~クロア視点~
ここは、家の前か。
あの後何があったのかあまり覚えていないが、ただ流されるようにぼんやりしたまま帰ったと思う。
ルーは話しかけてこないが、今は話す気になれない、正直助かる。
ただ、その中でもただ一つの疑問、『私はだれ』という言葉はずっと頭をめぐっている。
鍵を開け、蚊の鳴くような声で「ただいま」とつぶやくとそのまま書斎に向かう。
が、本を読もう、という気にはなれない。
当たり前だ、私は読書好きなクロアではない。だが紙とインクのにおいは私の心を落ち着かせた。
本棚に寄りかかって床に直に座ってぼんやりとしていると、私の母の父、つまり母方の祖父(ルー曰く)が心配したように、腫れ物に触るように遠慮した声が聞こえてくるが、反応を返す気にはなれない。
(代わってくれませんか?少し考え事をしたいので)
とりあえず、一人で考え事をしたくて、身体の事をルーに任せようと声をかける。
<あ、その....私には日常生活を行うにあたってかなり致命的な欠陥を抱えててね、本当ならクロアの頼みなら喜んで代わりたいんだけど、ほんとごめん、今は無理なんだ>
本当なのだろうか....いやルーが味方をしているのはクロアだ、私には協力してくれなくても仕方ない事なのかもしれない。
私はこの身体からすれば不必要なもの、それでも居させてもらっているのだから、それくらいしないわけにはいかないだろう。
考える時間ならいくらでもある。なら私はゆっくりと探せばいい、
どうすればこの身体から私を消せるのかを
______________
~クロア視点~
書斎の本は数日で読み終わってしまった。
大体の本は読んだ記憶はなくとも、本の中身は頭の中にあった。
おそらく記憶を失う前の知識だろうが、どの本を読んだか分からないのに、中身は分かるのだ、なかなか厄介だったが、すべて確認し終わったが
人格を消滅、排出する方法についたはなかった、まるで意図的に抜き取られたかのように抜けていた。
後は、ホグワーツから手紙が来た。中身は次の学年で必要なモノが書かれていた。
ちょうどいい、書店に行けば何かヒントがあるかもしれない、そう思い
次の学年で必要なモノを買いに行くついでに書店に向かうことにした。
あれからそれなりに時間がたっているので、疑問は消えずとも落ち着いた。
事務的に祖父に外出する旨を告げると、白い半袖のシャツに黒の半パン姿で家を出る。
この家には暖炉などなかった、一応あまり遠くでは無いし、公共機関に祖父のお金を使うのはためらわれるので、徒歩で向かう。
私は地理に関する記憶は失っていないはずだが、周りはどこも新鮮だった。
.......私は引きこもりだったのだろうか。
周りをキョロキョロと見まわしながら歩いていると、ダイアゴン横丁に着いた。
ダイアゴン横丁の出入り口である漏れ鍋という店を出て、目的の店を探す。
まず服....は買う必要はないかな。なぜか目から汗が出てきた。
なら教材を買うために、と書店に向かう。
書店ってどこだ、そもそもこの場所の記憶があいまいだ、見たことはあるはずなのだが、あまり思い出せない。
まあ探せばいいか。
いろんな店があるし、ほとんど忘れている私には新鮮だ、そうそう飽きはしないだろう。
と思っていたが、なかなか見つからない、周りの景色に飽きてきた頭を巡るのは一つの疑問だった。
考えれば考え出すほど、気分が落ち込んでくる。
あれから私をこの身体から消す方法と同時に私はだれ、ということについてもずっと考えてはいるが、答えは出ない。
私自身の事をだれも肯定はしてくれない、否定もされないが、それは認められてすらいない、ということなのだろうか。
目頭が熱くなってきて、書店を探す、という気分でもなくなって、涙をこらえるために俯いたまま座れる場所を探す。
だが、座れるところを探していようが、思考だけはお構いなしに回り続ける。
誰かに認めてほしい、否定でもいいから誰かから私という存在自体を認識してほしかった。
だって、そうじゃないと、私は、一人だ。
だって、一人は、さみ「わっ、す、すいません」
俯いて考え込んでいたら、頭に衝撃が走る、誰かにぶつかったようだ、
とっさに頭をあげ、謝る。
目の前にいたのは青白い顔にとがった顎を持つ特徴的な男の子だった。
「ああいや別にい....っておまえあの時ハリー達とい....な、なんで泣いてるんだ?」
誰だろう、分からない、だって私はこの人の知っている人とはきっと別の人で....
この人の瞳に映るのはきっと私じゃなくて....
「ううっ....」
嫌だ、考えたくない、でも考えるのをやめたら誰が私の事を認識してくれる、私が私の事を考えなくなったら、だれが私を見る?
「お、おい、どうしたんだよ、ほ、ほら泣き止んでくれ、僕が泣かした見たいだろ」
「....ごめんなさい」
涙をぽろぽろとこぼしながら謝る、
何かをしている時は考えなくて済む幸せな時間だった。
「どうしたんだ、こんなところで一人で」
『一人』という部分がどこか強調されている気がして、また涙がこみ上げてくる。
俯いて、嗚咽をこらえていると、頭に暖かいものが置かれる。
なんだろうと思ったが、すぐにそれが動き出して何か気づく。
頭をなでられているのだろう、揺れていた心が落ち着いていくのが分かる。
「......ありがとうございます、だいぶ落ち着きました」
「ああ、いやいいんだ、それで、なんで泣いてたんだ?」
「えっと、そのちょっと悩み事があって....そ、それとは別なんですが、書店ってどこにあるか分かりますか?」
「ん、本当にいいのか?すごい悩んでるみたいだけど、辛かったら言えよ、誰かに話すだけでも楽になるからな」
「分かりました、辛くなったらまた頼らせてください。
あの、変な質問してもいいですか?
私って、誰ですか?」
返事を待たずに質問を投げかける。この人ならもしかしたら....
「おまえか?おまえは....おまえだろ、ダイアゴン横丁で泣いてた女の子」
この人は、
私を私って、
見てくれている。
客観的に見れば普通なのかもしれないが。
私はそのことがたまらなく嬉しくて、また涙が出てくる。
この人が初めて私を見てくれた人....
「ありがとうございます。私は、もう大丈夫です、私の悩みを解決できました」
~ドラコ視点~
「ありがとうございます。私は、もう大丈夫です、私の悩みを解決できました」
目の前で少しぎこちないながらも笑う少女を見て、少し安心した。
はじめて会ったのはかなり前だが、その時はあまり話してもなかったから分からなかったが、こうしてあってみると、第一印象はとんでもなく小さい、同い年とは思えない、うつむいていたこともあるのだろうが。
そして、壊れそうな顔で泣いていた。
なんというか、直感でこのままではまずいと思ってしまった。これがハリーどもならそうはならないんだろうが、同い年というより護る対象にしか見えなくて、つい優しく接したが、この笑顔を見ていると、これでよかったんだな、って思える。
ぎこちなくても、屈託のないこの笑顔で見られるのが気恥ずかしくて
「じゃあ、書店に行くか」
と言い、目を逸らすために手を引いて二人で書店に向かう。
身長のせいで歩幅が違うので、遅めに歩く。
書店ではすさまじい人だかりができていた。サイン会?が行われているらしい。なにより驚いたのはその中心にハリーが整った顔の青年の隣にいたことだ。
中心から逃げるように移動したハリーを煽ってやろうと、僕が移動すると、後ろの少女が小走りで付いてくる。
そこでふと思い
「そういえばお前の名前、なんて言うんだ?」
~クロア視点~
「私....ですか。私はクロアです。ファミリーネームはありません」
クロアと名乗ってもいいのか少し悩んだが、別の名前があるわけでもなくこの身体の持ち主の名前を言う。
「クロアか。僕の名前はドラコ・マルフォイだ、よろしくな」
「はい、こちらこそよろしくお願いします」
そう言うと、ドラコは私の手を取ると、移動を再開した....あれはハリーだろうか
「サイン会はもういいのかい、英雄様?」
と心底楽しそうな様子でドラコが言う。とても活き活きとしている、彼にとっては本当に楽しくてたまらないのだろう、私はその真っ直ぐな笑顔がうらやましかった。
「もう勘弁してく......クロア?なんでそこに....」
ハリーに事情を説明しようと口を開きかけた時にドラコにひかれていた手が大きく揺れ、うめき声が聞こえる。
「何してるんだ、マルフォイ‼」
「もう大丈夫よ、クロア」
後ろから二人の声が聞こえる。
ロンがドラコを殴り飛ばし、ハーマイオニーが私の手を引っ張って、ドラコから引きはがす。
何が起こったかを理解した私は、ハーマイオニーを引きはがし頭を押さえているドラコのもとへ走る。
「大丈夫ですか?」
「あ、ああ、大丈夫だ。それよりお前ら、自分が何したか分かってるのか?」
「クロア!?何やってるんだ、そいつはマルフォイだぞ!」
「そうです、ただ一人だけ私を助けてくれたドラコです」
語尾を強く言い切るように、そう言うと、三人は目を丸くしていた。
なんなんだ、こいつらは、
私を助けなかったくせに、私が誰にも見てもらえなくて、孤独の沼に落ちようって時に何もしてくれなかったくせに、私を唯一救い出してくれたドラコに対し暴力をふるって、挙句の果てには私を助けるだって?
一体何がしたいんだ。
「私の息子に何の用だ、ウィーズリー共」
低く渋い声が広がる。見ると、長身の男性がこちらに向かって歩み寄ってきていた。
私の息子、と言っていることからドラコの父親だろうか。
「な、なんだよ。おいクロア!なんでそんな奴のとこにいるんだ。
ドラコになんかされてるんじゃないのか!?」
「そこの暴力眼鏡より百倍良い人です、それに、私を見てくれました。
それだけで....それだけが欲しかった、
なのに!どうして!なんで!誰も私を見てくれなかった‼
記憶が無くなったからって、私を見ない‼誰にも認めてもらえなかった‼
私は、私は記憶が無くてもここにいます‼例え私がクロアではなくても、私は私です‼
なのに!あなたたちが見てたのは私じゃなくてクロアでした。
わたしはっ、わたしは....わたしなのに........
私は、私のやりたいようにやります、クロアなんて関係ありません。
私は、私を助けてくれた人を頼ります」
そう言い切ると彼らは、私に失望したような眼を向けてくる。先に失望させたのはそっちだ、知ったことじゃない。
ドラコ父は、私の方を見て、ニヤリと笑うと、
「だ、そうだが?もう一度聞こう、私の息子に何の用だ」
「わ、私たちは、ただクロアを助けようと....」
「誘拐、の間違いではないかな?」
客観的に見たら、ドラコと歩いていた私をドラコを殴り飛ばして連れ去ったように見えるだろう。
押し黙る彼らに、ドラコ父が歩み寄り、ロンに杖を向ける。
「私の息子に何か言うことがあるのではないかね?ウィーズリー」
「う、クロア!見損なったぞ、裏切るのか!」
未だに私がクロアであることを望むのか、気持ち悪い。
本当にイヤになる。
「何してる‼」
突如第三者の声がしたと思ったら、ドラコ父が床にしりもちをついていた。
髪の色がロンと同じ大人の男性(おそらくロン父)が拳を突き出したまま息を荒げながら、ドラコ父を睨みつけている。
「邪魔をするな、アーサー。先に手を出したのはそっちだ」
立ちながら杖を、推定ロン父に向け、冷静に睨みつけながら言う。
「うるさいぞ、だからと言って杖を向ける理由にはならん。」
「何も魔法を使ったわけではない、ただこいつに謝ってもらおうとしただけだ」
「魔法を使わなければいいというわけではない!そんな事も分からんのか」
「なに?こちらこそ言わせてもらうが、その発言こそ息子を守る、という範疇を超えた発言だぞ、それではただの愚弄だ」
「うるさいぞ、やるのか!?」
「そちらこそ、やるつもりかね?」
結局二人は両者の奥さんが出るまで殴り合いの喧嘩を続けた。本当に魔法使いなのだろうか?
どちらもまだまだやり足りない、と言った顔だが奥さんが怖いのか、手を出しはしない。
ロン父が捨て台詞を吐きながら、帰っていく。
彼らの背中を見ていると、ハーマイオニーが振り返り
「クロアー!、ごめんね、あなたの悩みに気づいてあげられなくて!
それから、ごめん、ルー、あとは任せる!」
と叫ぶが、言い終わる前に私は書店に入る。
教材と人格、精神や、ゴースト関連の本をいくつか買うと、書店を出る。
ドラコ達とはここでお別れだ、私は漏れ鍋、彼らは暖炉を使って帰る。
「ありがとうございます。いろいろと吹っ切れました」
と頭を下げ、お礼を言う。
「いや、いいさ、僕もさすがにあんな顔してたら無視できないしね。
それに、クロアはそうやって笑ってるほうがいいよ」
笑ってる....笑ってるのだろうか、頬に手を当ててみると、少し上がっている気がする。だとしたらそれはたぶん、
「たぶん、あなたのおかげです」
もう一度頭を下げると、彼とは別の帰り道を通る。
「また、ホグワーツで合いましょう」
「ああ」
すこしだけ、ホグワーツが楽しみになった。
~ルー視点~
懐かしい、まるで過去のクロアを見てるみたいだ。
いや、あの頃よりかなりいい状態だ。
事実、嬉しい誤算があった。
うん、クロアなら大丈夫だろう。
ハーマイオニーは私に任せたが、その必要はないだろう。
きっと、このこなら問題無い。
そしていつか、たどり着くだろう、
今度こそ『本当の答え』に
そしてその時こそ私は....
クロア チョロイン
ルー 保護者系傍観者少女ルー
ハリーズ まあ、前のクロアと一年過ごしてたのに、記憶が無くなったのをすぐに受け入れろって言われても難しいよね
ドラコ うん、まあ当然の感想だね
ドラコ父 ルシウス・マルフォイ ホグワーツに強い権力を持つ
ロン父 アーサー・ウィーズリー マルフォイ家とは犬猿の仲
ウィーズリー ロンのファミリーネーム
クロアから見たハリー達 ドラコの敵
クロアから見たドラコ 頼れる人 恩人
読書 ネオクロアは自身を身体から消すための手段を探すために読んでます。
予定よりなかなか早くクロアの悩みを解決してしまった、細かく構想を詰めないとこうなるね
あ、恋愛は無いですよ。
別に経験が無いから書けないわけじゃないよ。