パズル&ドラゴンズ~もうひとつの旅~   作:葉之和 駆刃

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第1話 本当の友達~リアル・フレンド~(その肆)

 月曜日、ユウナはドアを開けて家を出た。そしてバスに乗り、学校に着く。下駄箱に行くと、

 

「ユウナおはよー!」

 

 と言いながら、ミカが走ってきた。その後ろから、アカリもついてきた。

 

「おはよう」

 

 ユウナもそう言った。ミカがユウナに、

 

「始業式の日、どったの?」

 

 ときいた。

 

「ううん、別に」

 

 ユウナはそう答えて、教室に向かった。その途中、アカリがある人物を見つけて言った。

 

「あ、鶴ケ崎先生!」

 

 アカリが走っていき、

 

「おはようございます!」

 

 と、頭を下げた。吹奏楽部は、上下関係が激しい部活で有名だった。声をかけられたのは、顧問、鶴ケ崎(つるがさき)智美(あけみ)である。

 

「おはよう」

 

 智美もそう言うと、歩いていった。ミカは、

 

「今のって、吹部の顧問でしょ?」

 

 と尋ねるとアカリが、

 

「うん。美人かろ?」

 

 そう言った。アカリにとって、最も尊敬できる人物であった。ユウナも、何気に智美の後ろ姿を見つめていた。

 そして教室に入り、席に着いた。するとリカが来て、

 

「おはよう、ユウナちゃん」

 

 と、声をかけた。それを見て、ユウナも笑顔で答えた。

 

「おはよう」

 

 それを後ろで、ミカとアカリが感心したように見ていた。

 午前の授業が終わり、昼休みに入った。ミカがユウナに、

 

「弁当持ってきた?」

 

 と尋ねるのでユウナは、

 

「うん」

 

 そう答えた。ユウナ、ミカ、アカリの三人はほぼ毎日昼食を一緒にとる。教室で机と椅子を並べて、三人でトークをしながら食べるのだ。その日も、一緒に食べることになった。三人は集まっていると、後ろから声がした。

 

「あの」

 

 ユウナがふり向くと、リカが立っていた。

 

「あの……、私もいいかな?」

「あ……、うん」

 

 リカが言うので、ユウナもそう答えた。その会話をきいてミカが、突然言いだした。

 

「あ。やっぱあたしらいいわ。アカリ、食堂行こ」

「えっ? あ、うん」

 

 ミカとアカリは、そのまま教室を出ていった。ユウナからしてみれば、ミカが空気を読んでくれたように思えた。ユウナにはそのような気遣いは一切無用だったが、リカにとっては好都合だった。リカが、ユウナの前に座った。

 

「金曜日は、ありがとう」

 

 リカが、そう言った。

 

「いいよ。私も、楽しかったし」

「ユウナちゃんって、パズドラのほかに何かゲームやるの?」

「あ、うん。でも、最近はあまりないかな」

 

 するとリカは思い出したように、

 

「そうだ! ユウナちゃん、ラインやってる? もしよかったら交換しよ」

 

 と言って、ポケットからスマホを出した。ユウナも、

 

「いいよ」

 

 そう言ってカバンに手をかけようとした瞬間。

 

「へぇ、お前ら仲いいんだ」

 

 ユウナは驚いて横を向くと、相場が食堂から帰ってきていた。

 

「相場君……」

「何の話してたの?」

「べつに、何でも」

「そっか」

 

 相場は、カバンを取りに来たようだった。ユウナが、

 

「今日も昼練?」

 

 ときくと、相場は言った。

 

「まあな」

 

 そして、カバンを持つと部屋を出ていった。

 

「大変だね」

 

 ユウナは、リカの方を向いて話した。でもリカは、相場が出ていった方をずっと向いている。

 

「リカ?」

 

 不思議に思って、ユウナが声をかけた。するとリカは気がつき、

 

「えっ? あぁ、何?」

 

 と言った。ユウナは心配そうに、こう言った。

 

「いや。何か、あるのかなと思って」

「あ、ごめん。何でもないよ」

 

 リカもそう言って、弁当を広げ、食べ始めた。それを、ユウナはしばらく見つめていた。

 午後の授業も、リカはまるで魂が抜けたように、集中していなかった。ユウナの一つ前の席であったため、それがよくわかった。

 放課後、二人は一緒にバス停まで行った。あれから、リカの態度がガラリと変わった。ユウナは、自分が悪いことでもしたのかと、不安に思った。そして、ユウナは思い切って尋ねてみた。

 

「ねぇ、リカ」

「何?」

 

 リカも、ふり向いた。

 

「なんか、お昼あたりから元気ないなーって思って。私、リカに何か悪いことでもしたかな、なんて思ったりもして。もしそうだとしたら、ごめん」

 

 すると、リカは笑って言った。

 

「違うよ。わたしこそ、ごめんね」

 

 そして、しばらく沈黙が流れた。するとリカは、ユウナに言った。

 

「ねぇ、一つ、きいてもいい?」

「何?」

「私たち、友達だよね?」

「うん」

「ユウナちゃん……、相場君のこと、どう思ってる?」

「えっ?」

 

 不意をつかれたような質問だった。ユウナは少し混乱し、頭の中を整理しようとした。そして、気づいた。ユウナがリカの前で相場と話をしてから、リカの様子が変わったと。どうやらリカは、ユウナが相場のことを好きだと思ったらしい。ユウナは、焦りを隠せなかった。

 

「ち、違うの。相場君は、なんか、友達っていうか、二年の時からずっと同じクラスだったから」

「そうだよね……。ごめんね、勘違いだったみたい。でも、ユウナちゃんには伝えておきたい」

 

 リカがそう言い、ユウナを見つめた。ユウナも黙って、リカの顔を見つめていた。そして、リカの口が動く。

 

「私、私ね……、相場君のことが、好き……。相場君が、好きなの」

 

 ユウナは、きく前からわかっていた。相場は、女子にとっては憧れのような存在でもあった。ユウナも、リカの気持ちは痛いほど痛感した。

 

「そっか……。じゃあ、私も応援するよ。ちょっとずつ、話しかけていけばいいんじゃないかな」

「それじゃダメなの!」

 

 リカが、急に強い口調で言った。するとリカが後悔したように、

 

「ごめん……、そうだよね。急には、無理だよね……。わかってたの、全部。ありがとう」

 

 と言い残すと、リカは走っていった。

 

「リカ!」

 

 ユウナが追いかけようとした時、バスが来た。ユウナは、ためらった。このままバスに乗ろうか、リカを追いかけようか。でも追っていっても、また気まずい雰囲気になるだけではないか。ユウナは仕方なく、バスに乗った。ユウナは、何気にバスの外を見た。その日は、曇り空が広がっていた。リカの気持ちを考えれば考えるほど、自分が情けなくなっていった。

 

 その夜、ユウナは一人、ベッドの上で考えていた。

 

『相場君のことが、好き……』

 

 そう言ったリカのことが、頭から離れなくなっていった。するとまたドアが開き、

 

「姉ちゃん」

 

 と言って、義輝が顔を出した。ユウナはまた焦り、

 

「ちょっと! ノックしなさい!」

 

 そう言うので義輝は少したじろいだように、

 

「あ……、風呂……」

 

 と言うとユウナは我に返り、

 

「あ、うん」

 

 そう答えると、義輝はドアを閉めた。でもユウナからは、どうしてもあのことが離れなかった。

 

『それじゃダメなの!』

 

 なぜリカは、あのようなことを言ったのだろう。もしかしたら、人には言えない事情があったのかもしれない。そればかりが、案じられるのだった。

 

 次の日。ユウナは教室に行くと、リカの席が空いていた。いつもはユウナが来た時には、もうすでに席についていた。今日はまだ来ていないのかと思い、ユウナは席についた。ユウナは横にいた相場に、

 

「リカ、知らない?」

 

 ときくと相場が、

 

「あ、いや……」

 

 という、不自然な言動を見せた。すると、ドアが開いて吉崎が入ってきた。それを見て皆が席に着くと、吉崎が言った。

 

「じゃ、ホームルーム始めるぞ。その前に、今日はみんなに残念なお知らせがある」

 

 それをきき、皆もザワザワし始めた。ユウナは、まさかと思った。根拠はないが、悪い予感がしたのだ。そして、吉崎が言う。

 

「突然だが、四十住(あいずみ)理華さんが、本日をもって転校することになった。今朝、手続きを終えて、今日の夕方、出発するそうだ。見送りに行きたい人は、ここに時間と駅名を貼っておく」

 

 吉崎は、前の掲示板を差した。皆は、

 

「え? 今日?」

「急じゃね?」

 

 と、友達などで話し合っている。ユウナはそれをきいて、やはり驚きを隠せなかった。でも、なぜ言ってくれなかったのだろうという気持ちもあった。すると隣にいた相場が、声をかけてきた。

 

「なぁ、中谷。この後、ちょっといいか?」

 

 ユウナは相場を見ると、頷いた。その様子を、前から大輝も見ていた。

 その後、相場から事情を聞いた。

 

「あいつ、両親の仕事の都合で引っ越すんだと。実は昨日、部活終わりに声かけられて。メアドきかれたんだ。あと、明日引っ越すことも。でもお前には、先生から知らされるまで言うなって言われてて……」

 

 ユウナはそれをきき、驚いた。それだけのことを、好きな人に伝えたのかと。そして、相場は続けた。

 

「こんなこと、言っても仕方ないと思うけど、昨日、あいつに告白されたんだ」

 

 ユウナはそれをきいて、何も言えなかった。

 

「なんか、後悔したくないって言ってた。それと、中谷には心配かけたくないから、何も言わないでくれって……。てゆうか、もう全部話しちゃってんな、俺」

「ねぇ……、相場君」

「何だ?」

「リカのメアド、教えてくれる?」

 

 ユウナは、それが自分にできるただ一つのことだと思った。

 その後、ユウナは授業が始まる前に急いで打ち込んだ。

 

『中谷優奈です。何故、言ってくれなかったの? みんな、心配してるよ』

 

 ユウナは、その日は授業どころではなかった。授業中も集中できず、返信が気になって、休み時間にメールフォルダを開いてみても、リカからの返信はなかった。相場も、横でその様子を見ていた。

 放課後、ミカが来て言った。

 

「ユウナどーする? 行くの?」

「うん」

 

 その時、スマホが鳴った。返信が来たのだ。ユウナは、フォルダを開いた。それを見た瞬間、ユウナはカバンを持って教室を飛び出した。それを見て、ミカも笑っていた。

 

『心配かけてごめんなさい。でも、友達には心配かけられないと思って、話せませんでした。ユウナちゃんが私のことを友達と言ってくれたことが、何より嬉しくて。そして一緒に話したり、パズドラやったり、楽しかったです。またどこかで会えたら、またやりたいです。最後まで心配かけてごめんね、理華より』

 

 ユウナはリカがいつも降りていたバス停でバスを降り、無我夢中で走った。そして、上からホームを見渡せる道に出た。ユウナは息を切らしながら、ホームをよく見た。そこには、リカとその両親の姿があった。そして電車の扉が閉まり、発車した。ユウナは、それを追いかけた。

 リカは、電車の席に座り、両親に挟まれていた。リカは、ふとスマホを見た。そして、ユウナにコツを教えてもらったパズドラを開く。そして、微笑んだ。すると、遠くで声がきこえたような気がした。

 

「リカ、リカー!」

 

 それをきき、まさかと思ったリカはふり向き、窓を開けた。すると、向こうで手をふっているユウナが目に映った。それを見て、リカから涙があふれた。ユウナは、両手で手をふっている。その右手には、スマホが握られていた。

 

「また、やろうね!」

 

 ユウナが叫ぶと、リカもスマホをかざしてこう答えた。

 

「うん! また!」

 

 ユウナはただひたすら、手をふり続けた。リカを乗せた電車は、やがてトンネルに近づき、見えなくなった。リカは電車の中で、涙を流しながら、笑顔を保っていた。それを両親も、嬉しそうに見ていた。

 ユウナはその場所に立ち、なおかつ後悔はしていなかった。本当の友達を、大切にしたい。ユウナはそれだけを考え、電車が過ぎ去った方角をずっと見つめていた。この少女がこの先、どう変わっていくのか、それをお届けしたいと思う。

 

 

第一回「本当の友達(リアル・フレンド)」終

 

 

 

次回予告

ユウナ「私も尊敬しちゃう」

レイカ「私、下手な人には興味ないから」

ミカ「鶴ケ崎麗菓。成績は学年一位でスポーツ万能。何でもできて、女子の中でさえも憧れの的。まさに、完璧の人って感じよね」

ユウナ「あの、鶴ケ崎先生ですよね?」

アカリ「家庭の問題、結構抱えとるらしいよ」

智美「ずっと孤独だったの、私のせいで……」

レイカ「二度と来ないで!」

相場「これ、リカから」

  「お前に言えなかったこと、今も後悔してるんだと思う」

レイカ「私は、自分だけを信じて生きている。あなたたちとは違うのよ」

ユウナ「もっと人を信じてみてもいいんじゃないかな」

 

 

 

次回(第二回)

 

完璧の人(パーフェクト・ウーマン)




ここまで読んでくださった方、ありがとうございました。
これからも、よろしくお願いします!

序盤のキャラで、最も印象深い登場人物は?

  • 中谷優奈
  • 鶴ケ崎麗菓
  • 月見里美香
  • 夢野あかり
  • 池谷大輝
  • 相場善秀
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