パズル&ドラゴンズ~もうひとつの旅~   作:葉之和 駆刃

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第34話 質朴な天照大神〜プレイン・アマテラス〜(その参)

 ユウナは、企業の説明をききながら、必死にメモを取っていた。

 

 部屋に戻り、ユウナは今日のことを悠二郎に報告した。

 

「へぇ、いいやつじゃないか、彼」

 

 悠二郎は、大輝の話題にも友好的な表情を示した。それを見て、ユウナは悠二郎に尋ねてみた。

 

「あの、どう思ってるんですか、彼のこと」

「どうって……、そうだなあ」

 

 悠二郎は腕を組み、考えていた。

 

「でも、ユウナがどう思おうと、ユウナの夫は俺だから。俺も、彼に負けないくらい、強くならなくちゃな。そうでなきゃ、またあの時みたいに怒られちゃうよ」

「はい……」

 

 ユウナも、それをきいて笑顔で頷いた。もしもあの時、大輝が現れなかったら今頃二人は、夫婦としての生活を送れていないかもしれない。その分、今度は大輝にもいい出会いが訪れることを、ユウナは望んだ。

 

 

 一方、龍山大学のアニ研部室には、真宏が足を運んでいた。ここでは、SPの修復作業が密やかに行われていた。アニ研部員たちが、ウイルス対策ソフトなどをパソコンにインストールさせ、SPを修復していた。正彦が真宏に頼み、それを真宏がアニ研のメンバーにも手伝ってほしいと依頼したのだ。その部屋には四月一日(わたぬき)おし美、御薗(みその)(みこ)、そして、ユウナと同期だった長谷川恵もいた。おし美が、

 

「先輩、できましたよ!」

 

 と言うと、

 

「落としたデータは、研究所宛のメールに添付して送ってくれ!」

 

 真宏は、そう指示していた。すると、真宏は恵とも目が合った。

 

「今日は、来てくれてありがとな」

 

 不意に、真宏に言われ、恵は少し赤くなりながらも、頷くのだった。

 

 その後、廊下を二人は歩いていた。

 

「お前は、最近どうなんだ? 仕事とか、嫌なことばっかあるだろ」

「はい。でも、もう慣れました。毎日が楽しいんです、すごく。だから私、今の生活でもいいな〜って思ってるんです」

 

 真宏がきくと、恵は答えた。すると真宏は笑い、

 

「お前って最近、ユウナみたいなこと言うようになったな」

 

 と言うので、恵は真宏を見つめた。気がつくと、無意識のうちに足が止まっている。先を行った真宏がふり返ると、恵に声をかけた。

 

「どうしたんだ?」

「いえ、何でもないです」

 

 恵は言うと、再び歩き始めた。その時、真宏はこのようなことをきいてきた。

 

「そういやお前、結婚とか考えてるのか?」

「えっ?」

 

 恵はまた、驚いたように真宏を見つめる。

 

「なんか、俺もそろそろ考えたいなって。でも、無理だよな。こんな引きこもり、好きになってくれたやつなんて、数えるほどしかねえし」

「あの……!」

 

 上を向きながら話す真宏に、恵は言った。

 

「どうした?」

「先輩に、お話があるんです」

 

 そう言う恵を、真宏も不思議そうに見つめていた。

 

 

 一方、横大路研究所をまた雅也が訪れていた。真司から、引越しの報告をきくためだ。

 

「いやあ、この間は助かったよ。妹も喜んでたし、ありがとうな」

「とてもそんな感じには見えなかったけどな」

「あいつ、いつもあんな感じだからな〜」

 

 真司も、レイカによい印象は持っていないようだ。それでも雅也は、真司を頼って引越しの手伝いを依頼したのだ。

 

「まあ、お前なら手伝ってくれると信じてたけどな。真司だけに」

「うるせえよ。お前が手伝ってあげればよかっただろ」

「だから、仕事入ってたんだって! 断れない感じだったからな」

「でも、ほかにも暇そうなやついただろ」

「まあな。でもお前が一番付き合い長いわけだしさ、丁度いいかなって」

「何だそれ……」

 

 二人がそんな会話をしていると、ドアが開いてヒロインが入ってきた。ヒロインが、

 

「お二人さん、美千子さんからですよ〜」

 

 と言いながら、二人の前にハーブティーを置いた。

 

「おぉ、いい匂いだな」

 

 雅也は、そう言いながら紅茶の香りを嗅いだ。それを見ていた真司は、少し不審そうな顔をする。

 

「お前、あの話はいいのか?」

「何が?」

「だってお前、紅茶見るたび悲しそうな顔してたじゃねーか。友達が好きだったって……」

「あぁ、あれね。もういいんだ。過去は過去で、もう思い出さないことにしたよ。君だって、そうだろ?」

 

 雅也は、不意にヒロインを見た。それに対し、ヒロインも答えた。

 

「そうですね。私も、たくさん辛い経験しましたけど、今が楽しいので。皆さん、とても優しくて、ここに来てよかったです」

 

 嬉しそうに話すヒロイン。それは、嘘偽りない豊かな表情にも見えた。

 

「そういえば、今年で大学卒業だね。おめでとう。この後は、どうするの? 就職?」

 

 雅也は、ヒロインに尋ねた。

 

「ありがとうございます。私、もうしばらくは、ここで研究のお手伝いをさせていただくことにしました。これからのことは、これから考えたいと思います!」

「そうか。じゃあ、また来るから、その時も美味しい紅茶入れてよ」

「はい!」

 

 ヒロインは、また嬉しそうに言った。真司も、それを仕方なさそうな表情で眺めていた。

 

 ユウナはといえば、いつものように部屋でミカやアカリと一緒に寛いでいた。正彦からの召集がなければ、このようにして退屈な時間を過ごしているのである。ユウナは就活中だが、この日は特に予定がないため、研究所に足を運んでいた。ミカは、またパソコンで正彦宛のメールを整理していた。アカリは、本を読んでいる。

 

「ミカちゃん、ちょっと休んだら?」

「大丈夫、もうちょっとだから」

 

 ユウナも読書をしながら、二人の会話をきいていた。すると、急にミカが声を上げる。

 

「ちょっと! 見てこれ!」

 

 それをきき、二人は驚いて画面を覗きにいった。そこには、こう書かれてあったのだ。

 

『2018年3月13日。SP第23エリア・イワトノ丘にアマテラス降臨の兆しあり。美神をセインツストーンに封印すべし』

 

「何だろうこれ……」

 

 ミカは、そのメールを読み上げると言った。

 

「誰から?」

「わかんない」

 

 ユウナがきくと、ミカは答えた。アカリも、

 

「何のことじゃろうね」

 

 と言っていると、ミカがこう言い出した。

 

「そうだ。じゃあ、行ってみようか」

「えっ。でも二十三エリアって、どこにあるん?」

「大丈夫、地図持ってるから!」

 

 ミカは乗り気だ。こうと決めれば、必ず実行するのがミカの長所であり、短所というところだ。ユウナも気になったので、止めることはしなかった。それでも、もしものために、正彦に相談した方がよいと思った。

 

「あの、それじゃあ一回教授に……」

「あ、でもなんかさっき出かけてったよ? 集中講義があるから〜とか言って」

「でも、勝手に入って怒られることない?」

 

 アカリも、不安そうに言う。

 

「大丈夫だって! なんかあれば、その場でログアウトすればいいだけだし!」

 

 ミカが言うので、ユウナとアカリは顔を見合わせつつ、そうすることにした。

 

 そして三人はSPに入り、第二十三エリアを目指した。しばらく進み、ミカがある地点を指差し言った。

 

「あれじゃない?」

 

 見ると、向こうに丘が見える。あれが、きっと「イワトノ丘」だろう。三人は近くまで行き、近くの岩に隠れ、様子を窺った。しかし、何も起きる気配がない。

 

「もうすぐ時間なのに、何も起きる気しなくない?」

「ほんまに、アマテラスが降臨するんじゃろか? うち、ガチャ回しても全然出んけん、どうしても欲しいんよね」

「あ、わかるそれ」

 

 アカリの言葉に、ミカも同調した。その時、ユウナはあることに気づいた。

 

「ねえ、あそこ。誰かいるよ」

「え、どこどこ?」

 

 ミカは岩から顔を出し、丘の方を見た。たしかに誰かが立っている。ユウナたちと同じくらいの、女の影に見えた。

 

「近づいてみよっか」

 

 ミカが言うと、岩を出た。

 

「危ないよ」

 

 そして、アカリもミカを追うように外へ飛び出していく。ユウナも、仕方なくそれについていった。三人が近づいていくと、段々とその影が近くなってくるのがわかった。それがはっきりと見えるようになった時、ユウナは率先してその人物に声をかける。

 

「あの……」

 

 声がきこえたのか、その女がふり向いた。それは、あのミーサだったのだ。目が合ったミカとミーサは同時に、

 

『あーっ!!』

 

 と言い、互いを指差した。

 

「ちょっ、お前らなんでいるんだよ!」

 

 ミーサが言うのでミカも、

 

「それはこっちのセリフよ! また何か悪いこと企んでるんでしょ! こっちは、すべてお見通しなんだからね!」

 

 と、言い張った。しかし、ユウナは冷静にミーサに尋ねた。

 

「ねえ、ここで何してたの?」

 

 すると、ミーサが言った。

 

「お前らに教える筋合いなんかねえけど、まあ、特別に教えてやろう。もうすぐ、ここに五和神のひとつ、アマテラスが降臨する。そいつを、このセインツストーンに封印する!」

 

 ミーサは、虹色に輝く石を取り出し、それを天に掲げる。セインツストーンは、太陽の光を反射し、より輝きを増した。

 

「それが、セインツストーン……」

 

 ユウナが呟くと、ミーサは言った。

 

「わかったら、さっさと帰るんだな」

「でも、そのアマテラスをどうするつもりなの!?」

 

 ミカがきくと、

 

「そんなもん、知るかよ! すべては、親父……、サタールの思惑なのだ!」

 

 と、ミーサは言い放った。それをきいて、さらにユウナはミーサに尋ねる。

 

「じゃあ、あなたも知らないの? それを、何のために使うのか」

「そうだよ、いいから早く帰っ……」

 

 ミーサが言いかけた瞬間、突然光明が射してきた。四人は、上を見上げるとアマテラスが降りてくる。目を閉じ、まるで眠っているような表情だ。ゆっくりと丘に降りてくると、ミーサはまた、セインツストーンを掲げた。そうすると、アマテラスは石の中にみるみるうちに吸いこまれていく。その時、眩しい光がイワトノ丘を包んだ。ユウナが目を開けた時には、アマテラスはどこにもいなかった。ミーサはセインツストーンを手にしたまま、笛を吹いた。そうすると、キマイラが走ってきた。ミーサは素早くそれに乗ると、ユウナに告げた。

 

「じゃあな。今度は、俺と勝負しろよな。その時に、思い知らせてやる。お前の考えが、どんだけ浅はかかってことをな!」

 

 そして、キマイラに乗ったミーサは、どこかに行ってしまった。それを黙って見ているユウナの隣でミカが、

 

「何なの、あの態度! ほんっとムカつく。誰かさんと同じかそれ以上に!」

 

 と、独り言のように言っている。ユウナもその時に改めて、ミーサの存在が何なのかを考えてしまうのだった。

 

 

 城へ戻ったミーサは、セインツストーンをサタールに渡した。サタールはそれを受け取ると、

 

「そうであったか。まあ、彼女たちに知られたところで、どうということはなかろう。こいつの使い道など、気づくはずもないからな」

 

 と言うのだった。サタールは、アマテラスの力が封印されたセインツストーンを見つめながら、ニヤリとし、奥の方に消えていった。その時、ミーサは後ろに誰かの気配を感じ、ふり返った。それは、やはりフギンだった。ミーサは最初からわかっていたのか、フギンに言った。

 

「アンタだろ、奴らに教えたの」

「まあな、面白そうだったからな」

「ほんと、ろくなことしないな。まあ、大事には至らなかったから結果オーライだけど。アンタの方こそ、いつ首切られるか知れたもんじゃないぜ」

 

 ミーサはそう言い、その部屋から姿を消した。フギンも、目を閉じて考え事をしていた。この時、フギンの頭の中にあったのは、ユウナのことであった。

 

 

 ユウナたちも、正彦に今日のことを報告した。正彦はそれをきくと、

 

「そうか、それは大変だったな」

 

 とだけ言うのだった。

 

「今回も余計なことして、すみませんでした」

 

 ユウナが頭を下げると、後ろにいた二人も頭を下げた。

 

「大丈夫だ。それより、私からも君たちに話があったんだ」

 

 正彦が言うので、三人は再び顔を上げる。すると、正彦が予想外の発言をした。

 

「前にも話した通り、ウイルス除去のソフトが完成してね。光線によって、ウイルス自体を萎縮させるというものだ。それで話というのは、君たちはもう、ここには来なくていい。いや、正確に言おう。来てほしくないんだ」

 

 その話をきいて、ユウナは呆気にとられ、何も声にできなかった。正彦から、そのようなことを言われようとは、想像もしていなかったからだ。

 

 

第三十四回「質朴な天照大神(プレイン・アマテラス)」終

 

 

 

次回予告

ユウナ「お別れ言いに来よう」

   「ありがとう。元気でね」

フギン「俺たち側につくか?」

コサカ「すべてはサタール様のために……!」

ユウナ「今までありがとうございました」

悠二郎「俺の実家に行こう」

ユウナ「悠二郎さんのお母様って、どんな方なんですか?」

雅美「この家の敷地を踏む資格もないわ」

ヒロイン「私、ずっとここにいたいんです!」

ユウナ「研究は、これからも続けてください。あの世界が永久に続くように」

サタール「私はそれを確かめたいだけだ」

雅美「どこの子かもわからせえへんのに」

悠二郎「なんで言うことを守ってくれなかったの?」

   「もっと、よく考えてから発言するべきだ」

 

 

 

次回(第三十五回)

 

毒在りし花(ポイズン・イン・フラワーズ)

序盤のキャラで、最も印象深い登場人物は?

  • 中谷優奈
  • 鶴ケ崎麗菓
  • 月見里美香
  • 夢野あかり
  • 池谷大輝
  • 相場善秀
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