パズル&ドラゴンズ~もうひとつの旅~   作:葉之和 駆刃

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第39話 友情の意味~ミーニング・オブ・フレンドシップ~(その参)

 女性が帰ると、ユウナはSPに足を運んだ。中では、ミカとアカリが退屈そうにしていた。

 

「これから、どうしよっか。ユウナがあれじゃ、ダンジョン攻略どころじゃなくない?」

「そうじゃね。うちら、これからどうなるんじゃろか」

 

 二人はそのようなことを言いながら、ただ湖を眺めていた。湖では、様々なモンスターたちが、気持ちよさそうに泳いでいる。しばらくして、ミカが気づいた。

 

「ユウナ……?」

 

 アカリも、それをきいてふり向くと、そこにはユウナが立っている。

 

「ユウナちゃん、どしたん?」

 

 アカリは驚いている。すると、ユウナは話し始めるのだった。

 

「ごめん……、二人とも。私、今まで自分を見失ってた。大ちゃんが亡くなって、ここにいる意味もわからなくなってた。でも、思い出したの。私たちは、この世界を守るために来たの。それを、天国にいる大ちゃんに教えてもらった。だから、安心していいよ。私は、この世界を守りたいの!」

 

 ユウナが言うので、二人はしばらく唖然としていた。そして、徐々に実感が湧いてきたのか、ミカが突然、ユウナに飛びついてきた。

 

「ミ、ミカ……?」

 

 ユウナが驚いていると、ミカは言った。

 

「ほんとに、ほんとに心配してたんだから! このまま、戻ってこないんじゃないかって」

「ごめんね……」

 

 ミカは泣いていた。すると、アカリも近よってきた。

 

「ユウナちゃん、みんな待っとったよ。だから、うちも嬉しい……」

「アカリ……」

 

 アカリも、ユウナにすり寄ってきた。ユウナは、アカリを抱きしめた。二人は、ずっとユウナの帰りを待っていたのだ。顔を上げると、周りのモンスターたちもユウナの帰りを祝福しているようだった。それを見て、ユウナはまた気持ちを新たにするのだった。

 

 その夜。寝室で、ユウナは悠二郎と話した。

 

「悠二郎さん。今まで心配かけて、ごめんなさい。そして、ありがとうございました」

 

 ユウナが言うので、

 

「待って。その前に、確認しておきたいことがあるんだ」

 

 と、悠二郎は言うのだった。

 

「今まで、俺に敬語使ってたのは、彼に遠慮していたからじゃないのか?」

 

 ユウナはそれをきき、しばらく黙った。やはり、悠二郎には嘘をつけない。

 

「私、大ちゃんにも幸せになってほしかったんです。小さいころからずっと一緒にいるのに、私だけ幸せになっていいのかって、ずっと考えてました。考え方によっては、裏切りのような気もして……。素敵な女性と出会い、幸せな家庭を築くことを、彼も夢見ていたと思うんです。だから、少し罪悪感もあって、ずっと悠二郎さんに対して敬語だったのも、それが関係しているのではないかって……」

 

 ユウナは、そっと顔を上げた。悠二郎も、微笑みながらユウナを見ている。

 

「じゃあ、もうやめてくれるか? きっと彼も、そんなことは望んでないと思う。自分が生きられなかった分、君にはこれからもライフを歩んでいってほしい、そう願っていると思う。だから、ギクシャクした関係は今日で終わりにしよう。お互いのためにも、そうした方がいい」

「悠二郎さん……」

 

 ユウナは、涙ながらに悠二郎を見つめていた。そして、悠二郎はユウナを抱きしめた。ユウナも、泣きながら悠二郎の肩に額をくっつけていたのだった。これは、二人にとって本当の始まりだったのかもしれない。大輝が、大切なことを教えてくれた。そのことだけが、事実と言えるだろう。その後、二人はいつものように並んで眠るのだった。

 

 

 一ヶ月後。ユウナはSPに入った。ユウナがセイントドアの前まで来ると、悠二郎が声をかける。

 

「今日も行くのかい?」

「うん。でも、夕方には帰れると思うから」

「じゃ、気をつけてね」

「うん!」

 

 ユウナは元気よく悠二郎に言うと、SPの中に入っていった。それを悠二郎だけでなく、部屋の外からは雅也たちも見ていた。

 

「ユウナちゃん、すっかり元気になってよかったよ」

「また、調子が戻ってきたな」

「俺たちも、見習わなくちゃな……」

 

 三人は、そんな会話をしていた。すると、真司が雅也にきいた。

 

「そういえばお前、妹とはどうなったんだよ」

「あ、いや。まぁ、なんとか……」

「ちゃんと話し合った方がいいんじゃないのか?」

「まぁな……」

 

 真司が言うのをきいて、雅也は少しくぐもった表情を浮かべていた。雅也はあの日以来、レイカと話していなかったのだ。不意に、真司が言った。

 

「お前、昔っから不器用だもんな」

「そ、そんなことないぞ! 俺だって、なんとかしようと思ってるんだ……」

 

 雅也が珍しく弱気な表情を見せるので、慎一郎も励ました。

 

「まぁ、無理に話しかけると、かえって関係が崩れることだってあるからな。適当に声をかけつつ、様子見た方がいいんじゃね?」

「それもそうだな」

 

 雅也は笑顔になった。そこへ、ヒロインが慌ただしく走ってきた。部屋の前で中を覗いていた三人に、

 

「ちょっと、邪魔ですよ!」

 

 と言うので雅也は、

 

「あぁ、ごめん」

 

 そう言い、ドアの側から離れた。そしてヒロインは部屋に入ると、中にいる正彦と何か話しているようだった。それを、三人も笑顔で見ていた。

 

 

 その頃、ダークネス・キャッスルではサタールが、フギンとミーサを呼んでいた。

 

「これから、お前たちに重大な任務を与える」

「何だよ、任務って」

 

 ミーサが、また怪訝そうに尋ねる。しかし、サタールはなかなか答えない。

 

「もうじき、奴らとの最終決戦が始まる。きっと、奴らはまた、小賢しい手を打ってくるはずだ。お前たちは、できる限りの手を尽くし、奴らの動きを封じるのだ。無論、どんな手を使っても構わない」

 

 サタールは言い終えると、奥の部屋に姿を消した。それを見ていたミーサは、隣にいたフギンに言った。

 

「なんか、あいつ最近変わったよな」

「お前も、そう思うか?」

 

 フギンも、それは一緒だったらしい。

 

「伯父さん、本当に親父のこと嫌ってたのかな……」

 

 ふと、ミーサがらしくないことを呟く。するとフギンが、

 

「どうだかね~。でも、故意で崖から落とそうとしたのは事実だ。それは、どうやっても変えられねえよ」

 

 と言い、去ろうとした。それを、ミーサが呼び止める。

 

「でも、仮にこの世界が手に入ったとして、誰の得にもなんねえよ!」

「まぁ……、憂さ晴らしくらいにはなるだろ」

「あぁ……、たしかにな……」

 

 ミーサが、納得したように呟いた。しかし、フギンはふり向くと、今度はミーサに質問するのだった。

 

「ほんとに、それだけが狙いだと思うか?」

「あ? どういうことだよ」

「いや、べつに……」

 

 フギンは窓の前に立ち、笛を吹いた。すると、プテラドスが舞い降りてきた。フギンはそれに飛び乗ると、空高く舞い上がっていった。

 

「おい! 教えろよ!」

 

 ミーサは窓から身を乗り出したが、もう手遅れだった。フギンは、もうどこかに行ってしまった。ミーサはその後、フギンが言った意味深長な言葉を、頭の中で繰り返し再生したが、一向に意味を理解できなかった。サタール、いや、自分の父親のしようとしていることが、いまいちわからなかったのだ。

 

 

 一方、ユウナはミカやアカリとSPの中にいた。三人は丘の上に立ち、下を眺めていた。向こうの山から川が流れ、周りには無数の木が生えている。

 

「きれかね……」

 

 アカリが呟いた。ユウナは、

 

「ここ、教授のお気に入りの場所なんだって」

 

 と、二人に教えた。

 

「でもさ、ここがゲームの世界だなんて、未だに信じられないんだけど」

「うちも」

 

 ミカとアカリは、そう話している。前にも言っていたが、本当にその通りだった。空が澄み渡り、雲が流れ、風が吹いている。とても仮想世界とは思えないほど、現実世界との区別がつかない。いや、現実世界よりも美しい場所と言えるだろう。三人はしばらくその景色に見とれていると、

 

「みんな、あっちでお茶しよう」

 

 と、アカネが来て言った。三人も笑顔で、そこへ行った。ガーデンテラスで、美千子がカップを並べていた。そこには悠二郎や、真司の姿もあった。するとユウナは何かに気がつき、真司に尋ねた。

 

「あの、鶴ケ崎さんと雅也さんは?」

「あぁ。もうじき来るよ」

 

 真司は、慎一郎と顔を見合わせるのだった。意味ありげなその行動に、ユウナは違和感を抱いたが、すぐにわかった。雅也も、レイカのことをとても大事に思っているのだと。

 

 レイカが部屋のベッドに腰かけていると、誰かが戸をノックした。するとドアが開き、入ってきたのはやはり雅也だった。

 

「レイカ。みんな、ゲーム世界のガーデンテラスでお茶してるけど、お前も来ないか?」

 

 雅也が言っても、レイカは何も答えない。

 

「なんだよ、機嫌直してくれよ」

 

 そう言いながら、雅也はレイカの隣に座った。

 

「そろそろ、認めてあげたらどうだ?」

「何をよ?」

「彼女のこと。ほんとは、すごいと思ってるんだろ? 最初は俺も正直、なんで他人事にここまで真剣になれるんだろうって思ってたよ。でも、ある日突然、気づいたんだよね。こんな子がいてくれるから、こんなにも世界が安定するんだって。お前も、それにはもう気づいてるんじゃないのか? 今なら、解かり合えると思うぞ。じゃあ、先行ってるから。気が向いたら来てくれ」

 

 雅也は立ち上がり、部屋を出ていった。レイカは、ずっとその様子を見つめていた。

 

 雅也がSPに戻ってくると、

 

「まだ、やっぱり気持ちが落ち着かないみたいでさ……」

 

 と言いながら、席に着いた。それを見たユウナは、雅也に言った。

 

「でも鶴ケ崎さん、本当はいい人なので。だから私も、少しずつ話していこうと思います。いつか、仲良くなりたいので……」

「うん、きっとなれるよ」

 

 雅也も、そう言うと笑った。そうしていると、

 

「ちょっと、ユウナ!」

 

 と、ミカが呼びかけてくる。ふと前を向くと、なんとレイカが立っていたのだ。

 

「鶴ケ崎さん……」

「……勘違いしないでくれる? 私はただ、気晴らしに来ただけだから」

 

 レイカの言葉をきいて、ユウナは笑って答えた。

 

「うん。でも、ありがとう」

 

 ユウナは、レイカにも紅茶を入れた。そして、レイカのテーブルに置いた。少しでも近づけるように、そんな願いを込めて、ユウナはレイカに微笑みかけていたのだった。

 

 

第三十九回「友情の意味(ミーニング・オブ・フレンドシップ)」終

 

 

 

次回予告

ミカ「教授のメールフォルダに、また変な脅迫メールが届いてたんだけど」

ユウナ「やっぱり、早く戻ったほうがいいんじゃないかな」

正彦「これは、ダンジョン攻略に役に立つようにと、私が開発したものだ」

アカリ「ユウナちゃんの優しさがあれば、きっと休んでくれるはずやけん」

ユウナ「お姉さん……」

千年「うちは、あんたをうちみたいにしたくなかっただけ」

悠二郎「ユウナはさ、あの人のどこに惹かれたの?」

ユウナ「相場君……?」

相場「お前を、絶対に悲しませたりはしない。約束する」

正彦「それぞれの属性を司る勇士たち、それらをフィフス・フォリアと呼ぶことにした」

雅也「お前も、自分の信じる道を行けよ」

正彦「どうだ、あの世界に住んでみないか」

 

 

 

次回(第四十回)

 

勇者の称号(タイトル・オブ・ブレイバー)

序盤のキャラで、最も印象深い登場人物は?

  • 中谷優奈
  • 鶴ケ崎麗菓
  • 月見里美香
  • 夢野あかり
  • 池谷大輝
  • 相場善秀
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