パズル&ドラゴンズ~もうひとつの旅~   作:葉之和 駆刃

138 / 172
第45話 龍の夜~ドラゴンズ・ナイト~(その壱)

 ここはダークネス・キャッスル。サタールは部屋に研究者たちを集め、今後の活動内容についてきいていた。コサカが前に出て、サタールに報告をした。

 

「サタール様、例の伝説龍を復活させる件についてなのですが……」

「それがどうしたと言うのだ」

 

 サタールがきくと、次に金色ルリが出てきた。

 

「はい。長い間、地下に封印しておりました故に、復活させるとなると、我々にも危険が及ぶのではないかと思いまして」

「そうか……。たしかに、調性が必要かもしれないな」

「それについては、ほかの者が行っております。伝説龍を復活させることによって、侵略がしやすくなれば、これ以上ない安息かと存じます」

「では、それで頼む」

 

 コサカの言葉をきき、サタールも言った。すると二人も、薄く笑っていた。研究者たちも、サタールに頭を下げながらニヤニヤしていた。それを、部屋の外からきいていた者がいる。フギンである。彼もまた、サタールの思惑について探りを入れていたのだ。

 

 

 

第四十五回 龍の夜(ドラゴンズ・ナイト)

 

 

 ユウナはバルコニーに出て、風に吹かれていた。そして、あの時のフギンの言葉をまた思い出していた。

 

『オヤジの標的は、伯父さんただ一人だ。お前らは、本来なら何の関係もない。だから、お前らを傷つけたくない。ただ、それだけだ』

 

 あの言葉は、いったい何を意味していたのだろうか。考えれば考えるほど、わからなくなっていく。その時、ユウナは誰かに呼ばれた。

 

「ユウナ!」

 

 見ると、悠二郎が大毅の手を引いて歩いてくる。ユウナはバルコニーの戸を開けると、悠二郎のところに行った。

 

「どうしたの?」

「ちょっと、気になってさ。あと、大毅が会いたがってたから」

 

 悠二郎が言うので、ユウナは大毅の方を見ると、大毅も笑いながらユウナを見つめてくる。それを見たユウナは、申し訳ない気持ちになった。ここ数日、家にはほとんど帰っていないのだ。まだ幼い大毅の気持ちを思うと、心苦しくなる。

 

「ごめん……」

「なんでユウナが謝るの?」

「だって、悠ちゃんに何でも任せっきりで、私は自分のことばっかりやって。ほんとに、酷いよね、私。大毅にも、全然会ってあげられなくて……」

「何言ってるんだよ」

 

 不意に、悠二郎がユウナの両肩を持った。

 

「そんなこと、百も承知じゃないか。だから、俺もこの世界に来たんだ。お前がそんなんだと、俺も大毅も戸惑ってしまう。だから、何でも遠慮せずに言ってくれよ。俺も、可能な限り応援するから」

「悠ちゃん……」

 

 すると、建物の扉が開いてミカとアカリも出てきた。すると二人を見つけ、

 

「あ、来てたんだ。大毅君、久しぶり〜!」

「声がしたから。いらっしゃい!」

 

 と、大毅に声をかけた。しかし大毅は、ユウナの後ろに隠れてしまった。

 

「あれ? 怖がらせちゃった? いつになったら懐いてくれるんだろうね」

 

 ミカが言うので、ユウナは大毅に言った。

 

「こら、大毅。ちゃんと挨拶しなさい」

「…………」

 

 大毅は、ますます顔を引っ込めてしまった。すると今度は、悠二郎が大毅を抱きかかえ、二人と対面させた。

 

「ちゃんと挨拶しないとダメじゃないか。ほら」

「怖くないよ〜」

 

 ミカは、そう言って大毅の頭を撫でる。そうすると、大毅も顔を赤くした。それを見て、皆は笑っていた。このようなありふれた日常は、当たり前ではない。ユウナは思ったが、今だけは忘れようという気持ちになった。

 

 大毅と四人は中に入り、大毅が疲れて眠ってしまったあと、ようやくユウナに悠二郎と二人きりで話をする機会ができた。

 

「それで、何か進展はあったの?」

 

 最初に、悠二郎がユウナに尋ねた。そして、ユウナも話し始めた。

 

「実はこの間、不思議な出来事があって……」

 

 ユウナは、悠二郎にフギンたちのことを話した。まだ小さかった頃の彼らに会い、少しだけ話をしたと。

 

「そんなことがあったんだ……」

 

 ユウナが話し終えると、悠二郎は呟いた。さらに、

 

「これ、その子たちからもらったの」

 

 と言い、小石とクローバーを出した。クローバーの方は、栞にしていた。

 

「それで、その人が言ってたの。お父様の敵は教授だけで、私たちは本来関係ないって。でも、私はこの世界を最後まで守り抜きたい。そうしないと、教授の期待を裏切ってしまうから。それだけは、どうしても嫌なの」

 

 悠二郎も、その話を黙ってきいていた。そして、

 

「それがいい。ユウナがそうしたいなら、そうするべきだと思う」

 

 と、言うのだ。

 

「え、でも……」

「こっちのことは、俺に任せてほしい。大毅も、俺がちゃんと世話するから」

「でも、悠ちゃん一人に押し付けるなんてできない。やっぱり、夜になったら毎日帰って、家のことも半分は私がやる」

「それじゃ、ユウナの身がもたないよ。大丈夫だって、俺が何とかする。なんなら、兄貴にも手伝わせるからさ」

「兄貴が何だって?」

 

 急に声がするので、二人は驚いていると、部屋に慎一郎が入ってきた。

 

「あ、兄貴。いつからきいてたんだよ」

「ついさっきだよ。邪魔するのも悪いかなって思ってさ。それより黙ってきいてりゃ、何が手伝わせるだよ」

「あはは……」

「それで、何かご用だったんですか?」

 

 ユウナが尋ねると、慎一郎は言った。

 

「先生が呼んでる」

「教授が?」

「あぁ。もうみんな集まってるけど、どうやらまた敵が新しいことを仕掛けてくるらしい」

「それは?」

「俺も知らない。行ってみればわかるだろ」

 

 慎一郎の話をきいて、ユウナが悠二郎を見ると、悠二郎も頷いた。それを見て、ユウナは安心した。そして慎一郎とともに、皆が集まっている部屋へ行くことにした。

 

 廊下を歩いていると、不意に慎一郎が話しかけてきた。

 

「さっきの話だけどさ……」

「さっきの、ですか?」

「あぁ。俺が家事を手伝うって話、俺はべつにいいけど」

 

 それをきき、ユウナは少し驚きながら尋ねた。

 

「本当ですか?」

「嘘ついてどうするんだよ。実は俺も最初、くだらないって思ってた。俺も学生のころ、先生の授業は受けてた。面白くて、ためになる話もたくさんしてくれた。でも、命かけてまでこの世界守ろうとする気持ちが、いまいちよくわからなかったんだよ。けど、君らを見て思い知らされたよ。人にはそれぞれ、守りたいものがある。だからこそ、一生懸命になれるんだって。だから、俺でよかったら力になるよ。俺でも、それくらいのことはできると思うし。けど、この世界を救えるのは、君とあとの四人だけ。先生もそう言ってたんだから、きっとそうなんだろうな。だから、最後まであの人に尽力してあげてほしい。俺からも、お願いするよ」

 

 慎一郎の話をきいていたユウナは、なぜか涙が出てきそうになった。

 

「お兄さん……」

「お……、おい、泣くなよ。あいつが見てなくてよかった〜。見られてたら、何言われるかわからんからな」

「すみません……」

 

 ユウナにとって、慎一郎からそのようなことを言われるなど、想像もしていなかったのだ。その分、喜びが大きかったのだ。そんな会話をしている間に、部屋に着いた。部屋の扉を開けると、ミカ、アカリ、アカネ、真司といういつものメンバーに加え、その中になんとレイカもいた。ユウナはレイカを見つめるが、レイカは一向にユウナと目を合わせる気はないようだ。それでも、ようやくやる気になってくれたのだと、ユウナの中の嬉しさが倍増した。

 

「みんな、集まってくれたな」

 

 テレビ画面を通して、正彦が皆に言った。正彦の後ろには、ヒロインも控えている。

 

「それで、何があったんです?」

 

 アカネが、正彦にきいた。すると、正彦も即座に返答する。

 

「また、やつから挑戦状が届けられた」

「挑戦状?」

 

 部屋は、またざわつき始める。

 

「挑戦状というか、また例によって差出人不明のメールが届けられてね」

「それって、また宝玉についてですか?」

 

 ユウナも尋ねると、正彦は首を横に振った。

 

「いや、今回は違う。それでは、読み上げる」

 

 正彦は、そのメールをプリントアウトした紙を広げた。

 

『2022年5月22日。ダンジョン・伝説龍の足跡にて、伝説龍復活の兆しあり。その暁には、SPにおけるすべての火山が一斉に噴火する。これを食い止めるには、伝説龍と対峙すべし』

 

 読み終えた正彦は言った。

 

「これは恐らく、ヘルヘイムのことだ」

「ヘルヘイム?」

「あぁ。ダンジョン・伝説龍の足跡における、最後のボスモンスターだ」

 

 するとミカが後ろを向いて、

 

「そのダンジョンってさ、最後だけまだだったよね?」

 

 ときくと、アカリも頷いた。すると、さらに正彦は続けるのだった。

 

「5月22日は来週だ。時間がない、皆で対策を考えてほしい。これはただのダンジョン攻略ではない」

「どういうことですか?」

 

 ユウナがまた尋ねると、正彦は言った。

 

「ほかとは、勝手が違うんだ。わかりやすく言えば、それを作ったのは私ではなく、やつだからだ」

 

 それをきくと、また周りが騒然となる。ヘルヘイムというモンスターは、正彦ではなくサタールが生成したというのか。それが本当なら、オーディンと同じではないかとユウナは思った。

 

「私から言えることは、そのくらいだ……。すべての火山が一斉に噴き出せば、このSPはエラーの値を大きく超し、ダンジョン未攻略のまま、この世界を構築しているすべてのデータが消えるかもしれない」

 

 正彦が言ったあと、アカネが報告する。

 

「ここ三ヶ月で、火山の噴火はSP全体で四十八件起きています。ほかにも、システムの故障など複数起きています」

「やはりか……」

 

 この世界を、そのような形で終わらせるわけにはいかない。ユウナは、そう固く誓った。それならば、まずは何をすべきか。ヘルヘイムと戦い、倒すしかないだろう。

 

「私は……、戦おうと思います」

 

 その発言に、皆の視線は一斉にユウナの方に向けられる。それでも、ユウナは己の考えを変えなかった。

 

「相手の人が何を考えてるのかわからないけど、何もしないよりはいいと思うから。それに、みんなで協力し合えば、どんな敵だとしても勝てると思うの」

 

 その考えは、どうやらほかの皆も同じようだった。

 

「だね」

「これまで、幾度となく戦ってきたんだもんね」

 

 ミカやアカリも、それぞれに賛成の意見を述べた。

 

「うちらがここにいる意味、示さなあかんしな」

 

 アカネも笑顔で、そう言ってくれた。

 

「みんな……」

 

 嬉しそうに呟くユウナ。正彦も、覚悟を決めたように告げた。

 

「ではその日、伝説龍の足跡へ向かってくれ。念のために、攻略組と待機組に分かれるといいだろう」

「わかりました」

 

 ユウナが答えると、正彦も頷いた。これは、正彦にとっても難しい判断だった。しかし、攻略を遂行することに決めた。それは、彼女たちをこの上なく信頼していたからなのかもしれない。

 

 一方、サタールはヘルヘイムが眠っている洞窟に足を運んでいた。後ろには、コサカがついて来ていた。

 

「奴らは、必ずここへ来るだろう。それまでに、解放できるか」

「お任せください。これが、我々の最終兵器ですから」

「最終兵器という割には、少しスペックが低いのではないのか?」

 

 サタールが冗談気味に言うので、コサカは真面目な顔をして言うのだった。

 

「もしも……、この計画が失敗に終わったら、あとはサタール様だけになりますよ」

 

 コサカが言うのをきき、サタールも返した。

 

「構わん。今目の前にあることに、全力を尽くすまでだ。後のことは、後で考えればいい」

「はい。我々も、全力でサポートいたします」

 

 コサカも答えると、サタールは鎖に繋がれているヘルヘイムを見上げていたのだった。ヘルヘイムはまだ目を閉じているが、今にも目覚めそうな雰囲気を醸し出していた。

序盤のキャラで、最も印象深い登場人物は?

  • 中谷優奈
  • 鶴ケ崎麗菓
  • 月見里美香
  • 夢野あかり
  • 池谷大輝
  • 相場善秀
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。