ユウナの目の前に、一本の剣が降りてきた。それは、黄金色の光を放っていた。ユウナはそれを握り、皆に言った。
「行こう」
それをきいた四人は同時に頷き、そして走り出した。間もなく、最後の決戦が始まる。この世界を守るために、女たちは立ち向かうのだった。
最終回
SPの中は、炎の海と化している。近づくものは、何であろうと無差別に飲みこまれてしまう。そして飲みこまれたものは、プログラムごと分解され、消去されてしまうのだ。ユウナたちは、近づくに近づけない状態を強いられている。
「どうすんの? これ」
その様子を見ながら、不安気にミカが言った。ユウナは考えた。どうにか近づく方法はないかと。しかし、うまくいきそうな方法は出てこない。五人は岩陰に隠れ、サタールの様子を窺った。サタールの周りにだけ、炎がない。サタールは両手を大きく広げながら、高笑いをしている。
「どうしよう……」
アカリも、弱気な表情を見せる。しかし闘うと決めた以上、後には退けないとユウナは思った。突破口は、必ずどこかにあるはずだ。ユウナは、考えを巡らせた。その間にも、炎はどんどんSP中に広がっていく。
「もう時間ないって! ユウナ、何か思いついた?」
ミカが、ユウナを急かす。するとアカネも、
「その剣、使えへん?」
と、尋ねてきた。
「え……。これ、ですか……?」
「それは、あんたにしか使えへんねんやろ? なんか、感じることない?」
「え……、と……」
ユウナは、手にしていた黄金の剣をさらに強く握ると、目を閉じて精神を集中させる。ほかの四人も、黙ってその様子を見守った。するとどこからか、ユウナの耳に声がきこえてくる。
『……しに、……れ……』
「何か……、きこえます」
「えっ……?」
ユウナが言うので、四人は辺りを見回す。しかし近くには、四人以外は誰もいないようだ。
「ほんとに、きこえるん?」
「はい。たしかに、きこえるんです」
ユウナは主張した。たしかに、僅かだが何者かの声がきこえてきたのだ。ミカとアカリは疑うように、互いの顔を見合わせている。その時だった。五人を、巨大な影が覆った。ユウナは上空を見上げると、そこには、あるモンスターがいた。それは、「太陽龍プテラドス」で、フギンが使っていたプテラドスが進化した姿だ。それを見て、ユウナはハッとした。
「私に話しかけていたのって……、あなた……?」
太陽龍プテラドスはユウナの前に降りてくると、
『私に、乗れ……』
と、言った。きっと、これは黄金の剣の力によるものだとユウナは思った。その力で、プテラドスの言葉がわかるのだ。ユウナは、
「乗れって……」
そう言って戸惑いを見せると、ミカが背中を押してきた。
「きっと助けに来てくれたんだよ。ユウナのために、力になろうって。だから、行って。私たちも、すぐ応援に行くから」
ミカは、ユウナに笑いかける。それを見てユウナも、
「うん!」
と頷き、プテラドスに乗った。この時、ユウナにはわかった。太陽龍プテラドスの正体は、フギンが使っていたあのプテラドスだろう。フギンが、自分たちのために送ってきてくれたのだ。ということは、フギンもこの近くにいるはずだ。そう思うだけで、ユウナには心強かった。そして、ユウナを乗せたプテラドスは飛び上がった。空からならば、炎に触れるということはない。ユウナは、また剣を強く握りしめた。
サタールのところまで行くと、
「ほぅ。やはり、剣は君の手に渡ったか」
と、サタールは笑った。この剣さえあれば、SPの支配者となれる。しかし、サタールは余裕の笑みを浮かべている。ユウナは、そのことに対して奇妙に思った。普通であれば、危機感を抱くはずなのだが。すると、サタールが言うのだった。
「たしかに、黄金の剣さえあれば、この世界を支配できる。だが、それを生成したのは私だ。故に私は、その力をコントロールすることができるのだ。剣の力を、無効化することも可能だ」
それをきいたユウナは、どうしようかという気持ちに陥る。サタールの言葉がきこえたのか、ミカも怒りを顕わにした。
「何よ、それ! あいつ、最初っから剣はこっちに譲るつもりだったのよ!」
ユウナがサタールに対して、どのようにして戦おうか考えていると、
『大丈夫、きっと突破口はある』
と、プテラドスがユウナに語りかけてきた。ユウナはそれをきいて少しだけ安心するが、勝てないのではないかという気持ちもある。サタールは、そんなユウナの様子を見ながら、また高笑っている。
ユウナは次第に悔しくなり、唇を噛みしめる。どうすればよいのか、そればかりが脳裏を駆け巡った。それから数十分が経過したが、ユウナはただ炎の上を飛び回ることしかできていない。やがて、プテラドスも疲れてきたように、汗を流し始める。それに気づいたユウナが、
「大丈夫?」
と呼びかけるが、プテラドスは言った。
『心配するな。ちょっと疲れた、どうか冷静に考えてくれ』
「わかった」
ユウナはプテラドスの言う通り、何とかしようと頭の中で考えを巡らせる。しかしついに耐え切れなくなったのか、プテラドスは急降下を始めた。
「頑張って!」
ユウナは、プテラドスを鼓舞した。
『わかってる……、くっ……』
プテラドスは、辛そうな表情を見せつつ言った。そしてまた上昇しようとするが、うまく翼を動かせない。それを見ていたサタールは、
「どうした、もう終わりか」
と、嘲笑しながら言う。ユウナも、悔しさに打ちのめされながらそれを見ていた。どうすればよいのだろうか。ユウナは、必死に考えを巡らせていたのだった。
その頃、慎一郎が悠二郎の部屋を訪れていた。ドアを開けると、そこには浮かない顔をした悠二郎の姿があった。テーブルに両肘をつき、下を向いている。慎一郎が来たことにも、気づいていないようだ。慎一郎が、
「おい!」
と声をかけると、ようやく悠二郎は気がついた。
「あ、ごめん。兄貴、そっちはどうだった?」
「あぁ、今はみんなが交代で傍についてる」
「そっか……」
悠二郎が呟くと、慎一郎は向かいの席に座った。
「今頃、必死に戦ってくれてるよ。だから、もう少し待とう。辛いのは、お前だけじゃないからさ」
「そうだな……」
「大丈夫、心配すんな! きっと、すぐに終わるさ」
落ちこむ悠二郎を、慎一郎は全力で励ます。それをきき、悠二郎も顔を上げた。すると、慎一郎が笑いかけてくる。それを見て、なぜだか少し安心できた。ユウナはきっとやってくれる、そう思えたからだろう。
病院では、変わらず正彦がベッドに横になっていた。以前と比べて、かなり弱ってきている。ここ数日、美千子は四六時中正彦につきっきりだ。それ以外の者は慎一郎の言った通り、交替で正彦の病室を訪れていた。
戸が開き、ヒロインが入ってきた。
「教授、調子はどうですか?」
「あぁ……、大丈夫だ……」
力ない声で、正彦は答える。ヒロインは、持ってきた花束を美千子に渡した。美千子はそれを受け取ると、花瓶に入れ替える。すると、正彦は天井を見つめながら呟いた。
「悔しいなぁ……。私はまだまだ生きなければならないのに……、これは罰が当たったのかもしれないな……」
それをきいた美千子は戻ってきて、
「何言ってるの。治るわよ、絶対。だから、諦めちゃダメ」
と、正彦に言った。するとヒロインも、こう発言する。
「そうですよ、頑張りましょう。早く元気になって、どうか皆さんのところに戻ってきてくださいね」
「ありがとう。そう言ってくれるだけで、私は嬉しい……」
次に、美千子が正彦にきいた。
「……心配なの、彼女たちのこと」
「あぁ、無論だ。しかし、彼女たちならどうにかしてくれる。きっと、あやつらを倒してくれる。私は、そう信じているのだ。しかし……、昔あやつを見殺しにしようとした私にも、神は微笑んではくれんだろう……」
「あなた……」
美千子が、さらに不安気な表情で正彦を見つめると、正彦は続けた。
「美千子。たった今、初めてあの子にあった日のことを思い出していた……」
「あの子って、ユウナちゃんのこと?」
「あぁ。あれは二十年ほど前の、ちょうど今くらいの季節だったかな。私が一時期東京に戻っていた時、商店街の福引券を何十枚も手に入れてな。どうしても一等を当てたくて、何度も挑戦したが駄目だった。その時、あの子が現れたんだ。一枚の福引券を手に、私を不思議そうに見ていた。それを見て、ピンと来たんだ。この子なら、私の代わりに一等を当ててくれるのではないか……ってな。そして、十枚の福引券を渡した。あとからきいた話では、本当にあの時、一等を当てていたそうだ。それをきいた時は、魂消てしまったよ」
正彦が語るのをきいて、
「そうだったの……」
と、美千子も相槌を打つ。
「それを知って、私はあの子にますます興味が湧いた。そして、あの子をあの世界を救う勇者に選んだんだ」
「あなたが選んだこと、言わなくていいの? 神に選ばれたとか言って、本当はあなたが自分で選んでいたんだって」
美千子の話をきくと、正彦は黙った。そして、
「君が言ってくれるか?」
と言うと、美千子は答えた。
「嫌よ。自分で言ってちょうだい」
それをきき、正彦は微笑していた。
「そうだな……」
「そうよ」
二人のやり取りを、横でヒロインも見ていた。こんなに仲のよい夫婦は、ヒロインでも見たことがない。そして、また自分の過去と重ね合わせていたのだった。
一方で、ユウナの危機的な状況は続いていた。ユウナを乗せたプテラドスは、少しずつ落ちていっている。サタールは、
「わはははは! どう足掻いても、私には勝てん!」
と言い、笑っている。真下は、黒い炎の海だ。落ちてしまうと、ユウナやプテラドスも分解されてなくなってしまう。下を見ると、炎は数センチ先にまで迫ってきている。もうだめだ、そう思った時、突然どこからか光が射してきた。その眩しさのあまり、ユウナは目を瞑った。そして恐る恐る目を開けてみると、目の前にはなんとオーディンがいたのだ。
「オー……、ディン……?」
ユウナは呟いた。オーディンは、丸いバリアーのようなものを創り出し、それによってユウナとプテラドスを守った。サタールは、
「な、なぜオーディンがここに……!」
と、驚いた目を向けている。オーディンが創り出したバリアーは、ユウナとプテラドスを包みこみ、宙に浮いたままミカたちのいるところに連れていった。到着すると、優しくユウナたちを下ろし、消えていった。オーディンは、サタールの目の前で水を生み出した。すると、それによって黒い炎は見る見るうちに消えていく。その様子を見ながら、これはオーディンの魔術だろうとユウナは思った。
数分後、水によって炎は完全に消滅した。サタールは、纏っていたマントで水を防いだ。
「ぐぬぬぬぬ……! おのれ……!」
サタールは、歯をギシギシ言わせている。それを、遠くからユウナたちも見ていた。
「あいつ、今度は何してくる気だろう」
ミカは、また不安気に言った。サタールも、また奥の手を用意してくるはずだ。それが何であれ、こちらもこちらで手を打たなければならない。
すると、サタールが両手を広げる。
「私をここまで本気にするとは……。いいだろう、最終兵器に驚くがいい」
サタールが言うと、地面が縦に揺れ始める。ユウナたちは、その衝撃でその場にしゃがみこんだ。すると地面がひび割れ、サタールの後ろから巨大なモンスターが出現する。
序盤のキャラで、最も印象深い登場人物は?
-
中谷優奈
-
鶴ケ崎麗菓
-
月見里美香
-
夢野あかり
-
池谷大輝
-
相場善秀