パズル&ドラゴンズ~もうひとつの旅~   作:葉之和 駆刃

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第46話 闘いへの決意~リゾルブ・トゥ・ザ・ファイト~(その弐)

 二人は戻って部屋の戸を開けると、ミカが駆けて来た。

 

「ユウナ、お帰り! なんかこの人が、宝玉のあるところまで案内してくれるってさ!」

 

 ミカは、フギンを指しながら言った。

 

「本当?」

「だからさ、これからすぐに見にいこうってなったの。ユウナも来るでしょ?」

 

 ミカが目を輝かせながら話すので、ユウナは躊躇わずに頷いた。この時、ユウナも同じことを思っていたのだ。SPの存続がかかっているなら、是非とも行っておきたいところだ。しかし、周りには強力なモンスターもいるだろう。ユウナは、悠二郎の方を見た。目が合うと、悠二郎も笑顔で頷く。それを見て、ユウナはまた嬉しくなるのだった。

 

 そして、皆で行くことになった。それには五人だけではなく、真司や悠二郎も同行することになった。案内役はもちろん、フギンとミーサだ。一行は森に入り、宝玉を目指した。

 

「ここは、野生のモンスターが多いエリアだからな。何かあったら、それぞれで対処してくれ。それくらいのことはできるだろ」

「はい」

 

 フギンの忠告に、ユウナは答えた。やはり、フギンはこのセインツ・パラダイスという世界について、正彦と同じくらいに熟知しているのだ。ユウナは、隣を歩いている悠二郎に尋ねた。

 

「お兄さんは、置いてきて大丈夫だった?」

「あぁ、兄貴は大毅の面倒見てるって。大毅も一緒に連れていくわけにはいかないから、誰かが残ってないといけないからさ」

 

 悠二郎の話をきいて、ユウナは納得した。慎一郎も、できれば一緒に来たかっただろうと思いながら、ユウナは森の中を歩いていた。

 さらに足を進めると木の茂りが深くなり、視界が暗くなってくる。本当に、このようなところに宝玉があるのだろうかと思えたが、今は二人を信じて進むしかない。近くには、火の番人が眠っている。ヒロインの話によれば、宝玉は番人が守っているらしい。ということは、近くに宝玉があるのだろう。皆は番人を起こさないように、そっと足を進めた。

 

 それからさらに歩いたのち、先頭を歩いていたフギンは足を止めた。

 

「見えたぞ」

 

 フギンが小声で言うと、ユウナは目を凝らした。たしかに、向こうには赤く光る何かが見える。もう少し近づいた時、それは完全に姿を現した。五メートル以上はありそうな、赤い宝玉が建てられていたのだ。

 

「あぁ、だいぶ育ったな」

 

 フギンは、感心したように呟いている。想像よりも遥かに巨大な宝玉は、ユウナたちを魅了した。ただ大きいだけではなく、太陽の光を反射して赤い輝きを放っている。

 

「すごい……」

 

 ユウナは、思わず声を漏らす。

 

「これが、宝玉か……」

「予想してたのより大きい!」

 

 悠二郎やアカリも、感激したように呟いている。ユウナも、このような場所にあるとは思っていなかった。

 

「で、どーすんだ?」

 

 ミーサは、フギンに尋ねる。すると、フギンは皆の方をふり向いた。そして、

 

「じゃ。ちょっと出てきてくれないか」

 

 と言い、ユウナを指さした。指名されたユウナは、戸惑いつつも前に出た。

 

「ついて来てくれ」

 

 さらにフギンが言うので、ユウナも何があるのだろうと不思議に感じながら、フギンについていった。二人は宝玉の前まで来ると、フギンが宝玉に手をつけ、なんと呪文を唱え始めたのだ。ユウナも驚きながら、その様子を見ていた。すると、宝玉の一部が開いた。次に、フギンはユウナに言った。

 

「じゃあ、ココに手を当ててくれ」

 

 ユウナは言われた通りに、開かれた部分に手を当てる。次の瞬間、宝玉自体が赤く光り出した。その光は、森全体にまで広がった。やがて光が治まると、ユウナは目を開けた。宝玉は、茶色く錆びてしまった。しかし、その上には赤色の剣が浮かんでいたのだ。剣は、ゆっくりとユウナのところに降りてくる。ユウナは、その剣を手にした。

 

「これは……」

「アンタの剣だ。どう使うかは、アンタ次第ってわけだ」

「私、次第……」

 

 ユウナは呟きながら、その剣をまじまじと眺めていた。その時、何かの気配を感じた。そしてだんだんと足音もきこえてきて、モンスターが何体も飛び出してきた。その中には、火の番人もいる。一瞬にして、ユウナたちはモンスターたちによって包囲されてしまった。逃げ場を封じられ、皆は一箇所に固まった。続いて、モンスターの後ろから数人の人間が現れた。

 

「おやおや、このようなところで会うとは奇遇ですね」

 

 そのうちの一人が言った。それはサタールの手下の研究員、コサカだった。コサカは、薄気味悪く笑いながらユウナたちを見ている。その時、フギンとミーサも一緒にいることに気づいた。

 

「おや? これは、フギン様にミーサ様ではありませんか。サタール様が心配しておられましたよ。いったい、このようなところで何をされてるんです?」

 

 それをきいて、ミーサはコサカから目線をそらす。それを見たコサカは、理解したような表情を浮かべた。

 

「まさか、実の父親であるサタール様を裏切るおつもりではないでしょうね? そのような小娘たちの味方をしても、損をするだけでございますよ?」

「アンタがどう思おうと、もう決めたんだ。こいつらは本来、この戦いには関係ない立場だ。それは、アンタも知っているはずだろ」

「えぇ、知ってますとも。ですがね、それだけでは片付けられないのですよ。我々の存在を知ってしまった以上、徹底的に叩き潰させてもらわないと」

 

 コサカは、そう言うとまた不気味に笑うのだった。皆も危険だと察したのか、後退した。それでもコサカは、余裕の笑みを浮かべている。そして、後ろに控えている研究員らしき男たちに指示を出した。

 

「この者たちをすべて捕らえなさい」

「し、しかしフギン様とミーサ様は……」

「いえ、もう私たちの味方ではないので、やっつけてくれて結構です」

 

 研究員に対し、コサカは言った。ますます、まずい状況を作り出されてしまった。周りを見渡すと、強いレアなモンスターばかりだ。いくら応戦したところで、勝てるかどうか怪しい。それでも何とかしなくてはと思い、ユウナは前に出て戦闘モードに切り替える。それを見たコサカは、感心したように言った。

 

「おや、戦う気ですか。まぁ、いいでしょう。私も、あなた方の強さを確かめておきたいと思ってましたからね」

 

 コサカは、まだ余裕の様子だ。余ほど、自信があるのだろう。しかしユウナも、負ける気などない。どうにかして、ここを突破しなくてはならない。ユウナはティラノスを召喚し、それに続いてミカ、アカリ、アカネも次々と自分のモンスターたちを召喚する。

 しばらく、コサカは黙って立っていた。コサカもモンスターを呼び出すのかと思ったが、そのようなことはしてこない。ユウナが不思議に思っていると、突然コサカが笑い出した。

 

「これは失敬。しかし、もっとすごいのを出してくると思ったのですが、どれもよく見るモンスターたちですね。本当に、このような子たちで我々に勝てると思っているのですか?」

 

 嫌味を言われ、ミカとアカリは顔をしかめる。それを見て、さらにコサカは続けた。

 

「これでは、まるで戦う気が起きませんね。部下たちのモンスターだけで十分のようです。それでは皆さん、彼女たちにわからせてやりなさい。本当の、チートというものを!」

 

 コサカが指示を送ると、敵のモンスターたちが次々に迫ってくる。ユウナたちも応戦し、スキルを発動させるが、敵には少しのダメージしか与えられない。そして次に、敵の攻撃がユウナたちのモンスターを襲い、ティラノスたちは一撃で倒されてしまった。

 

「おやおや、もうお終いですか。なんだか、とても呆気ないですね」

 

 コサカはまた、そのようなことを言って煽ってくる。しかしユウナは諦めず、次のモンスターを召喚しようとスマホを握った。その時、勝手にスマホの中からレッドが飛び出してきた。レッドは小さい体を、またピョンピョンと跳ねさせている。それを、皆は驚いた様子で見ていた。コサカたちも大笑いして、

 

「これはこれは、随分と可愛い子が出てきましたね。それでは、やってしまいなさい」

 

 とコサカは言い、今度はレッドに照準が定められた。そして、敵の攻撃がレッドの方に飛んできたのだ。

 

「ダメ!」

 

 咄嗟に、ユウナはレッドを庇う姿勢に入った。

 

「ユウナ!」

「ユウナちゃん!」

 

 ミカとアカリは、ユウナを呼んだがもう遅い。攻撃は、的確にユウナの方に飛んでくる。ユウナは、目を瞑った。レッドは、戦闘向けに作られていない。それ故、ユウナはレッドを守ろうとしたのだ。しかし、このままではユウナの背中に相手の攻撃が命中してしまう。ユウナが半ば諦めかけた時、何かがその攻撃を弾いた。ユウナは恐る恐る目を開けると、後ろをふり向いた。そこにいたのは、なんとプテラドスだった。それを見るとユウナは、何が起きたのかすぐに理解できた。フギンが、守ってくれたのだ。それはユウナだけではなく、コサカも見抜いたようだ。

 

「おや、結局庇うのですか。サタール様がご覧になれば、悲しまれますよ?」

 

 コサカは、フギンの方に目を向ける。

 

「オヤジにどう思われてもいい。俺たちは、ゲームをさっさと終わらせたいだけだ」

「ですが、惜しいですね。サタール様を裏切ったということは、この世界の王に逆らったも同然。その罪は、重大ですよ」

「……わかってる。オヤジには、これから会いにいくつもりだ。わかってもらえるわけないけど、ちゃんと気持ちは伝える。こんなくだらないゲームのために……、復讐のために、自分の人生をかけるなんて間違ってるってな!」

 

 ユウナはフギンの言葉をききながら、フギンが今どのような気持ちなのかを察していた。想像もできないほどのジレンマに苛まれ、かなり辛いだろう。ユウナは、今度は自分が力になりたいと思った。

 

「そうですか……、なら仕方ありませんね」

 

 コサカが言うと、モンスターたちはプテラドス目がけて攻撃を開始する。プテラドスはそれらをすべて避けると、反撃した。光が森中に浸透し、モンスターたちは次々に散っていった。ミーサのモンスター、キマイラも参戦し、やがて敵のモンスターは一体もいなくなった。

 

「これは、想定外でしたね」

 

 コサカは、感心しながら言った。だが、その表情にはまだ余裕が混ざっている。

 

「まさか、私がモンスターを召喚しなければならなくなるとは……」

 

 コサカはついに、自分のモンスターを召喚する。

 

「この子は深海に住んでいて、かつ夜行性で気性が荒いので、あまり呼び出したくなかったんですけどね」

 

 コサカの前に、水色の巨大な魔法陣が出現し、中からあるモンスターが顔を出し始める。それは、見る見るうちにその姿を現すのだった。それは、「溟界海の大悪魔・クラーケン」という名のモンスターだ。人の足がイカのようになっており、その無数の足は互いに絡み合っている。プテラドスはまた、光属性の攻撃をする。そしてキマイラも、氷の礫を繰り出して攻撃する。しかし、いずれもクラーケンの持っている槍によって払われた。それだけでは終わらず、クラーケンはその槍で二体を攻撃した。その瞬間、二体は消えてしまうのだった。

 

「ムニン!」

「キマイラ!」

 

 やはり、レベルが違いすぎた。それを傍観しながら、コサカはニヤリと笑った。

 

「これが、我々が時間をかけてゆっくり育成したモンスターの実力ですよ。それに我々は研究者の身であるからして、この世界の常識を操作できるのです。チートと言われても、仕方ありませんね」

 

 もはや、ユウナたちの勝ち目はない。敗北を言い渡されたも同然だ。ユウナは悔しさと、遣る瀬なさに苛まれた。拳を握りしめ、じっと耐え続けるしかなかった。

 

「連れていきなさい」

 

 コサカは、部下たちに命令を下した。そうすると、部下の研究員たちはユウナたちの方に歩み寄ってくる。もう逃げられない、そう悟った時だった。

 緑色の何かが、クラーケンの中心を貫いた。ユウナは一瞬、何が起きたのか理解できずにいた。次の瞬間、クラーケンは消えてしまった。

 

「な、なんと……」

 

 コサカも、突然のことに驚いている。その時、ユウナはハッとした。まさかと思って、ふり返ってみるとそこには案の定、レイカとブラキオスの姿があった。

 

「一般のユーザーでも、チートぐらい使えるわ。そこのデータ、抜け落ちてたようね」

 

 レイカは、余裕の表情でコサカを見ている。まさか、あの強敵を一撃で沈めたというのだろうか。皆、驚きを隠せなかった。

 

「まさか……、このように強いユーザーがこのSPにいたとはね……。ですが、どう足掻いてもあなた方に勝ち目はないのです。大人しく捕まった方が、苦しみや痛みを味わわずに済むと思いますが」

 

 コサカはそう言って、またユウナたちの方に歩みよってきた。今度こそ連れて行かれると思った時、なんとユウナが手にしていた剣が突如光り始めたのだ。その直後、急に空が曇り始め、周りは嵐に見舞われた。これには、コサカたちも動揺を隠せなかった。

 

「こ、これは……」

「コサカ様、ここは一旦身を引いた方が安全かと……」

「仕方ない。皆、一時退却!」

 

 コサカは部下たちに指示を送り、その場を去っていった。嵐はコサカたちだけでなく、ユウナたちも襲った。このままでは、身に危険が生じる。

 

「俺たちも、戻ろう」

 

 真司が言うと、皆は走り出した。しかし、ユウナだけがその場をなかなか離れなかった。先ほどの光は、いったい何だったのだろうか。きっとこの剣が嵐を呼んだのだと、ユウナにはわかった。すると悠二郎が来て、

 

「ユウナ、どうしたの」

 

 と、声をかけてくる。

 

「あ、何でも……」

 

 ユウナは誤魔化し、悠二郎とともに建物目指して走った。言おうとも思ったが、信じてくれるとは限らない。しかしユウナには、どうしてもこの剣に原因があるとしか思えないのだった。

序盤のキャラで、最も印象深い登場人物は?

  • 中谷優奈
  • 鶴ケ崎麗菓
  • 月見里美香
  • 夢野あかり
  • 池谷大輝
  • 相場善秀
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