回っている様に見えていた状態だった為、平射で命中は期待できたものの、それが突進、しかも身軽な敵で左右に不規則にぶれるこの状態では運任せであった。

 

更に不運は重なった。

 

 

ダダダダダダァァァァーー・・・ン

 

 

提督「!?」カチッカチッカチッカチッ・・・

 

弾切れであった。

 

この武装はそこまで多くの敵を相手取る事は想定されていない。濃密な弾幕で少数の敵を掃射することを第一とし弾数重視にしていたが、それが遂に尽きた。

 

「勝った―――!!」

 

勝利を確信するシュトルムヴィント。だが

 

提督「まだだ!」

 

ドスンと重い音を立て、銃と弾倉をパージした直人。

 

提督「俺はまだ、ここに居るぞ!!」

 

そう言って抜刀する直人、迫りくる敵に突進する。

 

「うおおおおおおおおおお!!!」

 

提督「はああああっ!!」

 

 

ガキイィィィィィィーー・・・ン

 

 

二つの力が一瞬交錯しすれ違う。

 

提督「・・・」ザッ

 

「・・・」ズザザッ

 

海岸に、ほんの少し静寂が訪れる。

 

提督「・・・フッ。」ピシッ・・・

 

直人の極光にヒビが入り、刀身がが少し欠け落ちた。

 

「―――ぅぅ・・・。」ドサァッ・・・

 

そして崩れ落ちる敵艦。この時勝利は確定した。

 

シュトゥルムヴィントの突撃に乗じて既に上陸していた敵が砲撃を繰り出す。しかしそれらの敵を、裂帛の気合いで斬り捨てていく直人。

 

内陸への侵入は、ついにただ1隻も許すことなく、敵も残り僅かとなった。

 

直人「ハァ・・・ハァ・・・」

 

モンタナ「オツカレノヨウダナ、人間。」

 

直人の目の前にモンタナが現れる。

 

直人「なんの、少し息が乱れただけのこと・・・貴様が旗艦か。」

 

モンタナ「ソウトモ。人間デアルニモ関ワラズ、ヨクゾココマデ出来タモノダ。」

 

意外な賛辞に内心驚きつつも、直人は言葉を返す。

 

直人「なに、かつてグァムで暴れた超戦艦紀伊の、成れの果てだからな。」

 

モンタナ「ホウ? 貴様ガソノ紀伊ノ媒体ダッタノカ。ソノ実力ハ衰エ知ラズラシイナ。興味深イ・・・。」

 

直人「媒体、ね。生憎だが実験体になってやる暇はない。」

 

モンタナ「ナニ、ソンナツモリハナイ。何故ナラオ前ハココデ死ヌカラダ。」ザッ

 

その途端ル級改の周りにいた取り巻きが一斉に直人に向かう。

 

リ級改「死ネェ!」

 

提督「お断りだ。」

 

 

ザシュッ・・・

 

 

リ級改「ガッ・・・」

 

袈裟懸けに上半身と下半身を断ち切られたリ級改は即死だった。

 

周りにいたホ級ら深海棲軽巡や深海棲駆逐艦は次々と凶刃の餌食となった。

 

モンタナ「バッ・・・バケモノダッ・・・!!」

 

提督「フゥッ。」ガシャッ

 

 

ドムッ・・・

 

 

モンタナ「ウッ・・・」

 

鈍い音と共に、モンタナも崩れ落ちる。

 

周りにいた敵影は既になく、海は元の平静を取り戻していた。

 

提督「ふぅ。何とかなったな。」

 

そこでさらに直人は2つの気配に気づく。

 

提督「・・・。明石、龍田。」

 

呼ばれて出て来たのは、間違いなく明石と龍田だった。

 

龍田「流石ねぇ~、気配だけで当てちゃうなんてぇ。」

 

明石「アハハ・・・やっぱりバレてますよね・・・。」^^;

 

賛辞と苦笑がほぼ同時に飛んできた。

 

提督「で? そっちは片付いたのか?」

 

明石「はい、バッチリ片付いてます。ですが提督が装備を放り出してこないか心配でコッソリ見に来てたんです。・・・すみません。」

 

龍田「私はその護衛役ね。」

 

提督「把握した。」

 

なんだかんだ心配されていた様だ。

 

明石「ところで、極光で2回ほど峰打ちしてませんでした?」

 

なんでバレてるん?

 

龍田「ル級とそこの子に峰打ちしてたわねぇ~。」

 

流石は龍田だ、と舌を巻く直人。

 

提督「まぁな。この二体はたった今俺が捕虜にした。司令部まで運んで手当してやれ。」

 

明石「え!?」

 

龍田「分かったわぁ~。私ル級運ぶ~♪」

 

さり気なく軽い方を選ぶ龍田であった。明石に気を使わんか。

 

明石「捕虜、ですか・・・。」

 

提督「そだよ?」

 

明石「暴れたりしたら―――?」

 

提督「そんときゃ俺が何とかします。それに、色々聞く事もある。」

 

毅然とそう言う直人の目は真剣であった。

 

龍田「そうねぇ~・・・イロイロと、ね?」

 

提督(龍田さんなんか怖いです。)( ̄∇ ̄;)

 

明石「は、はぁ・・・分かりました。あ、装備回収しておきますね。」

 

提督「ありがと、補給頼むわ。」

 

そうして速射砲の弾倉を持った明石はその軽さに気付く。

 

明石「もしかして空になってます? この弾倉。」

 

提督「せやな。」

 

弾薬がぶっ飛ぶことが確定しました。

 

 

 

それから2日後 横鎮近衛艦隊司令部造兵廠

 

「FOOOOOOOOOO!! 楽シイ! 楽シイゾォォォ!! モノヲ弄リ回スノガコンナニ楽シイモノダッタトハナァ!!」

 

何が起こった。

 

提督「・・・で? 気付けばこうなってたと? “ワールウィンド”ちゃん?」

 

ワール「まぁ・・・そうね―――あとちゃん付けやめて。」

 

提督「はいはいw」

 

苦笑するワールウィンドの隣で楽しそうな直人。

 

明石「もう・・・なにがなんだか・・・。」

 

明石は疲れ切っている。

 

造兵廠に呼ばれた提督など3人・・・提督と明石、それにヴィルベルヴィント級4番艦「ワールウィンド」の視線の先にあったのは、改造に目覚めたル級改――モンタナ――の姿だった。

 

どっかで見たぞこの流れ。

 

提督「まぁ分かんないわな、俺も全く。」

 

ル級改「トコロデ? 提督ハ何ヲシニ来タノカナ?」

 

提督「あ? あぁ、明石に呼ばれたついでに刀の修理を明石に頼もうと思ってきたんだよ。」

 

明石「あ、そうだったんですね。拝見します・・・あちゃぁ~、欠けちゃいましたか。」

 

ル級改「ム? ソノ刀は・・・私ト同ジル級タイプノ素材ダナ。」

 

明石「えぇ。提督が拾ってきたル級エリートの艤装で作った物です。」

 

ル級改「ナルホド・・・興味深イナ、深海棲艦ノ素材ヲ使ッタニモカカワラズ正ノ霊力ヲマトッテイルノカ―――コノ修繕、任セテモラエナイカ?」

 

提督「え、あぁ・・・別にちゃんと直してくれるなら構わないけど―――。」

 

何が始まるんです?

 

ル級改「ナニ、同族ノ装備デ出来テイルノデアレバ勝手ハワカッテイルサ。1日デ仕上ゲル。明石、ル級ノ残骸ヲイクラカ持ッテキテクレ。」

 

明石「え、えぇ。」

 

妙にやる気を感じさせるモンタナを見て直人は

 

提督「ふむ、まぁ、付き合ってやんなさい。」

 

と明石に言った。

 

明石「提督がそう言うなら・・・。」

 

 

 

翌日、約束通り仕上げられた刀は見事なまでのスペックアップを遂げていました。

 

提督「はあああぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

直人が修繕された極光を試し斬りしていた。

 

ズバババババッ

 

因みに斬っているのは藁を縛り付けた木柱であるが、それらは一つの例外なく両断された。

 

明石「おぉぉ~・・・提督すごいです!」

 

手にした極光は、元来持っている霊力が直人が持つ霊力に共鳴しているのか、白いオーラの様に霊力を纏っていた。光の反射も紫ではなく白。

 

ル級改「刀身ノ霊力ヲ増大サセテオイタ。艦娘ノ砲弾ト同等ノ効果ガ期待デキルダロウ。霊力パターンモオ前ノソレニアワセテオイタ。」

 

ワール「そんなにしちゃっていいのかしら?」

 

ル級改「ナニ、新タナ道ヲ見ツケルキッカケヲ作ッテクレタ、コレハ礼ダ。」

 

目をキラッキラさせながら語るモンタナに、ワールウィンドも下手な事は言わずただ

 

ワール「ふーん。」

 

と応じただけだった。

 

ル級改「ソレニ、奴ナラ深海ノ考エヲ改メサセルコトモ出来ルカモシレン・・・。」

 

独り言のようにそう呟くル級改。

 

ワール「だといいけれど。」

 

提督「なんかいった?」

 

ル級改「イヤベツニ?」

 

ワール「何でもないわ。」

 

すっとぼける二人。

 

提督「ありがとうル級、助かった。」

 

ル級改「コノ程度オ安イ御用ダ。礼ヲ言ワナケレバナラナイノハコチラノホウダシナ。」

 

提督「あぁ。これからよろしく頼む、“局長”。」

 

ル級改「アァ、ヨロシク。」

 

 

 

4月20日正午 執務室

 

 

提督「そうか。やはり我が方にも少なからぬ損害が出たか。」

 

大淀「はい。少なくとも22個の艦隊司令部が壊滅、夜間だったこともあって司令官も就寝中を襲われ戦死しているケースが多く、立て直しには時間がかかるようです。また各司令部から艦娘の沈没報告が相当数あったようです。」

 

横須賀防衛戦は艦娘側の勝利に終わった。しかし物量を頼みに突き進んできた敵により、こちらも相当な被害を被る結果となった。

 

敵をいち早く発見した毒嶋艦隊もこの一件で壊滅、司令官戦死の急報を発している他、提督らの怠慢により被害が拡大してしまったとし、司令部への規律徹底がこれにより図られることになった。

 

無論のこと、近衛艦隊の奮戦は報道される事は無かったのだが。

 

提督「我々がいなければ今頃横須賀は大変なことになっていた。だがこちらも負った損害は少ないものではない。扶桑と愛宕、初春が中破、摩耶と蒼龍、木曽、金剛が小破、航空機47機喪失、か・・・。」

 

近衛艦隊司令部に来襲した180機余りの敵機を迎え撃った柑橘類隊14機は1機損失したものの、2機1個編隊での一撃離脱戦法、彼らが言うところの「旋風(つむじかぜ)戦法」によって敵機を1機たりとも突破させることなく完全防衛に成功、余勢を駆って近衛艦隊上空へ進出して制空戦にも参加していた。

 

艦隊攻撃に参加した攻撃機に関しては、対空砲火により少なからぬ損害こそ出たが殆ど全機が投弾に成功、深海棲艦に甚大な被害を与えた。制空隊の損失は8機喪失、21機被弾に留まり、引き換えに反復発進を以って700機以上の撃墜確実を報じている。これら航空隊の活躍が、以後の戦闘を容易ならしめたことは言うまでもない。

 

また近衛艦隊司令部へ向かった敵艦隊に関しては、防備艦隊と第1水上打撃群が撃破、よって司令部設備の損害はない。

 

提督「だが、我が艦隊ほど戦力が整っていない他の艦隊に関しては、楽観視できる損害でもないだろうな。」

 

大淀「そうですね・・・。」

 

提督「だが、これからは忙しくなる。嘆いてばかりもおれんな。」

 

大淀「そうですね、切り替えは大切です。」

 

提督「そんじゃ、今日もやりますかね。ところで金剛は?」

 

大淀「そう言えばいませんね、呼んできますね。先に始めててください。」

 

全く、なにやってんの。

 

提督「分かった。さて、まずは3日前の戦闘関連の書類か・・・」

 

 

 

~ベーリング海棲地~

 

「そうか、硫黄島艦隊は負けたか。」

 

「えぇ、指揮官とワールウィンドは行方知れず、艦隊もほぼ全滅した状態で逃げ帰ったそうよ。」

 

「フン、役立たず共には丁度いい顛末だ。では、そろそろ本腰を入れなければならんか。」

 

「グァム棲地に指示を出しておくわね。」

 

「フフ、流石私の右腕、よく分かっているじゃないか、“リヴァイアサン”。」

 

「伊達に今まで貴方と過ごしてないわ、“ヴォルケン”様?」

 

 

 

~幹部会~

 

 

「近衛艦隊か、予想外の事だが奴らの力は我が国にとって危険すぎる。」

 

「そうだろうか? 彼らは正当な功績を上げたものであると認識しているが。」

 

「奴らが我が国に反乱を起こせば、負けるのは我々だ、何か手を打っておかなくては・・・。」

 

土方「その必要はありません。彼らは反乱を起こすような人柄ではない。来栖、嶋田両海将の懸念は最もですが、その彼ら―――横鎮近衛艦隊無くして防衛は為し得なかった筈なのです。」

 

来栖「だがせめて首輪を付け飼い慣らすべきだ。特に、横須賀の近衛艦隊が深海棲艦を匿っているという話も気になる。」

 

土方「鎮守府の監査を行う憲兵隊に、近衛艦隊の監査を行う権限を持たせなかったのも我々です。我々でさえ干渉は出来ないし、確かめる術もない。そうですな議長?」

 

議長「確かに、彼らの監査は我ら直属の独立監査隊がするものだ。だが極秘組織ゆえ、これも迂闊には動けん。」

 

嶋田「今は様子を見るべき、ということか?」

 

土方「そうだ。我々が任命したんだからな、見守ってやるのもまた責任だ。そうだろう? 嶋田。」

 

 

 

直人達の与り知らぬところで蠢動する二つの影。

 

その目的こそ違うものの、彼らが後に様々な難局をもたらすことを、直人はまだ知る由もなかった。

 

2052年4月19日、戦い終わって尚、彼らの“戦争”は、始まったばかりである。




艦娘ファイルNo.16

妙高型重巡洋艦 羽黒改二

装備1:20.3cm(2号)連装砲
装備2:20.3cm(2号)連装砲
装備3:零式水上偵察機
装備4:22号対水上電探改4

既に実用段階の艦娘シリーズ第二弾。
明らかな特異点持ちである。22号改4を初期から保持。
作中で描かれなかった2日の間に着任した一人目で横須賀防衛線が初陣。


艦娘ファイルNo.17

特Ⅲ(暁)型駆逐艦 雷改

装備1:10cm連装高角砲
装備2:10cm連装高角砲
装備3:33号対水上電探

元々は特異点なんてないただの艦娘だったはずが、改装したら化けた感じの艦娘。
改装後装備で長10cm高角砲2つと33号電探を持ってきてしまった。羽黒同様描かれなかった2日の間に着任、そこから更に叩き上げで鍛えられた艦娘で、初陣は横須賀防衛線前日の哨戒任務中に、浦賀水道で発生した硫黄島艦隊偵察部隊との遭遇戦。


艦娘ファイルNo.18

初春型駆逐艦 初春

装備1:12.7cm連装砲
装備2:61cm3連装魚雷

初春型ネームシップ、後に第3遠征部隊旗艦となる。
大局を見ることに長けており、軍師としての才能も無きにしも非ず。
ちょっと態度がでかい。


艦娘ファイルNo.19

高雄型重巡洋艦 摩耶改2

装備1:20.3cm(3号)連装砲
装備2:20.3cm(2号)連装砲
装備3:3式弾
装備4:94式高射装置

作者が防巡(防空巡洋艦)摩耶様と呼んで重用する特異点持ち防空重巡洋艦。
主力となる第1水上打撃群を守る防空艦としての役割を確立し、横須賀防衛戦以後直衛艦として所属し続けることとなる。
所属してこのかた直人のことを慕っており、彼の言うことであれば素直に聞く模様。なお妄想癖がある。


司令部ゲストメンバーNo.1

深海棲戦艦 ル級改フラッグシップ「モンタナ」

司令部に来てからのあだ名は『局長』で、肩書は「横鎮近衛艦隊司令部技術局局長」。
理由は不明だが、なぜかモノ作りの楽しさに目覚め、技術の探求という名目で直人に協力する。
深海の技術を数多く持ち、時を経て超兵器に対抗できるレベルの兵器の開発ができたりする様になっていく。深海の思想に疑問を持ち、深海の変革を試みた過去がある。


司令部ゲストメンバーNo.2

シュトルムヴィント型超兵器級深海棲巡洋戦艦 ワールウィンド

直人がゲストとして招いた超兵器級深海棲艦。
局長の下で戦っていた艦で、ワールウィンドタイプのオリジナル。
上位知能体に該当し、流暢に言語を話す。性格は普段はクールなものの、その実はかなり不安定だったりする。
左右2つの船体型艤装が飛行場姫の滑走路と同じ形で繋がっており、背中側には推進ノズルが取り付けられた武装を使用する。


深海棲艦艦級紹介


シュトルムヴィント型超兵器級深海棲巡洋戦艦

HP:260 火力:122 対空:63 装甲:136 射程:長

装備:14inch3連装砲 対空/対艦ミサイル発射器(副砲/対空砲) 22inch誘導魚雷 電探

肩書は「超高速巡洋戦艦」。ドイツ語で暴風を意味する艦名を持つシュトルムヴィントをネームシップとする超兵器級。
超兵器級は勿論のこと、他の深海棲艦や艦娘に至って見渡してもなお群を抜く高速性能を誇り、その速力は75ノットから80ノットにも達する為、艦娘での追撃は実質不可能といっても過言ではない。しかも急加減速制御能力を持ち、それを駆使した機動性は圧倒的と呼ばざるを得ない。
兵装に関しては特に目を見張る物がある訳ではないが、誘導魚雷とミサイルは、相手によっては十分脅威たり得る。
しかし装甲などの防御能力に関しては、巡洋戦艦である特性上脆いと言わざるを得ず、高速性能を重視したツケが一気に回ってきた形になる。
同型艦として、ヴィルベルヴィント(2番艦 独語でつむじ風の意)、ヴィントシュトース(3番艦 独語で突風の意)、ワールウィンド(4番艦 米語でつむじ風を意味する単語のカタカナ表記)が存在する。
ワールウィンドは2・3番艦で改良を重ねてきたシュトルムヴィントの最終改良型で、防御面での問題が改善されており、武装もそれなりに改良されている。


直人の使用した兵器についての解説


30cm速射砲「ハルコンネン」

全長2.13m 最大幅17.43cm 最大高37.10cm 全備重量5.21トン(ウラズィーミル除く) セミオートリロード方式

門数:2 最大射程:4km 弾種:対空榴散弾、爆裂徹甲弾、徹甲焼夷弾、焼夷榴弾他 弾数:1門当たり弾倉内3700発、銃内臓マガシン1門当たり69発 貫通力:爆裂徹甲焼夷弾にて2km先の160mm戦車用複合装甲を貫通、爆砕可 爆裂徹甲弾では290mm、鋼板に撃った場合340mmまで貫通可

直人が図面を引き明石さんが作り上げた師玉の逸品。2mを超す長大な砲身を持った2門の砲と、背負い式に装備する大型弾倉、後述する広域制圧用巨大擲弾「ウラズィーミル」からなる大型の兵装。艦娘も扱えるよう艤装の規格で作られている為、扱える艦がいなくはない。
様々な砲弾を揃えているが、持っていけるのは基本的に2種、どんなに無理をしても4種までであり、直人は対空射撃用に榴散弾を銃内臓弾倉に入れていることが多く、背中に背負った大型弾倉の中身は相手によって種類を変えるそうです。
通常艦であれば貫通力も破壊力も揃った爆裂徹甲焼夷弾を使用するのが本人のお気に入り。
ル級の様な戦艦クラスはもとより、弾種を変えれば泊地クラスをも手玉に取ることが出来るほどの火力を誇り、殆どの超兵器相手にも十二分に通用する威力を持つ。ワールウィンドに弾かれていたのは、超兵器がいる事を想定せず爆裂徹甲焼夷弾を使用した為で、爆裂徹甲弾であれば容易く貫通出来ていた。
その銃口初速は、爆裂徹甲弾で1092m/sという高初速を誇る。


広域制圧用巨大擲弾「ウラズィーミル」

全長54cm 直径42cm 重量1260kg

弾種:炸裂気化弾頭 最大射程:2.5km(大気条件に依存) 直接効果半径:800m 危害半径:1300m

 対深海棲艦用に設計された最強の擲弾で、燃料気化爆弾と榴弾を合わせた兵器。
 普通に飛ばしたところでその飛距離は100mがせいぜいである為、弾頭の後尾にロケットブースターが装着され、これにより飛距離を稼ぐ仕組みになっている。
2052年の段階で考えられる最高ランクの爆薬が使われており、その威力は折り紙付きである。
 またこの擲弾は近接信管を搭載しているため、水面着弾では爆発せず、標的を探知した時のみ着発される特徴を持つ為、戦略兵器としての配慮は一切除かれ、専ら戦術兵器として用いる事になる。
 弾体内の爆薬は3層構造になっており、外側から特殊サーモバリック爆薬「G326」、G326散布用の濃縮CL-20(ヘキサニトロヘキサアザイソウルチタン)、超高性能爆薬TAIW(トリアミノアザイソウルチタン)で構成され、実に弾体重量の内1200㎏を占める爆薬の比率は、G326:52% 濃縮CL-20:3% TAIW:45%となっており、この3つは3重の筒の中に装薬されそれぞれが隔離されている。

爆発のプロセスとしては、

1.近接信管で目標を探知した弾頭は、まず2層目の濃縮CL-20を撃発し、G326を高速で広範囲に散布、この時ちょうど半径350m付近が最もこの爆薬の濃度が濃い地帯になる。また同時にCL-20の爆圧でTAIWを撃発し爆発を誘発させる。

2.TAIWの絶大な破壊力を持った大爆発と共に散布したG326に着火、これが気化爆発と蒸気雲爆発を同時に起こし、周囲から酸素を奪い去って激しく燃え上がる。

というこの2段に分けられる。

その効果圏内の外側でも、爆発によって生じた超高温爆風が爆発の凄まじい衝撃波によって加速され、衝撃波の消滅する爆心から1300m圏内に存在する物体は尽く炎上ないし溶解、また1000m圏内ではG326によって発生するCO(一酸化炭素)を多量に含むガスを伴う爆風により急性無気肺と一酸化炭素中毒と酸素分圧の低下によって複合窒息を引き起こさせる。
G326はサーモバリック爆薬に特殊調合した液体燃料と濃縮したニトログリセリンを調合したもので、1次爆発で霧状に散布され点火、その最高温度はこの爆薬の最高濃度半径350mで、一瞬だけとはいえ数千万℃に到達し、最大効果半径の800m付近ですら1500万℃を記録する場合がある。


対深海棲艦用霊力刀「極光」

刀身長1.31m 刀身幅3.41cm 刀身厚3.8mm 重量3.72㎏

明石謹製の打刀。ル級が左腕に持っているほうの艤装で作られたもので、正の霊力を纏っている。初めは些か強度不足の節もあり、また技術不足から霊力も弱く、大きな威力を発揮し得るとは言い切れなかった。
しかし横須賀防衛戦後に新たに加わった局長の手により鍛え直された結果、霊力量が増大し更に極光自身の霊力が直人の霊力と共鳴、深海棲艦に絶大な威力をもたらすようになった。また唯一の問題であった強度も改善され、至高の逸品と呼ぶに相応しい出来になった。

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