「先生がいう、人と自然が仲良く暮らしていける世界というのは、ゲームの中の仮想世界。いわば、人の手によって作られた、人工的な自然ということですよね?」
ユウナは、ホノりんを抱きかかえながら正彦に尋ねた。
「間違ってはいない」
正彦も、答えた。
「私、人の役に立つことがしたいんです。そう思わせてくれたのが、先生のお言葉だったから。私もいつか、先生のようになりたいです!」
「私のようにはならなくていい」
「え?」
「私を超える人間になってくれ」
その言葉をきき、ユウナは不思議と勇気がわくような、そんな気分になった。その日の出来事が、これからのユウナの人生に、この時からは想像もつかないほど、巨大な影響を及ぼすことになるのである。
総集編第二回「仲間編」
ユウナは、民宿の前に来た。これから大学に通う間、世話になる宿だ。以前、下見に来たことが幸いし、すぐに見つけられた。ユウナはそっと門を開けて庭に入った。そして、
「すみません!」
と、中に声をかけた。すると、それを待ってましたと言わんばかりに、小型の犬がユウナのところへ駆けよってきた。前に来たこともあり、随分とユウナに懐いているようだ。ユウナもしゃがみこみ、その犬の頭を撫でた。そうしていると、不意に窓が開いた。すると、中から大家の
「あぁ、あんたか」
初子は、無愛想にそう言った。ユウナが立ち上がって、
「あの、先ほど電話したんですけど、お留守だったようで。今日から、どうぞよろしくお願いします」
と言うと初子は、
「まあいいさ。早くお入り」
そう言い、中に入っていった。ユウナも少し安心し、中に入ることにした。
その後、初子に連れられて二階の部屋へ案内された。初子が襖を開けると、
「ここがあんたの部屋だよ」
と言い、ユウナを中に入れた。そこは八畳ほどあり、掃除をしたばかりなのか、塵一つ見あたらなかった。
「この部屋の管理は自分でやるんだよ」
初子がそう言って、階段を降りていった。
翌日、ユウナはとある人物に会いに行った。ユウナは京都駅から一つ手前の駅で降車し、相場にもらった地図を頼りに、リカの家を探した。近くまで来ると、Y字型の分かれ道に出た。ユウナはどちらに行けばよいか分からず、迷っているとある声がした。
「ユウナちゃん!」
ユウナがふり向くと、ある家の庭に
「久しぶり」
「久しぶり〜」
リカも、笑顔のまま返した。
中に入ると、リカが和室に案内してくれた。
「ユウナちゃんはさ、なんで龍山受けようと思ったの?」
リカが、卓袱台を出しながらそうきいてきた。
「面白い先生がいたの。その先生の学科って、何が研究テーマか分からないんだけど、何か感じるものがあって選んだの。でも、今はすごく心配してて……。どういう感じのところなのかな、とか。でも、後悔はしてないよ。心配だけど、楽しみでもあるから」
ユウナはそう答えるとリカも、
「へぇ、そうなんだ」
と、感心していた。
そして、入学式の日になった。入学式が終わり、今度は学科ごとのクラスに分かれた。そして、学科ごとの説明を受ける。ユウナのクラスの担当は、正彦だった。
「皆さん、初めまして。このクラスを担当する、横大路正彦です。しばらくは慣れないことばかりでさぞかし不安でしょうが、一緒に頑張っていきましょう! それでは、資料を配ります」
ユウナは、まさかいきなり正彦の授業を受けられるとは思っていなかったため、驚きとともに、少し高揚した。
ユウナが借りている部屋の向かいには、もう一軒宿があった。ユウナは、二階の部屋をノックした。
「すみません、中谷です」
ユウナはそう声をかけるが、反応はない。
『人と顔を合わせようともしない。困ったもんだねぇ。犬の世話まで私に押しつけて』
ユウナは、鍵がかかっているだろうと思ったが、一応ドアの取手を引いてみた。するとドアが開いたので、ユウナは驚いた。開いているはずがないと思っていたが、入ることができた。ユウナは、そっと足を中に踏み入れた。そして音を立てずにドアを閉めると、中の様子を窺った。アパートの一室をそのまま貸家にしたような感じで、目の前には廊下があった。電気が消え、まるで留守のようにも見えた。ユウナは靴を脱いで、中に上がった。しばらく廊下を歩くと、左側に部屋があり、光がもれている。ユウナは、その部屋のドアに耳を当てた。中から、音楽がきこえてくる。ユウナはそっとその部屋のドアノブをつかみ、そっと押した。その瞬間、光が一斉に部屋の外に放出された。ユウナは少し眩しそうに、中を窺った。正面にはパソコンの画面があり、その前に背中を縮めてゲームをしている男がいた。男はヘッドフォンをしており、外にきこえていたのはそこからもれている音だった。そのため、ユウナが声をかけてもまったく反応しそうになかった。ユウナは仕方なく引き返そうとした、その時だった。
「あんたが新しく入居してきた新入生か」
突然、その男が話しかけてきたのだ。ユウナは惑いながらふり向くと、その男はヘッドフォンを外した。ユウナが、
「知ってるんですか? 私のこと」
ときくと、男は答えた。
「あぁ。あんたがペロの世話してんのも、この部屋から見てたからな」
「どうして、ずっと閉じこもってるんですか?」
ユウナは思わずきいてしまった。
「初さんや、大学の皆さんも、心配してると思います。だってほら、こんな狭いところにいたら、それこそもやしみたいになっちゃいますよ」
ユウナはわざと、自虐的なことを言った。
「俺の何を知ってる」
「はい?」
「あんたは、俺の何を知ってるんだ」
「何って……」
「みんなそうだよ。人の気持ちなんて考えないで、俺を置いてきぼりにする。何が心配だよ。心配なんかしてないくせに」
「そんな言い方……」
ユウナは反論しようと進み出ると、
「帰れ。二度と来るな」
と、男は冷たく言った。
「なぜですか? なぜそんなに人を憎むんですか? 人を信じたこともない人に、そんなこと言われたくありません」
勢いのあまり、ユウナはそう言ってしまった。するとその男、
「だからそれがムカつくんだよ……」
と呟くと、ユウナの方をふり向いた。
「頼む、帰ってくれ」
ユウナはそれを見て、驚いてしまった。両目下に大きなクマができ、肌は男とは思えないほど白かった。部屋の電気はついていないが、パソコンから出る光がその男の顔を照らしていた。ユウナはそれを見つめながら、
「私は、諦めませんから。どんなことをしてでも、あなたを救い出してみせます。いつか、必ず外の世界へ連れ出してみせますから」
と強気に言うと、部屋を出ていった。ユウナは階段を下り、自分の部屋に戻っていった。
ある日、ユウナは正彦の研究室に連れて来られた。
「あの、先生。用事って、何のことですか?」
「まぁ、座りたまえ」
正彦は、助手用の椅子を指した。ユウナはそこに座ると、正彦はこう言いだした。
「君は、前に言っていたよね? 私が求める世界、人と自然が共存していける世界はゲームの中にあるんではないかと」
「はい」
「これがその世界だ」
ユウナは、正彦の言っていることが理解できなかった。一体、何をしようというのだろうか。そこに助手の
「どうだね。これが私の理想とする世界だ。気に入ってもらえたかな」
「どういうことですか?」
ユウナはふり返ると、正彦にきいた。
「いやね、君にここで手伝って欲しいことがあるんだよ」
「手伝ってほしいこと?」
ユウナがきくと、アカネが言った。
「この世界でも、生き物が生きてる。だから、その子たちの世話を頼みたいねん」
「世話を?」
すると正彦も、
「あぁ。手伝ってくれるか?」
と、きいてきた。ユウナは少し迷った。これは夢かもしれない。するとレッドがユウナの足元に来て、飛び跳ねている。それを見て、ユウナはこれは夢ではないとなぜだか悟ることができた。そして、正彦にこう言った。
「私に、お手伝いさせてください」
すると正彦は微笑み、
「君なら、そう言ってくれると信じてたよ、ありがとう。改めて、これからよろしく」
と言うのでユウナも、
「はい!」
そう言って笑った。これがユウナにとって初めて見た、正彦の作り上げた世界であった。
休みの日、ユウナは友達と京都観光に行った。龍安寺の庭園は有名で、白砂の中に大小十五個の石が置かれてある。
「全部いっぺんに見ようとしても、絶対に一つ隠れるらしいんだ」
縁側に座りながら、
「ほんとだ~」
と、感動したように言った。すると後ろにいた案内役の
「十五という数字は、中国故事によると完全という意味らしい。どこか一つ隠れるということは、不完全を表していると言い伝えられている。自分の未熟さに気づかせてくれる、そんな意味合いなのだろう」
「未熟さに、気づく……」
ユウナはそう呟き、不意に正彦の言葉を思い出した。
『これは、人工的に創り上げた世界にすぎない。何もかもが
すると、リンが声をかけてきた。
「ユウナ、どうしたの?」
ふと我に返ったユウナは、何気にこう質問してみた。
「ねぇ。みんなは、例えばゲームの世界に入れるとして、その中に花が咲いてたら、それはやっぱり自然とは言えないのかな」
「でも、人が作ったんだから、やっぱり自然じゃないんじゃない?」
「私もそう思う」
リンとリカが、それぞれに言った。ユウナは、
「そっか……、そうだよね。ごめん」
そう言うと、リカが少し心配そうに、
「ほんとに大丈夫?」
ときくと、ユウナは頷いた。
「そろそろ行こう」
ユウナは言うと、立ち上がった。雅也も、その様子を黙って見ていた。
その後、三人は雅也にいろいろな観光地を案内してもらい、最後はお土産を買ったりした。
ユウナは帰る途中、自分にできることはないかと考えた。
『実のところ、私はそのコンピュータの技術を生かして、現実の自然界を守ることはできないかと考えている』
下宿に帰ってくると、玄関先で足を止める。真宏の部屋を見上げ、ペロがしきりに吠え続けている。それは相変わらず、寂しそうな声だった。
序盤のキャラで、最も印象深い登場人物は?
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中谷優奈
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鶴ケ崎麗菓
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月見里美香
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夢野あかり
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池谷大輝
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相場善秀