ユウナたちは、正彦の研究室に集められた。ユウナ含む五人は、「フィフス・フォリア」という戦士としての称号をもらい、それぞれの呼称で呼ばれることになったが、誰がどの称号をもらうかはまだ決まっていなかった。
「SPに宝玉を設置し、そこにそれぞれの剣を隠した。それらをすべて見つけ、黄金の剣を手にした者だけが、この世界の支配者となれる……」
正彦が、皆の前でメールを読み上げた。それには、皆もわからないといった表情をし、互いに顔を見合わせていた。しかし正彦だけは冷静に、
「きっと、これはやつから仕かけられたゲームだろう」
と、言うのだ。
「ゲーム……」
ユウナも呟くと、正彦は続けた。
「皆で手分けして、その宝玉を見つけてほしい。もしここに書かれていることが本当だとしたら、セインツ・パラダイスを救うにはそれしかないと考えている」
「でも……、どこにあるんですか?」
部屋にいたヒロインが尋ねた。それについて、正彦は俯くと横に首を振る。正彦ですらわからないのに、自分たちに見つけることなどできるのだろうかと、ユウナは内心不安に思った。すると、正彦が言った。
「しかし未攻略のダンジョンが封鎖されてしまった以上、もはやこれしかあの世界を守る方法がない。皆、明日までに考えてきてくれ。では、今日はこれにて解散とする」
皆はいつも以上に、不安そうな顔をして部屋から出ていった。ユウナは、しばらくその場を動くことができなかった。
2019年12月24日。ユウナは出産した。陣痛から数時間後、病院の部屋には産声が響き渡った。部屋の外で待っていた悠二郎は、その声をきくなり立ち上がった。するとドアが開いて、看護婦が出てきた。
「おめでとうございます。元気な、男の子ですよ」
それをきくと悠二郎は嬉しさのあまり、
「あ、ありがとうございます!」
と、大袈裟すぎるくらいに深く頭を下げた。それを見て、看護婦も笑っていた。
「しっかりと、抱っこしてあげてくださいね!」
「はい!」
その後、その病室でユウナは悠二郎と一緒に子どもの名前について相談した。
「ユウナ、覚えてる? 男の子だったら、俺が名前つけるからって」
「うん。悠ちゃん、どんな名前考えたの?」
ユウナがきくと、悠二郎はしばらく間を置いたあと、こう言うのだった。
「
「大、毅……?」
「あぁ。『大きい』に、『
「それって、もしかして……」
悠二郎の話をきいて、ユウナはあることに気づく。そして悠二郎も、話を続ける。
「今日ってたしか、ユウナの友達の命日だったよな? なんか、偶然とは思えなくてさ」
「それで……、大毅……」
思えば、今日は大輝の一回忌だった。悠二郎も、そのことを覚えてくれていた。これは、ユウナにとってもただの偶然だとは思えなかった。きっと、天国にいる大輝からの贈り物なのだ。病室の窓辺には、幼いころに撮った大輝とのツーショットが飾られていた。
ユウナは悠二郎とともに研究所に足を運んだ。悠二郎は、幼い大毅を抱えている。二人の話をきいた正彦は驚きの表情を浮かべながらも、
「わかった。君たちがそう言うなら、私は構わない」
と、快く了承してくれた。前日、二人は話し合ったのだ。
『俺も、ユウナたちと一緒にあの世界に行くよ。大毅も連れて』
『えっ……』
『大丈夫。大毅は、俺が必ず守るから。だから、あんまり心配しないでくれ』
次に、正彦はほかのメンバーにも答えを求めた。
「君たちは、どうしたいんだ?」
正彦の質問に、ミカとアカリは答える。
「私らも、あれから考えてさ……」
「ユウナちゃんが行くって言ってくれたら、うちらも行こうって決めたんよ」
「二人とも……」
ユウナは、二人を見つめながら呟いた。視線を感じた二人も、ユウナに笑いかける。二人の言葉が、ユウナにとってどれだけ励みになったことだろう。そして、正彦はレイカにも尋ねた。
「君は……、どうだね?」
するとレイカは、少し間を置いてから口を開いた。
「私も……、他人事じゃないって思えてきたから、……協力してあげるわよ」
それをきいたユウナは、
「ほんとに、いいの……?」
と、レイカにきいた。
「えぇ。どうせここで拒んでも、突っかかってくるでしょ? だからいっそのこと、今は賛同してあげる」
「ありがとう!」
「勘違いしないでね、私は私で行動するから」
「それでもいいよ。鶴ケ崎さんがそう言ってくれて、ほんとに嬉しい……」
ユウナは、レイカに微笑んだ。
それから皆はSPに住み始め、モンスターの強化などを行った。
「交換?」
「アカリと相談してさ、やっぱ自分に合った属性にした方がいいのかなぁって思って」
ユウナはある日、ミカから属性の交換話を持ちかけられた。すると、アカリもこう言うのだ。
「うちも、そう思う。自分に似合う属性の方が、力を生かせる気がするから」
「今、ユウナが水だっけ。私、実は最近思ったんだよね。もしかしたら今のより、自分の好きな属性を極めた方が、ほら、スキルアップ? するかな~って思ってさ。だから私の光と交換してほしいの」
「でも……」
「ユウナの気持ちもわかるよ。でも、わかってるからこそ、お願いしてるんだ」
「うん、わかった」
そして、専門とする属性の交換は終了した。ユウナが火、ミカは水、そしてアカリは光となった。
数時間後、火山が爆発し、噴火に怯えたモンスターたちが逃げてくる。
「まずい、モンスターが混乱している」
真司も、その様子を見ながら言った。
「どうする?」
「このまま噴火活動が続けば、やがて甚大な被害をもたらすだろう。これは、噴火を食い止めるしかなさそうだ」
「食い止めるったって……」
「それは、俺にもわからん。本当なら、外からゲームデータの一部を消去することが一番手っ取り早い。でも、一度現実世界に戻ってる余裕はない。それなら、中から何とかするしかないだろ」
「私が行きます!」
真司の話をきいて、誰かが名乗りを上げる。見ると、そこにはユウナの姿があった。
ミカも同行し、ダンジョン攻略用に正彦が開発した「万能太郎」というバイク型の空を飛べる乗り物に乗って、二人は大きな噴火口に出た。入り口付近よりも、マグマが近い。
「ねぇ、あれ見て!」
ミカが指さした。シールドを張っていると外からの音がほとんどきこえないため、仲間とはテレビ電話で会話するのだ。ユウナがミカの指さす方を見ると、噴火口付近から水が噴き出している。あれが、恐らく火山の噴火を促しているのだろう。ユウナは、それを何とか食い止められないものかと模索した。その時、ふとある考えが浮かんだ。
ユウナはハンドルを目一杯引き、上の方に向かった。
「ユウナ!?」
ミカは呼んだが、ユウナは止まることなく、上へ上へと向かう。そこで、モンスターを召喚した。それは、「サムライオーガ」というモンスターだ。サムライオーガは、火属性のためマグマの熱をもろともしない。ユウナは、それに命令を送った。
「その水を、岩で塞いで!」
それをきいて、ユウナが何をしようとしているのか、ミカも察した。そしてミカも同じように、自分のモンスターを召喚する。召喚されたのは、「アイスオーガ」という水属性のモンスターだった。
二体のオーガは、火山の一部を削り取ると岩に変形させた。それを水が噴き出している箇所に、次々と積んでいく。もう時間がない。ユウナは、指を組んで祈りを捧げた。
数分後、水が完全に塞がれた。そして、ゴゴゴゴという音とともにマグマの周りが崩れ始める。それを見て危険を感知したミカが、
「ユウナ、逃げるよ!」
と言うので、二人はオーガを元の場所へ返し、必死に万能太郎を操縦して噴火口の上に出た。そして火山から離れた時、爆発音がSPに轟いた。下を見ると、火山は巨大な噴火を遂げていた。とうとう間に合わなかった、ユウナはそんな悔しさに駆られた。
その後、真宏がSPの中に来た。
「実は、これから東京の実家帰ることにしたんだ」
部屋で、ユウナに真宏はそう報告した。
「それって、ご家族も一緒に?」
「あぁ。あいつ、今でもユウナのこと友達だって言ってる。当分、会ってないのにな」
「いえ。長谷川さんと私は、友達ですから。結婚式にも出席してくれて、手紙でも何度かやり取りしてましたから。でもまさか、先輩と結婚してたなんて……、正直驚きました」
ユウナが言うので、真宏も微笑した。本音を言えば、恵が真宏と結婚したときいた時、ユウナは嬉しかった。恵はずっと、真宏のことを好きだったからだ。
『先輩に、思いを伝えて。じゃないと、きっと後悔する』
恵から打ち明けられた時、ユウナは恵は本気なのだと思った。それ故に、嬉しかったのだ。
「先輩」
「何だよ?」
「彼女を、いつまでも幸せにしてあげてください」
ユウナは、真宏を真っ直ぐな視線で見つめた。すると、少し照れたように真宏は目線を逸らした。
「……当たり前だよ。だからお前も、無理だけはすんなよ。絶対に……、生きろ」
その言葉は、ユウナに計り知れないほど大きな希望を与えた。そして、ユウナは大きく頷いた。真宏も、嬉しそうに笑っている。その時、一瞬だけ大学時代にタイムスリップしたような感覚になった。あの楽しかった時間が再び戻って来たような、そんな気がしたのだ。それとは裏腹に、時計の針は現在を忙しなく進んでいた。
一方、ここは深い森の中。その中を一人の少年が、幼い妹を負ぶいながらあるモンスターから逃げていた。火属性、「ギガンテス」というモンスターだ。ギガンテスは手に斧を持っており、周りの木を切り倒しながら進んだ。
妹を背負った兄は、次第に速く走れなくなり、草むらに隠れた。ギガンテスを召喚した
「どこに隠れている!」
ルリの声が、すぐ近くからきこえる。二人は呼吸も最小限に抑え、どうにか場を凌ごうと思った。しかし、ルリは目を閉じて自らの聴覚に全神経を集中させた。そして目を開けた瞬間、
「そこかぁ!」
と言い、ギガンテスは火の玉を繰り出して飛ばした。その火の玉は、二人のいる草むらの近くの木に直撃し、爆音が響いた。
爆音はその周りだけでなく、SP全体にまで響き渡った。
「まさか、こんなに可愛い子たちがSPにいたなんて~」
兄は木の棒を両手で持ち、ルリを睨みつけている。
「そんなに睨まないで。どうやってここに入ったか教えてくれたら、すぐに帰してあげるから」
ルリはそう言うが、兄にはわかっていた。ルリには、毛頭そのような気持ちなどなく、自分たちを捕まえる気なのだと。兄の両足は、ガクガクと震えている。その後ろで、妹が今にも泣きそうな顔で座っている。
「私だって、できるだけ手荒な真似はしたくないの。だから、ねぇ、教えてくれない?」
「し、知らない!」
「そんなこと言って。じゃあ、どうしてあなたたちはここにいるの?」
「気がついたら、知らないところにいたんだ。だから、何も知らない!」
「ふ~ん。そんなことがあるのね……。まぁ、いいわ。ギガンテス、やっちゃいな」
ルリは、ギガンテスに命令した。すると、ギガンテスは斧を振り落としてきた。兄は、それをすれすれで交わした。その時に、手に斧が少しかすった。兄は痛さのあまり、その場に倒れこんでしまった。
「お兄ちゃん!」
兄を心配した妹が駆けよろうとすると、
「来るな!」
と、兄はそれを拒んだ。
「ふふ、意外にしぶといのね。まぁ、次で終わりにしてあげるからいいけどね」
するとまた、ギガンテスは斧を振り上げる。その瞬間、兄は目を瞑った。その時、
「待って!」
という声がした。ルリはふり向くと、そこにユウナとレイカ、そしてアカネが駆けてきた。それを見たルリは、笑いながら言った。
「まぁ、これはフィフス・フォリアの皆様。やっぱり来たのね」
「そのサタールって人、教授の弟さんやねん。もう一度、教授と話し合う気ないん?」
アカネが尋ねると、ルリは高笑いをした。
「あるわけないでしょ! あの人は、サタール様を殺そうとしたのよ! 立派な犯罪者! だから、話し合う気なんて毛頭ないハズよ! あんたたちがいくら努力しても、結果は同じ。この世界は、どの道サタール様のものになるのよ」
「でも、すべてのダンジョンをクリアすれば、この世界は自動的になくなるって……」
「あぁ、その話ね。それならご心配なく。だって最後のダンジョンのボスは、サタール様ご自身だもの」
ルリが言うのをきき、ユウナは愕然とする。それがどういうことなのか、すぐには理解できなかった。すると、ルリは続ける。
「サタール様がここに来られた時、あなたたちにとって未知の領域にダンジョンを創ったの。それが、あのお城。だからね、そこを制覇しない限りはこの世界は永遠に存在し続ける。つまり、丸ごとサタール様のものになる」
その後、ユウナは二人を元いた世界に連れて来た。
「じゃあ、私はもう行くね」
ユウナは二人に告げると、SPに戻っていった。
序盤のキャラで、最も印象深い登場人物は?
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中谷優奈
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鶴ケ崎麗菓
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月見里美香
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夢野あかり
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池谷大輝
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相場善秀