行くと、そこは燃え盛る炎の海と化していた。生身で飛びこめば、すぐさま灰になってしまいそうな、灼熱地獄だ。
「ユウナ、先行くね」
ミカは言うと、万能太郎の周りにシールドを張る。そして中に入っていくので、ユウナも同じようにシールドを張り、急いでミカに続いていった。
中では、マグマがボコボコと音を立てていた。シールドを張っていても、中にまで熱が伝わってくる。ユウナは額に汗をかきながら、奥へ進んだ。
やがて、大きな噴火口に出た。入り口付近よりも、マグマが近い。
「ねぇ、あれ見て!」
ミカが指さした。シールドを張っていると外からの音がほとんどきこえないため、仲間とはテレビ電話で会話するのだ。ユウナがミカの指さす方を見ると、噴火口付近から水が噴き出している。あれが、恐らく火山の噴火を促しているのだろう。ユウナは、それを何とか食い止められないものかと模索した。その時、ふとある考えが浮かんだ。
ユウナはハンドルを目一杯引き、上の方に向かった。
「ユウナ!?」
ミカは呼んだが、ユウナは止まることなく、上へ上へと向かう。そこで、モンスターを召喚した。それは、「サムライオーガ」というモンスターだ。サムライオーガは、火属性のためマグマの熱をもろともしない。ユウナは、それに命令を送った。
「その水を、岩で塞いで!」
それをきいて、ユウナが何をしようとしているのか、ミカも察した。そしてミカも同じように、自分のモンスターを召喚する。召喚されたのは、「アイスオーガ」という水属性のモンスターだった。
二体のオーガは、火山の一部を削り取ると岩に変形させた。それを水が噴き出している箇所に、次々と積んでいく。もう時間がない。ユウナは、指を組んで祈りを捧げた。
数分後、水が完全に塞がれた。そして、ゴゴゴゴという音とともにマグマの周りが崩れ始める。それを見て危険を感知したミカが、
「ユウナ、逃げるよ!」
と言うので、二人はオーガを元の場所へ返し、必死に万能太郎を操縦して噴火口の上に出た。そして火山から離れた時、爆発音がSPに轟いた。下を見ると、火山は巨大な噴火を遂げていた。とうとう間に合わなかった、ユウナはそんな悔しさに駆られた。しかし、横でミカがあることに気づいたような素振りを見せた。
「ねぇ、あれ!」
ユウナは前を向くと、噴火の影響で先ほどまで曇っていた空が、だんだんと晴れていく。雲間から、太陽の光が漏れてくる。それは、まるで地獄が天国へと変わる様を表しているようにも見えた。
その後、二人は皆のところに戻った。その途中、浮かない表情をしているユウナにミカは言った。
「まぁ、やれるだけのことはやったんだし、よかったんじゃない?」
「でも、結局防げなかった……」
「まぁ、どっちにしろこれでもう安全になったわけじゃん? だから、次のこと考えようよ」
ミカに言われ、ユウナも笑顔で答えた。
「そうだね……」
その表情を見て、ミカも安心したように笑っていた。やがて、建物が見えてきた。真司たちが、入り口付近で心配そうに二人のことを待っている。二人が戻ってくるのを見て、真っ先にアカリが駆けてきた。
「二人とも! 大丈夫だった?」
「うん、何とかね」
「そっちはどう?」
ユウナがきくと、アカリは答えた。
「特に変わったことはなかったよ」
「そう、よかった……」
ユウナも、それをきいて胸を撫で下ろしていた。ユウナはその時、足元を誰かに触られているような感覚になった。ふと下を見ると、レッドがユウナの足にすり寄ってきていた。レッドとは、「ホノりん」という火属性のモンスターだ。ユウナは、レッドを抱きかかえた。それを見たアカリが、
「この子、ユウナちゃんがいない間、ずっと恋しがってたよ」
と、微笑ましそうに言った。
「そうなんだ……、ごめんね」
アカリの話をきいたユウナは、レッドに言った。すると、
「おーい!」
と言いながら、真司が走ってきた。
「あ、ただ今帰りました」
ユウナが真司に告げると、真司が言うのだ。
「疲れてるだろうけど、ちょっと来てくれるか? 父さんが呼んでる」
「えっ……?」
真司の話をきき、ユウナはまた不安を抱いた。次から次へと、問題が襲ってくるような、そんな気がしたのだ。
部屋に行くと、画面越しに正彦が皆に話した。
「一年ほど前、宝玉の話をしたと思うんだが、覚えているか?」
「はい。何か、わかったんですか?」
ユウナが尋ねると、正彦は首を横に振るのだった。
「いや、まだ場所は特定できていない。宝玉には五種類あり、それぞれ各属性の力を宿している。その中に、剣が封印されているらしいんだ。その剣をすべて集めた暁には、この世界を支配する力を得ることができる。そうメールには書かれていた」
正彦の話をきいて、アカリが呟くように言った。
「そのメールって、あのサタールって人が送ってきたのかな……」
「恐らく、そうだろう。やつは、我々にゲームを仕掛け、弄んでいるのだ。やつの狙いは、私だ。しかしやつは手段を択ばない。そのため、君たちが傷つこうとお構いなしだろう。そのことを、呉々も忘れないでいてほしい」
正彦が言うので五人は、
『はい』
と、揃って返事をする。それをきいた正彦も頷いて、
「では、私はこれで失礼する」
そう言うと、また通信が切れた。そして五人は、また気持ちを新たにしたのだった。
一方、研究室で正彦は考え事をしていた。これは、遊びではなく戦争なのだと、自分に言い聞かせていたのだろう。そこへ、ヒロインが来て声をかける。
「教授、今日はもう休まれたらどうですか?」
「いや、もう少しだけここにいさせてくれ」
正彦は、両手で顔を覆いながら答えた。すると、ヒロインは言った。
「教授に、お客さんが見えてますよ」
それをきいて、正彦はふり向く。
「客……?」
正彦は、ヒロインに連れられてリビングに行った。戸を開けると、そこにいたのは……。
「相変わらず、暗い顔をしてのお出ましか」
真宏が、そう言った。
「吉田君……、来ていたのか」
正彦は、驚きながら言った。
「来てて悪かったな。もう当分来られなくなると思ったから、一応挨拶に来ただけだよ」
「どういうことだ?」
正彦は真宏の前に座ると、美千子が補足した。
「実は、今日で東京に戻るんですって。恵ちゃんも一緒に」
「そうだったのか……」
「で、あいつらにも一言言ってやろうかと思ってな」
真宏の話をきき、
「あ、いや……。あの子たちは今……」
と、気まずそうな顔をする正彦。しかし、真宏は笑顔でこう言った。
「話はきいてる。あいつら、あの世界に住み始めたんだってな。ちょっと案内してくれよ」
「……いいのか?」
「何がだよ」
「今度もまた、彼女たちを危険な目に遭わせている。私は、君に責められるようなことをしてばっかりだ」
「まぁ、ちょっとは思ってるかな。けど、今はアンタの気持ちもわかる。守りたいんだよな、あの世界を」
真宏は、にっこりと微笑んだ。その気持ちは、正彦にも伝わった。大学時代には絶対に見せなかったような表情も、今では真宏は正彦に対してするようになっていた。それが、どれほど嬉しいことなのか、正彦は身をもって知った。
その後、真宏はSPの中に入り、ユウナがいる部屋に行った。ユウナが部屋にいると、ノックがきこえた。
「はい」
ユウナはアカネかと思い、ドアの方を見た。しかし、中に入ってきたのはアカネではなく、真宏だったのだ。それを見ると、ユウナは驚きを隠せなかった。
「先輩……?」
「久しぶりだな」
「どうして、ここに……?」
「一回、話しておきたかったんだよ。俺、もうここ来ねえし」
「どういうことですか?」
ユウナは、真宏の言ったことの意味がわからなかった。すると、真宏はユウナの隣の席に腰を下ろした。
「実は、これから東京の実家帰ることにしたんだ」
「それって、ご家族も一緒に?」
「あぁ。あいつ、今でもユウナのこと友達だって言ってる。当分、会ってないのにな」
「いえ。長谷川さんと私は、友達ですから。結婚式にも出席してくれて、手紙でも何度かやり取りしてましたから。でもまさか、先輩と結婚してたなんて……、正直驚きました」
ユウナが言うので、真宏も微笑した。本音を言えば、恵が真宏と結婚したときいた時、ユウナは嬉しかった。恵はずっと、真宏のことを好きだったからだ。そのことを打ち明けられた時、ユウナは恵は本気なのだと思った。それ故に、嬉しかったのだ。
「先輩」
「何だよ?」
「彼女を、いつまでも幸せにしてあげてください」
ユウナは、真宏を真っ直ぐな視線で見つめた。すると、少し照れたように真宏は目線を逸らした。
「……当たり前だよ。だからお前も、無理だけはすんなよ。絶対に……、生きろ」
その言葉は、ユウナに計り知れないほど大きな希望を与えた。そして、ユウナは大きく頷いた。真宏も、嬉しそうに笑っている。その時、一瞬だけ大学時代にタイムスリップしたような感覚になった。あの楽しかった時間が再び戻って来たような、そんな気がしたのだ。それとは裏腹に、時計の針は現在を忙しなく進んでいた。
ユウナたちはその後、再び正彦に呼ばれた。
「先日、残りのすべてのダンジョンが復旧した」
それは、吉報だった。久しぶりに、皆に笑顔が戻る。
「しかし、油断してはならない。やつは、何をしてくるかわからない。今もどこかで、我々の動きを監視しているはずだ」
それをきき、ユウナは気持ちを新たに切り替えるのだった。正彦の言うように、気を抜くわけにはいかない。必ず、次も確実に攻略せねばならない。
「わかりました、気をつけます」
ユウナが言うと、正彦もゆっくりと頷く。
「それで、次はどこ行けばいいんですか?」
ミカが尋ねると、正彦は答えた。
「第三十エリア、天上の海原だ」
「天上の海原……?」
「あぁ。そこのボスは防御が非常に高い。そのため、敵の防御力を弱体化させるスキルを持つモンスターを連れていくことを勧める」
「敵の防御を弱体化って……、そんなやついた?」
ミカはそう言って、ユウナとアカリを交互に見る。するとアカリが、思いついたように話すのだ。
「あ、うちに任せて。今育ててるんだけど、ちょうどいい子がいるから」
「じゃ、お願いね」
「うん」
最後に、正彦はこう付け加えた。
「今回の任務は、三人で行ってくれ。今までとは違い、強敵がいる。それも奴らによって、攻撃的なプログラムに書き換えられているだろう。かなり危険を伴うと思うが、それでも行ってくれるか」
「はい、もちろんです。きっと、攻略してみせます」
ユウナは、強気に答えた。それは、正彦を少しでも安心させたかったからかもしれない。正彦も、真剣な顔つきで頷いた。
「よし、じゃあ早速行ってくれ。君たちのモンスターは、外からヒロイン君が定期的に回復してくれる。では、健闘を祈っているよ」
『はい!』
三人は、声を揃えて答えた。どんな強敵がいようと、行かなければならない。この世界、SPを救うためには、行かなければいけないのだと、ユウナはさらに意気込んだ。そして三人は、そのダンジョンを目指して出発していった。その様子を、正彦も現実の世界から祈るようにして見ていたのである。
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中谷優奈
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鶴ケ崎麗菓
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月見里美香
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夢野あかり
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池谷大輝
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相場善秀