パズル&ドラゴンズ~もうひとつの旅~   作:葉之和 駆刃

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第44話 星空の神域~テンプル・オブ・スターリースカイ~(その弐)

 外に出ると、向こうの山から煙が上がっている。何が起きているのか、咄嗟にはわからない。それでも、ユウナは行かなければという衝動に駆られた。

 その音をきいたのは、勿論その三人だけではなかった。中からミカやアカリ、アカネと慎一郎も飛び出してきた。

 

「何が起こってるんだ?」

 

 慎一郎が、真司にきいた。

 

「わからん。あそこは、マルースクレーターの辺りだろう」

 

 真司は、煙が上がっているところを見ながら言う。マルースクレーターは、SPに設置されているダンジョンのひとつだ。ユウナはそれをきき、またダンジョンで何かあったのかと不安を隠しきれなかった。

 

「私、行ってみます」

「大丈夫か?」

「はい。きっとまた、早くしないと取り返しのつかないことになる気がするんです」

 

 ユウナが必死に訴えると、真司が言った。

 

「じゃあ、ここは二手に分かれよう。君とあとの二人は、向こうの様子を見てきてくれ。残りのメンバーは、今のことを父さんに報告するんだ」

「はい」

 

 ユウナは答えると、次にミカが言った。

 

「でも、あとの二人って?」

「うちも行く」

 

 先に、アカネが名乗りを上げた。残るは、あと一人だ。その時、ユウナはレイカの方を見ると言った。

 

「鶴ケ崎さん、一緒に来てほしいの」

 

 それにはレイカ本人どころか、周りからも驚きの視線が向けられる。さらに、ユウナは言った。

 

「私、知ってる。鶴ケ崎さんが、まだ乗り気じゃないってことくらい。でも、あそこは木属性のモンスターたちが多くいるの。鶴ケ崎さん、ウッド・マスターだったよね。だから今回だけは、鶴ケ崎さんの力がどうしても必要なの! お願い!」

 

 ユウナは、必死に懇願する。しばらくユウナを見つめていたレイカは、

 

「わかったわよ」

 

 と、折れたように言った。それをきいて、ユウナも嬉しそうな笑みを浮かべる。そして、ユウナたちはマルースクレーターに行くことになった。

 

 そのマルースクレーターでは、二人がルリに居場所を特定され、見つかってしまっていた。ルリはニヤリと笑いながら、二人に近づいた。

 

「まさか、こんなに可愛い子たちがSPにいたなんて~」

 

 兄は木の棒を両手で持ち、ルリを睨みつけている。

 

「そんなに睨まないで。どうやってここに入ったか教えてくれたら、すぐに帰してあげるから」

 

 ルリはそう言うが、兄にはわかっていた。ルリには、毛頭そのような気持ちなどなく、自分たちを捕まえる気なのだと。兄の両足は、ガクガクと震えている。その後ろで、妹が今にも泣きそうな顔で座っている。

 

「私だって、できるだけ手荒な真似はしたくないの。だから、ねぇ、教えてくれない?」

「し、知らない!」

「そんなこと言って。じゃあ、どうしてあなたたちはここにいるの?」

「気がついたら、知らないところにいたんだ。だから、何も知らない!」

「ふ~ん。そんなことがあるのね……。まぁ、いいわ。ギガンテス、やっちゃいな」

 

 ルリは、ギガンテスに命令した。すると、ギガンテスは斧を振り落としてきた。兄は、それをすれすれで交わした。その時に、手に斧が少しかすった。兄は痛さのあまり、その場に倒れこんでしまった。

 

「お兄ちゃん!」

 

 兄を心配した妹が駆けよろうとすると、

 

「来るな!」

 

 と、兄はそれを拒んだ。

 

「ふふ、意外にしぶといのね。まぁ、次で終わりにしてあげるからいいけどね」

 

 するとまた、ギガンテスは斧を振り上げる。その瞬間、兄は目を瞑った。その時、

 

「待って!」

 

 という声がした。ルリはふり向くと、そこにユウナとレイカ、そしてアカネが駆けてきた。それを見たルリは、笑いながら言った。

 

「まぁ、これはフィフス・フォリアの皆様。やっぱり来たのね」

「は、早くここから立ち退いてください!」

 

 ユウナが言うと、レイカは呆れたように言った。

 

「敵に敬語なんて使わなくていいでしょ。それで、何が目的なの?」

 

 すると、ルリが答える。

 

「何って、知ってるくせに。我々は、サタール様に雇われた研究者。この世界をサタール様の指示通りに改造する、それこそが、私たちの目的なのよ!」

「そのサタールって人、教授の弟さんやねん。もう一度、教授と話し合う気ないん?」

 

 今度はアカネが尋ねると、ルリは高笑いをした。

 

「あるわけないでしょ! あの人は、サタール様を殺そうとしたのよ! 立派な犯罪者! だから、話し合う気なんて毛頭ないハズよ!」

 

 ユウナは、笑いながら話すルリを見ていた。ルリは笑うのをやめ、ユウナたちに言った。

 

「どう? これで諦めついた? あんたたちがいくら努力しても、結果は同じ。この世界は、どの道サタール様のものになるのよ」

「でも、すべてのダンジョンをクリアすれば、この世界は自動的になくなるって……」

「あぁ、その話ね。それならご心配なく。だって最後のダンジョンのボスは、サタール様ご自身だもの」

 

 ルリが言うのをきき、ユウナは愕然とする。それがどういうことなのか、すぐには理解できなかった。すると、ルリは続ける。

 

「サタール様がここに来られた時、あなたたちにとって未知の領域にダンジョンを創ったの。それが、あのお城。だからね、そこを制覇しない限りはこの世界は永遠に存在し続ける。つまり、丸ごとサタール様のものになる。そうとわかれば、やる気なくしたでしょ? さ、悪いことは言わないからお家に帰りなさい」

 

 そして、ルリはまた笑う。ユウナは、拳を握りしめた。こんなに人を恨めしいと思ったことは、今までに例がない。それだけ、ルリのことが許せなかった。サタールなら、まだわかってくれるだろうという気持ちがあった。ユウナはポケットに手を入れると、スマホを取り出した。それを見たルリは、

 

「何? やるの?」

 

 と、言ってくる。

 

「私は……、この世界を守りたい。そして、あなたのことが許せない」

「ふん! 私は、サタール様の指示通りに動いてるだけ。文句があるなら、サタール様に言ってちょうだい! 八つ当たりも甚だしくてウザったらしい」

 

 それをきいて、ユウナは我慢できずにモンスターを召喚しようとした。するとそれより数秒早く、レイカが前に出てきた。ユウナの横を通りすぎたと思うと、ルリにビンタをお見舞いしたのだ。ルリはよろけながら、自分の頬に手を当てた。ユウナにとっても、今起こったことが信じ難かった。

 

「ちょっと、何すんのよ!」

 

 ルリは、鬼のような形相でレイカを睨みつける。しかし、レイカは冷静にルリを見つめ返している。

 

「わからない? あなたは今、自分は関係ないって言ったのよ」

「だって、そうでしょ? サタール様の本当の目的も、私たちには知らされてないんだから」

「じゃあ、なんで関係ない子供たちにも攻撃しようとしたのよ。誰かから、命令でもされたの?」

「えぇ。サタール様から、邪魔な者は誰であろうと排除しろと命を承ったの。私は、それを遂行しているだけ。本当なら、私もこんなことしたくはないんだけど」

「それにしては、随分と楽しそうだったわね」

 

 レイカが皮肉を入れると、ルリはニヤリと笑った。

 

「えぇ、楽しいわ。人が苦しんでる姿を見るのって、本当に楽しい。自分では何もできずに、ただ足掻いているだけの人なんて最高じゃない」

 

 これで、ルリの本性がはっきりとした。レイカは、わざと過激な対応をすることでルリの気持ちを探っていたのだ。そして、それは二人の会話をきいていたユウナにもわかった。

 

「で、どうするの? 戦うの?」

 

 ルリは、三人を見て言った。どの道、戦うことになるだろうとユウナは身構えていた。それをルリも把握し、また笑う。

 

「じゃあ、仕方ないわね。教えてあげる。あなたたちの考え方が、どれほど浅はかかってことをね!」

 

 ルリが言うと、ギガンテスが前に出てきた。ルリが口で命令しなくても、テレパシーで動いているのだ。そしてギガンテスは、また斧を振り上げる。ユウナは咄嗟に、目の前にティラノスを召喚した。火属性同士の対決だ。

 

「この世界で、仲間以外と対戦(デュエル)したことある?」

「……ありません。でも、私は勝ちます」

「そんな強気な発言も、いつまでもつかしらね」

 

 そして、ついに対戦が始まろうとした時……。

 突発的に、周りが明るくなった。そのあまりにも眩しい光に、ルリやユウナたちは目を閉じる。そして目を開けると、目の前にはプテラドスがいた。すると、プテラドスは空に向かって甲高い鳴き声を轟かせる。そうすると、また足音のような音が近づいてくるのがわかった。そして、茂みから何かが飛び出す。それは、キマイラだった。

 キマイラは、ギガンテスの前に立ちはだかった。それを見て、ルリの顔色が変わる。何かに気づいたような顔だ。最後に、人間が二人飛び出してきた。

 

「よ~し、間に合ったな。ここは俺らに任せてくれ」

「フギン様!」

 

 ルリは、困惑したような表情を浮かべる。出てきたのは、フギンとミーサだったからだ。

 

「こいつらは俺たちで何とかする。お前は、早く研究所に戻れ」

 

 ミーサも、ルリに命令した。サタールの子であり、しもべでもある二人の言うことには、ルリも従わざるを得ない。ルリは悔しそうな顔をしながらも、

 

「……わかりました」

 

 と言い、ギガンテスを消すとその場から走り去っていった。それを見たあと、ユウナはフギンの後ろ姿に声をかける。

 

「あ、あの……」

「さ~て、俺らも戻るかな」

 

 フギンは伸びをすると、ミーサとともに去っていこうとした。

 

「待ってください!」

 

 ユウナは、反射的に二人を呼び止める。

 

「何だ?」

 

 フギンがふり向くと、ユウナは尋ねた。

 

「あの。どうして、助けにきてくださったんですか?」

「なんでだろうな~。たまたま、お前たちが見えたんだ。あいつにも、悪気があったわけじゃねえ。まぁ、大目に見てやってくれよ」

 

 しかし、ユウナには腑に落ちないことがもうひとつあったのだ。

 

「でも、どうしてですか? お二人も、私たちの……。教授の、敵なんですよね? それなら、どうしてご自分の仲間から庇ってくれたりしたんですか?」

 

 フギンは、しばらく考えた。そして、こう言うのだ。

 

「わからねえや」

 

 それだけ言うと、二人はモンスターに乗ってまたどこかに行ってしまった。その時、フギンの右手から包帯のようなものが靡いているのが見えたが、ユウナはその時はまだ気にしなかった。二人が去ったあと、目に映ったのはルリに襲われていた子ども二人だ。兄の方は右手に深い怪我を負い、ぐったりと横たわっている。ユウナはそこへ駆けより、手を差し延べた。

 

「大丈夫?」

 

 しかし先ほどの出来事もあり、警戒心が強くなっていたのか、兄はユウナの手を払った。この子供たちが誰なのか、どこから来たのか、それはユウナにもわからない。そしてもう一度、声をかけてみる。

 

「安心して。私たちは、あなたたちの味方だから。信じてほしい」

 

 ユウナは、二人の目を見て必死に伝えた。それが通じたのか、兄の目は穏やかになっていった。

 

 その後、ユウナは兄を負ぶって山を下りた。アカネが妹の方の手を引き、レイカもその後に続く。山を下りると、ユウナはあるものに目を留めた。それは、石室のようなものだ。洞窟の前には岩の扉があり、それを見るとハッとあの出来事を思い出す。

 

『こいつで、オーディンを呼ぶことができる』

『こいつは、オーディンの心自身。こいつをどうコントロールできるかが、この世界の命運を揺るがす』

 

 あの時、ここでフギンはユウナに水晶のようなものを見せながら語った。あの水晶は、今でもまだあの石室の中にあるのだろうか。そして、あの時フギンが自分に言ったことが何だったのか、ユウナは未だに理解できずにいた。

 

 そして、三人は子供たちを連れて皆のところに戻った。部屋では、兄が手当てを受けた。アカネが包帯をペチンと叩き、

 

「よし、完了!」

 

 と言った。それを見て、妹も嬉しそうな表情になった。妹が笑うのを初めて見たユウナは、それを微笑ましそうに見つめた。

 

 ユウナの話を大体きき終わったミカは、

 

「でもさ、その二人なんで助けてくれたんだろうね」

 

 と、不思議そうに言う。それはユウナも、ずっと疑問に思っていたことだ。するとミカは、さらに続ける。

 

「何年か前にも思ったけどさ、なんかあたしらに協力してくれること多くない?」

「たしかに……」

 

 アカリも、不思議そうに呟いた。その疑問はユウナだけでなく、ほかの皆も抱いていることだったのだ。ユウナは、落ち着きを取り戻しつつある兄に質問した。

 

「ねぇ。君たちは、どうしてあそこにいたの?」

 

 すると、兄は首を横に振りながら答える。

 

「わからない。気がついたら、あの場所にいて……」

 

 それ以外、兄は何も答えようとしなかった。ユウナは、どうにか二人を元の場所に帰してあげたいと考えた。こうなれば、正彦に直接相談するしかない。

序盤のキャラで、最も印象深い登場人物は?

  • 中谷優奈
  • 鶴ケ崎麗菓
  • 月見里美香
  • 夢野あかり
  • 池谷大輝
  • 相場善秀
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