パズル&ドラゴンズ~もうひとつの旅~   作:葉之和 駆刃

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Digest Onlinegame No.2 ~仲間編~(その肆)

 ユウナは真宏を探したが、一向に見つからなかった。大学から帰る途中、雨が降ってきた。ユウナは傘を持っておらず、近くのバス停で雨宿りしようとも考えたが、当分止みそうになかった。それに、あと五分もすれば下宿に着ける。ユウナが再び歩き始めた直後、自分をある影が覆った。ふり返ってみると、後ろに真宏がユウナに傘を差し出している。前にも、同じようなことがあった。

 

「何してんだよ」

「先輩……」

「風邪ひくぞ」

 

 真宏は、優しく言った。ユウナは赤くなった。真宏も、ユウナの様子を見つめている。

 

「先輩に……、話があって……」

「何だよ」

 

 しかし、思うように言葉が出てこない。言わなければならないという気持ちと、本当にこれでよいのかという気持ちが綺麗に分かれていた。

 

「私……、先輩と話していると、なぜか元気になれるんです。この気持ちが何なのかが、自分でもよくわかりません。わからないけど、これだけはどうしても伝えたくて」

「俺は好きだぞ、お前のこと」

「はい……、えっ?」

 

 ユウナは思わず顔を上げる。真宏は表情を変えず、ユウナを真っ直ぐな視線で見つめている。

 

「あの……」

 

 ユウナが戸惑っていると、傘が地面に落ちた。すると真宏が、ユウナを抱きしめる。

 

「俺と、ずっと一緒にいろ」

 

 その言葉のあと、また二人の間に沈黙が流れる。そして、雨が降っている音だけがきこえる。ユウナも、そっと真宏の後ろに手を回した。

 

「はい……」

 

 こうして、二人は付き合うことになった。

 

 

 ユウナはその後、正彦からの依頼でセインツ・パラダイスのダンジョンに入った。その中で、ユウナは誰かにぶつかり、倒れこんだ。ユウナは目を開けると、前の方からきき覚えのある声がした。

 

「ユウナ……?」

 

 ユウナはそっと顔を上げた。そこに立っていたのはなんと、ユウナの高校時代の同級生・ミカで、「アワりん」を抱きかかえている。ユウナは驚きを隠せず、

 

「ミカ?」

 

 と、声をあげた。

 

 ダンジョンの外に出ると、ミカは背伸びをしながらこう言った。

 

「やっぱり、外の方が断然気持ちいいよね! ここがゲームの中だなんて、言われなかったら誰も思わないもんね~」

「そうだね……」

 

 ユウナも、ミカの隣に来て言った。ミカはその場に座りこみ、横になった。真上には、現実世界と何の差異もない青空が広がっている。

 

「ここの空も、すごい綺麗だよね。なんであんな澄んだ色してんだろ……」

 

 ミカがそう呟くと、ユウナも空を見上げる。ミカの言う通り、知らなければ現実の空と見紛うばかりの色をしていた。

 

 

 まるで月日が風のように過ぎ、2015年2月28日。レイカは飛行場の階段を駆け上がり、周りをキョロキョロと見渡した。すると向こうに、キャリーバッグを片手に智美(あけみ)の姿があった。レイカはそこへ行き、

 

「母さん!」

 

 そう声をかけた。そして、智美はふり向いた。智美は目を細めて、

 

「来てくれたの……」

 

 と、嬉しそうに言った。

 

「当然でしょ。これで、もうしばらく会えないんだから」

「ありがとう、嬉しいわ」

 

 するとそこに、雅也と父の圭介(けいすけ)も来た。雅也は、

 

「だから言ったろ。レイカは必ず来るから、心配いらないって」

 

 と言うと圭介も、

 

「レイカも、もう大人だ。心配せずに、行ってきなさい」

 

 そう、優しく言った。

 

「ありがとう。じゃあ、行ってくるわね」

 

 智美は言うと、カバンを引いて歩いていこうとした。すると、

 

「母さん!」

 

 と、不意にレイカが呼び止めた。それをきいた智美が、ふり向いた。

 

「……いってらっしゃい」

 

 そう言ったレイカは、表情豊かであった。高校までとはまったく違う、穏やかな顔をしている。智美はそれを見て安心し、笑顔を見せた。もしかすると、これでもう何年も会えなくなるかもしれない。そしてレイカ自身も、予感していた。これが本当の別れなのだと、そして新しい人生の始まりなのだということも。

 

 

 東京に帰ると、ユウナは高校の時の仲間たちとともに喫茶店に集まった。

 

「あ~、一年早かったなー」

 

 ミカが言うと大輝も、

 

「もう大人だもんな」

 

 と言った。するとミカが、

 

「どうしたの? 久しぶりにユウナに会えたんだから、もうちょっと喜びなよ~」

 

 そう囃すので、大輝は赤くなった。

 

「は? なんでだよ」

「本当は嬉しいんでしょ。成人式の時も振り袖姿のユウナ見て、赤くなってたくせに~」

「おい、言うなよ」

 

 すると大輝が、

 

「ユウナは、何かやりたいことあんのか」

 

 と、きいてきた。

 

「私は、まだ決められてなくて。でも、心配いらないから。自分のことは自分で決める。大人になってまで、みんなに迷惑かけられないよ」

 

 ユウナがそう答えるのを、皆も見ていた。これから少しずつ考えていけばいい、まだあと二年もあるのだから、そうユウナは思うことにした。そして、喫茶店の窓から真赤に染まる夕陽を眺めていた。

 

 

 それから一年以上が経ち、2016年3月。民宿には、リンとリカが遊びに来ていた。リカはノートを広げながら、

 

「もうすぐ面接だけど、正直自信ないんだよね」

 

 と言った。

 

「そうだ、ユウナはどう?」

 

 リンもユウナにきくと、

 

「私も、まだ迷ってる。どこの業界に行けばいいかも、悩んでて……」

 

 と、ユウナは答えた。

 

「それヤバいって。早く決めちゃわないと。もう募集始まってるよ? でも、焦って適当に決めたらダメだけどね」

 

 リカがそう言うので、ユウナは頷いた。あと一年後には、果たして自分の進むべき道が定まっているのだろうか。焦りや不安の中、ユウナはこれからのことを考えていた。

 

 

 そんなある日、ユウナは授業を受けていると、バンッと音がし、教室内の電気が一斉に消えた。

 

 その後、ユウナはリンと一緒に正彦の新しい研究所へ行った。

 

「今、停電してる範囲内の電線に異常はなかった。でも、どう考えても電気はストップしてるねんやんか。恐らくやけど、誰かが故意的にそうしたんやと思う」

 

 アカネが言うとヒロインも、

 

「さっき見たら、ネットも使えないようになっていましたし……」

 

 と、付け加えた。

 

 テレビのニュースでは、停電している時間とほぼ同じ時刻に、ある企業の機密情報が盗まれたのだという。

 

「いったい、何があったんだ……」

 

 正彦の息子、横大路(よこおおじ)真司(しんじ)はわからず、そう呟いている。

 

「恐らく、奴らの仕業だろう」

「でも、何のためにですか?」

 

 正彦が言うと、ヒロインがきいた。

 

「恐らく、楽しんでやっているだけだろう。だから、これから何が起きるのか私にも想像もつかん」

「愉快犯、ってやつか……」

「何それ、迷惑にも程があるよ!」

 

 真宏とリンも、そう言っている。ユウナは正彦に、

 

「私、やっぱり見てきます。あの世界で何が起こっているのか、気になりますから」

 

 と言うので、正彦は心配そうな顔をした。

 

「君一人で大丈夫か?」

「はい」

 

 ユウナは、そう答えた。

 

 ユウナがミカと一緒にセインツ・パラダイスを探索していると、あるモンスターが二人を襲撃してきた。それは、「ティラノス」という火属性のモンスターだった。

 

「でかっ」

 

 ミカが思わず、そう声を発した。すると、ティラノスは再び二人に向かって炎を吐いた。二人は逃げ、

 

「なんで!? プレイヤーには攻撃しないはずなのに!」

 

 と、ミカが走りながら言っていると、ユウナは予想した。

 

「きっと、プレイヤーがどこかにいるんだと思う」

「えっ?」

「モンスターがプレイヤーに攻撃してこないのは、ダンジョンだけ。だから、多分誰かが操ってるんだと思う」

 

 そうしていると、またティラノスが二人に炎を吐いてくる。二人は、近くの森に逃げこんだ。ティラノスは、二人を探している。それを、二人は木の陰から見ていた。

 

「どうしよう……」

「ちょっと待って、調べる」

 

 ミカはそう言って、パソコンを取り出した。そして、セインツ・パラダイスのマップを表示させ、様々な角度から映し出した。するとある画面に、人影のようなものが映った。

 

「いたよ! 多分こいつじゃない?」

 

 ミカは、その人影を指差した。それは、向かい側の森にいた。ユウナが前を向き、目を凝らして確かめると、やはり人の姿が見える。

 

「どうする? 戦う?」

「それしかないと思う」

 

 ユウナは言うと、前に出て戦闘モードに切り替えた。そして、自分のモンスター、「プレシィール」を召喚し、手元のパズルを消すと、水属性の攻撃が見事ティラノスに命中した。ティラノスはそのまま倒れこみ、消えてしまった。

 

「やった!」

 

 ミカも喜びの声を上げながら、森から出た。すると、ずっとその様子を見ていた先程の人影が、森の奥へと逃げ出したのだ。ユウナとミカはそれを見て、追うことにした。森に入り、視界が段々と暗くなってくる。森を抜け、広場に出た。前には、ユウナよりも少し小柄な女が走っている。

 

「待って!」

 

 ユウナが声をかけるとその女は、

 

「ついて来んで!」

 

 と、言い放った。ユウナは、その声に反応した。どこかできいたことがある声だったのだ。そしてやがて、ユウナはその女に追いつき、腕をつかんだ。その衝撃で女は倒れこみ、尻餅をつくと、女は二人の方を向いた。目にはアイマスクのような眼鏡をかけ、顔はよくわからない。ユウナはその女を見つめながら、

 

「アカリ……?」

 

 と、尋ねた。そして、その女は眼鏡を外し、顔を見せた。それは紛れもなく、高校時代をともに過ごした、アカリだったのだ。

 

「えっ、アカリ!?」

 

 ミカも、そう言って驚いている。するとアカリは、

 

「ごめんね、よく見えんかったから……」

 

 そう、しょんぼりしながら言うのだった。

 

「うち、誰かおったら攻撃するよう言われとったんよ」

「誰に?」

「たしか……、フギンって人。その人、この世界がある研究者に狙われてるから、創った人の命令で守っとるらしいんよ」

「それ……、多分騙されてるんだと思う。この世界を創ったのは、龍山大学の横大路先生だよ」

「そうなん?」

 

 アカリは、きょとんとしながらユウナを見上げている。

 

「ごめんね。うち、何も知らんかったから……。父ちゃんが亡くなって、大学辞めたんよ。うちが代わりに働かなあかん思って」

「そうなんだ……」

 

 ミカが呟くと、アカリは頷いた。

 

「だからうちも、もう少し強うならなあかん思ったんよ。みんな頑張っとるけん、うちも頑張らなあかん! そう思ってたら、妙なとこに迷いこんだみたいで……」

 

 事情をきいて、ユウナはアカリにこう言った。

 

「大丈夫。これから、まだまだ時間はあるよ。みんなで、ちょっとずつ頑張っていこう」

 

 ユウナが手を差し延べると、アカリはその手を握った。そして立ち上がり、

 

「ありがとう!」

 

 と、笑顔になった。ユウナも、それを見て笑い返した。そうするとミカが来て、

 

「アカリ、久しぶり~!」

 

 と言い、喜んだ。その瞬間、三人はあのころへタイムスリップしたように、互いを見て笑い合った。あの愛おしかった時間が、再び訪れるかのような、そんな瞬間であった。

 

 

総集編第二回「仲間編」終

序盤のキャラで、最も印象深い登場人物は?

  • 中谷優奈
  • 鶴ケ崎麗菓
  • 月見里美香
  • 夢野あかり
  • 池谷大輝
  • 相場善秀
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