パズル&ドラゴンズ~もうひとつの旅~   作:葉之和 駆刃

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第2話 完璧の人~パーフェクト・ウーマン~(その参)

 そして日が変わり、文化祭当日。高校のホールでは、演劇コンクールが行われた。三組では、レイカが主役の王女を演じていた。その演技力は、観客すべてを魅了していた。それを、順番を待つユウナのクラスも見ていた。ユウナの隣でミカも、

 

「あの人、本当に何でもできるんだ」

 

 と、感心していた。アカリは吹奏楽の席に座っているため、ここにはいなかった。ユウナは、レイカの演技に見入っていた。

 そして演劇も順調に進み、ユウナのクラスも無事に終わった。教室に戻り、皆は片付けを始めた。

 

「疲れたー」

 

 と、ミカは箒をダルそうに持ち、掃いていた。そして片付けもあらかた終わると、その日は解散となった。ユウナは、校門前でミカと別れ、駅に向かった。すると、前を大輝が歩いていた。大輝も気配に気づき、ふり向いた。

 

「なんだ、お前かよ」

「なんだって何? それより大ちゃん、部活じゃなかったの?」

「今日、スタメンはオフだってよ」

「じゃ、一緒に帰ろ」

 

 ユウナは、何気に誘ってみた。大輝は、

 

「なんだよ、珍しいじゃん」

 

 と言い、二人は一緒に帰ることになった。

 

「すごかったなぁー、大ちゃんの演技」

 

 ユウナは、歩きながら呟くように言った。

 

「全然すごかねーよ。しかも本当はやりたくなかったのによ」

「でも、よかったじゃん。準優勝だよ?」

「三組がすごすぎたよな」

 

 二人は、そんな話をしながら帰った。

 

「大ちゃんは電車なんだね」

「あぁ。そっちの方が近いからな。お前は、いつもバスなのか?」

「うん。でもたまには電車もいいよね」

 

 そして二人は駅に着くと、そこから同じ電車に乗った。大輝が窓の外を眺めながら、ユウナに言った。

 

「お前、まだ帰ったらゲームとかしてんの?」

「さすがに今年は……」

「だよなー」

 

 大輝がそう言って答えると、ユウナはきいた。

 

「大ちゃんは、もう行きたい大学決まった?」

 

 すると、こんな答えが返ってきた。

 

「ああ。俺、救命士目指してみようかと思って」

「救命士?」

「俺、人助け好きだからさ。向いてるんじゃないかなーなんて思ったりしてさ」

「そうなんだ……」

 

 思い返せば、ユウナも大輝に助けられてばかりだった。

 

「じゃ、大学も決まってるの?」

「まあな。そういう学科があるとこすら、限られてるからな。あー、そろそろ勉強しねーとやばいなー」

 

 大輝はそう言って、後頭部を粗くかいた。それを見ると、ユウナは懐かしむように微笑んでこう言った。

 

「大ちゃん、まだそのくせあるね」

 

 大輝はそれをきいて恥ずかしそうに、

 

「うるせーよ」

 

 と言ったあと、笑っていた。

 そして二人は電車を降り、改札を出て帰路に着いた。歩きながら大輝が、

 

「そういや、お前は? 受ける大学決まったのか?」

 

 ときく。ユウナは、

 

「まだ。今、迷ってて……」

 

 そう答えた。

 

「そろそろ決めないとやばくねぇか?」

「だよね。中間までには決められたらいいと思う」

「もう理系の推薦、過ぎちまっただろ?」

「でも私、あまり推薦は受けない方がいいと思って。実力で行きたいから」

 

 大輝はユウナの顔を見つめ、前を見た。

 

「なあ。お前、あの時の約束覚えてるか?」

「えっ?」

 

 不意に、ユウナは大輝を見つめた。すると大輝は慌てた様子で、

 

「あ、いや。やっぱいいわ」

 

 と言い、向こうに目線をそらした。ユウナも、しばらくそれを見ていた。

 そして、ある交差点に出た。ここが、二人の別れ道だった。

 

「じゃあな、頑張れよ!」

 

 大輝はそう言って、右手を挙げた。ユウナも嬉しそうに、

 

「じゃあね!」

 

 と言い、大輝に手を振った。そしてユウナは青になった信号を渡り、大輝もまた、歩き出した。ユウナは、歩きながら考えた。十年前、ユウナの持っていたソフトを公園の土に埋めた。そしてそれを、十年後に掘り返すという約束もしていた。大輝は、それを言いたかったのだろう。ユウナも、それは忘れるはずもなかった。しかし今となっては、どんな意味があるのだろう、と思い、なかなか掘り返せずにいた。それでもユウナは、あの日のことを思い出しながら帰っていった。

 

 部屋に入ると、ユウナは引き出しを開けた。そこには、幼稚園の頃、大輝と一緒に撮った一枚の写真があった。ユウナはそれを手に持った。笑顔の大輝の隣で、曇った顔のユウナがいた。まだこの時は、人を信じられずにいたのだろうか。たった十二年程前だが、ユウナにとっては遠い昔のようであった。ユウナはしばらく、部屋でその写真を眺めていた。

 

 そして十月に入り、気温が一気に下がり、昼と夜での気温差が激しくなっていた。そして、中間テストも確実に近づいていた。休み時間、三人はいつものように一緒に弁当を食べたあと、勉強をしていた。

 

「もうすぐ中間じゃね~」

 

 アカリが言うと、ミカはこう言った。

 

「ていうか、中間の二週間前が体育大会って何考えてんだろね。おかしくない?」

 

 ユウナも、数学の教科書を読んでいた。ミカが、

 

「勉強教えてくれる人いないかなー」

 

 と言うと、ユウナはこう言いだした。

 

「じゃあ、鶴ケ崎さんは?」

「えー、でもあの子リア充でしょ? なんか嫌なんだけど」

 

 ミカは、嫌だということを前面に押し出した。

 

「でも、きくだけきいてみようよ」

 

 ユウナはそう言って、立ち上がった。ユウナがレイカのクラスの前に行くと、偶然にもレイカが中から出てきた。それを見たユウナは、

 

「鶴ケ崎さん」

 

 と呼んだ。レイカはそれをきき、ふり返った。

 

「勉強、教えてほしいんだけど。数学」

 

 ユウナがそう言うと、ミカとアカリも追いかけてきた。ミカが、

 

「やめといたら?」

 

 と言ってもユウナは、レイカを見つめてこう言った。

 

「学年一位の鶴ケ崎さんなら、できると思って」

 

 しかし、レイカからの反応はない。するとユウナは気がついて、

 

「あ、そっか。数三だし、習ってないからわからないか……」

 

 と言い、引き返そうとした時だった。

 

「わかるわよ」

 

 レイカがそう言った。

 

「えっ?」

 

 ユウナは驚き、ふり返ってレイカを見た。

 

「マジで? 習ってないのに?」

 

 ミカも、驚きを隠せないようだ。すると、レイカがこう言った。

 

「習ってなくても、そのくらいわかるわよ。でも、前にも言ったと思うけど私人に教えるのとかほんと無理なの。勘違いされたくないから言っただけ。残念だったわね」

 

 レイカがそう言って歩き出そうとすると、ユウナは言った。

 

「待って! 頼られるってことは、尊敬されてるってことなんだよ。だから、もっと人を信じてみてもいいんじゃないかな」

 

 レイカは立ち止まり、ユウナを見て言った。

 

「笑わせないでくれるかしら。私、あなたみたいなタイプが一番嫌いだから。人にばかり頼ろうとして、自分では何もできない。見ていてイライラしてくるの。いっそ学校やめて、好きなことでもすれば?」

 

 また気に食わぬ言い方をされ、ミカは反論した。

 

「何よその言い方。あんただって人に頼って生きてきたんでしょうが!」

「頼る? 私は今までほかの人を頼ったことなんてないわ。この先も絶対にない。私は、自分だけを信じて生きている。勝ちたいのは自分だけ。それ以外には興味を持てないの。あなたたちとは違うのよ」

 

 レイカは腕組みしながら、廊下を歩いて行った。それを、ミカとアカリも不満そうな顔をして見ている。「違う……、違う」とユウナは心の中で言った。人は、一人では生きていけない。ユウナは、身をもってそれを知った。人は互いに助けあいながら、生きていかなければならない。どうかそれを、レイカにもわかってほしい。そうユウナは、レイカを見つめながら強く願うのだった。

 

 

第二回「完璧の人(パーフェクト・ウーマン)」終

 

 

 

次回予告

ユウナ「ちょっと話したんだけど」

ミカ「あー、明日は体育祭か〜」

アカリ「今日、来とらんみたいよ」

ユウナ「鶴ケ崎さんってゲームとかやるのかな」

ミカ「いやー、やらないでしょ」

ユウナ「本当はどう思われてるんですか? 娘さんのこと」

智美「全部、私が悪かったの。わかっていたのに、それが親というものかもしれないわね」

百合子「話しあわないと、先に進めないと思うわ」

智美「私、レイカと話そうと思って」

ユウナ「頑張れー!」

レイカ「あなたを母親と思ったこと、一度もない。もう、そのことで私に話しかけてこないで!」

ユウナ「もっと、娘さんを信じてあげてください」

 

 

 

次回(第三回)

 

母の贖罪(マザー・エクスピエイト)

序盤のキャラで、最も印象深い登場人物は?

  • 中谷優奈
  • 鶴ケ崎麗菓
  • 月見里美香
  • 夢野あかり
  • 池谷大輝
  • 相場善秀
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