パズル&ドラゴンズ~もうひとつの旅~   作:葉之和 駆刃

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第41話 愛情と亀裂~ラブ・アンド・クラック~(その弐)

 美千子が指名した人物、それはヒロインだ。事情をきいたヒロインは、

 

「禁断の恋ですか……。それなら、私に任せてください!」

 

 と、ノリノリで話した。ユウナも少し困惑しながら、

 

「でも、ミカは何も言ってくれなさそうだし……」

 

 そう言うと、ヒロインは言った。

 

「大丈夫です。童話の中では、主人公が自分の国と敵対している国の王子様と、禁断の恋に落ちることが多いんです。決して許されぬ恋、それでも諦めきれない二人は、騙し騙し城を抜け出しては、秘かに会うんです。それは、精神的にもかなり辛くて……、ハッピーエンドで終わる物語は少ないです」

 

 熱く語るヒロインを見ながら、ユウナはその話をミカとフギンに置き換えて考えてみた。たしかに、フギンは顔立ちもよく、俗に言うところのイケてる男だった。ミカも、それに惹かれたのだろう。できれば、ユウナもミカを応援したい。しかし相手が相手故、やはり難しい。ユウナは、頭を抱えるばかりだ。

 

「どうするかは、先輩次第だと思いますよ。応援するか、反対するか、私にはとても決められません。どちらをとっても、結果は同じだと思いますし。友達として、最善の選択をしてあげてください。大丈夫です、先輩なら何とかなりますよ」

 

 これは、舞台で多くの主人公を演じてきたヒロインだからこそ、言えることなのかもしれない。たまに空気を読めない時もあるが、ユウナは何度もヒロインの言動に励まされてきた。今回も、ユウナはヒロインから元気をもらった。

 

「ありがとう、やってみる」

 

 ユウナが言うので、ヒロインも笑顔で返した。

 

「はい、頑張ってください!」

 

 ユウナは頷き、部屋を出た。ミカに、伝えなければならない。あの男に心を許してしまうと、サタールがそれを利用しないはずはないだろう。だから、残念だがフギンのことは諦めてもらうしか方法はない。何と言われようが、自分のやるべきことをやろう、ユウナはそう決めた。

 

 しかしその日は、ミカはすでに帰ったあとのようだった。仕方ないので、ユウナも帰路に着く。外は、夏日が照りつけている。少しずつ日が長くなり、七時を回っても日は完全には落ちていなかった。向こうに、夕日に染まった山々が見える。ユウナは研究所の前に立ち止まり、しばらくそれを眺めていた。そして、また再び歩き始めたのだった。

 

 

 ダークネス・キャッスルでは、ミーサがフギンの帰りを待っていた。するとやがて、空からプテラドスに乗ったフギンが降りてきた。

 

「遅い、どこ行ってたんだよ」

「まぁ、ちょっとな」

 

 フギンはミーサの言葉を軽く流すと、城へ入っていった。ミーサはそれを追いかけ、

 

「で、あいつらは結局、SPに住むことになったのか?」

 

 と、尋ねた。しかし、フギンは何も答えなかった。

 

「おい、どうなんだよ!」

「さぁね。それは俺にもわからない。あとは、あいつら次第じゃないか? オヤジ、どこだっけ。メシ何があったかな~」

「なんか、最近喋り方戻ってねえか?」

 

 ミーサに言われ、フギンは立ち止まるとふり向いた。

 

「飽きたんだよ、何もかも」

 

 フギンはそれだけ言うと、城の中に姿を消した。ミーサはその場に立ち、ただフギンの後ろ姿を見つめていた。

 

「兄貴……、あんたはずっとそうだよ。なんで……、毎日そんなにつまらなさそうなの?」

 

 ミーサは、独り言のように呟いていた。しかし、その言葉はフギンにはきこえていないようだった。

 

 

 一方、ユウナは帰宅した。すでに帰宅していた悠二郎が、

 

「お帰り」

 

 と、声をかけてくる。

 

「あの、会社は……」

「あぁ、今さっき帰ったんだ。それより、兄貴からきいたよ。今、大変なんだって?」

 

 悠二郎が言うので、ユウナは思いきって話すことにした。

 

「ちょっと……、話、いいかな」

「何?」

 

 ユウナは、悠二郎の隣に座った。兎に角、言うしかない、反対されるのは、目に見えている。だが、言わなければならない。ユウナは大きく息を吸うと、話し始めた。

 

「教授から言われたの。あの世界……、セインツ・パラダイスに住んでみないかって。今、現実の世界から来てるから、ダンジョンで不具合が発生した時なんかに、すぐに行けないの。だから、いっそのことあそこで暮らした方がいいんじゃないかって、教授は言ってる。そのことについて、悠ちゃんはどう思ってるのかなぁって……」

 

 「悠ちゃん」とは、悠二郎のことだ。悠二郎はユウナの話をきいて、すぐには答えられなかった。しばらく考えたのち、

 

「それって、危険……、じゃないかな。だって、そこ狙われてるわけだろ? もしも何かあったらって思うと、やっぱり……」

 

 と、言うのだった。これは、まさに予想通りの回答だった。しかし悠二郎は、

 

「で、でもユウナがそうしたいなら、俺は何も言わない。ただ、心配なんだ……。ユウナの身に何かあったら、俺、どうしていいかわからなくなる……」

 

 そう言い、ユウナから目線を逸らす。それを見ると、ユウナにもわかった。悠二郎は、心では反対しているのだと。

 

「……いいの。私、明日断ってくる。あの世界は守りたい。だったら、今の状態で何とかやってみる。心配は、できるだけかけたくないから」

「ユウナ……」

「ごめんね。悠ちゃん、私のこと心配してくれて。私、それでいつも励まされてるから。本当に、感謝してる」

 

 ユウナは立ち上がり、部屋を出ていこうとした。すると悠二郎も、立ち上がってユウナを呼び止める。

 

「待って、ユウナ! ほんとに、いいの? 俺は、ユウナの好きにすればいいと思う。俺のことは、気にしないでいいからさ」

 

 しかし、ユウナはふり向き、笑顔で言った。

 

「ううん。やっぱり、悠ちゃんの苦しそうな顔は、見たくないから。私は私の力だけで、頑張ってみる」

 

 そして、ユウナは部屋を出た。自室に入ると、ユウナはドアの前にしゃがみこんだ。悠二郎に負担になるようなことは、できるだけしてこないつもりだった。しかし現状、そうなってしまっている。ユウナはこの時、悠二郎と正彦との板挟みになっていたのかもしれない。

 

 一方、レイカはまだ研究所に残っていた。雅也は戸を開け、中のレイカに呼びかけた。

 

「レイカ、ちょっと話せるか?」

 

 ベッドに腰かけ、黙っているレイカを見て、雅也は溜息を吐くと、レイカの隣に座った。

 

「ちょっと、話があるんだけど」

「……何よ」

「あの、ここで話したら暗い気分になりそうだからさ、日当りのいいところまで行かないか?」

「暗い気分?」

 

 雅也の意味深長な発言に、レイカは怪訝そうな表情を浮かべた。

 

 二人は結局、建物を出て近くの公園まで出向いた。そこには、丸太でできたテーブルがある。二人は、その周りの椅子に腰かけた。

 

「ここで紅茶を楽しむのも、なかなか楽しそうだね」

「で、話って何よ。大事なことなんでしょ?」

 

 レイカが雅也にきくと、

 

「急かすなよ……」

 

 と、雅也も呆れた表情で返す。そして真顔になり、話し始めた。

 

「実は……、俺、また外国に取材頼まれてさ。今回は、いつ帰れるかわからないんだよな」

 

 レイカは、黙って雅也を見ている。

 

「それって……、また内戦やってるとこ?」

「あぁ。今回は、なかなか危険な国らしいんだよね。でも、行くのは俺しかないってそう思ってさ。そしたら、アイツのこと思い出したよ。神崎、俺のせいで死んじゃったからな。罪滅ぼしのためにも、行くことにした。これは俺の意志だ。誰かに言われたわけじゃない。それを、お前にもわかってほしかったんだ。実の妹として」

「本当の妹じゃないけど……」

「そんなことない!」

 

 急に声を張り上げる雅也に、レイカは少しビクッとなった。雅也が大声を出すのを、あまり見たことがないからだ。

 

「あ……、ごめん。でも、誰が何と言おうと、お前が何と思おうと、俺にとってお前は実の妹だ。それだけは、間違いない。たとえ親が違っても、俺の妹なんだ」

「兄さん……」

「だから……、俺が日本にいなくても、たまに思い出してほしいんだ……」

 

 雅也は、涙をこぼしている。

 

「何言ってるのよ。それ、ただの遺言じゃない! そういうの、フラグっていうんだけど」

「あぁ、ごめん。でも、もしものことがあったら……」

「そんなマイナス思考やめてよ!」

 

 レイカは自分の口を押さえ、必死に涙を堪えているようだった。それを、雅也は呆気にとられながら見ていた。そして雅也は、

 

「そうだよな、ごめん。俺、絶対帰ってくるから。いつになるかわからないけど、絶対に、お前を一人にしない。約束するから」

 

 と言って手を伸ばし、レイカの頭を撫でた。レイカも抵抗することなく、それをきいていた。

 

「じゃあ、そういうわけで。出発する日が決まったら、また言いに来るから」

 

 雅也は手を振り、一人で戻っていった。レイカはしばらくの間、そこから離れなかった。それを偶然、遠くの木から目撃している者がいた。ヒロインは美千子の手伝いで、お使いから帰る途中だったのだ。公園の前を通りかかった時に偶然、二人を発見した。そして、その会話をきいていたのだ。そして、ヒロインもレイカに同情していた。

 

 

 翌日、ユウナは研究所に足を運んだ。そこで、正彦に本当のことを伝えた。

 

「そうか……。まぁ、無理もない。以前のように、ここから通ってくれ」

「はい」

「変なことを考えさせてしまい、すまなかったな」

「いえ。教授の気持ちは、嬉しかったです。では、失礼します」

 

 ユウナは正彦に礼をすると、研究室を出た。ここからが本番だ、そう自分に言い聞かせ、皆のいる部屋に向かった。

 

 部屋に行く途中、レイカとすれ違った。その顔は、いつもよりも暗く見えた。不思議に思ったユウナは、

 

「鶴ケ崎さん?」

 

 と、レイカに声をかけた。

 

「何?」

「あの、もうすぐ会議だから、よかったら、鶴ケ崎さんも……」

「今日はいい。こんなバカバカしいこと、やめとけばよかった……」

 

 レイカはそう呟いて、向こうに歩いていってしまった。やはり、様子が変だ。ユウナは、何があったのだろうとレイカの後ろ姿を見ていた。

 

 部屋に着いたころ、ユウナは後ろから誰かに声をかけられた。

 

「先輩!」

 

 見ると、ヒロインが走ってくる。

 

「どうしたの?」

 

 ヒロインは荒い息を整えながら、ユウナに言った。

 

「鶴ケ崎先輩のお兄さんが、内戦国の取材に行くんです。今度は、長期滞在になるって。だから、元気がないんだと思います!」

 

 それをきいたユウナは、ヒロインに言った。

 

「梁谷さん、みんなにちょっと遅れるって言っといてくれる?」

「はい」

 

 ユウナは、すぐに引き返してレイカを探しにいった。相場のこともあり、レイカの今の気持ちはユウナにもわかったからだ。

序盤のキャラで、最も印象深い登場人物は?

  • 中谷優奈
  • 鶴ケ崎麗菓
  • 月見里美香
  • 夢野あかり
  • 池谷大輝
  • 相場善秀
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