パズル&ドラゴンズ~もうひとつの旅~   作:葉之和 駆刃

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第18話 魔王の城〜サタンズ・シタデル〜(その参)

「何してるの……?」

「あなたこそ、何してるのよ」

 

 ユウナが言うと、すぐにレイカがそう返してきた。

 

「あの、それ……」

 

 ユウナはモンスターを指さし、そう言った。

 

「何か?」

「それって、モリりんだよね? どうして……」

「私も最初は信じられなかったわ。でもあんな世界見せられたんじゃ……」

 

 レイカがそう言うので、ユウナはきいた。

 

「じゃあ、鶴ケ崎さんも横大路先生に?」

「だったら、何だっていうの?」

「いや。鶴ケ崎さんも、先生のお手伝いしてるのかなぁって」

「そんなわけないじゃない、ただ預かってるだけよ」

 

 レイカは、そう言うとモリりんをスマホの中へ戻した。それを見たユウナが、

 

「実は私今、先生の研究を手伝ってて。すごいんだよ、プログラムだけで現実の世界を再現してるの。私も、最初は半信半疑だったけど、この目で見てからはあの世界に行くのが楽しみになって。もしよかったら、鶴ケ崎さんにも見に来てほしい」

 

 そう話した。するとレイカからは、

 

「くっだらない。私にはそんな暇はないの。あなたと一緒にしないで」

 

 と、相変わらずきつい言葉が返ってきた。

 

「そう……。でも見たらきっと虜になると思う。ほんとに、素敵な世界だから」

 

 ユウナがそう言うとレイカが、

 

「そんなことばっかり言ってると、後悔することになるわよ」

 

 と言うので、

 

「後悔?」

 

 ユウナがそうきくと、レイカは言った。

 

「何の役にも立たないことに時間を費やすくらいなら、もっと真面目なこと考えなさい。まぁ、言ってもわからないでしょうね。所詮、元引きこもりの凡才には」

 

 レイカはスマホをポケットに仕舞うと、そのまま歩いていった。ユウナはそれを見ながら、今レイカに言われたことを頭の中でくり返していた。後悔までとは思わないが、実際に正彦の研究は多数の人々から、何の役にも立たないと思われている。それでもユウナは、何かすれば人々の役に立てるはずだと信じていた。その信念は、今になって曲げてはならない。ユウナも再び足を踏み出し、帰っていった。

 

 その夜、夕飯の席で真宏がユウナに尋ねた。

 

「今日、何があったんだ?」

「いえ、大したことじゃ……」

 

 ユウナは、なるべく他人には余計な心配をかけたくない、そう考えた。しかし真宏は、ユウナが何かを隠していることを見通していた。すると初子が、

 

「向こうで何があったか知らないけどね、休みの間、こっちの手伝いもやってもらうからね」

 

 そう言い、鍋を置いた。

 

「はい、わかっています。今日はほんとに、すみませんでした」

 

 ユウナは、申し訳なさそうな顔で言った。そしてユウナは真宏に、

 

「先輩は休みの間、ほんとにどこにも行かないんですか?」

 

 ときいた。

 

「あぁ。俺は少しでも、あいつらの面倒見たいっつーか、散々、迷惑かけちまったしな」

「休みの日でも、活動してるんですよね」

「あぁ、参加は自由だけどな。お前も、明日一緒に行かねえか?」

「ごめんなさい、明日はちょっと用事があって」

「そっか。まぁ、無理はすんなよ」

「ありがとうございます」

 

 気を遣ってくれている真宏を見て、ユウナは少し嬉しく思った。

 

「ほら、さっさと食べないと冷めちまうじゃないか」

 

 初子は相変わらず、不愛想な表情でそう言った。そして二人も苦笑いし、食事を済ませた。

 

 ユウナはその夜、布団の中で考えていた。正彦の言っていた通り、誰かが故意的にウイルスをシステムに送りこんだのだろうか。そうだとしたら、誰が何の目的でそうしたのか、見当もつかない。このことが、のちに巨大な事態を引き起こすことになるなど、この時はまだ予想できていなかった。

 

 

 翌朝、ユウナは正彦の研究室を訪れた。

 

「あれから、何かわかりましたか?」

 

 正彦にきくと、正彦は首を横に振るだけだった。すると、部屋に美千子が入ってきた。美千子は、コーヒーをのせた盆を机に置いた。美千子は心配そうに、

 

「もうやめましょう。本当に必要なの? あの世界」

 

 と言った。美千子はまだ、正彦の研究を完全には受け入れていないようだ。

 

「せっかく創ったんだ。せめてもうしばらくは、研究を続けたい」

「あなた……」

 

 するとユウナは美千子に、

 

「安心してください。教授は、あの世界を本当に大切にしてるんです」

 

 と言うのをきくと美千子も頷いて、

 

「それは知ってるわ。けど、放っておいたらこの世界にも影響が出るなんてことは……」

 

 そう言いかけると、

 

「それはない」

 

 と、正彦は言いきった。

 

「どうしてそんなことが言えるの?」

「もしも、ウイルスによってシステム全体が破壊され、中のモンスターたちが現実世界に出てこようとしても、出入り口となる扉、聖闘士(セイント)ドアには特殊なシールドが張れるようになっている。それにより、モンスターが飛び出してくることはない」

 

 ユウナも、それをきいて納得した。すると正彦は、ユウナを見上げてこう言った。

 

「よければ、君にはすぐにでも協力してもらいたい。中に入り、原因を調べてほしいんだ」

 

 ユウナはそれをきいて、

 

「はい」

 

 と答え、頷いた。すると、

 

「……そういうことかよ」

 

 という、声がきこえた。ユウナは驚いてふり返ると、ドアのすぐそこには真宏がいた。真宏はきっと、ユウナの後をつけてきたのだろう。

 

「先輩……!」

 

 ユウナもそう言って真宏を見つめると、

 

「あんたの研究に、こいつを付き合わせてたってわけか」

 

 と、真宏は言った。

 

「ち、違うんだ……!」

 

 正彦が言いかけると真宏が、

 

「じゃあ、何だっていうんだよ。もしもこいつに何かあったら、責任とれんのかよ!」

 

 そう言うのだった。それをきいて、正彦は何も言わなかった。それを見て、真宏は続けた。

 

「よりによって、こんなことを女子にさせようとするなんてな。最低だよ、お前。俺の時もそうだったけど、自分で原因作っておきながら、責任ひとつとろうとしねえ。一体、何回逃げたら気がすむんだよ」

 

 するとユウナは前に出て、

 

「すみません。いつか言わなきゃって思ってたんですけど、なかなか言い出せなくて……。でも私は、好きでここにいるんです。だから、教授は何も悪くありません。それだけは、どうかわかってください」

 

 そう言うので真宏が、

 

「そうなのか?」

 

 と言い、ユウナを見つめた。

 

「はい」

 

 ユウナも、そう返事をした。

 

「じゃあ、なんで言ってくれなかったんだよ」

「えっ……」

「そう思ってんなら、なんでもっと早く言わなかったんだよ。後ろめたさがあったから、言えなかったんじゃないのか?」

「違います!」

 

 ユウナは、思わずそう答えた。それを無視するかのように、真宏は正彦に近づいてこう言った。

 

「こいつ、いや、龍山(ここ)の学生全員、お前の好きにはさせない。今度誰かに手ぇ出したりなんかしたら、今度こそ俺はあんたを許さねえ」

 

 そして真宏はユウナの手首をつかみ、

 

「帰んぞ」

 

 と言い、部屋から連れ出そうとした。

 

「あ、あの!」

 

 ユウナが呼びかけても、真宏は手を離そうとはしなかった。なぜ真宏は、そこまで正彦の研究を嫌うのか、それが知りたかった。

 

「あの、何かあったんですか? 教授と」

 

 ユウナがそうきいても、真宏は答えずにただ黙って前を歩いていた。

 

 二人が出ていった部屋では、美千子が正彦にこう言った。

 

「やっぱり、あの話教えるべきだったんじゃない?」

 

 それをきいた正彦は、

 

「うむ……」

 

 と言ったきり、黙って考えていた。それを、美千子も仕方なさそうな顔で見つめていたのだった。

 

 

 一方、セインツ・パラダイスの城ではサタールが椅子に座っていた。

 

「やつは諦めたか」

「まだわからねえ。それよりさぁ、今のままじゃ俺らの存在もいつバレてもおかしくないですぜ?」

 

 サタールが言うと、フギンもそう答えた。

 

「それもそうだな……。とにかく、この世界を手にするために、もっと多くのウイルスをばら撒くのだ!」

 

 サタールがそう言うと、

 

「へいへい」

 

 と言って、フギンはどこかへ飛び去っていってしまった。

 

「まだまだこれからだ……!」

 

 一人になった城で、サタールはそう呟くと不気味に笑っていたのだった。

 

 

 ユウナは真宏にキャンパスの中心部に連れてこられると、

 

「あの、いったい何があったんですか? なんで、教授にあんなことを」

 

 ときいた。すると、真宏は遠くを見つめながらこう言うのだ。

 

「お前に話しても何にもならねえよ」

 

 そしてユウナの顔を見ると、

 

「もう、あそこには近づくなよ」

 

 と言い、帰っていった。ユウナは理由をきくために呼び止めたかったが、なぜか声が出なかった。これ以上何か言うと、まずいことになるのではという予感がしたのだ。ユウナは、ふり返って再び正彦の研究所がある方向を見つめた。「近づいてはならない」という真宏の言葉が、頭の中で渦巻いていた。何か、二人との間に秘密があるような気がしたが、今はとてもきけそうにもなかったのだ。

 

 

第十八回「魔王の城(サタンズ・シタデル)」終

 

 

 

次回予告

ユウナ「私は、教授のことを尊敬してるんです」

星見「ここのサークル、あいつが立ち上げてんで」

美千子「あの人の研究を手伝っていたの」

ユウナ「話さないことには、いつまで経っても解かり合えないと思うんです」

リン「友達なんてもんは、もうすでに出来上がってるんだよ」

雅也「普段通りでいいからね」

正彦「私も、彼と以前のように、もっと親しくなりたいと思ってる」

智美「まっすぐに、あなたの行きたい道を進みなさい」

真宏「俺……、ずっと自分のことを被害者だとばかり思ってた」

  「気づかせてくれてありがとうな」

ユウナ「私は、やっぱりここが好きなんです」

 

 

 

次回(第十九回)

 

回想と後悔(リフレクション・アンド・リグレット)

序盤のキャラで、最も印象深い登場人物は?

  • 中谷優奈
  • 鶴ケ崎麗菓
  • 月見里美香
  • 夢野あかり
  • 池谷大輝
  • 相場善秀
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