~ロン視点~
「だったらどこにスキャバーズいったんだよ!」
「知らないわよ!あんたに愛想をつかして逃げて行ったんじゃな....
あれ?クロアは?」
そういえばいつの間にかいなくなってるが、今はそんなこと
「それが何だよ!そんなこと今はどうだっていいだろ!」
「何よそれ!?酷いこと言ってるとは思わないの?」
「酷い?スキャバーズはどうでもいいのにあいつの事はひどいのか!?」
「当り前よ!ネズミなら最悪野生でも何とかなるわ、でもクロアは違うじゃない!」
「なら探して来ればいいじゃないか!」
「ええ、そうさせてもらうわ。それから、私のクルックシャンクスは汚いネズミなんて食べないわ!」
そう言って、ハーマイオニーは去って行った。
過保護すぎるだろう、親でもないのに。
ため息をつくと、苛立ちを抑えるために、荒い足取りで、
僕もホグズミード村をぶらつく。
なんだ、思ったよりホグズミード村は小さいんだな。
パブに入って、そう思った。
あの机に突っ伏して寝ている背中はクロアだろう。
あののんきに眠るクロアの姿を見てると、ある感情が僕の中に生まれてくる。
苛立ちだ。
これは、ハーマイオニーの事での八つ当たりなのだろう。
マルフォイと仲良く接することが気に食わない、と言うのもある。だが
起きる様子のないクロアの肩を揺さぶって、強引に起こすと、正面に座る。
「んぅ....ロンですか、まだ眠いのですが」
ぼんやりとした顔で、僕にそう言うクロアは、今の僕にとって、苛立ちの原因でしかなかった。
「クロア、君は自分が何をしているのか分かっているのか?」
変わらず、ぼんやりとしたままのクロアは、首をかしげて....考えているのだろうか、ぼーっとしているようにしか見えない。
ああ、イライラする。
「君のせいで!僕はハーマイオニーを問い詰められなくなった!」
八つ当たりなのは分かっていても、止める気にはなれない。
怒鳴ると、クロアは、ようやく、その目に理性が灯る。
「..それは、ネズミの話ですか?」
いつも通り、不機嫌そうな顔で淡々と聞いてくる。
「ああそうだ、クルックシャンクスが食べたことは分かっているのに、君のせいで逃げられた!」
「ええと、どういうこと、ですか?」
少し、表情に怯えが混ざったクロアは、態度を変えずにそう聞いてくる。
強がっているのかは分からないが、やはり、その態度は僕を苛立たせる。
「うるさい!そうやって知らない振りしたって無駄だ!
どうせハーマイオニーと組んで急にいなくなったんだろ!」
つい、椅子から立ち上がり、そう怒鳴ってしまう。
周りの人が、こちらをチラチラと見ている。
頭に血が上っているのか、そんな周りの人にさえ、イライラしてくる。
とりあえず、周りの人の視線から逃げようと、クロアの手を引っ張って、店から出て、店の正面で、クロアに振り返る。
「ロ、ロン、離してください、痛いです」
「いいから答えろ!ハーマイオニーに協力した、そうなんだろ!」
ハーマイオニーのクルックシャンクスが僕のスキャバーズを食べたことは間違いない。
なら、理由は何だとしても、クルックシャンクスにやり返す理由さえ作ってしまえばいいだけだ。
そのために、クロアが、ハーマイオニーに協力した、そういうだけで、僕はクルックシャンクスに仕返しをすることができる。
ついでに、ハーマイオニーの数少ない友人を無くすことができるだろう。
なのに、
「ち、違います。それに、協力が何のことか分からないんです」
恐怖からか震えているクロアを見るだけで、
罪悪感が沸く自分にさえイライラする。
僕のスキャバーズに対する気持ちはそんなものなのか?
「いいからハーマイオニーに協力したって言え!」
「ロン、い、一旦..落ち着いてください。私だって....何のことを言っているのか分からないと、どうしようも無いじゃないですか」
そう、途切れ途切れになりながらも言うクロアに、なぜそうなりながらも言わないのか、鬱陶しく思いながら、
「うるさいっ!いいこぶってないで、さっさとハーマイオニーに協力したって言えよ‼」
と、店の壁を叩きながら怒鳴るが、
「もうやめてくださいっ」
目の前で、涙を流しながら、消え入りそうな声でそういう少女を見て、ハッと我に返る。
「....その....ごめん......」
嗚咽をこぼしながら、頷くクロア
冷静に戻った僕を強い自己嫌悪が襲う、後悔しても遅い。
「でも、僕はクルックシャンクスがスキャバーズを食べたと思ってる。
それで、僕は、ハーマイオニーともう一度話し合いたい。その時に冷静でいられるように、クロアに仲介してほしいんだ。
僕がこんな事言えないのは分かってる。でも、やっぱり僕は納得できない。
お願いだ、僕を助けてほしい」
なら、この先の事を考えよう。
「分かり、ました。私も、ロンとハーマイオニーが、険悪な雰囲気だと、気まずいですからね」
口ではそういうが、おそらく本心は僕の事を怖がっているのだろう。
僕を見ようとしないし、声がまだ震えている。
あの時も後悔したはずだったのになあ。
うん、これから頑張ればいいか、まだクロアとの関係が終わったわけじゃないんだし。
「ありがとう、それじゃ、ハーマイオニーを探しに行こうか。
彼女もクロアの事を探しているはずだ」
大通りに出ようとして、クロアの横を通りすぎた時、クロアが小さく悲鳴を上げ、一歩離れて、すぐに謝ってくる。
全部僕が悪いのだが、ちょっと傷ついた。
~クロア視点~
内心怯えながらも、ロンについて行く。
この恐怖はどこからきているのだろうか。
間違いなく記憶だろう。過去のトラウマの元となる。
なら、なぜそれが私の中にある?
ルーに聞いても隠された以上、ルーが関係している。
(ルー、なぜ私にトラウマが戻りかけているのですか?)
<ごめん、まだ言いたくない>
ダメ元で聞いても無駄か。でも、いつかは教えてくれるだろうし、
確かに困りはするが、もともと私のモノだったモノが帰って来ただけだ。
いずれ慣れるだろう。
ハーマイオニーには話しておくべきだろうか。
まあ、見つけてから考えればいいか。
「ハーマイオニー!」
急にロンの大きな声が聞こえて、びっくりする。
頭に浮かんだ記憶は、即座に頭を振って忘れる。
ロンの視線の先を見ると、ハーマイオニーが私たちの元へ走ってきているところだった。
「クロア!探したじゃない、急にいなくならないでよ」
口調は咎めているようだったが、顔がほころんでいて、怒っている様子はない。
「あの雰囲気の中では、さすがに逃げたくなりました」
ロンと二人きり、という状況から解放されることで、少しだけ気分が上がる。
「あっ、そうよ、ロン!スキャバーズ、いたわよ、列車の中に!」
うん、私は何のために、ロンに怒られたのか、
そもそも仲介なんてする必要が無かったのか....
ネズミをつまんで、ロンに嬉しそうに言うハーマイオニーを見ながら、ロンは呆然としている。
ハーマイオニーはロンにネズミを渡すと、私に向きなおる。
「クロア、これでも私は心配し....泣いてたの?」
私の顔....と言うか、目を見たハーマイオニーが聞いてくる。
「あ..い、いえ、大丈夫です」
「ロン、あなたね。説明して」
イヤな雰囲気になりそうで、
「あの、私は本当に大丈夫なので」
「クロア、あなたは最近いろいろとあったでしょう、心配なの。
それに、あなたにはルーがいるけど、私にしか出来ないこともあると思ってるの、
もっと言えば、私はあなた以外であなたの事を一番知ってると自負してるの、
だからこそ、あなたの事が気がかりなの」
「ハーマイオニー、全部僕が悪いんだ。
ハーマイオニーと喧嘩してて、イライラしてる時にクロアを見つけて、
当たり散らしちゃって....」
「ハーマイオニー、私はもう許してますので、あまり怒らないでやってください」
一応さっき、仲介を頼まれた身だ、関係が悪化しないような動きはしよう。
「クロア、本当に大丈夫なの、その....記憶の方も」
トラウマの事か?
「はい、大丈夫です。記憶の方は、ルーに聞いても隠されましたが、間違いなく徐々に戻ってきています」
たぶん、思い出そうと思えば、ある程度ぼんやりと思い出せるのだろう。思い出したくはないが。
「とりあえず、そろそろ暗くなりそうですし、ハリーのお土産でも買いに行きませんか?」
暗くなりつつある雰囲気を何とかしようと、そう提案する。
「そうね」「そ、そうだな」
私の意を汲んでくれたのか、ハーマイオニーもロンも同意してくれた。
私とハーマイオニーはお菓子、ロンは魔法具を買って、列車に乗り、帰り道をコンパートメントで過ごしていた。
「スキャバーズ..でしたっけ?見つかって良かったですね」
「ああ、こいつは僕が小さなころから一緒に居るからね、大切な家族だ」
ロンが小さいころから?一体このネズミは何歳なのだろうか。
ネズミをじっと見ていると、ロンに、
「食べるなよ、僕のだからな」
と、冗談を言われた。
いつの間にか、ロンと、それなりに仲良くなっていたが、やはり私は、ロンの顔を見ることができない。見ると、思い出すのだ、あの男の顔を。
そんなことを考えていると、頭に浮かびそうになり、頭を振り、その思考を消す。
今日はもう頭を振りすぎて、頭が痛くなってきた。
「そういえばクロアってよく頭を振ってるけど、何してるんだ?」
「あ..えっと、嫌なことを忘れようとしただけです、気にしないでください」
ハーマイオニーは何か言いたげに私を見ているが、視線で大丈夫だ、と伝えると、
しぶしぶ、と言った様子で、下がってくれた。
~ルー視点~
ついに確信できた。
なぜあの時、私が入れ替わらなかったことも、すべて繋がった。
私はもう嫌なのか、なら、もう決意を固めるしかないのだろう。
分かってはいても....
....嫌だよ..
..私は....
~クロア視点~
「ハリー、どうしたの?嬉しそうね」
ハリーは、私たちがホグズミード村に行く前は散々いじけておいて、いざ帰ってみれば、全然そんな雰囲気はない。
良い事ではあっても、頑張って慣れない言葉で励ました私は何だったのか。納得がいかない。
そんなハリーが、興奮冷めやらぬ様子で羊皮紙を私たちに見せてくる。
「その紙がどうかしたのか?」
見たところ、何も書かれてはいない様だが。
「ああ、よく見ててね。『われ、ここに誓う。われ、よからぬことをたくらむ者なり』」
と、ハリーが呪文のようなものをつぶやくと、羊皮紙は、地図の様な物が映し出された。
「なんですか?それ」
魔法具だろうか、興味が湧いてきた。
「これは忍びの地図って言ってね、ホグワーツの地図なんだけど。
ほら、こんな感じで、誰が
凄い物だ、分解してみたい。
「ハリーはそんなもの何処で見つけたのよ」
確かに疑問だ、ただの生徒であるハリーがそんなものを作れるはずがない。
「そ、それは..まあ、いいか。僕がホグズミード村に行けないって知った、ジョージとフレッドから貰ったんだ」
ジョージとフレッド、確かいたずら好きなロンの兄の双子だったはずだ。
私も、トラウマの元となる記憶が戻る前は、たまにいたずらをされていたが、
戻りつつある、今されたら、気絶しかねない。
「そうなのかい?なら、そのジョージとフレッドはどこから盗って来たんだろうね」
突然現れた後ろの気配からする男性の声、目の前が真っ白になる、次に浮かんだのは、ぼんやりとした、家?のような背景に、ハッキリとした
違う、これは記憶だ、頭を振って、消そうとしても、消えはしない
....記憶じゃない?
むしろ....今までの幸せな時間が夢?
嘘だ......私は..この苦痛をまた耐えなければならないのか?
無理だ、幸せを知ってしまった以上、私には......
若干、低めになった視点、痣だらけの私......
....もう、いいよね、今なら、ここから、
無知だった頃の私とは違い、今の私なら、
....もう、いいや、痛む身体に別れを....
ふと、腕にやけにハッキリとした痛みが走る。
「クロア!」
世界が戻ってきて、何があったのかに気づく。
気づけば、私は私の杖を、私自身に向けていた。
ハーマイオニーが、私の意識を戻してくれなかったら、私は何をしていた?
私は....死のうとしていたのか。
「あ..あああ、ごめんなさいっ、私は....」
そう、思うと、怖くなってくる。自分が自分じゃないみたいで、立ってられなくて、床に崩れ落ちる。
心配したハリー達が近づいてくるが、ハーマイオニーが、止めてくれた。
「クロア、落ち着いたら、いったん寮に戻りましょう」
無言で頷く。
______________
~クロア視点~
寮に戻った私達を、静寂が包む。
そのまま、少しの間そうしていたが、やがてハーマイオニーが、
「ルー?どういうこと、クロアに記憶が戻ってるじゃない」
責めるように、そう言った。
私の中に、ルーの気配はあるが、反応はない。
「だんまりみたいですね。ただ、そこまで問題では無いと思いますよ、記憶が完全に戻った訳では無いですし」
さっき、後ろにいたルーピン先生に声をかけられたときに、あまり明瞭に思い出すことは出来なかったのがその証拠だ。
「で、でも、クロアのあれは心配よ!」
ハーマイオニーは私を真剣な顔で見ながら言う。
「あれは、多分ですが、その前にあったロンとの事が原因だと思います。」
「ロンと何かあったのは知ってるわ。それで、精神的に弱ってたことが原因?」
「多分ですが、そうですね」
「そう....ごめんなさい、私がもっとしっかりしていれば....」
別にハーマイオニーは全く悪くはないと思うのだが、彼女は自分の行動に不満があったらしい。
「いえ、もともとは私が悪いんですから、私があれぐらい、抑えられるようになればいいだけです」
これは、別にハーマイオニーが自身を責めないため、とかじゃなく、本心からそう思っている。
いつまでもルーを頼っていてはいけないだろうから。
「でも....ってあれ?こいつって....スキャバーズ..よね」
ハーマイオニーがネズミをつまみながら、私に聞く。
「私の記憶が正しければ、そうだと思います」
「また逃げてるのね。私はロンにこいつを届けてくるわね、すぐ戻るから、大丈夫よ」
ハーマイオニーは、私を心配するように言うが、今は一人になりたくなかった。
「私も付いて行きたいです」
少しの間、考え込んでいたが、私から杖を没収すると、許可してくれた。
「なら、ロンを探しに行きましょうか。それから、私から離れないでよ」
「はい!」
ハーマイオニーは、私の手を握って、寮を出て行った。
ハーマイオニーが久しぶりに頼もしかった。
次回最終回
あ、忍びの地図は、すでにルーピン先生に没収されました。