パズル&ドラゴンズ~もうひとつの旅~   作:葉之和 駆刃

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第48話 神王妃の城~クイーンズ・キャッスル~(その参)

 ある洞窟の前まで来ると、ユウナは足を止める。そこをどうにか開け、中に入ると水晶を手にして出てきた。

 

「何、それ……」

 

 ミカが尋ねると、ユウナは答えた。

 

「これで、オーディンを呼べるの」

「オーディンを?」

 

 ミカが不思議そうに見ていると、ユウナは水晶をSPの空に掲げた。その瞬間、周りは緑色の光に包まれ、ユウナの目の前にオーディンが出現した。

 

「また呼び出してごめん。でもお願い、オーディン。どうしても、あなたの力が必要なの!」

 

 それをきくと、オーディンは頷いた。それを見たユウナは、安心したようにオーディンに尋ねた。

 

「黄金の剣は……、どこにあるの?」

「……ネス・……スル」

「えっ?」

 

 オーディンが何か声を発しているようだが、うまくききとれない。

 

「どこに……、あるの……?」

 

 ユウナがもう一度きくと、今度ははっきりときこえた。

 

「剣は……、ダークネス・キャッスルにある……」

「……え?」

「それって、敵の根城?」

「そうだ」

 

 ミカからの問いかけにも、オーディンは応じる。オーディンはユウナを見つめながら、

 

「この世界の運命は……、お前にかかっている。黄金の剣を手にし、奴らと闘うのだ」

 

 そう言うのでユウナが、

 

「でも、私……」

 

 と言いかけると、オーディンは続けた。

 

「お前にならできる。だから、私はお前を選んだ」

「私を、選んだ……?」

 

 そして、オーディンはユウナの前から姿を消す。

 

「待って!」

 

 ユウナは叫んだが、オーディンとともに緑色の光も完全に消えてしまった。先ほどまでが夢のように、森の中は静まり返っている。オーディンが自分に何を伝えたかったのか、ユウナはそれだけを考えていると、また後ろから声がかかる。

 

「黄金の剣を、取りに行き」

 

 ユウナがふり返ると、そう言ったのはアカネだった。

 

「アカネさん……」

「あんたやったらいけるって信じてる。あんたにこの世界を守りたいっていう強い意思があったから、ヘラが現れ、そしてオーディンも召喚してみせた。この世界を救う勇者は、あんたしかおらん」

「勇者……」

 

 するとミカも近づいてきて、

 

「こっちのことは、任せて! 早く行かないと、黄金の剣があの人の手に渡っちゃうよ」

 

 と言うので、ユウナは頷いた。二人の言葉で、ユウナは元気づけられた。

 

「では、行ってきます」

「気をつけてな」

「はい」

 

 そう言うと、ユウナは走っていった。そして、黄金の剣があるダークネス・キャッスルへ足を進めた。向こうに行けば、きっとサタールがいるだろう。しかし、今は黄金の剣を手に入れなければならない。その願いのもと、ユウナは必死に走り続けたのだ。

 

 

 城につくと、ユウナは外の階段を駆け上がった。空を飛べるモンスターは、フギンしか持っていない。それでも、行かなければならない。

 

 何とかして、最上階に辿り着いた。部屋の扉を開けると、そこには誰の姿もなかったが、中央に大きな台があり、その上に黄金色に輝く剣が浮いてあった。ユウナはすぐにそれが黄金の剣だと理解し、近づいた。その時、後ろから声がきこえた。

 

「やぁ、やっぱり来たね」

 

 まさかと思い、ふり返った。そこには案の定、サタールがいた。それを見てゆっくりとユウナは後退し、サタールの出方を窺った。

 

「そんなに警戒しないでくれたまえ。私の兄の、大切な助手なのだろう?」

 

 そのようなことを言いながら、サタールはユウナに近づいてくる。

 

「君とは、いつかゆっくりと語らいたいと思っていたところだ」

「な、何を語ろうって言うんですか!」

「まぁ、少し落ち着きたまえ」

 

 サタールは言うと、手から青い光を出した。それは見る見るうちに変形し、やがて剣になった。サタールは、その剣をユウナの方に向けると言った。

 

「君と、こうして戦ってみたかったんだ」

 

 そしてサタールが剣を振り上げ、ユウナ目がけて振り下ろしてきた。ユウナは咄嗟に、宝玉から生成した「火の剣」を出し、辛うじてそれを防いだ。

 

「ほぅ……、なかなかやるじゃないか」

 

 サタールは、薄気味悪く笑いながら言った。

 

「私がなぜ、君たちが有利になるようなことをしたと思う? この世界を救える黄金の剣のことを、君らに教えたのも私だ。なぜ、私がそんなことをしたと思うかね」

「……わかりません」

 

 ユウナは、正直に答える。すると、サタールが言った。

 

「君らの力を試したかったからだよ。一般人の小娘が、本当にこの世界を救ってみせられるのか、それが知りたかったんだ。どうだい? 教授は今、苦しんでいるだろう?」

 

 刃同士が擦れる音が、部屋中に共鳴している。そんな中、ユウナは答えた。

 

「教授は……、病気です」

 

 それをきくと、サタールはまた笑った。

 

「それはよかった。あの男に、私と同じかそれ以上の苦しみを与えることができたなら、目標は達成されたのだ」

「本当に、それだけが目的なんですか?」

「前にも話した通り、あの男は私を殺そうとしたのだよ? 恨まれて当然のことを、やつはしてきたのだ」

「復讐なんて……、くだらないと思います。たしかに、教授がそうしたのならそれは償うべきことです。ですが、こんなことをしても何の解決にもなりません! あなたは……、間違っています」

「……君に私の何がわかるというのだ」

 

 サタールは、一度身を引いた。そしてまた、剣を振り上げる。

 

「君には、ここで消えてもらった方がいいかもしれないな。この剣は、刺したものをデータごと分解して消去することができるんだ。この世界では、現実世界から来た人間もプログラムと同じだ。君は、ここでいなくなるといい」

 

 そう言うと、サタールは剣を振り落としてきた。ユウナは咄嗟に、目を瞑った。そして、若干の後悔をした。正彦の研究を手伝わなければ、こんなことにはならなかったはずだ。大学を卒業したあと、就職し、結婚して夫と一緒に幸せな家庭を築き上げていたかもしれない。なのになぜ、こんなことになってしまったのだろう。そして、ユウナが諦めかけた時。窓が割れる音がし、ユウナの前に何かが立ち塞がった。次に、剣と剣がぶつかるような音がきこえた。ユウナは目を開けると、フギンが剣でサタールの剣を受け止めている。

 フギンはふり向いて、

 

「早く、黄金の剣を!」

 

 と言うのでユウナは我に返り、後ろをふり返ると黄金の剣がある。

 

「ほほぅ……。まさか、お前が来るとはな」

「オヤジ……。俺は、もうあんたが知ってる俺じゃない。もう、こんなバカげたことはやめるんだな」

「ふん、裏切り者が何を言う」

 

 サタールが剣を強く振ると、フギンの剣が回転しながら飛んでいき、かなり離れた場所に落ちた。そしてサタールは、手にしていた剣を思いきり床に突き刺した。そうすると、黄金の剣は消えてしまった。ユウナは、唖然とした。あの剣がなくなれば、皆との約束を果たせなくなる。正彦を、がっかりさせてしまう。

 

「もう、ここに黄金の剣はない。欲しかったら、また探すといい」

 

 サタールが告げると、その場から立ち去った。ユウナはこれから先、どうすればよいのかわからなくなってしまった。するとフギンが来て、

 

「送ってってやるよ」

 

 と言うので、ユウナは仕方なく頷いた。

 

 フギンは、ユウナをプテラドスに乗せた。

 

「こいつが、みんなのところまで連れていってくれる」

「あの、あなたはどうするんですか?」

「俺は、あいつの動向をもっと探ってみる。待たせて悪かったな。でも、ちょっとスリルがあって面白かっただろ」

「……もう」

 

 そんなフギンの冗談も、普通なら笑えないはずだが、ユウナは可笑しくなって吹き出しそうになった。ユウナはフギンに礼を言い、プテラドスに乗って皆のいるところに戻った。

 

 

 建物の前に降りると、四人が走ってきた。

 

「ユウナ、大丈夫だった?」

 

 真っ先に、ミカがユウナの手を握ってきた。

 

「大丈夫だよ。でも、ごめん。剣は、手に入れられなかった……」

「そっか……。けど、ユウナが無事に戻ってきたんだもん。それだけでいいよ」

 

 すると、アカリが何かに気づいたのか、向こうを指さした。

 

「ねぇ、見てあれ!」

 

 ユウナはふり返ると、黒い炎のようなものが迫ってくる。

 

「何あれ、やばくない? 逃げよう!」

 

 ミカが言うので、ユウナたちは正体もわからないまま、一斉に逃げ出した。黒い炎は、プテラドスをはじめ、様々なモンスターを飲みこんでいった。SPの空は、不気味な色に変貌していった。

 

 その様子を、外の世界から悠二郎たちも見ていた。

 

「何だ、あれ!」

 

 慎一郎が声を上げると、ミーサが言った。

 

「多分、オヤジが操ってるんだと思う」

 

 それをきいた真司が、

 

「くっ!」

 

 と言い、セイントドアを開けた。

 

「おい、行くのか?」

 

 慎一郎がきくと、真司は答えた。

 

「あいつらを、助けにいく」

「おい、本気なのか!?」

 

 慎一郎が、真司の腕をつかみながら言った。

 

「もう、関係ないフリして見てるのは嫌なんだよ! 本来なら、もっと普通の人生を歩んでいけたはずなのに、俺らにも責任はある。だから、俺はあいつらを助ける!」

「待てよ! 死亡フラグ建てずに、もっと冷静になれよ!」

 

 慎一郎が言うので、真司はふり向いた。

 

「死亡フラグなんて……、誰かが立てなくても勝手に建ってるだろ! 全力で回避してやる!」

 

 そして、真司はSPの中へ飛び出していった。悠二郎も、それを不安気に見ていた。

 

 一方、ユウナたちは森の奥まで逃げてきていた。ふり返ると、魔の手は確実にこちらに迫ってきている。

 

「嘘、行き止まり?」

 

 前には崖があり、上るのは一苦労だ。

 

「ねぇ、向こう行けるよ?」

 

 アカリの指さした方を見ると、狭いがたしかに抜け道のようなものが見える。皆がそこに向けて走ろうとした時、SPで地震が起きた。その衝撃で地面が割れ、ミカが地割れに巻きこまれてしまった。

 

「ミカ!」

 

 ユウナは、ミカの手をつかもうと手を伸ばしたが、届かなかった。ミカは、木々と一緒に地面へ吸いこまれていった。

 

「ミカー!」

 

 その時、誰かがユウナの手をつかんだ。

 

「こっち!」

 

 アカネが言うと、ユウナを連れて走り出した。狭い道に入り、何とか崖崩れを防ぐことができた。そしてユウナは、ただ只管にミカの無事を祈るのだった。

 

 

第四十八回「神王妃の城(クイーンズ・キャッスル)」終

 

 

 

次回予告

ユウナ「私は、最後まで闘おうと思います」

ミカ「あたしたち、これからどうなっちゃうんだろ……」

悠二郎「今からでも、十分変えられる」

美千子「諦めちゃダメ」

慎一郎「君たちに、最後までこのゲームを楽しんでほしかったからだ」

真司「……結婚しよう」

フギン「俺と、結婚してほしい」

ミカ「全力で楽しもうよ、このゲームを! 一歩間違えば本当に死ぬかもしれない、このゲームをさ!」

ユウナ「ミカ……」

ミーサ「少しずつでいいから、前に進みたいんだ。一人の女として、そして、一人の人間として」

ユウナ「私は……、教授のために、このセインツ・パラダイスのために、大切な仲間たちと一緒にこの世界を守りたい! だから、邪魔は絶対にさせない!」

 

 

 

次回(第四十九回)

 

伝説の大地(ラスト・ダンジョン)

序盤のキャラで、最も印象深い登場人物は?

  • 中谷優奈
  • 鶴ケ崎麗菓
  • 月見里美香
  • 夢野あかり
  • 池谷大輝
  • 相場善秀
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