パズル&ドラゴンズ~もうひとつの旅~   作:葉之和 駆刃

154 / 172
最終話 伝説の大地・改~ラストダンジョン・コンティニュー~(その弐)

「ヘ……、ヘビーメタルドラゴン!?」

 

 ミカは、慄きの声を上げる。それは、「ヘビーメタルドラゴン」というモンスターだった。全長、数メーターはある大きさだ。

 

「あんなの、どうやって倒せばいいんだろう……」

「怯んだらあかん、手はなんぼでもあるはず!」

 

 アカリの言葉に、アカネが皆を鼓舞する。しかし、今まで相手にしてきたモンスターとは、大きさのレベルが違う。サタールが、

 

「ハハハ! これが魔王の力だ、グラビティブレス!」

 

 と叫ぶと、ヘビーメタルドラゴンは黒いボールを創り出し、それをユウナたち目がけて投げつけてきた。それを、五人はどうにか交わした。

 

「あんなの、まともに食らったら……」

「今までのモンスターたちと、レベルが違い過ぎるよ」

 

 皆、だんだんと弱気になってきている。ユウナは危機感を覚え、

 

「でも、とりあえず攻撃してみよう!」

 

 と、皆を激励した。するとミカやアカリも立ち上がり、

 

「そうだね」

「やってみよう!」

 

 そう声を上げる。ユウナも、笑顔で頷いた。そして、それぞれ自分のモンスターを呼び出すと、攻撃を命令した。ミカは水属性、アカリは光属性の攻撃だ。そのふたつは互いに混ざり合い、やがてひとつの光線となった。その攻撃が、ヘビーメタルドラゴンの中心に命中する。しかし、あまり効いていないようだ。レイカもモンスターを繰り出し、攻撃を命令するが、相手によって撥ね返された。

 

「え、なんで効かないのよ!」

 

 ミカが声を上げると、アカネは言った。

 

「恐らく、こっちの攻撃力より、あっちの防御力の方が遥かに上回ってるんやろ」

 

 それをきいた皆は、もはや絶望しか感じられなかった。

 

「何……、それ……」

 

 勝てる気が全くしない。ユウナも次第に悔しくなり、拳を強く握りしめる。その時、

 

「勝つ方法ならあるぜ」

 

 という声がした。ユウナがもしやと思い、ふり向くとやはりフギンが歩いてくる。

 

「何よ、勝つ方法って」

 

 ミカが、フギンに尋ねた。するとフギンは、

 

「その剣を使うんだよ」

 

 と、皆の手にしている剣を指しながら言うのだ。

 

「これを使うって……、どういうことですか?」

 

 ユウナも、フギンの言うことがよく理解できなかった。

 

「それで魔法陣を描け」

「魔法陣?」

「お前らが散らばって、円になるんだ。それも、オヤジのいるところが中心になるように計算してな」

 

 皆はフギンの話をきき、顔を見合わせる。何を言っているのか、まだよくわからない。それでもユウナは、フギンを信じることにした。

 

「……わかりました」

「でも、それってムズくない?」

 

 ミカは言った。その意見も尤もだ。ユウナは、どのようにすればきれいな魔法陣が描けるのか考えた。するとレイカが、

 

「あなた、理系でしょ? 計算くらいできないの?」

 

 と、ユウナを見ながら言うのだ。ユウナが顔を上げると、ほかの三人の視線もユウナに集まっている。すべては自分にかかっている、そうユウナは自覚した。

 

「わかった。やってみる」

 

 ユウナが言うと、皆は頷いた。うまくいくという保証はどこにもない。しかし、やってみないことには何も始まらない。そして、ユウナはその場で位置を測り始める。ユウナは、大体の感覚をつかんだ。

 

「よし、いけるかもしれない」

 

 しかし、問題はまだあった。

 

「でも、相手に気づかれない? あっちも知ってるんでしょ?」

 

 ミカが言うので、

 

「そこは、俺が相手の気を引く。その隙に、あんたらは自分の持ち場についてくれ」

 

 と、フギンは言った。

 

「でも、大丈夫?」

「今は、それしかない。魔法陣は、あんたら五人にしか創れねえんだ。俺を信じてくれ」

 

 この時、ユウナにはフギンが誰よりも頼もしい存在に思えた。皆も、その気持ちは同じだったことだろう。そして、フギンはプテラドスに乗った。

 

「じゃあ、俺は行くぜ。あとは、よろしく頼む」

 

 一休みして回復したのか、プテラドスはフギンを乗せてまた飛び上がる。

 フギンが向かってくるのを見たサタールが、

 

「ほほぅ、裏切り者が今さら何の用だ」

 

 と言うとフギンも、

 

「裏切り者はな、最後まで逆らうんだよ!」

 

 そう言い、自分の手から剣を出した。フギンは、剣をサタールに向かって振り落とすと、サタールも同じように剣を出し、その攻撃を防いだ。そして二人は、戦い始めた。その間に、ユウナたちはそれぞれの場所に向かった。ミカは、こっそりと敵の後ろに回りこむ。そして小声で、

 

「オッケー、着いたよ」

 

 と、皆に無線を送る。

 

「わかった。じゃあ、みんなは大丈夫?」

 

 ユウナも、ほかの三人にきいた。

 

「うん、うちは大丈夫」

「あたしも」

「いいわよ」

 

 皆も、それぞれに答えを送ってくる。そして五人は、一斉に剣を敵に向ける。それを、フギンと剣で戦っていたサタールも気づいたようだ。

 

「そういうことか……」

 

 サタールは、笑みを浮かべた。それを見たフギンは、

 

「まずい!」

 

 と声を荒げ、サタールに攻撃しようとすると、サタールに剣を払われた。

 

「くっ!」

 

 次にサタールは、手からピンク色をしたゴム状のものを創り出し、それをフギンの方に向けて飛ばした。それは、まるでチューイングガムのように粘着力が強く、フギンはプテラドスと一緒に捕らえられてしまった。木と木の間に貼り付けられ、クモの巣に捕らえられた蝶のような状態だ。それを、ユウナも見ていた。

 

「フギンさん!」

「早くやれ!」

 

 フギンが叫んだ。

 

「そうはさせない」

 

 サタールが言うと、ヘビーメタルドラゴンはゆっくりとユウナの方を向く。それに危機を感じたミカも、

 

「ユウナ!」

 

 と、叫んだ。それでもユウナは冷静に、黄金の剣を構えた。ほかの四人も、同じように剣を構える。その瞬間、光が生じた。その光は剣と剣を結び、やがて立派な魔法陣を生成した。順番に、一人ひとりが呪文を唱える。

 

『ダーク・マスター、アカネ!』

『ライト・マスター、アカリ!』

『アクア・マスター、ミカ!』

『ウッド・マスター、レイカ!』

『……レッド・ブレイブ・フレイマー、ユウナ!』

 

 すると光は、ますます強さを増していった。

 

 その頃、ミーサは研究所でただ祈りを捧げていた。

 

「お願いします……。どうか、彼女たちに力を与えてください。こんな無力な人間の頼みをきいてくださるのなら、何でもお捧げいたします」

 

 指をクロスさせながら、ミーサは必死に願っていた。戦いが早く終わるように、そして皆が無事に現実世界に帰って来られるように……。

 

「させるかぁー!!」

 

 サタールは大きな手を伸ばし、ユウナのところに迫ってきた。ユウナはぐっと手に力をこめた。

 

「お願い……! もっと力を……!」

 

 ユウナは、必死に願った。そうすると、また光が強くなる。そして、魔法陣は完全に光を放出する。辺りは、目を開けていられないほどの強い光に包まれた。その瞬間、火山が爆発し、地面が盛り上がった。サタールは、それによって足場をとられた。するとまた、黒い炎が噴き出す。それにより、ヘビーメタルドラゴンは飲みこまれた。

 

「バ……、バカな……!」

 

 サタールがそう言っていると、盛り上がった地面が崩れ始めたのだ。そしてサタールもまた、炎の中に落ちていった。もうすぐ、この世界は終わる。まるで、それを伝えているかのような光景だった。

 

 その様子は、信号となって研究室にも伝えられる。画面が、激しく乱れ始めた。ミーサは立ち上がり、呟いた。

 

「あの世界が……、もうすぐ終わる……」

 

 ユウナたちも、早く出ないとプログラムと一緒に消去されてしまう。空を見ると、もう崩れ始めている。ユウナの周りに、四人は集まってきた。

 

「ねぇ、早く脱出しようよ!」

 

 アカリは、焦ったようにユウナたちに言う。

 

「うん、ちょっと待って」

「ユウナ、出口わかってんの?」

「それは、アカネさんが……」

 

 ユウナがアカネを見ると、

 

「うちに任せて」

 

 と、アカネは言った。その時、ミカはふと思い出し、向こうに駆けていった。

 

「ミカちゃん、そっち危ないよ!」

 

 すぐにアカリが呼びかけるが、ミカは止まらなかった。その時、ユウナはミカがどこへ向かったのかすぐにわかった。そしてユウナも、ミカを追いかけた。

 

「ユウナちゃん!」

 

 ミカが目指したのは、やはりフギンのところだった。身動きのとれないフギンは、ミカを見て言った。

 

「何してんだ、お前。早く逃げろよ」

「ちょっと待って、今助けるから」

 

 ミカは木によじ登り、ゴムをどうにか外そうと試みた。それを見たフギンが、

 

「おい、やめろ! お前らも、この世界の藻屑になるぞ!」

 

 と言っても、ミカはきかなかった。

 

「それでもいい。あんたがいない世界に帰るより、百倍はマシだから!」

「バカ! 何考えてんだよ!」

「あんたがバカでしょ! 置いていくなんて、できるわけないでしょうが!」

 

 ミカは、必死にフギンの体からゴムを外そうとしている。それを、木の下からユウナは見ていた。そこへ、三人も追いついてきた。

 

「いいから……、俺のことはいいから、お前らだけでも帰ってくれよ……」

 

 フギンの目からは、涙が伝う。

 

「嫌よ!」

 

 ミカは子どものように、涙と唾を飛ばしながら言うのだった。それを見て、ユウナたちからも涙があふれてくる。なぜ、神はここまで残酷なのだろうか。

 

「もう、いい。お前の気持ちは、嬉しいから……。お願いだ、言うことをきいてくれ……」

「ちょっと待って! あと少しだから!」

「ごめんな……」

 

 フギンが言った瞬間、ミカの身体が宙に浮いた。ミカは驚きながら、

 

「ちょっ、何これ!」

 

 と言っていると、フギンはミカに笑いかけた。

 

「お前は、生きろ。ありがとうな」

 

 フギンは自らの力を使って、ミカを宙に浮かせているのだ。

 

「ちょっと、降ろしてよ!」

「おい、ジタバタすんな」

 

 フギンが言うと、どこからかタイヤのない自動車のような乗り物が飛んできた。それの上部分が開き、ミカはそこへ放りこまれた。そして、フギンはユウナたちを見ると、

 

「そいつを、よろしく頼む! 乗ってくれ、早く!」

 

 と言うので、ユウナたちも従うことにした。もはや、それしか選択肢はないのだ。

 

「……わかりました」

 

 ユウナも、胸が痛んだ。これから、大切な仲間を一人見殺しにしようとしている自分に、憎悪が湧いた。しかしフギンを救出するのは、もう不可能としか言いようがない。全員がその乗り物に乗りこむと、入り口が閉ざされた。ミカは窓をバンバンと叩き、

 

「いやぁ~! 出して、出して!」

 

 と、泣きながら暴れている。それを見ていたフギンが、

 

「じゃあな」

 

 そう言った瞬間、乗り物から煙が噴き出し、物凄いスピードでユウナたちを乗せたまま飛び去った。それを見ながら、フギンは呟いていた。

 

「これで、あいつらの心に何か残せたかな……。なぁ?」

 

 フギンは何気に、一緒に捕まっているプテラドスに語りかける。するとプテラドスも、

 

『私にきかれても知らん。いや……、すでに残せていただろう』

 

 と言うので、フギンは崩れかけの空を見ながら、さらに呟いた。

 

「それだと、非常に有り難えな……」

序盤のキャラで、最も印象深い登場人物は?

  • 中谷優奈
  • 鶴ケ崎麗菓
  • 月見里美香
  • 夢野あかり
  • 池谷大輝
  • 相場善秀
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。