この物語が今までで8万文字、たまげたなあ。
~クロア視点~
あれから数か月たち、あと一か月ほどで期末試験だ。
ロン達とは変わらず、避けられるし、私も避けている。
そして、もう少しで試験なのもあり、ホグワーツをふらふらと散歩する人はあまりいない。
今年はルーが代わりに実技をしてくれるらしいので、去年ほど勉強をする必要はない。
杖は私を認識しないくせにルーは認識するのだ、理由を聞いてみても、もちろん教えてはくれなかった。
別に私はハーマイオニーと違い、高得点を狙うわけではない。
ただ落第しなければいいか、程度の認識だ。
そんなわけで、私は絶賛ホグワーツを散歩している。
そんな中、視界の端に小さな黒いモノが映る
「あれ?あの本、どこかで....」
古臭い見た目に真っ黒な本。
どこかで聞いた気がする。好奇心から、本を手に取って、開いてみる。
何も書かれていない。何も書かれていないのにこんなに古ぼけているのか?
そもそも何も書かれてないのに古ぼけた見た目の本、
なんて特徴がある本なんて一度聞いたら忘れなさそうなものだが。
まあいいや、落とし物ならどこかに届けたほうがいいのかもしれないし。
いや、ハーマイオニーならこれが何か知ってるかな?
これが何か分からないと私もモヤモヤするし、今度会った時に聞いてみよう。
<ねえ、その本、何?>
びっくりした、あの時から全く話しかけてこなかったから、とても久しぶりな気がする。
(廊下に落ちてました。たぶん、誰かの落とし物ですね、気になるので、これが何か分かるまで持っておこうと思いました。あ、ルーはこれが何か分かります?)
<いや、でも、なんていうか、その、汚い?感じがする>
汚い?いや、確かに古臭いし、見方によっては汚いのか?
(どういう風に、ですか?)
<んーと、赤黒い?穢れ?そんな感じかな>
よく分からない。感覚的な話だろうか。
(別に害がある、という訳ではないのですよね)
<大丈夫、もし害があっても護るから>
そういう訳じゃないのだが、
<でも、やっぱり気持ち悪いから、早く捨てるに越したことは無いと思う>
(分かりました。一応頭には留めておきます)
まあ、よくわからない理由だし今すぐ止める理由にはなるまい。
______________
~クロア視点~
部屋に戻ったが、こちらに脇目も振らず勉強に
なかなか話しかけることができない。結局次にハーマイオニーが休憩したときに聞こうとして、そのまま夜が訪れた。
「ハーマイオニー、今いいですか?」
そして、休憩の代わり、と言わんばかりに、目をつむって瞑想を始めたハーマイオニーにおずおずと話しかける。
「ん、なに?」
「えっと、これなのですが、今朝、廊下で拾ったもので、何か分かりますか?」
古ぼけた本を見せる。
「これは....ほら、前に話したじゃない、会話ができる日記よ」
これが?そもそもどうやって会話をするのだろうか。
「これが....会話を?」
「ええ、ちょっと見せて」
ハーマイオニーに日記を渡すと、何やら書き込みだした。
「ほら」
そういい、私に日記を差し出してくる。
日記の空いたページを見ていると、文字が浮かび上がってくる。
『あなたは誰ですか?』
私への皮肉のつもりだろうか、私だって知りたい。
とにかく会話のやり方は分かった、本に書き込むと、返信が来るのだろう。
『私はクロアです』
そう書くと、
『あれ?君って、もしかして......』
なんだろう、何かが..おかしい気がする。身体に違和感がある。
<クロアっ、それを捨てて、早く‼>
そう言われ、ハッとして日記を放り投げるが、手遅れだ、身体から違和感は拭えない。
「クロア?」
ハーマイオニーが私を不思議そうに見ている。
「よく聞いて、クロアもね、その日記を壊す方法を探してきて、今すぐに」
そう、少しの間、入れ替わったルーがそう言う。
「ハーマイオニーはどうしますか?私は言われた通りこれを壊す方法を探します。どうせ暇ですし」
ハーマイオニーは少し悩む素振りを見せて、
「クロア、何があったの?」
「私も分かりませんが、日記を持ってから、身体に違和感があります。
それに、ルーが相当焦ってました。たぶんそれなりにまずいのだと思います。」
「分かったわ、私も手伝うわ」
「ありがとうございます」
さて、どうしようか、マクゴナガル先生あたりに聞こうか。
~ルー視点~
くそっ、油断してた。
今まで順調だったせいで、完全に気が抜けていた。
これは不味いことになった。私のせいだ、あの時有無を言わさずこの日記を捨てておくべきだった。
私は、私の精神の中で、私の目の前に立つ赤黒い靄のような存在から、
クロアの身体、いや、ここだとクロアの精神体か、を隠すように間に立つ。
「あなたは何?」
クロア達が日記を壊すまでの時間稼ぎだ。質問を投げかける。
『僕は、君が何なのか気になるな』
脳に直接響くような中性的な声がする。
「まあいいや、なら何の目的?」
『いや、たぶん僕なら、
隙間?まさかこいつ....私たちの身体を乗っ取ろうと......
「あなたが私たちの身体の中に入れたのは、あなたも私たち同様精神体だから、違う?」
『ああ、そうだよ、それからもう一つ言うなら、精神体だからと言って、普通は人の身体にホイホイ入れはしないさ』
「あなたがいるのは、あなたがさっき言ってた私たちの隙間、それがあるから、だよね?」
くそ、まさか私たちの中に入れる奴がいるとは思わなかった。
だが、時間稼ぎなら、こいつがいる以上この空間を自由に操作はできなくとも、
私の魔法があればいくらでも時間稼ぎができる。特に、現実ならともかく、この空間なら実質無限に稼げる。
その間にクロア達が日記を壊せば、こいつはここに精神体を維持することはできないだろう。
万が一は、まあ私の唯一の欠陥がバレることかもしれないが、今のところ大丈夫だ。
私は、右手を上げ、全体の髪のうち、
「『セパレーション』」
私が、私の後悔の証たる魔法を行使すると、後ろにいるクロアの精神体ごと膜で覆う。
「あきらめて、私たちの身体と、クロアは私が護るって決めてるの、絶対に渡さないよ」
陽炎のように歪んだ膜の奥で、靄がこちらに近づいて、膜に触れる。
『これは....
「へえ、物知りだね」
『ああ、僕は確かに物知りさ、だって僕は、
な、え?なんで......
「いや、違うな、知ってるんじゃない、今、
開心術、ってしってるかい?」
私に開心術!?
「そう、意外かな、僕は開心術の天才だ、君も閉心術が得意....いや、君も才能みたいだね
でも、僕はそれを上回る才能があった、ってことだね」
マズイ、それはイコール私が機能しなくなる。
マズイ、マズイ、マズイ
「そう、マズイね」
そう言う膜の外の靄は、だんだん形を持っていく。
マズイマズイマズイマズイ
「やあ、これが本来の僕の姿だ」
頭をよぎるのはあの頃の記憶
「ああああ、あ、あ、や、やめて、いや!」
「そう、君にとっては苦痛でしかないだろうね、なにせ押し付けたはずなのに、いつの間にか帰ってきたモノだ」
ダメだ、気をしっかり保て、顔の右半分を覆うこの手だけは離したらダメだ。
立てなくて、床に膝から崩れ落ちる。
「意志の魔法はその名の通り意志の力を魔法の力を源とする魔法だ、なら僕がするのは君の意志を削ぐことだ」
「い....ああ....だ......めて...........」
ダメだ、考えるな、想像するな、今目の前にいるのは、靄だ、さっきのまま変わってなどいない。
私の耳に届く声が男性の声に聞こえるのは気のせいだ、そう言い聞かせる。
「ふっ」
膜の外の少年は、自分の右手に作った手の平に、左手で拳を作って、殴る。
パン!
「ああああああああ、やだぁ、もうやめてよぉ、私が悪かったからぁ」
身体中に激痛が走る、殴られて等無いはずなのに.....
もうヤダ、何も考えたくない。
ナニもナニも......................
~クロア視点~
「ルー?」
なんだろう、とんでもなく嫌な予感がする。
「ハーマイオニー、日記を任せてもいいですか?」
「ええ、任せて、あなたもルーの事をよろしくね」
口にしなくても何をするのか分かったのだろうか。
頷くと、壁に寄りかかって座り、意識を集中するのは、
いつだったか入ったルーの精神の中だ。
「いやあああああああああああああああああ」
唐突に私の声がしてハッとする。入れたか?
声の主を探して、
居た。足元で床にうずくまったまま悲鳴を上げている。
ルーか?私と
周りを見て、膜がある。
もう一度ルーを見て気づく。ここまで取り乱してなお、右手はルーの顔の右半分に置かれている
いや、床に投げ出された右手に押し付けているようにも見える。
「ルー‼大丈夫ですか、落ち着いて下さ..................」
ルーに駆け寄り、右手同様投げ出された左手に触れたところで、私の中に何かが溶け出してくる。
これは......わたしの記憶?なぜ今?ルーに触れたからか?
それより........ああ、そういうことか、やっと溶け出してきた記憶を整理し終わった。
だからルーはさっきから取り乱しているのか。
いや、何かおかしい、よく考えろ....いまさっき溶け出してきたのは........記憶?
それも私とルーの分もだ。
ということは....ああ、それはマズイな。
「ルー、しっかりしてください、もう大丈夫でしょう?」
くそ、本当に........厄介なことになった。
「え....ク..ロア?何でここに........」
顔の右半分を押さえたままこちらを見るルーを見返しながら、
「ルー、あなたを護りに来ました」
「え、なんであなたがわた........あ....うそ、うそ..でしょ?」
「これが嘘だったらどれほどいいでしょうね、本当に」
「は、はは、あはは、私は....
「はい、そうですよ。あなたはやっぱり使えませんね、あの頃から変わらない
さて、後悔はもういいでしょう。まずは目先の問題を処理しましょう」
「ごめんね、本当に」
「いったでしょう、後悔はもういいです。それに、私はあなたを護りに来た、と言ったと思いますが」
「あはは、そうだね、まずはこいつだ」
私とルーは陽炎の様にぶれた先にいる少年を二人で見据える。
「できるのかい?せいぜい共有した程度で、心の奥深くに根付いた
「ちがうよ、そうじゃない。意志の魔法、護るべき対象がすぐ近くにいるのに弱くなるわけないじゃん」
「そういうことです、諦めてください」
「ふーん、なら確かめてやるよ、その意志の力、とやらを」
そういうと膜の奥で、少年の姿がブレて、
「開心術ですか?」
「そうみたいだね」
おそらく私もルーも精一杯の虚勢だろう。
だって、この姿は......
<こいつが誰か分かる?>
頭にルーの声が響く、ここでもそうやって会話できたのか。
(はい、分かりますよ。マズイ、ですよね)
ルーが左手で私の右手を握る。
頭をよぎるのは、
唇を噛んで、できるだけ意識をしっかりと保つ。
隣ではルーがすでに座り込んでいた。
「姿を見せただけでそれか?」
これも聞き覚えのある声だ。
さっきからずっとトラウマを抉られ続けているルーにはきついだろう。
私でさえ片膝をつく。だが、ルーに向き直すと。
「ルー、しっかりしてください、私はあなたを全力で護りますが、私を護れるのはあなただけです」
ルーとつないだ右手からドズグロいモノが流れてくる。
これは....ルーの中で今生まれ続ける
ルーも、私にルーの負の感情が流れて行っているのに気づいたのか、その光を映さない真っ黒な両目に理性の色が灯る。
「ごめんね、クロア、あなたに
「その代わり、あなたは私を護ってください、ハーマイオニーに日記は渡してあるので壊れるのも時間の問題のはずです」
そう、もう少しのはずだが....
「ふざけるなああああああああ」
「「ああああっ」」
ダメだ、まずい。ルーもそうだが、私も耐えられる気がしない。
思い出すなっ、クソ。思い出したらダメだ。
ルーの右手に私の額を押し付ける。
「お前のせいでっ、お前のせいでっ」
私の記憶と重なるそのセリフを引き金にさっきまで抑えていたはずの記憶が流れてくる。
ロープで結ばれた私の両手、痣だらけの身体、私を見る憎悪のこもった瞳、私に振り下ろされる拳、眼前に迫り来る足、
そして、身体中を包む激痛。
「ああああああああああああああああああああああ」
やだやだやだやだ
私を見る、いや、私に向けられた生気のない瞳、冷たい身体、腐った臭い、母だったナニカ、
そして、その隣で同じく死んだように転がる私。
もうやめてっ、これ以上見たくない、思い出したくない、これ以上....痛いのはイヤ
止むことのない私への暴力、いつしか私を吐き出して、そのまま心を閉ざしたもう一つの私。
突如止んだ私への暴力、空中で揺れ続ける私の両親の片割れの足。
数日後、私を引き取った祖父。
まともに接することができなかった。
祖父を見ると、いや
「はっ..はあ.....はあ........はあ..............はあ」
いつの間にか周りの景色が変わっていた。
........私は何を考えていた?
確か....ルーに触れた時に記憶が戻って....それで、
ルーから私に負の感情が流れてきて........
それで......思い出せない....なにか重要なことがあったはずだ。
何か....思い出せない、なんだ、何が思い出せない?
ダメだ、とりあえず今の記憶を整理しよう。
私はクロア、私の
それから、私は二重人格、記憶喪失後に名前を付けてルー、と言う名前のもう一つの人格を持っていたはずだ。
あとは....昔の事か、すべてを私に押し付けたルーに逆に押し付け返して....何をだ?
ここだ、私はルーに何を押し付け返したのだ。
分からない、ルーが何かしたのか?
ダメだ、疲れた。寮に帰ろう。
寝て起きてから、もう一度考えよう。
______________
~ルー視点~
「あああ、ああああああ、ああ」
私の右手を押さえていたクロアの額が外れ、そのまま私の右手が顔から外れる。
頭を巡っていた記憶を無理に投げ捨てて、もう一度魔法を使おうとして気づく。
いつの間にか、あいつはいなくなっていた。
ハーマイオニーがやってくれたのだろう。
足元で青い顔をして震えているクロアを見る。
今回のは私のミスだ。
私が油断したせいでクロアはもともとなかったはずの記憶まで取り戻した。
ならその責任は私がとるべきだろう。
これがあればクロアがまた、あの頃の様に普通に過ごせなくなってしまう。
私の右手を私の顔の右半分、左手をクロアの頭に当てると、
「『セパレーション』ごめんね、でもあなたを護るのは私だよ、
あなたは私に護られてくれるだけでいいの、そのくらい、私にさせて」
クロアから彼女に必要ない記憶を自分に押し付けると、クロアの震えが止まる。
これでいいのだ。これで....
クロア ついに記憶が戻りました。そして、その過去も明らかに。
ルー 前々から言われてたルーの欠陥、弱点が明らかになりましたね、男性恐怖症です。
日記 結局途中で壊された、というか書いてて思ったけど、ここで壊しちゃったら原作と大きくズレちゃうよね、まあいいや
謎の少年 い、いったい誰の少年時代の記憶なんだ!?
見覚えのある成人男性 クロアの父親です。
開心術 心を読みます。
閉心術 開心術に対抗する魔法です。
セパレーション 現実ならともかく、つまり現実では無限に使うことはできない。クロアの記憶を弄ったことから、単純な防御魔法ではない?
露骨な伏線 バレにくい伏線ってどうやって張るんや、これもう伏線じゃなくて単純にほのめかしてるだけやん
クロアとルーが触れたことで記憶が戻ったのは、二人の間にあった歪みのせいで出来た隙間に日記の中の精神体が入り込んで、隙間が疑似的に埋まったから、的な設定
秘密の部屋は単純にここと記憶喪失の最初のくだりは欲しかったけど、それ以外はどうでもいいからかなり短くなっちゃったな