パズル&ドラゴンズ~もうひとつの旅~   作:葉之和 駆刃

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第19話 回想と後悔〜リフレクション・アンド・リグレット〜(その弐)

 そして数日が過ぎ、九月に入った。ユウナが、初子の手伝いをしていた時だった。スマホが鳴り、見ると通知のメッセージが来ていた。それは星見からのもので、「至急、アニ研部室に集まるように」という内容だった。ユウナはそれを見て不思議に思いつつも、初子にそのことを話してから出かけた。

 

 ユウナが行くと、すでに部員は集まっていた。星見は、部員の前に出るとこう言った。

 

「えー、夏休みもあと少し……、ということで、何か制作したいと思うんだが、何か案はあるかね」

 

 しんと静まり返った後、三宮が言った。

 

「おいおい、ラインで俺らを呼び出したんってこれのことか?」

 

 そして、夏姫もこう言った。

 

「うち、バイトあんねんけど」

 

 それをきいて、星見がこう言うのだった。

 

「いやいや、あんまがっつりしたやつじゃなくて、せっかく夏休みなわけやねんし、思い出作りとして何か企画とかやれたらなぁって思ってさ。みんな、思いつく案はある?」

 

 星見は、部員全体を見渡した。すると侑李が手を上げて、

 

「はいはい! アニメ作って、どっかに応募するってのはどう?」

 

 と言った。すると三宮もその意見に賛成し、

 

「おぉ! ええな、それ」

 

 そう言った。星見もそれをきいて、

 

「なら、ちょうどいいもんがあるわ」

 

 と言い、パソコンで何かを検索し、そのページを皆に向けた。ページのタイトルには、「アニメを作ろう!」と書かれ、概要欄には過去の受賞作品が紹介されていた。

 

「これ、毎年いろんなアニメ会社とかも参加してるらしい。これで大賞とったら、実際にテレビで放映されんねんで?」

 

 皆はそれをきき、「おぉ」と声を上げた。すると、それを冷ますような発言を夏姫がした。

 

「ちょお待って! うちら無名やし、アニメ会社とか出るんやったら、不利ちゃう?」

 

 それをきいた星見は腕を組み、

 

「そやなぁ」

 

 と、呟いていた。そして座っている真宏の方を見て、

 

「部長さんは何かある?」

 

 そう言って尋ねた。しかし、真宏は俯いたまま黙って考えている。すると侑李がまた、このようなことを言いだした。

 

「だったらさ、新聞社とかに頼んで、取材記事載せてもらおうよ!」

「そんな予算どこにあるんよ」

 

 夏姫はそう言って呆れると、侑李は言った。

 

「えぇ~、なんとかならないの?」

「ならんわ!」

 

 三宮も言った。皆はその後、どうにかならないものかと黙って考えていた。しかし、なかなか良さそうな案が見つからない。すると星見が、

 

「ほんじゃまぁ……、この話はボツってことで……」

 

 と言いかけると、

 

「いや待てよ、いけるかもしれねえ」

 

 そう言ったのは、真宏だった。皆は、真宏の方を向いた。真宏はユウナを見ると、

 

「中谷。お前、知り合いにたしか雑誌記者がいただろ?」

 

 と、尋ねてきたのだ。

 

「はい」

 

 ユウナも、そう言って答えた。たしかに、ユウナの知り合いに新聞社に勤めている人物がいる。レイカの兄、雅也だ。もしかすると、彼に頼めば記事に載せてくれるかもしれない。

 

「ほんまにおるん?」

 

 星見は、ユウナにきいた。

 

「はい。知人のお兄さんで、京都の新聞社に勤めているらしいんです」

 

 ユウナが言うのをきいて、その場は大いに盛り上がった。

 

「おぉ! いけるやん」

「ユウナちゃんナイス!」

 

 三宮や侑李は、手を叩いて喜んだ。そしてユウナは、これから雅也のところへ頼みに行くことになった。

 

 早速ユウナが電話をかけると、すぐに許可が下りた。そして、真宏とともに雅也が働いている新聞社を訪問した。雅也が二人を案内しながら、

 

「まさか、ユウナちゃんたちの部活を取材できるなんて思ってもみなかったよ。うちは基本新聞だけど、雑誌も作ってるから。俺が担当してるコーナーに載ることになるけど、大丈夫かな?」

 

 そうきくとユウナは、

 

「はい」

 

 と、答えた。

 

「ところで君たちは、こういうところ来るのは初めて?」

「あ、はい。すみません、頼ってばかりで」

 

 ユウナが恐縮そうに言うので、雅也は笑って返した。

 

「いいって。それより、もう就きたい職業は決まったの?」

「いえ、まだ……」

「まあ、焦ることはないと思うよ。まだ一回生だもんね」

「はい……」

 

 真宏も、黙ってユウナの隣を歩いている。

 

 部屋の前まで来ると、雅也がノックした。そして、二人を中へ入れた。中に入ると、社長らしき人物がソファーに腰かけている。雅也が二人を促すと、ユウナと真宏はその人物の前に座った。雅也がその人物を示して、

 

「この方が、ここの社長、平山(ひらやま)(あつし)さん」

 

 と、平山を紹介した。二人はそれをきいて、平山に頭を下げた。次に、雅也は平山にこう話した。

 

「前にお話しした、龍山大学アニメ研究会が、活動の様子を記事にしてほしいそうです。こちらとしても、是非取材に協力したいと考えているのですが」

 

 すると平山はしばらく考え、前に座っている二人のことを見ながらこう言った。

 

「話は、鶴ケ崎君から何度かきいとるよ。なんでも、いろんな賞もとっとるらしいやないか」

「はい」

 

 真宏は、そう答えた。

 

「それも、発足からまだ三年目やということにも、ごっつ驚かされたわ。こっちとしても、取材できるなら、嬉しい限りや。では、よろしく頼みます」

 

 平山がそう言うので真宏が、

 

「ほんとですか?」

 

 と、思わず膝を少し浮かせながらきいた。すると、平山も頷いた。そして、アニメ研究会は日々の活動を、記事に取り上げてもらえることになったのだった。

 

 

 そして、ついに取材の日がやってきた。その日は、ユウナも朝早くから大学に出向いた。

 

「あ~、緊張するわ~」

 

 夏姫は、そう言って自らの頬を両手で叩いていた。

 

「おいおい、緊張しすぎやろ」

 

 三宮が言うと、夏姫は言い返した。

 

「ほんな、アンタは緊張してへんの?」

 

「え? 俺? べつにしてへんけど」

「嘘つくなや!」

 

 それをきいて、皆は笑っていた。すると、部屋に真宏も入ってきた。

 

「おい、そろそろ始めるぞ」

 

 そして、全員が自分の作業机のところに座った。雅也もメモ帳を開き、何かを書き記していた。その後ろでは、カメラマンが控えている。雅也は、

 

「普段通りでいいからね。僕たちのことは気にしなくていいから、普段通りに作業をしてくれればいいよ」

 

 と言うと、皆はいつも通りに作業を開始した。コンテストに出す短編アニメを作るのだ。それにはまず、ストーリーを決め、絵コンテを完成させなければならない。取材は、何日にも及んだ。絵コンテを担当していたのは、ユウナと同期の長谷川恵だった。恵はユウナのところに出来上がった絵コンテを持っていくと、ユウナはそれをもとに絵を描き始めた。少しずつ違った絵を、何枚も重ねて書いていく。それは、気の遠くなるような作業だった。雅也は皆の様子を見ながら、微笑ましそうにメモを取っていた。

 

 

 しかし、アニメが形になってきたころ、事件は起こった。ユウナが、出来上がった映像をパソコンで確認している時だった。側を通りかかった三宮が、それを見てこう言った。

 

「あれ、それ何かおかしない?」

「えっ?」

 

 ユウナもそう声を上げ、よく見てみた。皆も、何事かとその場に集まってきた。

 

「それ、どっか抜けてない?」

 

 異常(ミス)があることに気づいたのか、星見が言った。たしかに、映像の一部が飛んでいる。どこで間違えたのかと、ユウナは考えていると、侑李がこう言った。

 

「あぁ、わかった! 絵コンテのページが抜け落ちてたんじゃない?」

 

 三宮も理解したように、

 

「ほんまや! 絵コンテを担当してたんってたしか……」

 

 と言うと、皆は恵の方を見た。恵はかなり焦ったように、

 

「あ、あの……、私……」

 

 そう言って泣きそうになっていると、恵が皆から責められると感じたユウナは立ち上がり、

 

「すみません、私がよく確認していれば……」

 

 と言いかけると、真宏が出てきた。

 

「ページが抜け落ちてたんなら、どっか近くに落ちてねえか?」

 

 真宏が言うのをきいて、皆は急いで探し始めた。すると、

 

「あったで!」

 

 と、夏姫が一枚の紙をかざした。すると真宏が、

 

「貸せ、俺がなんとかする!」

 

 そう言い、その紙を受け取ると机に座って絵を描き始めた。もうアニメーションはほとんど出来上がっているが、その途中にあとから作った映像を挿入するとなると、かなり難しい作業だった。それでも真宏は、懸命に描き続けた。そして出来上がると、それを星見のところへ持っていった。

 

「これ、入れられそうか?」

「やってみる」

 

 星見もそう言い、それを受け取った。ユウナも、近くでそれを心配そうに見つめていた。うまくいってほしいと、そう心から願った。

 

 日が落ちて外が真っ暗になったころ、映像の修復が完成した。それを皆で確認すると、

 

「終わった~」

 

 と、星見はどっと疲れが来たように両手を伸ばした。ユウナもそれを見て、笑みをこぼした。ほかの部員たちも、終わってかなり安心しているようだ。そして、その日は解散することになった。

 

 真宏が部室に残って仕上げの作業を続けると言うので、ユウナは先に雅也と帰ることにした。外に出て、雅也は歩きながらユウナにこう言った。

 

「今日は、大変だったみたいだね」

「はい。先輩がいなかったら、どうしようもなくなってたかもしれません」

「誰かのために咄嗟に判断できるっていうことは、すごく難しいと思うんだ。でも彼は、そんな瞬間的な判断で解決へと結びつけた……」

 

 雅也は足を止め、ふり返ってユウナを見た。

 

「素晴らしい記事が書けそうだよ。ありがとう、ユウナちゃん」

 

 雅也の言葉をきくとユウナは、

 

「お礼なら、先輩方に言ってください。私は、何もできませんでしたから。それに、もっとほかに傷ついてる子がいると思うんです」

 

 と言い、下を向いていた。

 

 部室には真宏のほかに、星見も残っていた。星見は、

 

「今日は疲れたなぁ。まぁ仕上げは明日したらええんちゃう?」

 

 と、独り言のように言っていた。すると、思い出したように部室を見渡した。

 

「そういや、恵ちゃんは? 夕方ぐらいから、ずっと見てへんねんけど」

 

 それをきいた真宏は、もしやと思い、立ち上がった。

 

 恵は、棟の裏でうずくまっていた。きこえてくるのは、虫のさざめきくらいだった。するとそこへ、足音が段々と近くなってくる。恵は、ふと顔を上げた。前には、真宏の姿があった。そして真宏は、恵の隣に座った。

 

「あ、あの……」

 

 恵は戸惑いながら言うと、

 

「今日は、大変だったな。久々に疲れたぜ」

 

 と言って、真宏は伸びをした。すると恵が、

 

「ごめんなさい!」

 

 そう言って頭を下げた。それを見ると真宏は笑い、

 

「いいって、べつに気にしてねえから。それに、好きでやってなきゃ、あんな真剣にはならねえよ」

 

 と言いながら、夜空を見上げた。空には、無数の星があちらこちらに散りばめられている。

 

「本当に、気にしてないんですか?」

 

 恵は、真宏の顔を覗きこむようにきいた。

 

「あぁ、誰にだって最初から完璧はあり得ねえ。ミスをするから、上達するんだ。お前も、これをバネにしてみたらどうだ? 失敗をどう捉えるかは勝手だけどさ、俺はそっちの方がいいと思うぜ」

 

 真宏は立ち上がった。そして、

 

「部室、帰るぞ」

 

 と言って手を差し出すと、恵は少し赤くなりながら真宏の手を握った。そして立ち上がると、真宏の後ろをついていった。部室に着くまでの間、恵は真宏の後姿を見つめていた。そして、少しずつ自分の気持ちに気づいていったのだ。

序盤のキャラで、最も印象深い登場人物は?

  • 中谷優奈
  • 鶴ケ崎麗菓
  • 月見里美香
  • 夢野あかり
  • 池谷大輝
  • 相場善秀
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