パズル&ドラゴンズ~もうひとつの旅~   作:葉之和 駆刃

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第37話 再召集〜リ・コンヴィーン〜(その弐)

 一方、現実世界ではなく、ここはセインツ・パラダイス、通称SPと呼ばれる仮想世界。その中に聳え立つ、ダークネス・キャッスル。そこの王として君臨しているのは、サタール(本名は横大路隆文)だった。サタールは、いつものように城のベランダから下の風景を見下ろしていた。そこに、何かのサイレンのような音がきこえてくる。それをきいて、サタールはあるところに向かった。

 

 

 サタールが向かったのは、同じくSPの中にある研究所だった。サタールが中に入ると、数人の研究員がそこで働いていた。サタールを見て、一人の研究者が近づいてきた。それは、その研究所の第一責任者、コサカという男だ。コサカは、

 

「サタール様、お待ちしておりました」

 

 と言い、頭を下げた。

 

「調子はどうだ?」

「いえ、お陰様で私も好きな研究をさせていただいております。すべては、サタール様のおかげです。本当に、感謝しております」

「堅苦しい挨拶はいい。ところで、進展をきかせてもらいたい」

 

 サタールが言うと、コサカも答えた。

 

「はい。ダンジョンのモンスターはすべて、サタール様の命令にのみ従うよう、データを書き換えました」

「ほぅ」

「それから、ダンジョン以外に生息するモンスターにも、同じプログラムを組みこむ予定です」

 

 コサカが説明していると、助手の金色ルリが来て言った。

 

「サタール様のご命令通り、我々は動きます。この後も、目障りな小娘たちがやってくる可能性が窺えます。そのため、計画を取り次ぎ急いでおります」

「うむ、ご苦労」

 

 サタールが言うと、ルリは一礼して、再び持ち場に戻っていった。その後、サタールは小声でコサカにきいた。

 

「例のメールは、もう届けたのか?」

「はい。本当に、あれでよろしかったのですか?」

「あぁ、あれはほかならぬ事実のようだからな。それに、私はやはり奴らと決着をつけたいんだ。それ以外に、理由などない」

「そうですか……」

 

 コサカは呟いていると、サタールは研究室の中を見渡していた。ここで働いている研究員たちは、いわばサタールの支配下だ。正彦に対応するため、サタールは手段を選ばない。それを、物語っているような光景だった。

 

 その正彦も、自分の研究室で頭を捻っていた。そこには美千子や真司のほかに、アカネとヒロインもいた。

 

「教授、大丈夫ですか?」

 

 ヒロインが、正彦の様子を見て心配そうに言う。

 

「いや、大丈夫だ。ありがとう」

「でも、急にうちらを集めてどうされたんですか?」

 

 アカネが質問すると、正彦は答えるのだった。

 

「あの子たちを、もう一度呼び集めようと思う。だが安心してほしい。これで最後にするつもりだ」

 

 正彦の話をきいて、誰も声を上げようとはしなかった。正彦の言う「あの子たち」とは、ユウナを含むあの四人だ。その四人を再び集めて、正彦はサタールとの最終戦をしようと言うのだろう。すると、ヒロインが質問した。

 

「でも、先輩たち散らばってしまって、どこにいるのかわかりませんよ?」

「それなら、大丈夫だ。ここに、あの子たちのスマートフォンがある。それに、解散する時に替えのものを渡した。それについているGPS機能を使えば、居場所がわかる」

「でも、もう巻きこまないんじゃ……」

 

 美千子もまた、心配そうな顔をしている。正彦も、申し訳ないと思っていた。自分から追い出しておいて、もう一度集めるのは流石に気が引けるのだろう。すると……。

 

「呼びましょう」

 

 その声の主は、真司だった。

 

「真司……」

「戦いに勝つためには、彼女たちが必要なんでしょう。お父さんもそれを知っていたから、必要以上に彼女たちを使役したんじゃないですか?」

「そうだが……」

「だったら、今はそうするしかありませんよ。本当の意味で、あの世界を守りたいのなら、そうするしかない。彼女たちも、きっと最後まで戦ってくれるはずです!」

 

 すると続いて、アカネとヒロインも言った。

 

「うちも賛成。理由があるって言っても、せっかく教授が創った世界を乗っとられるのは、やっぱり悔しい」

「そうですよ。私も、できるだけのことはします! いえ、させてください!」

 

 どの言葉にも、嘘はないようだ。正彦も、

 

「本当にいいのか?」

 

 と念を押すと、三人は頷いた。美千子も、仕方なさそうに最後の最後に頷いた。それを見て正彦は嬉しくなり、涙が出そうになるのをぐっと堪えた。大切な助手や家族の前で、情けない姿を晒すわけにはいかない。そう思ったのだろう。そして、正彦は椅子から立ち上がった。

 

「わかった。では、それぞれに頼みたいことがある」

「はい」

「と、その前にこれを見てくれ」

 

 正彦はそう言うと、手元にあったパソコンを開き、ある画面を皆に見せた。それを見て、皆は固まった。

 

「これ……」

 

 そこに書かれていたものが、ユウナたちのこれからを大きく変えていくことになる。

 

 

 年末が近づき、喜多村家では忙しさが増していた。そんな中、悠二郎は姉の千年の部屋に行った。千年もまた、部屋の片付けなどをしている。

 

「あの子も、大変みたいやけど、あんたが支えてあげたらなあかんよ」

 

 本棚の整理をしながら、千年が言った。

 

「わかってるって。それより、お願いしたいことがあるんだ」

「何よ」

「姉貴も、ユウナのこと応援してやってるんだろ? だから、手伝ってほしいんだ」

 

 千年が悠二郎の方を見ると、悠二郎は真面目な顔をしている。

 

「だから、何をすればいいんよ」

 

 千年は、何のことだかさっぱりわからないといった表情をしている。そして、悠二郎は千年にある話をした。

 

 夜。ユウナは部屋の縁側に腰掛け、星々を眺めていた。都会とは違って、明るくきれいな星空だった。そういえば、悠二郎はどこへ行ったのだろうか。夕飯の席にも、姿を見せなかった。そのようなことを考えながら、ユウナは夜空を見ていた。

 もう十二月も後半になり、世間ではクリスマスだと騒がれるが、喜多村家にはもちろん関係ない。ユウナも、小さいころのクリスマスの出来事を順番に思い出していた。

 しばらく回想に耽っていると、どこからか声がきこえた。それはまるで、ユウナのことを呼んでいるようだった。ユウナも耳を澄まし、何とかその声を拾おうとした。

 

「ユウナ……、中谷ユウナ!」

 

 それは女性のような声で、次第に大きくなっていた。なぜ自分の旧姓を知っているのだろうかと、少し不気味に思いながら靴を履き、声がする方に行ってみた。その声は、庭の茂みからきこえてくる。その時、茂みから何かが飛び出した。ユウナは驚き、前を向いたまま数歩戻った。そして、よくよく前を見てみると、そこにはミーサがいたのだ。声の主は、なんとミーサだったのだ。ユウナは、驚きを隠せなかった。

 

「あの、なんでこんなところに……」

「しっ! 理由はあとで説明する。それより、ちょっと来い」

「あの、どこへ……」

 

 ユウナが言いかけると、ミーサはユウナの腕をつかんで、強引に連れていこうとした。ユウナは戸惑いつつも、ミーサのあとに続く。SPで何かがあったのだろうか。その時、そんなことが頭の中を過ぎった。

 

 しかし庭を抜けた時、それを偶然雅美に目撃されてしまった。

 

「ちょっと! あんたらそこで何してんの!」

「やべ!」

 

 ミーサが声を上げる。それを見た雅美は、

 

「誰やのあんた、誰か、誰か来てー!」

 

 と言いながら、家の中の人間を呼んだ。ミーサは急いで、ユウナの手を引いた。ユウナは何が何だかわからなかったが、流されるままに身を委ねた。すると家の中から孝太郎が出てきて、ミーサを発見すると声を上げる。

 

「誰や! うちの嫁に何すんのや!」

 

 そして、物凄い剣幕で走ってくる。二人は、急いで逃げた。やがて追いつかれそうになると、近くからガンガンという、ドラム缶を叩くような音がきこえた。その瞬間、孝太郎は速度を落とした。それとほぼ同時に、遠くで花火が上がった。雅美も足を止め、それを呆気にとられながら見ている。どういうことなのか、その時のユウナには皆目見当がつかなかった。なぜここにミーサがいるのか、そして、あの音と花火は何だったのか、次々と疑問が湧いてくる。

 無事に二人から逃げきれたユウナは、ミーサに尋ねた。

 

「あの、何かあったの? あの世界で……」

「おい、あれに乗れ」

 

 ユウナの質問を無視し、ミーサが言った。前を向くと、向こうの道路に一台の車が待機している。その側で、誰かが手を振っているのが見えた。

 

「こっちこっち! 早く乗って!」

 

 それは、見たことのない男だった。ユウナは戸惑いながらも、ミーサがいるのならばと信じて車に乗りこんだ。ミーサも隣に座り、男は車のエンジンをかける。そしてその車は、ゆっくりと発車した。

 

 国道沿いを走りながら、ユウナは運転している男に尋ねた。

 

「あの、どこに行くんですか?」

「あぁ、まだ説明してなかったな。横大路先生が、君を呼んでいる」

「教授が?」

「詳しい話は、研究所に着いたら話すから」

 

 その男の話をきいて、ユウナは自分の予感は当たっていたのだと納得した。すると今度はミーサの方を見て、

 

「ねえ……」

 

 と、話しかけた。ミーサにも、なぜ協力してくれたのかききたかったのだ。ミーサは、サタール側であるため、ユウナとは敵同士のはずだ。それなのに、どういうわけかユウナを連れ出してくれた。その訳を、知りたかったのだ。すると、ユウナがきく前にミーサは言った。

 

「べつに、あんたを助けるためじゃねえよ。バカ兄貴が、敵とは少しでも借りを作っとけとか言うもんだからさ、仕方なく来てやったんだ」

「……ありがとう」

「言っておくけど、私はあんたの敵だから。気安く話しかけるんじゃねえ」

 

 そう言うとミーサは、そっぽを向いてしまった。ユウナは、それ以上は何も話しかけなかった。そうすると、やがて正彦の研究所がある町に入る。そして、建物が見えた。また帰ってきたのだという、そんな喜びをユウナは味わった。

 

 男がブレーキをかけ、車が停車する。ユウナは降りると、そこはあの研究所の前だった。半年ぶりの景色に、ユウナはその場に立ったまま嬉しさを抱いた。すると、研究所の扉が開く。出てきたのは、真司だった。

 

「あぁ、やっと来たか」

 

 真司が言うと、ユウナを連れてきた男が車から降りてきた。

 

「すまんすまん、予想外の渋滞に遭っちゃってさ」

「ったく、しょうがねぇなぁ」

 

 口ぶりから察するに、その男と真司は知り合いらしい。ユウナが不思議そうに見ていると、近くに別の車が止まった。その白い車は、どこかで見覚えがある。するとドアが開き、なんと雅也が降りてきた。それは、雅也の車だったのだ。

 

「やぁ、遅くなってごめん」

「お前もか。約束は三十分前だぞ?」

 

 真司は、雅也にも注意した。

 

「そう言うけどねぇ、こっちだって急だったんだぞ?」

「で、お目当ては連れてきたのかよ?」

「うん……、なんとかね。でも、折れてくれるまでにだいぶかかったよ」

 

 雅也がそう言って、後ろをふり返った。そして車の後ろのドアが開き、レイカが降りてきたのだ。それにはユウナも驚きを隠せず、

 

「え……、鶴ケ崎さん?」

 

 と、呟いた。その直後、研究所の中からミカが飛び出してきた。

 

「ユウナ〜!」

「ミカ? なんで……」

 

 ユウナは、話についていけなかった。ミカに続いて、アカリも外に出てきて言った。

 

「ユウナちゃん、無事に来れたんじゃね」

「アカリ、これってどういうこと?」

 

 ユウナがきくと、ミカは答えた。

 

「これから、教授が詳しい話してくれるって。中入ろ」

 

 三人が中に入ろうとすると、また向こうから別の車が走ってきて、目の前で停車した。それは、悠二郎の車だった。悠二郎が出てくると、

 

「やぁ、遅れてごめん。兄貴」

 

 と、言った。するとさっきの男が、

 

「あぁ、俺も今到着したところだ」

 

 そう言うので、ユウナはますます混乱した。たしかに、悠二郎は「兄貴」と口にしたのだ。ユウナは悠二郎のところに走っていくと、

 

「あの、どういうことですか?」

 

 と、尋ねた。

 

「あぁ、まだ話してなかったっけ。君を迎えに来てくれたのが、うちの兄貴だ」

 

 それをきいてユウナはふり向き、その男を見た。すると悠二郎の兄、慎一郎(しんいちろう)はユウナに笑いかける。そこに、雅也が絡んできた。

 

「まさか、ユウナちゃんの結婚相手が、お前の弟だったとはなぁ」

「お前ってば相変わらずだなぁ。俺も、最近になって知ったんだよ」

 

 そこで、ユウナは先ほど抱いていた疑問について思い出す。

 

「あの……、皆さんは、どんなご関係なのですか?」

「あ〜、ちょっと話すと長くなるな」

 

 真司は、少し困ったように言うのだった。すると雅也が、

 

「外はもう寒いからさ、中入って一服入れようよ。みんなも、今日は疲れてるでしょ?」

 

 そう提案するので、皆も賛成した。流石に十二月ともなれば、夜は急激に冷えこむものだ。そこにいた皆は、研究所の中に入った。

序盤のキャラで、最も印象深い登場人物は?

  • 中谷優奈
  • 鶴ケ崎麗菓
  • 月見里美香
  • 夢野あかり
  • 池谷大輝
  • 相場善秀
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