パズル&ドラゴンズ~もうひとつの旅~   作:葉之和 駆刃

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第40話 勇者の称号~タイトル・オブ・ブレイバー~(その弐)

 研究所に着くと、ユウナたちは真っ先にメールのことを、正彦に報告した。話をきいた正彦は難しい顔をし、しばらく間を置いたあとにこう言うのだった。

 

「まぁ、気にすることはないと思う」

「でももし、万が一のことがあれば……」

「いや、あとは私で調べておくよ。ありがとう」

 

 そう言うと、正彦は立ち上がった。

 

「では、また明日から続きを頼む」

 

 正彦が言うので、

 

「はい」

 

 と、ユウナたちは返事をした。正彦の役に立ちたい、それだけを考えて予定より早くに帰ってきたのだ。

 

 

 翌日、正彦は部屋に皆を集めた。

 

「では、本日の作業に取りかかる。アカネ君はレア・テミスに、ユウナ君はオケアーノ、アカリ君はクローノスにそれぞれ行ってくれ。そして、ミカ君とレイカ君はちょっと私について来てもらえるか」

 

 正彦は、それぞれに指示を出した。その話をきき、ミカは不思議な顔をする。ユウナも、なぜこの二人なのかと、少しの疑問を抱いていた。

 

 それでもユウナは、正彦に指定されたダンジョンに行き、そこで自分のモンスターを敵と戦わせ、そして攻略に努めた。敵モンスターは「リヴァイアサン」という名で、とても強力なモンスターだ。ユウナはコンボを上手く使い、苦戦しつつもそれを倒した。

 

 一方、アカリとアカネも、それぞれにダンジョンを攻略していた。

 

 さらにその一方では、ミカとレイカは正彦によって、SPのある場所に連れてこられた。そこは、物置のような場所だった。すると正彦は、倉庫からあるものを取り出してきた。それはバイクのような形をしているが、車輪が付いていない。

 

「何ですか、それ?」

 

 ミカが尋ねると、正彦は答えた。

 

「これは、ダンジョン攻略に役に立つようにと、私が開発したものだ」

「これが?」

 

 ミカは、怪訝そうな顔をする。いったい、何に役立つのか見当もつかない。そして正彦が、さらに説明を加える。

 

「ダンジョンの中には、マグマや絶対零度など、人が生身で入れば危険なところもいくつか存在する。だが、それがあれば大丈夫というわけだ。是非、乗ってみてくれたまえ」

 

 すると、レイカは言った。

 

「どうでもいいけど、私これから用事あるから、早くしてくれるかしら」

「でも、これどうやって使うの? 普通に乗ればいいわけ?」

 

 ミカもそう言いながら、それに跨った。正彦はそれを見ると、

 

「では、電源を入れてみてくれ。そこの、赤いボタンだ」

 

 と言った。見ると、ハンドルのすぐ下に赤色のボタンがある。ミカは、そこを押した。すると、低い音とともにエンジンがかかり、宙に浮いた。それにはミカも驚き、

 

「何これ、すごい!」

 

 と、声を上げる。レイカも、それを特に表情を変えずに見ていた。さらに正彦が、

 

「因みに、これには様々な機能が付いている。今度は、真ん中の青いボタンを押してくれないか」

 

 そう言うので、ミカは言われた通り青いボタンを押した。しかし、何も変わった様子は見られない。

 

「何も変わらないけど?」

「いや、そいつの周りに、目に見えないシールドが張られたんだ」

 

 正彦の言葉をきき、ミカは自分の周りを触って確かめる。すると、正彦の言った通り、見えない何かがその機械の周りを覆っていた。

 

「すごい! これって、バリアーじゃん!」

「何興奮してんのよ、小学生じゃあるまいし」

「だって、すごくない? こんなの、普通の人にはできないよ!」

 

 レイカの煽りも、この時のミカには関係なかった。まさに、ここまで来たかという気持ちでいっぱいだったのかもしれない。最後に、正彦は言った。

 

「君たちはこれに乗って、攻略を進めてくれないか。因みに、名前は‘万能太郎くん’だ」

『ダサッ』

 

 偶然にも、ミカとレイカの声が重なった。それを感じ、思わず二人は互いの顔を見る。気の合わない二人だが、実のところ気が合うのかもしれない。

 

 その後、レイカも「万能太郎くん」に乗って、SPの中を探索していた。隣でミカが、未だに感動しているのか、こんなことを言っている。

 

「ほんとすごいよね〜、あの人。もしかしたら、常識なんて通用しないのかも」

「何よ、今さら」

「でも、普通にすごくない? こんなの、生きてる間に乗れるなんて思ってもみなかったよ。これからよろしくね〜、キー太」

 

 ミカは、万能太郎くんを撫でながら言った。

 

「誰よそれ」

「ほら、ここに鍵があるでしょ?」

 

 ミカは、そう言いながら指差した。たしかに、ボタンの近くに鍵がついている。正彦のつけた名前が「ダサい」ため、ミカは自分なりの呼び方を決めたのだ。スピードもかなりのものであり、どんどんと周りの景色が流れていく。二人は森を抜け、ダンジョンの中に入った。それに乗りながら、スマホを操作しなければならないため、器用でなければならないのだ。そのため、正彦はこの二人を選んだのだろう。

 

 敵が目の前に現れると、ミカがまずモンスターを召喚し、そして攻撃を指示する。レイカも続いて、モンスターを召喚した。スピードに逆らわず、一瞬で敵を片付ける。最後のボス戦の時も、二人はそれぞれのモンスターを使い、瞬殺した。

 

 そして二人は、スピードを緩めることなく突き進み、やがてダンジョンを抜けた。

 

「ふぅ……。なんか、呆気なかったね」

 

 ミカはダンジョンの方をふり返りながら、レイカに言った。レイカも疲れた表情で、

 

「結局、付き合っちゃったじゃない」

 

 と言うので、ミカは言った。

 

「でも、あんた結構やるじゃない。ゲームとか、興味ないと思ってたけど」

「見た目で決めつけないでほしいわ。まぁ、あなたにはわからないでしょうけど」

「はいはい、わかりませんよ〜」

 

 ミカも、そう言って流した。レイカも、ようやくこの世界に馴染めてきたのだろうか。役に立たない、得にならない、そればかり考えてきた。だが、そこに楽しみもある。それがわかると、意味がなくても夢中になってしまうものだ。レイカも、それは同じだったのかもしれない。

 

 一方、ユウナはアカリとともに研究室に戻ってきていた。

 

「今日も、面白かったね〜」

「うん」

「あれ、ミカちゃんたち、まだ帰って来とらんみたいやね」

 

 アカリは、セイントドアを潜ると部屋を見渡しながら言った。ユウナもそれを見て、

 

「先に部屋、行ってようか」

 

 と言うとアカリも、

 

「そうやね」

 

 そう答え、二人は先に部屋へ戻ることにした。その時、部屋のドアが思いきり開かれた。中に入ってきたのは、悠二郎だ。ユウナも、驚いた目で悠二郎に尋ねる。

 

「ど、どうしたの?」

「ユウナ、ちょっと来てくれるか?」

 

 悠二郎が言うので、ユウナは嫌な予感を施した。そして、悠二郎についていった。

 

 ある部屋まで来ると、悠二郎がドアを開ける。そこは、研究所の応接室だ。中に入ると、ユウナは目を疑った。部屋で座っていたのは、悠二郎の姉・千年だったからだ。

 

「お姉さん……」

 

 見ると、その部屋にもう一人、慎一郎もいた。姉弟揃って、何を話していたのだろうかと、ユウナは気になった。悠二郎に促され、ユウナは千年の前の席に座った。その隣に、悠二郎も座る。ユウナは千年を見つめるが、千年はなかなか口を開こうとはしない。

 

「おい、何しに来たんだ。早く話せよ。ユウナも、暇じゃないんだから」

 

 悠二郎が、千年に言った。

 

「あ、いいんです。私は……」

 

 ユウナも言おうとすると、千年が話し始めた。

 

「私な……」

「えっ?」

 

 ユウナは、千年の顔を見た。何か、恥ずかしげな表情だ。そして、千年は言った。

 

「私、子供できたんよ」

 

 見ると、千年は自分の腹の辺りを触っている。それをきいたユウナは顔を輝かせ、

 

「そうなんですか? おめでとうございます!」

 

 と、祝いの言葉を述べた。それにしても、結婚したのが三ヶ月ほど前なのに、もう子供ができたというのは、かなり早い。それでも、目出度いことに変わりはない。ユウナも、我が事のように嬉しかった。

 

「それだけじゃないだろ?」

 

 悠二郎は、千年にそう言うのだ。千年は頷き、ユウナを見て続ける。

 

「うちが、こうして子を授かったんは……、思い返せばあんたのおかげやなぁって思って」

「私の……?」

 

 ユウナが尋ねると、千年はまた頷く。

 

「あんたが、お母様を説得してくれた。だから、うちは今こうして、幸せな日々を送れてる。全部、あんたのおかげやねんで? 今日は、それを言いたくて……」

「でも、お姉さんの意志がお義母さんに通じたから……」

「ううん。私一人やったら、お母様は諾かへんかったと思う。せやから、これだけは伝えようと思ってたのに、急におらんようになんねんもん」

 

 千年はユウナを見つめながら、

 

「ありがとう」

 

 と、言うのだった。その言葉は、ユウナの心の奥にまで響いた。それにしても、なぜ今になって言おうと思ったのだろう。そう思っていると、悠二郎が付け加える。

 

「俺が言えって言ったんだよ。ずっと、後悔してたみたいだったからさ。自分の口から、伝えた方がいいって」

「そうだったんですか……」

 

 ユウナも顔を上げ、千年に言った。

 

「私も、ずっとお姉さんにお礼を言いたかったんです」

「えっ?」

「活け花を教わったりしたので。あんな体験、もう二度とできないと思いますし」

 

 すると、千年は言った。

 

「そうやな……。まぁ、最終的にうちの足元にも及ばへんかったけどな」

 

 それをきいた悠二郎たちは、笑い出した。それにつられて、ユウナと千年も笑っていた。幸せは、そこら中に転がっている。そう思えた瞬間でもあった。

 

「それで、姉貴はこれからどうするんだ?」

 

 次に、慎一郎が千年に尋ねる。

 

「家元は、うちが継ぐことになってる」

「でも、大丈夫なのか?」

「うん。ちゃんと両立するからって話したら、お母様もすぐに納得してくれたし」

 

 千年が言うのをきいて、ユウナも安心した。千年も、以前のような葛藤がなくなって、ホッとしているのだろう。他人のユウナから見ても、それがわかるような、穏やかな表情だった。

 

 その後、ユウナは千年を見送りに出た。千年が、

 

「じゃあ、あの子らのこと、よろしくな」

 

 と言うので、

 

「あの子ら?」

 

 ユウナは、そう尋ねた。

 

「うちの弟。二人とも、気が利かんところあるから、ちゃんと面倒みたってや!」

「はい!」

 

 千年の言葉に、ユウナも笑顔で答えると、千年は嬉しそうに背を向ける。その時に、

 

「あの!」

 

 と、ユウナは千年を呼び止めた。千年もそれをきき、ふり向いた。

 

「何やの?」

「あ、あの……。私が、ここの研究所に戻る時、お母様たちの気を逸らすのに、協力してくださったとききました。それについて、まだお礼が言えてなくて……」

「ええよ」

「えっ」

 

 ユウナは、千年を見つめた。千年は笑顔のまま、

 

「うちは、あんたをうちみたいにしたくなかっただけ。じゃ」

 

 と言うと再び背を向け、駅の方へ向けて歩き出した。ユウナは、それがどういう意味かわからなかった。でも、なぜだか嬉しくもあった。ユウナは、千年が見えなくなるまで、研究所の前に立って見送っていた。

 

 その夜、ユウナは寝室で悠二郎と話をした。

 

「今日は、びっくりしただろ。急に、姉貴が現れて」

「うん。でも、嬉しかった。お姉さん、とってもいい表情してたから」

 

 笑顔で話すユウナを見て、悠二郎も笑っていた。すると悠二郎は、ユウナにこんな話を始めるのだった。

 

「そういえばさ、なんで姉貴や母さんが京都弁なのに、俺と兄貴が標準語なのかって考えたことある?」

「え、あんまり……」

 

 ユウナが答えると、悠二郎は立ち上がり、窓の前に立つとカーテンを開けた。悠二郎は外の景色を眺めながら、こう話し始める。

 

「俺の家系ではさ、基本男の兄弟は父親が面倒見るって決まってるんだよ。でもまだ俺が小さい時、お父さんが忙しくてさ。教育係を雇って、その人が兄貴や俺の面倒みてくれてたんだ。最初は兄貴の方を世話してたんだけど、俺が生まれて、二人同時に世話することになったんだ。だけどその人、急に辞めちゃって。兄貴が中学生で、俺が小学生。詳しい理由はきいてないけど、親が病気になったんだって。だから、別の職を探してたみたい」

 

 悠二郎が言い終えると、またカーテンを閉めた。そして、再びユウナのところに戻ってくると、

 

「その人が、関東出身だったから、俺も兄貴も、そっちの方に愛着持っちゃって、だから関西弁はあんまし喋らないんだ」

 

 と、言った。ユウナが黙っているのを見て悠二郎が、

 

「どうした?」

 

 そうきくと、ユウナは答えた。

 

「なんか、知らないことばかりあるなと思って……」

「そりゃ、人の過去をいちいち生まれた時から話してたら、キリがないからね」

「でも、悠二郎さんがもし、関西弁を話してたら、ちょっと印象が変わってたかも……」

「ハハ、そうだよな」

 

 悠二郎も、ユウナの言葉をきいて笑っていた。そして、

 

「よし、そろそろ寝るか」

 

 と言いながら立ち上がると、悠二郎は電気を消した。二人は互いに横になると、悠二郎がまた、ユウナに話しかけてきた。

 

「ユウナはさ、あの人のどこに惹かれたの?」

 

 急なことをきかれ、ユウナは思わずきき返した。

 

「あの人?」

「うん。教授のこと」

 

 悠二郎は、正彦の何に惹かれたのかときいていたのだ。ユウナは、しばらく考えた。今思い返せば、それこそキリがない。

 

「私が初めて教授に会ったのは、小学生の時だったの」

「え? そんなに前だったの?」

「うん。お母さんに頼まれて、商店街の福引きに行ってきたの。そうしたら、そこに教授がいて、なぜか何枚も福引券を持ってて……。その余った券を、小さかった私にくれたの」

 

 ユウナは、あの時の光景を思い出した。正彦は笑いながら、ユウナの頭を撫でていた。あれが、すべての始まりだったのだ。

 

「その券で私、一等を当てることができたの。だから、もしかしたらゲームの世界に興味を持ったのも、教授のおかげなのかなって思って……」

「だから、あんなに真剣なんだな……」

 

 悠二郎は、感心しているようだ。今まで、そこまで深く考えたことはない。しかし今日初めて、そう思えたのだ。あの出会いが、自分を変えてくれた。そしてユウナはこの日、いつもより穏やかな気持ちで夢の中に入った。

序盤のキャラで、最も印象深い登場人物は?

  • 中谷優奈
  • 鶴ケ崎麗菓
  • 月見里美香
  • 夢野あかり
  • 池谷大輝
  • 相場善秀
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