そして月曜日。ユウナは、レイカのクラスをのぞいてみた。しかし、レイカはどこにもいなかった。
「今日、来とらんみたいよ」
アカリによれば、この日の朝練習の時、智美は部活に顔を出さなかったらしい。
「先生も?」
ユウナは少し驚いた。あの日、二人はどんな言葉を交わしたのだろう、それが気になって仕方なかった。そう思っていると、レイカが歩いてきた。ユウナはそれを見て、安心した。そして、レイカに声をかけた。
「鶴ケ崎さん、ちょっといいかな」
二人は廊下の隅に寄り、話した。
「鶴ケ崎先生とバスが同じで、ちょっと話したんだけど」
「あなたには関係ないでしょ」
ユウナが言おうとしていることを察したかのように、レイカは冷たく返した。
「そうだけど、でもちょっと気になったから」
それをきいて、レイカはため息をついた。
「べつに、あなたが気にしなくてもいいことよ。私はあの人が許せないだけ。今更仲良くなんてなれない。そういうことだから」
レイカはそう言って教室へ行こうとすると、ユウナは言った。
「でも、先生も反省してた。だから、もっと信じてみてもいいんじゃない?」
するとレイカはふり返り、こう言った。
「前にも言ったわね。私、あなたみたいなタイプが一番嫌いなの。自分は関係ないくせにいい人ぶって、ほんっと呆れるわ。もう私の前であの人の話はしないでね」
レイカはそう言って、教室に入った。二人の間にできた溝が埋まるのは、まだまだ先になりそうだと感じた。他人が口出しすることではないとはわかっていた。が、なぜだかユウナは、二人が幸せになることを望んだ。それは、人の役に立ちたいという思いの表れだったのかもしれない。
そして、高校はテスト一週間前に入った。部活はほとんどが休部し、昼休みや放課後は教室で勉強している生徒も多くいた。ユウナは放課後に数人の生徒が残っている部屋で勉強するのが苦手なので、残らずにすぐ帰宅した。
ユウナは、部屋で勉強していると、ふと机の横の窓の方に目をやった。日が短くなり、六時にはほとんど真っ暗だった。ユウナは、カーテンを閉めようと立ち上がった。窓の前まで行くと、ユウナはあることに気づいた。すぐ下の公園に人が立っている。この辺りは人通りが少なく、この時間帯に家の前を通るのは、ほぼ会社帰りの人か、中高生だった。ユウナは、その人の顔を見ようと、窓に顔を近づけた。暗くて顔はよく見えないが、年齢は中年らしく、白衣のようなものを着ていた。性別は、おそらく男だろう。その男が、急に上を見上げた。ユウナは、自分がいる部屋を見られたような気がして、急いでカーテンを閉めた。ユウナは、その日は机に戻って勉強を続けた。
数日後、テストが始まった。ユウナはとにかく、ケアレスミスをなくし、やったことを出しきろうと思った。思った通り、どの教科も前半は問題集通りの問題ばかりだった。そして、一日目が終了した。
帰る時に、大輝に声をかけられた。サッカー部は、テスト期間中にもかかわらず三時まで練習だという。ユウナは、「頑張ってね」と一言言い、革靴に履き替えて帰ろうとした。すると何かを思い出したように言った。
「それから、公園のことなんだけど……」
小学生の頃、大輝がユウナのゲームカセットを友情の証として、公園に埋めた。
「ああ、あれか」
大輝が言うと、ユウナは言った。
「もう少し、待ってからでいい?お互いに、進路が決まってから掘り出したいの」
「いいぜ」
大輝も、笑って答えた。ユウナも笑顔で頷くと、帰っていった。すると大輝の後ろから、急にミカが話しかけてきた。
「何の話?」
大輝は「うわっ」と驚くと、ミカが大輝にこうきいた。
「ねぇ、ぶっちゃけきくけどさ、ユウナのことどう思ってるの?」
「はぁ? どうって……」
「好きなんでしょ!」
「いや、ちげーよ!」
大輝は、顔を真っ赤に染めた。それを見たミカは、
「やっぱりねー。早く告っちゃえば?」
と言うので大輝が、
「だから違うって!」
そう返した。でも、ミカの目はごまかせなかった。
「ユウナはいい子だから、ほっといたらほかの男子のところへ行っちゃうかもよ」
ミカは嫌味っぽくそう言って、陽気に帰っていった。それを大輝も見ていた。まるで、心臓をえぐられたような気持ちだった。
テストも二日目が終了し、ユウナは帰って昼食をとった後、最終日に備えて自分の部屋で勉強していた。日差しが気になり、また立ち上がってカーテンを閉めようと窓に近づいた。すると、目を疑った。あの日見た男が、またいたのだ。ユウナは、奇妙に思った。今度は、その男は初めからユウナの部屋を遠目で見ている。目にはサングラスをかけ、やはり白衣を身にまとい、中にはポロシャツを着ている。ユウナはなぜだか、その男から目を離すことができなかった。するとその男は、サングラスを外した。完全にユウナを見ている。ユウナは怖くなり、目をそらして窓から遠ざかった。その時、壁に貼ってある一枚の福引券が目についた。それを見て、思い出した。あの男、十年前にユウナに十枚の福引券を渡した男に格好が似ていたのだ。まさか、と思ってユウナは再び窓に駆けよった。しかし、公園に立っていたあの男は、もうどこにもいなかった。ユウナはその日ずっと、その男のことが気にかかっていた。
最終日になり、朝のホームルームの際に担任の吉崎が言った。
「予告していた通り、今日はテスト終了後、講演会があるからな」
そして吉崎が出ていき、代わりに試験監督の他の教師が部屋に入ってきた。その日は数学三、国語、化学という三科目だった。皆にとって、国語が唯一の癒し教科だった。そして、何事もなくすべての試験が終了した。答案用紙の回収が終わると、皆は外のホールに移動した。
「何で早く帰らしてくれないんだろうね」
廊下を歩きながら、ミカが呟いた。
「そうだ、大輝君から何か話あった?」
「大ちゃんから?」
「やっぱりかー」
ユウナの反応を見て、ミカは何の進展もないことを理解した。そして、ホールの席に着いた。全員が中に入ると、はじめに生徒会長が挨拶をした。その後で、
「次は、
と、講演会の主人物を紹介した。歩いてきたのは、白衣を着たいかにも教授らしい男だった。ユウナはその顔を見ると、ハッとした。昨日、自分が見た人物だった。その男、
「えー、みなさん、はじめまして。今日まで、テストだったかな。話を始める前に、一つだけ言っておきたい。君たちは……、フンだ」
それをきき、全校生徒は一斉に声をあげた。
「はぁっ!?」
ユウナはもう一度、その男の顔を凝視した。ライトが当たり、今度ははっきりと見えた。間違いない、あの時、ユウナに福引券をくれた男だった。衝撃の再会に、ユウナは戸惑いを隠せなかった。
第三回「
次回予告
正彦「君は……、自然は好きか?」
「夢を見つけることだ! 夢を見つけ、その夢に向かって今できることをやる。それこそが、未来に求められる最良の道だと、私は思う」
「私は、争いがなく、人や自然が仲良く暮らしていける、そんな世界を作りたい。笑顔が絶えることない、そんな世界を作りたい」
アカリ「うちが見とるのって……、幻よね……?」
ユウナ「えっ?」
ミカ「人じゃないのよ!」
正彦「自分の夢を見つけ、それに向かってまっすぐ進みなさい。後ろをふり返らず、ただ前に進むんだ」
ユウナ「私、龍山大学に行きたい」
惟英「俺らは、ずっとユウナの味方だ。応援してる」
ユウナ「私、人の役に立ちたい。そして、人の笑顔が見たい」
次回(第四回)
「
序盤のキャラで、最も印象深い登場人物は?
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中谷優奈
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鶴ケ崎麗菓
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月見里美香
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夢野あかり
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池谷大輝
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相場善秀