ユウナが戻った直後、アカリがミニ手帳を見つけた。その中に書かれてあった名前を、ミカは読み上げた。
「
それをきくと、ユウナは手帳を覗きこんだ。そして、あることに気づく。
「ねぇ、これ……」
ユウナはあるところを指さすと、ミカとアカリもその項目に目を向ける。
「1988年生まれ……、ってあれ? 嘘、年上?」
ユウナは何かを思い出し、立ち上がって部屋を飛び出した。
「ユウナ、どこ行くの?」
ミカの言葉さえも、耳に入って来ない。
ユウナは洞窟から水晶を外に持ち出し、そして天に掲げる。すると、周りは緑色の光に包まれる。その時、奇跡は起こった。前を見ると、あの魔術師・オーディンがユウナを見つめながら立っている。ユウナは、
「お願いがあるの。私を、あのお城に連れていって」
と、オーディンに言った。自分でも何を言っているのかわからなかったが、それでも今は望みをかけるしかない。その時、光の強さが増し、その光にユウナは吸いこまれた。
「本名、南斗さんですよね?」
レイカとともにダークネス・キャッスルに乗り込んでいったユウナがきくと、フギンは足を止める。
「なんで……、それをアンタが知ってんだ?」
「教えてください。ここに来た、本当の理由を」
ユウナが言うので、フギンは溜息を吐いた。そして、話し始めた。
「行方不明のオヤジが突然帰ってきてな、復讐するのを手伝ってくれって言ってきてさ。何の説明もなく連れて来られたんだよ。懐かしい景色だった……。でもまさか、あの人がアンタだったなんてな」
その後、ユウナはフギンの所持モンスター、プテラドスに乗せられた。そして、プテラドスは空へ飛び上がった。その時、フギンがこう言うのだ。
「俺らがお前らに手を出さない理由、わかるか?」
「え?」
「オヤジの標的は、伯父さんただ一人だ。お前らは、本来なら何の関係もない。だから、お前らを傷つけたくない。ただ、それだけだ」
それをきき、ユウナは確信した。フギンは、本当はこの世界を滅ぼしたくないのだと。本来、フギンは心優しい人物なのだと。
数日後、三人は縁側に座り、ただ黙りこんでいた。何を話しても、幸せを感じられない。いったいこの先、どうなってしまうのだろう。そればかりが、彼女たちの脳裏を支配していく。
「これから、どうなるんだろうね。私たち」
ついに、ミカが言葉を発する。しかし二人とも、それには答えられなかった。今までの場合、ここで鼓舞し合うところだが、そのような気持ちには到底なれなかった。その時、上の方から声がきこえた。
「おう、お前ら、不貞腐れてんな」
三人が声のした方を向くと、プテラドスに乗ってフギンが降りてきたのだ。三人とも、それには驚きを隠せなかった。
そして、皆で宝玉のところへ行くことにした。それには五人だけではなく、真司や悠二郎も同行することになった。案内役は、フギンとミーサだ。一行は森に入り、宝玉を目指した。
歩いたのち、先頭を歩いていたフギンは足を止めた。
「見えたぞ」
フギンが小声で言うと、ユウナは目を凝らした。たしかに、向こうには赤く光る何かが見える。もう少し近づいた時、それは完全に姿を現した。五メートル以上はありそうな、赤い宝玉が建てられていたのだ。すると、フギンは皆の方をふり向いた。そして、
「じゃ。ちょっと出てきてくれないか」
と言い、ユウナを指さした。指名されたユウナは、戸惑いつつも前に出た。
「ついて来てくれ」
さらにフギンが言うので、ユウナも何があるのだろうと不思議に感じながら、フギンについていった。二人は宝玉の前まで来ると、フギンが宝玉に手をつけ、なんと呪文を唱え始めたのだ。ユウナも驚きながら、その様子を見ていた。すると、宝玉の一部が開いた。次に、フギンはユウナに言った。
「じゃあ、ココに手を当ててくれ」
ユウナは言われた通りに、開かれた部分に手を当てる。次の瞬間、宝玉自体が赤く光り出した。その光は、森全体にまで広がった。やがて光が治まると、ユウナは目を開けた。宝玉は、茶色く錆びてしまった。しかし、その上には赤色の剣が浮かんでいたのだ。剣は、ゆっくりとユウナのところに降りてくる。ユウナは、その剣を手にした。
「これは……」
「アンタの剣だ。どう使うかは、アンタ次第ってわけだ」
「私、次第……」
ユウナは呟きながら、その剣をまじまじと眺めていた。
その後、悠二郎、慎一郎、真司が現実世界に戻ることになった。
「じゃあ、俺たちはこれで戻るから。今度からは、外から君たちの援護をする」
真司が説明すると、
「ありがとうございます」
と、ユウナは頭を下げた。すると、大毅の手を引いた悠二郎が前に出てきた。ユウナは大毅を見ると、大毅も悲しそうにユウナを見上げてくる。ユウナは大毅の頭を撫で、
「ごめんね。お母さん、頑張るからね」
そう言った。悠二郎も、
「こいつも、寂しいんだよ。でも大好きなユウナのために、泣くのを我慢してるんだ」
と言うので、ユウナは大毅もいつの間にか成長していたのだと知らされた気がした。
「悠ちゃん。大ちゃんのこと、お願い」
「わかった」
ユウナと悠二郎は約束を交わし、そして三人は大毅とともにSPを出ていった。それを見送りながら、ユウナは最後の戦いに向け、前を見据えていたのであった。
ある日、ユウナはレイカの部屋の前を偶然通りかかった。中を覗くと、レイカは縁側に腰かけ、空を眺めている。声をかけようとも思ったが、また冷たい返答をされるのではないかと躊躇っていた。
ユウナの存在に気づいていないレイカは、まだ夜空を見上げていた。それは、後ろから見ていても寂しそうに見える。その時、レイカのスマホが鳴った。電話がかかってきたのだ。レイカは、
「もしもし?」
と、力ない声でその電話に出た。
『あ、起きてた?』
その声は、真司だった。どうやら、現実世界からでも電波が届くらしい。そのことには触れずに、
「どうかしたの?」
と、レイカは真司に尋ねた。すると、真司が言った。
『落ち着いてきいてほしいんだ。君の兄さんが……』
「兄さんが?」
『取材中、銃弾に巻きこまれて、死亡した』
しばらく、その部屋は静寂に包まれた。
『俺の両親は、俺が小さいころ事故で死んだからさ、あんまり憶えてないんだよね。だから、俺にも初めて家族ができたんだって、そう思うと嬉しくてさ』
レイカは、雅也の言葉を思い出していた。
ユウナは建物の中や外を探し回って、ようやくレイカを見つけた。レイカは庭に立っていた。ユウナはレイカに近づき、声をかけた。
「鶴ケ崎さん……?」
しかし案の定、レイカからの返答はない。それでも構わないと思いつつ、ユウナは続けた。
「真司さんから、きいた。お兄さん……、雅也さんのこと」
「ほんとに、バカね」
「えっ?」
「周りの状況も考えず、銃弾に巻きこまれるなんて」
レイカは、呆れた様子で話した。しかし、ユウナにはわかった。これは、レイカの本心ではない。わざと、いつも通りに振る舞おうとしているのだ。
「鶴ケ崎さん……、もっと……」
「私は!」
レイカが突然、ユウナの言葉を遮った。ユウナも、驚きながら彼女を見つめる。
「私は……、戦争というものを生み出したこの世が憎い」
これが、レイカの本心だろう。考える間もなく、ユウナは理解した。
その後、ユウナたちは無事、それぞれの剣を手にして戻ってきていた。剣を並べると、赤い剣、緑の剣、水色の剣、黄色の剣、そして紫の剣がある。それは、それぞれ火属性、木属性、水属性、光属性、闇属性の力が秘められているという。
「これで、本当に黄金の剣が手に入るの?」
ミカは、剣を眺めながら怪訝そうに言う。
「でも、せっかく集めたんだし、試してみようよ」
アカリが言うので皆、それぞれの剣を手にした。そして輪になり、一斉に剣を天に翳した。しかし、しばらく経ったが何も起こらない。
「何も起きないじゃん! 教授の言ってたこと、本当なの?」
また、ミカが疑いの声を上げる。正彦が提示した紙には、五つの剣を天に翳せば黄金の剣が生成されると書かれていた。しかし実際、黄金の剣など現れなかったのだ。アカネが紙を見つめながら、
「何か、根本的なところで間違ってるかもしれへんな」
と呟くので、ユウナも尋ねた。
「どういうことですか?」
「これ、まだ言ってなかったけど、教授が最初に創ったダンジョンは、神王妃の不夜城」
それにはユウナだけでなく、ほかの三人も驚きの眼差しをアカネに向ける。アカネは、さらに話を続ける。
「だから、そのダンジョンがこの世界の言わば心臓部分やねん。まぁ、ダンジョンいうてもほかと違うから、攻略とかはできへんけどな。教授はこの世界を創る際、すべてのプログラムをそこに眠るモンスター、神王妃・ヘラの脳の中に格納してんやんか。もし、そこのデータが書き換えられた場合、この世界は完全に動作が停止して、動かんようになる。うちらも、もう外には出られへん」
「それが、黄金の剣と何か関係してるんですか?」
ユウナが尋ねると、アカネはこう言うのだった。
「うん。データが書き換えられるたび、ヘラはその信号を受け取ってた。本来なら、宝玉なんてSPには存在せえへんかった。だから、その書き換えたデータもその時に読みこんでるはずやねん」
「じゃあ、そこに行けば何か教えてくれるってこと?」
ミカがきくと、アカネは頷く。ユウナも、そのような大事なことを今になってきくとは思ってもみなかった。
その後、ユウナとミカはアカネによって「神王妃の不夜城」というダンジョンに連れて来られた。
「ヘラは、誰かの強い意思によって呼び起こされるらしい」
「強い、意思……?」
「そう。何事にも左右されへん、強い意思」
その時、後ろから爆音がきこえた。何かとふり返ると、モンスターが暴れている。それは、ギガンテスだった。以前、対峙したことがある。まさかと思い、ユウナはその周りを見回していると、
「何を探しているのかしら〜」
と、上方からきき覚えのある声がきこえた。すると案の定、ルリが降りてきた。さらに、コサカが部下たちを引き連れ、こちらに歩いてきた。
「これはこれは、またお会いできましたね」
ユウナたちは以前、コサカや部下たちと対峙したことがあったのだ。また邪魔をされるのか、とユウナは不安になった。すると、後ろの崖が突然輝きを放った。やがてその輝きは一筋の閃光に変わり、ギガンテスを攻撃した。その衝撃で、ギガンテスは倒された。
「なっ!」
次に、その光はコサカのクラーケンも攻撃し、一撃で倒してしまった。それには流石のコサカも、
「な、なんと……」
と言って、顔を青ざめさせている。このままでは、自分たちも攻撃されかねない。そう思ったのか、
「て、撤収!」
そう言いながら、部下たちと一緒に逃げ去っていった。ルリも舌打ちをし、その場から姿を消した。しかし、まだ閃光は消えていない。やがてそれらの閃光は一箇所に集まり、やがて人の形を創った。そして姿を見せたのは、神王妃・ヘラだった。
「もしかして……、これが神王妃……?」
ミカもそれを見ながら、驚いたように呟く。すると、ヘラが言葉を話し始めたのだ。
「お前たちか。私を、目覚めさせたのは」
それをきくと、ユウナは前に進み出て言った。
「はい。どうしても、教えてほしいことがあるんです。黄金の剣を、知っていますか」
「あぁ、知っている」
ヘラは、すぐに答えた。
「私たち、宝玉をすべて見つけ、剣もすべて集めました。ですが、黄金の剣はまだ手に入れられていません。それは、なぜなんでしょうか」
ユウナが尋ねると、ヘラはこう言うのだ。
「黄金の剣は……、ほかのところにある」
「ほかのところ……?」
「それはお前たちが剣を生成しようとした時に、何者かが剣の力を、予め指定しておいた場所に呼びよせたのだ」
「剣の力を、呼びよせた……?」
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鶴ケ崎麗菓
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月見里美香
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夢野あかり
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池谷大輝
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相場善秀