Digest Onlinegame No.1 ~友情編~(その壱)
「引きこもり」。それは、日本を代表する社会問題の一つである。
2002年夏。ちょうど、蝉が鳴き始めた頃だった。公園では子どもたちが、鬼ごっこやかくれんぼをしている。そこの横の歩道を、下を見つめて駆け抜けるように歩く一人の少女がいた。
学校でのユウナは、休み時間は机に座って窓の外を眺めていることが多い。教室の隅っこに女子たちは集まり、楽しく会話している。ユウナはそれにも溶け込めずに、教室の中でただ孤立していた。そんなユウナを、唯一気にしている男子生徒がいた。その男子は、
ユウナと幼稚園が一緒で、家も近くだった。ユウナが一年の時、学校に行かずに本当の引きこもりをしていた頃、大輝は毎日のようにユウナの家に行った。そしてユウナが部屋から出てくるまで、部屋の前に座って待っていたこともあった。それを続けていくうちに、結果的にユウナは学校に来られるまでに精神が安定した。まだ完全とまではいかないが、学校にはほぼ毎日出席している。
「よう、そろそろ持ってるゲーム、俺らにも貸してくれよ」
「なぁ、いいだろ?」
ユウナの周りに集まってきた男子たちが、話しかけてきた。
「なんか、ここ、臭くね?」
「ほんとだ」
「くせー」
「あー、お前の服からじゃん!」
「絶対そうだ、お前服洗濯してないんじゃね?」
「だってお前、もやしだもんな!」
男子たちはそうやって、
「もーやーし、もーやーし」
と手を叩きながら言う。さっきまで友達同士で話していた女子たちの視線も、知らぬ間にユウナの方に向けられている。ユウナは、その状況をひたすら耐えた。
すると、主犯格の男子の顔面に何かが当たった。
「いてっ」
それは、ユウナの足元に落ちた。消しゴムだった。
「いてーな、誰だよ!」
「やめろよ、もういいだろ」
三人に向かってきたのは大輝だった。
「へんっ、いいじゃんか、別に」
ユウナは、大輝の方を見た。大輝は、三人に向かって言った。
「こいつが何したって言うんだよ、人傷つけて、そんなに楽しいかよ」
「ふん、また彼氏気取りですかぁー?」
「お熱いねー、ひゅーひゅー」
「行こうぜ!」
一人がそう言うと、三人はどこかへ行ってしまった。ユウナが大輝に助けられたことは、一回や二回ではなかった。
帰り道、ユウナと大輝は公園に寄った。
「ここに何か埋めようぜ!」
ユウナはポケットに手を入れ、その手をそっと出した。握られていたのは、カセット型のゲームソフト「マジックファンタジー」だった。それを見て大輝は、
「うわー、それ最近出たやつじゃん!」
そう驚いたように言った。ユウナは、それを大輝に手渡した。大輝はそれを見て、
「ほんとに……、いいのか?」
ときくと、ユウナは黙ったまま頷いた。大輝はそれを埋め、パンパンと両手を叩くと、立ち上がった。そして、ふり向いてユウナにこう言った。
「これ、十年ぐらい経ったらまた掘ろうぜ! 俺とお前の、友情の証」
ユウナは、嬉しそうに頷いた。大輝はジャングルジムの棒を片手でつかむと、猿みたいにぶら下がり、ユウナにもう片方の手をさし延べた。
「何かあったら、絶対俺に言えよ。俺が守ってやるから」
そしてユウナはまた、頷いた。
「約束な!」
大輝はそう言い、ジャングルジムから降りた。ユウナにとって、かけがえのない人だとも思えた。まだ幼いが、この関係は何年たっても消えることはないだろう。誰が見ても、そう思えるであろう。
ユウナは母に頼まれ、商店街に福引を回しに行った。着くと、中年ぐらいの男が福引券を大量に持ち、その分だけ抽選器を回していて、後が詰まっていた。
「おい、いつまでやってんだよ、おっさん!」
「さっさと代われ、ジジィ」
後ろから、ヤンキー風の若い男性が二人、罵声で煽っていた。それも無視して、その男は回し続けていた。
しばらくすると男は諦めたように、
「あー、もうダメだ」
と呟き、やっと引き返すそぶりを見せた。ユウナもそれを見ていると、男がユウナの方に歩いてくる。そして男は福引券の束をユウナに渡し、
「はい、十枚。これで、何か当ててくれ」
そう言うと、ユウナの頭を数回撫でた。大柄な男だった。サングラスをかけ、半袖のポロシャツを着、下はスーツらしかった。そして男は、去っていった。ユウナはしばらく、それを見つめていた。
ユウナの番になり、ユウナは商品一覧を目にした。
「こんにちは」
カウンターにいる女性は、笑顔でそう言った。一等は、最新のゲーム機だった。なのに、なぜあの人はあんなに回そうと、必死だったのだろう。ユウナは、不思議に思った。
ユウナは、手に持っている十一枚の券のうち、手元に一枚残すと、十枚を女性に渡してこう言った。
「十回、やらせてください」
女性はその十枚の券を受け取ると、
「どうぞ」
と言った。ユウナは言われた通り、十回分回した。十回目の時、黄色が出た。すると、それを見た女性が鐘を鳴らし、
「おめでとうございます! 一等賞です!」
と言った。それをきいて周りから、拍手がわいた。ユウナは、単純に嬉しかった。でも、あの人に対しての感謝の方がやや強かった。
その日からユウナは少しずつ変わり始め、友達も増え、いつしか一人ではなくなっていた。そう、人を信じることができたのだ。人を信じれば、自分も信頼される。そう思うようになり、ユウナは成長していった。
そして、あっという間に時は流れて2012年8月31日。朝の目覚ましが鳴る。
「ユウナー、起きてんのー?」
百合子の声が一階から響く。ユウナは、目覚ましを止めた。そして階段を下り、顔を洗い、歯を磨いた。普通の家庭に生まれ、よくある日常の中でユウナは生きている。そして制服に着替え、カバンを持った。
「行ってきます!」
ユウナはそう言うと扉を開け、外へ出た。夏の太陽が家の中に差し込んだ。そして、ユウナは走っていった。この日は、高校三年の二学期最初の日であり、ユウナが十八歳になる日でもあった。
総集編第一回「友情編」
ユウナは、二学期最初のホームルームに臨んだ。
「みんな、おはよう。三年生の二学期、忙しいと思うが、一緒に頑張っていきましょう」
ユウナのクラス、三年六組の担任、
始業式では、まず初めに校長が挨拶した。
「えー、三年生は今学期に受験が終わる人もいるでしょう。でもそれまでは、自分の道を信じ、努力してください」
ユウナの隣では、親友の
式のあと、ユウナのクラスではテストがあった。
「これって、数三入るの?」
ミカが尋ねると、ユウナは答えた。
「入らないと思うけど」
「よかったー。入ってたら終わってたわ」
ミカが自分の席に戻ると、前の席の女子がふり返ってユウナに話しかけてきた。
「ねぇ、ユウナちゃん。数学得意だよね? 教えてくれないかな」
そう言ったのは、ユウナのクラスメイト、
「ここのところ……」
と言うと、ユウナは戸惑ってしまった。人に教えられたことはあっても、自分が教えたことは少なかったからだ。
「あ……、ごめん、そうだ。相場君ならわかるんじゃないかな、相場君!」
ユウナは、左隣の席の男子生徒、
「四十住さん、わからないところがあるって。教えてあげて」
「あぁ、べつにいいけど」
相場は、快く引き受けた。するとリカが、それを拒否するかのように、
「あ、やっぱりいい」
と言い、再び前を向いてしまった。それを見て、その周りに少し気まずい空気が流れた。ユウナは相場の方を見て、
「あ、ごめんね」
と謝ると相場も、
「あ……、あぁ」
そう答えた。ユウナはそのあとも、リカの様子を見つめていた。
「私、私ね……、相場君のことが、好き……。相場君が、好きなの」
ある日の帰り道、リカがユウナに告げた。
「そっか……。じゃあ、私も応援するよ。ちょっとずつ、話しかけていけばいいんじゃないかな」
「それじゃダメなの!」
リカが、急に強い口調で言った。するとリカが後悔したように、
「ごめん……、そうだよね。急には、無理だよね……。わかってたの、全部。ありがとう」
と言い残すと、リカは走っていった。
「リカ!」
ユウナが追いかけようとした時、バスが来た。ユウナは、ためらった。このままバスに乗ろうか、リカを追いかけようか。でも追っていっても、また気まずい雰囲気になるだけではないか。ユウナは仕方なく、バスに乗った。ユウナは、何気にバスの外を見た。その日は、曇り空が広がっていた。リカの気持ちを考えれば考えるほど、自分が情けなくなっていった。
次の日、ホームルームで吉崎は言った。
「突然だが、四十住里華さんが、本日をもって転校することになった。今朝、手続きを終えて、今日の夕方、出発するそうだ。見送りに行きたい人は、ここに時間と駅名を貼っておく」
吉崎は、前の掲示板を差した。皆は、
「え? 今日?」
「急じゃね?」
と、友達などで話し合っている。ユウナはそれをきいて、驚きを隠せなかった。でも、なぜ言ってくれなかったのだろうという気持ちもあった。
放課後、ミカが来て言った。
「ユウナどーする? 行くの?」
「うん」
その時、スマホが鳴った。ユウナは、フォルダを開いてメールを確認する。それを見た瞬間、ユウナはカバンを持って教室を飛び出した。
ユウナはリカがいつも降りていたバス停でバスを降り、無我夢中で走った。
『リカのメアド、教えてくれる?』
ユウナは相場から、リカのメールアドレスを教えてもらっていたのだ。そして、上からホームを見渡せる道に出た。
リカは、電車の席に座り、両親に挟まれていた。リカは、ふとスマホを見た。そして、ユウナにコツを教えてもらったパズドラを開く。そして、微笑んだ。すると、遠くで声がきこえたような気がした。
「リカ、リカー!」
それをきき、まさかと思ったリカはふり向き、窓を開けた。すると、向こうで手をふっているユウナが目に映った。それを見て、リカから涙があふれた。ユウナは、両手で手をふっている。その右手には、スマホが握られていた。
「また、やろうね!」
ユウナが叫ぶと、リカもスマホをかざしてこう答えた。
「うん! また!」
ユウナはただひたすら、手をふり続けていた。
序盤のキャラで、最も印象深い登場人物は?
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中谷優奈
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鶴ケ崎麗菓
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月見里美香
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夢野あかり
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池谷大輝
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相場善秀