パズル&ドラゴンズ~もうひとつの旅~   作:葉之和 駆刃

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第43話 天上の海原~オーシャン・オブ・ヘブン~(その弐)

 行くと、そこは燃え盛る炎の海と化していた。生身で飛びこめば、すぐさま灰になってしまいそうな、灼熱地獄だ。

 

「ユウナ、先行くね」

 

 ミカは言うと、万能太郎の周りにシールドを張る。そして中に入っていくので、ユウナも同じようにシールドを張り、急いでミカに続いていった。

 中では、マグマがボコボコと音を立てていた。シールドを張っていても、中にまで熱が伝わってくる。ユウナは額に汗をかきながら、奥へ進んだ。

 

 やがて、大きな噴火口に出た。入り口付近よりも、マグマが近い。

 

「ねぇ、あれ見て!」

 

 ミカが指さした。シールドを張っていると外からの音がほとんどきこえないため、仲間とはテレビ電話で会話するのだ。ユウナがミカの指さす方を見ると、噴火口付近から水が噴き出している。あれが、恐らく火山の噴火を促しているのだろう。ユウナは、それを何とか食い止められないものかと模索した。その時、ふとある考えが浮かんだ。

 ユウナはハンドルを目一杯引き、上の方に向かった。

 

「ユウナ!?」

 

 ミカは呼んだが、ユウナは止まることなく、上へ上へと向かう。そこで、モンスターを召喚した。それは、「サムライオーガ」というモンスターだ。サムライオーガは、火属性のためマグマの熱をもろともしない。ユウナは、それに命令を送った。

 

「その水を、岩で塞いで!」

 

 それをきいて、ユウナが何をしようとしているのか、ミカも察した。そしてミカも同じように、自分のモンスターを召喚する。召喚されたのは、「アイスオーガ」という水属性のモンスターだった。

 二体のオーガは、火山の一部を削り取ると岩に変形させた。それを水が噴き出している箇所に、次々と積んでいく。もう時間がない。ユウナは、指を組んで祈りを捧げた。

 

 数分後、水が完全に塞がれた。そして、ゴゴゴゴという音とともにマグマの周りが崩れ始める。それを見て危険を感知したミカが、

 

「ユウナ、逃げるよ!」

 

 と言うので、二人はオーガを元の場所へ返し、必死に万能太郎を操縦して噴火口の上に出た。そして火山から離れた時、爆発音がSPに轟いた。下を見ると、火山は巨大な噴火を遂げていた。とうとう間に合わなかった、ユウナはそんな悔しさに駆られた。しかし、横でミカがあることに気づいたような素振りを見せた。

 

「ねぇ、あれ!」

 

 ユウナは前を向くと、噴火の影響で先ほどまで曇っていた空が、だんだんと晴れていく。雲間から、太陽の光が漏れてくる。それは、まるで地獄が天国へと変わる様を表しているようにも見えた。

 

 その後、二人は皆のところに戻った。その途中、浮かない表情をしているユウナにミカは言った。

 

「まぁ、やれるだけのことはやったんだし、よかったんじゃない?」

「でも、結局防げなかった……」

「まぁ、どっちにしろこれでもう安全になったわけじゃん? だから、次のこと考えようよ」

 

 ミカに言われ、ユウナも笑顔で答えた。

 

「そうだね……」

 

 その表情を見て、ミカも安心したように笑っていた。やがて、建物が見えてきた。真司たちが、入り口付近で心配そうに二人のことを待っている。二人が戻ってくるのを見て、真っ先にアカリが駆けてきた。

 

「二人とも! 大丈夫だった?」

「うん、何とかね」

「そっちはどう?」

 

 ユウナがきくと、アカリは答えた。

 

「特に変わったことはなかったよ」

「そう、よかった……」

 

 ユウナも、それをきいて胸を撫で下ろしていた。ユウナはその時、足元を誰かに触られているような感覚になった。ふと下を見ると、レッドがユウナの足にすり寄ってきていた。レッドとは、「ホノりん」という火属性のモンスターだ。ユウナは、レッドを抱きかかえた。それを見たアカリが、

 

「この子、ユウナちゃんがいない間、ずっと恋しがってたよ」

 

 と、微笑ましそうに言った。

 

「そうなんだ……、ごめんね」

 

 アカリの話をきいたユウナは、レッドに言った。すると、

 

「おーい!」

 

 と言いながら、真司が走ってきた。

 

「あ、ただ今帰りました」

 

 ユウナが真司に告げると、真司が言うのだ。

 

「疲れてるだろうけど、ちょっと来てくれるか? 父さんが呼んでる」

「えっ……?」

 

 真司の話をきき、ユウナはまた不安を抱いた。次から次へと、問題が襲ってくるような、そんな気がしたのだ。

 

 部屋に行くと、画面越しに正彦が皆に話した。

 

「一年ほど前、宝玉の話をしたと思うんだが、覚えているか?」

「はい。何か、わかったんですか?」

 

 ユウナが尋ねると、正彦は首を横に振るのだった。

 

「いや、まだ場所は特定できていない。宝玉には五種類あり、それぞれ各属性の力を宿している。その中に、剣が封印されているらしいんだ。その剣をすべて集めた暁には、この世界を支配する力を得ることができる。そうメールには書かれていた」

 

 正彦の話をきいて、アカリが呟くように言った。

 

「そのメールって、あのサタールって人が送ってきたのかな……」

「恐らく、そうだろう。やつは、我々にゲームを仕掛け、弄んでいるのだ。やつの狙いは、私だ。しかしやつは手段を択ばない。そのため、君たちが傷つこうとお構いなしだろう。そのことを、呉々も忘れないでいてほしい」

 

 正彦が言うので五人は、

 

『はい』

 

 と、揃って返事をする。それをきいた正彦も頷いて、

 

「では、私はこれで失礼する」

 

 そう言うと、また通信が切れた。そして五人は、また気持ちを新たにしたのだった。

 

 一方、研究室で正彦は考え事をしていた。これは、遊びではなく戦争なのだと、自分に言い聞かせていたのだろう。そこへ、ヒロインが来て声をかける。

 

「教授、今日はもう休まれたらどうですか?」

「いや、もう少しだけここにいさせてくれ」

 

 正彦は、両手で顔を覆いながら答えた。すると、ヒロインは言った。

 

「教授に、お客さんが見えてますよ」

 

 それをきいて、正彦はふり向く。

 

「客……?」

 

 正彦は、ヒロインに連れられてリビングに行った。戸を開けると、そこにいたのは……。

 

「相変わらず、暗い顔をしてのお出ましか」

 

 真宏が、そう言った。

 

「吉田君……、来ていたのか」

 

 正彦は、驚きながら言った。

 

「来てて悪かったな。もう当分来られなくなると思ったから、一応挨拶に来ただけだよ」

「どういうことだ?」

 

 正彦は真宏の前に座ると、美千子が補足した。

 

「実は、今日で東京に戻るんですって。恵ちゃんも一緒に」

「そうだったのか……」

「で、あいつらにも一言言ってやろうかと思ってな」

 

 真宏の話をきき、

 

「あ、いや……。あの子たちは今……」

 

 と、気まずそうな顔をする正彦。しかし、真宏は笑顔でこう言った。

 

「話はきいてる。あいつら、あの世界に住み始めたんだってな。ちょっと案内してくれよ」

「……いいのか?」

「何がだよ」

「今度もまた、彼女たちを危険な目に遭わせている。私は、君に責められるようなことをしてばっかりだ」

「まぁ、ちょっとは思ってるかな。けど、今はアンタの気持ちもわかる。守りたいんだよな、あの世界を」

 

 真宏は、にっこりと微笑んだ。その気持ちは、正彦にも伝わった。大学時代には絶対に見せなかったような表情も、今では真宏は正彦に対してするようになっていた。それが、どれほど嬉しいことなのか、正彦は身をもって知った。

 

 その後、真宏はSPの中に入り、ユウナがいる部屋に行った。ユウナが部屋にいると、ノックがきこえた。

 

「はい」

 

 ユウナはアカネかと思い、ドアの方を見た。しかし、中に入ってきたのはアカネではなく、真宏だったのだ。それを見ると、ユウナは驚きを隠せなかった。

 

「先輩……?」

「久しぶりだな」

「どうして、ここに……?」

「一回、話しておきたかったんだよ。俺、もうここ来ねえし」

「どういうことですか?」

 

 ユウナは、真宏の言ったことの意味がわからなかった。すると、真宏はユウナの隣の席に腰を下ろした。

 

「実は、これから東京の実家帰ることにしたんだ」

「それって、ご家族も一緒に?」

「あぁ。あいつ、今でもユウナのこと友達だって言ってる。当分、会ってないのにな」

「いえ。長谷川さんと私は、友達ですから。結婚式にも出席してくれて、手紙でも何度かやり取りしてましたから。でもまさか、先輩と結婚してたなんて……、正直驚きました」

 

 ユウナが言うので、真宏も微笑した。本音を言えば、恵が真宏と結婚したときいた時、ユウナは嬉しかった。恵はずっと、真宏のことを好きだったからだ。そのことを打ち明けられた時、ユウナは恵は本気なのだと思った。それ故に、嬉しかったのだ。

 

「先輩」

「何だよ?」

「彼女を、いつまでも幸せにしてあげてください」

 

 ユウナは、真宏を真っ直ぐな視線で見つめた。すると、少し照れたように真宏は目線を逸らした。

 

「……当たり前だよ。だからお前も、無理だけはすんなよ。絶対に……、生きろ」

 

 その言葉は、ユウナに計り知れないほど大きな希望を与えた。そして、ユウナは大きく頷いた。真宏も、嬉しそうに笑っている。その時、一瞬だけ大学時代にタイムスリップしたような感覚になった。あの楽しかった時間が再び戻って来たような、そんな気がしたのだ。それとは裏腹に、時計の針は現在を忙しなく進んでいた。

 

 

 ユウナたちはその後、再び正彦に呼ばれた。

 

「先日、残りのすべてのダンジョンが復旧した」

 

 それは、吉報だった。久しぶりに、皆に笑顔が戻る。

 

「しかし、油断してはならない。やつは、何をしてくるかわからない。今もどこかで、我々の動きを監視しているはずだ」

 

 それをきき、ユウナは気持ちを新たに切り替えるのだった。正彦の言うように、気を抜くわけにはいかない。必ず、次も確実に攻略せねばならない。

 

「わかりました、気をつけます」

 

 ユウナが言うと、正彦もゆっくりと頷く。

 

「それで、次はどこ行けばいいんですか?」

 

 ミカが尋ねると、正彦は答えた。

 

「第三十エリア、天上の海原だ」

「天上の海原……?」

「あぁ。そこのボスは防御が非常に高い。そのため、敵の防御力を弱体化させるスキルを持つモンスターを連れていくことを勧める」

「敵の防御を弱体化って……、そんなやついた?」

 

 ミカはそう言って、ユウナとアカリを交互に見る。するとアカリが、思いついたように話すのだ。

 

「あ、うちに任せて。今育ててるんだけど、ちょうどいい子がいるから」

「じゃ、お願いね」

「うん」

 

 最後に、正彦はこう付け加えた。

 

「今回の任務は、三人で行ってくれ。今までとは違い、強敵がいる。それも奴らによって、攻撃的なプログラムに書き換えられているだろう。かなり危険を伴うと思うが、それでも行ってくれるか」

「はい、もちろんです。きっと、攻略してみせます」

 

 ユウナは、強気に答えた。それは、正彦を少しでも安心させたかったからかもしれない。正彦も、真剣な顔つきで頷いた。

 

「よし、じゃあ早速行ってくれ。君たちのモンスターは、外からヒロイン君が定期的に回復してくれる。では、健闘を祈っているよ」

『はい!』

 

 三人は、声を揃えて答えた。どんな強敵がいようと、行かなければならない。この世界、SPを救うためには、行かなければいけないのだと、ユウナはさらに意気込んだ。そして三人は、そのダンジョンを目指して出発していった。その様子を、正彦も現実の世界から祈るようにして見ていたのである。

序盤のキャラで、最も印象深い登場人物は?

  • 中谷優奈
  • 鶴ケ崎麗菓
  • 月見里美香
  • 夢野あかり
  • 池谷大輝
  • 相場善秀
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