パズル&ドラゴンズ~もうひとつの旅~   作:葉之和 駆刃

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第47話 突然の死~サドン・デス~(その壱)

 SPには、ユウナ、レイカ、ミカ、アカリ、アカネの五人だけが残った。あれから一月近くが経った、2022年6月下旬。特に状況は変わらず、敵に何か動きがあったという情報もない。ミカなどは、暇を持て余しているようだった。

 

「なんかさ、最近なんにもなくない?」

「そうだね」

 

 ソファーに腰掛けながらミカが呟くと、アカリも答えた。

 

「ていうかさ、もしかしたら相手も諦めたんじゃない?」

「でも、それなら教授も何か気づいてるはずだよ?」

 

 アカリが正論を述べると、ミカも納得したような顔になった。すると、部屋にユウナが入ってきた。

 

「あ、ユウナ。どうだった?」

「うん。教授も、身体の方は大丈夫そう」

「そっか……。昨日また倒れたってきいた時は、ヒヤッてしたけどね」

「うちも」

 

 ミカとアカリは、安堵したような表情を浮かべる。今は、正彦の身体の具合が何よりも心配だった。SP存続のためにも、正彦が無理しないように美千子が見張ってくれているが、それでも限界があるだろう。自分に何かできることはないかと、ユウナはただ考えているのだった。

 

 

 

第四十七回 突然の死(サドン・デス)

 

 

 正彦は、研究室にてSPの様子を観察していた。するとドアが開き、真司とヒロインが入ってきた。

 

「お父さん……」

「いやぁ、すまんね。あっちのことには手が回らなくて、お前たちに任せきりで」

 

 正彦は、くるっと二人の方を向きながら言った。

 

「いえ、いいんです」

「それより、何か進展はあったのか?」

「それが、あっちもまだ心を開いてくれないみたいで……」

「そうか……」

 

 真司の話をきいて、正彦も辛そうな顔になる。

 

「SPから追い出されたことが、余ほどショックだったようですね」

「何かあったら、また私に伝えてくれ」

「はい」

 

 真司が答えると、部屋から出ていった。次にヒロインが、

 

「教授は、休まなくて大丈夫なんですか?」

 

 と尋ねると、正彦は言った。

 

「私は、もう少しここにいるよ」

「そうですか……。では、何かあったら、また呼んでくださいね」

 

 ヒロインもそう言うと、出ていった。正彦は研究室に残り、再び画面に向き直っていた。自分の身体より、SPのことを優先させたいという気持ちの方が、今になっても強かったのである。

 

 一方、ユウナはミカの話し相手をしていた。

 

「でさ、ちょー嬉しかったの! ヤバくない?」

 

 ミカが嬉しそうに話しているのを、ユウナも笑いながらきいていた。ここしばらくは、ダンジョンには行っていない。以前のように緊急事態になることは少ないため、どちらかというと最近は、自分の所持モンスターの育成などをすることが多かった。すると突然、ミカがこんな話をユウナに振ってきたのだ。

 

「ところでさ、ユウナ。悠二郎さんとキスしたことあるの?」

「えっ? な、ないけど……」

「ウソーン!」

「え、ユウナちゃん、したことないの?」

 

 アカリも、少し驚いたようにきいてくる。ユウナ自身、そんな話をされるなど思ってもいなかったため、何と答えればよいのかわからなくなった。

 

「あ……。やっぱり、恥ずかしくて……」

「でもさ、夫婦なのに変じゃない?」

「そうかな……?」

「そうだよ〜。てっきり、もうしてるのかと思ってた。じゃあさ、キス経験ない感じ?」

「……うん」

 

 ユウナが答えると、ミカは言うのだった。

 

「もう、リア充なのにおかしいじゃん! ていうかさ、キスする時って一秒間が十秒間くらいに思えたりするよね!」

「ミカちゃん、キスしたことあるの?」

「え、ないけど?」

「でも今、時間が長くなるって……」

「あぁ、それ? ドラマ見てたりすると感じない? というか私、結婚したことないもん」

「彼氏もいたことないよね~」

「うるさい!」

 

 ミカが、アカリにデコピンをお見舞いする。

 

「痛っ! ミカちゃん、本気〜」

「アハハ、ごめんごめん」

 

 三人は笑っていると、部屋の前をレイカが通りかかった。ミカがそれに気づき、レイカにも声をかけた。

 

「あ、鶴ケ崎さん! ねぇ、きいて。ユウナ、悠二郎さんと一回もキスしたことないんだよ? どう思う?」

「……べつにいいんじゃない?」

 

 レイカはそれだけ答えると、部屋を素通りしてしまった。

 

「相変わらず、ノリ悪いな〜」

 

 ミカの反応も、高校の時と変わりない。そう思いながら、ユウナはミカを見つめていた。レイカは部屋を通り過ぎたあと、足を止めて思い出していた。あの夜、真司が突然、不意をつくようにキスをしてきたのだ。真司はなぜ、あのようなことをしたのかレイカにとって永遠の疑問だった。

 

 一方、アカリはレイカを見て思い出したのか、二人にこんな話をしていた。

 

「そういえば、鶴ケ崎さんのお兄さんって今危ない国行ってるんだよね? 大丈夫かな」

 

 それをきくと、ユウナも雅也のことを思い出した。

 

『逃げ続けてたら、一生を損することになるって……。それきいて俺、自分が恥ずかしくなってきちゃったんだよね』

『誰に何を言われようが、自分だけを信じればいい。それ以外の人にどう見られていようが、どう思われていようが、そんなものただの被害妄想だ。もっと、自分自身を信じるんだ。そうすれば、自然と道は拓ける』

 

 ユウナは、雅也にかけられたあの言葉を今でも忘れられずにいた。そしてこれからも、忘れたくないと思った。あの時、雅也に教えられなかったら、ユウナは今でも自分に自信を持てていなかったかもしれない。雅也は、レイカだけではなく、実はユウナにとっても恩人だったのだ。

 

 しばらく回想に耽っていると、ミカが声をかけてきた。

 

「ユウナ? どうしたの?」

「あ、ううん。何でもない。けど、お兄さんは鶴ケ崎さんのこと大好だったみたいだから。それは、今でも変わらないと思う。家族のためにあんなに真剣になれるって、すごいことだと思うから」

「まぁ、血縁者だからね」

 

 ミカが言った。その時、ユウナは空港で聞いたレイカの言葉を思い出した。

 

『私が、兄さんとの本当の関係を知ったのは、小四の時』

 

 雅也を見送る際に、レイカが発した言葉だ。あの時はあまり気にならなかったが、今になって思うと「本当の関係」とは、何を意味していたのだろう。まさか、とユウナはある推論を立てたが、レイカに尋ねることを躊躇った。ただ、怖かったのだ。

 

「うちも、お母ちゃんや妹に電話したくなった」

「私も」

 

 ミカとアカリがそんな会話を続けているのを、ユウナは黙って聞いていた。

 

 レイカは誰もいない廊下で、スマホを触っていた。着信履歴を見ると、雅也との最後の会話は二年ほど前になっている。レイカはそれを見て溜息を吐き、画面を消した。そしてしばらく、壁にもたれかかっていた。今ごろ、雅也はどこにいるのだろうか。生きているかもわからない、それでもレイカは兄が帰ってくるのを待ち続けていた。

 

 一方、横大路研究所のある部屋では、美千子がミーサにスープを持ってきていた。

 

「ちょっと熱いけど、よかったら食べて」

「……いらねえよ」

 

 小声で、ミーサが答える。それを見て、美千子がスープをテーブルの上に置いた。

 

「みんな、心配してるわ。あなたのこと。だから、もう少し元気になってね」

 

 美千子がそう言っても、ミーサはただ俯いているだけだ。しばらくして、ミーサはようやく口を開いた。

 

「俺のせいなんだ、全部……」

「どういうこと?」

「俺が何も気づかなかったから、兄貴は……。オヤジの今までしてきた行動をずっと見てきたはずなのに、なんで気づかなかったんだろって……、バカだよな……」

 

 ミーサが顔を上げ、美千子を見ると続けた。

 

「兄貴は今、オヤジに操られてる。放っておけば、何をするかわからない。すべてオヤジの命令通りに動く。それだけは、確かなんだ」

 

 その話をきき、美千子も驚いた表情を浮かべている。

 

「もう……、何もできねえよ、あいつらには。オヤジがあそこまでし出したら、もう勝ち目はねえ」

 

 泣きそうになるミーサを、我慢できずに美千子は抱きしめた。ミーサも、特に抵抗する様子は見せなかった。

 

「辛いわね……」

 

 美千子は、できるだけミーサの気持ちに寄り添おうと思った。ミーサも、そんな美千子の気持ちを察していたのかもしれない。

 

 

 ダークネス・キャッスルでは、サタールが研究者たちを総動員させていた。サタールは、皆の前に立つと言い放った。

 

「このSPにおける未攻略ダンジョンは、残りひとつとなった。言うまでもなく、最後のダンジョンはこのダークネス・キャッスルだ。ここで私は、ある考えを提示する。奴らに見つかる前に、宝玉をすべて破壊するのだ!」

 

 それには、研究者たちも驚きの視線を向ける。せっかく生成した宝玉を壊すということは、今までの努力をすべて無駄にするということだ。

 

「サタール様、いくらなんでもそれは……」

 

 すぐに、ルリが前に出る。

 

「いや、いいんだ。もう、相手の出方を窺うのには飽きた。今度は、こちらから仕掛けてみようということだ。奴らは、必ず宝玉を見つけ、剣を手に入れようとするだろう。その前に、宝玉を跡形もなく壊せば、奴らに勝ち目はなくなる。計画は、数日後に実行する。それまでに、絶対に敵に知られてはならない」

 

 サタールが言うと、後ろをふり返る。そこには、フギンの姿があった。しかしそれは、今までとは違う、別人とも言えるフギンだったのだ。フギンはサタールに洗脳され、我を見失っていた。

 

 

 その頃、誰かが正彦の研究室をノックした。

 

「どうぞ」

 

 正彦が答えると、美千子がミーサを連れて入ってきた。その部屋には、真司とヒロインもすでにいた。

 

「美千子さん、どうしたんですか?」

「この子が、正彦さんにお話があるんですって」

 

 美千子が言うのをきいて、正彦は身体をミーサの方に向ける。ミーサは美千子に促され、正彦の方に足を進めた。

 

「やっと、話してくれる気になったのか。それで、話とは何だね?」

 

 ミーサはしばらく沈黙を置いたあと、こう話し始めるのだった。

 

「きっと今ごろ、オヤジは最後の仕上げに入ってる。もうすぐ、何かしてくるはずだ」

「やはり、そうか……」

 

 正彦も、下に目線を落としながら呟く。それについて、真司とヒロインも真面目な顔をしている。ミーサが部屋から出てきてくれたのは嬉しいが、笑っている余裕などない。

 

「それで、ほかにいうことは?」

「ここからは、俺の予想だが、オヤジはほかの宝玉を破壊しようとしている」

「何?」

 

 正彦は、怪訝そうな顔でミーサを見つめる。しかし、ミーサの表情は真剣だ。これは、嘘ではない。それがわかった正彦は、パソコンを操作して五つの画面にそれぞれの色の宝玉を映し出した。

 

「やはりか……」

「何ですか?」

 

 真司がきくと、正彦は答えた。

 

「監視モンスターが、それぞれ近くに数体。これは、きっとやつの命令だろう。やつは、本当に宝玉を破壊するつもりだ」

「そんな……。じゃあ、先輩たちの勝機は限りなくゼロじゃないですか!」

 

 ヒロインも、興奮気味で言う。正彦は再びミーサの方を向いて、

 

「教えてくれてありがとう。早速、彼女たちに報告を……」

 

 と言いかけた瞬間、腹部の辺りを押さえて椅子から転げ落ちた。

 

「父さん!」

「あなた!」

「教授!」

 

 ミーサ以外の三人は、すぐに正彦のところへ駆けよった。そして急いで救急車を呼び、正彦は近くの病院へと搬送された。

序盤のキャラで、最も印象深い登場人物は?

  • 中谷優奈
  • 鶴ケ崎麗菓
  • 月見里美香
  • 夢野あかり
  • 池谷大輝
  • 相場善秀
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