パズル&ドラゴンズ~もうひとつの旅~   作:葉之和 駆刃

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第49話 伝説の大地~ラスト・ダンジョン~(その参)

 セイントドアから出てきた二人を見て、悠二郎が慎一郎にきいた。

 

「兄貴、どうだった? ユウナたちは?」

「彼女たちなら今、友達を探しに行ったよ」

「えっ……」

 

 悠二郎は、てっきりユウナたちも一緒に戻ってくるものだと思っていたらしい。

 

「なんで……、なんで引き止めなかったんだよ!」

 

 悠二郎は慎一郎の襟をつかみ、そう責め立てる。

 

「おい、落ち着け!」

 

 真司も、それを止めに入った。そして、悠二郎に伝えた。

 

「あいつらは、大切な友達のために行ったんだ。大事な人を、助けるために」

「大事な……、人……」

 

 真司の話をきいて、悠二郎も少し落ち着きを取り戻し、俯きながら言った。

 

「そうだよな……。ユウナは、ずっと誰かのためになろうと努力してきた。今は、それを応援するしかないよな……」

 

 そして、顔を上げる。

 

「ありがとう。俺、ちょっと自分を見失ってた。今は、信じて待つよ。どんな姿になっても、帰ってきてくれさえすれば。俺も、大毅も、満足だからさ」

 

 その言葉をきいた真司と慎一郎は、互いに顔を見合わせて微笑した。悠二郎の言う通り、今は信じて待つしかない。たとえどんな姿になろうとも、必ず帰ってくる。そう思えたのかもしれない。そんな三人を、同じ部屋にいたヒロインも涙を流しながら見ていた。彼女も、ユウナたちであれば必ず帰ってくると信じているのだ。

 

 ユウナたちは腰にそれぞれの剣を差し、森に向けて走っていた。雨のせいで、思うように進めない。この雨も、サタールが故意的に降らしているのだということは明白だ。次第に強くなる雨に、四人はどうにか足を前に進める。先頭のユウナはふり返り、

 

「みんな、大丈夫?」

 

 ときくと、アカリが答えた。

 

「うん、なんとか……」

 

 それでも、視界が見えなくなるほど雨が打ちつけてくる。その時だった。アカリが遠くを指さしながら、

 

「ねぇ、あれ!」

 

 と、声を上げた。ユウナは指された方を見ると、モンスターたちが四人の方に向かってくるのが見えた。それも数体ではなく、数えきれないほど様々な属性のモンスターたちだ。

 

「何……、あれ……」

 

 ユウナも、思わず声を漏らす。モンスターたちは、どんどん四人に近づいてくる。目を凝らしてみると、その中に人の姿もあった。

 

「さぁさぁさぁ! これからが本当の復讐のお時間よ!」

 

 ルリだ。ルリはギガンテスの肩に乗り、モンスターたちを操っていた。

 

「またあいつか……。どうする?」

 

 アカネが尋ねるとユウナは、

 

「闘いましょう」

 

 と、前に出た。アカリとレイカも、自分のモンスターをそれぞれ召喚した。それを見て、ルリはフッと笑った。ユウナもまた、ティラノスを召喚する。

 

「またその子? たまにはほかの子で来てくれなきゃ、張り合いがないわ」

 

 ルリはそう言い、モンスターたちに命令を送った。それを受け、モンスターたちは一斉に攻撃を開始する。するとユウナは剣を抜き、天にかざした。

 

「お願い……。私に、力を貸して……」

 

 ユウナが言うと、その剣が赤く光り始めたのだ。その光はティラノスにも伝播し、ティラノスも攻撃を開始。その攻撃は、ルリのモンスターたちを一掃した。それを見計らい、ほかの三人も剣を使ってモンスターに命令を送る。敵モンスターは対抗できずに、次々に消滅していった。

 

「ふぅん。やるじゃない。でも、これで終わりだと思ったら大間違いだわ!」

 

 ルリが言うのとほぼ同時に、四方八方から敵モンスターが顔を出し、四人を取り囲んでしまった。まさに、四面楚歌の状態だ。そして、岩陰からコサカも出てきた。

 

「またお会いできましたね、フィフス・フォリアの皆さん」

 

 コサカは、そう言うとまた笑った。敵に囲まれ、絶体絶命の危機だ。コサカは、四人を交互に見ながら言った。

 

「本当に、残念ですよ。そんなにモンスターを操るのが上手なのに、この世界を失くしてしまおうとするなんて」

 

 それには、すぐにアカリが反論する。

 

「何言ってるの! そっちが、この世界を乗っ取ろうとしてるからじゃろ!」

 

 思わず、また方言に戻ってしまった。無論、この場では関係ない。コサカは笑い、

 

「フフフ……。そのように見えてしまいますかね、やはり。でもわたくしは、この世界を研究したいだけなのですよ。素晴らしいじゃないですか、プログラムだけで三次元空間を生み出せるなんて。これを世間に発表したら、いずれはノーベル賞ものです」

 

 と言うので、ユウナも言い返した。

 

「でも、ここは横大路正彦教授が創った世界。権限は、教授にあるの! だから、絶対に渡せない!」

「その横大路教授は、今や病に倒れ、死にかけと言うではありませんか。だから心優しいサタール様が、代わりに発表なさろうとしているのですよ」

「そんな……。でも私は、私は……、教授のために、このセインツ・パラダイスのために、大切な仲間たちと一緒にこの世界を守りたい! だから、邪魔は絶対にさせない!」

「では……、闘いますか?」

 

 ユウナとコサカは、互いに見つめ合った。コサカは、不気味な笑顔を送り続けてくる。ユウナはじりじりと後退りしながら、なんとか闘える状況を作ろうとした。

 

 その様子を、城のスクリーンからサタールも見ていた。サタールはニヤリと笑うと、目の前にあったボタンのようなものを押した。すると、どこからか黒い炎が湧き出てきた。それは、SPの中のあらゆるものを飲みこみながら、ユウナたちのいるエリアにも迫ってきた。異変に気づいたアカネが、

 

「また来た! あの炎!」

 

 と、真っ先にユウナたちに忠告する。コサカもそれに気づき、

 

「おや……? あれは、サタール様でしょうか」

 

 そう言っていると、黒い炎は完全に周りの草木を飲みこみ始め、やがてはコサカのモンスターたちも巻きこまれていく。アカネが、

 

「こっち!」

 

 と言い、ユウナたちを森の奥に誘導した。

 

「あ、あの! 早くこの森を抜けないと、危ないんじゃ……」

 

 ユウナは走りながら、アカネに疑問を伝える。しかし、アカネは言うのだった。

 

「あれは炎みたいに見えるけど、実は特殊プログラムやと思う」

「えっ……、どういうことですか?」

「恐らく、分解ウイルス」

「分解ウイルス?」

 

 初めてきく名前に、ユウナは戸惑った。さらに、アカネは続ける。

 

「いろんなものを分解して、初期化してしまう。あんたが初めてダンジョンに入った時、渡したヘルメットがあったやろ? 危険物が飛んできたら、自動で反応してビームを放出するやつ。あれも、同じく分解ウイルスやった」

「そうだったんですか……」

「だから、あれには絶対に触れたらあかん。触れた時点で、あんたも分解されてしまう。忘れてるかもしれへんけど、この世界にいる間は、あんたらもプログラムと一緒や。勿論、うちもな」

 

 それは勿論、レイカとアカリの耳にも入っていた。ユウナは、あの炎からは何が何でも逃げなければならないと思った。その時に、思い浮かんだのはミカのことだった。ミカは今ごろ、大丈夫なのだろうか。

 

 ルリの乗っていたギガンテスは、炎に足場をとられ、動けなくなっていた。ルリは、

 

「ちょっと、何してるの! 早く動きなさいよ!」

 

 と言って焦っていると、後ろから黒い影が覆った。ルリはふり返ると、黒い炎が降りてくる。そのまま、ルリはギガンテスとともに炎に飲みこまれてしまったのだ。

 

 コサカも、研究員たちを引き連れて森の中を逃げ惑っていた。しかし、やがて炎に追いつかれてしまい、コサカを含む研究者たちは皆、飲みこまれていった。

 

 その様子を、サタールは画面越しに見ながら高笑いをしていた。

 

「もうすぐだ……。もうすぐ、私だけの世界が誕生する……!」

 

 サタールは、そう言いながら笑っていたのだ。

 

 その一方、現実世界でも空の色が芳しくなかった。どんよりとし、風が吹き、今にも嵐にでもなりそうな天気だ。正彦は病室で、治療を受けていた。ガンの進行は続き、正彦は苦しそうにしていた。それを、隣で美千子や真司が見ていた。

 

「あなた……、頑張ってね」

 

 美千子は涙を堪えながら、正彦の手を握っていた。それがきこえたのか、正彦も頷いた。美千子も、それを見て頷き返した。それを、真司も唇を噛みしめながら見ている。なぜ、このようになってしまったのか。そんな悔しさも抱いていた。

 

 その頃、ユウナたちは安全な場所まで避難していた。皆、息が上がってしまっている。ここまで来れば大丈夫だと思われるが、まだ油断してはならない。

 

「これから、どうしよう……」

 

 アカリが呟くと、

 

「やっぱり……、闘うしかないのかな」

 

 と、ユウナも言った。

 

「でも、ミカちゃんは?」

「ミカなら、きっと大丈夫。まだ、そう信じてるから……」

 

 ユウナはまた、アカリを安心させた。そこで、

 

「で、結局あの人と闘うん?」

 

 と、アカネが皆に最後の確認をとる。ユウナは、

 

「私は、最後まで闘おうと思います。やっぱり、これまでの努力を無駄にはしたくないので」

 

 そう答えると、アカリも言った。

 

「うちも、最後まで闘いたい。せっかく、ここまで来たんだから」

 

 次に、アカネはレイカを見た。

 

「で、あんたはどうするん?」

「私は……、みんなに従う」

 

 レイカが答えるので、

 

「鶴ケ崎さん……」

 

 と言って、ユウナは微笑んだ。その時、森の奥からこんな声がきこえてきた。

 

「私も闘う」

 

 四人は、一斉に声のした方をふり向いた。見ると、真剣な顔をしたミカが歩いてくる。ユウナはそれを見て、

 

「ミカ!」

 

 と言い、ミカの方に駆けよった。そして、二人は抱き合った。

 

「大丈夫だった?」

「うん。なんとかね……」

 

 ミカの無事を知り、ユウナはホッと胸を撫で下ろす。これで、メンバーがすべて揃った。皆は改めて、誓いを新たにした。

 

「私、思ったんだけど、ただこの世界を終わらせるだけだと、教授に申し訳ない気がするの。だから、全力で楽しもうよ、このゲームを! 一歩間違えば本当に死ぬかもしれない、このゲームをさ!」

「ミカ……」

 

 ミカは、本気で言っているのだろう。死ぬかもしれないゲームを全力で楽しもうと言うのは、とても勇気がいることだ。だからこそ、ユウナは嬉しかった。ユウナは、手を差し出した。それを見たミカは、真っ先にそれに自分の手を重ねる。続いて、アカリ、アカネもまた、自らの手を重ねていく。最後に、レイカも仕方なさそうに一番上に手を置いた。これは、友情の証。いつまでも変わらぬ、友の証だと、ユウナは思った。その時、五人の真上から光が射した。眩いそれは、やがて剣の形へと変貌を遂げた。

 

 同じ頃、サタールが外に出ていた。燃え盛る炎を眺めながら、こう叫んでいた。

 

「さぁ、もっと燃えよ! この世界ごと、焼き尽くすのだ!」

 

 そして、また高笑いをしていた。この世界を本気で滅ぼそうとしない限り、このようなことはしないだろう。ユウナたちの命も、ますます危険に晒されていく。しかし、ユウナのもとへ、救世主が降り立ったのだ。

 

 ユウナの目の前に、黄金色をした剣が降りてきたのだ。ユウナは、それを握ると皆の方を向き、そしてこう言った。

 

「行こう」

 

 それをきいた四人は同時に頷き、そして走り出した。最後の決戦が始まる、その決意は揺るがなかったのだ。

 

 

第四十九回「伝説の大地(ラスト・ダンジョン)」終

 

 

 

次回予告

ユウナ「あの世界は汚されることなく、終わりを迎えたんだって」

サタール「これが魔王の力だ!」

フギン「裏切り者はな、最後まで逆らうんだよ!」

正彦「あの子をあの世界を救う勇者に選んだんだ」

ユウナ「お願い……! もっと力を……!」

サタール「させるかぁー!!」

フギン「あいつらの心に何か残せたかな……」

ミーサ「兄貴が死ぬんなら、私も死んでやる!」

ミカ「私だって辛いのよ!!」

慎一郎「お前のおかげで、素直になれたようなもんだしな」

レイカ「さよなら」

ユウナ「レッド……、ごめんね……」

美千子「また……、来てくれるわよね?」

ユウナ『……レッド・ブレイブ・フレイマー、ユウナ!』

   「オー……、ディン……?」

 

 

 

次回(最終回)

 

伝説の大地・改(ラストダンジョン・コンティニュー)

序盤のキャラで、最も印象深い登場人物は?

  • 中谷優奈
  • 鶴ケ崎麗菓
  • 月見里美香
  • 夢野あかり
  • 池谷大輝
  • 相場善秀
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