パズル&ドラゴンズ~もうひとつの旅~   作:葉之和 駆刃

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最終話 伝説の大地・改~ラストダンジョン・コンティニュー~(その参)

 乗り物から降りた五人は、走って出口に向かった。そして、研究室に続くセイントドアを潜った。異空間を走り抜けると、研究室に出た。部屋には、ミーサだけがいた。アカネは五人全員が研究室に入るのを見計らい、機械を操作してセイントドアにシールドを張る。モンスターが、外の世界に飛び出してこないようにするためだ。

 ミーサは、フギンやサタールがいないことに気づいた。

 

「おい、兄貴とオヤジは!?」

 

 それをきいて、ユウナは首を振った。それを見るとミーサは、セイントドアに突っこんでいこうとした。それを、アカネが止めに入る。

 

「離せよ!」

「待って、もうあかんって! あんたも、消されてしまうねんで!? 第一あんた、もうこの中入れへんやん」

「いやぁ~! オヤジ、兄貴~!!」

 

 ミーサは、暴れながら泣き叫ぶ。

 

「離せ、離せよ~! 兄貴が死ぬんなら、私も死んでやる!」

 

 その時、誰かがミーサを突き飛ばした。ミーサは倒れこみ、顔を上げるとそこにミカが立っている。

 

「あんたの気持ちは……、わかるよ。でも……、もう無理なの。それだけは、わかって。私だって……、私だって辛いのよ!!」

 

 ミカが怒鳴ると、ミーサはすべてを察したように泣き始める。

 

「約束したの……。この戦いが終わったら、結婚しようって……。私も、本当は辛いの。だから、わかってよ……」

 

 ミカも、そう言いながら涙を流していた。その直後、シールド越しに沢山のモンスターたちが集まってきた。その中にはユウナが所持していた、レッドの姿もある。ユウナは、セイントドアに近づいた。

 

「レッド……、ごめんね……」

「ユウナ……、離れて」

 

 アカネは、レバーを握っている。それを引くと、完全にSPは消去されてしまうのだ。

 

「待ってください、もう少しだけ……」

 

 ユウナがレッドを見つめると、レッドもユウナを見つめながら、涙を流しているように見えた。レッドもきっと、寂しいのだろう。SPが消えてしまうと、勿論レッドやほかのモンスターも皆、消去される。

 

「ごめんね……。君は、現実の世界では生きていけない。でも、このままにしておくと、大変なことが起こるの。だから、許して」

 

 ユウナの目から、また涙があふれ落ちる。ミカやアカリは勿論、アカネも泣いている。これまで無表情を貫いていたレイカでさえも、目を兎のように赤く染めている。

 

「……いくで?」

 

 アカネが言うと、ユウナは立ち上がってドアから離れる。アカネは、思いきりレバーを手前に引いた。その瞬間、ドアが爆発し、その爆音が研究室だけでなく、建物全体にまで及んだ。部屋中に煙が立ちこめ、それが治まると壊れた機械が顔を出す。ユウナはそれを見て、また涙を流した。

 

「レッド……、ごめんね……」

 

 ユウナは、初めてレッドと会った時のことを思い出していた。急にスマホから飛び出し、家の中を無邪気に駆け回っていた。次に、突然家を訪ねてきた正彦から「育ててほしい」と言われ、スマホで飼うことになった。あの時も、大層驚いたものだ。

 室内に、暗い空気が流れる。それを変えたのは、レイカだった。

 

「いいじゃない。どうせ、魂なんて宿ってなかったんだから」

 

 しかし、ユウナは言った。

 

「魂は……、宿ってたよ。私にはわかった。だから、レッドは私の気持ちもわかってくれたの」

 

 ユウナは、顔を上げた。その顔は、もう泣いてはいない。いつまでも悲しんでいたら、レッドたちに申し訳ない、そう思ったのだ。ユウナは笑顔で皆を見渡すと、

 

「教授に、報告しにいこう。全部、終わったって。あの世界は汚されることなく、終わりを迎えたんだって、教授に言いにいこう」

 

 と、言った。それをきいたミカも、

 

「よし、じゃあそうしようか」

 

 そう言って笑った。その反応は、ユウナにとって予想外だった。それ故に、嬉しかったのだ。アカリやアカネも、笑顔で頷いていた。そして皆は、正彦へ報告に行くことにした。

 

 しかし、正彦の意識はなかったのである。ユウナたちは、看護師から説明を受けた。

 

「横大路様は少し前から声をかけても反応がなく、あとどのくらいもつか……」

「そうですか……」

 

 ユウナは正彦を見ると、まるで眠っているようだった。あと少ししか余命がないと言われても、実感がない。アカリは、看護師の話をきいて泣き出している。ユウナもこれから、できるだけ正彦の側にいてあげようと心に決めたのだった。

 

 病院の廊下では、真司と慎一郎が椅子に腰かけ、話していた。

 

「それで、相手の目的はあの世界を征服することだけだったのか?」

 

 慎一郎がきくと、真司は答えた。

 

「わからん。叔父さんが死んだことにより、本当の目的が何だったのか、不明のままだ。検証しようにも、もうあの世界はどこにも存在しない。プログラムが、完全に破壊されたからな。そのプログラムを構築した本人である父さんも、いつどうなるかわからない状態だ」

「そっか……。本当に、終わったんだよな。何もかも……」

「まぁな」

 

 真司は窓の外を見ると、青空が広がっている。真司はそれを、数日ぶりに見たような気がした。

 

「そういえばさ、お前、告ったんだっけ。あの子に」

 

 慎一郎が、急に話を変えてきた。それをきき、真司は顔を朱く染める。その顔を見ると、慎一郎は笑いながら言った。

 

「ははぁ~ん、さてはフラれたのか」

 

 すると、

 

「そうだよ……」

 

 と、真司は呆気なく答えるのだった。

 

「でもまぁ、それには理由があるんだけどな」

「理由?」

「あぁ。あいつ、これから外国に留学に行くんだってさ」

「へぇ……」

 

 慎一郎は立ち上がり、真司の肩に手を置いた。

 

「でもま、よかったじゃないか。相手もお前のこと、嫌いじゃなかったんだろ?」

「そうか?」

「そうだよ。お前のおかげで、素直になれたようなもんだしな。だから、向こう行ってもやっていけると思う。だったら、応援してやれよ。いい年したおっさんが、六つも下の子を好きになったんだからな」

 

 それをきいて、真司も笑みを浮かべる。そして真司も立ち上がり、慎一郎に言った。

 

「じゃあ、今度は俺がお前の恋を応援するぜ」

 

 そして真司は、向こうに歩いていってしまった。

 

「おい、どういうことだよ!」

 

 慎一郎も、そう言いながら真司を追いかけた。しかし真司は、

 

「そんなの、自分にきけ」

 

 などと、はぐらかしていた。

 

 一方、ユウナは病院前のベンチに腰を下ろしていた。七月特有の生暖かい風が、頬を掠めていく。道行く人が、忙しなく流れていくように感じられた。すべて、終わったのだ。そのことが、ユウナにそう感じさせていたのかもしれない。

 

 しばらくして、誰かがユウナの隣に座った。ユウナはふと横を見ると、そこにはレイカがいた。

 

「鶴ケ崎さん……?」

 

 ユウナは、不思議そうにレイカを見つめた。

 

「あなたはどうするつもり? これから」

「えっ……?」

 

 急にレイカにきかれ、ユウナは戸惑った。

 

「私は……、新しい仕事見つけようかな。悠二郎さんと大毅のためにも、頑張らないと」

「そう……」

「鶴ケ崎さんは? これから、どうするの?」

 

 今度は、ユウナがレイカに尋ねた。すると、レイカは言うのだ。

 

「私、留学しようと思って」

「留、学……?」

 

 それは、ユウナにとって予想もしていなかった返答だった。

 

「まだ何をやるかは決めてないけど、京大で語学やってたから、向こうに行って、教師をしようと思ってる」

「小説家の夢は、もういいの?」

「叶えられない夢に一生懸命になるより、叶えられそうな夢を選んだ方がいいでしょ?」

「そうだね」

 

 ユウナは微笑むと、また前を見つめた。その時、不意に不安が襲ってきた。

 

「でも……、私も日本じゃもうろくな職に就けないかも。もうすぐ二十八になるし、どこもとってくれない気がするの」

「そんなことないわ」

 

 その言葉に、ユウナは再びレイカの方を見る。

 

「あなたなら、どこか就けるところがあると思うわ。そんな気がするの。だって、あなた優しいじゃない」

 

 レイカも、ユウナを見つめながら話した。それをきき、ユウナは嬉しくなった。レイカにそのようなことを言われる日が来ようなど、思ってもみなかった。

 

「ありがとう。私、頑張ってみる。会えるといいね、向こうで、お母さんに」

「えぇ、そうね」

 

 そして、レイカは立ち上がった。

 

「帰るの?」

「これから、手続きに行くのよ」

「もう、行くの?」

「今度の週末」

「見送りに行ってもいい?」

「結構よ、それじゃ」

 

 レイカは、そう返事をすると足を進めた。ユウナは立ち上がり、レイカを呼んだ。

 

「鶴ケ崎さん!」

 

 レイカがふり向くと、ユウナは言った。

 

「頑張ってね!」

「あなたも頑張りなさい」

 

 レイカが答えると、ユウナは手を振りながら、

 

「じゃあね!」

 

 そう言うのでレイカも、

 

「えぇ、さよなら」

 

 と言い、再び前を向いて歩いていった。ユウナは、ずっと今日という日が来るのを待っていたのかもしれない。レイカとこのような会話ができるのが、ユウナの夢だったのだ。ユウナは、レイカが見えなくなるまで手を振り続けた。

 

 レイカはしばらく歩き、ふと足を止めた。そして、高校時代に母からきいた言葉を思い出していた。

 

『私ね、ずっとあなたに謝りたかったの。許してもらえるとは思ってないけど、それでもずっと謝りたかった。寂しい思いばかりさせてしまって、ごめんなさい。あなたの名前つけたの私なのに、一緒にいてあげられなくて』

 

 あの言葉を思い出して微笑したのち、レイカはまた歩き出したのだった。その一週間後、ロンドンに向けて出発していったのである。

 

 

 時間は進み、2022年12月25日。ユウナは実家にて、仕事を探していた。下の階から、母の呼ぶ声がきこえる。

 

「ユウナ~、ちょっといいかしら」

 

 ユウナは、階段を降りて百合子のところに行った。

 

「どうしたの?」

「義輝から、手紙が来たの。年明けに帰ってくるんですって」

 

 百合子は、ユウナに手紙を渡した。それには、英語で文章が綴られている。ユウナは、それを微笑ましく思いながら読んだ。また、手紙と一緒に写真も添えられていた。ユウナは、そっと写真を取り出した。その写真は、現地で義輝が撮った写真だった。その写真に写っていたのは義輝のほかにもう一人、リンの姿があった。リンとユウナは、大学で同じ学科に所属していた。

 

「会えたんだ……」

 

『イタリアの学校にね、神坂リンって子がいるの。私の、大学時代の親友。もし、向こうでその子に会ったら、伝えてほしい。私は、夢に向かって精一杯頑張ってるって』

『あぁ、もし会えたら伝えておくよ』

 

 あの夜、ユウナが言うと義輝も笑顔でそう言ってくれた。あれから、ちょうど四年ほどになる。それでも、ユウナにとっては懐かしく思えた。

 次に、ユウナはリンについても思い出していた。

 

『ねぇねぇ、どこの出身?』

『えっ、私? あ、東京』

『え、ホントに? 私も東京!』

 

 初めて会った時、リンは気さくに話しかけてくれた。それだけで、ユウナは緊張が和らいだものだ。その後も、いろいろなことがあった。

 

『せっかく理転までしてきたから、卒業はしようと思う。帰って来いって言うなら帰るけど、でもそれはちょいもったいない気がするから』

『私だけ好きなことやってたら、結局それかって思われるじゃん。まぁ、私が苦労したって知って、向こうもスッキリしたんだと思う』

 

 リンが家出をして、偽名を使って大学に通っていると知った時は、衝撃的だった。父の隆吉と仲直りできたことで、家にも帰れるようになった。そんなリンを見て、応援したい気持ちになったことは、ユウナにとってはいい思い出だ。いつの間にか、ユウナはリンとまた会いたいという気持ちになっていた。

 すると、インターホンが鳴った。ソファーで義輝からの手紙を読んでいたユウナは立ち上がり、玄関にいった。ドアを開けると、ミカとアカリが立っていた。

 

「ユウナ、メリークリスマス!」

 

 そう言いながら、ミカは持ってきた紙袋を掲げる。それを見て、ユウナは思わず笑ってしまった。また、昔に戻ったような気がしたのだ。

 

 その後、ユウナは二人を部屋に入れた。

 

「ごめんね、遅くなっちゃって」

「ううん。そっちも、今忙しいんでしょ?」

「まぁね。でも、もうすぐ内定もらえると思うし」

 

 ミカは、そう言いながら腰を下ろす。

 

「そうだ、高校時代のアルバム持ってきたんだけど、見る?」

 

 続いて、ミカは紙袋から一冊のアルバムを取り出した。それを見てアカリも、

 

「うわぁ~、懐かし~」

 

 と、声を上げた。思えば、あれは運命だったのだろう。たまたま同じ高校を選び、同じ理系を選択した。もしもあの時、互いに違う道を選んでいたら、一緒にあのような冒険をすることもなかったかもしれない。

 

 三人はしばらく、アルバムを見て懐かしがっていた。

 

「うわ、私写真写り悪すぎでしょ!」

「わ~、鶴ケ崎さんきれい~」

「ユウナもほら、写ってるよ?」

 

 そんな会話をしながら、三人は笑い合った。ようやく、平和が訪れた。あの世界にいたころは皆、笑う余裕などなかった。しかし、今は思いきり笑っていられる。当たり前こそが、奇跡なのだとユウナは思った。

 そしてユウナは、二人にあることを提案する。

 

「今度、美千子さんのところに行くんだけど、よかったら二人もどう?」

「あ、行く行く!」

 

 ミカが、真っ先に答えた。

 

「うちも行きたい。一度、教授にお線香上げに行かなきゃって思ってたの」

 

 アカリも、賛成してくれた。それをきき、ユウナは嬉しそうに頷いた。

 

「あれ? そういえばアカリ、彼氏といつデート行くの?」

「もー、ミカちゃんは」

 

 ミカの不意打ちに、アカリは少し恥ずかしそうに言った。

 

「私も、気になる……」

「もう、ユウナちゃんまで~」

「言っちゃいなよ、どうなってんの? 今」

「今夜、食事行くの……。クリスマスだから……」

「お~!」

 

 ミカは、両手で口を押えながら言う。アカリは、スマホの写真を二人に見せた。そこには、アカリと一緒に一人の青年が写っている。アカリは今、慎一郎と付き合っているのだ。

 

「で、で、プロポーズは?」

「……まだ」

「今日辺り、来るんじゃないの? クリスマスだし!」

「ちょっと、意識しちゃうじゃん!」

「いいじゃん、だって好きなんでしょ?」

 

 ミカの発言に、またアカリは頬を赤く染める。そんな二人のやり取りを見て、ユウナも微笑ましく思った。そして、これからも親友でいようと改めて誓ったのだ。

序盤のキャラで、最も印象深い登場人物は?

  • 中谷優奈
  • 鶴ケ崎麗菓
  • 月見里美香
  • 夢野あかり
  • 池谷大輝
  • 相場善秀
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