パズル&ドラゴンズ~もうひとつの旅~   作:葉之和 駆刃

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第10話 由々しき恋〜シリアス・ラブ〜(その弐)

 二人が向かった先は、高級そうな洋食レストランだ。ユウナが心配そうに見回していると、相場がこう言った。

 

「大丈夫、今日は俺の奢りだから」

「え、でも……」

「いいよ。なんか、いろいろ悪いことしたからな」

 

 これが、相場にとってせめてもの罪滅ぼしだったのかもしれない。ユウナは無論、気にしていなかったが、相場のことを思い、受け入れることにした。

 二人は席に着き、注文した。その時、ユウナにとって衝撃的な出来事があった。ユウナが最初にまずソフトドリンクを注文したのに対し、相場は酒の名前を口にしたのだ。店員が向こうに行くと、ユウナが相場に尋ねた。

 

「相場君、お酒飲むの?」

「え? あ、あぁ」

「でも、未成年じゃ……」

「大丈夫だよ、これくらい。ずっと、親父のビールに付き合わされてたからな」

 

 ユウナはそれをきいて、少し心配になった。

 二人が注文したものが運ばれてくると、相場は酒に口をつけた。ユウナはそれを見ていると、相場がこう言いだしたのだ。

 

「お前も飲んでみるか?」

「え? いや、私は……」

 

 ユウナは軽く動揺した。相場は笑い、二口目を飲んでいた。

 そして次々と料理が運ばれてくると、二人は食事をしながら会話した。

 

「中谷は、こんな店来たことあるのか?」

「ううん、初めて。うち、両親が二人とも忙しいから、外食にもなかなか行けなくて。第一、家族そろって食事できる日自体、少ないから」

「そっか。俺も小さいころはよくこういう店連れてってもらってたんだけど、最近は急に忙しくなって。俺も部活とかあるし、あっちはあっちでいろいろあるらしいし。公務員は給料減らされて、こういうちょっとしたことがほかの生活費に回されてんだよな。最近は不景気だしさ、いっそほかの国にでも行きたいよ」

 

 それをきいていたユウナは、おかしくなって笑った。

 

「どうした?」

 

 相場がきくと、ユウナはこう言った。

 

「あ、ごめん。なんか、似てるなぁって思って」

「似てる?」

「うちのお父さんも、よくそんなこと言うの。もっと暮らしやすい国に行きたいなとか。要は現実逃避なんだけど」

「そっか……」

 

 相場もユウナの話をきいて、微笑した。

 

「お前と話してると、なんか、いろいろ忘れられる。その、不安とか、悩みとか。実は俺、すごい心配性なんだ。大学は決まったけど、これからどうしようかとか、いろいろと考えちゃって」

「そうなんだ……」

「だから俺、今日のこと、何があっても忘れない。どんなに辛いことがあっても、今日のことを思い出せば、立ち直れそうだから……」

「相場君……」

 

 ユウナは嬉しかったが、同時に気まずくもなった。このようなことを言われたのは、生まれて初めてだった。そしてユウナは、

 

「あ、私お手洗い行ってくるね」

 

 と言って席を立った。ユウナが向こうへ行ってしまうと、相場はしばらく窓の外を眺めていた。すると自然に、視線はユウナが先ほどまで飲んでいたグラスへと移っていった。

 数分後、ユウナが席に戻ってきた。相場が、

 

「会計済ませておいたから」

 

 と言うのでユウナは、

 

「ありがとう。でもほんとによかったの?」

 

 そうきくと、相場は答えた。

 

「いいよ」

 

 それをきくとユウナは安心して、飲み残していたドリンクを飲み干した。その時に、少し違和感を覚えたが、気のせいだと思って最後まで飲んだ。

 

 店を出ると相場が、

 

「駅まで送るよ」

 

 と言うので、二人は駅に向かった。

 

「今日は……、ほんとにごめんな」

「何のこと?」

「いや、いろいろ傷つけたかなって」

「ううん、べつに何とも思ってないよ。だってあれが、相場君の気持ちだったんでしょ?」

 

 それをきくと相場は、また微笑した。ユウナも安心してそれを見つめていると、視界が歪んだ。隣を歩いている相場を見ても、次第にぼやけていく。そして相場に手を伸ばそうとした瞬間、ユウナの意識が飛んだ。

 

 

 夜が明け、ホテルの部屋の一角を朝日が照らしだした。ユウナは起き上がり、目をこすった。そしてわけもわからないまま、横に目をやった。ユウナは今、二人用のベッドの中にいた。すると、ユウナの横にはなんと相場が上半身裸の状態で眠っていたのだった。ユウナはそれを見ると慌てて飛び起き、急いでベッドから出た。しかしそれにより、またあることに気づく。足元に、二人の衣服が散乱していたのだ。下着一枚のユウナは、どうしていいかわからなくなった。ただ茫然と立っていると、相場も目を覚ました。ユウナは急に恥ずかしくなり、近くの椅子の陰に隠れた。

 

「おはよう」

 

 すると、相場が何事もなかったかのように言った。相場は立ち上がって服を着ると、

 

「中谷」

 

 と言って、ユウナのところに近づいてきた。

 

「どうした?」

「あの……、ごめん。私、昨日あれからどうしたのか覚えてないの。何も……、なかったんだよね?」

「あぁ。悪い、俺もあんま覚えてないんだけど」

「えっ?」

 

 ユウナは、ますます混乱した。相場は服を着ながら、

 

「とりあえずお前も服着ろよ。風邪ひくぞ?」

 

 と言うので、ユウナは落ちている衣服を急いでかき集めて脱衣所へ駆けこんだ。一体何があったのだろう。鏡を見つめながら思った。昨日はあれから、食事をしたあと、一緒に帰ったまでは覚えているが、その後がどうしても思い出せなかった。最後の記憶が、相場と二人で歩いている時だった。そして、急な眩暈とともにユウナの記憶が薄れていったのだ。

 ユウナは着がえ終わると、脱衣所を出て相場に話しかけた。

 

「相場君。やっぱり私、昨日のこと思い出せない。教えて、何があったのか」

 

 ユウナは、相場の目を見て話した。またしばらく沈黙が流れると、相場は口を開いた。

 

「ごめん、中谷。ほんの、出来心だったんだ」

「えっ……」

 

 相場は壁に手をつくと、下を向いた。そして、ユウナは相場からすべてを話された。

 

 一方、そのホテルの近くを歩いている少年がいた。受験や部活動が終わり、高校は自由登校期間であるため、休みの日をブラブラ歩いて過ごす生徒も少なくなかった。大輝も同様、べつに行く当てもなく、ただなんとなく街を歩いていた。大輝が信号待ちをしていると、誰かに肩をたたかれる。ふり向くと、笑顔で話しかけてくる女子がいた。

 

「やっぱりそうだ、何してんの?」

 

 それはミカだった。ミカは何の気兼ねもなく、大輝に話しかけてきた。

 

「なんだよ」

「あれぇ? ユウナかと思った?」

「いや、そういう意味じゃなくてさ。なんでいんだよ」

「べつにいいじゃんか~」

 

 二人は信号を渡り、ミカがこう言った。

 

「ねぇねぇ、ユウナまたフラれたんだってさ」

「はぁ? 誰に」

「相場君。やっぱ諦めきれないみたいでさぁ」

 

 大輝は、目線をそらした。ミカはその様子を見て、

 

「もしかして、妬いてんの?」

 

 と、からかった。

 

「はぁ? べつに……」

 

 大輝が言い返そうとすると、ミカが急に真面目な顔になった。

 

「ねぇ、あれ、ユウナじゃない?」

 

 ミカが指さした方を見ると、ホテルからユウナが出てくるのが見えた。ユウナはしばらく立ち止まっていると、大輝が走っていって後ろから声をかけた。

 

「ユウナ!」

 

 ドキッとして、ふり向いた。するとミカも来て、

 

「やっぱりユウナだ。ねぇ何してんの?」

 

 ときいた。事情を知らないミカは、

 

「さっき大輝君と偶然会ってさ、ユウナのこと話してたんだ。そしたらまさかほんとに会うとはね~」

 

 そう言うのだった。しかしユウナはたまらず、背を向けて走りだした。知られたくない、その思いが強かったのだろう。しかもそれが大輝やミカなら尚更だった。しかし、その様子を見て大輝が何とも思わないはずはなかった。大輝は、

 

「おい待て!」

 

 と言うと、ユウナを追いかけた。ミカも、それに続いていった。

 

「なんで逃げんだよ!」

「ちょっと待ってよ~! ユウナどうしたんだろ」

 

 ミカが大輝に尋ねると、大輝は答えなかった。

 

 公園まで来ると、ユウナは疲れてしゃがみこんだ。やがて、二人も追いついてきた。

 

「どうして逃げた」

 

 大輝が尋ねるので、ユウナは動揺したように言った。

 

「ごめん……。でも、ほんとに何でもないの! 私、疲れててどうしていいかわからなくなって、でも言うなって言われてて、だから昨日のことは忘れようって……」

「おいおいおい、ちゃんと落ちついて話せよ。誰に言われたんだよ」

 

 それをきいて、ユウナは落ち着いた。

 

「何か、あったんだろ?」

 

 大輝がそう言うので、ユウナはもう逃げられないと悟り、すべて話すことにした。

 

「相場君からきいたの。私を、酔わせて、それで、ホテルに……。でも彼、とても反省してた。だから、相場君のことは責めないであげてほしいの。家庭の事情もあって、すごく辛かったんだと思う。お願い、大ちゃん」

 

 ユウナの目には、涙が溜まっている。大輝はその話をきいてすべて理解したが、何も答えなかった。ここでキレてしまうと、余計にユウナを心配させてしまうからだ。しかし、大輝は拳を強く握り、怒りをぐっと抑えた。やはり、相場が許せなかったのだろう。歯を食いしばり、ミカにこう言った。

 

「月見里。お前、ユウナを家まで送ってくれるか?」

「……わかった」

 

 ミカが答え、

 

「ユウナ、行こう」

 

 と言ってユウナの手を握ると、ユウナを連れていった。

 二人が去ると、大輝はスマホを出して相場を学校へ呼びだした。ちゃんと話をするためには、人気のないところが一番いいと思った。大輝も、すぐに学校に向かった。

 

 ユウナは、ミカに家まで送られていた。ユウナは中に入る際、

 

「ありがとう、ミカ」

 

 と言うとミカは首を横に振った。

 

「大丈夫。あたしもユウナには何度か助けられたし。じゃあ、あたしこれで行くね。今日これから学校でアカリと会う約束してるから」

 

 そう言うのをきいてユウナも、

 

「うん、じゃあまた」

 

 と言い、中に入っていった。ミカもそれを見届けてから、ユウナの家を後にしたのだった。

序盤のキャラで、最も印象深い登場人物は?

  • 中谷優奈
  • 鶴ケ崎麗菓
  • 月見里美香
  • 夢野あかり
  • 池谷大輝
  • 相場善秀
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